JP7082039B2 - 細胞又は組織の凍結保存用治具 - Google Patents

細胞又は組織の凍結保存用治具 Download PDF

Info

Publication number
JP7082039B2
JP7082039B2 JP2018235955A JP2018235955A JP7082039B2 JP 7082039 B2 JP7082039 B2 JP 7082039B2 JP 2018235955 A JP2018235955 A JP 2018235955A JP 2018235955 A JP2018235955 A JP 2018235955A JP 7082039 B2 JP7082039 B2 JP 7082039B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
tissues
cryopreservation
jig
mounting portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018235955A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020096554A (ja
Inventor
篤史 松澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Paper Mills Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Paper Mills Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Paper Mills Ltd filed Critical Mitsubishi Paper Mills Ltd
Priority to JP2018235955A priority Critical patent/JP7082039B2/ja
Publication of JP2020096554A publication Critical patent/JP2020096554A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7082039B2 publication Critical patent/JP7082039B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Description

本発明は、細胞又は組織を凍結保存する際に使用する、細胞又は組織の凍結保存用治具に関する。
細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、牛の胚移植技術においては、胚を凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子又は卵巣を採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いることがなされている。
一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能になる。また優れた保存技術によって、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率が向上することが望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。
細胞又は組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3~0.5℃/分の速度)で、-30~-35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(-196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内とその外の周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、冷却速度を制御するための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
前記緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結法が提案されている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を急速に液体窒素中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液と呼称される。
前記ガラス化凍結法の具体的な操作としては、耐凍剤を多量に含む保存液に細胞又は組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(-196℃)で冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。
ガラス化凍結法を用いると、原理的には、細胞内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、適切なガラス化凍結を成し得るためには、ガラス化に用いる保存液に含有される耐凍剤の濃度を高いものとしなければならない。一方で、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤は細胞にとっての化学的毒性が高い。
上記した背景から、細胞又は組織の凍結保存においては、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤に由来する毒性を回避する観点から、細胞又は組織が保存液に暴露される時間(つまりは凍結されるまでの時間)が短時間であることが好ましく、操作者は迅速な操作が求められる。
また、適切なガラス化凍結を成し得るために、凍結速度は速ければ速いほど好ましいことが知られている。さらに、凍結後の融解時においても、細胞又は組織中への再氷晶形成を抑制する観点で、融解速度は速ければ速いほど好ましいことが知られている。
ガラス化凍結法を用いた細胞又は組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞又は組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物又はヒトの生殖細胞又は体細胞へのガラス化凍結法の適用が、凍結保存及び融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。
ガラス化凍結法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞やES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化凍結法が有効であったことが示されている。さらに、特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。このように、ガラス化凍結法は広く様々な種の細胞及び組織の保存に有用であることが知られている。
特許文献3、特許文献4では、ヒトの不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを使用した卵凍結保存用具を使用して、顕微鏡観察下で該フィルム上に極少量の保存液と共に卵子又は胚を載置し、凍結保存する方法が提案されている。
特許文献5では、生物試料の載置部と、試料載置部を収納しうる凍結保存容器からなる構造の生物学的試料保存用デバイスが提案されている。本文献の試料載置部の素材は、生物学的試料の脱落を防止する観点から純水接触角が約60~90度が好ましいことが記載されている。
特許第3044323号公報 特開2008-5846号公報 特開2002-315573号公報 特開2006-271395号公報 国際公開第2006/059626号パンフレット
Steponkus et al.,Nature 345:170-172(1990)
特許文献3、特許文献4では、卵子又は胚を載置するフィルムの幅を制限することにより、少ない量の保存液と共に卵子又は胚を凍結保存し、優れた生存率を得る方法が提案されている。この方法では、作業者の操作によって、少量の保存液と共に、卵子又は胚をフィルム上に載せる必要があり、操作の難度が高いといった問題があった。また、卵子又は胚がフィルム上に載置されたことを顕微鏡下で確認するために、一度、保存液と共に卵子又は胚をフィルム上に載せた後に、余分な保存液を吸引してフィルム上から除去するといった煩雑な操作がされることもあるが、やはり操作の難度が高いといった問題があった。
特許文献5では、生物試料の載置部と、試料載置部を収納しうる凍結保存容器からなる構造の生物学的試料保存用デバイスが提案されているが、特許文献3、特許文献4と同様に、試料載置部に試料が載置されたことを確実に確認するために、余分な保存液を吸引して除去する操作が必要な場合があった。
本発明は、細胞又は組織の凍結保存作業を容易かつ確実に行うことが可能な、細胞又は組織の凍結保存用治具を提供することを主な課題とする。より具体的には、細胞又は組織を保存液に浸漬した後、顕微鏡観察下において細胞又は組織を載置部上に滴下付着した際に、載置された細胞又は組織を良好な視認性で確認することができる凍結保存用治具を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する細胞又は組織の凍結保存用治具(本明細書中、「細胞又は組織の凍結保存用治具」を、単に「凍結保存用治具」ともいう)によって、上記課題を解決できることを見出した。
細胞又は組織を保存液と共に載置する略シート状の載置部を有し、該載置部は基体表面に酸化ケイ素微粒子を主体とし、バインダー成分が該酸化ケイ素微粒子の固形分量に対して5質量%以下である塗工液、層状ケイ酸塩を含有する塗工液、魚類由来の抽出物からなる親水性高分子化合物を含有する塗工液、あるいは微分散されたセルロースを含有する塗工液を塗布して表面改質が行われた載置部であり、該載置部表面の水に対する接触角が30度以下であることを特徴とする細胞又は組織の凍結保存用治具。
上記の発明によれば、顕微鏡観察下において、細胞又は組織を載置部上に滴下付着した際に、載置された細胞又は組織を良好な視認性で確認することができる凍結保存用治具を提供することができる。
本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。
本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を凍結保存する際に用いられるものである。本発明において、細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる生物の細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。
本発明に係る凍結保存作業は、細胞又は組織を極低温の冷媒を用いて凍結させる凍結作業、細胞又は組織を極低温の冷媒中で貯蔵する保管作業、細胞又は組織を融解液中で解凍する融解作業の一連の作業を含むものとする。
本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織の凍結保存作業に用いるものであり、好ましくは細胞又は組織のガラス化凍結保存作業に用いるものである。詳細には、本発明の凍結保存用治具は、保存液に浸漬された細胞又は組織を液体窒素等の冷却溶媒に浸漬し凍結させるためのものである。また、該載置部上に載置された細胞又は組織を融解する際には、細胞又は組織を凍結保存用治具と共に冷却媒体から取りだし、融解液中に浸漬させて融解する。本発明の凍結保存用治具を用いると、顕微鏡観察下で細胞又は組織を載置部上に滴下付着した際に、載置された細胞又は組織を良好な視認性で確認することができる。つまりは、凍結作業の際に、顕微鏡を用いた観察下での細胞又は組織の載置作業が容易となる。
本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を保存液と共に載置する略シート状の載置部を有する。本発明における略シート状とは、少なくとも細胞又は組織を保持しうる平面を有する形状であることを意味し、平面シート状、曲率を有するシート状、波型シート状、V字型シート状等の形状が例示される。
本発明の凍結保存用治具が有する載置部表面の、水に対する接触角は30度以下である。該接触角が30度以下であると、細胞又は組織を載置部上に滴下付着した際に、細胞又は組織と共に滴下付着した保存液が載置部表面に対して均一に伸展し、薄膜を形成する。そのため、滴下付着した保存液中の細胞又は組織を、顕微鏡観察下において良好な視認性にて確認することができる。より好ましくは、該載置部表面の水に対する接触角は15度以下である。一方、載置部表面の水に対する接触角が30度を超える場合には、細胞又は組織と共に滴下付着した保存液が載置部表面に伸展せず、細胞又は組織の周囲に比較的多く残存し、保存液表面での光屈折等により、保存液中の細胞又は組織の視認が阻害される。このような場合は、顕微鏡の設定(コントラスト又は照明の当て方)を変更する作業を行うか、又は一度滴下付着した保存液を再度取り除く作業をすることで、滴下付着した細胞又は組織を顕微鏡下で確認する必要が生じる。
本発明の凍結保存用治具が有する略シート状の載置部は、該載置部表面の水に対する接触角が30度以下であればよく、該接触角を有する該載置部表面を形成する方法として一般的な塗工工法によって基体表面の接触角が改質された載置部を例示することができる。
上記した塗工工法によって水に対する接触角を30度以下に調整する場合には、被表面改質対象である基体として、各種樹脂フィルム、ゴム、金属等が例示される。また、本発明の効果を奏することになる限り、2種以上の基体を組み合わせて用いてもよい。中でも樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で好適に用いられる。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる樹脂フィルムが挙げられる。
これら基体の厚さは10~1000μmであることが好ましい。
基体表面を塗工工法により改質するには、塗工表面に高い親水性を発現するような塗工液を用いて、表面改質を行う表面に高い親水性を発現する塗工液としては酸化ケイ素微粒子を主体とし、バインダー成分が該酸化ケイ素微粒子の固形分量に対して5質量%以下である塗工液、層状ケイ酸塩を含有する塗工液、魚類由来の抽出物からなる親水性高分子化合物を含有する塗工液、微分散されたセルロースを含有する塗工液挙げられる。これらは併用して用いても良い。特に高い親水性を発現するという観点で、酸化ケイ素微粒子を主体とし、バインダー成分が該酸化ケイ素微粒子の固形分量に対して5質量%以下である塗工液を用いることが好ましい。なお、ここで主体とは、塗工液が含有する全固形分量の50質量%以上が酸化ケイ素微粒子であることを意味する。
上記した塗工液には、表面特性に影響を及ぼさない範囲で塗工性を向上させる助剤を添加しても良い。また、塗工性をコントロールすることを目的として、前記した基体表面に下塗り層を設けても良い。塗工後に、光照射や熱処理などの各種加工を行い、載置部表面をさらに表面改質することもできる。
本発明の凍結保存用治具が有する載置部は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上である。また、光透過性を有する基体のヘーズ値は10%以下であることが好ましい。これにより、該載置部に載置した細胞又は組織の確認作業(載置部を介して細胞又は組織に観察照明を当て、透過型の顕微鏡で細胞又は組織を観察する作業)を容易に行うことができる。
本発明において載置部の面積は、細胞又は組織と共に滴下される保存液の滴下量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、滴下する保存液1μLにつき100mm以上とすることが好ましい。また、作業性の観点で、本発明の凍結保存用治具が有する該載置部の面積は、5~400mmとすることがより好ましい。
本発明の凍結保存用治具は、載置部の一端を把持して使用する構成でも良いが、載置部の一端を把持部と連結するような構成とすると、凍結/融解時の作業性が良好であるため、好ましい。
図1は本発明の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。図1において凍結保存用治具3は、把持部1と載置部2を有している。把持部1は液体窒素耐性素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミ、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアプラスチック、さらにはガラスなどを好適に用いることができる。また載置部2は略シート状である。
図1の把持部1と載置部2の接合方法について説明する。把持部1が樹脂の場合、例えば、成形加工する時にインサート成形により載置部2を把持部1に接合することができる。また、把持部1に図示しない挿入部を作製して接着剤にて載置部2を接合することもできる。接着剤は様々なものが使用できるが、低温に強いシリコン系やフッ素系の接着剤が好適に用いることができる。
本発明の細胞又は組織の凍結保存用治具を用いて細胞又は組織を長期凍結保存する場合、図1に示す凍結保存用治具の載置部に安全のため、外界と遮断するためにキャップを被せることも可能である。さらに、通常液体窒素は滅菌されておらず、直接液体窒素に接触させて凍結させる場合、凍結保存用治具が滅菌されていても無菌状態を保証できない場合がある。よって凍結前に細胞又は組織を付着させた載置部にキャップをして、直接液体窒素に接触させないで凍結させることがある。また、細胞又は組織を付着させた載置部を物理的に保護する観点でも有用である。キャップは液体窒素耐性のある素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミックなどで作製することが好ましい。形状としては、鉛筆用のキャップや円柱状のストローキャップなど、載置部と接触せず、外界と遮断できるような形状ならどのような形状でもよい。
本発明の凍結保存用治具を用いて細胞又は組織を凍結保存する方法は特に限定されず、例えば、まず保存液に浸漬した細胞又は組織を保存液と共にマイクロピペットで載置部上に滴下する。保存液を滴下した際に、載置部上の細胞又は組織を良好な視認性の下に、顕微鏡下で観察し、細胞又は組織の有無を確認する。次いで、前記細胞又は組織を載置部に保持させたまま該凍結保存用治具を液体窒素等の中に浸漬することにより、細胞又は組織を凍結する。この際、前記した載置部上の細胞又は組織を外界と遮断することができるキャップを載置部に装着して、液体窒素等の中に浸漬することもできる。保存液は、通常卵子、胚等の細胞の凍結のために使用されるものを使用でき、例えば、リン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤(グリセロール、エチレングリコール等)を含有する保存液や、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種耐凍剤を多量に(少なくとも保存液の全質量に対して10質量%以上、より好ましくは20質量%以上)含有する保存液を使用できる。融解作業の際は、液体窒素等の冷却溶媒中から、該凍結保存用治具を取りだし、凍結された細胞又は組織を載せた載置部を融解液中に浸漬させ、その後、細胞又は組織を回収する。
本発明の凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、豚、馬、ウサギ、ラット、マウス等)の卵子、胚、精子等の生殖細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞が挙げられる。また、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の培養細胞が挙げられる。また、細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞、膵ガン・肝ガン細胞等のガン由来細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、軟骨細胞、組織幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種又は異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮、歯根膜、心筋等の組織が挙げられる。本発明は、特にシート状構造を有する組織(例えば、細胞シート、皮膚組織等)の凍結保存に好適である。本発明の凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012-205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような人工の組織の凍結保存についても、好適に用いることができる。本発明の凍結保存用治具は、上記のような細胞又は組織の凍結保存用治具として好適に用いられる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中に記載した接触角は、全自動接触角計CA-W(協和界面科学株式会社)と多機能統合解析ソフトFAMAS(協和界面科学株式会社)を用いて測定した動的接触角である。
(実施例1)
基体として透明PETフィルム(全光線透過率89%、ヘーズ値2.3%)を用い、該基体上に、酸化ケイ素微粒子を主体とし、バインダー成分が該酸化ケイ素微粒子の固形分量に対して1質量%以下であるセルフェイスコート(丸昌産業株式会社製)を乾燥時の固形分量が10mg/mとなるように塗布し、室温乾燥後、さらに60℃で1時間乾燥させ、載置部を作製した。なお、実施例1の載置部の接触角は10度であった。この載置部を2mm×20mmの大きさ(40mm)に裁断し、ABS樹脂製の把持部と接合させ、図1に示す形態で実施例1の凍結保存用治具を作製した。
(実施例2)
層状ケイ酸塩を含有するスメクトン(登録商標)(クニミネ工業株式会社製)を塗工液として、乾燥時の固形分量が200g/mとなるように塗布し、60℃で24時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例2の載置部の接触角は20度であった。
(実施例3)
魚類由来の抽出物からなるゼラチン、SAM-M02(多木化学株式会社製)を水に溶解して塗工液とし、乾燥時の固形分量が1g/mとなるように塗布し、室温乾燥後、さらに30℃で12時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例3の載置部の接触角は18度であった。
(実施例4)
微分散されたセルロース分散液であるBiNFi-s(登録商標)(株式会社スギノマシン製)を塗工液とし、乾燥時の固形分量が100g/mとなるように塗布し、室温で十分に乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例4の載置部の接触角は20度であった。
(比較例1)
基体である透明PETフィルム(全光線透過率89%、ヘーズ値2.3%)をそのまま用いて比較例1の載置部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の凍結保存用治具を作製した。なお、比較例1の載置部の接触角は60度であった。
(比較例2)
ポリビニルアルコールであるPVA103(株式会社クラレ製)を水に溶解して塗工液とし、乾燥時の固形分量が100g/mとなるように塗布し室温乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の凍結保存用治具を作製した。なお、比較例2の載置部の接触角は40度であった。
<視認性の評価>
実施例1~4及び比較例1、2の各凍結保存用治具の載置部上に、落射型正立光学顕微鏡VC4500-S1(オムロン株式会社)で観察を行いながら、マウス8細胞期胚を0.1μLの保存液と共に滴下付着させ、滴下付着後に保存液を除去する操作は行わずに、滴下付着後の載置部上のマウス8細胞期胚の様子を観察し、その視認性を以下の基準で評価した。これらの結果を、表1の「視認性の評価」の項目に示す。なお、保存液は、L-グルタミン、フェノールレッド、25mMのHEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)を含む市販のMedium199培地(Life Technologies社)を基礎液として、エチレングリコールを15容量%とDMSO(ジメチルスルホキシド)を15容量%、スクロースを0.5M、ゲンタマイシンを50mg/L含有するものを使用した。
○:載置部上の胚の存在が明確に視認できる。
△:載置部上の胚の存在が視認できる。
×:載置部上の胚の存在が視認できない、又は極めて視認しにくい。
Figure 0007082039000001
上記の結果から、本発明の凍結保存用治具は、凍結作業時に、顕微鏡観察下において細胞又は組織を載置部上に滴下付着した後、余分な保存液を除去する操作を行わずに良好な視認性にて確認作業を行うことが可能であることが分かる。
本発明は、牛等の家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精等の他、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、胚又は卵子を含む生体から採取した検査用又は移植用の細胞又は組織、生体外で培養した細胞又は組織等の凍結保存に用いることができる。
1 把持部
2 載置部
3 凍結保存用治具

Claims (1)

  1. 細胞又は組織を保存液と共に載置する略シート状の載置部を有し、該載置部は基体表面に酸化ケイ素微粒子を主体とし、バインダー成分が該酸化ケイ素微粒子の固形分量に対して5質量%以下である塗工液、層状ケイ酸塩を含有する塗工液、魚類由来の抽出物からなる親水性高分子化合物を含有する塗工液、あるいは微分散されたセルロースを含有する塗工液を塗布して表面改質が行われた載置部であり、該載置部表面の水に対する接触角が30度以下であることを特徴とする細胞又は組織の凍結保存用治具。
JP2018235955A 2018-12-18 2018-12-18 細胞又は組織の凍結保存用治具 Active JP7082039B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018235955A JP7082039B2 (ja) 2018-12-18 2018-12-18 細胞又は組織の凍結保存用治具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018235955A JP7082039B2 (ja) 2018-12-18 2018-12-18 細胞又は組織の凍結保存用治具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020096554A JP2020096554A (ja) 2020-06-25
JP7082039B2 true JP7082039B2 (ja) 2022-06-07

Family

ID=71105544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018235955A Active JP7082039B2 (ja) 2018-12-18 2018-12-18 細胞又は組織の凍結保存用治具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7082039B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007088974A1 (ja) 2006-02-02 2007-08-09 Kyushu University, National University Corporation セルロースナノ繊維を用いる撥水性と耐油性の付与方法
WO2009105813A1 (en) 2008-02-25 2009-09-03 Sydney Ivf Limited Cryopreservation of biological cells and tissues
JP2014183757A (ja) 2013-03-22 2014-10-02 Kitasato Institute 卵子又は胚のガラス化凍結保存用治具
WO2014185457A1 (ja) 2013-05-16 2014-11-20 三菱製紙株式会社 細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具
WO2016063806A1 (ja) 2014-10-23 2016-04-28 三菱製紙株式会社 細胞又は組織の凍結保存用治具および凍結保存方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007088974A1 (ja) 2006-02-02 2007-08-09 Kyushu University, National University Corporation セルロースナノ繊維を用いる撥水性と耐油性の付与方法
WO2009105813A1 (en) 2008-02-25 2009-09-03 Sydney Ivf Limited Cryopreservation of biological cells and tissues
JP2014183757A (ja) 2013-03-22 2014-10-02 Kitasato Institute 卵子又は胚のガラス化凍結保存用治具
WO2014185457A1 (ja) 2013-05-16 2014-11-20 三菱製紙株式会社 細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具
WO2016063806A1 (ja) 2014-10-23 2016-04-28 三菱製紙株式会社 細胞又は組織の凍結保存用治具および凍結保存方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020096554A (ja) 2020-06-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6230582B2 (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具および凍結保存方法
JP6022602B2 (ja) 細胞または組織のガラス化凍結保存用治具
JP2015142523A (ja) 細胞または組織のガラス化凍結保存用治具
WO2020250766A1 (ja) 凍結保存用治具の固定具および該固定具を用いた凍結融解方法
JP7163207B2 (ja) 細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具
JP7082039B2 (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
CN114071995B (zh) 细胞或组织的冷冻保存用夹具
JP2020198825A (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
JP7093280B2 (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
JP2021151209A (ja) 凍結保存作業補助治具
JP7030661B2 (ja) 凍結保存液
JP6945487B2 (ja) 細胞又は組織の凍結保存液
JP7423412B2 (ja) 凍結保存用治具の固定具
JP7341847B2 (ja) 凍結保存用治具の固定具
JP2019187244A (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
JP7232693B2 (ja) 凍結保存用治具
JP7133514B2 (ja) 細胞又は組織の凍結融解方法
JP2018121581A (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
JP7471836B2 (ja) 凍結保存用治具の固定具
JP2020130018A (ja) 細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具
JP7030680B2 (ja) 凍結保存用治具
JP2020178559A (ja) 細胞又は組織の凍結保存用治具
JP2020145961A (ja) 凍結保存用治具
JP2021114969A (ja) 凍結保存用用具
JP2021114962A (ja) 被包部材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210218

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220118

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220311

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220426

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220526

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7082039

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150