JP2021000922A - ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無段変速機構における滑りの発生を抑制しつつ燃費を改善する。【解決手段】車両100は、エンジン3と、エンジン3から動力が伝達されるCVT13と、CVT13のプライマリプーリ13aの軸に接続されるMG4と、MG4を制御するコントローラ20と、を備える。コントローラ20は、車輪速NdとCVT13の変速比とに基づき換算プライマリ回転速度Np*を演算し、実プライマリ回転速度Npaを換算プライマリ回転速度Np*に近づけるようにMG4のトルクを制御する。【選択図】図1
Description
本発明は、ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法に関する。
特許文献1には、ベルト式無段変速機の変速機入力軸にモータジェネレータが接続されたパワートレーンが開示されている。
無段変速機構を備えるハイブリッド車両では、低μ路などで減速時に駆動輪がロックし、それまで回転駆動していたエンジンやトルクコンバータの慣性力が無段変速機構のプライマリプーリにかかることがある。結果、プライマリプーリとセカンダリプーリとで無段変速機構の変速比に応じた差回転よりも大きな差回転が生じることにより、無段変速機構で滑りが発生し得る。
このような事態を防止するには、無段変速機構における滑りの発生を抑制すべく、減速時に無段変速機構の制御油圧を高く維持することが考えられる。しかしながらこの場合は、制御油圧を高く維持しなければならない分、オイルポンプの仕事が増加することなどにより、燃費に不利となる虞がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、無段変速機構における滑りの発生を抑制しつつ燃費を改善することを目的とする。
本発明のある態様のハイブリッド車両は、エンジンと、前記エンジンから動力が伝達される無段変速機構と、前記無段変速機構のプライマリプーリの軸に接続されるモータと、前記モータを制御する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、前記制御部は、前記無段変速機構のセカンダリプーリの回転速度情報と前記無段変速機構の変速比とに基づき、前記セカンダリプーリの回転速度情報を前記プライマリプーリの回転速度に換算して得られる換算回転速度であって前記無段変速機構に滑りがないときの換算回転速度である換算プライマリ回転速度を演算し、前記プライマリプーリの実回転速度である実プライマリ回転速度を前記換算プライマリ回転速度に近づけるように前記モータのトルクを制御するトルク制御を行う。
本発明の別の態様によれば、上記態様のハイブリッド車両に対応するハイブリッド車両の制御方法が提供される。
これらの態様によれば、駆動輪がロックし始めても、実プライマリ回転速度を換算プライマリ回転速度に近づけるようにモータのトルクを制御することにより、プライマリプーリとセカンダリプーリとの差回転を無段変速機構の変速比に応じた差回転、つまり本来の差回転に近づけることができる。このため、減速時に無段変速機構の制御油圧を高く維持しなくても、無段変速機構における滑りを抑制でき、同時に燃費も改善される。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両100(以下、「車両100」という。)の概略構成図である。車両100は、第1バッテリとしての低電圧バッテリ1と、第2バッテリとしての高電圧バッテリ2と、走行用駆動源としてのエンジン3及びモータジェネレータ4(以下、「MG4」という。)と、エンジン3の始動に用いられる第1回転電機としてのスタータモータ5(以下、「SM5」という。)と、発電とエンジン3のアシスト及び始動とに用いられる第2回転電機としてのスタータジェネレータ6(以下、「SG6」という。)と、DC−DCコンバータ7と、インバータ8と、油圧発生源としてのメカオイルポンプ9及び電動オイルポンプ10と、変速機を構成するトルクコンバータ11、前後進切替機構12及び無段変速機構13(以下、「CVT13」という。)と、ディファレンシャル機構14と、駆動輪18と、コントローラ20とを備える。
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両100(以下、「車両100」という。)の概略構成図である。車両100は、第1バッテリとしての低電圧バッテリ1と、第2バッテリとしての高電圧バッテリ2と、走行用駆動源としてのエンジン3及びモータジェネレータ4(以下、「MG4」という。)と、エンジン3の始動に用いられる第1回転電機としてのスタータモータ5(以下、「SM5」という。)と、発電とエンジン3のアシスト及び始動とに用いられる第2回転電機としてのスタータジェネレータ6(以下、「SG6」という。)と、DC−DCコンバータ7と、インバータ8と、油圧発生源としてのメカオイルポンプ9及び電動オイルポンプ10と、変速機を構成するトルクコンバータ11、前後進切替機構12及び無段変速機構13(以下、「CVT13」という。)と、ディファレンシャル機構14と、駆動輪18と、コントローラ20とを備える。
低電圧バッテリ1は、出力電圧がDC12Vの鉛酸バッテリである。低電圧バッテリ1は、SM5、12Vで動作する電装品15(自動運転用カメラ15a及びセンサ15b、ナビゲーションシステム15c、オーディオ15d、エアコン用ブロア15e等)とともに低電圧回路16に接続される。低電圧バッテリ1は出力電圧が12Vのリチウムイオン電池であってもよい。
高電圧バッテリ2は、低電圧バッテリ1よりも出力電圧が高いDC48Vのリチウムイオンバッテリである。高電圧バッテリ2の出力電圧はこれよりも低くても高くてもよく、例えば30Vや100Vであってもよい。高電圧バッテリ2は、MG4、SG6、インバータ8、電動オイルポンプ10等とともに高電圧回路17に接続される。
低電圧回路16と高電圧回路17とは、DC−DCコンバータ7を介して接続される。DC−DCコンバータ7は、低電圧回路16の12Vを48Vに昇圧して高電圧回路17に48Vを出力する昇圧機能と高電圧回路17の48Vを12Vに降圧して低電圧回路16に12Vを出力する降圧機能とを有している。これにより、DC−DCコンバータ7は、エンジン3が運転中か停止中かに関わらず、低電圧回路16に12Vの電圧を出力することができる。また、高電圧バッテリ2の残容量が少なくなった場合は低電圧回路16の12Vを48Vに昇圧して高電圧回路17に出力し、高電圧バッテリ2を充電することができる。
エンジン3は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、コントローラ20からの指令に基づいて回転速度、トルク等が制御される。
トルクコンバータ11は、エンジン3と前後進切替機構12との間の動力伝達経路上に設けられ、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ11は、車両100が所定のロックアップ車速以上で走行している場合にロックアップクラッチ11aを締結することで、エンジン3からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
前後進切替機構12は、トルクコンバータ11とCVT13との間の動力伝達経路上に設けられ、遊星歯車機構12aと、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cで構成される。前進クラッチ12bが締結され後退ブレーキ12cが解放されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、回転方向を維持したまま前後進切替機構12からCVT13に出力される。逆に、前進クラッチ12bが解放され後退ブレーキ12cが締結されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、減速かつ回転方向を反転されて前後進切替機構12からCVT13に出力される。前後進切替機構12で必要とされる油圧は、メカオイルポンプ9又は電動オイルポンプ10が発生した油圧を元圧として図示しない油圧回路によって生成される。
CVT13は、前後進切替機構12とディファレンシャル機構14との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセルペダルの操作量であるアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。CVT13は、プライマリプーリ13aと、セカンダリプーリ13bと、両プーリに巻き掛けられたベルト13cと、を備える。CVT13は、プライマリプーリ13aとセカンダリプーリ13bの溝幅を油圧によって変更し、プーリ13a、13bとベルト13cとの接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更することができる。CVT13で必要とされる油圧は、メカオイルポンプ9又は電動オイルポンプ10が発生した油圧を元圧として図示しない油圧回路によって生成される。
MG4は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型回転電機である。MG4は、MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットとの間に巻きつけられるチェーン21を介してプライマリプーリ13aの軸に接続される。
MG4は、エンジン3と駆動輪18とを結ぶ動力伝達経路にセカンダリプーリ13bよりもエンジン3側で分岐接続される。また、MG4は、当該動力伝達経路のエンジン3及びプライマリプーリ13a間に設けられたクラッチを含む前後進切替機構12よりも駆動輪18側で当該動力伝達経路に分岐接続される。ベルト13cを間に挟んでエンジン3とは反対側からプライマリプーリ13aの軸に接続されることは、当該動力伝達経路に分岐接続されることに含まれる。
MG4は、コントローラ20からの指令に基づいてインバータ8により作り出された三相交流を印加することにより制御される。MG4は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作する。また、MG4は、ロータがエンジン3や駆動輪18から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、高電圧バッテリ2を充電することができる。
MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットは、後者の歯数が多くなるように構成され(例えば、歯数=1:3)、MG3の出力回転が減速してプライマリプーリ13aに伝達されるようにする。これにより、MG4に要求されるトルクを下げてMG4を小型化し、MG4の配置自由度を向上させる。なお、チェーン21に代えてギヤ列を用いてもよい。
SM5は、直流モータであり、エンジン3のフライホイール3aの外周ギヤ3bにピニオンギヤ5aを噛み合わせ可能に配置される。エンジン3を冷機状態から初めて始動(以下、「初回始動」という。)する場合は、低電圧バッテリ1からSM5に電力が供給され、ピニオンギヤ5aが外周ギヤ3bに噛み合わされ、フライホイール3a、さらにはクランク軸が回転される。エンジン3を初回始動するときにSM5を用いるのは、低電圧バッテリ1が鉛酸バッテリであるので、極低温時であっても低電圧バッテリ1からSM5に電力を安定して供給することができ、エンジン3を初回始動するのに必要なトルク、出力をSM5によって発生できるからである。
なお、エンジン3を始動するのに必要なトルク、出力は、初回始動時が一番大きく、暖機状態からの始動、すなわち、再始動時は初回始動時よりも小さくなる。これは、初回始動時はエンジンオイルの温度が低く、エンジンオイルの粘度が高いのに対し、初回起動後はエンジンオイルの温度が上昇し、エンジンオイルの粘度が低下するためである。
SG6は、同期型回転電機であり、Vベルト22を介してエンジン3のクランク軸に接続され、エンジン3から回転エネルギーを受ける場合には発電機として機能する。このようにして発電された電力は、インバータ8を通じて高電圧バッテリ2に充電される。また、SG6は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、エンジン3の駆動力をアシストする。さらに、SG6は、アイドリングストップ状態からエンジン3を再始動するときに、エンジン3のクランク軸を回転駆動してエンジン3を再始動するために用いられる。
メカオイルポンプ9は、エンジン3の回転がチェーン23を介して伝達されることによって動作するオイルポンプである。メカオイルポンプ9は、オイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。
電動オイルポンプ10は、高電圧バッテリ2から供給される電力によって動作するオイルポンプである。電動オイルポンプ10は、EVモード、アイドルストップ状態等、エンジン3が停止しておりエンジン3でメカオイルポンプ9を駆動できない場合に動作し、メカオイルポンプ9と同様にオイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。特に、CVT13で必要な油圧を確保することで、ベルト13cの滑りを抑制する。
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ20は、制御部に対応し、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで、エンジン3、インバータ8(MG4、SG6、電動オイルポンプ10)、DC−DCコンバータ7、SM5、ロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12、CVT13等を統合的に制御する。
コントローラ20は、車両100の運転モードとして、高電圧バッテリ2から供給される電力によってMG4を駆動し、MG4のみの駆動力によって走行するEVモードと、エンジン3のみの駆動力によって走行するエンジン走行モードと、エンジン3の駆動力とMG4の駆動力によって走行するHEVモードと、を切り換える。
EVモードでは、車両100は、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cを解放した状態で、高電圧バッテリ2からの電力によってMG4のみを駆動して走行する(以下、この状態を「EV走行」という。)。EVモードは、車両100の要求出力が低い時であって、高電圧バッテリ2の残容量が充分にあるときに選択される。
エンジン走行モードでは、車両100は、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cのいずれかを締結した状態で、エンジン3のみを駆動して走行する。エンジン走行モードは、車両100の要求出力が比較的高い時に選択される。
HEVモードでは、車両100は、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cのいずれかを締結した状態で、エンジン3とMG4とを駆動して走行する。HEVモードは、車両100の要求出力が高い時、具体的には、車両100の要求出力がエンジン3による出力のみでは補えないときに選択される。
コントローラ20は、アクセル開度と、ブレーキペダルの踏力と、車速に基づき、図示しない走行モード選択マップを参酌して走行モードを選択し、選択された走行モードが実現されるようエンジン3及びMG4を駆動する。
ところで、CVT13を備える車両100では、低μ路などで減速時に駆動輪18がロックし、それまで回転駆動していたエンジン3やトルクコンバータ11の慣性力がプライマリプーリ13aにかかることがある。結果、プライマリプーリ13aとセカンダリプーリ13bとでCVT3の変速比に応じた差回転よりも大きな差回転が生じることにより、CVT13でベルト13cの滑りが発生し得る。このような事態は、エンジン走行モードやHEVモードでの走行中に発生することがある。
このような事態を防止するには、CVT13におけるベルト13cの滑りの発生を抑制すべく、減速時にCVT13の制御油圧を高く維持することが考えられる。しかしながらこの場合は、制御油圧を高く維持しなければならない分、メカオイルポンプ9の仕事が増加することなどにより、燃費に不利となることが懸念される。
このような事情に鑑み、本実施形態では、コントローラ20が次に説明する制御を実行する。
図2は、コントローラ20が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。コントローラ20は、本フローチャートの処理を実行するように構成されることで、制御部を有した構成とされる。
ステップS11で、コントローラ20は、車輪速Ndを読み込む。車輪速Ndは、駆動輪18の回転速度であり、セカンダリプーリ13bの回転速度を指標するパラメータとして用いられる。車輪速Ndは、セカンダリプーリ13bの回転速度情報の一例であり、セカンダリプーリ13bの回転速度情報は、セカンダリプーリ13bそのものの回転速度Ns、及びセカンダリプーリ13bの回転速度Nsを指標可能なパラメータを含む。従って、セカンダリプーリ13bの回転速度情報は、セカンダリプーリ13bから駆動輪18までの動力伝達経路で得られる回転速度を含む。車輪速Ndや回転速度Nsは、回転速度センサにより検出することができる。
ステップS12で、コントローラ20は、換算プライマリ回転速度Np*を算出する。換算プライマリ回転速度Np*は、車速をプライマリプーリ13aの回転速度Npに換算して得られる換算回転速度であってCVT13にベルト13cの滑りがないときの換算回転速度である。
このため、換算プライマリ回転速度Np*は、車輪速Ndと、プライマリプーリ13aと駆動輪18とを結ぶ動力伝達経路に設定された速度比であってCVT13の変速比を含む速度比とに基づき演算される。換算プライマリ回転速度Np*を算出するにあたっては、駆動輪18及びセカンダリプーリ13b間で動力を伝達するドライブシャフトやディファレンシャル機構14の時定数遅れを補正により考慮することができる。
ステップS13で、コントローラ20は、実プライマリ回転速度Npaを読み込む。実プライマリ回転速度Npaは、回転速度センサにより検出することができる。
ステップS14で、コントローラ20は、差分ΔNを算出する。差分ΔNは、実プライマリ回転速度Npaと換算プライマリ回転速度Np*との差分であり、本実施形態では実プライマリ回転速度Npaから換算プライマリ回転速度Np*を減算することにより算出される。
ステップS15で、コントローラ20は、差分ΔNの大きさつまり絶対値が、所定値αよりも小さいか否かを判定する。所定値αは、駆動輪18がロックし始めたことを判定するための判定値であり、駆動輪18がロックするときには、車輪速Ndが急激に低下し始める結果、差分ΔNの大きさが大きくなる。
ステップS15で肯定判定であれば、駆動輪18はロックしないと判定され、処理はステップS16に進む。この場合、コントローラ20は、MG4の減速トルク指令値T*の決定方法を維持する。換言すればこの場合、減速トルク指令値T*は通常通りに決定され、差分ΔNの大きさに応じて決定されない。減速トルクは、換言すれば回生トルクであり、減速トルク指令値T*とともに負の値とされる。ステップS16の後には、処理はステップS11に戻る。
ステップS15で否定判定であれば、駆動輪18がロックし始めたと判定され、処理はステップS17に進む。この場合、コントローラ20は、差分ΔNの大きさに応じてMG4の減速トルク指令値T*を決定する。コントローラ20は例えば、次に説明するように減速トルク指令値T*を決定する。
すなわち、コントローラ20は、差分ΔNの大きさに応じて減速トルク指令値T*を予め設定したマップデータを有している。減速トルク指令値T*のマップデータでは、減速トルク指令値T*の大きさは、差分ΔNの大きさが所定値αより小さい場合、つまり駆動輪18がロックしない場合よりも大きく設定される。減速トルク指令値T*のマップデータではさらに、減速トルク指令値T*の大きさは、差分ΔNの大きさが大きいほど大きく設定される。
このため、ステップS17で、コントローラ20は、減速トルク指令値T*のマップデータを参照し、算出した差分ΔNの大きさに対応する減速トルク指令値T*を読み込むことにより、減速トルク指令値T*を決定する。これにより、減速トルクが決定される。
コントローラ20は、このように減速トルクを決定することにより、駆動輪18がロックしない場合よりも減速トルクの大きさを増加させる。これにより、駆動輪18がロックしない場合よりもMG4の回生駆動力が大きくなり、プライマリプーリ13aを回転させ続けようとする慣性エネルギーが吸収される。結果、プライマリプーリ13aの回転速度Npが低下し、セカンダリプーリ13bの回転速度Nsに近づく。
つまり、ステップS17では、このように減速トルクを決定することにより、実プライマリ回転速度Npaを換算プライマリ回転速度Np*に近づけるようにMG4のトルクを制御するトルク制御(以下、所定のトルク制御と称す)が行われる。
所定のトルク制御により、減速時に制御油圧を高く維持しなくてもCVT13におけるベルト13cの滑りが抑制される。また、減速時に制御油圧を高く維持する必要がない分、メカオイルポンプ9の仕事が減少し燃費も改善される。燃費の改善は、電動オイルポンプ10の必要油圧の低下や、回生時の走行抵抗の減少や、回生エネルギーの増加によっても図られる。
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
車両100は、エンジン3と、エンジン3から動力が伝達されるCVT13と、CVT13のプライマリプーリ13aの軸に接続されるMG4と、MG4を制御するコントローラ20と、を備える。コントローラ20は、車輪速NdとCVT13の変速比とに基づき換算プライマリ回転速度Np*を演算し、上述した所定のトルク制御を行う。
このような構成によれば、駆動輪18がロックし始めても、実プライマリ回転速度Npaを換算プライマリ回転速度Np*に近づけるようにMG4のトルクを制御することにより、プライマリプーリ13aとセカンダリプーリ13bとの差回転をCVT13の変速比に応じた差回転、つまり本来の差回転に近づけることができる。このため、減速時にCVT13の制御油圧を高く維持しなくても、CVT13におけるベルト13cの滑りを抑制でき、同時に燃費も改善される(請求項1、6に対応する効果)。
コントローラ20は、差分ΔNの大きさに応じてMG4の減速トルクを決定することにより、所定のトルク制御を行う。
このような構成によれば、駆動輪18のロックの度合いに応じて、MG4の減速トルクの大きさを適切に設定することができるので、ベルト13cの滑りを効果的に抑制できる(請求項2に対応する効果)。
コントローラ20は、実プライマリ回転速度Npaと換算プライマリ回転速度Np*との差分ΔNの大きさが所定値α以上の場合に、所定のトルク制御を行う。
このような構成によれば、駆動輪18がロックし始めたときに所定のトルク制御を開始することができるので、ベルト13cの滑りを効果的に抑制できる(請求項3に対応する効果)。
(第2実施形態)
本実施形態では、コントローラ20が、図2を用いて前述した制御の代わりに、次に説明する制御を行うように構成される。この点以外、車両100は、第1実施形態と同様に構成される。
本実施形態では、コントローラ20が、図2を用いて前述した制御の代わりに、次に説明する制御を行うように構成される。この点以外、車両100は、第1実施形態と同様に構成される。
図3は、第2実施形態にかかる制御の一例をフローチャートで示す図である。ステップS21、ステップS22、ステップS25の処理は、前述したステップS11、ステップS12、ステップS16の処理と同じである。このため、ここでは主にこれら以外の処理について説明する。
ステップS23で、コントローラ20は、時間変化量ΔNp*を算出する。時間変化量ΔNp*は、換算プライマリ回転速度Np*の時間変化量であり、換算プライマリ回転速度Np*を時間で微分することにより算出される。
ステップS24で、コントローラ20は、時間変化量ΔNp*の大きさが所定量βよりも小さいか否かを判定する。所定量βは、所定値αと同様、駆動輪18がロックし始めたことを判定するための判定値であり、駆動輪18がロックするときには、車輪速Ndが急激に低下し始める結果、時間変化量ΔNp*の大きさが大幅に大きくなる。
ステップS24で肯定判定であれば、駆動輪18はロックしないと判定され、処理はステップS25に進む。
ステップS24で否定判定であれば、駆動輪18がロックし始めたと判定され、処理はステップS26に進む。この場合、コントローラ20は、時間変化量ΔNp*の大きさに応じてMG4の減速トルク指令値T*を決定する。
本実施形態では、コントローラ20は、差分ΔNの大きさの代わりに時間変化量ΔNp*の大きさに応じて、減速トルク指令値T*を予め設定したマップデータを有している。当該マップデータでは、減速トルク指令値T*の大きさは、時間変化量ΔNp*の大きさが所定量βより小さい場合、つまり駆動輪18がロックしない場合よりも大きく設定される。当該マップデータではさらに、減速トルク指令値T*の大きさは、時間変化量ΔNp*の大きさが大きいほど大きく設定される。
このため、ステップS26で、コントローラ20は、第1実施形態の場合と同様にして減速トルク指令値T*を決定することにより、減速トルクを決定する。コントローラ20は、このように減速トルクを決定することにより、駆動輪18がロックしない場合よりも減速トルクの大きさを増加させる。結果、プライマリプーリ13aの回転速度Npが低下し、セカンダリプーリ13bの回転速度Nsに近づく。
時間変化量ΔNp*の大きさに応じた減速トルク指令値T*は、演算式により算出されてもよい。演算式は例えば、次の数1とされる。
[数1]
T*=−kΔNp*
数1において、「k」は定数である。数1からわかるように、減速トルク指令値T*は、時間変化量ΔNp*に反比例する換算式に単純化して表すことができる。
[数1]
T*=−kΔNp*
数1において、「k」は定数である。数1からわかるように、減速トルク指令値T*は、時間変化量ΔNp*に反比例する換算式に単純化して表すことができる。
本実施形態でも、以上のようにして減速トルクを決定することにより、所定のトルク制御が行われる。ステップS26の後には、処理はステップS21に戻る。
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
本実施形態では、コントローラ20は、時間変化量ΔNp*の大きさに応じてMG4の減速トルクを決定することにより、所定のトルク制御を行う。
このような構成でも、駆動輪18のロックの度合いに応じて、MG4の減速トルクの大きさを適切に設定することができるので、ベルト13cの滑りを効果的に抑制できる(請求項4に対応する効果)。
本実施形態では、コントローラ20は、換算プライマリ回転速度Np*の時間変化量ΔNp*の大きさが所定量β以上の場合に、所定のトルク制御を行う。
このような構成でも、駆動輪18のロックが始まったときに所定のトルク制御を開始することができるので、ベルト13cの滑りを効果的に抑制できる(請求項5に対応する効果)。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上述した実施形態では、コントローラ20により制御部が実現される場合について説明した。しかしながら、制御部は例えば、複数のコントーラにより実現されてもよい。
1 :低電圧バッテリ
2 :高電圧バッテリ
3 :エンジン
4 :モータジェネレータ
5 :スタータモータ
6 :スタータジェネレータ
7 :DC−DCコンバータ
8 :インバータ
9 :メカオイルポンプ
10 :電動オイルポンプ
12 :前後進切替機構
13 :無段変速機構
13a :プライマリプーリ
15 :電装品
15a :カメラ
15b :センサ
16 :低電圧回路
17 :高電圧回路
18 :駆動輪
20 :コントローラ(制御部)
31 :電動モータ
100 :ハイブリッド車両
2 :高電圧バッテリ
3 :エンジン
4 :モータジェネレータ
5 :スタータモータ
6 :スタータジェネレータ
7 :DC−DCコンバータ
8 :インバータ
9 :メカオイルポンプ
10 :電動オイルポンプ
12 :前後進切替機構
13 :無段変速機構
13a :プライマリプーリ
15 :電装品
15a :カメラ
15b :センサ
16 :低電圧回路
17 :高電圧回路
18 :駆動輪
20 :コントローラ(制御部)
31 :電動モータ
100 :ハイブリッド車両
Claims (6)
- エンジンと、
前記エンジンから動力が伝達される無段変速機構と、
前記無段変速機構のプライマリプーリの軸に接続されるモータと、
前記モータを制御する制御部と、
を備えるハイブリッド車両であって、
前記制御部は、
前記無段変速機構のセカンダリプーリの回転速度情報と前記無段変速機構の変速比とに基づき、前記セカンダリプーリの回転速度情報を前記プライマリプーリの回転速度に換算して得られる換算回転速度であって前記無段変速機構に滑りがないときの換算回転速度である換算プライマリ回転速度を演算し、
前記プライマリプーリの実回転速度である実プライマリ回転速度を前記換算プライマリ回転速度に近づけるように前記モータのトルクを制御するトルク制御を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両。 - 請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記実プライマリ回転速度と前記換算プライマリ回転速度との差分の大きさに応じて前記モータの減速トルクを決定することにより、前記トルク制御を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両。 - 請求項1又は2に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記実プライマリ回転速度と前記換算プライマリ回転速度との差分の大きさが所定値以上の場合に、前記トルク制御を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両。 - 請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記換算プライマリ回転速度の時間変化量の大きさに応じて前記モータの減速トルクを決定することにより、前記トルク制御を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両。 - 請求項1又は4に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、前記換算プライマリ回転速度の時間変化量の大きさが所定量以上の場合に、前記トルク制御を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両。 - エンジンと、前記エンジンから動力が伝達される無段変速機構と、前記無段変速機構のプライマリプーリの軸に接続されるモータとを備えるハイブリッド車両の制御方法であって、
前記無段変速機構のセカンダリプーリの回転速度情報と前記無段変速機構の変速比とに基づき、前記セカンダリプーリの回転速度情報を前記プライマリプーリの回転速度に換算して得られる換算回転速度であって前記無段変速機構に滑りがないときの換算回転速度である換算プライマリ回転速度を演算することと、
前記プライマリプーリの実回転速度である実プライマリ回転速度を前記換算プライマリ回転速度に近づけるように前記モータのトルクを制御するトルク制御を行うことと、
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019115707A JP2021000922A (ja) | 2019-06-21 | 2019-06-21 | ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019115707A JP2021000922A (ja) | 2019-06-21 | 2019-06-21 | ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021000922A true JP2021000922A (ja) | 2021-01-07 |
Family
ID=73994666
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019115707A Pending JP2021000922A (ja) | 2019-06-21 | 2019-06-21 | ハイブリッド車両及びハイブリッド車両の制御方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021000922A (ja) |
-
2019
- 2019-06-21 JP JP2019115707A patent/JP2021000922A/ja active Pending
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