JP4889608B2 - アルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法 - Google Patents

アルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法に関する。詳しくは、アルミニウム系セラミックス中の金属等の不純物を簡便に、高精度かつ高感度に分析することが可能な分析方法に関する。
窒化アルミニウム又はアルミナ等のアルミニウム系セラミックスは、高い熱伝導性や電気絶縁性を有することから、半導体基板材料やヒートシンク等の放熱材料として広く使用されている。半導体等の高集積化及び小型化に伴い、窒化アルミニウム又はアルミナの粉末及び焼結体においても更なる高純度化が要求されており、上記化合物中に含有する金属等の微量不純物の分析方法においても、測定精度及び測定感度の高度化が要求されている。
従来、上記アルミニウム系セラミックス中の微量不純物の測定方法としては、粉末状の測定試料及び塩酸や硫酸等の酸を加圧容器に入れ、酸加圧分解して試料溶液を調整し、次いで誘導結合プラズマ発光分析法にて測定する方法が提案されている(非特許文献1及び2参照)。また、窒化アルミニウムやアルミナ等の難分解性試料に塩酸や硫酸等の酸を加え次いで、マイクロ波の出力を徐々に高めながらマイクロ波加熱により酸分解させて試料を調整し、次いで、誘導結合プラズマ発光分析法や原子吸光分析法により測定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
上記の測定方法での検出限界は数百ppbwから1ppmw程度と高感度に測定することが可能であるが、上記のとおりアルミニウム系セラミックスの用途である半導体基板材料やヒートシンク等の放熱材料においては、金属等の微量不純物の混入が厳しく制限されており、該不純物の測定においても、更なる測定精度及び測定感度の高度化が必要であった。また、上記の調製方法にて調製した測定試料を、誘導結合プラズマ発光分析装置より高感度な誘導結合プラズマ質量分析装置にて測定を行う場合、測定試料溶液中に数千ppmのアルミニウムが存在し、これが金属等の不純物に対して多量に存在するため、測定には高倍率の希釈が必要であり、その結果、測定感度の低下が著しく、誘導結合プラズマ質量分析法の適用が困難であるという問題点があった。さらに、加圧分解に塩酸を使用する場合には、腐食等の問題のため加圧分解用の容器としてガラス製容器を使用する必要があるが、加圧分解時のガラス成分の測定試料へのコンタミや、加圧分解時のガラス容器の破裂の危険性等の点で問題とされていた。
一方、金属アルミニウム中の金属等の不純物の定量方法としては、該アルミニウム測定試料削片に塩酸を添加して加熱溶解させ、該溶解液中のアルミニウムと金属等の不純物を陰イオン交換樹脂により分離し、定量する方法が提案されている(非特許文献3参照)。
しかしながら、上記塩酸による加熱溶解をアルミニウム系セラミックスに適用した場合、非特許文献2にも記載されているように、塩酸では完全に分解せず測定試料の一部が残存する。従って上記試料に含有する金属等の不純物の回収率が低く、正確な定量測定が困難であり、測定精度の点でも問題を有する。さらに、上記したように、塩酸による加圧分解では、測定試料へのコンタミ等の問題が懸念される。
特開平 8−68735号公報 社団法人日本セラミック協会、日本セラミック協会規格 JCRS 105−1995「ファインセラミックス用窒化アルミニウム微粉末の化学分析方法」、社団法人日本セラミック協会、平成7年6月10日 平河喜美男、JIS R 9301−3−4「アルミナ粉末−第3部:化学分析方法−4:加圧酸分解」、財団法人日本規格協会、平成11年9月30日 平野四蔵、他2名、「高純度アルミニウム中の極微量十金属不純物の分離定量」、工業化学雑誌、日本化学会、昭和34年10月、第62巻、第10号、p.1491−1494
そこで、本発明の目的は、窒化アルミニウムおよびアルミナ等のアルミニウム系セラミックス中の金属等の不純物を、従来法より簡便で、高精度かつ高感度で定量できる分析方法を提供する事を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、アルミニウム系セラミックス中のアルミニウムと金属等の不純物の陰イオン交換樹脂による分離には、塩酸水溶液にする事が必要であることを確認した。そこで、アルミニウムと重金属不純物を陰イオン交換樹脂により分離する際に、一旦硫酸加圧分解法により、アルミニウム系セラミックスを完全に分解せしめた後、該分解液を特定の方法により溶媒置換して塩酸水溶液とすることにより、アルミニウムと重金属不純物を確実に分離することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(1)硫酸加圧分解法により、アルミニウム系セラミックスを分解する分解工程、(2)上記分解工程により得られた分解液より遊離の硫酸を除去して残渣を得る硫酸除去工程、(3)上記硫酸除去工程により得られた残渣を塩酸に溶解せしめて、残渣含有塩酸水溶液を調製する残渣溶解工程、(4)上記残渣溶解工程より得られた残渣含有塩酸水溶液を陰イオン交換樹脂と接触せしめる吸着工程、(5)上記吸着工程により陰イオン交換樹脂に吸着した成分を脱着する脱着工程、(6)上記脱着工程により陰イオン交換樹脂より脱着された成分の分析を行う分析工程を含むことを特徴とするアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法である。
本発明の分析方法によれば、アルミニウム系セラミックス中に数千ppmと高濃度に存在するアルミニウムと、金属等の不純物とを確実に分離し、さらに、該不純物を効率良く回収することが可能である。この結果、本発明の分析方法で調整された測定溶液中に残存するアルミニウムは10ppm以下となるため、従来アルミニウム系セラミックス中の金属等の不純物の分析に適用が困難であった、誘導結合プラズマ質量分析法等への適用が可能であり、該不純物の分析を高感度に行うことが可能である。さらに、本発明の分析方法では、試料となるアルミニウム系セラミックスの分解を硫酸加圧分解法で行うことが可能であるため、上記試料の形状としては、粉末のみならず、小片状や塊状であっても破砕等の前処理を必要とせずに短時間で分解することが可能である。
本発明におけるアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法は、上記(1)〜(5)の工程により、該アルミニウム系セラミックス中のアルミニウムと金属等の不純物(以下単に不純物とも言う)とを分離することが特徴である。上記の分析方法により、上記アルミニウム系セラミックス中の不純物、例えば、Fe、Co、Cu、Zn、Cd、Sn、In、Sb、Bi等の不純物を、高精度かつ高感度で定量することが可能である。
(アルミニウム系セラミックス化合物)
本発明の分析方法の対象試料であるアルミニウム系セラミックスとしては、既知のアルミニウム系セラミックスを何ら制限なく使用することが可能である。該アルミニウム系セラミックスを具体的に挙げれば、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。これらの内、半導体基板材料に用いられ、高純度化が要求され、そのため、分析方法においても高い測定精度及び測定感度を要求される点から、窒化アルミニウム又はアルミナが好適である。
また、上記アルミニウム系セラミックスの形状としては、硫酸による加圧分解が可能であれば、特に制限なく、粉末状でも、焼結体等の小片状、あるいは塊状であっても使用することが可能である。特に、破砕等の前処理を必要とせずに簡便に測定溶液の調整が可能である点で、焼結体等の小片状が好適である。本発明の分析方法において分析に供するアルミニウム系セラミックス(以下分析用試料とも称する)の必要量は、後述の分析工程において採用する分析方法により適宜決定すればよいが、分析工程の分析方法として誘導結合プラズマ質量分析法を用いる際には上記分析用試料として通常0.5g〜1.0g程度使用すれば十分である。この時、上記分析試料中に含有するアルミニウムは数千ppmである。
(分解工程)
本発明の分析方法において、まず最初に硫酸加圧分解法により上記分析用試料を分解する分解工程を行う。硫酸加圧分解法としては、前記非特許文献2に記載の方法等、公知の方法を特に制限なく使用することが可能である。図1は本発明の分解工程において好適な加圧分解容器の断面図である。内容器2を有する加圧分解容器3に、分析用試料と硫酸を加えた、試料分解用容器1を収納し、該加圧分解容器を外部から加熱することで、加圧容器内が加圧され、加圧分解を行うことが可能となる。上記の内容器及び試料分解容器は、硫酸に直接接触する部分であり、容器の腐食による試料の汚染を防止する観点から、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製が好適である。また、上記試料容器を加熱する方法としては、上記分析試料を硫酸により加圧分解を行うのに十分な温度まで加熱可能であれば、特に制限なく公知の加熱方法を適宜選択することが可能であるが、作業が簡便であるという点等から恒温乾燥機やオーブンにより加熱するのが好適である。
上記加圧分解における、硫酸の使用量や、加圧分解に要する温度、時間等の条件については、アルミニウム系セラミックスが全量分解する条件であれば特に制限はないが、通常、上記アルミニウム系セラミックスの分析用試料1gに対し(1:2)〜(1:4)硫酸15ml〜20ml加え、200〜230℃の温度で12〜16時間、加圧分解すれば十分である。
(硫酸除去工程)
本発明の分析方法では、上記分解工程にて加圧分解された分析用試料の分解液は、次いで、遊離の硫酸を除去して残渣を得る硫酸除去工程を行うことが重要である。即ち、遊離の硫酸が残存した状態では、後述の残渣が溶解した塩酸水溶液を調整時において、正確な塩酸濃度の調整ができず、その後の陰イオン交換樹脂による吸着工程を行うと、前記不純物の陰イオン交換樹脂への吸着が阻害され、アルミニウムとの分離が不十分となる。このため、上記不純物の回収率が低下するばかりでなく、測定精度や測定感度を低下させることになるため、遊離の硫酸を除去することが必要である。
上記硫酸を除去する方法としては、減圧留去により遊離の硫酸を除去する方法や、硫酸に対して不活性なガスを吹き込みながら、加熱により遊離の硫酸を除去する方法等が挙げられる。上記硫酸の除去方法のうち、効率よく硫酸の除去が可能であるという点から、硫酸に対して不活性なガスを吹き込みながら、加熱により遊離の硫酸を除去する方法が好適である。図2は、本発明の硫酸除去工程において好適な硫酸除去装置の概略図である。不活性ガス吸入口4及びガス排出口5を備えた、試料容器6に上記分解工程にて得られた分解液を移液し、容器外部を加熱しながら、不活性ガス吸入口4より不活性ガスを吹き込み、蒸発した硫酸を不活性ガスと共にガス排出口5から排出することで、上記分解液から遊離の硫酸を除去することが可能である。
上記不活性ガスは、硫酸に対して不活性であれば特に制限なく使用することが可能であるが、入手が容易である点、及び試料の汚染等を勘案して、高純度窒素ガスを用いるのが好適である。
また上記試料容器は、硫酸による腐食がないものであれば特に制限なく使用することが可能であるが、容器内部を観察することが可能で、高純度な材料が入手できる点等から石英容器を用いるのが好適である。
さらに、上記試料容器を加熱する方法としては、硫酸が除去できるのに十分な温度、具体的には250〜300℃程度まで加熱可能であれば、特に制限なく公知の加熱方法を選択することが可能であるが、作業が簡便であるという点及び後述する残渣溶解工程での溶解方法を勘案して、マイクロ波照射により加熱するのが好適である。
上記マイクロ波照射により加熱する際の照射するマイクロ波の出力及び照射時間は、試料容器内の遊離の硫酸を完全に除去できれば、適宜選択することが可能である。通常は15ml程度の硫酸を除去する場合、500W〜700Wの出力で、30分〜40分程度で十分である。また、遊離の硫酸の除去の終点確認は、試料容器内に遊離の硫酸の白煙が生じなくなることで確認することが可能である。
(残渣溶解工程)
本発明の分析方法において、硫酸除去工程にて得られた残渣は、次いで、塩酸に溶解せしめて、残渣含有塩酸水溶液を調製する残渣溶解工程を行う。残渣含有塩酸水溶液中では、前記不純物は、塩酸と塩化物錯イオンを生成するが、アルミニウムは塩化物錯イオンを生成しない。従って、残渣含有塩酸水溶液は、後述の吸着工程を行うことで、上記不純物の塩化物錯イオンは陰イオン交換樹脂に吸着されるが、アルミニウムは該樹脂に吸着されずに上記塩酸水溶液と共に留出する。吸着工程に次いで、陰イオン交換樹脂に吸着された不純物の塩化物錯イオンの脱着を行うことにより、上記不純物とアルミニウムを確実に分離し、さらに不純物を高回収率で回収することが可能である。
本発明において、残渣含有塩酸水溶液中の塩酸濃度は、以後の吸着工程及び脱着工程により回収される不純物の回収率を勘案して決定され、該塩酸水溶液中の塩酸濃度としては、通常1〜8mol/l(以下、モル濃度をMと略記する)の範囲から選択される。上記不純物の種類によっては、残渣含有塩酸水溶液中の塩酸濃度により、以後の工程を経て回収される該不純物の回収率に差が生じることがある。上記回収率は、分析工程における分析結果の測定精度に影響するため、塩酸濃度により回収率に差が生じる場合には、予備実験として複数の塩酸濃度の残渣含有塩酸水溶液を調製して不純物の回収を行い、回収率の高い塩酸濃度を採用することが好ましい。上記の回収率が高いほど不純物の分析を精度良く行うことが可能であり、回収率が70%以上となる塩酸濃度を選択することが推奨される。
具体的には、後述の参考例及び実施例にも示すように、回収率に差が生じるSn、In、Sbでは4M程度の比較的低濃度が、Co、Cuについては、8M程度の比較的高濃度の塩酸濃度が採用される。また、回収率に差が生じないFe、Zn、Cd、Biでは、いずれの塩酸濃度でも適宜選択することが可能である。
上記残渣含有塩酸水溶液の調製方法としては、残渣に直接、塩酸を添加し残渣を溶解させる方法、残渣を水で溶解させ、次いで、塩酸を添加することによって、上記塩酸水溶液を調製する方法等が挙げられる。また、上記の調整方法において、残渣を溶解させる際に、作業時間の短縮の点から加熱を行うことも可能である。
上述したように、残渣含有塩酸水溶液の塩酸濃度によって、不純物の回収率に差が生じる場合には、上記塩酸濃度を正確に調製する必要がある。残渣の溶解時に加熱しても、正確な塩酸濃度の調整が可能である点で、残渣をあらかじめ水で溶解させ、次いで、塩酸を添加することによって、上記塩酸水溶液を調製する方法が好適である。かかる場合には、残渣を溶解させるために使用する水も勘案して所定の塩酸濃度の残渣含有塩酸水溶液を調製すればよい。
上記加熱方法としては、前記硫酸除去工程と同様の方法で挙げられるが、作業が簡便であるという点等からマイクロ波照射等により加熱する方法が好適である。マイクロ波照射により加熱する際の照射するマイクロ波の出力及び照射時間は、試料容器内の残渣を完全に溶解させるものであれば、適宜選択することが可能である。通常は250W〜500Wの出力で、20分〜40分程度で十分である。
上記残渣含有塩酸水溶液の調製方法として、残渣を水で溶解させ、次いで、塩酸を添加する調整方法を適用する場合には、以後の吸着工程に供する溶解して含有する塩酸水溶液の量を減少させて効率よく作業を行える点から、残渣を水で溶解させた後、該水溶液を残渣が析出しない程度まで濃縮した後、塩酸を添加して調製するのが好適である。
(吸着工程)
本発明の分析方法では、上記残渣含有塩酸水溶液を陰イオン交換樹脂と接触せしめる吸着工程を行う。残渣含有塩酸水溶液中では、前記不純物は、塩酸と塩化物錯イオンを生成するが、アルミニウムは塩化物錯イオンを生成しない。従って、吸着工程を行うことで、上記不純物の塩化物錯イオンは陰イオン交換樹脂に吸着されるが、アルミニウムは該樹脂に吸着されず、不純物とアルミニウムを確実に分離することが可能である。
なお、上記の残渣には、アルミニウムの硫酸塩が存在するため、残渣溶解工程により調製した塩酸水溶液中には硫酸イオンが存在するが、その量は、塩酸水溶液に対して少量であるため、アルミニウムと不純物の分離に影響せず、以後の脱着工程において、該不純物を効率良く回収することが可能である。
本発明の分析方法において、使用する陰イオン交換樹脂としては、金属の塩化物錯イオンを吸着させるものであれば良く、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。より具体的には、交換基が4級アンモニウム基である、陰イオン交換樹脂が最も好適である。上記強塩基性陰イオン交換樹脂としては、ダイヤイオン(商品名、三菱化学株式会社製)やアンバーライト(商品名、ローム・アンド・ハース株式会社製)等が挙げられる。
残渣含有塩酸水溶液を陰イオン交換樹脂と接触せしめる方法としては、該塩酸水溶液と陰イオン交換樹脂を接触せしめ、撹拌後、陰イオン交換樹脂をろ過等により分離するバッチ法、又は、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを調製し、上記残渣が溶解した塩酸水溶液をカラムに通液して陰イオン交換樹脂と接触せしめるカラム法のいずれも可能である。そのうち、本発明の処理方法においては、後述する脱着工程を連続的に行うことが可能であるという点、及び、各操作時における外部からの汚染の混入を防止する点からカラム法を使用することが好ましい。
また、上記カラム法において、残渣が溶解した塩酸水溶液の供給方法としては、操作が簡便である点、及び汚染を防止する点から、送液ポンプを使用し、かつ密閉系にすることが好ましい。
(脱着工程)
上記吸着工程にて、陰イオン交換樹脂に吸着された前記不純物は、次いで脱着工程により、陰イオン交換樹脂から分離、回収する。上記不純物は、塩化物錯イオンの状態で陰イオン交換樹脂に吸着しており、塩酸以外の酸を通液することにより錯体形成が阻害させることで、該樹脂からの脱着が可能である。
脱着工程に使用する酸としては、硫酸、硝酸、フッ化水素酸等の鉱酸が挙げられ、脱着させる不純物の種類に応じて適宜選択することが可能である。後述する分析工程における分析方法として誘導結合プラズマ質量分析法を用いる場合には、該分析方法に供する測定溶液は硝酸溶液で調製するという点で、上記の酸としては、硝酸を使用するのが好適である。また、脱着工程に使用する酸の濃度や酸の使用量については、吸着している金属等の不純物を脱着させるのに十分な濃度、量を使用すれば特に制限なく、以後の分析工程の条件等を勘案して適宜決定すればよい。
前記不純物のうち、Biはフッ化水素酸により陰イオン交換樹脂からの脱着が可能であるが、フッ化水素酸を加熱除去した後、硝酸溶液等に調製することで、誘導結合プラズマ質量分析法により分析することが可能である。
上記の各工程を行い、前記したアルミニウム系セラミックス分析用試料中の不純物をアルミニウムと分離、回収することで、当初分析用試料中に数千ppm存在していたアルミニウムを10ppm以下とすることが可能であり、分析用試料中に存在するアルミニウムによる測定感度の低下を抑制することが可能である。
(分析工程)
本発明の分析方法において、上記脱着工程にて陰イオン交換樹脂から脱着した成分は、次いで分析工程を行うことで、アルミニウム系セラミックス中の不純物の分析を行う。上記成分の分析方法としては、金属元素の分析方法として公知の分析方法を特に制限なく使用することが可能である。かかる分析方法を例示すれば、原子吸光分析法、誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量分析法等の分析方法が挙げられるが、微量元素の分析を高感度、高精度に行うことが可能であるという点で誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量分析法が好適である。
上記誘導結合プラズマ質量分析法による測定は、通常、プラズマ照射時の温度が比較的低いクールプラズマ法や、該温度が比較的高いホットプラズマ法で測定される。Fe、Co、Cu等の高感度分析は、通常クールプラズマで可能であるが、マトリックスの影響で感度低下を起こしやすい。これに対し、反応ガスとして、例えば、水素やヘリウムガスを用いたコリジョンセル機能を有する誘導結合プラズマ質量分析装置を使用することで、ホットプラズマ条件で、Fe、Co、Cu等の分析が可能である点で好適である。また、コリジョンセルは種々の分子イオン干渉を低減できる点でも好適である。さらに、上記の工程によりアルミニウムを分離した不純物中に微量残存するアルミニウムや高濃度の酸溶媒による感度増減を補正するために、内部標準法による測定が好ましい。内部標準法による測定に使用する内部標準元素としては、例えば、Sc、Y、Ce等が挙げられる。
以下、本発明を更に具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、測定には、誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent 7500cs(Agilent technologies社製))、及び誘導結合プラズマ発光分析装置(iCAP 6500 DUO(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。
参考例1
(回収率測定)
測定試料として、窒化アルミニウム粉末A0.75g、及び窒化アルミニウム粉末A0.75gに金属元素(Fe4000ng、Co、Cu、Zn、Cd、Sn、In、Sb、Bi各200ng)を添加したものを、それぞれ図1に示す加圧分解容器に加え、さらに硫酸(1:2)15mlを添加し、200℃で16時間加圧分解を行った。得られた分解液を図2に示す石英製の硫酸除去装置に移し、高純度窒素ガスを吹き込みながら、試料容器外部から500Wのマイクロウェーブを照射して、30分間加熱し、遊離の硫酸を除去した。いずれの試料においても、30分加熱後には試料容器中から遊離の硫酸の白煙は生じず、上記分解液中の遊離の硫酸が除去されたことを確認した。
上記の硫酸除去にて得られた残渣に、それぞれ超純水70mlを添加し、試料容器外部から200Wのマイクロウェーブを照射して、30分間加熱し、残渣の溶解と、残渣を溶解した水溶液の濃縮を行った。次いで、塩酸(30wt%〜35wt%)を添加して、4Mの残渣含有塩酸水溶液50mlを調製した。
4M硝酸、超純水、4M塩酸を順に通液した陰イオン交換樹脂(ダイヤイオン CA08P:商品名、三菱化学株式会社製)約5mlに、上記の工程で調製した残渣含有塩酸水溶液Aを通液して、不純物の塩化物錯イオンを吸着させた。続いて、4M塩酸を通液し、陰イオン交換樹脂に残存するアルミニウムを洗浄除去した。
上記不純物の塩化物錯イオンが吸着した陰イオン交換樹脂に、それぞれ4Mの硝酸25mlを通液してBiを除く不純物を溶出し、次いで50mlに定容することで測定溶液を調整した。上記Bi以外の元素を溶出させた陰イオン交換樹脂に、2Mフッ化水素酸25mlを通液し、Biを溶出させた。引き続き、500Wのマイクロウェーブを30分照射して、フッ酸を加熱除去後、5wt%硝酸50mlに定容し、測定溶液を調整した。
上記の工程により調製した測定溶液について内部標準法による誘導結合プラズマ質量分析法にて測定を行った。結果を表1に示す。回収率は、以下の式により算出した。
回収率(%)={(金属元素を添加した試料の測定値−窒化アルミニウムのみの測定値)/添加した金属元素の濃度}×100
Figure 0004889608
さらに、残渣含有塩酸水溶液の塩酸濃度を8Mとし、陰イオン交換樹脂に通液する塩酸濃度を8Mとした以外は上記と同様の操作にて残渣含有塩酸水溶液の塩酸濃度が8Mの場合の回収率を算出した。結果を表1に示す。
参考例2
(検出限界測定)
測定試料を入れずに参考例1と同様の操作で調整した測定溶液を用いて、空試験を3回行い、得られた定量値の3σから試料換算の検出限界を求めた。この時、上記の参考例の回収率の結果から、Sn、In、Sbは、4Mの残渣含有塩酸水溶液から調整した測定溶液を、Co、Cuは8Mの残渣含有塩酸水溶液から調整した測定溶液を用いた。また、回収率に差がない、Fe、Zn、Cd、Biは、4Mの残渣含有塩酸水溶液から調整した測定溶液を用いた。結果を表2に示す。
Figure 0004889608
実施例1
測定試料として窒化アルミニウム粉末B0.75gを使用し、上記参考例1と同様の操作で、4M及び8M残渣含有塩酸水溶液を調製し、さらに、上記参考例1と同様の操作で、それぞれ測定溶液を調製した。
調製した測定溶液を内部標準法による誘導結合プラズマ質量分析法にて測定を行った。この時、Fe、Zn、Cd、Sn、In、Sb、Biは、4Mの残渣含有塩酸水溶液から調整した測定溶液を、Co、Cuは8Mの残渣含有塩酸水溶液から調整した測定溶液を用いた。結果をそれぞれ表3に示す。なお、測定溶液に含有するアルミニウムは3ppmであった。
Figure 0004889608
比較例1
上記実施例1にて使用したものと同じ窒化アルミニウム粉末B0.75gに硫酸(1:2)15mlを加えて、硫酸(1:2)15mlを添加し、200℃で16時間加圧分解を行った。次いで硫酸(1:2)を加えて100mlに定容して測定溶液を調整し、誘導結合プラズマ発光分析法にて測定を行った。結果を上記表3に示す。なお、測定溶液に含有するアルミニウムは4820ppmであった。
実施例2
測定試料としてアルミナ粉末1.0gを使用し、硫酸加圧分解を220℃で16時間行った以外は上記実施例1と同様の操作で、測定溶液を調整し測定を行った。結果を上記表3に示す。なお、測定に先立ち、参考例1と同様の操作で4M及び8Mの残渣含有塩酸水溶液での回収率を測定したところ、上記表1と同様の結果を得た。
比較例2
測定試料としてアルミナ粉末1.0gを使用し、硫酸加圧分解を230℃で16時間加圧分解を行った以外は上記比較例1と同様の操作で、測定溶液を調整し測定を行った。結果を上記表3に示す。
実施例3
測定試料として窒化アルミニウム焼結体0.75gを使用した以外は上記実施例1と同様の操作で、測定溶液を調整し測定を行った。結果を上記表3に示す。
比較例3
測定試料として窒化アルミニウム焼結体0.75gを使用した以外は上記比較例1と同様の操作で、測定溶液を調整し測定を行った。結果を上記表3に示す。
本発明の分解工程において好適な加圧分解容器の断面図 本発明の硫酸除去工程において好適な硫酸除去装置の概略図
符号の説明
1 試料分解容器
2 内容器
3 加圧分解容器
4 不活性ガス吸入口
5 排出ガス排出口
6 試料容器

Claims (5)

  1. 下記の工程を含むことを特徴とするアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法。
    (1)硫酸加圧分解法により、アルミニウム系セラミックスを分解する分解工程
    (2)上記分解工程により得られた分解液より遊離の硫酸を除去して残渣を得る硫酸除去工程
    (3)上記硫酸除去工程により得られた残渣を塩酸に溶解せしめて、残渣含有塩酸水溶液を調製する残渣溶解工程
    (4)上記残渣溶解工程より得られた残渣含有塩酸水溶液を陰イオン交換樹脂と接触せしめる吸着工程
    (5)上記吸着工程により陰イオン交換樹脂に吸着した成分を脱着する脱着工程
    (6)上記脱着工程により陰イオン交換樹脂より脱着された成分の分析を行う分析工程
  2. アルミニウム系セラミックスが窒化アルミニウム又はアルミナである請求項1に記載のアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法。
  3. 前記硫酸除去工程における遊離の硫酸の除去をマイクロ波照射による加熱により行う請求項1及び2に記載のアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法。
  4. 前記残渣溶解工程における残渣含有塩酸水溶液の調製を、残渣に水を加えて残渣を溶解し、次いで、塩酸を添加することによって行う請求項1から3の何れかに記載のアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法。
  5. 前記分析工程における分析方法が誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量分析法である、請求項1から4の何れかに記載のアルミニウム系セラミックス中の不純物の分析方法。
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