JP2020193939A - 定量用試料の調製方法および塩化銀の製造方法 - Google Patents

定量用試料の調製方法および塩化銀の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素を当該被処理対象の銀から分離して、前記金属元素を実質的なロスなく含む試料を容易に作製する、定量用試料の調製方法を提供する。【解決手段】前記被処理対象の銀を硝酸で溶解して溶解液を得る工程1と、前記工程1で得られた前記溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記溶解液へEDTAまたはその誘導体を添加して混合液を得る工程2と、前記工程2で得られた前記混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成させて沈殿含有液を得る工程3と、前記工程3で得られた前記沈殿含有液を固液分離し、液体成分として定量用試料を得る工程4とを有する定量用試料の調製方法を提供する。【選択図】 図1

Description

この発明は、被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素を、当該被処理対象の銀から分離して定量用試料を調製する方法等に関するものである。
銀は、エレクトロニクス産業を始めとする多様な産業において広範に使用される重要な原料である。そして、当該銀に含有される銀以外の金属元素量の正確かつ容易な把握は、これらの産業において重要な課題である。さらに、高純度な銀およびその原料の製造も重要な課題である。
当該銀に含有される銀以外の金属元素の簡便な定量分析方法として、例えば、当該銀を硝酸で溶解後、機器分析(ICP(誘導結合プラズマ)−MS(質量分析)等)を用いて測定することが考えられる。しかし、このような方法では、高濃度の銀溶液を分析機器内に導入することになる為、当該分析機器内の銀汚染が激しくなり望ましくない。そこで、当該銀汚染を回避する為、予め前記銀溶液から銀を除去した測定試料を調製し、当該測定試料を分析機器内に導入して機器分析を行うという方法が一般的に行われている(非特許文献1、2参照)。
WO2005/023716号
JIS H 1181 銀地金分析方法 HIRAIDE, Masataka; MIKUNI, Yasushi; KAWAGUCHI, Hiroshi. Separation of trace heavy metals from silver matrix by solid-liquid extraction for graphite-furnace atomic absorption spectrometry. Fresenius' journal of analytical chemistry, 1996, 354.2: 212-215.
近年の急速な技術の進歩により、上述した、被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素量の正確かつ容易な把握に対する要望も高度化が著しい。具体的には、銀中におけるPb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)等の金属元素量を0.1ppmといったレベルの精度を担保しながら、容易に定量分析することが求められている。
当該観点から、上述した、予め銀溶液から銀を除去した測定試料を調製し、当該測定試料を分析機器内に導入して機器分析を行うという方法を考察してみる。すると、当該予め銀溶液から銀を除去した測定試料を機器分析することで銀に含有される銀以外の金属元素量を定量分析する場合、前記の高精度を達成するには、測定装置自体において0.1ppmレベルの高精度定量が可能であることに加えて、銀試料から銀を除去して測定試料を調製する際、当初の銀溶液中に存在した金属元素をロスなく(即ち、実質的に全てを)、測定試料へ移行させることが肝要である。
これに対し、銀溶液から銀を除去することだけを目的とするなら、簡便な方法として塩化銀の沈殿を生成させて、銀を除去する方法がある。しかし、塩化銀を沈殿させる方法では金属元素であるPb、Bi、Cd等が、当該塩化銀に吸着してしまうという問題点が発生する。
非特許文献2では、生成した塩化銀沈殿を、硝酸溶液を用いて超音波処理するという特殊な操作を行っている。しかし、当該超音波処理ではCdについて十分な回収が出来なかった(測定試料中にCdが十分には移行しなかった)と当該文献に記載されている。その為、この方法では十分な精度をもってCdを含む金属元素を定量分析することが出来ない。
非特許文献1に記載の方法では、PbおよびBiに対し水酸化鉄共沈法を実施している為、分析操作が煩雑である。また、定量下限は1ppm程度であることが当該文献に記載されている。
また、特許文献1には、精錬中間物を亜硫酸塩水溶液で浸出し、浸出液を中和して塩化銀を析出して、これを酸性水溶液中で酸化処理して(酸性で可溶な酸化物を形成する金属が溶解する)、続いてEDTA水溶液で洗浄する方法が開示されている。しかし、本発明者らが本方法を検討したところ、この方法ではCdを十分に回収することは困難であることを知見した。
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素(Pb、Bi、Cd等)を、当該被処理対象の銀から分離して、前記金属元素を実質的なロスなく含む試料を容易に作製する、定量用試料の調製方法を提供することである。さらに、当該被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素を、当該被処理対象の銀から分離する方法を用いた、高純度な塩化銀の製造方法を提供することである。
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究を行ない、上述した被処理対象の銀から塩化銀の沈殿を生成させて銀を除去する方法において、当該塩化銀の生成前に、当該塩化銀へ吸着し易いPb、Bi、Cd等の金属元素を所定の条件下において、予め錯化させておくことにより、これらの金属元素の塩化銀への吸着を阻止して、銀以外の金属元素を実質的なロスなく含む試料を調製できることに想到した。
さらに本発明者らは、上述した、塩化銀の生成前に当該塩化銀へ吸着し易い金属元素を所定の条件下において、予め錯化させておくことにより、これらの不純物元素の塩化銀への吸着を阻止できるという特別な技術的特徴を用いることで、高純度な塩化銀を製造出来ることにも想到した。
以上により、本発明者らは本発明を完成した。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
被処理対象の銀から、前記被処理対象の銀中の銀以外の金属元素を定量するための定量用試料を調製する方法であって、
前記被処理対象の銀を硝酸で溶解して溶解液を得る工程1と、
前記工程1で得られた前記溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記溶解液へEDTAまたはその誘導体を添加して混合液を得る工程2と、
前記工程2で得られた前記混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成させて沈殿含有液を得る工程3と、
前記工程3で得られた前記沈殿含有液を固液分離し、液体成分として定量用試料を得る工程4とを有する定量用試料の調製方法である。
第2の発明は、
前記被処理対象の銀中における銀の純度が99質量%以上である、第1の発明に記載の定量用試料の調製方法である。
第3の発明は、
前記被処理対象の銀中における銀の純度が99.99質量%以上である、第1または第2の発明に記載の定量用試料の調製方法である。
第4の発明は、
前記定量用試料が、前記被処理対象の銀中の銀以外の金属元素としてBi、Cd、Pb、Cr、Cu、Fe、PdおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも1種の定量に使用される、第1から第3の発明のいずれかに記載の定量用試料の調製方法である。
第5の発明は、
前記工程2において、前記溶解液へEDTAのアンモニウム塩を添加し、前記工程3において、前記混合液へ塩化アンモニウムを添加する、第1から第4の発明のいずれかに記載の定量用試料の調製方法である。
第6の発明は、
前記工程3において、前記被処理対象の銀中における銀の純度が100質量%であると仮定した場合の銀量に対して、1当量以上5当量以下の前記塩化物イオン源を前記混合液へ添加する、第1から第5の発明のいずれかに記載の定量用試料の調製方法である。
第7の発明は、
第1から第6の発明のいずれかに記載された定量用試料の調製方法により調製された前記定量用試料中の銀以外の金属元素を、質量分析、発光分光分析または原子吸光分光分析により定量する、定量用試料中の金属元素の定量方法である。
第8の発明は、
第5の発明に記載された定量用試料の調製方法により調製された前記定量用試料中の銀以外の金属元素を、質量分析又は発光分光分析により定量し、前記定量において、前記定量用試料中の金属元素を誘導結合プラズマにより原子化またはイオン化する、定量用試料中の金属元素の定量方法である。
第9の発明は、
被処理対象の銀を硝酸で溶解して溶解液を得る工程1と、
前記工程1で得られた前記溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記溶解液へEDTAまたはその誘導体を添加して混合液を得る工程2と、
前記工程2で得られた前記混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成する工程3とを有する、塩化銀の製造方法である。
第10の発明は、
前記工程3で得られた塩化銀の沈殿を含有する液を固液分離し、固体成分として塩化銀を回収する工程4を更に有する、第9の発明に記載の塩化銀の製造方法である。
第11の発明は、
第9または第10の発明に記載の塩化銀の製造方法で製造された前記塩化銀を還元して金属銀を製造する金属銀の製造方法である。
本発明により得られた定量用試料には、被処理対象の銀中の、Pb、Bi、Cd等の銀以外の金属元素が実質的なロスなく移行しており、この定量用試料を高精度な機器分析法(例えばICP−MS)を用いて測定することにより、高精度且つ容易に被処理対象の銀中の銀以外の金属元素の定量をすることができる。さらに、高純度な塩化銀を製造することが出来る。
本発明に係る、定量用試料の調製方法及び当該方法で得られた定量用試料を用いた定量のフローの一例を示す図である。
本発明に係る、定量用試料の調製方法及び当該方法で得られた定量用試料を用いた定量のフローの一例を図1に示す。
以下、図1を参照しながら、本発明を実施するための工程1〜4について説明する。
[工程1]
工程1は、被処理対象(本発明における、硝酸による溶解、EDTAまたはその誘導体の添加、塩化銀の沈殿とされるなどの処理を受ける対象であること)の銀を硝酸(銀を溶解することのできる酸)で溶解して溶解液を得る工程である。
本発明に用いられる被処理対象の銀〈21〉として、好ましくは純度70質量%以上、より好ましくは純度99質量%以上、更に好ましくは純度99.99質量%以上のものを準備する。銀〈21〉の形態は特に限定されるものではなく、例としては銀のインゴットや、銀粉が挙げられる。銀〈21〉が(表面に有機物を含んでいる場合には、これを除去したうえで、硝酸での溶解を行う。すなわち、前記の被処理対象の銀〈21〉の純度は、有機物を除いた金属成分中の銀の純度である。前記の有機物の除去は、例えば銀〈21〉を200〜600℃で加熱して有機物を分解・揮発させることで実施できる。加熱温度は、有機物の種類や、銀〈21〉が含みうる銀以外の金属元素及びその想定される存在形態に基づいて、当業者が適切に決定することができる。
被処理対象の銀〈21〉へ水〈22〉と硝酸〈23〉とを加え、加熱溶解操作(11)を実施して被処理対象の銀〈21〉を溶解し、溶解液〈24〉を得る。硝酸〈23〉の使用量は、被処理対象の銀〈21〉の全量を溶解できる量であれば特に制限されない。確実に銀を溶解することと、薬剤コストの観点から、硝酸〈23〉の使用量は、被処理対象の銀〈21〉の純度が100質量%であると仮定した場合の銀を溶解するのに必要な量を1当量としたときに、1.2〜5当量であることが好ましい。
[工程2]
工程2は、工程1で得られた溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、当該溶解液へEDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはその誘導体を添加して混合液を得る工程である。
必要に応じて溶解液〈24〉へ所定量の水〈25〉を添加したうえで、加熱攪拌操作 (12)を実施して、適宜量の硝酸〈23〉を溶解液〈24〉から揮発させることによって、溶解液〈24〉のpHを3以上7以下に調整する。pH調整は、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質を溶解液〈24〉へ添加することによっても可能だが、前記のように硝酸〈23〉を揮発させる操作の方が容易であり、好ましい。本発明においては、pHはpH標準液(pH6.86の中性リン酸塩pH標準液(富士フイルム和光純薬社製)及びpH4.01のフタル酸塩pH標準液(富士フイルム和光純薬社製)を使用した公知の方法で測定可能であり、また、pH試験紙により、pHが3以上7以下にあることを簡易に確認することもできる。以上は工程3についても同様である。
本工程2では、前記のようにpH調整された溶解液〈24〉へEDTAまたはその誘導体〈26〉を添加し、攪拌操作(13)を実施して混合液〈27〉を得る。これにより、被処理対象の銀〈21〉中に銀以外の金属元素が含まれていれば、その金属元素が錯化される。EDTAまたはその誘導体〈26〉は、銀を錯化せず、その他の金属を錯化させることのできる錯体形成物質である。EDTAの誘導体の例としては、EDTAのNa塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
ここで本工程の、溶解液〈24〉及びそれにEDTAまたはその誘導体〈26〉が添加された混合液〈27〉のpH(以下、「本工程のpH」のように記載することがある)が3以上であれば、EDTAまたはその誘導体〈26〉を加えて形成された銀以外の金属元素の錯体が破壊されることが回避され、続く工程3及び4の実施により、銀からこれらを適切に分離することができる。また、本工程のpHが7以下であれば、被処理対象の銀〈21〉中の銀以外の金属元素が水酸化物となって沈殿を形成することが回避され、続く工程3及び4の実施により、銀からこれらを適切に分離することができる。
EDTAまたはその誘導体〈26〉の使用量は、想定される被処理対象の銀〈21〉中の銀の純度から求められる金属元素の量を基に決定することができる。なお、銀以外の金属元素の全てを錯化させることが重要である。そこで、銀以外の金属元素が全てアルミニウム(錯化しうる最も原子量の小さい元素(原子量:27)である)であり、EDTAまたはその誘導体〈26〉1分子で錯化できる原子数が1であると仮定して、この場合の銀以外の金属元素(=アルミニウム)に対して1当量以上、EDTAまたはその誘導体〈26〉を使用することが好ましい。さらに薬剤コストも考慮に入れると、EDTAまたはその誘導体〈26〉の使用量は、前記と同様の仮定のもと、銀以外の金属元素に対して1〜1000当量であることが好ましく、1〜10当量であることがより好ましい。
[工程3]
工程3は、工程2で得られた混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、当該混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成させて沈殿含有液を得る工程である。
工程2で得られた混合液〈27〉中において、被処理対象の銀〈21〉中に銀以外の金属元素が含有されていれば、それらは錯体を形成している。一方、銀はEDTAまたはその誘導体〈26〉とは錯形成しないでいる。
本工程では、得られた混合液〈27〉へ塩化物イオン源〈28〉を加えて攪拌操作(14)を実施し、加熱操作(15)を行って塩化銀の沈殿を生成させて沈殿含有液〈29〉を得る。この際のpH(混合液〈27〉及びこれに塩化物イオン源〈28〉を加えて得られた液のpH)を3以上7以下に維持して前記の操作を行う。工程2の場合と同様にpHが3未満では工程2で(被処理対象の銀〈21〉中に銀以外の金属元素が含まれている場合に)形成された銀以外の金属元素の錯体が壊れてしまい、pHが7を超えていると銀以外の金属元素が水酸化物となって沈殿を形成してしまうからである。
ここで、塩化物イオン源〈28〉としては、水に溶解して塩化物イオンを生じる物質を特に制限なく使用することができ、その例としては、塩化ナトリウム及び塩化アンモニウムが挙げられる。これらは液のpHをほとんど変動させないので、工程2においてpHが3以上7以下に管理されていることから、本工程において塩化物イオン源としてこれらを使用すれば、特段pH調整剤を添加するなどの追加の操作を行わなくとも、pHは3以上7以下に維持される。
なお、塩化ナトリウムを混合液〈27〉へ添加した場合、後工程の機器分析操作(18)において、代表的な定量測定法であるICP(誘導結合プラズマ)−OES(発光分光分析)測定、ICP−MS(質量分析)測定等を連続運転しようとした場合、測定時のプラズマの安定性にナトリウムが悪影響を与えてプラズマが消灯し、連続運転が出来ない場合がある。塩化アンモニウムを使用した場合にはこのようなことは起こらないので、塩化物イオン源〈28〉としては、塩化アンモニウムを用いることが好ましい。
さらに同様の観点から、工程2において、上述したEDTAまたはその誘導体〈26〉としても、EDTAのアンモニウム塩を用いることが好ましい。
以上説明した工程3で使用する塩化物イオン源〈28〉の使用量は、混合液〈27〉中の銀の全てを塩化物とすることができる量であることが重要である。そのため、前記使用量は、被処理対象の銀〈21〉中における銀の純度が100質量%であると仮定した場合の銀量に対して1当量以上であることが好ましい。薬剤コストも考慮すると、100当量以下であることが好ましい。さらに好ましくは1当量以上5当量以下である。
[工程4]
工程4は、工程3で得られた沈殿含有液を固液分離し、液体成分として定量用試料を得る工程である。
得られた沈殿含有液〈29〉へ固液分離操作(16)を実施することにより、液体成分と固体成分とに分離して、液体成分としての定量用試料を得る。なお固液分離で得られた液体成分へ定容(メスアップ)操作(17)を実施したものを、定量用試料〈32〉としてもよい。固液分離操作(16)の具体的な手法は特に制限されるものではなく、公知の手法(例えばデカンテーション、ろ過)を広く使用可能である。
定量用試料〈32〉には、スタート時における被処理対象の銀〈21〉において、含有される銀以外の金属元素の濃度が0.1ppm程度の微量な濃度であっても、90質量%以上の回収率をもって実質的なロスなく移行している。すなわち、本発明によれば、簡易な操作で容易に高精度定量に好適な定量用試料を作製することができる。また、スタート時における被処理対象の銀〈21〉中の銀の実質全てが固体成分側に移行している。
そして、定量用試料〈32〉を機器分析操作(18)において、高精度な測定機器(例えばICP−MS、ICP−OES、AAS(原子吸光分光分析)の各機器)を用いて測定することで、高精度且つ容易に被処理対象の銀〈21〉中の銀以外の金属元素を定量分析することが出来る。また、測定機器内を銀で汚染することもない。
特に工程3において塩化物イオン源〈28〉として塩化アンモニウムを使用し(そして望ましくは工程2においてEDTAまたはその誘導体〈26〉としてEDTAのアンモニウム塩を使用し)た場合には、ICPにより金属元素を原子化またはイオン化する手法を利用した定量方法が好適に利用可能である。この場合、定量用試料〈32〉中のナトリウムの濃度は好ましくは1g/L以下、より好ましくは0.5g/L以下、更に好ましくは0.1g/Lとなり、プラズマの安定性を害しないからである。
なお、以上説明した定量方法の測定対象である銀以外の金属元素としては、EDTAまたはその誘導体と錯体を形成する(そして塩化物イオンと反応して沈殿を形成することがない)金属元素が挙げられる。更にEDTAまたはその誘導体と錯体を形成しなくとも、塩化物イオンと反応して沈殿を形成することがなく、しかも塩化銀に吸着することのない金属元素も、本定量方法で定量することができる。定量対象の銀以外の金属元素の具体例としては、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Pb(鉛)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Pd(パラジウム)およびTe(テルル)が挙げられる。
一方、工程4において沈殿含有液〈29〉へ固液分離操作(16)を実施することにより得られた固体成分は、スタート時における被処理対象の銀〈21〉に含有されていた銀以外の金属元素が実質的に全て除かれた、高純度な塩化銀〈30〉である。
この結果、得られた塩化銀〈30〉を、適宜な方法で還元することにより高純度な金属銀〈31〉を得ることが出来る。
(実施例1)
[1]銀溶液の調製
純度99.999質量%の銀10gを300mLガラスビーカーに取り、ここへ水20mLを添加し、続けて硝酸15mLを添加した。当該ガラスビーカーを、150℃のヒーターを用いて加熱しつつ、内容物を撹拌し銀を溶解させて銀の硝酸溶液を得た。
当該操作を5回実施して、5個の銀の硝酸溶液を作製し、当該5個の銀の硝酸溶液を500mLガラスビーカーに注いで混合した。
混合された銀の硝酸溶液を、200℃のヒーターを用いて30分間加熱して濃縮物とした後、室温まで放冷した。得られた濃縮物に純水を添加して200mLに定容(メスアップ)し、銀の濃度が250g/Lの銀溶液を調製した。
[2]Biサンプル溶液、Cdサンプル溶液およびPbサンプル溶液の調製
調製した銀溶液20mL(銀5g含有)を300mLガラスビーカーに採取した。そして当該採取した銀溶液20mLへ何も添加せず、250℃のヒーターを用いて加熱操作を30分間実施して、シラップ状のBiサンプル1(ブランク)を調製した。
次に、調製した銀溶液20mL(銀5g含有)を300mLガラスビーカーに採取した。そして当該採取した銀溶液20mLへ、Bi濃度1mg/LのBi標準溶液0.5mL(Bi量:0.5μg)を添加し、250℃のヒーターを用いて加熱溶解操作を30分間実施して、シラップ状のBiサンプル2を調製した。
同様に、採取した銀溶液20mLへ、Bi濃度10mg/LのBi標準溶液0.5mL(Bi量:5μg)を添加し、加熱溶解操作を実施してシラップ状のBiサンプル3を調製した。
金属元素種をBiからCdまたはPbへ代替した以外は、上述したBiサンプル溶液の調製と同様な操作を実施し、いずれもシラップ状のCdサンプル1(ブランク)、Cdサンプル2、Cdサンプル3、および、Pbサンプル1(ブランク)、Pbサンプル2、Pbサンプル3を調製した。
尚、調製されたシラップ状のBiサンプル1〜3、Cdサンプル1〜3およびPbサンプル1〜3において、調製の際の加熱溶解操作において硝酸の一部はサンプル中から揮発した。この結果、調製されたBiサンプル1〜3、Cdサンプル1〜3およびPbサンプル1〜3のpHは3以上7以下であった(pH試験紙により確認した)。
[3]EDTAの誘導体および塩化物イオン源の添加
調製されたBiサンプル1〜3、Cdサンプル1〜3およびPbサンプル1〜3に係る各シラップへ水25mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱撹拌操作を15分間実施して溶液状サンプルを得た。得られた溶液状サンプルへ濃度10g/LのEDTA・2NH水溶液を1mL添加し撹拌操作を実施し、混合液を得た。EDTA・2NH水溶液のpHは約4であるので、サンプルへの水添加、加熱撹拌、EDTA・2NH水溶液の添加、混合のいずれの段階においても、サンプルのpHは3以上7以下の範囲にある。
次に、得られた混合液へ濃度240g/LのNHCl水溶液13mLを添加して、撹拌操作を実施しAgClの沈殿を生成させた。そして、150℃のヒーターを用いて30分間加熱し、沈殿含有液を得た。沈殿含有液のpHをガラス電極pH計(東亜ディーケーケー株式会社製 HM−5S)で測定したところ、4であった。NHCl水溶液のpHは約5であるので、これの混合液への添加、撹拌、加熱のいずれの段階においても、混合液のpHは3以上7以下の範囲にある。
ここでEDTA・2NHおよびNHClの添加量について説明する。
実施例1にて用いられている被処理対象の銀は、上述したように純度99.999質量%の銀へ、Bi、Cd、Pbから選択された1種類の金属元素を所定量添加したものである。そこで、被処理対象の銀に含有される銀以外の金属元素量を多めに100ppmと見積もり、当該銀以外の金属元素は全てEDTAで錯体化可能な、原子量が27でありEDTA1分子で結合できる原子数が1である金属元素であると仮定した。
この場合、EDTA・2NHの添加量は、銀以外の金属元素に対して1.7当量に相当する。
一方、NHClの添加量は、実施例1にて用いられている被処理対象である5gの銀が純度100質量%と仮定した場合の、5/4当量に相当する。
[4]固液分離と定容操作
得られた沈殿含有液をデカンテーションにより固液分離操作し、液体成分を50mLメスフラスコに移した。
一方、残存する固体成分(AgCl)へ純水5mLを加えて撹拌し、デカンテーションにより固液分離操作し、液体成分を前記50mLメスフラスコに移した。この操作を3回行った後、統合された液体成分へ純水を添加して定容操作を行い、定容量50mLの定量用試料を得た。
[5]機器分析
(1)Bi、Cd、およびPbの定量分析
得られた定量用試料を用いてICP−MS測定を行い、検量線用標準液を用いた検量線法によって、被処理対象の銀に含有されるBi、Cd、およびPbの定量分析を行った。尚、ICP−MSの設定条件を表1に示す。
Figure 2020193939
50mLに定容した各定量用試料(Bi、Cd、およびPbの各サンプル1〜3)におけるBi、Cd、Pbの添加量を表2に示す。
Figure 2020193939
そして50mLに定容した各定量用試料(サンプル1〜3)に含有されるBi、Cd、Pbの定量分析結果を表3に示す。
そして表3に示すBi、Cd、Pbの定量分析結果より、ブランク(サンプル1)を除く各定量用試料(サンプル2、3)に含有される各金属元素の回収量の計算結果を表4に示す。さらに、表2に示したBi、Cd、Pbの各金属元素の添加量と、表4に示した各金属元素の回収量の計算結果より、実施例1における各金属元素の回収率を計算した結果を表5に示す。
上述した、Bi、Cd、Pbの定量分析結果より、ブランク(サンプル1)を除く各定量用試料(サンプル2、3)に含有される各金属元素の回収量の計算方法について説明する。
2の番号がついた各サンプルおよび3の番号がついた各サンプルから、それぞれ対応する1の番号がついたサンプル(ブランク)の数値を差し引き、得られた値から測定した溶液中における標準溶液に由来したBi、CdおよびPb濃度を求めたものである。当該標準溶液に由来したBi、CdおよびPb濃度の数値から、試料溶液(50mL)中の各元素の重量を求めた。
例えば0.5μg(0.1ppm)のBiを添加したサンプルの場合、Biの回収量は0.473gであったことから、回収率は約95%と計算されたものである。
Figure 2020193939
Figure 2020193939
Figure 2020193939
表5に示した結果より、実施例1においては、各金属元素の添加量が1ppmである場合も、0.1ppmである場合も、Biサンプル1〜3、Cdサンプル1〜3およびPbサンプル1〜3に含有されていたBi、Cd、Pbは、いずれも添加した量の95質量%以上が回収されていることが判明した。
尚、検量線用標準液を用いた検量線法について説明する。
まず、検量線用標準液の作製方法について説明する。
50mLメスフラスコへ、濃度10g/LのEDTA・2NH水溶液を1mLと濃度240g/LのNHCl水溶液13mLとを添加し、純水で50mLに定容し、各金属元素の検量線用標準液(ブランク)を調製した。
次に、50mLメスフラスコへ、濃度10mg/LのBi、Cd、およびPbの混合水溶液を0.5mL添加し、濃度50g/LのEDTA・2NH水溶液5mLと濃度240g/LのNHC水溶液13mLとを添加し、純水で50mLに定容し、各金属元素の検量線用標準液1(100ppb)を調製した。
さらに、50mLメスフラスコに濃度10mg/LのBi、Cd、およびPbの混合水溶液を1mL添加し、濃度50g/LのEDTA・2NH水溶液5mLと濃度240g/LのNHCl水溶液13mLとを添加し、純水で50mLに定容し、各金属元素の検量線用標準液2(200ppb)を調製した。
調製された、検量線用標準液(ブランク)、検量線用標準液1(100ppb)、および検量線用標準液2(200ppb)について表6に示す。
Figure 2020193939
尚、検量線用標準液(ブランク)、1、および2には、実際のサンプルに含有されていると考えられるのと同量のEDTA・2NHやNHClを含有させ、液性をサンプル液と類似のものとした。これは、EDTA・2NHやNHClの存在や、存在量により、Bi、Cd、およびPbに係るICP−MSの測定強度が変わる可能性を回避する為である。
[6]Bi、Cd、Cr、Cu、Fe、Pb、Pd、およびTeの定量分析
金属元素としてBi、Cd、Cr、Cu、Fe、Pb、Pd、およびTeを選択し、銀溶液への金属添加量を1.0μg(0.2ppm)、10μg(2ppm)とした以外は、上記[1]〜[5]で説明した操作および測定と同様の操作及び測定を実施し、各金属元素の回収率を測定した。
得られた測定結果を表7に示す。
Figure 2020193939
[7]まとめ
本発明によれば、銀に含有される銀以外の多種類の金属元素がppmオーダー以下の水準であっても高い回収率で回収できることが判明した。従って、本発明の定量用試料の調製方法により調製された定量用試料を、高精度の定量分析に供することにより、高い精度をもって(測定装置を銀汚染することなく)定量可能である。
(実施例2)
本発明において、攪拌操作を実施して得られた混合液から塩化銀を生成する際に添加する塩化物イオン源として、塩酸、塩化ナトリウム、および、塩化アンモニウムの3種を準備し、それらの比較を行った。
[1]Biサンプル溶液、Cdサンプル溶液およびPbサンプル溶液の調製
純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱溶解操作を実施し、銀を溶解した。
このような操作を3回行って、3個の同様な溶液Biサンプルa1(ブランク)、Biサンプルb1(ブランク)およびBiサンプルc1(ブランク)を調製した。
次に、純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、濃度10mg/LのBi標準液を2.5mL添加し、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱溶解操作を実施し、銀を溶解した。
このような操作を3回行って、3個の同様な溶液Biサンプルa2、Biサンプルb2およびBiサンプルc2を調製した。
調製されたBiサンプルa1〜c1(ブランク)、Biサンプルa2〜c2の各サンプルを、250℃で30分加熱して、シラップ状とした。なお、上記加熱により硝酸はサンプル中から揮発した。この結果、調製されたBiサンプルa1〜c1(ブランク)、Biサンプルa2〜c2の各サンプルのpHは3以上7以下であった(pH試験紙により確認した)。
金属元素種をBiからCdまたはPbへ代替した以外は、上述したBiサンプル調製と同様の操作により、Cdサンプルa1〜c1(ブランク)、Cdサンプルa2〜c2、Pbサンプルa1〜c1(ブランク)、Pbサンプルa2〜c2を調製した。
[2]EDTAおよび塩化物イオン源の添加
得られた各シラップ状のサンプルへ、水25mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱し15分間撹拌して溶液状とし、これに濃度50g/LのEDTA・2Na水溶液又は濃度50g/LのEDTA・2NH水溶液を5mL添加し(下記で説明する、塩化物イオン源として塩酸又は塩化ナトリウムを添加した系ではEDTA・2Na水溶液を、塩化物イオン源として塩化アンモニウムを添加した系ではEDTA・2NH水溶液を添加した)、撹拌操作し、混合液を調製した。EDTA・2Na水溶液およびEDTA・2NH水溶液のいずれもpHは約4であるので、サンプルへの水添加、加熱撹拌、いずれかの水溶液の添加、撹拌のいずれの段階においても、サンプルのpHは3以上7以下の範囲にある。
Biサンプルa1(ブランク)とa2、Cdサンプルa1(ブランク)とa2、およびPbサンプルa1(ブランク)とa2に対しては、塩化物イオン源として塩酸(塩化水素濃度:35.0〜37.0質量%)6.5mLをそれぞれ添加し、
Biサンプルb1(ブランク)とb2、Cdサンプルb1(ブランク)とb2、およびPbサンプルb1(ブランク)とb2に対しては、塩化物イオン源として濃度300g/Lの塩化ナトリウム水溶液11mLをそれぞれ添加し、
Biサンプルc1(ブランク)とc2、Cdサンプルc1(ブランク)とc2、およびPbサンプルc1(ブランク)とc2に対しては、塩化物イオン源として濃度240g/Lの塩化アンモニウム水溶液13mLをそれぞれ添加し、
各サンプルをそれぞれ撹拌操作し(AgClの沈殿が生成した)、150℃のヒーターを用いて30分間加熱して沈殿含有液を調製した。塩酸を添加した場合は、pHは3未満となり、塩化ナトリウム水溶液を添加した場合は、pHは実質変動せず3以上7以下の範囲にあり、塩化アンモニウム水溶液を添加した場合は、上記実施例1の場合と同様にpHは3以上7以下の範囲にある。
[3]固液分離と定容操作
調製した各沈殿含有液の液体成分を、それぞれデカンテーションで採取し、50mLメスフラスコに移した。残存する固体成分(AgCl)に純水5mLを加えて撹拌し、液体成分を再度採取し、前記ビーカーに移した。この操作を3回行った後、あわせられた液体成分に純水を添加して50mLに定容した。
[4]機器分析
定容した各液体成分を試料として、ICP−OESを用いた機器分析を行って、Bi、Cd、Pbの定量分析を行った。
ICP−OESの設定条件を表8、表9に、機器分析結果を表10に示す。
Figure 2020193939
Figure 2020193939
Figure 2020193939
[5]まとめ
塩化物イオン源として塩酸を添加した場合、Pb、Bi、Cdとも回収率が低下した。これは塩酸の添加により沈殿含有液のpHが低下し、EDTAと金属元素との錯体が壊れたためであると考えられる。
次に、塩化ナトリウムを添加した場合、Pb、Bi、Cdとも良好な回収率を得ることが出来た。しかしながら、ICP−OES測定においてプラズマの状態が不安定になってしまった。この為、連続運転での測定を実施することが出来なかった。具体的には、プラズマが30分間とたたずに消えてしまった。
これに対し、塩化アンモニウムを添加した場合、Pb、Bi、Cdとも良好な回収率を得ることが出来た。さらに、ICP−OES測定においてプラズマの状態が安定し、連続運転での迅速な測定を実施することが出来た。具体的には、プラズマを1時間以上安定して点灯出来た。
(実施例3)
本発明において、錯体形成物質であるEDTA・2NHを添加する場合と、添加しない場合とにおいてPb、Bi、Cdの回収率の比較を行った。
[1]Biサンプル溶液、Cdサンプル溶液およびPbサンプル溶液の調製
純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱溶解操作し、銀を溶解した。
このような操作を2回行って、2個の同様な溶液Biサンプルa1(ブランク)、Biサンプルb1(ブランク)を調製した。
次に、純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、濃度10mg/LのBi標準液を2.5mL添加し、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱溶解操作し、銀を溶解した。
このような操作を2回行って、2個の同様な溶液Biサンプルa2、Biサンプルb2を調製した。
調製されたBiサンプルa1(ブランク)、Biサンプルb1(ブランク)、Biサンプルa2、Biサンプルb2の各サンプルを、250℃で30分加熱して、シラップ状にした。なお、上記加熱により硝酸はサンプル中から揮発した。この結果、調製されたBiサンプルa1(ブランク)、b1(ブランク)、Biサンプルa2、b2の各サンプルのpHは3以上7以下であった(pH試験紙で確認した)。
金属元素種をBiからCdまたはPbへ代替した以外は、上述したBiサンプル調製と同様の操作により、Cdサンプルa1(ブランク)、Cdサンプルb1(ブランク)、Cdサンプルa2、Cdサンプルb2、Pbサンプルa1(ブランク)、Pbサンプルb1(ブランク)、Pbサンプルa2、Pbサンプルb2を調製した。
[2]EDTA・2NHおよび塩化物イオン源の添加
調製された各シラップ状のサンプルへ水25mLを添加し、150℃のヒーターで加熱し15分間撹拌して溶液状とした。
Biサンプルa1(ブランク)とBiサンプルa2、Cdサンプルa1(ブランク)とCdサンプルa2、Pbサンプルa1(ブランク)とPbサンプルa2には、EDTA・2NH水溶液を添加せずに混合液とした(サンプルのpHは3以上7以下のままである)。
一方、Biサンプルb1(ブランク)とBiサンプルb2、Cdサンプルb1(ブランク)とCdサンプルb2、Pbサンプルb1(ブランク)とPbサンプルb2には、濃度50g/LのEDTA・2NH水溶液をそれぞれ5mL添加し、撹拌操作し、混合液を調製した(上記実施例1の場合と同様に、pHは3以上7以下のままである)。
調製した各混合液へ濃度240g/Lの塩化アンモニウム13mLを、それぞれ添加して撹拌操作し(AgClの沈殿が生成した)、150℃のヒーターを用いて30分間加熱して沈殿含有液を調製した(上記実施例1の場合と同様に、pHは3以上7以下のままである)。
[4]固液分離と定容操作
各サンプルの沈殿含有液に対し、実施例2の「[3]固液分離と定容操作」にて説明したものと同様の操作を実施し、各サンプル毎に50mLに定容された液体成分を得た。
[5]機器分析
定容された各液体成分を試料として、ICP−OESを用いた機器分析を行って、Bi、Cd、Pbの定量分析を行った。
尚、ICP−OESの設定条件は実施例2と同様である。
機器分析結果を表11に示す。
Figure 2020193939
また、Biサンプルb1から得られた定量用試料中の銀濃度を上記と同様な方法で定量したところ、2mg/Lであり、スタートの銀の実質全てが除去されたことが判明した。
[6]まとめ
EDTA・2NHの添加を実施しない場合、Bi、Cd、Pbの回収率は15質量%以下に低下したが、EDTA・2NHの添加を実施した場合、回収率が96質量%以上に向上した。
これはEDTA・2NHにより、Bi、Cd、Pbの塩化銀への吸着が抑止された為と考えられる。
(比較例1)
本発明との比較の為、特許文献1に記載された従来技術に準拠した分析を実施した。
具体的には、被処理対象の銀を硝酸で溶解後、塩酸を添加して塩化銀を生成させた。その後、生成した塩化銀を分離し、EDTAで浸出することにより当該塩化銀に吸着しているPb、Bi、Cdを再溶出し定量分析した。
[1]Biサンプル溶液、Cdサンプル溶液およびPbサンプル溶液の調製
純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱しつつ撹拌操作し、銀を溶解して、溶液Biサンプル1(ブランク)を調製した。
次に、純度99.999質量%の銀5gを300mLガラスビーカーに取り、濃度10mg/LのBi標準液を2.5mL添加し、これに水20mLを添加し、続けて硝酸10mLを添加し、150℃のヒーターを用いて加熱しつつ撹拌し、銀を溶解して、Biサンプル2を調製した。
上述したBiサンプル調製と同様であって添加する金属の種類を変えた操作により、Cdサンプル1(ブランク)、Cdサンプル2、Pbサンプル1(ブランク)、Pbサンプル2を調製した。
[2]塩化物イオン源の添加
各サンプルに塩化物イオン源として塩酸(塩化水素濃度:35.0〜37.0質量%)6.5mLを添加し、撹拌してAgClの沈殿を生成させた。そして、ビーカーへ時計皿で蓋をし、150℃のヒーターを用いて30分間加熱して沈殿を熟成した。
当該加熱においては、サンプルに添加された硝酸の全てが揮発するということはなく、残存する。即ち、特許文献1に記載されているところの「酸性水溶液中で酸化処理」が実施されている。
[3]固液分離と定容操作(その1)
沈殿が熟成したら、各サンプルに対してろ過操作を行って固液分離を行い、各試料をそれぞれ液体部分と沈殿部分とに分離した。
各液体部分には、それぞれ純水を添加して50mLに定容し、液体部分の定量分析試料を調製した。
[4]EDTA・2Naの添加
各沈殿部分へ、濃度50g/LのEDTA・2Na水溶液をそれぞれ5mLおよび純水25mLを添加し、150℃のヒーターを用いて30分間加熱して、AgClを含有する液を調製した。
[5]固液分離と定容操作(その2)
加熱後のAgClを含有する液をデカンテーションにより固液分離し、液体部分を採取し50mLメスフラスコに移した。
固体部分(AgCl)に純水5mLを加えて撹拌した後、デカンテーションにより固液分離し、液体部分を再度採取し、前記50mLメスフラスコに移した。当該操作を3回行った後、前記50mLメスフラスコにて併せられた液体部分へ純水を添加し、体積を50mLに定容し、沈殿部分の定量分析試料を調製した。
[6]機器分析
調製した液体部分および沈殿部分の定量分析試料を試料として、ICP−OESを用いた機器分析を行って、Bi、Cd、Pbの定量分析を行った。
尚、ICP−OESの設定条件は実施例2と同様である。
機器分析結果を表12に示す。
Figure 2020193939
[7]まとめ
比較例1では、液体部分および沈殿部分の定量分析値を合計してもCdの回収率が51質量%と低い為、Cdを高精度定量することは難しいことが判明した。さらに同様に、液体部分および沈殿部分の定量分析を合計しても、Biの回収率は79質量%、Pbの回収率は87質量%であり、BiやPbも高精度定量することには問題がある。
11 加熱溶解操作
12 加熱攪拌操作
13 攪拌操作
14 攪拌操作
15 加熱操作
16 固液分離操作
17 定容操作
18 機器分析操作
21 被処理対象の銀
22 水
23 硝酸
24 溶解液
25 水
26 EDTAまたはその誘導体
27 混合液
28 塩化物イオン源
29 沈殿含有液
30 塩化銀
31 銀
32 定量用試料

Claims (11)

  1. 被処理対象の銀から、前記被処理対象の銀中の銀以外の金属元素を定量するための定量用試料を調製する方法であって、
    前記被処理対象の銀を硝酸で溶解して溶解液を得る工程1と、
    前記工程1で得られた前記溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記溶解液へEDTAまたはその誘導体を添加して混合液を得る工程2と、
    前記工程2で得られた前記混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成させて沈殿含有液を得る工程3と、
    前記工程3で得られた前記沈殿含有液を固液分離し、液体成分として定量用試料を得る工程4とを有する定量用試料の調製方法。
  2. 前記被処理対象の銀中における銀の純度が99質量%以上である、請求項1に記載の定量用試料の調製方法。
  3. 前記被処理対象の銀中における銀の純度が99.99質量%以上である、請求項1または2に記載の定量用試料の調製方法。
  4. 前記定量用試料が、前記被処理対象の銀中の銀以外の金属元素としてBi、Cd、Pb、Cr、Cu、Fe、PdおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも1種の定量に使用される、請求項1から3のいずれかに記載の定量用試料の調製方法。
  5. 前記工程2において、前記溶解液へEDTAのアンモニウム塩を添加し、前記工程3において、前記混合液へ塩化アンモニウムを添加する、請求項1から4のいずれかに記載の定量用試料の調製方法。
  6. 前記工程3において、前記被処理対象の銀中における銀の純度が100質量%であると仮定した場合の銀量に対して、1当量以上5当量以下の前記塩化物イオン源を前記混合液へ添加する、請求項1から5のいずれかに記載の定量用試料の調製方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載された定量用試料の調製方法により調製された前記定量用試料中の銀以外の金属元素を、質量分析、発光分光分析または原子吸光分光分析により定量する、定量用試料中の金属元素の定量方法。
  8. 請求項5に記載された定量用試料の調製方法により調製された前記定量用試料中の銀以外の金属元素を、質量分析又は発光分光分析により定量し、前記定量において、前記定量用試料中の金属元素を誘導結合プラズマにより原子化またはイオン化する、定量用試料中の金属元素の定量方法。
  9. 被処理対象の銀を硝酸で溶解して溶解液を得る工程1と、
    前記工程1で得られた前記溶解液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記溶解液へEDTAまたはその誘導体を添加して混合液を得る工程2と、
    前記工程2で得られた前記混合液のpHを3以上7以下に維持しながら、前記混合液へ塩化物イオン源を添加して塩化銀の沈殿を形成する工程3とを有する、塩化銀の製造方法。
  10. 前記工程3で得られた塩化銀の沈殿を含有する液を固液分離し、固体成分として塩化銀を回収する工程4を更に有する、請求項9に記載の塩化銀の製造方法。
  11. 請求項9または10に記載の塩化銀の製造方法で製造された前記塩化銀を還元して金属銀を製造する金属銀の製造方法。
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