JP2020203266A - 分離材及びカラム - Google Patents

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真裕 青嶌
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健 安江
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史彦 河内
泰史 後藤
Yasushi Goto
泰史 後藤
優 渡邊
Masaru Watanabe
優 渡邊
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Abstract

【課題】カラムに充填して用いたときの通液性に優れる分離材、及び該分離材を用いたカラムを提供すること。【解決手段】多孔質ポリマー粒子と、該多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える分離材であって、上記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーを含み、上記被覆層が、水酸基を有する多糖類又はその変性体を含み、上記分離材をpH5〜9である親水性溶媒中に分散させたときの該分離材の投影像円形度の相加平均が0.970〜0.999の範囲にある、分離材。【選択図】なし

Description

本発明は、分離材及びカラムに関する。
従来、タンパク質に代表される生体高分子を分離精製する場合、一般的には、合成高分子を母体とする多孔質粒子、又は親水性天然高分子の架橋ゲルを母体とする粒子が用いられている。多孔質の合成高分子を母体とするイオン交換体は、塩濃度による体積変化が小さく、カラムに充填しクロマトグラフィーで用いた場合、通液時の耐圧性に優れる傾向がある。
特許文献1には、超音波処理により粒子の表面に存在する被膜を除去することを含む、クロマトグラフィーカラム用担体に使用される多孔質粒子の製造方法が記載されている。
特開2009−244067号公報
しかし、従来の分離材では、カラムに充填して用いたときの通液性に更に改善の余地がある。
本発明は、カラムに充填して用いたときの通液性に優れる分離材、及び該分離材を用いたカラムを提供することを目的とする。
本発明は、下記[1]〜[6]に記載の分離材又はカラムを提供する。
[1]多孔質ポリマー粒子と、該多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える分離材であって、上記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーを含み、上記被覆層が、水酸基を有する多糖類又はその変性体を含み、上記分離材をpH5〜9である親水性溶媒中に分散させたときの該分離材の投影像円形度の相加平均が0.970〜0.999の範囲にある、分離材。
[2]上記スチレン系モノマーに由来する構造単位が、ジビニルベンゼンに由来する構造単位を含む、[1]に記載の分離材。
[3]上記多糖類がアガロース及びデキストランの少なくとも一方である、[1]又は[2]に記載の分離材。
[4]分離材の5%圧縮変形弾性率が100〜1500MPaである、[1]〜[3]のいずれかに記載の分離材。
[5]多孔質ポリマー粒子を備える分離材であって、上記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーを含み、上記分離材をpH5〜9である親水性溶媒中に分散させたときの、該分離材の投影像円形度の相加平均が0.970〜0.999の範囲にある、分離材。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の分離材を備えるカラム。
本発明によれば、カラムに充填して用いたときの通液性に優れる分離材、及び、該分離材を用いたカラムを提供することができる。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書中、「多孔質ポリマー粒子の表面」とは、多孔質ポリマー粒子の外側の表面のみでなく、多孔質ポリマー粒子の内部における細孔の表面を含むものとする。また、本明細書中(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレート等の類似の表現においても同様である。
(多孔質ポリマー粒子)
本実施形態に係る多孔質ポリマー粒子は、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含む。多孔質ポリマー粒子は、例えば、スチレン系モノマーを含むモノマー原料、多孔質化剤及び水性媒体を含む乳化液中での懸濁重合により合成することができる。多孔質ポリマー粒子の合成におけるスチレン系モノマーの使用量は、モノマーの全質量基準で、例えば40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、90質量%以上であってよい。
スチレン系モノマーは、単官能性モノマーであってもよく、多官能性モノマーであってもよい。単官能性モノマーであるスチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。これらの単官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、耐酸性、耐アルカリ性を有するスチレンを使用することが好ましい。また、カルボキシ基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。
多官能性モノマーであるスチレン系モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフェナントレン等のジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、耐久性、耐膨潤性、耐酸性、耐アルカリ性の観点から、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
ジビニルベンゼンの使用量は、モノマーの全質量基準で40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることがより更に好ましい。ジビニルベンゼンの使用量は、モノマーの全質量基準で90質量%以上であってもよい。ジビニルベンゼンの使用量が40質量%以上である場合、分離材の膨潤度を低くし、カラム圧が高くなることを抑える傾向がある。
多孔質ポリマー粒子の合成には、上述のスチレン系モノマー以外のモノマーを用いることもできる。スチレン系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、モノマーの全質量基準で5〜60質量%、10〜60質量%、30〜60質量%、又は50〜60質量%であってよい。
多孔質ポリマー粒子を合成するためには、多孔質化剤を使用することができる。多孔質化剤は、重合時に相分離を促して粒子の多孔質化を促進する成分である。多孔質化剤としては、例えば有機溶媒が挙げられる。有機溶媒である多孔質化剤としては、例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類が挙げられる。具体的には、トルエン、ジエチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、イソアミルアルコール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。多孔質化剤として水を取り込みやすい物質(例えば、アルコール類等)を使用した場合、粒子内部に大きな孔が開きやすくなるため、孔の大きさを調整する際に適量使用することが好ましい。
多孔質化剤の量は、モノマーの全質量に対して0〜200質量%であってよい。多孔質化剤の量で粒子の空孔率をコントロールすることができる。さらに、多孔質化剤の種類によって、孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
重合反応の溶媒として使用する水を多孔質化剤として機能させてもよい。多孔質化剤として水を用いる場合には、モノマーに油溶性界面活性剤を溶解させることで、モノマーの液滴が水を吸収し、粒子を多孔質化させることが可能である。
多孔質化に使用される油溶性界面活性剤としては、例えば、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸、又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のソルビタンモノエステル(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノミリステート及びヤシ脂肪酸から誘導されるソルビタンモノエステル);分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸、又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のジグリセロールモノエステル(例えば、C18:1脂肪酸のジグリセロールモノエステル等のジグリセロールモノオレエート);ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート、又はヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステル;分岐C16〜C24アルコール、鎖状不飽和C16〜C22アルコール、又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)のジグリセロールモノ脂肪族エーテル;これらの油溶性界面活性剤の混合物が挙げられる。
好ましい油溶性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(登録商標)20、好ましくは純度が約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノラウレート)、ソルビタンモノオレエート(例えば、SPAN(登録商標)80、好ましくは純度が約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノオレエート)、ジグリセロールモノオレエート(例えば、好ましくは純度が約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノオレエート)、ジグリセロールモノイソステアレート(例えば、好ましくは純度が約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノイソステアレート)、ジグリセロールモノミリステート(例えば、好ましくは純度が約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノミリステート)、ジグリセロールのココイル(例えば、ラウリル及びミリストイル)エーテル、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの油溶性界面活性剤は、モノマーの全質量に対して0〜80質量%の範囲で使用することができ、5〜80質量%の範囲で使用することが好ましい。油溶性界面活性剤の量が5質量%以上である場合、水滴の安定性が良好となり、大きな単一孔の形成が抑制される傾向がある。また、80質量%以下である場合、重合後に粒子形状を保つことが容易となる傾向がある。
また、多孔質化剤として溶解性粒子を使用してもよい。溶解性粒子とは、例えば、酸、アルカリ、溶剤等によって溶解させることが可能な粒子である。溶解性粒子の構成材料として、具体的には、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、シリカ、ポリマー、金属コロイド等を使用することができる。除去しやすさの観点から、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム等を用いることが好ましい。溶解性粒子の粒径は、0.6〜5μmであることが好ましく、粒子内の通液性を向上させる観点から、1〜5μmであることがより好ましい。
重合反応に用いられる水性媒体としては、水、又は水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中で、モノマーの重合時の分散安定性に優れる観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物などが挙げられる。重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
重合温度は、モノマー及び重合開始剤の種類に応じて適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
重合工程において、粒子の分散安定性を向上させるために、乳化液に高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、メチルセルロース、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。
高分子分散安定剤を使用する場合、高分子分散安定剤の添加量は、モノマー100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。高分子分散安定剤の添加量が適量であると、粒子の形状が安定となり、楕円形等の異形粒子の発生確率が少なくなる傾向がある。高分子分散安定剤の重量平均分子量は、例えば、1000〜100000、1500〜5000又は2000〜4000であってよい。
水中でモノマーが単独に乳化重合した粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
(分離材)
一実施形態に係る分離材は、多孔質ポリマー粒子を備える。分離材は、例えば、多孔質ポリマー粒子のみからなるものであってもよく、該多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を更に備える複合体であってもよく、後述のイオン交換体であってもよい。
(複合体)
一実施形態に係る分離材は、多孔質ポリマー粒子と、該多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える。複合体は、例えば、多孔質ポリマー粒子に、水酸基を有する多糖類又はその変性体を吸着させた後、架橋することにより、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を形成して得られる。薄膜でコーティングすることによりカラム圧の上昇を抑制することができる。
被覆層は、水酸基を有する高分子を含む。高分子は、親水性高分子が好ましく、多糖類又はその変性体がより好ましい。水酸基を有する多糖類又はその変性体を被覆層に使用することにより、タンパク質の非特異吸着をより抑制することが可能となる上、官能基を導入した際のタンパク質吸着量を天然高分子と同等以上とすることが可能となる。水酸基を有する多糖類としては、アガロース、デキストラン、セルロース、キトサン等が挙げられ、アガロース又はデキストランが好ましい。各々重量平均分子量1万〜20万程度のものが使用できる。
多糖類の変性体とは、多糖類の分子中に疎水性基が導入されたものを指す。分離材の界面吸着能を向上させる観点から、被覆層は、水酸基を有する多糖類の変性体を含むことが好ましい。疎水性基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。疎水基は、水酸基と反応する官能基(例えば、エポキシ基)及び疎水基を有する化合物(例えば、グリシジルフェニルエーテル)を、水酸基を有する親水性高分子と反応させることにより、導入することができる。
水酸基を有する高分子を多孔質ポリマー粒子にコーティングさせる方法としては、例えば、水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマー粒子表面に吸着させ、未吸着分を除去した後、架橋剤により架橋反応させて、細孔内に水酸基を有する高分子を担持させる方法がある。この方法では、まず、水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマー粒子に含浸させて吸着させる。水酸基を有する高分子の溶媒としては、水酸基を有する高分子を溶解することのできるものであれば、何でも使用できるが、通常、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20mg/mLが好ましい。含浸方法としては、水酸基を有する高分子の溶液に多孔質ポリマー粒子を加えて一定時間攪拌する方法が挙げられる。攪拌時間は、多孔質ポリマー粒子の表面状態によっても変わるが、1〜6時間含浸すれば多孔質ポリマー粒子内部の高分子濃度が外部での高分子濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の水酸基を有する高分子を除去することが好ましい。
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマー粒子の細孔内に溶液状で保持されている水酸基を有する高分子を架橋反応させて、架橋体を形成させることができる。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有するようになる。
架橋剤としては、例えば、エピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、メチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物などの、水酸基に活性な官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、原料の水酸基を有する高分子として、キトサンのようなアミノ基を有する化合物を使用する場合には、ジクロルオクタンのようなジハライドも架橋剤として使用できる。
この架橋反応には通常、触媒が用いられる。触媒の種類は架橋剤の種類により適宜選択される。例えば、架橋剤がエピクロルヒドリン等の場合には水酸化ナトリウム等のアルカリが有効であり、架橋剤がジアルデヒド化合物の場合には塩酸等の鉱酸が有効である。
架橋剤による架橋反応は、例えば、水酸基を有する高分子の溶液を細孔内に含浸させた多孔質ポリマー粒子を適当な媒体中に分散して懸濁させた系に架橋剤を添加することにより行うことができる。架橋剤の添加量は、水酸基を有する高分子として多糖類を使用した場合には、多糖類を形成する単糖類の1単位を1モルとすると、それに対して0.1〜100モル倍の範囲内で、目的とする分離材の性能に応じて選定することができる。架橋剤の添加量が上記下限値以上であると、被覆層が多孔質ポリマー粒子から剥離しにくくなる傾向がある。また、架橋剤の添加量が上記上限値以下であれば、水酸基を有する高分子と架橋剤との反応率が高い場合であっても、水酸基を有する高分子の特性が損なわれにくい傾向がある。
触媒の使用量は、架橋剤の種類により異なる。水酸基を有する高分子として多糖類を使用する場合、多糖類を形成する単糖類の1単位を1モルとすると、これに対して好ましくは0.01〜10モル倍の範囲、より好ましくは0.1〜5モル倍の範囲で触媒が使用される。
温度等の架橋反応条件を変化させることにより、架橋反応を生起させてもよい。例えば、架橋反応条件を温度条件とする場合、反応系の温度を上げ、その温度が反応温度に達することにより架橋反応を生起させることができる。
水酸基を有する高分子溶液等を含浸させた多孔質ポリマー粒子を分散して懸濁させる媒体は、含浸させた高分子溶液から高分子、架橋剤等を抽出してしまうことなく、かつ、架橋反応に不活性なものであれば制限はない。そのような媒体としては、具体的には、水、アルコール等が挙げられる。
架橋反応は、通常、5〜90℃の範囲の温度で、1〜10時間かけて行うことができる。好ましくは、30〜90℃の範囲の温度である。
架橋反応終了後、被覆層と多孔質ポリマー粒子とを備える複合体を濾別し、次いで、メタノール、エタノール等の親水性有機溶媒などで洗浄することによって、未反応の高分子及び懸濁用媒体等を除去すれば、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部に水酸基を有する高分子を含む被覆層を備える複合体が得られる。被覆層の量は、熱分解の重量減少等で測定することができる。分離材において、被覆量(被覆層の量)は、多孔質ポリマー粒子1g当たり100〜500mgであることが好ましく、150〜400mgであることがより好ましい。
(イオン交換体)
イオン交換体は、例えば、分離材表面の水酸基を介して分離材にイオン交換基、リガンド(例えばプロテインA)等を導入することにより得られる。イオン交換体は、イオン交換精製、アフィニティ精製等に使用することができる。イオン交換基を導入する方法に用いるハロゲン化アルキル基含有化合物としては、モノハロゲン酢酸、モノハロゲンプロピオン酸等のモノハロゲンカルボン酸及びそのナトリウム塩、ジエチルアミノエチルクロライド等の1級、2級又は3級アミンのハロゲン化物及びその塩酸塩、4級アンモニウム塩のハロゲン化物及びの塩酸塩等が挙げられる。ハロゲン化物は、臭化物、塩化物が好ましい。また、イオン交換基を導入する反応を促進するために、有機溶媒を用いることが有効である。有機溶媒は、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール等のアルコール類を用いることができる。このようなハロゲン化アルキル基含有化合物の使用量は、イオン交換基を導入する粒子の全質量に対して0.2質量%以上使用することが好ましい。
イオン交換基の導入は、分離材の被覆層における水酸基を有する高分子に行うことができる。イオン交換基の導入は、湿潤状態の粒子を濾過等により水切りした後、所定濃度のアルカリ性水溶液に浸漬し、一定時間放置した後、水、又は水−有機溶媒混合系で、ハロゲン化アルキル基含有化合物を添加して反応させることにより行うことができる。この反応は、温度40〜90℃で、還流下、0.5〜12時間行うことが好ましい。上記の反応で使用されるハロゲン化アルキル基含有化合物の種類により、付与されたイオン交換基が決定される。
弱塩基性基であるアミノ基をイオン交換基として導入する方法としては、上記ハロゲン化アルキル基含有化合物のうち、モノ−、ジ−又はトリ−アルキルアミノクロライド、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミノクロライド、モノ(又はジ−)アルキル−モノ(又はジ−)アルカノールアミノクロライド等の2級又は3級アミノハロゲナイドなどを複合体に反応させる方法などが挙げられる。これらのアミンの使用量は、複合体の全質量に対して0.2質量%以上使用することができる。反応条件は、例えば、40〜90℃で0.5〜12時間であることができる。
強塩基性基である四級アンモニウム基をイオン交換基として導入する場合には、まず、上述のように複合体に3級アミノ基を導入し、該3級アミノ基にエピクロルヒドリン等のハロゲン化アルキル基含有化合物を反応させて4級アンモニウム基に変換させる方法などが挙げられる。又は、4級アンモニウムクロライド等の4級アミノハロゲナイドなどを上述の1〜3級アミノクロライドと同様の方法で複合体と反応させてもよい。
弱酸性基であるカルボキシ基をイオン交換基として導入する方法としては、上記ハロゲン化アルキル基含有化合物として、モノハロゲノ酢酸、モノハロゲノプロピオン酸等のモノハロゲノカルボン酸又はそのナトリウム塩を複合体に反応させる方法などが挙げられる。これらのカルボン酸又はそのナトリウム塩の使用量は、イオン交換基を導入する複合体の全質量に対して0.2質量%以上使用することができる。
強酸性基であるスルホン酸基をイオン交換基として導入する方法としては、複合体に対してエビクロロヒドリン等のグリシジル化合物を反応させ、更に亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩の飽和水溶液に該複合体を添加し、30〜90℃で1〜10時間反応させる方法などが挙げられる。
イオン交換基を導入する他の方法としては、アルカリ性雰囲気下で複合体に1,3−プロパンスルトンを反応させる方法も挙げられる。1,3−プロパンスルトンは、複合体の全質量に対して0.4質量%以上使用することができる。反応条件は、例えば、0〜90℃で0.5〜12時間であってよい。
これらの方法以外のイオン交換基の導入方法としては、スルホプロピルを反応させる方法、エピハロヒドリン等のグリシジル化合物を付加させた後に該グリシジル基にイオン交換基を導入する方法も挙げられる。
イオン交換体は、通常10〜600μmの粒径のものが好ましい。分取用又は工業用のクロマトグラフィーでの使用には、カラム内圧の極端な増加を避けるために、10〜300μmのものが好ましい。
分離材及び多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは110μm以下である。また、分離材及び多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、より更に好ましくは70μm以上、特に好ましくは90μm以上である。分離材及び多孔質ポリマー粒子の平均粒径が10μm以上である場合、粒子をカラムに充填した後のカラム圧が増加することを抑制できる傾向がある。
平均粒径は、以下の測定法により求めることができる。1)粒子を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径を測定する。
分離材及び多孔質ポリマー粒子の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性の向上の観点から、2〜15%であることが好ましく、2.5〜12%であることがより好ましく、3〜10%であることが更に好ましい。
分離材及び多孔質ポリマー粒子の細孔容積(空隙率)は、分離材又は多孔質ポリマー粒子の全体積基準で30体積%以上70体積%以下であることが好ましい。また、分離材及び多孔質ポリマー粒子は、大部分の細孔径が0.01μm以上0.6μm未満である細孔(すなわちマクロポアー)を有することが好ましい。分離材及び多孔質ポリマー粒子は、細孔容積が50体積%以上70体積%以下で、細孔径が0.1μm以上0.6μm未満であることがより好ましい。これらの範囲内である場合、細孔に入れない物質が増えてくることを抑制できるとともに、表面積が小さくなることを抑制できる傾向がある。
分離材及び多孔質ポリマー粒子の細孔径分布におけるモード径(細孔径分布の最頻値、最大頻度細孔径)は、10〜600nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、50〜300nmであることが更に好ましく、50〜200nmであることがより更に好ましい。細孔容積及び細孔径は上述の多孔質化剤により調整可能である。
本実施形態に係る分離材は、投影像円形度の相加平均が0.970以上である。投影像円形度とは、分離材の投影像から求めた円形度である。投影像円形度は、分離材をpH5〜9の親水性溶媒中に分散させて測定する。円形度は1に近いほど真円に近いことを示す。したがって分離材の一群の投影像円形度の相加平均が1に近いほど、当該群に含まれる粒子全体がより真球に近いことを示すといえる。
分離材は、投影像円形度が高いほど、カラムに充填して用いた際の通液性に優れる傾向がある。被覆層を備えていない多孔質ポリマー粒子においても同様に、投影像円形度が高いほど、カラムに充填して用いた際の通液性に優れる傾向がある。多孔質ポリマー粒子の投影像円形度の相加平均は0.970以上であることが好ましい。分離材及び多孔質ポリマー粒子の投影像円形度の相加平均は、0.975以上であることがより好ましく、0.978以上であることが更に好ましく、0.980以上であることがより更に好ましい。分離材の投影像円形度の相加平均は、0.999以下であってよく、0.990以下、0.985以下であってもよい。分離材の投影像円形度の相加平均は、0.970〜0.999であることが好ましく、0.975〜0.990であることがより好ましい。
分離材の投影像円形度は、粒子画像イメージング装置(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、粒子約1万個の画像を解析し、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周長を、粒子投影図の輪郭の長さで除することにより求めることができる。投影像円形度の相加平均の算出には、約1万個(9500〜10500個)の分離材を用いる。
分離材の投影像円形度は、水、緩衝溶液等の親水性溶媒中で測定する。こうすることで、カラムとして用いる際と類似の環境で、粒子形状を測定することができる。
分離材又は多孔質ポリマー粒子の投影像円形度の相加平均を向上させる方法としては、マイクロプロセスサーバー(株式会社日立製作所製)等の乳化装置により単分散化することが挙げられる。これにより、分離材又は多孔質ポリマー粒子の粒径のC.V.を低減することも可能である。
更に投影像円形度の相加平均を1.000に近づける方法としては、二重管のマイクロ流路を有する乳化装置を用いることが好ましい。二重管のマイクロ流路を有する乳化装置を用いることで、楕円形等の異形発生が少ない、真球に近い乳化滴を得ることができる。二重管の内径は、得ようとする多孔質ポリマー粒子又は分離材の粒径に応じて適宜選択することができる。例えば、得ようとする多孔質ポリマー粒子又は分離材の平均粒径が80〜600μmであるときは、二重管の内径を、粒径に合わせて例えば80〜700μmとすることができる。
また、二重管のマイクロ流路における流速を適切な範囲内に調節することによって、分離材又は多孔質ポリマー粒子の投影像円形度の相加平均をより1.000に近づけることができ、かつ粒径の単分散性をより高めることができる。流速の適切な範囲は二重管の内径によって異なり、内径が大きいほど適切な流速は速い傾向にある。一例として、二重管の内径が約130μmである場合には、流速を1管当たり20〜50ml/hとすることが好ましい。
本実施形態に係る分離材及び多孔質ポリマー粒子は、耐圧性に優れる傾向にある。本実施形態に係る分離材又は多孔質ポリマー粒子の5%圧縮変形弾性率は、100〜1500MPaであってよい。5%圧縮変形弾性率とは、粒子が5%圧縮変形したときの圧縮弾性率であり、5%K値ともいう。
分離材又は多孔質ポリマー粒子の5%圧縮変形弾性率は以下のようにして算出することができる。
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)条件にて荷重負荷速度1mN/秒で、四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により粒子を50mNまで圧縮したときの荷重及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、粒子が5%圧縮変形したときの圧縮弾性率(5%K値)を下記式により求めることができる。
5%K値(MPa)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:粒子が5%圧縮変形したときの荷重(mN)
S:粒子が5%圧縮変形したときの圧縮変位(μm)
R:粒子の半径(μm)
分離材又は多孔質ポリマー粒子の5%圧縮変形弾性率が100MPa以上であると、多孔質ポリマー粒子の柔軟性が低下し、粒子を充填したカラム内に液を流した際に粒子の変形を抑えて、カラム圧の増加を抑えることができ、かつ粒子の投影像円形度を増加できる傾向があるため好ましい。
分離材及び多孔質ポリマー粒子の比表面積は、20m/g以上であることが好ましい。より高い実用性の観点から、分離材及び多孔質ポリマー粒子の比表面積は、35m/g以上であることがより好ましく、40m/g以上であることが更に好ましい。比表面積が20m/g以上である場合、分離する物質の吸着量が少なくなることを抑制できる傾向がある。分離材及び多孔質ポリマー粒子の比表面積は、例えば、350m/g以下又は300m/g以下であってもよい。多孔質ポリマー粒子の比表面積は、水銀圧入法にて測定することができる。
(カラム)
一実施形態に係るカラムは、本実施形態に係る分離材を備え、例えば、本実施形態に係る分離材を充填して得ることができる。該カラムは、上述のような多孔質ポリマー粒子を備える分離材を用いるため、使用する溶出液の性質に依らず、カラム内での分離材の体積変化がほとんどなく、操作性及び通液性に優れる。該カラムは、上述の生体高分子、特にタンパク質の精製用カラムとして好適に使用することができる。
本明細書における「通液速度」とは、φ7.8×300mmのステンレスカラムに分離材を充填し、液を流した際の通液速度を表す。本実施形態の分離材が充填されたカラムに、カラムの圧力が0.3MPaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度(流速)は、1000cm/h以上であることが好ましく、1200cm/h以上であることがより好ましく、1300cm/h以上であることが更に好ましく、1500cm/h以上であることがより更に好ましい。カラムでタンパク質等の生体高分子の分離を行う場合、カラムに通液される生体高分子溶液の通液速度は、一般的に400cm/h以下の範囲であるが、本実施形態に係る分離材を使用したカラム場合は、通常のタンパク質分離用のイオン交換体よりも速い速度である1000cm/h以上でも高吸着容量で使用できる。なお、本明細書における通液速度とは、φ7.8×300mmのステンレスカラムに分離材を充填し、液を流した際の通液速度を示す。
粒子表面にイオン交換基又はプロテインA等のリガンドが導入された分離材は、タンパク質等の生体高分子の分離において、天然高分子及び合成高分子の持つそれぞれの利点をあわせ持った特性を示す。分離材の骨格となる多孔質ポリマー粒子は、上記のような方法で作られる多孔質ポリマー粒子であるため、生体高分子の非特異吸着が起こりにくく、耐久性、耐アルカリ性にも優れる。また、投影像円形度が高いため、通液性及び耐圧性に優れる。また、水酸基を有する高分子の架橋体を含む被覆層を有することによって、非特異吸着がより起こりにくく、タンパク質の脱吸着がよりしやすい。さらに、本実施形態の分離材は、同一流速下でのタンパク質等の吸着容量(動的吸着容量)が大きい点でも優れる。
分離材は、タンパク質等の生体高分子の静電的相互作用による分離、アフィニティ精製等に用いるのに好適である。例えば、タンパク質を含む混合溶液の中に本実施形態に係る分離材を添加し、静電的相互作用によりタンパク質だけを該分離材に吸着させた後、該分離材を溶液から濾別し、塩濃度の高い水溶液中に添加すれば、分離材に吸着しているタンパク質を容易に脱離、回収できる。また、該分離材は、カラムクロマトグラフィーにおいての使用も可能であり、特に液体クロマトグラフィー用分離材として好適である。
該分離材を用いて分離できる生体高分子は、水溶性の物質が好ましい。具体的には、例えば、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質などのタンパク質;生体中に存在する酵素;バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質;DNA;生理活性を有するペプチドなどの生体高分子が挙げられる。生体高分子の分子量は、200万以下が好ましく、50万以下がより好ましい。また、公知の方法に従い、タンパク質の等電点、イオン化状態等によって、分離材の性質及び分離条件等を選ぶことができる。公知の方法としては、例えば、特開昭60−169427号公報等に記載の方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(多孔質ポリマー粒子1の合成)
溶解性粒子として第三リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)を0.5質量%含有するポリビニルアルコール水溶液(0.05質量%)400gを用意した。500mLの三口フラスコ内で、純度96%のジビニルベンゼン(DVB960、新日鉄住金化学株式会社製)12g、ジエチルベンゼン9.6g、ラウリルアルコール14.4g及び過酸化ベンゾイル0.5gを、上記ポリビニルアルコール水溶液に一括して加えて混合液を調製した。この混合液を、二重管のマイクロ流路を使用して乳化した。二重管の内径を130μmとし、二重管1管あたり30ml/hで通液した。
乳化後、得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、撹拌機を用いて約8時間撹拌した。得られた粒子をろ過後、pH2に調製した塩酸、純水及びアセトンで洗浄を行い、多孔質ポリマー粒子1を得た。得られた粒子の平均粒径(体積基準)、粒径のC.V.及び粒子約1万個の投影像円形度の相加平均を、レーザー回折粒度分布計(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)にて水中で測定した。結果を表1に示す。
(被覆層の形成:水酸基を有する高分子によるコーティング)
デキストラン水溶液(2質量%)100mLに、水酸化ナトリウム4g及びグリシジルフェニルエーテル0.14gを加え、60℃で6時間反応させることにより、デキストランにフェニル基を導入した。得られた変性デキストランをメチルアルコールで沈殿させ、洗浄した。
洗浄した変性デキストランを再度水に溶解して20mg/mLの変性デキストラン水溶液を調製した。この変性デキストラン水溶液70mLに対して多孔質ポリマー粒子1を1gの割合で投入し、55℃で24時間撹拌することにより、多孔質ポリマー粒子1に変性デキストランを吸着させ、多孔質ポリマー粒子1の表面に被覆層を形成した。その後、ろ過を行い、粒子を熱水で洗浄した。
粒子に吸着した変性デキストランを次のようにして架橋させた。エチレングリコールジグリシジルエーテル0.64M及び水酸化ナトリウム0.4Mを含む水溶液に、水溶液35mLに対して粒子1gの割合で粒子を添加し、室温にて24時間撹拌した。その後、加熱した2質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液で粒子を洗浄後、更に純水で洗浄した。
上記で得られた粒子を含む水懸濁液をろ過し、乾燥した後(乾燥質量20g)、5Mの水酸化ナトリウム水溶液200mLに投入し、室温で1時間放置した。さらに、ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩の所定量(60g)を200mL添加し、水溶液の温度を70℃まで上げ、撹拌しながら2時間反応させた。反応終了後、ろ過して水洗し、ジエチルアミノエチル(DEAE)基をイオン交換基として有する分離材(DEAE変性分離材)を得た。以降の評価には特に記載しない限りDEAE変性分離材を用いた。
得られた分離材の細孔径(モード径)、比表面積を水銀圧入法(オートポア:株式会社島津製作所製)にて測定した。測定は細孔径0.05〜5μmの範囲に限定して行った。また、熱重量分析により被覆量(多孔質ポリマー粒子1g当たりの被覆層の量)を定量した。結果を表2に示す。更に、被覆層形成後の粒子の平均粒径(体積基準)、粒径のC.V.及び粒子約1万個の投影像円形度の相加平均を、レーザー回折粒度分布計(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)にて測定した。結果を表1に示す。
(イオン交換容量評価)
12時間以上水で膨潤させた分離材を0.2〜0.3g定量してビーカに移し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液20mLを加え、25℃で1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の粒子を洗浄液が中性になるまで洗浄した。その後、粒子をビーカに移し、0.1N塩酸水溶液20mLを添加し、室温で1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の粒子を洗浄液が中性になるまで洗浄した。この洗浄液について自動電位差滴定装置を使用して0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行うことによって、分離材のイオン交換容量(mmol/mL)を求めた。結果を表3に示す。
(5%圧縮変形弾性率)
分離材の5%圧縮変形弾性率は、下記の方法で測定した。結果を表2に示す。
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)条件にて荷重負荷速度1mN/秒で、四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により粒子を50mNまで圧縮したときの荷重及び圧縮変位を測定した。得られた測定値から、粒子が5%圧縮変形したときの圧縮弾性率(5%K値)を下記式により求めた。また、上記測定中の変位量が最も大きく変化した点の荷重を破壊強度(mN)とした。
5%K値(MPa)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:粒子が5%圧縮変形したときの荷重(mN)
S:粒子が5%圧縮変形したときの圧縮変位(μm)
R:粒子の半径(μm)
<カラム特性評価>
分離材をメタノールと混合して濃度30質量%のスラリーを調製した。スラリーをφ7.8mm×300mmのステンレスカラムに4MPaにて15分間かけて65mL充填し、以下の評価に用いた。
(通液性評価)
分離材を充填したカラムに流速を変えながら水を通し、流速とカラム圧の関係を測定した。カラム圧が0.3MPaであるときの線流速(通液速度)を求めた。結果を表3に示す。
(動的吸着量評価)
分離材を充填したカラムに、20mmol/L Tris−塩酸緩衝液(pH8.0)を10カラム容量流した。その後、BSA濃度2mg/mLの20mmol/LのTris−塩酸緩衝液を通し、UV吸光度測定によってカラム出口での溶出液中のBSA濃度を測定した。カラム入口と出口のBSA濃度が一致するまで緩衝液を通した。線流速は上記通液性評価にてカラム圧が0.3MPaとなるときの速度と同様とした。その後、5カラム容量分の1M NaCl Tris−塩酸緩衝液で希釈した。10%break throughにおける動的吸着量を以下の式を用いて算出した。結果を表3に示す。
10=cF(t10−t)/V
10:10%breakthroughにおける動的吸着量(mg/mL wet resin)
:注入液のBSA濃度(mg/mL)
F:流速(mL/min)
:ベッド体積(mL)
10:10%breakthroughにおける時間(分)
:BSA注入開始時間(分)
実施例2
モノマーを純度57質量%のジビニルベンゼン(DVB570、新日鉄住金化学製)12gに変更し、ジエチルベンゼンの使用量を8gに、ラウリルアルコールの使用量を16gに変更したこと以外は実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子2を合成した。多孔質ポリマー粒子2を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
実施例3
純度57質量%のジビニルベンゼン16g、Span80(ソルビタンモノオレエート、東京化成工業製)8g及び過酸化ベンゾイル0.64gを、メチルセルロース50水溶液(0.1質量%)400gに一括して加えることにより混合液を得たこと以外の操作は、実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子3を合成した。多孔質ポリマー粒子3を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
実施例4
純度57質量%のジビニルベンゼン10.8g、メタクリル酸グリシジル(東京化成工業株式会社製)7.2g、ジエチルベンゼン14.4g、ラウリルアルコール21.6g及び過酸化ベンゾイル0.18gを、溶解性粒子として第三リン酸カルシウムを0.5質量%含有したポリビニルアルコール水溶液(0.5質量%)400gに一括して加えて混合液を得たこと以外の操作は、実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子4を合成した。多孔質ポリマー粒子4を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
実施例5
純度57質量%のジビニルベンゼン15g、メタクリル酸グリシジル10g、イソオクタン(和光純薬製)11.4g、4−メチル−2−ペンタノール(和光純薬製)13.6g及び過酸化ベンゾイル0.25gを、溶解性粒子として第三リン酸カルシウムを0.5質量%含有したポリビニルアルコール水溶液(0.5質量%)400gに一括して加えて混合液を得たこと以外の操作は、実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子5を合成した。多孔質ポリマー粒子5を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
比較例1
第三リン酸カルシウムの量を0.3質量%に変更した以外は実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子6を合成した。多孔質ポリマー粒子6を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
比較例2
二重管のマイクロ流路を使用して乳化する代わりにマイクロプロセスサーバーを用いて乳化した以外は実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子7を合成した。多孔質ポリマー粒子7を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
比較例3
二重管のマイクロ流路を使用した乳化は行わず、懸濁重合で重合したこと以外は実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子8を合成した。多孔質ポリマー粒子8を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
比較例4
混合液におけるポリビニルアルコールの濃度を0.1質量%に変更したこと以外は実施例4と同様にして多孔質ポリマー粒子9を合成した。多孔質ポリマー粒子9を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
参考例1
二重管1管あたりの流速を60ml/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリマー粒子10を合成した。多孔質ポリマー粒子10の被覆層形成前の平均粒径は97μm、粒径のC.V.は28.1%、投影像円形度は0.964であった。多孔質ポリマー粒子10を用いて実施例1と同様に処理することによって分離材を得た。被覆量は210mg/粒子g、5%圧縮変形弾性率は190MPaであった。
Figure 2020203266
Figure 2020203266
Figure 2020203266
本願の実施例1〜5で得られた多孔質ポリマー粒子を用いた分離材は、比較例1〜4で得られた多孔質ポリマー粒子を用いた分離材と比べて、線流速(通液速度)が高く、粒子内部への通液性に優れることが示された。

Claims (6)

  1. 多孔質ポリマー粒子と、該多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える分離材であって、
    前記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーを含み、
    前記被覆層が、水酸基を有する多糖類又はその変性体を含み、
    前記分離材をpH5〜9である親水性溶媒中に分散させたときの、該分離材の投影像円形度の相加平均が0.970〜0.999の範囲にある、分離材。
  2. 前記スチレン系モノマーに由来する構造単位が、ジビニルベンゼンに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の分離材。
  3. 前記多糖類がアガロース及びデキストランの少なくとも一方である、請求項1又は2に記載の分離材。
  4. 分離材の5%圧縮変形弾性率が100〜1500MPaである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離材。
  5. 多孔質ポリマー粒子を備える分離材であって、
    前記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーを含み、
    前記分離材をpH5〜9である親水性溶媒中に分散させたときの、該分離材の投影像円形度の相加平均が0.970〜0.999の範囲にある、分離材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離材を備えるカラム。
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