以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
以下説明する実施の形態は、本発明の第1の態様と本発明の第2の態様の両構成を併せ持つものである。
図1は、本発明の一例である実施の形態にかかるロボットハンド1の斜視図であり、図2は、ロボットハンド1の上面図である。また、図3は、ロボットハンド1の縦断面図であり、図2におけるA−A断面図である。
なお、本実施の形態の説明において、上下、あるいは、上方、下方と云う時は、図1における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
ロボットハンド1は、3つの指部10a,10b,10c(第1指部10a、第2指部10b、第3指部10c)と、これら指部10a,10b,10cを支持する支持部20と、指部10a,10b,10cを駆動する第1駆動部30及び第2駆動部40と、を備えて概略構成されている。
支持部20は、ケーシング50に固定された支持台21と、支持台21に回転可能に固定されるともに、当該支持台21から垂直に立ち上がるシャフト22と、シャフト22が嵌挿され、3つの指部10a,10b,10cの基端部が接続される支持環23とを有する。
指部10a,10b,10cは、支持部20から上方(突出方向X)に突出しており、その先端には、対象物を主として把持するための先端部11a,11b,11cが設けられている。この突出方向Xは、シャフト22の軸(中心軸O)と平行である。なお、指部10a,10b,10cのそれぞれが突出する方向は、突出方向Xに対して角度を有して、例えば上方に向けて広がっていたり窄まっていたりしてもよく、複数の指部が突出する方向の平均(ベクトルで説明すれば、突出方向への3つのベクトルの和となる方向)が突出方向Xと一致していればよい。即ち、本発明において、複数の指部の突出方向とは、指部が突出する方向の平均(ベクトルの和)を意味するものとする。
第1駆動部30は、ケーシング50に固定された第1モータ31と、シャフト22の下端に取り付けられたプーリ32と、第1モータ31の回転駆動力をプーリ32に伝えるために両者間に架け渡された無端ベルト33と、を有する。
シャフト22の外周には、ボールねじを構成するネジ溝(不図示)が形成されており、支持環23の内周に設けられた内ネジ状のネジ溝(不図示)と螺合している。支持環23は、シャフト22を軸とする回転方向の動きが規制されており、シャフト22が回転すると上下方向(シャフト22の軸方向)に動くようになっている。
支持環23の上下動は、指部10a,10b,10cの基端部の上下動となり、指部10a,10b,10cのリンク構造から、指部10a,10b,10cの先端部11a,11b,11cの水平方向への移動に変換され、先端部11a,11b,11cが、図2における、中心点Cに向かう方向(矢印D1方向、閉方向)、あるいは、中心点Cから遠ざかる方向(矢印D2方向、開方向)に移動する。すなわち、指部10a,10b,10cの開閉動作を第1駆動部30が担っている。なお、先端部11a,11b,11cの水平方向への移動に変換する構成やその動きについては、後に詳述する。
3つの指部10a,10b,10cの開閉動作に伴う全開状態および全閉状態において、それぞれの先端部11a,11b,11cの位置は、図2に示す平面視で中心軸Oを中心とした同心円上に位置している。また、3つの指部10a,10b,10cのうち、第1指部10aは、中心軸Oを中心とする周方向には移動せず固定されており、第2指部10bおよび第3指部10cは、第2駆動部40によって、中心軸Oを中心とする周方向に回動可能に設けられている。即ち、第2指部10bおよび第3指部10cは、本発明に云う「回動指部」に相当する。
図2において、先端部11a,11b,11cは、120°の角度をもって等間隔(回転対称)に位置している。そして、本実施の形態においては、これら3つの先端部11a,11b,11cが、中心軸Oを中心とした同心円上に位置したまま、2つの先端部11b,11cが、互いに近づいたり遠ざかったりするように、回動可能になっている。
図4は、3つの先端部が、第1指部110aから見た中心点C1の同心円上に位置せず、回動中心も一致しない状態となっている参考例の指部を模式的に示す模式平面図である。第1指部110aは中心点C1を中心とする周方向には移動せず固定されている。また、回動可能な第2指部110bおよび第3指部110cは、それぞれ回動中心がC2及びC3となっており、相互に一致しておらず、いずれも中心点C1とも一致していない。なお、図4において、それぞれの先端部111a,111b,111cは、模式的に丸形状で示している(以降の模式平面図において同様。)。
図4に示すように、本例では、第1指部110aから見た中心点C1に対して、第2指部110bおよび第3指部110cの回動中心C2,C3は、相互に逆方向に距離d分だけずれた位置にある。
図4においては、指部が閉じる際のそれぞれの先端部111a,111b,111cの移動方向を矢印V111a,V111b,V111cで示している。これら矢印V111a,V111b,V111cは、それぞれの先端部111a,111b,111cの動きのベクトルと捉えることができる(これらベクトルを「ベクトルV111a,V111b,V111c」と表記する。)。また、先端部111a,111b,111cの移動方向の延長が、図中一点鎖線で表されている。このように、本例では、先端部111a,111b,111cの動きのベクトルV111a,V111b,V111cが、1つの中心点に向かっておらず、先端部111aと先端部111b,111cとで、把持しようとする対象物に対する把持力が有効に生かされていない状態になっていることがわかる。
即ち、把持しようとする対象物に対して、先端部111a,111b,111cがずれた方向からアクセスしているため、把持力が有効には生かされていない。また、把持しようとする対象物に、3つの先端部111a,111b,111cのうちのいずれかが最初に接触した際には、その接触した先端部のベクトルの方向に当該対象物が移動してしまい、特に先端部111b,111cのいずれかが最初に接触した場合には、把持の中心位置となるべき中心点C1からずれた方向に前記対象物が移動してしまう。そのため、把持がより困難になったり、把持力がより作用しづらくなり、把持の安定性が低下したりしてしまう。
第2指部110bおよび第3指部110cを回動中心C2,C3を軸として回動させた場合にも、ベクトルV111a,V111b,V111cが、1つの中心点で交差する状態以外では、上記の如きずれが生じたままであり把持力や把持の安定性の低下は避けられない。特に、先端部111bと先端部111cとの間の距離が近くなる(ベクトルV111aとベクトルV111cとの成す角が小さくなる)方向へ、第2指部110bおよび第3指部110cが回動して行くと、上記の如きずれによる影響がより顕著となってくる。
この先端部のベクトルの方向のずれによる把持力や把持の安定性の低下は、中心点C1と回動中心C2,C3との間の距離dが大きいほど顕著となる。これは逆に、このdの値が小さいほど把持力や把持の安定性が向上することを意味する。本実施の形態では、この距離dがゼロになっている、即ち、中心点C1と回動中心C2,C3とが全て一致している。
図5に、本実施の形態の指部を模式的に表す模式平面図を示す。図5に示されるように、本実施の形態では、3つの指部10a,10b,10cが閉じる際の先端部11a,11b,11cの動きのベクトルV11a,V11b,V11cが、1つの中心点Cに向かっている。また、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cは、中心点Cを通る突出方向Xの線を中心軸Oとして回動可能となっている。そのため、第2指部10bおよび第3指部10cが回動してどの位置にあったとしても、指部10a,10b,10cが閉じる際の先端部11a,11b,11cの動きのベクトルV11a,V11b,V11cが、1つの中心点Cに向かっている。
そのため、本実施の形態の態様によれば、先端部11a,11b,11cが全て中心軸Oに向かって動くため、中心軸O近傍に位置する対象物に対して、把持力が有効に生かされる。また、把持しようとする対象物に、3つの先端部11a,11b,11cのうちのいずれかが最初に接触した際にも、その接触した先端部のベクトルの方向に当該対象物が移動しても、それは、把持の中心位置となるべき中心点Cに向かって前記対象物が移動することになり、把持力が有効に作用するとともに、把持の安定性が高い。特に、サイズの小さな対象物を把持しようとする場合に、取りこぼすことなく把持することも可能である。
図6は、本実施の形態の指部において、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cが回動して近づいた状態を模式的に表す模式平面図である。図6に示される通り、第2指部10bおよび第3指部10cが回動して近づいても、勿論、指部10a,10b,10cが閉じる際の先端部11a,11b,11cの動きのベクトルV11a,V11b,V11cは、1つの中心点Cに向かい、中心軸O近傍に位置する対象物に対して、把持力が有効に作用する。
また、把持しようとする対象物の形状が長尺状や直方体形状等の場合には、相互に平行な位置関係にある外表面を挟み込む際に、先端部11aの動きのベクトルV11aと、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cとが対向状態に近いため、把持力の無駄が少なく、有効に把持することができる。
一方、図7は、本実施の形態の指部において、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cが回動して遠ざかった状態を模式的に表す模式平面図である。図7に示される通り、第2指部10bおよび第3指部10cが回動して遠ざかっても、勿論、指部10a,10b,10cが閉じる際の先端部11a,11b,11cの動きのベクトルV11a,V11b,V11cは、1つの中心点Cに向かい、中心軸O近傍に位置する対象物に対して、把持力が有効に作用する。
また、例えば、長尺物の端部を把持しようとする場合(この場合に当該対象物を本実施の形態のロボットハンド1で把持するに際しては、対象物の端部を先端部11aに当接させ、対象物の長手方向が第2指部10bおよび第3指部10cの間に位置するようにさせた上で、端部周辺の側面を先端部11b,11cに当接させることで把持させればよい。)等、把持しようとする対象物の形状によっては、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cが角度を有していた方がよい場合もあり、そのような対象物の場合に、把持力の無駄が少なく、有効に把持することができる。
本実施の形態において、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cの回動方向は、相互に逆方向となるようになっている。そのため、第2指部10bと第3指部10cとの間の距離を、把持する対象物の大きさや形状に応じた位置に、素早く調整することができる。
また、図5に示す通り、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cの先端部11b,11cの対応箇所(図中のYb及びYc)同士を結ぶ線の中心点Pと、回動方向には固定された第1指部10aの先端部11aの中心とを結ぶ線Lが、中心点Cを通るようになっている。そのため、第1指部10aに対する第2指部10bおよび第3指部10cの位置関係が対等になり、3つの指部10a,10b,10cで対象物を均等に包み込むように把持したり、第1指部10aと第2指部10bおよび第3指部10cとで挟み込むように把持したり等、いずれの位置においてもバランスよく対象物を把持することができる。
なお、本発明において、先端部(11b,11c)における「対応箇所」とは、先端部における中心位置同士、重心位置同士、中心軸Oに最も近い位置同士等、両先端部における形状としての対応する位置を指し、先端部11aの動きのベクトルV11aの延長線Lを基準として線対称となる位置に相当する。
以上の如きロボットハンド1の指部10a,10b,10cの動きを実現する、本実施の形態の具体的な装置構成について説明する。
図8は、本実施の形態にかかるロボットハンド1の縦断面図であり、図2におけるB−B断面図である。
第2駆動部40は、ケーシング50に固定された第2モータ41と、第2指部10bおよび第3指部10cを回動移動させるギアユニット42と、第2モータ41の回転を入力プーリ44に伝えるために両者間に架け渡された無端ベルト43と、ギアユニット42に回転を入力するための入力プーリ44と、を有する。ギアユニット42も、ケーシング50に固定されている。
図9は、第2駆動部40からギアユニット42のみを取り出した拡大斜視図である。また、図10は、ギアユニット42の図9におけるE−E断面図であり、図11は、ギアユニット42の歯車群のみを表した(突出方向Xから見た)上面図である。
ギアユニット42は、回転太陽歯車421と、固定太陽歯車422と、伝達歯車423と、固定内歯車424と、回転内歯車425と、第1の遊星歯車426と、第2の遊星歯車427と、を含んで構成される。これらがギアユニットケース428内に組み込まれて、一体となったギアユニット42が形成されている。
回転太陽歯車421と固定太陽歯車422は、ロボットハンド1の中心軸Oを軸とする同心上で重ねられて配置された、上面視で同一形状かつ同一個数の外歯を有する外歯車である。ただし、固定太陽歯車422が固定されて回転しないのに対して、回転太陽歯車421はこれとは独立して回転可能になっている。なお、回転太陽歯車421は、固定太陽歯車422よりも厚み(中心軸O方向高さ)が大きくなっている。
固定内歯車424と回転内歯車425は、同心上で重ねられて配置された、上面視で同一形状かつ同一個数の内歯を有する内歯車ではある。ただし、固定内歯車424が固定されて回転しないのに対して、回転内歯車425はこれとは独立して回転可能になっている。なお、回転内歯車425は、固定内歯車424よりも厚み(中心軸O方向高さ)が大きくなっている。
回転太陽歯車421は、中心軸O方向における下方(突出方向Xとは逆側。以下同様。)に位置し、その下方側の外歯が固定内歯車424の内歯と対向し、その上方(突出方向X側。以下同様。)の外歯が回転内歯車425の下方の内歯と対向している。また、回転内歯車425の上方の内歯は、固定太陽歯車422の外歯と対向している。
回転太陽歯車421と固定内歯車424との間には、第1の遊星歯車426が、両歯車とギアが噛み合った状態で介在している。また、回転太陽歯車421と回転内歯車425との間には、軸が固定されて回転可能な伝達歯車423が、両歯車と歯合しながら介在している。そして、回転内歯車425と固定太陽歯車422との間には、第2の遊星歯車427が、両歯車と歯合しながら介在している。
入力プーリ44は、シャフト22の上方で当該シャフト22と同軸に配された端部429に配されるとともに、当該軸部429を介して回転太陽歯車421に回転を入力する。ここでは、入力プーリ44から回転太陽歯車421に、矢印F方向(時計回り)の回転が入力された場合を例に挙げて説明する。なお、図11において、回転太陽歯車421は、固定太陽歯車422の陰に隠れており、その歯先のみが見えている。
回転太陽歯車421に入力された矢印F方向の回転は、第1の遊星歯車426に伝達され、第1の遊星歯車426を逆回転(反時計回り)、即ち矢印G方向に自転させる。すると、第1の遊星歯車426は、自転しながら固定内歯車424の内周を周回し、矢印H方向(時計回り)に移動(公転)する。
また、回転太陽歯車421に入力された矢印F方向の回転は、伝達歯車423にも伝達され、伝達歯車423を逆回転(反時計回り)、即ち矢印I方向に回転させる。すると、伝達歯車423は、その場で自転しながら回転内歯車425に回転を伝達し、回転内歯車425を矢印J方向(反時計回り)に回転させる。
さらに、回転内歯車425に伝達された矢印J方向の回転は、第2の遊星歯車427に伝達され、第2の遊星歯車427を同回転(反時計回り)、即ち矢印K方向に自転させる。すると、第2の遊星歯車427は、自転しながら固定太陽歯車422の外周を周回し、矢印M方向(反時計回り)に移動(公転)する。
以上のようにして、第2モータ41から、入力プーリ44を介して、回転太陽歯車421に矢印F方向(時計回り)の回転が入力されると、第1の遊星歯車426が矢印H方向(時計回り)に、第2の遊星歯車427が矢印M方向(反時計回り)に、それぞれ公転し、両歯車が互いに近づくように移動する。
それに対して、回転太陽歯車421に矢印F方向とは逆方向(反時計回り)の回転が入力された場合には、全ての歯車が、それぞれ以上説明した回転方向とは逆方向に回転する。そして、最終的に、第1の遊星歯車426が矢印M方向(反時計回り)に、第2の遊星歯車427が矢印H方向(時計回り)に、それぞれ公転し、両歯車が互いに遠ざかるように移動する。
図12に、ギアユニット42直下におけるロボットハンド1の横断面拡大図(図8におけるN−N拡大断面)を示す。
第1の遊星歯車426には、第1回動シャフト24b(図8、図11及び図12参照。図9及び図10では不図示)が、回転自在に嵌挿されて取り付けられている。第1の遊星歯車426の矢印Hあるいは矢印M方向への公転と共に第1回動シャフト24bも連れ回り、中心軸Oを軸として、回動移動する。この回動運動が、リンク部25bを介して第2指部10bへと伝達される。
リンク部25bは、シャフト22に回転自在に固定される回転リング部25b1と、中途で第1回動シャフト24bが回転自在に嵌挿され、シャフト22から離れた側の端部で第2指部10b(詳しくは、後述する指リンク部材)に接合ざれる回動リンク部25b2と、を有する。これにより、第1の遊星歯車426の公転移動が、第2指部10bの回動動作となる。
また、第2の遊星歯車427には、第2回動シャフト24c(図9〜図12参照。図8では不図示)が、回転自在に嵌挿されて取り付けられている。第2の遊星歯車427の矢印Mあるいは矢印H方向への公転と共に第2回動シャフト24cも連れ回り、中心軸Oを軸として、回動移動する。この回動運動が、後述するリンク部25cを介して第3指部10cへと伝達されて、当該第3指部10cの回動動作となる。
リンク部25cもリンク部25bと同様、回転リング部と回動リンク部25c2と、を有するが、リンク部25cの回転リング部は、回転リング部25b1と重なった状態でシャフト22に回転自在に固定されているため、図12には現れていない。リンク部25cの回転リング部は、回動リンク部25b1とは独立して、シャフト22に回転自在に固定されている。そして、リンク部25cの回転リング部は、回動リンク部25c2と一体になっており、当該回動リンク部25c2に第3指部10c(詳しくは、後述する指リンク部材)が接合されている。これにより、第2の遊星歯車427の公転移動が、第3指部10cの回動動作となる。
なお、リンク部25b及びリンク部25cの回転リング部(不図示及び25c2)は、後述する支持環23または固定環51(図25参照)の一部を構成する。支持環23または固定環51のいずれの一部であっても、回転リング部(不図示及び25c2)は、支持環23あるいは固定環51の他の部分に回転自在に接続されて構成される。したがって、回転リング部(不図示及び25c2)が支持環23の一部を構成する場合には、支持環23の上下動に伴って、回転リング部(不図示及び25c2)が上下動する。
以上、説明したように、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cは、中心軸Oを中心とする周方向に回動可能に設けられている。そのため、図6に示すように、第2指部10bおよび第3指部10cが回動して近づくことによって、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cは、先端部11aの動きのベクトルV11aの対向状態に近づけることはできる。
しかし、両指部の中心軸Oから先端部11b,11cまでの構造が単に直線状のリンク(模式図である図4〜6及び図13の指部10b,10cの状態)であると、図13に示すように干渉が生じてしまうため、対向状態(ベクトルの向きが逆の平行状態)になるまで近づけることはできない。
なお、図13は、本実施の形態の指部における中心軸Oから先端部11b,11cまでの構造を単なる直線状のリンクに置き換えた場合の、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cが回動して近づいた状態を模式的に表す模式平面図である。第2指部10bと第3指部10cとが近づきすぎると、第2指部10bおよび第3指部10cにおけるいずれかの箇所が干渉してしまい、それ以上第2指部10bと第3指部10cとを近づけることができない限界がある。
一方、図14は、図4に示す参考例の指部において、回動指部を構成する第2指部110bおよび第3指部110cの先端部111b,111cの移動方向の両ベクトルが、第1指部110aの先端部111aの移動方向のベクトルに対向するまで、第2指部110bおよび第3指部110cを近づけた状態を模式的に示す模式平面図である。
このように、第1指部110aから見た中心点C1に対して、回動指部を構成する第2指部110bおよび第3指部110cの回動中心C2,C3が、相互に逆方向にずれた状態になっているため、第2指部110bと第3指部110cとの間で干渉が生じることがない。よって、この参考例においては、図14に示されるように、第2指部110bと第3指部110cとを、先端部111aの動きのベクトルV111aと、先端部111b,111cの動きのベクトルV111b,V111cとが、対向状態(ベクトルの向きが逆の平行状態)になるまで、近づけることができることがわかる。
そこで本実施の形態においては、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cと、中心軸Oと、の間に、2本のリンク部材からなるリンク部を介在させることで、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cが、先端部11aの動きのベクトルV11aに対して対向状態となることを実現している。
図15は、本実施の形態の指部において、回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cの先端部11b,11cの移動方向の両ベクトルが、第1指部10aの先端部11aの移動方向のベクトルに対向するまで、第2指部10bおよび第3指部10cを近づけた状態を模式的に示す模式平面図である。
なお、図15においては、リンク部25bの中心点C(中心軸O)とは反対側の端部が、第2指部10bおよび第3指部10cの先端部11b,11cとは反対側の端部近傍と接続しているのであるが、模式的に途中の指リンク部等(後述する)の構成の図示を省略し、先端部11b,11cのみを図示している。また、リンク部25bと中心点C(中心軸O)との接続部に形成される、既述の回転リング部25b1の図示も省略し、既述の回動リンク部25b2,25c2(符号25c2は図12において不図示)のみリンク部25b,25cとして図示している。
図15に示されるように、本実施の形態のロボットハンド1では、一端が中心軸O(中心点C)を軸として回動可能に固定され、他端が回動指部10b(詳しくは、先端部11bとは反対側の端部近傍)と接続するリンク部25b,25cを有する。また、当該リンク部25b,25cが、その中途で、それぞれのリンク部25b,25cの既述の回動方向(矢印M及び矢印H、本発明に云う「第1の回動方向」)に沿った第2の回動(両矢印R,S)を可能とする連結部28b,28cで接続された第1のリンク部材26b,26c及び第2のリンク部材27b,27cを有する。
このように、本実施の形態では、リンク部25b,25cにおける第1のリンク部材26b,26cを第2指部10bおよび第3指部10cの間に干渉が生じない程度まで近づけるように矢印M及び矢印H方向(第1の回動方向)にそれぞれ回動させる。同時に、または、前後して、連結部28b,28cを軸として、第2のリンク部材27b,27cを矢印R及び矢印S方向の回動(第2の回動)のうちの互いに近づく方向に回動させる。
以上のようにして、本実施の形態では、第2指部10bと第3指部10cとを、先端部11aの動きのベクトルV11aと、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cとが、対向状態(ベクトルの向きが逆の平行状態)になるまで、近づけることができることがわかる。
回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cにおける以上の動きについて、本実施の形態で採用した例を、模式的に示す図16〜図22を用いて、以下に詳細に説明する。なお、以下の説明においては、第2指部10bおよび第3指部10cに共通の構成を説明するため、両者の別を識別するための末尾の符号b,cを省略する。
図16は、リンク部25の第2の回動を説明するための図であり、対象箇所のみを抜き出し、下方から見た模式平面図である。また、図17は、図16の構成を横方向から見た模式側面図である。図16及び図17に示すように、リンク部25は、一端(図12における回転リング部25b1に相当)がシャフト22に回動可能に固定された第1のリンク部材26と、当該第1のリンク部材26に、連結部28で回動可能に接続された第2のリンク部材27を有する。当該第2のリンク部材27は、指部10(正確には、先端部11とは反対側の端部近傍)と接続している。
また、第2のリンク部材27には、駆動リンク29の一端が回転自在に接続部291で接続されている。この駆動リンク29の他端は、シャフト22に接続部292で回転可能に接続されている。また、駆動リンク29の中途の接続部293から、回動シャフト24(既述の第1回動シャフト24bまたは第2回動シャフト24c)が上下方向に延伸している。この回動シャフト24は、第1の遊星歯車426あるいは第2の遊星歯車427とともに回動移動(公転)するようになっている。
図18は、リンク部25及びその周辺部のみを抜き出し、かつ、駆動リンク29を除した状態で示す模式平面図である。第1のリンク部材26には、下方に向けて突出する凸部261が設けられていて、ロックリンク52の一端に形成された長手方向に長孔状の開口522が係止されている。ロックリンク52の他端では、接続部521で、ケーシング50に対して回転自在に接続されている(不図示)。
第1のリンク部材26が矢印T方向へ回動すると、図19に示すように、凸部261がロックリンク52の長孔状の開口522の端部に達した段階で、回動が規制されるようになっている。そのため、第1のリンク部材26は、矢印T方向への第1の回動が規制される。その段階までは、第1のリンク部材26と第2のリンク部材27とが、一直線上になって第1の回動がされるようになっている。以下、これを前提に説明を進める。
なお、図19は、図18の状態から、第1のリンク部材26が矢印T方向へ回動した状態を示す模式平面図である。
図20は、リンク部25及びその周辺部のみを抜き出した模式平面図である。当該図では、駆動リンク29は現れているが、ロックリンク52は陰に隠れて、図16及び図17と同様、不図示となっている。この状態は、図16の状態から、矢印T方向への回動が進み、ロックリンク52の作用によって、第1のリンク部材26の第1の回動が規制され始めた状態を表している。
図21は、図20の状態から、第1の遊星歯車426あるいは第2の遊星歯車427、及び、回動シャフト24の回動(公転)がさらに進み、第2のリンク部材27が第2の回動をした状態を示す模式平面図である。ロックリンク52の作用により第1のリンク部材26の第1の回動が規制されても、回動シャフト24との接続点の回動はそのまま進み、連結部28を軸として、第2のリンク部材27の第2の回動を生じさせる。
本実施の形態では、以上のようにして、リンク部25における第1の回動と第2の回動を実現している。
図22は、図20に示す構成から、主としてリンク部25のみを抜き出して示す模式平面図である。
以上説明した回動を実現するために、図22に示すように、回動シャフト24の移動を許容するべく、第1のリンク部材26には、当該回動シャフト24が貫通する長孔状の開口部262が設けられている。また、第2のリンク部材27の第2の回動が所定の位置(図15に示す状態)で終了するように、駆動リンク29との接続点291が適度に移動できるように、第2のリンク部材27における接続箇所が、長孔状の開口部271となっている。
図23は、本実施の形態のロボットハンド1から指部及びその回動機構のみを抜き出した、上方から見た平面図である。また、図24は、図23に示す状態から、回動指部の先端部の移動方向の両ベクトルが、残りの指部の先端部の移動方向のベクトルに対向するまで、2つの回動指部を近づけた状態を示す平面図である。
図23及び図24において、ロックリンク52b,52cは現れているが、駆動リンク29は陰に隠れて現れていない。また、リンク部25b,25cについても、第2のリンク部材27b,27cの一部のみが現れているが、第1のリンク部材26b,26cは陰に隠れて現れていない。
図23において、第1指部10a、第2指部10bおよび第3指部10cは、中心軸Oを中心にして、相互に120°の等間隔で(回転対称に)位置している。この状態から、既述の通り、ギアユニット42における第1の遊星歯車426及び第2の遊星歯車427の動きが第1回動シャフト24b及び第2回動シャフト24cを介してリンク部25b,25cに伝えられ、第2指部10bおよび第3指部10cが矢印T方向(図15で云えば、矢印M,H方向)に移動する。
ロックリンク52b,52cが作用して、図23では不図示の第1のリンク部材26b,26cの回動が規制されるが、駆動リンク29に伝えられた第1回動シャフト24b及び第2回動シャフト24cの回動によって、図24に示すように、第2のリンク部材27b,27cの矢印U方向への回動となる。そして最終的に、図24に示すように、第2指部10bおよび第3指部10cが平行に並び、第1指部10aと完全に対向した状態となる。
図24に示す状態では、先端部11aの動きのベクトルV11aと、先端部11b,11cの動きのベクトルV11b,V11cとが、対向状態(ベクトルの向きが逆の平行状態)になっている。
次に、本実施の形態における指部の開閉動作について説明する。
本実施の形態において、3つの指部10a,10b,10cの開閉による先端部11a,11b,11cの動きは、突出方向(矢印X方向)に対して垂直方向の動きになっている。単純にリンクを繋いで指部を形成しようとすると、指部を閉じる際に、先端部が円弧を描いて突出するような軌跡を描いてしまう。この指部の先端部の動きの軌跡が、ロボットハンド1を実際に操作する際に、指部の先端部の位置を意識しながら行う必要があり、操作の困難さに繋がっていた。
本実施の形態では、支持環23(図3を参照)の上下方向(突出方向X、中心軸O)の移動を、指部10a,10b,10cの先端部11a,11b,11cの水平方向への動きに変換している。
図25は、本実施の形態における指部10a,10b,10cの構造を説明するための概略図である。図25においては、3つの指部10a,10b,10cのうち、2つが描かれているが、指部の開閉機構については、指毎の差が無いので、指の別を識別するための末尾の符号a,b,cを省略する。したがって、図25による説明は、指部毎の相違に触れた記載を除き、3つの指部10a,10b,10cに共通するものである。
指部10は、第1指リンク部12と、第1補助指リンク部13と、第2指リンク部14と、第2補助指リンク部15と、第3指リンク部16と、を含んで構成されている。なお、図25においては、先端部11a,11b,11cの図示は、省略されている。
シャフト22には、図3で説明した支持環23が上下動可能に嵌挿されている他、その上端には固定環51が位置している。当該固定環51は、シャフト22を回転可能に、ケーシング50に対して支持している。
第1指リンク部12は、その一端(指部の基端部)が支持環23の下方の接続部231に回転可能に接続され、斜め上方に延伸して、その他端が第3指リンク部16の下端の接続部161に回転可能に接続されている。また、第1補助指リンク部13は、その一端が固定環51の下方の接続部511に回転可能に接続され、斜め下方に延伸して、その他端が第1指リンク部12の長手方向の中心の接続部121に回転可能に接続されている。
なお、回動指部を構成する第2指部10b及び第3指部10cにおいては、第1指リンク部12や第1補助指リンク部13が支持環23や固定環51に直接接続されるのではなく、第2指部10b及び第3指部10cにおける既述の水平方向の回動機構の一部を担うリンク部25b,25cを介して支持環23や固定環51に接続されている。このとき、第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13のいずれか一方のみがリンク部25b,25cを介し、他方は、リンク部25b,25cによる水平方向の回動に追従可能に構成されたフリーのリンクが介在していればよい。図25においては、リンク部25b,25cの存在を省略して、指部10の開閉機構の構造に絞って説明する。
第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13の背面側には、第2指リンク部14及び第2補助指リンク部15が、やや上方であることを除き、第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13と並んで配されている。即ち、第2指リンク部14は、その一端(指部の基端部)が支持環23の上方に回転可能に接続され、斜め上方に延伸して、その他端が第3指リンク部16の下端からやや上方の位置に回転可能に接続されている。また、第2補助指リンク部15は、その一端が固定環51の上方に回転可能に接続され、斜め下方に延伸して、その他端が第2指リンク部14の長手方向の中心に回転可能に接続されている。なお、第2指部10b及び第3指部10cにおいて、リンク部25b,25c等を介することは、第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13と同様である。
第1指リンク部12と第2指リンク部14の長さは等しく、その半分の長さで、第1補助指リンク部13と第2補助指リンク部15も等しい。また、高さ方向(突出方向X)において、接続部231と接続部232との間の距離、接続部511と接続部512との間の距離、及び、接続部161と接続部162との間の距離は、全て等しくなっている。
第1モータ31によりシャフト22が回転されると、その回転方向に応じて、支持環23が上下いずれかに移動する。それに応じて、指部10の各リンクが動かされて、指部10の開閉動作に変換される。
先ず、支持環23が上方(矢印V1方向)に移動すると、支持環23と固定環51との間が近づき、第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13並びに第2指リンク部14及び第2補助指リンク部15が、水平方向に寝るように動く。すると、第1指リンク部12及び第2指リンク部14の第3指リンク部16との接続部161,162が外方に突き出されるように移動し、第3指リンク部16を水平に開く方向(矢印W1方向)に移動させる。
また、第1モータ31の回転方向を逆転させて、支持環23が下方(矢印V2方向)に移動すると、支持環23と固定環51との間が遠ざかり、第1指リンク部12及び第1補助指リンク部13並びに第2指リンク部14及び第2補助指リンク部15が、垂直方向に立つように動く。すると、第1指リンク部12及び第2指リンク部14の第3指リンク部16との接続部161,162がシャフト22側に引き寄せられるように移動し、第3指リンク部16を水平に閉じる方向(矢印W2方向)に移動させる。
本実施形態においては、以上のように、指部10が突出方向Xに突出することなく、水平方向(矢印W1,W2)に移動して、開閉動作が行われる。したがって、対象物を把持しようとする場合に、指部10の先端位置が変わることがなく、把持の操作が容易に、かつ、安全に行うことができる。
以上、本発明のロボットハンドについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のロボットハンドは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、ロボットハンド1の回動指部を構成する第2指部10bおよび第3指部10cの水平方向の回動動作を実現する機構として、遊星歯車を利用したギアユニット42による構成を例に挙げたが、第2指部10bおよび第3指部10cの水平方向の回動動作を実現することができれば、どのような機構を採用しても問題ない。
以下に、傘歯車の組み合わせを利用したギアユニットによる構成で、第2指部10bおよび第3指部10cの水平方向の回動動作を実現する変形例について説明する。
図26は、本発明を実現し得る変形例のギアユニットの歯車群及びその周辺部材を表した斜視図である。変形例のギアユニット6は、モータからの回転が入力される入力歯車61と、第1の傘歯車62と、第3の傘歯車64とが下からこの順で同一軸上に配置されている。この軸は、例えば、実施の形態のロボットハンド1に適用する場合には、中心軸Oと一致する。
なお、本図においても、図面上の上下方向をそのまま上下として以下説明するが、実際のロボットハンドに組み込んだ場合の上下関係とは全く無関係である。
第1の傘歯車62と第3の傘歯車64は、傘歯側が対向するように配される。入力歯車61と第1の傘歯車62は、筒状の中空シャフト65に固定され一緒に回る。中空シャフト65は、第3の傘歯車64の直下の位置が上端となっている。また、第3の傘歯車64は、中空シャフト65を貫通する貫通シャフト66に固定され一緒に回る。
第1の傘歯車62と第3の傘歯車64との間には、第2の傘歯車63が、回転軸を水平方向に向け、第1の傘歯車62及び第3の傘歯車64の双方とギアが噛み合った状態で配されている。そのため、第2の傘歯車63は、第1の傘歯車62と連れ回り、第3の傘歯車64にも回転を伝達するように構成されている。
中空シャフト65の上端には、第1の回動リンク部67の下足部671が中空シャフト65の周面から放射方向に延びるように固定され、第1の回動リンク部67が中空シャフト65と一緒に回る。第1の回動リンク部67は、上足部673が貫通シャフト66の上端に回転自在に接続されている。第1の回動リンク部67の下足部671と上足部673との間は、縦リンク672で繋がっており、その上下方向のやや上方には、固定部674が回転の外方向に突出するように突き出した状態で固定されている。
貫通シャフト66における第3の傘歯車64の少し上には、第2の回動リンク部68の下足部681が、また、貫通シャフト66の上端には、第2の回動リンク部68の上足部683が、それぞれ貫通シャフト66の周面から放射方向に延びるように固定されている。そのため、第2の回動リンク部68が貫通シャフト66と一緒に回る。第2の回動リンク部68の下足部681と上足部683との間は、縦リンク682で繋がっており、その上下方向の中央辺りには、固定部684が回転の外方向に突出するように突き出した状態で固定されている。固定部674と固定部684は、高さ方向の位置が同じになっている。
入力歯車61に入力された矢印Y方向の回転は、中空シャフト65を介して第1の傘歯車62及び第1の回動リンク部67に伝達され、これらも矢印Y方向に回転される。したがって、固定部674は矢印Y方向へ回動される。
第1の傘歯車62の矢印Y方向の回転は、ギアが噛み合った第2の傘歯車63に伝達され、第2の傘歯車63が矢印Q方向に回転される。
第2の傘歯車63の矢印Q方向の回転は、ギアが噛み合った第3の傘歯車64に伝達され、第3の傘歯車64が矢印Z方向に回転される。
第3の傘歯車64の矢印Z方向の回転は、貫通シャフト66を介して第2の回動リンク部68に伝達され、これも矢印Z方向に回転される。したがって、固定部684は矢印Z方向へ回動される。
以上のようにして、入力歯車61に矢印Y方向(上方から見て反時計回り)の回転が入力されると、固定部674が同じ矢印Y方向(上方から見て反時計回り)に、固定部684が矢印Z方向(上方から見て時計回り)に、それぞれ回動し、両者が互いに遠ざかるように移動する。
これに対して、入力歯車61に矢印Y方向とは逆方向(上方から見て時計回り)の回転が入力された場合には、全ての歯車が、それぞれ以上説明した回転方向とは逆方向に回転する。そして、最終的に、固定部674が矢印Y方向とは逆方向(上方から見て時計回り)に、固定部684が矢印Z方向とは逆方向(上方から見て反時計回り)に、それぞれ回動し、両者が互いに近づくように移動する。
この固定部674及び固定部684に、第2指部10bおよび第3指部10cを、リンク等を介して、あるいは介さずに接続することで、第2指部10bおよび第3指部10cの水平方向の回動動作を実現することができる。
勿論、遊星歯車や傘歯車を利用した構成以外の構成であっても構わない。
なお、上記実施の形態では、回動機構としてのギアユニット42が、第2モータ41や第2駆動部40等の駆動機構よりも上方に位置する例を挙げているが、ギアユニット42の位置としては、これら駆動機構よりも下方の位置に配しても構わない。所望の駆動機構が構成されるように設計することができれば、その配置に制限はない。ただし、本実施の形態のようにギアユニット42をこれら駆動機構よりも上方に位置するようにすることで、装置内の空間を有効に活用することができ、ロボットハンド1の装置の中心軸O方向の長さを短縮することができる点で好ましい。
また、上記実施の形態では、指部の数が3つの例を挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、2つ、あるいは、4つ以上であってもよい。いずれの場合であっても、回動指部の数は、1個以上であれば、他の指部との距離を近づけたり遠ざけたりすることができ、様々な形状の対象物に対して、把持等の作業の最適化を図ることができる。さらに、回動指部の数が3個以上であってもよく、例えば、指部が全て回動指部であっても構わない。それぞれの指部の水平方向の回動位置を適宜制御することで、様々な形状の対象物に対して、把持等の作業の最適化を図ることができる。さらにまた、本実施の形態で説明したように、相互に近づいたり遠ざかったりするように回動する一対の指部を含んでもよいし、それぞれの指部の水平方向の回動位置を自由に調整できるようにしても構わない。
ところで、図15〜図22を用いて説明した、連結部で接続された2本のリンク部材を有する本発明の第2の態様については、指部の数は1つでも構わない。指部の閉じる向きを、第1の回動のみならず第2の回動で微調整することができるので、例えば、対象物に取り付けられた環状の吊り掛け部に指部を引っ掛けて持ち上げる作業のように、指部の向きの僅かな違いにより作業性に影響が生じるような用途にロボットハンドを用いる場合であっても、容易に作業を行うことができる。
また、上記実施の形態においては、本発明の第1の態様と本発明の第2の態様の両構成を併せ持つ例を挙げて説明したが、本発明の第1の態様の構成単独でも、本発明の第2の態様の構成単独でも、それぞれの発明に基づく作用乃至効果が奏されるため、好ましい。
例えば、連結部で接続された2本のリンク部材を有しない(即ち、本発明の第2の態様に当たらない)本発明の第1の態様の構成のみであっても、図5〜図7を用いて説明したように、対象物を良好に把持することができる。
一方、例えば、回動指部の回動軸が他の指部の開閉動作の中心と一致しない(即ち、本発明の第1の態様に当たらない)、図4や図14に示すような構成の場合であっても、対象物や作業内容に応じて指部の向きを適宜微調整ができるため、作業性を向上させることができる。
勿論、本発明の第1の態様と本発明の第2の態様の両構成を併せ持つ構成であることが、より好ましい。
さらに、上記実施形態では、指部10の先端部の動きが、突出方向Xに対して垂直方向の動きとなる例を挙げて説明したが、閉じる動作の際に、指部10が円弧を描いて突出方向Xに突出するような構成であっても、本発明に特有な効果は奏される。即ち、指部の開閉動作としては、指部の突出方向(矢印X方向)と交差する方向に先端部が動く動作であればよい。勿論、指部10の先端部の動きとしては、突出方向Xに対して垂直方向の動きであることが好ましい。
また、本発明の第2の態様を実現する機構について、図16〜図22を用いて具体例を説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の第2の態様を実現することができれば、どのような機構を採用しても構わない。例えば、規制部材としてロックリンク52,52b,52cを用いた例を挙げているが、第1のリンク部材26b,26cの回動を規制できればどのような構成でもよく、リブや凸部等の形状の規制部材でも構わない。
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のロボットハンドを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。