例として上述された状況において、そして他の同様の状況において、捕食者が保護地域に侵入することを防ぐために防護ネットが設けられる。これらの防護ネットは、常に水に浸されたままであるため、耐腐食性の高い特性を有する必要がある。また、これらの防護ネットは、潜在的な獲物に到達しようとしてこれらの獲物を攻撃する捕食者からの衝突や衝撃に耐えるために、優れた強度特性も有する必要がある。
鋼線で作成されて絡み合ったループから作成された、周知の防護ネットがある。これらの周知の防護ネットは、例えば雪崩や落石の衝撃により発生した運動エネルギーを吸収するために使用されている。このタイプのネットは、欧州特許第0370945号明細書に記載されている。鋼線のループを備えているこれらのネットは、水中での使用にはあまり適していない。理由は、時間が経つにつれて、これらのネットが酸化する傾向があり、したがって衝撃に対するこれらのネットの耐性が低下する傾向があるためである。これらのネットのわずか数個のループが弱体化しても、当該ネット全体の強度が損なわれる可能性があり、したがって提供される保護が損なわれる可能性があることを考慮すると、この欠点が予想以上に深刻な結果をもたらす可能性がある。周知のネットの他の欠点は、これら周知のネットが弾性に乏しいことであり、当該弾性に乏しいことにより、これら周知のネットが、あらゆる所定の大きさの衝撃を受けた後に永久変形をしてしまう。非常に変形したネットは、その一部の領域に裂け目やより簡単な破れが生じているという大きな危険を、損傷を受けていないネットよりも冒している。
本発明の目的は従来技術の問題を解決することであり、特に、例えば酸化や激しい衝撃の繰り返しのために、望まれない裂け目が開かれることや局部的にさえ弱体化することがない、長期に亘って強度を有する防護ネットを提供することである。本発明の他の目的は、製造が容易で経済的な防護ネットを提供することである。
上述の目的を達成するため、本発明は以下の特許請求の範囲に定義されているような防護ネットに関している。
一態様によれば、お互いに通されたプラスチック材料の個々のループから形成される防護ネットが記載されている。これらのループを製造するためにプラスチック材料を使用することにより、劣化させることなく非常に長期間、この防護ネットを水に浸すことができる。このようなネットは、したがって、鋼線を備えている周知の防護ネットを使用できなかった用途には理想的である。例えば記載された防護ネットを水産養殖業で使用して、繁殖用ケージや捕食者に対する保護用の障壁を製造することができる。
このようなネットは侵入防止機能を備え、例えば水産養殖業のような、水中における使用のために主に開発される一方で、しかしながら、この使用に限定されない。実際には、このようなネットの使用が、その特徴が好ましい、または有利である他の分野にも拡張することができる。例えば本明細書に記載の防護ネットは、鋼製のループを備えた防護ネットよりもはるかに軽量であるという利点を有しており、例えば雪崩や落石に対する防護のためにも使用すると非常に有利であり、ここで、例えば鋼製のループを備えた防護ネットなどの重い防護ネットの運搬および設置は、不便であり、危険であり、または非常に困難である。
特定の態様によれば、この防護ネットのプラスチック材料は、略5000MPaから略20000MPaの間の弾性率を有している。このような防護ネットは、変形に対する優れた能力や、防護ネットの初期形状へのスプリングバックの優れた能力を示し、当該能力により、防護ネットが塑性変形の領域に入ることなく、かなりの衝撃を吸収することを可能にしている。当該防護ネットのこの弾力的な性質は、周知の鋼製ネットの弾力的な性質よりも、水産養殖業における侵入防止用防護ネットにはるかに適しており、当該周知の鋼製ネットの弾性率は、桁違いに大きいのが一般的である。この防護ネットの初期形状へのスプリングバックにより、防護ネットの一部の領域に裂け目やより簡単な破れが生成される危険性を減少させている。
他の特定の態様によれば、防護ネットのそれぞれのループは、それ自体の上に繰り返し巻き付けられたプラスチック材料の糸により形成されている。その結果、個々のループを形成するために、使用されるプラスチック材料の糸が回される(またはねじられる)回数を増減することにより、防護ネットの強度を容易に変えることができる。したがって、単一の直径を有するプラスチック糸により、異なる強度を有する防護ネットを製造することができる。このことにより、プラスチック材料の糸を製造することや得ることにおいて、良好な効率をもたらしている。さらに製造されるループの直径に応じて、これらのプラスチック糸の直径を最適化することができる。例えば、より細くてより柔軟な糸を使用して、より小さな直径のループを製造することができ、当該糸の巻き数を増やすことにより当該ループをより強くすることができ、その結果、このループの小さな寸法を補っている。それぞれのループのプラスチック材料の糸が、それ自身の上に5〜20回巻き付けられるのが好ましい。この糸は、略1.5mmから略3.0mmの間の直径を有するのが好ましい。それぞれのループは、略100mmから500mmの間の直径を有するのが好ましく、300mmから450mmの間の直径を有するのがより好ましい。これらのループの寸法は、例えば海の水産養殖業などの、侵入防止用防護ネットにおける使用に効果的であることが証明されている。
他の特定の態様によれば、それぞれのループの糸の2つの端部がクランプにより固定されている。このような方法で、所望の回数だけこの糸をそれ自体の上に巻き付けた後に、安定した強固なネットのループが簡単に製造される。お互いから間隔を介した少なくとも2つのクランプを適用するために、この糸の当該端部を、十分に長い長さに亘って並べて配置することが好ましい。このタイプの固定が特に簡単で確実である。
あるいは溶接により、例えば熱溶接により、この糸の2つの端部を固定してもよい。
他の特定の態様によれば、この防護ネットの内側のループが、他の隣接する少なくとも3つのループと絡み合っている。この内側のループが3つまたは4つの隣接するループと絡み合う構成は、特に効果的で製造が簡単であることが証明されている。
他の特定の態様によれば、この防護ネットが、お互いに同様の特性を有するループの均一なグループを備えてもよい。ループの均一なグループのそれぞれが、材料、強度または直径の点で、他のループの均一なグループとは異なる特性を有してもよい。
記載された防護ネットが、魚、軟体動物などの繁殖用の閉じられたケージを備えている水産養殖設備で使用されてもよい。侵入防止用に閉じられたケージの少なくとも一部に、記載された当該防護ネットを配置してもよい。
ここで図1を参照すると防護ネット10は、お互いに通されることができる個々のループ12から形成されている。図1の実施例において、防護ネット10の内側のループのそれぞれを、4つの隣接するループ12に通すことができる。図1に示したものとは異なる幾何学的形状を有するネットを製造するために、内側のループのそれぞれが異なる数の隣接するループ、例えば隣接する3つのループを通過して通された防護ネット10を製造することができる。防護ネット10の縁のループ12'や角のループ12”を、内側のループ12よりも少ない数の他のループに通してもよい。1つ以上の外周ロープや棒状のもの(図示せず)を縁のループ12'や角のループ12”に通してもよい。
それぞれのループ12が、プラスチック材料の糸14から形成されてもよい。プラスチック材料の糸14をそれ自体の上に繰り返し巻き付け、一定数のターン、屈曲またはねじりを形成するようにしてもよい。いくつかの用途において、それぞれのループ12、12’、12”の糸14を、それ自体の上に5回から20回の間の回数だけ巻き付けてもよい。それぞれのループのねじられる回数は、糸14の特性に応じてより少なくてもより多くてもよく、したがって、それぞれのループ12、12'、12”に与えられるべき所望の強度に応じてより少なくても多くてもよい。糸14のターン数もまた、いくつかのループにより異なってもよく、またはループのいくつかのグループにより異なってもよい。
糸14は、ポリエチレンテレフタレート(PET)または他の何らかのプラスチック材料の、糸またはモノフィラメントであってもよい。糸14が、略5000MPaから略20000MPaの弾性率を有するプラスチック材料から作成されてもよい。いくつかの用途において、糸14が230MPaの最小引張強度を有してもよい。糸14の直径が、防護ネット10に与えられる強度特性に基づいて選択されてもよい。いくつかの用途において、プラスチック材料の糸14が略1.5mmから略3.0mmの間の直径を有してもよい。限定されない一例において、糸14が3mmの公称直径を有してもよい。
それぞれのループ12、12'、12”の糸14の2つの端部16をクランプ18により固定してもよく、または同様の機能を有する固定部材により固定してもよい。特に、少なくとも2つのクランプ18を適用するために、糸14の端部16を十分に長い長さxに亘って並べて配置してもよく、当該クランプ18は、お互いから間隔を介することができることが好ましい。例えば熱溶接などの溶接を含んでいる他のシステムにより、糸14の端部16を固定してもよい。
ループ12、12'、12”を、略円形状としてもよい。防護ネット10の使用ニーズに従い、ループ12、12'、12”の直径を選択してもよい。単なる例として、水産養殖設備を保護するために使用される侵入防止用防護ネットの場合、ループ12、12'、12”が略100mmから500mmの間の直径を有してもよく、略300mmから略450mmの直径を有することが好ましい。しかしながら、示されたこれらの値と異なる直径のループを備えている防護ネットの製造は排除されない。いくつかの用途において、お互いに異なる寸法を有するループを有する防護ネット、またはお互いに異なる寸法を有するループのグループを有する防護ネットを製造してもよい。防護ネット10の使用条件を考慮するように、特に、防護ネットに対する影響をもたらす可能性があり、かつ、保護が提供されるべき最小の本体の寸法を考慮するように、ループ12、12'、12”の寸法を決定してもよい。
防護ネット10を製造するために、プラスチックの糸14をそれ自体の上に所定回数だけ繰り返し巻き付けて所定の直径のループを形成することにより、ループ12、12'、12”を形成している。糸14自体が一回転する毎に、既に形成された一定数の、例えば3つまたは4つの、隣接するループ12、12'または12”にプラスチックの糸14を通してもよい。
プラスチック材料の糸14をそれ自体の上に所定の巻き数だけ巻き付けた後、その糸14の2つの端部16が固定される。例えば、2つの端部16が並んで配置され、かつ、お互いに対して整列していてもよい。これらの2つの端部16が、お互いに固定されてもよく、および/またはループ12、12'、12”を形成する糸14の1つ以上のターンに固定されてもよい。1つ以上のクランプ18または他の同等の部材により、これらの2つの端部16を固定してもよい。それに加えて、またはその代わりに、例えば熱溶接などの溶接を含んでいる他のシステムにより糸14の端部16を固定してもよい。
この防護ネット10が、長さ方向および幅方向の両方に予め設定された数のループ12を備えている、所定の寸法のネットのパネルの形態で製造および供給できることが好ましい。1つ以上の外周ロープや棒状のもの(図示せず)により、縁のループ12'および角のループ12”を共に接続してもよい。このようにして製造された防護ネット10のパネルを、個々に使用することができ、または様々な種類の防護構造を製造するために組み立てることができる。
図4は水産養殖設備における防護ネット10の使用の、限定されない例を概略的に示している。この水産養殖設備は、プラスチック、ナイロンなどから作成された緻密な編み目の網を有して製造される、一般的に周知のタイプのケージ20を備えており、例えば魚、軟体動物、甲殻類などの水生生物の繁殖用に使用できる。弾性の高いループを有する上述されたタイプの防護ネット10が、ケージ20から所定の距離を隔てて固定されている。防護ネット10が、水産養殖業で周知のシステム、例えばアンカー(図示せず)、により適切な位置に保持される。例えば捕食者による起こり得る攻撃から保護されるべき、ケージ20の全体またはケージ20の一部のみを侵入防止機能を有して覆うように防護ネット10が拡大してもよい。捕食者により防護ネット10に衝突される場合、この防護ネット10が局所的に変形されて衝突のエネルギーを吸収するようにし、この捕食者を寄せ付けない。衝突が終了した時点で防護ネット10の高い弾性により、侵入防止のためにケージ20から十分に離れた、当該防護ネット10の変形していない状態に戻ることを可能にしている。防護ネット10は、その高い弾性のおかげで、かつ、防護ネット10が酸化を受けないプラスチック材料から作成されるという事実のおかげで、長い期間その特性を維持している。
上述された防護ネット10を使用している他の実施例が、雪崩や落石の危険に対する保護のためである。防護ネット10は、当該分野で周知の方法で、例えば地面におけるアンカーにより地面に固定される。もう一つの方法として地面に固定された杭により、防護ネット10を直立位置に保持してもよい。このタイプの使用において、近づき難い場所でも防護ネット10を容易に運搬および設置することができる。理由は、防護ネット10が鋼製の周知の防護ネットよりも軽量であるからである。
当然のことながら、これらの実施形態および実施の詳細が、本願発明の範囲内に留まる一方で、本発明の原理を害することなく、記載および図示されているものとは大きく異なってもよい。