JP2020147662A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】高度の耐熱性を有し、低ソリ性や外観性に優れ、また機械的強度や耐薬品性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供する。
【解決手段】(A)固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂を10質量部以上50質量部未満、
(B)250℃、912sec−1に於ける溶融粘度(η)が80〜500Pa・secであるポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下、
(C)長さ方向断面の異形比が2〜6のガラス繊維を、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し、10〜150質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関し、詳しくは、高度の耐熱性を有し、低ソリ性や外観性に優れ、また機械的強度や耐薬品性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体に関するものである。
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れることから、電気電子機器部品、自動車用内外装部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶性樹脂であるため、成形収縮率が大きく、特にガラス繊維などの強化充填剤を配合した際には異方性が大きくなる傾向にあり、成形品が反ってしまう場合がある。そこで、反りの低減の為、種々の非晶性樹脂を混合する方法が提案されている。
特許文献1には、(a)ポリエステル樹脂50〜96重量、(b)ゴム変性ポリスチレン系樹脂35〜3重量%、(c)芳香族ポリカーボネート樹脂および/またはスチレン−無水マレイン酸共重合体15〜1重量%からなる樹脂(A)に、(B)アミノ系シランカップリング剤とノボラック型エポキシ樹脂を含む集束剤が付着したガラス繊維と(C)エポキシ化合物を配合したポリエステル樹脂組成物が、流動性、寸法精度および耐熱性に優れるという発明が記載されている。しかしながら、このようなポリエステル樹脂組成物は耐熱性と低ソリ性の点では更なる改良が求められている。
また、特許文献2には、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂10〜80重量%、(B)エポキシ基含有ビニル系共重合体1〜15重量%、(C)ABS樹脂1〜15重量%、(D)(d−1)無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂、(d−2)ゴム変性ポリスチレン樹脂及び(d−3)ポリカーボネート樹脂からの2種以上の樹脂1〜20重量%、(E)ガラス繊維0〜50重量%、(F)ハロゲン化エポキシ臭素系難燃剤3〜20重量%、(G)アンチモン化合物1〜10重量%を配合した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、難燃性、高衝撃性、高強度、低そり性に加え、ヒートサイクル性及びアニール処理後の寸法安定性、耐熱剛性に優れることが記載されている。しかしながら、最近では耐熱性と低ソリ性は極めて高いレベルで要求されており、特許文献2に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物も、耐熱性と低ソリ性の点では未だ不十分である。
特開2006−16559号公報 特開2007−314619号公報
本発明の目的(課題)は、高度の耐熱性を有し、低ソリ性や外観性に優れ、また機械的強度や耐薬品性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することにある。
本発明者は、上記した課題を解決するため鋭意検討した結果、高い粘度のポリスチレン樹脂またはゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS)に、低粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を少ない量で配合し、さらに長さ方向の断面の異形比が2〜6のガラス繊維を含有する樹脂組成物が、ポリブチレンテレフタレート樹脂が少ない量にも係らずマトリックス相を形成して、特異的に耐熱性を向上させ、さらに低ソリ性に優れ、外観性にも優れた樹脂組成物となることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下の熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関する。
[1](A)固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂を10質量部以上50質量部未満、
(B)250℃、912sec−1に於ける溶融粘度(η)が80〜500Pa・secであるポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下、
(C)長さ方向断面の異形比が2〜6のガラス繊維を、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し、10〜150質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]さらに、(D)相溶化剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、1〜25質量部含有する上記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3](C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の相で囲繞された状態で存在している上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4](C)ガラス繊維の長さ方向の断面積が180μm超300μm以下である上記[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
[6]ヘッドアップディスプレイ用又はエンジンコントロールユニット用の筐体である上記[5]に記載の成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂が少ない、ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂がリッチの系にも係らず、驚くべきことに、低い分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を選択的に用い、かつ長さ方向の断面の異形比が2〜6のガラス繊維を含有することで、ポリブチレンテレフタレート樹脂の樹脂相がガラス繊維を介して連続的になることでマトリックス(海)となりやすくなり、その結果、特異的に耐熱性がより向上し、また低ソリ性や外観性に優れ、機械的強度や耐薬品性にも優れる。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種の電気電子機器の部品や自動車用内装あるいは外装部品等に好適に使用できる。
実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物の走査電子顕微鏡によるSEM画像である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂を10質量部以上50質量部未満、
(B)250℃、912sec−1に於ける溶融粘度(η)が80〜500Pa・secであるポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下、(C)長さ方向断面の異形比が2〜6のガラス繊維を、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し、10〜150質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下に記載する説明は実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gの(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する。
固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gの範囲にあるものを用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂の特性が強く顕れ高い耐熱性と低ソリ性に優れ、また、機械的強度や耐薬品性にも優れた樹脂組成物となる。
固有粘度(IV)が0.3dl/gより低いものを用いると、ポリブチレンテレフタレートの耐熱性が発現しないことに加え、機械的強度の低いものとなりやすい。また0.8dl/gより高いものでは、前記した海島構造は形成しにくくなり、(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂が海となりやすく、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したりしやすい。固有粘度(IV)は、好ましくは0.4dl/g以上、より好ましくは0.5dl/g以上、さらには0.55dl/g以上が好ましく、また、好ましくは0.75dl/g以下である。
なお、本発明において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよく、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよく、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上及び/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよく、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。60eq/tonを超えると、耐アルカリ性及び耐加水分解性が低下し、また樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
[(B)ポリスチレン樹脂またはゴム強化ポリスチレン樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(B)ポリスチレン樹脂及び/又はゴム強化ポリスチレン樹脂を含有する。
ポリスチレン樹脂としては、スチレンの単独重合体、あるいは他の芳香族ビニルモノマー、例えばα−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を例えば、50質量%以下の範囲で共重合したものであってもよい。
ゴム強化ポリスチレン樹脂としては、好ましくはブタジエン系ゴム成分を共重合またはブレンドしたものであり、ブタジエン系ゴム成分の量は、通常1質量%以上50質量%未満であり、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。
ゴム強化ポリスチレン樹脂としては、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)が特に好ましい。
そして、本発明においては、(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂として、250℃、912sec−1に於ける溶融粘度(η)が80〜500Pa・secのものを使用する。このような溶融粘度(η)のポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を10質量部以上50質量部未満、(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下という量で、共に配合することにより、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が物性上で支配的となり、その結果、高い耐熱性と低ソリ性を達成することができる。溶融粘度(η)が80Pa・secを下回ると、耐熱性が不十分となる。
溶融粘度(η)は、好ましくは90Pa・sec以上、より好ましくは100Pa・sec以上、さらに好ましくは110Pa・sec以上、中でも120Pa・sec以上、特には130Pa・sec以上であることが好ましい。また、その上限としては好ましくは400Pa・sec以下、より好ましくは300Pa・sec以下、さらには200Pa・sec以下が好ましく、中でも180Pa・sec以下、特に好ましくは160Pa・sec以下である。
なお、溶融粘度はISO 11443に準拠し、キャピラリーレオメーター及びスリットダイレオメーターを用いることで測定できる。
上記の通り、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、10質量部以上50質量部未満、(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下であるが、好ましくは(A)が20質量部以上50質量部未満、より好ましくは(A)が25質量部以上50質量部未満、さらに好ましくは30質量部以上50質量部未満、特に好ましくは30〜48質量部であり、(B)が好ましくは50質量部超80質量部以下、より好ましくは50質量部超75質量部以下、さらに好ましくは50質量部超70質量部以下、特に好ましくは52〜70質量部である。
[(C)ガラス繊維]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(C)長さ方向断面の異形比が2〜6のガラス繊維を含有する。
長さ方向断面の異形比とは、ガラス繊維の長さ方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。本発明において、(C)異形比が2〜6であるガラス繊維を含有させることにより、ガラス繊維が配向した(A)ポリブチレンフテレフタレート樹脂の相の間を繋ぐ橋架けの機能を示し、ポリブチレンテレフタレート樹脂がマトリックス(海)となり易くなることから、特異的に耐熱性が向上し、また低ソリ性や外観性に優れることになるのではと、本発明者は推察している。
更には、そのガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の相で囲繞された状態で存在している場合に於いては、ガラス繊維による(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相間の橋架け効果がより高くなり、加えて嵩高いガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の増量剤の役割を果たすことから、更に耐熱性が向上しているものと考えられる。
(C)ガラス繊維の異形比は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下である。長さ方向断面の形状は、特に略矩形状であることが特に好ましい。
(C)ガラス繊維の長さ方向の断面積は、180μm超300μm以下であることが好ましく、このような断面積であることで、ポリブチレンテレフタレートがマトリックスとなりやすく、結果的に耐熱性が向上し易い。断面積は、より好ましくは180μm超250μm以下、さらに好ましくは180μm超200μm以下である。
(C)ガラス繊維の太さは、特に限定されるものではないが、短径が2〜20μm、長径が5〜50μm程度であることが好ましい。
ガラス繊維としては、上記した特定の異形比を有するガラス繊維であれば、特に限定されるものでなく、ECTガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョツプドストラント、ロービングガラス、熱可塑性樹脂とガラス繊維のマスターバッチ等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、公知のいかなるガラス繊維も使用可能である。なかでも本発明に用いるガラス繊維としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を向上させる目的から無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。
(C)ガラス繊維は、集束剤や表面処理剤により処理がなされていてもよい。また、本発明の樹脂組成物製造時に、未処理の(C)ガラス繊維とは別に、集束剤や表面処理剤を添加し、表面処理してもよい。
集束剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョン等が挙げられる。
表面処理剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系化合物、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等のクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。
これらの集束剤や表面処理剤は2種以上を併用してもよく、その使用量(付着量)は、(C)ガラス繊維の質量に対し、通常10質量%以下、好ましくは0.05〜5質量%である。付着量を10質量%以下とすることにより、必要十分な効果が得られ、経済的である。
(C)ガラス繊維の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対して、10〜150質量部であり、さらに好ましくは10〜120質量部、中でも15〜100質量部、特には20〜90質量部が好ましく、最も好ましくは30〜80質量部である。このような範囲で含有することにより高度な耐熱性を達成でき、得られた成形体の強度やの収縮率の低減効果を高めることができ、含有量が150質量部を超えると、成形体の表面外観が低下する場合があり、10質量部未満では強度の向上効果が少なくなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記した(C)ガラス繊維以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、上記異形比を持たないガラス繊維を含有したり、板状、粒状又は無定形の他の無機充填材を含有してもよい。尚、本発明の特定の異形比以外の形状のガラス繊維を用いる場合には、全ガラス繊維中の50質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。
板状無機充填材は、異方性及びソリを低減させる機能を発揮するものであり、タルク、ガラスフレーク、マイカ、雲母、カオリン、金属箔等が挙げられる。板状無機充填材の中で好ましいのは、ガラスフレークである。
粒状又は無定形の他の無機充填材としては、セラミックビーズ、クレー、ゼオライト、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫化亜鉛等が挙げられる。
他の無機充填材としては、特にタルク、酸化チタン、硫化亜鉛が好ましく、特にタルクが好ましい。
他の無機充填材の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは、0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは20質量部である。
[(D)相溶化剤]
本発明の樹脂組成物は(D)相溶化剤をさらに含有することが好ましい。(D)相溶化剤を含有することで、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂との相溶化を促進させることにより、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相に分散する(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の分散粒径が小さくなり、界面強度も高くなることで、優れた機械的強度や優れた外観が得られ易くなる。
(D)相溶化剤は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂との相溶化機能を果たすことができる限り、特に限定されず、耐熱性の観点から高分子化合物系の相溶化剤が好ましい。
(D)相溶化剤としては、特にポリカーボネート樹脂又はスチレン−マレイン酸共重合体が好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。
原料のジヒドロキシ化合物は、実質的に臭素原子を含まないものであり、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10000以上であることが好ましく、13000以上であることがより好ましく、特に15000を超えるものであることが最も好ましい。粘度平均分子量が10000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。またMvは60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
スチレン−マレイン酸共重合体としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)が好ましく、スチレン単量体と無水マレイン酸単量体の共重合体であり、製造方法としてラジカル重合などの既知の重合方法が可能である。
スチレン−マレイン酸共重合体の分子量等は特に制限されるものでは無いが、質量平均分子量としては、好ましくは10,000以上500,000以下、より好ましくは40,000以上400,000以下、さらに好ましくは80,000以上350,000である。
ここで質量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量である。
スチレン−マレイン酸共重合体には、本発明の特性を損なわない範囲で他の単量体成分を共重合可能であり、具体例としてα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
(D)相溶化剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対して、両者を単独または合計で、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは3〜18質量部である。
[安定剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル(ホスファイト)、3価のリン酸エステル(ホスホナイト)、5価のリン酸エステル(ホスフェート)等が挙げられ、中でもホスファイト、ホスホナイト、ホスフェートが好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(RO)3−nP(=O)OH
(式中、Rは、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)
で表される化合物である。より好ましくは、Rが炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、好ましくは、下記一般式:
O−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜2質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、2質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜1.5質量部であり、更に好ましくは、0.1〜1質量部である。
[離型剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、耐アルカリ性が良好な点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物が好ましく、特に、ポリオレフィン系化合物が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、重量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、飽和又は不飽和の1価又は2価の脂肪族カルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられる。中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸とアルコールで構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪酸は、脂環式であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪酸エステル系化合物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールモンタン酸エステル等が挙げられる。
離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜3質量部であるが、0.2〜2.5質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.3〜2質量部である。0.1質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下しやすく、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下しやすく、また成形体表面に曇りが生じやすい。
[カーボンブラック]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5〜60nm程度であることが好ましい。
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはポリブチレンテレフタレート樹脂と予め混合したマスターバッチとして配合されることが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.2〜3質量部である。0.1質量部未満では、所望の色が得られなかったり、耐候性改良効果が十分でない場合があり、4質量部を超えると、機械的物性が低下する場合がある。
[その他含有成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記した必須成分以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
ただし、その他の樹脂を含有する場合の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂の合計100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記した以外の種々の添加剤を含有していてもよく、このような添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、着色剤、染顔料等が挙げられる。
[熱可塑性樹脂組成物の製造]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するには、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。すなわち、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂、所望により添加されるその他樹脂成分及び種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、樹脂組成物を調製することもできる。(C)ガラス繊維はサイドフィードすることが好ましい。
また、一部をマスターバッチ化したものを配合して溶融混練してもよい。さらには、予め各成分を混合した混合物を、溶融混練することなく、そのまま射出成形機等の成形機に供給し、各種成形体を製造することも可能である。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、外観不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
異形比が2〜6であるガラス繊維の場合には、低い分子量の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、ガラス繊維が嵩高いために、海島構造の海(マトリックス)もしくは共連続構造の海となりとなりやすくなり、(C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の相で囲繞された状態で存在している状態となりやすくなる。
本発明の樹脂組成物としては、電子顕微鏡で観察される樹脂組成物の成形体の断面構造において、(C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の相で囲繞された状態で存在していることが好ましい。また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、海島構造の海(マトリックス)、もしくは(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂と共連続相を形成していることが好ましい。このようなモルフォロジー構造を有することにより、特異的に耐熱性をより向上させ、さらに低ソリ性に優れ、外観性にも優れたものとなりやすくなる。
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を製造する方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも、生産性と、得られる成形体の表面性が良好となるなど、本発明の効果が顕著であることから、射出成形法が好ましい。
得られた成形体は、耐熱性と低ソリ性、耐薬品性に優れるので、これらの特性が厳しく求められる電気電子機器部品、自動車用内外装部品その他の電装部品として好適に使用される。特に自動車用内外装部品用として、自動車に内装されるヘッドアップディスプレイの筐体、あるいは、エンジンコントロールユニット(ECU)用の筐体等に特に好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
(実施例1〜3、比較例1〜6)
上記表1に示した各成分のうち、ガラス繊維を除いた各成分を後記表2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」、L/D=42)を使用し、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、シリンダー設定温度260℃、吐出量40kg/h、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
[MVR]
MVRは、タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、上記で得られたペレットを、265℃、荷重5kgfの条件にて、単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm/10min)を測定した。
[引張破断強度、引張破断伸び率]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼社製射出成形機(型締め力85T)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、引張破断強度(単位:MPa)、引張破断伸び率(単位:%)を測定した。
[曲げ最大強度、曲げ弾性率]
ISO178に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で、曲げ最大強度(単位:MPa)と曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[ノッチ付シャルピー衝撃強度]
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)にノッチ加工を施したノッチ付き試験片について、23℃の温度でノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[モルフォロジーの観察]
上記で得られたISO多目的試験片(4mm厚)の中央の位置にあって、表層から1000μmの位置を中心として含む、成形時の流動方向に垂直な断面から、リファインテック社製「APO−120」を用い、研磨による平滑な断面を得た。得られた試料の観察面を真空デバイス社製「PIB−10」にて6分間イオンエッチングを行った。そのエッチング面を四酸化オスニウムで、気相、室温にて30分染色した後、更に四酸化ルテニウムで、気相、室温にて120分染色後、走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製、「S4800」)を用い、加速電圧0.7kVの条件で、倍率1000倍のSEM画像を取得した。
得られたSEM画像から、(C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相で囲繞された状態で存在しているか、あるいは(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂に囲繞または分散して存在しているかについて、観察した。
得られたSEM画像の代表例として、実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物のSEM画像を図1に示す。
図1中、白く見えるところは(C)ガラス繊維を、黒い部分は(A)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を、そして灰色の部分は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を表し、ガラス繊維がポリブチレンテレフタレート樹脂層で囲繞されていることが判る。
表中、「A」は(C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相で囲繞された状態で存在していることを、「B」は(B)ポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂に囲繞または分散して存在していることを示す。
実施例1で得られた樹脂組成物についてのSEM画像を図1に示す。
[荷重たわみ温度と耐熱性判定]
上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO75−1及びISO75−2に準拠して、荷重1.80MPaの条件で、荷重たわみ温度を測定した。
以下の基準により、耐熱性の判定を行った。
○:荷重たわみ温度が170℃以上
△:荷重たわみ温度が160℃以上170℃未満
×:荷重たわみ温度が160℃未満
[反り量と反り性判定]
射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で、直径100mm、厚み1.6mmの円板をサイドゲート金型により成形し、円板の反り量(単位:mm)を求めた。
以下の基準により、反り性の評価判定を行った。
○:反り量が1mm未満
△:反り量が1mm以上2mm未満
×:反り量が2mm以上
以上の結果を、以下の表2に示す。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高度の耐熱性を有し、低ソリ性や外観性に優れ、また機械的強度や耐薬品性にも優れるに優れるので、これらの特性が厳しく求められる電気電子機器部品、自動車用内外装部品その他の電装部品として特に好適に利用できる。

Claims (6)

  1. (A)固有粘度(IV)が0.3〜0.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂を10質量部以上50質量部未満、
    (B)250℃、912sec−1に於ける溶融粘度(η)が80〜500Pa・secであるポリスチレン樹脂又はゴム強化ポリスチレン樹脂を50質量部超90質量部以下、
    (C)長さ方向断面の異形比が2〜6のガラス繊維を、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し、10〜150質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. さらに、(D)相溶化剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、1〜25質量部含有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (C)ガラス繊維が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の相で囲繞された状態で存在している請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (C)ガラス繊維の長さ方向の断面積が180μm超300μm以下である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
  6. ヘッドアップディスプレイ用又はエンジンコントロールユニット用の筐体である請求項5に記載の成形体。
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