JP2020202772A - 凍結保存用治具 - Google Patents
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Abstract
【課題】凍結時には細胞または組織を液体窒素中の異物から保護でき、融解時には作業者が安全に作業することが可能であり、かつ加工が容易な凍結保存用治具を提供する。【解決手段】本体部と、非通気性素材により形成された筒状保護部材を有する凍結保存用治具であって、該筒状保護部材は開口部とシート部材からなる圧力逃がし部を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、細胞または組織を凍結保存する凍結保存用治具に関する。
細胞または組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、牛の胚移植技術においては、胚を凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子または卵巣を採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いる手技がなされている。
一般に、生体内から採取された細胞または組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要になる。優れた保存技術により、採取された細胞または組織を、より正確に分析することが可能になる。また、優れた保存技術により、より高い生体活性を保ったまま、細胞または組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率の向上が望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築した、いわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産、保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療、産業の両面において大きなメリットが期待できる。
細胞または組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などの生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞または組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコールなどの化合物が用いられる。該保存液に、細胞または組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/分の速度)で、−30〜−35℃まで冷却すると、細胞内外または組織内外の保存液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞または組織を、さらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内または組織内とその外の周囲の微少溶液が、いずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外または組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞または組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
例えば、特許文献1には緩慢凍結法によってブタ胚を凍結保存することが記載され、特許文献2にはウシ胚を緩慢凍結法によって保存することが記載されている。
しかしながら緩慢凍結法は、比較的遅い冷却速度で細胞または組織を冷却することから、凍結保存のための操作に時間を要する。また冷却速度を制御するための装置、または治具を必要とする問題がある。加えて細胞外または組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞または組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
一方、上記した緩慢凍結法における問題点を解消する保存方法として、ガラス化凍結法が知られている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を、急速に液体窒素中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。ガラス化凍結に用いられる耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液と呼称される。
ガラス化凍結法では、ガラス化液に細胞または組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で急速に冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としないほか、温度制御をするための装置または治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結法を用いた細胞または組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞または組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献3では、動物、ヒトの生殖細胞または体細胞へのガラス化凍結法の適用が、極めて有用であることが示されている。非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存に、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。さらに特許文献4では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。
しかしながら、ガラス化液に含まれる高濃度の耐凍剤には化学的毒性がある。このため細胞または組織の凍結保存時には、細胞または組織の周囲に存在するガラス化液は少ない方が望ましく、細胞が保存液に暴露される時間、つまり凍結までの時間が短時間であることが望ましい。さらには、解凍後ただちに保存液を希釈する必要がある。
特許文献5、特許文献6には、短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムが卵付着保持用ストリップとして柱状の本体部に接続されており、該本体部に係合する筒状部材として、一端が封止された筒状部材を有する凍結保存用治具が記載されている。
特許文献7には、容器本体部に金網、紙などの天然物や、合成樹脂からなるフィルム状物で貫通孔を有した保存液除去材を備え、該容器本体部を収納する鞘部を有する凍結保存用治具が提案されている。
特許文献8には、特定の屈折率を有する多孔質構造体をガラス化液吸収体として有する凍結保存用治具が記載され、液体窒素との接触を避けるためにキャップと組み合わせて用いることが記載されている。
特許文献9、特許文献10には、細胞保持部材と、該細胞保持部材を収納可能な一端が閉塞された筒状収納部材を有する凍結保存用治具が記載されている。
特許文献11には、本体部に先端側がヒートシール可能な卵保存用細径部を有する凍結保存用治具が、特許文献12には、採取組織収納容器と、該採取組織収納容器を収納するためのヒートシール可能な収納袋を有する凍結保存用治具が記載されている。
特許文献13には、ストロー管を挿嵌させる筒状の蓋材の天面に抜気手段を備える凍結保存用治具が提案されている。
Steponkus et al.,Nature 345:170−172(1990)
特許文献5、6に記載されている凍結保存用治具では、筒状部材の一端が通気可能に封止されているが、該筒状部材では凍結保存用治具が滅菌されていても冷却溶媒(液体窒素)中で滅菌状態を保証できないという課題があった。
特許文献7〜10に記載されている凍結保存用治具では、細胞または組織を、密閉性のある鞘部、キャップまたは筒状収納部材により保護することで、冷却溶媒中での滅菌状態は保たれるが、誤操作や事故により密閉した系内に冷却溶媒(液体窒素)が入り込んだ場合、融解時に凍結保存用治具が室温下に晒された時に、キャップ内の冷却溶媒(液体窒素)が気化、膨張し、窒素ガスによって、凍結保存用治具が暴発、破損するという課題があった。
特許文献11、12に記載されている凍結保存用治具では、ヒートシールが煩雑な作業であり、安定した作業を行うことが困難であった。加えて、該凍結保存用具も、前述した凍結保存用治具同様に、暴発や破損が発生するという課題があった。
特許文献13に記載されている凍結保存用治具では、前述した暴発や破損を避けるため、筒状蓋材の天井部に抜気手段が設けられている。該抜気手段は、筒状蓋材天面の通気口に、球体と弾性体(バネ)からなる構造体を組み合わせることで、通常圧では通気口が閉鎖され、凍結保存用治具の内部圧が上昇した際に、弾性体の可動に伴い球体が可動、通気口が開放され、抜気されるという点が特徴である。しかしながら、該抜気手段は、微細な部材により構成されており、さらに、構造上筒状蓋材の先端に設けるほかないため、その加工が煩雑であった。
しかるに本発明は、凍結時には本体部に載置された細胞または組織を液体窒素中の異物から保護でき、融解時には作業者が安全に作業することが可能であり、かつ加工が容易な凍結保存用治具を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する凍結保存用治具によって、上記課題を解決できることを見出した。
細胞または組織を載置する載置部を少なくとも有する本体部と、該本体部が有する載置部を密閉するための筒状保護部材を少なくとも有し、該筒状保護部材は非通気性素材により形成され、かつ該筒状保護部材は少なくとも一箇所に開口部と該開口部を被覆する気密性のシート部材を少なくとも有する圧力逃がし部を有することを特徴とする、細胞または組織の凍結保存用治具。
上記の発明によれば、凍結時には本体部に載置された細胞または組織を液体窒素中の異物から保護でき、融解時には作業者が安全に作業することが可能であり、かつ加工が容易な凍結保存用治具を提供することができる。
以下に、本発明の凍結保存用治具を詳細に説明する。
本発明の凍結保存用治具は、細胞または組織を凍結保存する際に用いられるものである。かかる凍結保存のプロトコルとしては、前記した緩慢凍結法や、ガラス化凍結法を挙げることができるが、本発明の凍結保存用治具は特にガラス化凍結法において好適である。
本発明において、細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは、単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。
本発明の凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、豚、馬、ウサギ、ラット、マウスなど)の卵子、胚、精子などの生殖細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)などの多能性幹細胞が挙げられる。また、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞などの培養細胞が挙げられる。また細胞は、一または複数の実施形態において、線維芽細胞、膵ガン・肝ガン細胞などのガン由来細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、軟骨細胞、組織幹細胞、及び免疫細胞などの接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種または異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮、歯根膜、心筋などの組織が挙げられる。本発明の凍結保存用治具は、特にシート状構造を有する組織(例えば、細胞シート、皮膚組織など)の凍結保存に好適である。本発明の凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012−205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような、人工の組織の凍結保存についても好適に用いることができる。本発明は、上記のような細胞または組織の凍結保存方法において好適に用いられる。
本発明の凍結保存用治具は、細胞または組織を載置する載置部を少なくとも有する本体部を有する。本発明における載置部とは、細胞または組織が保存液と共に載置される部分に相当する箇所である。
載置部は、取扱いやすさの観点から、短冊状またはシート状であることが好ましい。該載置部として使用可能な材料としては、各種樹脂シート、金属シート、板ガラス、ゴムシート等の非吸収性材料や、繊維からなるシート、多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の吸収性材料、および該非吸収性材料と該吸収性材料を組み合わせたもの等が例示される。載置部が上記したような吸収性材料を有すると、細胞または組織の凍結操作の際、該吸収性材料が細胞または組織の周囲に存在する余分な保存液を吸収する保存液吸収体の役割を果たし、細胞または組織の凍結操作が簡便となるため、好ましい。
繊維からなるシートが紙である場合、密度が0.1〜0.6g/cm3であり、坪量が10〜130g/m2の紙であることが好ましい。特に密度が0.12〜0.3g/cm3であり、坪量が10〜100g/m2である紙を保存液吸収体として用いると、余分な保存液の吸収性に優れるため好ましい。また紙は、バインダーなどの結着成分の紙に占める割合が10質量%以下であることが保存液の吸収性の観点から好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下であることが特に好ましい。
繊維からなるシートが不織布である場合、該不織布が含有する繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維からなる再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、さらにはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、絹繊維などが挙げられ、これら繊維を各種混合した不織布も用いることができる。中でもセルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が好ましい。
繊維からなるシートが不織布である場合、密度が0.1〜0.4g/cm3であり、坪量が10〜130g/m2の不織布であることが好ましい。特に、密度が0.12〜0.3g/cm3であり、坪量が10〜100g/m2である不織布を保存液吸収体として用いると、余分な保存液の吸収性に優れるため好ましい。
不織布においても、前記した紙と同様に、バインダーなどの結着剤成分の不織布に占める割合が10質量%以下である不織布が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に3質量%以下である不織布が好ましい。特に、結着剤を含有しない不織布が好ましい。
不織布は紙と異なり様々な製造方法があるが、上記した結着剤成分が低減された不織布としては、スパンボンド法、メルトブロー法で製造された不織布、更には湿式法または乾式法で繊維を並べた後、水流交絡法またはニードルパンチ法で製造された不織布が好適に使用できる。また、上記したとおり、本発明において不織布が含有する好ましい繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、さらにはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が挙げられるが、これらの繊維を用いて不織布を製造する場合は、湿式法、乾式法に関わらず水流交絡法またはニードルパンチ法での製造が好適である。
次に、多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートについて説明する。これら各種シートにおける「多孔性」とは、上記したシートが表面に気孔(細孔)を有する構造体であることを意味し、シート表面および内部に連続的な気孔を有する構造体であることがより好ましい。
多孔性樹脂シートとしては、例えば特公昭42−13560号公報や、特開平08−283447号公報に記載される、少なくとも一軸方向に延伸し、樹脂の融点以上に加熱、焼結することで得た微細繊維状構造により多孔質構造を形成した樹脂シート、特開2009−235417号公報に記載される、乳化重合または粉砕などの方法によって得られた熱可塑性樹脂の固体粉末を金型に充填し、加熱、焼結して粉末粒子表面を融着させて冷却することにより、多孔質構造を形成した樹脂シートなどが挙げられる。
多孔性樹脂シートを形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレンやポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニルジフロライドなどのフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル三元共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。中でもポリテトラフルオロエチレンやポリビニリデンジフロライドなどのフッ素系樹脂により形成された多孔性樹脂シートは、保存液の吸収性に優れるとともに、顕微鏡観察下において、細胞または組織の視認性に優れることから好ましい。また多孔性樹脂シートとしては、理化学実験用途や研究用途として市販されている濾過用のメンブレンフィルターも使用できる。
多孔性金属シートとしては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、錫、亜鉛、鉛、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属からなる多孔性金属シートが挙げられる。多孔性金属酸化物シートとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニウムなどの金属の酸化物からなる多孔性金属酸化物シートを好ましく利用することができる。また、多孔性金属シートおよび多孔性金属酸化物シートは、上記した金属および金属酸化物をそれぞれ2種類以上含有する多孔性シートであっても良い。
上記した多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートの製造方法としては、一般に知られた方法を使用することができる。多孔性金属シートの場合には、粉末冶金法、スペーサー法などの方法を使用することができる。また、樹脂射出成型と粉末冶金法を組み合わせたいわゆるパウダースペースホルダー法も好ましく使用できる。例えば、国際公開第2006/041118号パンフレットや、特許第4578062号公報に記載された方法などを用いることができる。より具体的には、金属粉末とスペーサーとなる樹脂を混合後、圧力をかけて成型した後、高温環境下で焼成することで、金属粉末を焼き固め、スペーサーとなる樹脂を気化させて、多孔性金属シートを得ることができる。パウダースペースホルダー法などを用いる場合には、金属粉末とスペーサーとなる樹脂に加えて、樹脂のバインダーを混合することができる。また、金属粉末を高温で加熱した後に、ガスを注入して空隙を作製する発泡溶融法、ガス膨張法などの金属多孔体の製造方法も使用することができる。さらには、発泡剤を用いて金属多孔体を製造するスラリー発泡法のような製造方法も使用することができる。保存液吸収体が多孔性金属酸化物シートの場合には、例えば、特開2009−29692号公報や特開2002−160930号公報に記載された方法などを用いることができる。
保存液吸収体が、多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートなどの多孔体である場合には、該多孔体の細孔径は、0.02〜130μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜60μmである。細孔径が0.02μm未満の場合、保存液の吸収性能が十分でない場合がある。また、多孔性シートの製造が難しいという問題がある。一方、細孔径が130μmを超える場合、保存液吸収体の十分な吸収能が得られない場合がある。なお、本発明における多孔体の細孔径は、多孔性樹脂シートの場合には、バブルポイント試験により測定される最も大きい細孔の直径である。多孔性金属シートおよび多孔性金属酸化物シートの場合には、該多孔体の表面および断面の画像観察から測定した平均細孔直径である。
本発明において、保存液吸収体の空隙率は、20容量%以上であることが好ましく、より好ましくは30容量%以上である。また、保存液吸収体が、上記した多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートなどの多孔体である場合、多孔体の内部の気孔は、厚み方向のみならず、厚み方向に対して垂直な方向に対しても連続的な構造であることが好ましい。このような構造を有すると、多孔体内部の気孔を有効に用いることができるために、保存液の高い吸収性能が得られる。保存液吸収体の厚み、多孔体の空隙率は、用いる細胞または組織の種類や細胞または組織と共に滴下される保存液の滴下量などに応じて、適宜選択することができる。
上記した空隙率は、以下の式で定義される。ここで空隙容量Vは水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用い測定・処理された、保存液吸収体における細孔半径3nmから400nmまでの累積細孔容積(ml/g)に、保存液吸収体の乾燥固形分量(g/平方メートル)を乗ずることで、単位面積(平方メートル)当たりの数値として求めることができる。
P=(V/T)×100(%)
P:空隙率(%)
V:空隙容量(ml/m2)
T:厚み(μm)
P=(V/T)×100(%)
P:空隙率(%)
V:空隙容量(ml/m2)
T:厚み(μm)
本発明において、保存液吸収体の厚みは10μm〜5mmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜2.5mmである。
載置部が保存液吸収体の場合、該保存液吸収体の面積は、細胞または組織と共に滴下される保存液の滴下量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、滴下する保存液1μlにつき1mm2以上とすることが好ましく、2〜400mm2とすることがより好ましい。
載置部は、自立を支える目的の支持体と組み合わせることができる。載置部が支持体を有する場合、より高強度な細胞または組織の載置部を得ることができ、操作性の観点から有用である。支持体としては、各種樹脂シート、金属シート、板ガラス、ゴムシート等の非吸収性支持体が例示される。
載置部が支持体を有する場合、載置部と支持体との間に接着層を設けることは好ましい。接着層は後述する水溶性高分子化合物や非水溶性樹脂を含有することが好ましく、あるいは湿気硬化性の接着物質に代表されるような瞬間接着組成物、ホットメルト接着組成物、光硬化性接着組成物などを含有することも可能である。例えば、水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉糊等が例示され、非水溶性樹脂としては、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エラストマー系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ユリア系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、EVA系樹脂などが例示される。接着層は、一種類の樹脂を含有してもよいし、複数種類の樹脂を含有してもよい。接着層の固形分量は、0.01〜100g/m2の範囲が好ましく、更に0.1〜50g/m2の範囲がより好ましい。
上記した接着層は、載置部外の箇所または載置部中の一部のみに設けることが好ましい。接着層が載置部と支持体の間に存在する場合、顕微鏡観察下で細胞または組織の視認性に悪影響を与える場合がある。載置部外に接着層を設けるための具体的な一例としては、支持体上にマスキングテープによるマスキングを施し、接着層敷設後にマスキングテープを剥離するなどして、支持体上で載置部に隣接する位置に接着層を設け、支持体上の載置部にあたる箇所に接着層が存在しない部分を設け、該接着層上に保存液吸収体を貼り合わせる方法が例示される。
本発明において本体部は、上記した載置部と共に、把持部を有することが好ましい。把持部を有すると、凍結保存作業時および融解作業時の作業性が良好になり、また載置部と筒状保護部材の嵌合が容易になるため好ましい。把持部は、耐液体窒素素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミ、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアリングプラスチック、更にはガラスなどを好適に用いることができる。また、把持部は、載置部との接合を補助する構造体挿入部(例えば、載置部を挿入可能なスリットや、載置部を載置可能な凹形状等)を有することが好ましい。
上記した載置部と把持部の接合方法としては、接着剤による接合、インサート成型による接合等が例示される。接着剤による接合では、前述した載置部と支持体の接着に用いる接着剤と同様の組成の接着剤を好適に使用できる。
本発明の凍結保存用治具は、載置部を密閉するための非通気性素材により形成された筒状保護部材を有する。該筒状保護部材は、細胞または組織を凍結保存する際に、細胞または組織を外界(液体窒素)と遮断する目的で使用する。該筒状保護部材を形成する素材としては、耐液体窒素性を有する非通気性素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミック等が例示される。
筒状保護部材が金属である場合、材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、錫、亜鉛、鉛、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属や、上記した金属および金属酸化物をそれぞれ2種類以上含有する材料を例示することができる。
筒状保護部材が樹脂である場合、材料としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレンやポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニルジフロライドなどのフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド、ポリアミド、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル三元共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂や、上記した樹脂を2種類以上含有する材料を例示することができる。
上記した筒状保護部材は、本体部を挿入する開口部以外の少なくとも1ヶ所に、圧力逃がし部を有する。該圧力逃がし部は、筒状保護部材の少なくとも一部に開口部を設け、その開口部を気密性のシート部材で被覆することにより得られる。該気密性のシート部材としては、薄手の樹脂フィルムやゴムシート等が例示される。
気密性のシート部材が樹脂である場合、材料としては、前述した筒状保護部材と同様の樹脂が例示され、上記した樹脂を2種類以上含有する材料を例示することができる。
気密性のシート部材の好ましい厚みは、使用する材料によって異なるが、筒状保護部材内部の圧力変化によって、シート部材の一部が変形または破断し、筒状保護部材内部の過度に上昇した圧力を逃がすことができる程度の厚みであることが好ましい。該シート部材の好ましい厚みは、例えばシート部材に天然ゴムシートを使用する場合には、10〜100μmであることが好ましく、シート部材に樹脂フィルムを使用する場合には、5〜100μmであることが好ましい。
気密性のシート部材により開口部を被覆する方法としては、開口部の周辺とシート部材を接着剤により固定する方法、インサート成型により、予め筒状保護部材の一部に気密性のシート部材を組み込む方法、筒状保護部材に構造体挿入部を設け、該構造体挿入部に後加工で気密性のシート部材を組み込む方法などが例示される。
本発明の凍結保存用治具を用いて細胞または組織を凍結保存する手順の例を以下に示す。まず、保存液に浸漬した細胞または組織を、保存液とともに載置部上に載置する。該細胞または該組織の周囲には余分な保存液が付着している。載置部が保存液吸収体を有する場合、余分な保存液が保存液吸収体により取り除かれる。載置部が吸収性を有さない場合、余分な保存液は操作者がピペットを用いて取り除くことが望ましい。保存液は、通常卵子、胚などの細胞の凍結のために使用されるものを使用することができ、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などの生理的溶液に耐凍剤(グリセロール、エチレングリコールなど)を含有させることで得られた保存液や、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの各種耐凍剤を多量に(少なくとも保存液の全質量に対して10質量%以上、より好ましくは20質量%以上)含む保存液を使用できる。次いで、前記細胞または組織を載置部に保持させたまま、筒状保護部材を載置部に被せて密閉し、載置部を保護する。その後、筒状保護部材で保護した載置部を、速やかに液体窒素などの冷却溶媒中に浸漬し、細胞または組織を凍結する。融解作業の際は、液体窒素などの冷却溶媒の界面付近で、凍結保存用治具の載置部に液体窒素が触れないように、筒状保護部材から本体部を取り外し、凍結された細胞または組織が載置された載置部を速やかに融解液中に浸漬させる。この時必要に応じて載置部を融解液中で揺するなどして細胞または組織を回収する。
上述した操作において、冷却溶媒が何らかの影響(例えば、凍結操作時に本体部と筒状保護部材の密閉が甘かったなど)により、筒状保護部材内部に侵入してしまった場合、融解操作を行う際に、侵入した冷却溶媒が急速に膨張することで、保護部材が暴発し、操作者が危険に晒されるおそれがある。このような場合において本発明の凍結保存用治具は、筒状保護部材が圧力逃がし部を有することで、上記したリスクを避けることが可能である。
以下に、本発明の凍結保存用治具の構造を、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明の凍結保存用治具の一例を示した全体図である。図1において凍結保存用治具11は本体部Aを有する。本体部Aは把持部1を有し、該把持部1に載置部2が接続されている。該載置部2を保護するように、筒状保護部材3が被せられ、該筒状保護部材3は把持部1の載置部を有する側の端部で嵌合されている。該筒状保護部材3の側面には、圧力逃がし部4aが設けられている。
図1中、把持部1は柱状であるが、その形状は任意である。また、前述したように、本発明の凍結保存用治具では、細胞または組織を直接液体窒素に接触させないことを目的に載置部2に筒状保護部材3を被せるが、この場合、把持部1の載置部を有する側の端部を、載置部2を有さない側から、載置部2を有する側に向かって、円柱の径が連続的に小さくなる形状(テーパー状)とすることで、筒状保護部材3を被せる際の作業性や、把持部1と筒状保護部材3の密着性を向上させることも可能である。載置部2の形状は、ハンドリング上、短冊状またはシート状であることが好ましい。
図1の把持部1と載置部2の接続方法について説明する。把持部1が樹脂の場合、例えば、成形加工する時にインサート成形により載置部2を把持部1に接続することができる。さらに、把持部1に図示しない構造体挿入部を作製し、接着剤にて載置部2を接続することもできる。接着剤としては様々なものが使用できるが、低温に強いシリコン系やフッ素系の接着剤を好適に用いることができる。なお図1において点線は筒状保護部材3の内面の位置を示している。
図2は、図1の凍結保存用治具の別の一例を示した全体図であり、圧力逃がし部4bが、筒状保護部材3の先端(把持部と嵌合させる側の端面とは反対側の端面)に設けられた一例である。
図3は、本発明の凍結保存用治具における、筒状保護部材の一例を示した概略図である。図3において、筒状保護部材3aは、四角柱形状を有しており、該四角柱の長辺側の側面に長方形状の圧力逃がし部4cを有し、片側の短辺側の面(端面)に円柱状の本体挿入部5aを有する。
図3中、圧力逃がし部4cは、長方形状であるが、その形状は任意である。また、該圧力逃がし部4cは、前述したとおり、気密性のシート部材の一部が、変形または破断することにより、筒状保護部材内部の圧力を逃がすことができればよく、その大きさも限定されない。本体挿入部5aの形状も、載置部を有する本体部の形状に合わせた形状とすればよく、その形状は任意である。ただ、載置部や把持部に筒状保護部材を被せる際の操作性の観点から、本体挿入部5aの平面形状は、円形または正八角形、正六角形などの一辺の長さが等しい正多角形形状とすることが好ましい。本体挿入部5aの平面形状が長方形や楕円形状の場合には、筒状保護部材3を被せる際に方向性の制約が大きくなり、操作が煩雑になるおそれがある。
図4は、本発明の凍結保存用治具における、筒状保護部材の別の一例を示した概略図である。図4において、筒状保護部材3bは、四角柱形状で、該四角柱の長辺側の側面に楕円形状の圧力逃がし部4dを有し、片側の短辺側の面(端面)に円形の本体挿入部5bを有する。
図5は、本発明の凍結保存用治具における、筒状保護部材のまた別の一例を示した概略図である。図5において、筒状保護部材3cは、円柱形状で、該円柱の側面に長方形状の圧力逃がし部4eを有し、片側の端面に円形の本体挿入部5cを有する。
図6は、本発明の凍結保存用治具における、筒状保護部材のまた別の一例を示した概略図である。図6において、筒状保護部材3dは、六角柱形状で、該六角柱の長辺側の側面に長方形状の圧力逃がし部4fを有し、片側の短辺側の面(端面)に円形の本体挿入部5dを有する。
図7は、本発明の凍結保存用治具における圧力逃がし部の構造の一例を示した概略断面図である。図7において、圧力逃がし部4gは、筒状保護部材3eの側面に開口部Bを有し、該開口部Bの周辺に接着層6が塗布され、該接着層6上から、気密性のシート部材7aを貼り合わせることにより得られる。
図8は、本発明の凍結保存用治具における圧力逃がし部の構造の別の一例を示した概略断面図である。図8において、圧力逃がし部4hは、筒状保護部材3fに気密性のシート部材7bをインサート成型で組み込むことにより得られる。気密性のシート部材7bが樹脂シートである場合など、材料の剛直度が低い場合には、開口部B、シート部材挿入部12を予め形成した筒状保護部材に、後加工で気密性のシート部材7bを組み込むことも可能である。このように、本発明の凍結保存用治具における圧力逃がし部はシンプルな構造であるため、容易な加工により形成できる。
図9は、載置部に細胞を載置した様子を示した概略図であり、図1における短冊状の載置部2を、側部方向から見た場合の概略図である。図9において、載置部2aは保存液吸収体からなる。
図10は、載置部に細胞を載置した様子の別の一例を示した概略図であり、図1における短冊状の載置部2を、側部方向から見た場合の概略図である。図10において、載置部2bは非吸収性材料からなっており、細胞または組織8の周囲に存在する保存液9の量は、図9よりも多い。
図11は、載置部に細胞を載置した様子のまた別の一例を示した概略図であり、図1における短冊状の載置部2を、側部方向から見た場合の概略図である。図11において、載置部2cは保存液吸収体と、該保存液吸収体を支持する非吸収性材料の支持体10を有する。なお、細胞または組織8の周囲に存在する保存液9の量は図10よりも少ない。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
東レ(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルムである、ルミラー(登録商標)T60(厚み188μm、全光線透過率89%)を、短辺1.5mm×長辺25.0mmの長方形に裁断し、載置部を作成した。図1に示す形態の本体部Aおよび筒状保護部材3(四角柱形状、本体挿入部以外に開口部が無い状態)を、非通気性素材であって東レ(株)製のABS樹脂であるトヨラック(登録商標)100−322を材料に用いて、射出成型(シリンダー設定温度230℃、射出圧80MPa)により形成した。該本体部Aが有する把持部1に設けた、図示しない構造体挿入部と載置部を、湿気硬化型の接着剤を用いて接合し、1晩室温で保管し、接着剤の硬化を促した。他方、筒状保護部材3(本体挿入部以外に開口部が無い状態)の長辺側の側面に、圧力逃がし部に用いる開口部B(1.5mm×1.5mm)を、図7に図示した形態で切削研磨により形成し、該開口部Bの外周0.5mmに湿気硬化型の接着剤を塗布することによって、接着層6を形成した。該接着層6が硬化する前に、接着層6上から、2.0mm×2.0mmにカットした気密性の天然ゴムシート(厚み50μm)を気密性のシート部材7aとして貼り合わせ、圧力逃がし部4gを有する筒状保護部材3eを形成した。上記により、実施例1の凍結保存用治具を形成した。なお、上記において、ルミラーT60および天然ゴムシートや、下記に示す各シートの厚みは、(株)ニコン製のデジタルマイクロメーターDIGIMICRO MFC−101Aの測定値である。
東レ(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルムである、ルミラー(登録商標)T60(厚み188μm、全光線透過率89%)を、短辺1.5mm×長辺25.0mmの長方形に裁断し、載置部を作成した。図1に示す形態の本体部Aおよび筒状保護部材3(四角柱形状、本体挿入部以外に開口部が無い状態)を、非通気性素材であって東レ(株)製のABS樹脂であるトヨラック(登録商標)100−322を材料に用いて、射出成型(シリンダー設定温度230℃、射出圧80MPa)により形成した。該本体部Aが有する把持部1に設けた、図示しない構造体挿入部と載置部を、湿気硬化型の接着剤を用いて接合し、1晩室温で保管し、接着剤の硬化を促した。他方、筒状保護部材3(本体挿入部以外に開口部が無い状態)の長辺側の側面に、圧力逃がし部に用いる開口部B(1.5mm×1.5mm)を、図7に図示した形態で切削研磨により形成し、該開口部Bの外周0.5mmに湿気硬化型の接着剤を塗布することによって、接着層6を形成した。該接着層6が硬化する前に、接着層6上から、2.0mm×2.0mmにカットした気密性の天然ゴムシート(厚み50μm)を気密性のシート部材7aとして貼り合わせ、圧力逃がし部4gを有する筒状保護部材3eを形成した。上記により、実施例1の凍結保存用治具を形成した。なお、上記において、ルミラーT60および天然ゴムシートや、下記に示す各シートの厚みは、(株)ニコン製のデジタルマイクロメーターDIGIMICRO MFC−101Aの測定値である。
(実施例2)
実施例1において、天然ゴムシートの厚みを100μmとする以外は実施例1と同様にして、実施例2の凍結保存用治具を得た。
実施例1において、天然ゴムシートの厚みを100μmとする以外は実施例1と同様にして、実施例2の凍結保存用治具を得た。
(実施例3)
実施例1において、天然ゴムシートの厚みを30μmとする以外は実施例1と同様にして、実施例3の凍結保存用治具を得た。
実施例1において、天然ゴムシートの厚みを30μmとする以外は実施例1と同様にして、実施例3の凍結保存用治具を得た。
(実施例4)
実施例1において、天然ゴムシートの代わりに、気密性のポリイミドフィルム(厚み75μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、実施例4の凍結保存用治具を得た。
実施例1において、天然ゴムシートの代わりに、気密性のポリイミドフィルム(厚み75μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、実施例4の凍結保存用治具を得た。
(実施例5)
実施例4において、ポリイミドフィルムの厚みを12.5μmとする以外は実施例4と同様にして、実施例5の凍結保存用治具を得た。
実施例4において、ポリイミドフィルムの厚みを12.5μmとする以外は実施例4と同様にして、実施例5の凍結保存用治具を得た。
(比較例1)
実施例1において、筒状保護部材に圧力逃がし部を形成せずに、比較例1の凍結保存用治具を作製した。
実施例1において、筒状保護部材に圧力逃がし部を形成せずに、比較例1の凍結保存用治具を作製した。
(比較例2)
実施例1において、天然ゴムシートの代わりに、透気性のシート部材であって高密度ポリエチレン不織布であるタイべック(登録商標)(米国デュポン社製、厚み180μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、比較例2の凍結保存用治具を作製した。
実施例1において、天然ゴムシートの代わりに、透気性のシート部材であって高密度ポリエチレン不織布であるタイべック(登録商標)(米国デュポン社製、厚み180μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、比較例2の凍結保存用治具を作製した。
(比較例3)
実施例1において、筒状保護部材の代わりに、保護部材として、一端がヒートシールされ、本体部全体を覆うことが可能なポリプロピレン樹脂チューブ(φ4.0mm×130mm、非通気性素材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例3の凍結保存用治具を作製した。
実施例1において、筒状保護部材の代わりに、保護部材として、一端がヒートシールされ、本体部全体を覆うことが可能なポリプロピレン樹脂チューブ(φ4.0mm×130mm、非通気性素材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例3の凍結保存用治具を作製した。
<筒状保護部材のバリア性の評価>
実施例1〜5、比較例1〜3の凍結保存用治具を、本体部と保護部材を嵌合させた状態で冷却溶媒(液体窒素)に浸漬させる冷却溶媒侵入試験を行った。比較例3については、チューブ内に本体部を収納後、開放している側の端部をヒートシール処理した上で冷却溶媒に浸漬させた。凍結保存用治具の嵌合部から、保護部材の内部への冷却溶媒の侵入の有無を、浸漬時の挙動(嵌合部周辺から気泡が多く発生するか否か)の目視観察により評価した。また、浸漬30分後に冷却溶媒から凍結保存用治具を取り出し、室温環境下に晒すことで、冷却溶媒の保護部材内部への侵入の有無(冷却溶媒が侵入していた場合、暴発や凍結保存用治具の圧力逃がし部またはそれ以外の箇所の破損が確認される)を評価した。さらに、上記凍結保存用治具の水没試験を室温条件下で一昼夜行い、保護部材内部に水の侵入が認められるか、下記評価基準により評価を行った。
実施例1〜5、比較例1〜3の凍結保存用治具を、本体部と保護部材を嵌合させた状態で冷却溶媒(液体窒素)に浸漬させる冷却溶媒侵入試験を行った。比較例3については、チューブ内に本体部を収納後、開放している側の端部をヒートシール処理した上で冷却溶媒に浸漬させた。凍結保存用治具の嵌合部から、保護部材の内部への冷却溶媒の侵入の有無を、浸漬時の挙動(嵌合部周辺から気泡が多く発生するか否か)の目視観察により評価した。また、浸漬30分後に冷却溶媒から凍結保存用治具を取り出し、室温環境下に晒すことで、冷却溶媒の保護部材内部への侵入の有無(冷却溶媒が侵入していた場合、暴発や凍結保存用治具の圧力逃がし部またはそれ以外の箇所の破損が確認される)を評価した。さらに、上記凍結保存用治具の水没試験を室温条件下で一昼夜行い、保護部材内部に水の侵入が認められるか、下記評価基準により評価を行った。
<筒状保護部材のバリア性の評価 評価基準>
○:冷却溶媒侵入試験および水没試験の結果、筒状保護部材内部への冷却溶媒および水の侵入が認められなかった。
×:冷却溶媒侵入試験および水没試験の結果、筒状保護部材内部への冷却溶媒あるいは水の侵入を認めた。
○:冷却溶媒侵入試験および水没試験の結果、筒状保護部材内部への冷却溶媒および水の侵入が認められなかった。
×:冷却溶媒侵入試験および水没試験の結果、筒状保護部材内部への冷却溶媒あるいは水の侵入を認めた。
<作業者へのリスクの評価>
実施例1〜5、比較例1〜3の凍結保存用治具の各々の保護部材内部に、故意に冷却溶媒(液体窒素)を密充填し、冷却溶媒を密充填した状態で、本体部と保護部材を嵌合させた。比較例3については、チューブ内に本体部を収納後、開放している側の端部をヒートシール処理した。嵌合させた本体部、保護部材を液体窒素から取り出し、室温で放置し、暴発の有無および凍結保存用治具の破損の有無を下記評価基準により評価した。
実施例1〜5、比較例1〜3の凍結保存用治具の各々の保護部材内部に、故意に冷却溶媒(液体窒素)を密充填し、冷却溶媒を密充填した状態で、本体部と保護部材を嵌合させた。比較例3については、チューブ内に本体部を収納後、開放している側の端部をヒートシール処理した。嵌合させた本体部、保護部材を液体窒素から取り出し、室温で放置し、暴発の有無および凍結保存用治具の破損の有無を下記評価基準により評価した。
<作業者へのリスクの評価 評価基準>
○:暴発または凍結保存用治具の破損(圧力逃がし部以外)が確認されなかった。
×:暴発または凍結保存用治具の破損(圧力逃がし部以外)が確認された。
○:暴発または凍結保存用治具の破損(圧力逃がし部以外)が確認されなかった。
×:暴発または凍結保存用治具の破損(圧力逃がし部以外)が確認された。
表1の結果から、本発明の凍結保存用治具は、凍結時には本体部に載置された細胞または組織を液体窒素中の異物から保護でき、融解時には作業者が安全に作業することが可能であり、かつ加工が容易な凍結保存用治具であることがわかる。
本発明は、牛などの家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精などのほか、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、生体から採取した検査用または移植用の細胞または組織、生体外で培養した細胞または組織などの凍結保存に用いることができる。
1 把持部
2、2a〜2c 載置部
3、3a〜3f 筒状保護部材
4a〜4h 圧力逃がし部
5a〜5d 本体挿入部
6 接着層
7a、7b 気密性のシート部材
8 細胞または組織
9 保存液
10 支持体
11 凍結保存用治具
12 シート部材挿入部
2、2a〜2c 載置部
3、3a〜3f 筒状保護部材
4a〜4h 圧力逃がし部
5a〜5d 本体挿入部
6 接着層
7a、7b 気密性のシート部材
8 細胞または組織
9 保存液
10 支持体
11 凍結保存用治具
12 シート部材挿入部
Claims (1)
- 細胞または組織を載置する載置部を少なくとも有する本体部と、該本体部が有する載置部を密閉するための筒状保護部材を少なくとも有し、該筒状保護部材は非通気性素材により形成され、かつ該筒状保護部材は少なくとも一箇所に開口部と該開口部を被覆する気密性のシート部材を少なくとも有する圧力逃がし部を有することを特徴とする、細胞または組織の凍結保存用治具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019111659A JP2020202772A (ja) | 2019-06-17 | 2019-06-17 | 凍結保存用治具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019111659A JP2020202772A (ja) | 2019-06-17 | 2019-06-17 | 凍結保存用治具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020202772A true JP2020202772A (ja) | 2020-12-24 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019111659A Pending JP2020202772A (ja) | 2019-06-17 | 2019-06-17 | 凍結保存用治具 |
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JP (1) | JP2020202772A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023085369A1 (ja) * | 2021-11-11 | 2023-05-19 | 学校法人同志社 | 角膜内皮細胞の凍結保存製剤およびその製造法 |
-
2019
- 2019-06-17 JP JP2019111659A patent/JP2020202772A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023085369A1 (ja) * | 2021-11-11 | 2023-05-19 | 学校法人同志社 | 角膜内皮細胞の凍結保存製剤およびその製造法 |
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