JP2021136936A - 凍結保存用治具 - Google Patents

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【課題】保存液吸収性と細胞または組織の回収性に優れ、細胞または組織の凍結操作における保存液量の調整操作を簡便に行うことができる凍結保存用治具を提供する。【解決手段】本発明の凍結保存用治具は、保存液吸収体の表裏いずれかの面に、重心が同一で径が異なる複数の円または楕円から構成される画像パターン、重心が同一で該重心と頂点との長さが異なる複数の多角形から構成される画像パターン、あるいは、重心が同一な円あるいは楕円と多角形を組み合わせた図形から構成される画像パターンの少なくとも1種を有し、該画像パターンは不連続な線で形成される。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞または組織を凍結保存する凍結保存用治具に関する。
細胞または組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、牛の胚移植技術においては、胚を凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子または卵巣を採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いる手技がなされている。
一般に、生体内から採取された細胞または組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要になる。優れた保存技術により、採取された細胞または組織を、より正確に分析することが可能になる。また、優れた保存技術により、より高い生体活性を保ったまま、細胞または組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率の向上が望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築した、いわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産、保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療、産業の両面において大きなメリットが期待できる。
細胞または組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などの生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞または組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコールなどの化合物が用いられる。該保存液に、細胞または組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/分の速度)で、−30〜−35℃まで冷却すると、細胞内外または組織内外の保存液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞または組織をさらに冷却溶媒(例えば液体窒素)により冷却すると、細胞内または組織内とその外の周囲の微少溶液が、いずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外または組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞または組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
例えば、特許文献1には緩慢凍結法によってブタ胚を凍結保存することが記載され、特許文献2にはウシ胚を緩慢凍結法によって保存することが記載されている。
しかしながら緩慢凍結法は、比較的遅い冷却速度で細胞または組織を冷却することから、凍結保存のための操作に時間を要する。また冷却速度を制御するための装置、または治具を必要とする問題がある。加えて細胞外または組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞または組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
一方、上記した緩慢凍結法における問題点を解消する保存方法として、ガラス化凍結法が知られている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を、急速に冷却溶媒中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。ガラス化凍結に用いられる耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液と呼称される。
ガラス化凍結法では、ガラス化液に細胞または組織を浸漬させ、その後、冷却溶媒中で急速に冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としないほか、温度制御をするための装置または治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結法を用いた細胞または組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞または組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献3では動物、ヒトの生殖細胞または体細胞へのガラス化凍結法の適用が極めて有用であることが示されている。非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存に、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。さらに特許文献4では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。
しかしながら、ガラス化液に含まれる高濃度の耐凍剤には化学的毒性がある。このため細胞または組織の凍結保存時には、細胞または組織の周囲に存在するガラス化液は少ない方が望ましく、細胞が保存液に暴露される時間、つまり凍結までの時間が短時間であることが望ましい。さらには、解凍後ただちに保存液を希釈する必要がある。
特許文献5には、短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを卵付着保持用ストリップとして有する凍結保存用治具が記載されている。かかる文献では、凍結保存用治具の卵付着保持用ストリップの幅を制限することにより、卵子または胚の周囲のガラス化液量を低減している。
特許文献6には、生体細胞保持部として光透過性を有するベース部と、該ベース部の表面に固定された吸水部を備える凍結保存用治具が記載されている。かかる文献では、凍結保存用治具が、卵子または胚の周囲に存在するガラス化液のうち、ベース部の範囲を超えた余剰のガラス化液を吸水部で吸収することにより、ガラス化液量を低減している。
特許文献7には、金網、紙などの天然物や、合成樹脂からなるフィルム状物で貫通孔を有した保存液除去材を有する凍結保存用治具が記載されている。かかる文献では、卵子または胚の周囲に付着した余分なガラス化液が、該凍結保存用治具が有する保存液除去材の下部から吸引されることにより取り除かれる。
ガラス化液を含む余分な保存液を下部から吸引せずとも取り除くことが可能で、細胞または組織を載置する際の作業性が改善された凍結保存用治具として、特許文献8には、特定のヘーズ値を有する保存液吸収体を利用した凍結保存用治具が記載されている。また特許文献9には、特定の屈折率を有する多孔質構造体を保存液吸収体として有する凍結保存用治具が記載され、特許文献10には、特定の径の繊維を含有する保存液吸収体を有する凍結保存用治具が記載されている。
さらに、凍結融解した細胞または組織の回収を容易にした凍結保存用治具として、特許文献11には、細胞または組織の載置部に、細胞または組織を載置する載置部位置エリアと細胞または組織を載置しない非載置エリアの境界を示すマーキング部を有する凍結保存用治具が記載されている。
特開平9−122158号公報 特開2005−261413号公報 特許第3044323号公報 特開2008−5846号公報 特開2006−271395号公報 国際公開第2019/004300号パンフレット 国際公開第2011/070973号パンフレット 特開2014−183757号公報 国際公開第2015/064380号パンフレット 特開2015−188405号公報 登録実用新案第3202359号公報
Steponkus et al.,Nature 345:170−172(1990)
特許文献5に記載されている凍結保存用治具では、幅の制限されたフィルム上に、卵子または胚を極少量のガラス化液とともに載置する操作の難度が高いという問題があった。さらに、該方法をもとにしたクライオトップ(登録商標)法では、より少ない量のガラス化液と共に卵子又は胚を凍結保存するために、一度ガラス化液とともに卵子又は胚をフィルム上に載せた後に、余分なガラス化液を吸引してフィルム上から除去するといった、より煩雑な操作がなされることもあった。
特許文献6に記載されている凍結保存治具では、ベース部上の卵子または胚周辺の余分なガラス化液が、必ずしも吸水部に十分量吸収されるわけではなかった。
特許文献7に記載されている凍結保存用治具では、余分なガラス化液を除く際に下部からの吸引操作が必要であり、該操作が煩雑であった。
特許文献8〜10に記載されている凍結保存用治具では、前述の課題はいずれも解決されているものの、保存液吸収体上に細胞または組織を保存液と共に載置した際、細胞または組織の周辺の保存液量が過剰に吸収され少なくなりすぎることで、胚の回収性が低下してしまう場合があった。
特許文献11に記載されている凍結保存用治具では、マーキングにより胚の回収性をさらに向上させているが、細胞または組織の周辺の保存液量を適切な量に調整することは難しく、更なる改善が求められていた。
本発明は、保存液吸収性と細胞または組織の回収性に優れ、かつ細胞または組織の凍結操作における保存液量の調整操作を簡便に行うことができる凍結保存用治具を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する凍結保存用治具によって、上記課題を解決できることを見出した。
細胞または組織を載置する載置部が多孔性の保存液吸収体を有し、該保存液吸収体の表裏いずれかの面に、重心が同一で径が異なる複数の円または楕円から構成される画像パターン、重心が同一で該重心と頂点との長さが異なる複数の多角形から構成される画像パターン、あるいは重心が同一な円あるいは楕円と多角形を組み合わせた図形から構成される画像パターンの少なくとも1種を有し、該画像パターンが不連続な線で形成されていることを特徴とする凍結保存用治具。
本発明によれば、保存液吸収性と細胞または組織の回収性に優れ、細胞または組織の凍結操作における保存液量の調整操作を簡便に行うことができる凍結保存用治具を提供することができる。
本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。 図1の凍結保存用治具の載置部周辺の拡大図である。 本発明の凍結保存用治具の別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。 本発明の凍結保存用治具のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。 本発明の凍結保存用治具のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。 本発明の凍結保存用治具のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。 比較例1で作製した凍結保存用治具の載置部周辺の拡大図である。 比較例2で作製した凍結保存用治具の載置部周辺の拡大図である。
以下に、本発明の凍結保存用治具を詳細に説明する。
本発明の凍結保存用治具は、細胞または組織を凍結保存する際に用いられるものである。かかる凍結保存のプロトコルとしては、前述した緩慢凍結法や、ガラス化凍結法を挙げることができる。
本発明において、細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは、単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。
本発明の凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、豚、馬、ウサギ、ラット、マウスなど)の卵子、胚、精子などの生殖細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)などの多能性幹細胞が挙げられる。また初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞などの培養細胞が挙げられる。細胞は、一または複数の実施形態において、線維芽細胞、膵ガン・肝ガン細胞などのガン由来細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、軟骨細胞、組織幹細胞、及び免疫細胞などの接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種または異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮、歯根膜、心筋などの組織が挙げられる。
本発明の凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012−205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような、人工の組織の凍結保存についても好適に用いることができる。
本発明の凍結保存用治具は、細胞または組織を載置する載置部として、多孔性の保存液吸収体を有する。本発明における「多孔性」とは、気孔(細孔)を有する構造体であることを意味し、該保存液吸収体は、保存液吸収体表面及び内部に連続的な気孔を有することがより好ましい。該保存液吸収体としては、繊維からなるシート、多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の吸収性材料が例示される。載置部は、取扱いやすさの観点から、短冊状またはシート状であることが好ましい。
本発明において、保存液吸収体として用いる繊維からなるシートとしては、不織布が例示される。該不織布が含有する繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維からなる再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、さらにはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン(ポリビニルアルコール)繊維、ガラス繊維、絹繊維等が挙げられ、これら繊維を各種混合した不織布も用いることができる。中でもセルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が好ましい。
前記した不織布は、密度が0.1〜0.4g/cmであり、坪量が10〜130g/mの不織布であることが好ましい。特に密度が0.12〜0.3g/cmであり、坪量が10〜100g/mである不織布は、保存液の吸収性に優れ、さらには細胞または組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため好ましい。
不織布は、バインダー等の結着剤成分の不織布に占める割合が10質量%以下である不織布が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に3質量%以下である不織布が好ましい。特に結着剤を含有しない不織布が好ましい。
不織布は紙と異なり様々な製造方法があるが、上記した結着剤成分が低減された不織布としては、スパンボンド法、メルトブロー法で製造された不織布、更には湿式法又は乾式法で繊維を並べた後、水流交絡法又はニードルパンチ法で製造された不織布が好適に使用できる。また上記した通り、本発明において不織布が含有する好ましい繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が挙げられるが、これら繊維を用いて製造する場合は、湿式法、乾式法関わらず水流交絡法又はニードルパンチ法での製造方法が好適である。
本発明において保存液吸収体として用いる多孔性樹脂シートとしては、例えば特公昭42−13560号公報や、特開平08−283447号公報に記載される、少なくとも一軸方向に延伸し、樹脂の融点以上に加熱し焼結することで得た微細繊維状構造により多孔質構造を形成した樹脂シート、特開2009−235417号公報に記載される、乳化重合又は粉砕等の方法によって得られた熱可塑性樹脂の固体粉末を金型に充填し、加熱、焼結して粉末粒子表面を融着させて冷却することにより、多孔質構造を形成した樹脂シート等が挙げられる。多孔性樹脂シートを保存液吸収体として用いた場合、良好な保存液の吸収性に加えて、細胞または組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため、好ましい。
上記した多孔性樹脂シートを形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子ポリエチレン等の各種ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニルジフロライド等のフッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル三元共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。中でもポリテトラフルオロエチレンやポリビニリデンジフロライド等のフッ素樹脂の多孔性樹脂シートは、細胞または組織を保存液とともに該樹脂シート上に載置した場合、透過顕微鏡観察下での細胞または組織の視認性が飛躍的に高まり、細胞または組織の視認性にとりわけ優れた凍結保存用治具を提供することが可能となる。また多孔性樹脂シートとしては、理化学実験用途や研究用途として市販されている、濾過用のメンブレンフィルターも使用できる。
多孔性金属シートとしては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、錫、亜鉛、鉛、チタン、ニッケル、ステンレスなどの金属からなる多孔性金属シートが挙げられる。多孔性金属酸化物シートとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニウムなどの金属の酸化物からなる多孔性金属酸化物シートを好ましく利用することができる。また、多孔性金属シートおよび多孔性金属酸化物シートは、上記した金属および金属酸化物をそれぞれ2種類以上含有する多孔性シートであっても良い。
上記した多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートの製造方法としては、一般に知られた方法を使用することができる。多孔性金属シートの場合には、粉末冶金法、スペーサー法などの方法を使用することができる。また、樹脂射出成型と粉末冶金法を組み合わせたいわゆるパウダースペースホルダー法も好ましく使用できる。例えば、国際公開第2006/041118号パンフレットや、特許第4578062号公報に記載された方法などを用いることができる。より具体的には、金属粉末とスペーサーとなる樹脂を混合後、圧力をかけて成型した後、高温環境下で焼成することで、金属粉末を焼き固め、スペーサーとなる樹脂を気化させて、多孔性金属シートを得ることができる。パウダースペースホルダー法などを用いる場合には、金属粉末とスペーサーとなる樹脂に加えて、樹脂のバインダーを混合することができる。また、金属粉末を高温で加熱した後に、ガスを注入して空隙を作製する発泡溶融法、ガス膨張法などの金属多孔体の製造方法も使用することができる。さらには、発泡剤を用いて金属多孔体を製造するスラリー発泡法のような製造方法も使用することができる。保存液吸収体が多孔性金属酸化物シートの場合には、例えば、特開2009−29692号公報や特開2002−160930号公報に記載された方法などを用いることができる。
本発明において、保存液吸収体の細孔径は、0.02〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜5μmである。細孔径が0.02μm未満の場合、保存液の吸収性能が十分でない場合がある。また、多孔性シートの製造が難しいという問題がある。一方、細孔径が20μmを超える場合、細胞または組織の視認性を低下させるおそれがある。なお、本発明における多孔体の細孔径は、バブルポイント試験により測定される最も大きい細孔の直径である。
本発明において、保存液吸収体の空隙率は、20容量%以上であることが好ましく、より好ましくは30容量%以上である。保存液吸収体内部の気孔は、厚み方向のみならず、厚み方向に対して垂直な方向に対しても連続的な構造であることが好ましい。このような構造を有すると、保存液吸収体内部の気孔を有効に用いることができるために、保存液の高い吸収性能が得られる。保存液吸収体の厚みや空隙率は、用いる細胞または組織の種類や細胞または組織と共に滴下される保存液の滴下量などに応じて、適宜選択することができる。
上記した空隙率は、以下の式で定義される。ここで空隙容量Vは水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用い測定・処理された、保存液吸収体における細孔半径3nmから400nmまでの累積細孔容積(ml/g)に、保存液吸収体の乾燥固形分量(g/平方メートル)を乗ずることで、単位面積(平方メートル)当たりの数値として求めることができる。
P=(V/T)×100(%)
P:空隙率(%)
V:空隙容量(ml/m
T:厚み(μm)
保存液吸収体の面積は、細胞または組織と共に滴下される保存液の滴下量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、滴下する保存液1μlにつき1mm以上とすることが好ましく、2〜400mmとすることがより好ましい。
本発明の凍結保存用治具において、載置部は、保存液吸収体のみで構成することも可能であるが、保存液吸収体を支持する支持体と組み合わせることもできる。支持体としては、例えば各種樹脂シート、金属シート、板ガラス、ゴムシート等が例示される。保存液吸収体が多孔性樹脂シートのような、保存液の吸収に伴い光透過性が向上する素材の場合、支持体が全光線透過率80%以上の光透過性を有すると、載置部上の細胞または組織の視認性が高まり、とりわけ好ましい。該光透過性支持体としては、各種樹脂フィルム、ガラス、ゴム等が例示され、本発明の効果を損なわない限り、2種以上の光透過性支持体を組み合わせて用いてもよい。上記した中でも、樹脂フィルムは、取扱いがしやすく、好適に用いられる。樹脂フィルムの具体的な例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ポリカーボネート共重合体などのアクリル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニルジフロライドなどのフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示される。上記した全光線透過率は、JIS−K−7361−1:1997に準拠して、例えば、前述したスガ試験機(株)のヘーズメーターHZ−V3により測定することができる。
上記した保存液吸収体と支持体との間に、接着層を設けることは好ましい。接着層は後述する水溶性高分子化合物や非水溶性樹脂を含有することが好ましく、あるいは湿気硬化性の接着物質に代表されるような瞬間接着組成物、ホットメルト接着組成物、光硬化性接着組成物などを含有することも可能である。例えば、水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉糊等が例示され、非水溶性樹脂としては、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エラストマー系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ユリア系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、EVA系樹脂などが例示される。接着層は、一種類の樹脂を含有してもよいし、複数種類の樹脂を含有してもよい。接着層の固形分量は、0.01〜100g/mの範囲が好ましく、更に0.1〜50g/mの範囲がより好ましい。
上記した接着層は、後述する載置部が有する本発明の画像パターンの周辺部に設けることが好ましい。接着層が該画像パターン近傍に存在する場合、顕微鏡観察下における細胞または組織の視認性に悪影響を与えたり、保存液吸収体の保存液吸収性を低下させるおそれがある。載置部の画像パターンの周辺部に接着層を設けるための具体的な一例としては、支持体上の保存液吸収体が設けられる位置であって更に該画像パターンが配置される位置に、マスキングテープによるマスキングを施し、接着層を付与し、その後にマスキングテープを剥離するなどして、該画像パターンの周辺部となる位置に接着層を設け、該接着層上に保存液吸収体を貼り合わせる方法が例示される。
本発明の凍結保存用治具は、前述した載置部の保存液吸収体の表裏いずれかの面に、重心が同一で径が異なる複数の円または楕円から構成される画像パターン、重心が同一で該重心と頂点との長さが異なる複数の多角形から構成される画像パターン、あるいは重心が同一な円あるいは楕円と多角形を組み合わせた図形から構成される画像パターンの少なくとも1種を有する。ここで、保存液吸収体の表裏いずれかの面における表面とは、細胞または組織が保存液とともに載置される側の面であり、裏面とは細胞または組織が載置されない反対側の面であり、かかる裏面は保存液吸収体が前述した支持体を有する場合には、支持体と貼合される側の面に相当する。なお本発明における重心とは、上記した画像パターンが有する個々の円、楕円、あるいは多角形を、それらが有する辺を外周とする質量分布が一定な平板体とみなし、その点で支持すると平板体が水平に釣り合うことができる平板面上の点を意味する。
重心が同一で径が異なる複数の円または楕円から構成される画像パターンの例としては、二重円、三重円、四重円等の画像パターンや、長径と短径の比が同一で大きさが異なる複数の楕円を組み合わせた画像パターン、あるいは長径と短径の比が異なる複数の楕円を組み合わせた画像パターンなどが例示される。保存液吸収体が上記したような画像パターンを有すると、細胞または組織を保存液と共に載置部に載置した際、操作者は保存液が保存液吸収体へ吸収されていく様子を段階的に認識することが可能となり、凍結時における保存液量の調整を容易に行うことが可能になる。保存液量の調整とは、具体的には、載置部上で細胞または組織の周りに存在する保存液が保存液吸収体に吸収されていく過程で、細胞または組織の周りに存在する保存液の量が適量となったタイミングを計ることを言い、保存液が保存液吸収体に過剰に吸収されず細胞または組織の周りに適量存在するタイミングで載置部を液体窒素などの冷媒中に浸漬することにより、細胞または組織の回収性が良好になる。該操作時において保存液は、保存液吸収体上に円形に広がると共に吸収されるため、画像パターンが、重心が同一で径が異なる複数の円により構成されると、操作上最も好ましい。画像パターンが楕円により構成される場合には、長径と短径の比は3:1以下であることが好ましく、より好ましくは2:1以下である。
重心が同一で該重心と頂点との長さが異なる複数の多角形から構成される画像パターンが有する、個々の多角形の頂点の数は、同じであっても、異なっていても良く、該画像パターンが有する多角形の形状としては、正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形等の正多角形や、二等辺三角形や直角三角形等の三角形、長方形や平行四辺形等の四角形、正多角形でない五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形が例示される。なかでも複数の多角形が相似であることは、保存液が保存液吸収体へ吸収されていく様子を段階的に認識することが容易となるため好ましく、更に複数の多角形が相似であって、該多角形が、正方形、正六角形、および正八角形等の、頂点の数が偶数の正多角形である場合、操作上特に好ましい。画像パターンが正多角形でない多角形により構成される場合、重心と各頂点間の最大長さと最小長さの比は3:1以下であることが好ましく、より好ましくは2:1以下である。
重心が同一な円あるいは楕円と多角形を組み合わせた図形から構成される画像パターンの例としては、前述した円と、前述した多角形を、重心が同一になるよう重ね合わせた画像パターン(例えば正方形中に、該正方形の一辺の長さよりも小さい直径を有する円を、重心が同一になるよう重ね合わせた画像パターン)や、前述した楕円と、前述した多角形を、重心が同一になるよう重ね合わせた画像パターン(例えば楕円中に、該楕円の短径よりも一辺の長さが小さい正方形を、重心が同一になるよう重ね合わせた画像パターン)などを、例示することができる。
画像パターンが、先の特許文献11に記載されるような単一のパターンである場合には、保存液量の調整は難しい。
画像パターンの大きさや配置されるパターンの数は、載置する細胞または組織の大きさに合わせて適宜設定すればよいが、載置する細胞または組織が小さく、保存液吸収体の面積も小さい場合には、該画像パターンを配置する数が多すぎると、該画像パターンの描写が難しくなる場合がある。例えば、マウスの胚(直径が100μm程度)の載置を目的とする場合には、保存液吸収体の面積を1.5mm×25mm程度とし、該保存液吸収体上に、最も大きい外側の円で直径が1mm程度、最も小さい内側の円で直径が0.3mm程度の二重円または三重円の画像パターンを設けると、操作者が細胞または組織と共に載置する保存液量の調整を任意の細やかなレベルで行うことができ、また該画像パターンの描写も容易であるため、より好ましい。
本発明において、前述した画像パターンが有する個々の円、楕円、および多角形は、不連続な線で形成される。本発明における不連続な線としては、鎖線、破線、点線等の線が例示される。ここで、鎖線とは短い直線と点とが交互に続く線であり、一点鎖線や二点鎖線が例示される。また破線とは一定の間隔で隙間を設けた線である。また点線とは、一定の間隔で点を表示することで設けた線である。不連続な線が破線や点線であると、保存液吸収体が保存液を均一(かつ放射状)に吸収することができ、凍結時における保存液量の調整を容易に行うことが可能になるため、好ましい。また該不連続な線の非画線部(例えば、点線の点と点の間の空白部分)の合計長さが、画像パターンの総長さの25%以上あることは、保存液の吸収性の観点から好ましい。画像パターンが不連続な線で形成されない場合には、良好な保存液の吸収性は得られない。画像パターンの線幅は10〜250μmであることが好ましい。
前述した画像パターンを保存液吸収体に形成するための加工方法としては、保存液吸収体の表裏いずれかの面に、凸状のパターンを有する金型を押圧する方法や、該画像パターンを顔料または染料インクで微細線印刷する方法等、保存液吸収体の素材に応じた複数の方法が例示されるが、保存液吸収体の吸収性を低下させない観点から、保存液吸収体に凸状のパターンを有する金型を押圧する方法が好ましい。また凸状のパターンを有する金型を押圧する方法の場合には、保存液吸収体の表面(細胞または組織が保存液とともに載置される側の面)に凸部ができないように、保存液吸収体の表面から加工を行うことが好ましい。保存液吸収体表面に凸部があると、操作性(例えば、凍結時に細胞又は組織を保存液と共に保存液吸収体上に滴下付着する際の操作性や、融解時に保存液吸収体上から細胞又は組織を回収する際の操作性)が低下する場合がある。他方、前述した顔料または染料インクを用いた微細線印刷により画像パターンを形成する場合には、顔料または染料インクによる細胞または組織への影響を避けるため、保存液吸収体の裏面(細胞または組織の非載置面)に加工を行うことが好ましい。
本発明の凍結保存用治具は、上記した載置部とともに把持部を有していても良い。把持部を有すると、凍結保存作業時および融解作業時の作業性が良好になるため好ましい。把持部は、耐液体窒素素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミ、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアリングプラスチック、更にはガラスなどを好適に用いることができる。
本発明の凍結保存用治具を用いて細胞または組織を長期凍結保存する場合、細胞または組織を外界と遮断するために凍結保存用治具にキャップを被せる、または、該凍結保存用治具を任意の形状の容器に入れて密閉することが可能である。液体窒素が滅菌されておらず、細胞または組織を直接液体窒素に接触させて凍結させる場合は、凍結保存用治具が滅菌されていても滅菌状態を保証できない場合がある。よって、凍結前に細胞または組織を付着させた保存液吸収体にキャップをする、または凍結保存用治具を容器中に密閉することにより、細胞または組織を直接液体窒素に接触させずに凍結させることがある。上記理由から、キャップおよび容器は耐液体窒素性のある素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミックなどで作製することが好ましい。形状としては特に限定されず、例えば、キャップは、鉛筆用のキャップのような半紡錘状またはドーム状などのキャップ、円柱状のストローキャップなど、凍結保存用治具の保存液吸収体と接触せず、細胞または組織を外界と遮断できるような形状ならどのような形状でもよい。容器は、載置された細胞または組織に接触せずに、凍結保存用治具を被包または収納して密閉できるものであればよく、その形状は特に限定されない。
本発明の凍結保存用治具は、本発明の効果を損なわない限り、凍結保存用治具を上記したようなキャップ、容器と組み合わせて使用することができる。また、このような、キャップまたは容器と組み合わせて使用される形態の凍結保存用治具も、本発明に包含される。
本発明の凍結保存用治具は、例えば、クライオトップ法において好適に用いられるものである。また、従来のクライオトップ法は、通常、単一の細胞または10個未満の少数の細胞の保存に用いられるが、本発明は、より多くの細胞の保存(例えば、10〜1000000個の細胞の保存)においても好適に用いることができる。
本発明の凍結保存用治具を用いて細胞または組織を凍結保存する手順は特に限定されない。例を以下に示す。まず、保存液に浸漬した細胞または組織を、保存液とともに載置部(保存液吸収体)上に滴下する。該細胞または該組織の周囲には余分な保存液が付着しているが、前述した本発明の画像パターンを利用して、細胞または組織周辺の保存液量を確認しつつ、前記細胞または組織を載置部に保持させたまま適切なタイミングで液体窒素などの冷媒中に浸漬することにより、細胞または組織を凍結する。この時、載置部上の細胞または組織を外界と遮断することができるキャップを保存液吸収体に装着しても良く、あるいは凍結保存用治具を容器に密閉しても良い。保存液は、通常卵子や胚などの細胞の凍結のために使用されるものを使用することができ、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などの生理的溶液に耐凍剤(グリセロール、エチレングリコールなど)を含有させることで得られた保存液や、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの各種耐凍剤を多量に(少なくとも保存液の全質量に対して10質量%以上、より好ましくは20質量%以上)含む保存液を使用できる。また融解作業の際は、液体窒素などの冷却溶媒中から、本発明の凍結保存用治具を取り出し、凍結された細胞または組織を載せた載置部を融解液中に浸漬させ、必要に応じて保存液吸収体を融解液中で揺するなどして細胞または組織を回収する。
以下に、本発明の凍結保存用治具を、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。図1において、凍結保存用治具3は載置部2が把持部1と接続されている。
図1の把持部1と載置部2の接続方法について説明する。把持部1が樹脂である場合、例えば、自立性を有する載置部(支持体を有さず保存液吸収体のみからなる載置部)2を、把持部1成形時にインサート成形することで接続することができる。更に、把持部1に図示しない構造体挿入部を作製し、接着剤にて該載置部2を接続することができる。接着剤としては様々なものが使用できるが、低温に強いシリコン系やフッ素系の接着剤を好適に用いることができる。
図2は、図1の凍結保存用治具の載置部周辺の拡大図である。図2において、載置部2は、重心が同一であり、径が異なる3つの円(点線で形成された円)から構成される画像パターン4aを有する。
図3は、本発明の凍結保存用治具の別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。図3において、載置部2は、重心が同一であり、重心と頂点との長さが異なる2つの正方形(点線で形成された正方形)から構成される画像パターン4bを有する。
図4は、本発明の凍結保存用治具における載置部のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。該載置部2は、重心が同一な正六角形(点線で形成された正六角形)と正方形(点線で形成された正方形)から構成される画像パターン4cを有する。
図5は、本発明の凍結保存用治具における載置部のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。該載置部2は、重心が同一な正方形(点線で形成された正方形)と円(点線で形成された円)から構成され、該正方形の一辺の長さよりも小さい直径を有する円から構成される画像パターン4dを有する。
図6は、本発明の凍結保存用治具のまた別の一例を示した載置部周辺の拡大図である。該載置部2は、重心が同一であり、長径と短径が異なり、かつ相似の関係にある2つの楕円(点線で形成された2つの楕円)から構成される画像パターン4eを有する。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
保存液吸収体を支持する支持体として、東レ(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルムであるルミラー(登録商標)T60(厚み188μm、全光線透過率89%)に、(株)寺岡製作所製のマスキングテープ(厚み55μm)により、マスキングを施した。マスキング位置は、後工程で保存液吸収体に画像パターンを形成する位置とし、マスキングの範囲は、画像パターンが全て包含される大きさの範囲とした。マスキング後のポリエチレンテレフタレートフィルムに、接着層として、ヘンケルジャパン(株)製のホットメルトウレタン樹脂Purmelt(登録商標)QR 170−7141Pを、乾燥時の固形分量が30g/mとなるように塗布した。接着層塗布後、マスキングテープを剥離し、接着層が硬化する前に保存液吸収体としてアドバンテック東洋(株)製のポリテトラフルオロエチレン多孔体(細孔径0.2μm、空隙率71%、厚み35μm)を貼り合わせた。得られた保存液吸収体と支持体の貼合体を室温で24時間エイジングし、接着層の硬化を促した。その後、貼合体を短辺1.5mm×長辺25mmの長方形に裁断した。この際、長方形の長辺方向の中央部より一方の端部(短辺部)寄りに接着層を有さない位置が含まれるように断裁した。断裁した貼合体を固定し、該貼合体の接着層を有さない位置の保存液吸収体上に、図2に示した画像パターン4a(重心が同一で直径が異なる3つの円(直径50μmの点で構成される点線で形成された円))を金型押圧により形成した。該画像パターンが有する円の直径は、最も外側の円で0.75mm、2番目に外側の円で0.5mm、最も内側の円で0.25mmとした。また該パターンの非画線部合計長さは画像パターンの総長さの50%とした。該貼合体の画像パターンを有さない側の端部(短辺部)側をABS樹脂製の把持部と接合することで、実施例1の凍結保存用治具を得た。
(実施例2)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、図3に示した画像パターン4b(重心が同一で、重心と各頂点との長さが異なる2つの正方形(点線で形成された正方形))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、実施例2の凍結保存用治具を得た。実施例2の凍結保存用治具において、該画像パターンの重心と各頂点の間の長さは、外側の正方形で0.71mm、内側の正方形で0.35mmとした。
(実施例3)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、図4に示した画像パターン4c(重心が同一で、重心と頂点との長さが異なる正六角形と正方形(該正六角形と該正方形は何れも点線で形成されている))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、実施例3の凍結保存用治具を得た。実施例3の凍結保存用治具において、該画像パターンの外側の正六角形の重心と各頂点の間の長さは0.5mm、内側の正方形の重心と各頂点の間の長さは0.35mmとした。
(実施例4)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、図5に示した画像パターン4d(重心が同一で、円の半径と、重心と頂点の間の距離が異なる正方形(該円と該正方形は何れも点線で形成されている))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、実施例4の凍結保存用治具を得た。実施例4の凍結保存用治具において、該画像パターンの外側の正方形の重心と各頂点の間の長さは0.71mm、内側の円の半径は0.25mmとした。
(実施例5)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、図6に示した画像パターン4e(重心が同一で、短径と長径が異なる2つの楕円(点線で形成された楕円))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、実施例5の凍結保存用治具を得た。実施例5の凍結保存用治具において、該画像パターンが有する外側の楕円は長径を1.5mm、短径を1.0mm、内側の楕円は長径を1.05mm、短径を0.75mmとした。
(比較例1)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、図7に示した画像パターン4f(単一の円(点線で形成された円))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、比較例1の凍結保存用治具を得た。比較例1の凍結保存用治具において、該画像パターンが有する円の直径は1mmとした。
(比較例2)
凍結保存用治具の作製において、図8に示した画像パターン4g(重心が同一で、直径が異なる3つの円(これら3つの円は何れも線幅50μmの実線で形成されている))を金型押圧により形成する以外は実施例1同様にして、比較例2の凍結保存用治具を得た。比較例2の凍結保存用治具において、該画像パターンが有する円の直径は、最も外側の円で0.75mm、2番目に外側の円で0.5mm、最も内側の円で0.25mmとした。該パターンは非画線部を有さない。
実施例1〜5、比較例1〜2の凍結保存用治具に対して、保存液量の調整操作の容易性を、それぞれの凍結保存用治具の保存液吸収性、調整液量の目安のわかりやすさ、胚の回収性の3つの観点から評価した。
<保存液吸収性の評価>
実施例1〜5、比較例1〜2の凍結保存用治具の載置部の保存液吸収体が有する各々の画像パターンの重心の位置に、実体顕微鏡観察下で、ストリッパーピペットを用いて直径100μmのマウス胚1つと、保存液として細胞または組織のガラス化保存のために一般的に用いられている、FUJIFILM Irvine Scientific社製Vit Kitガラス化液0.2μlを同時に載置した。胚周辺の余分な保存液が保存液吸収体に吸収されていく様子を観察し、胚周辺の余分な保存液が手作業で取り除く操作なく、それぞれの凍結保存用治具の保存液吸収体に十分量吸収されるか否かを以下の基準により評価した。これらの結果を表1の「保存液吸収性」の項目に示す。
<保存液吸収性の評価 評価基準>
○:マウス胚周辺の余分な保存液が手作業で取り除く操作なく、保存液吸収体に十分量吸収された。
×:マウス胚周辺の余分な保存液が保存液吸収体に十分量吸収されず、手作業による除去が必要であった。
<保存液量の調整操作の簡便性>
実施例1〜5、比較例1〜2の凍結保存用治具に、前記した保存液吸収性の評価と同様にしてマウス胚とガラス化液を同時に載置し、マウス胚周辺のガラス化液が保存液吸収体に吸収される際に、保存液吸収体上の画像パターンを目印にして、細胞または組織の周辺のガラス化液の量を適切な量に調整(マウス胚周辺に残存する保存液の量が適量となったタイミングを計ること)がしやすかったか否かを、以下の基準により評価した。この結果を表1の「保存液量の調整操作の簡便性」の項目に示す。
<保存液量の調整操作の簡便性 評価基準>
○:保存液吸収体上の画像パターンを目印にして、容易にガラス化液の量を適切な量に調整でき、5回の試行で5回ともガラス化液の残存量を一定に保つことができた。
△:保存液吸収体上の画像パターンを目印にして、ガラス化液の量を適切な量に調整できたが、5回の試行中1回以上ガラス化液の残存量を一定に保つことができなかった。
×:保存液吸収体上の画像パターンを目印にして、ガラス化液の量を適切に調整できなかった。
<マウス胚の回収性>
実施例1〜5、比較例1〜2の凍結保存用治具に前述同様の保存液量の調整操作を行い、ガラス化液量を調整した直後に、凍結保存用治具を冷却溶媒(液体窒素)に投入した。ガラス化液量を適切な量に調整できなかったものは、その状態のまま冷却溶媒に投入した。その後、該凍結保存用治具を冷却溶媒(液体窒素)中から取り出し、載置部を温度37℃のFUJIFILM Irvine Scientific社製Vit Kit融解液に浸漬させ、融解時のマウス胚の回収性を以下の基準で評価した。これらの結果を表1の「胚の回収性」の項目に示す。
<マウス胚の回収性 評価基準>
○:5回の試行中5回とも、マウス胚を融解液中で特別な操作なく回収することができた。
△:5回の試行中1回、マウス胚を回収するために、マウス胚にピペットで融解液を吹き付ける操作を行う必要があった。
×:5回の試行のうち2回以上、マウス胚を回収するために、マウス胚にピペットで融解液を吹き付ける操作を行う必要があった。または5回の試行のうち1回以上マウス胚が意図せずに剥離し(胚周辺の保存液量の残存量が多すぎる場合に発生する事象)、顕微鏡観察下でマウス胚を見失い回収できない場合があった。
Figure 2021136936
表1の結果から、本発明によって、保存液吸収性と細胞または組織の回収性に優れ、細胞または組織の凍結操作における保存液量の調整操作を簡便に行うことができる凍結保存用治具が得られることがわかる。
本発明の凍結保存用治具は、牛などの家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精などのほか、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、生体から採取した検査用または移植用の細胞または組織、生体外で培養した細胞または組織などの凍結保存に用いることができる。
1 把持部
2 載置部(保存液吸収体)
3 凍結保存用治具
4 4a〜4g 画像パターン

Claims (1)

  1. 細胞または組織を載置する載置部が多孔性の保存液吸収体を有し、該保存液吸収体の表裏いずれかの面に、重心が同一で径が異なる複数の円または楕円から構成される画像パターン、重心が同一で該重心と頂点との長さが異なる複数の多角形から構成される画像パターン、あるいは重心が同一な円あるいは楕円と多角形を組み合わせた図形から構成される画像パターンの少なくとも1種を有し、該画像パターンが不連続な線で形成されていることを特徴とする凍結保存用治具。
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