JP2020181628A - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐腐食性、ノイズ特性に優れ、高記録密度化に適した磁気記録媒体を提供する。【解決手段】磁気記録媒体は、非磁性基板1上に、軟磁性下地層2と、配向制御層3と、垂直磁性層4と、保護層5を、この順で有する。垂直磁性層4は、非磁性基板1の側から、第1の磁性層4aと、第2の磁性層4bをこの順で有する。第2の磁性層4bは、磁性粒子を含む最も表層側の磁性層である。第1の磁性層4aは、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層である。第2の磁性層4bは、粒界部に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層である。炭化物は、磁性粒子に含まれる元素の炭化物である。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気記録媒体および磁気記録再生装置に関する。
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD:hard disk drive)は、現在、その記録密度が飛躍的に増えており、今後もその傾向は続くと言われている。そのために、高記録密度に適した磁気記録媒体、記録用の磁気ヘッドの開発が進められている。
現在、市販されている磁気記録再生装置に搭載されている磁気記録媒体は、磁化容易軸が非磁性基板の表面に対して、主に垂直に配向している垂直磁性層を有する、いわゆる垂直磁気記録媒体である。ここで、垂直磁性層は、hcp構造であり、その(0002)面が非磁性基板の表面に対し、主に平行に配向している。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも、記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明な記録ビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも、垂直磁気記録媒体は、高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ効果にも強い。そのため、さまざまな垂直磁気記録媒体の構造が提案されている。
垂直磁気記録媒体の磁気記録層には、グラニュラー構造の磁性層が用いられる。
グラニュラー構造の磁性層とは、磁性結晶粒の周囲が酸化物や窒化物のような非磁性非金属物質の粒界部により囲まれている構造を有する磁性層である。これにより、非磁性非金属物質の粒界部が磁性粒子を物理的に分離するため、磁性粒子間の磁気的な相互作用が小さくなり、記録ビットの遷移領域におけるジグザグ磁壁の形成を抑制するので、ノイズ特性が改善される。
一方で、グラニュラー構造の磁性層は、磁性層に含まれているCo原子等が析出しやすく、磁気記録媒体の耐腐食性を著しく劣化させてしまうことが知られている。
そのため、磁気記録媒体を構成する磁性層の最も表層側に、非グラニュラー構造の磁性層を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、特許文献2には、グラニュラー構造の磁性層の粒界部にBCを用いる磁気記録媒体が記載されている。
特開2006−277950号公報 特開2004−22082号公報
前述のように、磁気記録媒体では、ノイズ特性を改善するため、グラニュラー構造の磁性層が多用されているが、一方で、耐腐食性を高める必要性から、最も表層側の磁性層には、非グラニュラー構造の磁性層が用いられていた。そのため、磁気記録媒体のノイズ特性の改善の妨げになると共に、磁性層の最も表層側の磁性粒子が、下層側の磁性粒子に比べて大きくなり、磁気記録媒体の高記録密度化の妨げとなっていた。
本発明は、これらの問題を解決し、耐腐食性、ノイズ特性に優れ、高記録密度化に適した磁気記録媒体を提供することを目的とする。
(1)非磁性基板上に、軟磁性下地層と、配向制御層と、垂直磁性層と、保護層を、この順で有する磁気記録媒体であって、前記垂直磁性層は、前記非磁性基板の側から、第1の磁性層と、第2の磁性層を、この順で有し、前記第2の磁性層は、磁性粒子を含む最も表層側の磁性層であり、前記第1の磁性層は、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層であり、前記第2の磁性層は、粒界部に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層であり、前記炭化物は、前記磁性粒子に含まれる元素の炭化物であることを特徴とする磁気記録媒体。
(2)前記磁性粒子に含まれる元素は、硼素、チタン、クロム、アルミニウム、タンタル、ジルコニウムまたはシリコンであることを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)前記酸化物は、シリコン、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、イットリウム、硼素、マグネシウム、タングステンまたはコバルトの酸化物であることを特徴とする前項(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4)前項(1)から(3)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
本発明によれば、耐腐食性、ノイズ特性に優れ、高記録密度化に適した磁気記録媒体を提供することができる。
本実施形態の磁気記録媒体の一例の構造を示す縦断面図である。 図1の垂直磁性層の構造を示す縦断面図である。 本実施形態の磁気記録再生装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態に係る磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置について詳細に説明する。
図1に、本実施形態の磁気記録媒体の一例の構造を示す。
磁気記録媒体10は、非磁性基板1上に、軟磁性下地層2と、配向制御層3と、垂直磁性層4と、保護層5と、潤滑層6を、この順で有する。
垂直磁性層4は、非磁性基板1の側から、第1の磁性層4aと、第2の磁性層4bを、この順で有し、これ以外に、任意の磁性層または非磁性層7a、7b、7c、7d、7eを有する。そして、垂直磁性層4は、図2に示すように、磁性粒子または非磁性粒子41が、下層から上層まで連続した柱状晶を形成している。そして、第1の磁性層4aの粒界部42は、酸化物を含み、第2の磁性層4bの粒界部42は、炭化物を含んでいる。
ただし、第1の磁性層4a、第2の磁性層4bにおいて、41は、磁性粒子であり、7a、7b、7c、7d、7eが磁性層(または非磁性層)である場合、41は、磁性粒子(または非磁性粒子)である。
非磁性基板1としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラス、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。
非磁性基板1としては、メッキ法やスパッタリング法により、上記の金属基板、非金属基板の表面にNiP層またはNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の非磁性基板1に対する垂直方向成分を大きくするために、また、垂直磁性層4の磁化容易軸の方向をより強固に非磁性基板1に対し垂直な方向に固定するために設けられているものである。この作用は、特に、記録用の磁気ヘッドとして、垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
軟磁性下地層2を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、Fe、Ni、Coを含む軟磁性材料を用いることができる。
軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど)、FeMg系合金(FeMgOなど)、FeZr系合金(FeZrNなど)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
軟磁性下地層2を2層の軟磁性層から構成し、2層の軟磁性層の間にRu膜を設けることが好ましい。
このとき、Ru膜の厚さを0.4〜1.0nm、または、1.6〜2.6nmの範囲に調整することが好ましい。これにより、2層の軟磁性層がAFC構造となり、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に、密着層を設けることが好ましい。これにより、非磁性基板1とCoまたはFeを含む軟磁性下地層2が接することで、非磁性基板1における表面の吸着ガス、水分の影響、または、非磁性基板1を構成する成分の拡散により、腐食が進行するのを抑制することが可能となる。
密着層を構成する材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金などを挙げることができる。
密着層の厚さは、30Å以上であることが好ましい。
配向制御層3は、垂直磁性層4の配向性を制御する、即ち、hcp構造の垂直磁性層4を非磁性基板1の表面に対して、主に(0002)面配向させ、垂直磁性層4の磁性結晶粒を微細化して、記録再生特性を改善することができる。
配向制御層3を構成する材料は、特に限定されるものではないが、hcp構造、fcc構造、アモルファス構造を有することが好ましい。
配向制御層3を構成する材料としては、例えば、Ru系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金などを挙げることができる。
なお、これらの合金を多層化して、配向制御層3としてもよい。この場合、配向制御層3として、例えば、非磁性基板1の側から、Ni系合金とRu系合金との多層構造、Co系合金とRu系合金との多層構造、Pt系合金とRu系合金との多層構造を採用することが好ましい。
垂直磁性層4は、hcp構造であり、非磁性基板1の表面に対して、主に(0002)面配向し、磁化容易軸が非磁性基板1に対して、主に垂直に配向している。また、垂直磁性層4は、非磁性基板1の側から、第1の磁性層4aと、第2の磁性層4bをこの順で有し、第2の磁性層4bは、最も表層側の磁性層である。第1の磁性層4aは、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層である。第2の磁性層4bは、粒界部42に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層であり、炭化物は、第2の磁性層4bの磁性粒子に含まれる元素の炭化物である。
第1の磁性層4aは、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層であるが、磁性結晶粒の周囲を酸化物で囲んだ構造を有する。これにより、酸化物の粒界部42が磁性粒子41を物理的に分離するため、磁性粒子間の磁気的な相互作用が低くなり、記録ビットの遷移領域に生じるジグザグ磁壁の形成を抑制するので、低ノイズ特性が得られる。
従来より、グラニュラー構造の磁性層の粒界部には、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物などの非金属非磁性材料が用いられてきた。本願の発明者の検討によると、スパッタリング法によりグラニュラー構造の磁性層を形成する場合は、非金属非磁性材料の中で、酸化物の反応性が最も高いため、成膜が容易であり、磁性粒子を物理的に分離し易くなり、また、磁性粒子間の磁気的な相互作用を下げることができることが明らかになった。
このような構造をスパッタリング法で形成するためには、第1の磁性層4a中の酸化物の含有量および第1の磁性層4aの成膜条件が重要となる。
第1の磁性層4a中の酸化物の含有量は、磁性粒子を構成する材料、例えば、Co、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましく、6mol%以上13mol%以下であることがさらに好ましい。
第1の磁性層4a中の酸化物の含有量が3mol%以上18mol%以下であることが好ましいのは、図2に示されるように、垂直磁性層4を形成する際に、磁性粒子41の周りの粒界部42に酸化物が析出しやすくなり、磁性粒子41を孤立化、微細化しやすくなるためである。第1の磁性層4a中の酸化物の含有量が18mol%以下であると、酸化物が磁性粒子41中に残留しにくくなり、結果として、磁性粒子41の配向性、結晶性を損ねず、さらには、磁性粒子41の上下に粒界部42を構成する酸化物が析出しにくくなり、結果として、磁性粒子41が垂直磁性層4を上下に貫いた柱状構造が形成される。また、第1の磁性層4a中の酸化物の含有量が3mol%以上であると、磁性粒子41を孤立化、微細化しやすくなり、結果として、記録再生時におけるノイズが減少し、高記録密度化に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られる。
第1の磁性層4aの粒界部42に含まれる酸化物は、シリコン、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、イットリウム、硼素、マグネシウム、タングステンまたはコバルトの酸化物であることが好ましい。
第1の磁性層4aを構成する材料としては、例えば、CoCrPt−SiO、CoCrPtNb−Cr、CoCrPt−Ta、CoCrPt−CrO−TiO、CoCrPt−Cr−SiO、CoCrPt−Cr−SiO−TiO、CoCrPtMo−TiO、CoCrPtW−TiO、CoCrPtB−Al、CoCrPtTaNd−MgO、CoCrPtBCu−Y、CoCrPtRu−SiOなどを挙げることができる。
第2の磁性層4bは、最も表層側の磁性層であり、粒界部42に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層である。前述のように、磁気記録媒体では、グラニュラー構造の磁性層が多用されているが、耐腐食性を高める必要性から、最も表層側の磁性層としては、非グラニュラー構造の磁性層が用いられていた。そのため、磁気記録媒体のノイズ特性の改善の妨げになると共に、磁性層の最も表層側の磁性粒子が、下層側の磁性粒子に比べて大きくなり、磁気記録媒体の高記録密度化の妨げとなっていた。
本実施形態では、最も表層側の磁性層として、粒界部42に炭化物を含むグラニュラー構造の第2の磁性層4bを用いるが、炭化物は、酸化物に比べ、安定であるため、磁気記録媒体10の耐腐食性を高めることが可能となる。また、第2の磁性層4bは、グラニュラー構造であるため、第1の磁性層4aと同様に、磁性粒子を孤立化、微細化することが可能となり、磁気記録媒体のノイズ特性を改善することができる。
一方で、前述のように、炭化物は、安定で反応性の低い物質であるため、粒界部に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層をスパッタリング法により形成することは困難である。
そこで、本実施形態では、第2の磁性層4bの形成方法として、次の方法を採用する。すなわち、スパッタリング法により非グラニュラー構造の磁性層を形成した後、非グラニュラー構造の磁性層を炭化処理し、磁性粒子に含まれる元素の一部を炭化することで粒界部を形成し、グラニュラー構造の磁性層とする。
本実施形態における磁性粒子に含まれる元素の炭化物は、硼素、チタン、クロム、アルミニウム、タンタル、ジルコニウムまたはシリコンの炭化物であることが好ましい。
本実施形態の非グラニュラー構造の磁性層を構成する材料としては、CoCrPt系、CoCrPtB系、CoCrPtTa系、CoCrPtTi系、CoCrPtZr系、CoCrPtAl系、CoCrPtSi系などの材料を挙げることができる。
なお、本実施形態の非グラニュラー構造の磁性層を構成する材料は、いずれもスパッタリング法による成膜に適した材料である。
非グラニュラー構造の磁性層を炭化処理する方法としては、公知の方法を用いることができるが、磁性層へのダメージを少なくするためには、磁性層を反応性の炭素プラズマに曝す方法を採用することが好ましい。
本実施形態における非グラニュラー構造の磁性層の炭化処理により、磁性粒子に含まれる元素の一部が炭化して粒界部を形成し、非グラニュラー構造の磁性層は、グラニュラー構造の磁性層となる。このようにして形成される磁性粒子に含まれる元素の炭化物は、スパッタリング法により形成される炭化物に比べ、強固で安定であるため、磁気記録媒体10の耐腐食性を高めることができる。
第2の磁性層4bを構成する材料としては、例えば、CoCrPt−CrN、CoCrPtB−BN、CoCrPtTa−TaN、CoCrPtTi−TiN、CoCrPtZr−ZrN、CoCrPtAl−AlN、CoCrPtSi−Siなどを挙げることができる。
また、磁性粒子に含まれる特定の元素の全てが炭化した場合の第2の磁性層4bを構成する材料としては、例えば、CoPt−CrN、CoCrPt−BN、CoCrPt−TaN、CoCrPt−TiN、CoCrPt−ZrN、CoCrPt−AlN、CoCrPt−Siなどを挙げることができる。
本実施形態では、非グラニュラー構造の磁性層を炭化処理してグラニュラー構造の磁性層とする方法を採用することで、スパッタリング法によりグラニュラー構造の炭化物の磁性層を形成する場合に比べ、化学的に安定で耐腐食性の高い第2の磁性層4bを容易に形成することが可能となる。また、炭化処理は、窒化処理等と比べると、比較的短時間で実施することができるので、磁気記録媒体の生産性を高めることができる。
本実施形態では、垂直磁性層4の中に、任意の磁性層または非磁性層7a、7b、7c、7d、7eが設けられており、7a、7cが磁性層であり、7b、7d、7eが非磁性層であることが好ましい。これらの層により、磁性粒子または非磁性粒子41は、垂直磁性層4の下層から上層まで連続した柱状晶を形成することになる。
なお、任意の磁性層または非磁性層の層数は、必要に応じて、増減させることができる。
任意の磁性層は、第1の磁性層4aと同様に、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層とすることが好ましい。
任意の磁性層を構成する材料は、第1の磁性層4aと同様である。
任意の非磁性層は、磁性層間の交換結合を制御するために磁性層の間に設けられる。
任意の非磁性層を構成する材料は、hcp構造を有する材料であることが好ましい。
任意の非磁性層を構成する材料としては、例えば、Ru、Ru合金、RuCo合金、CoCr合金、CoCrX合金(ただし、Xは、Pt、Ta、Zr、Re、Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bから選ばれる1種または2種以上である。)を挙げることができる。
また、任意の非磁性層として、グラニュラー構造の非磁性層を用いても良い。
任意の非磁性層の厚さは、第1の磁性層4a、第2の磁性層4b、任意の磁性層の強磁性結合を完全に切断しない範囲とする必要がある。
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気記録媒体に磁気ヘッドが接触したときに、磁気記録媒体の表面の損傷を防ぐためのものである。
保護層5を構成する材料としては、従来から用いられている材料を使用することができる。
保護層5としては、例えば、硬質炭素膜を含むものを使用することが可能である。
保護層5の厚さは、1〜10nmとするのが望ましい。これにより、磁気ヘッドと磁気記録媒体の距離を小さくできるので、高記録密度化に適した磁気記録媒体とすることができる。
潤滑層6を構成する材料としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることができる。
図3に、本実施形態の磁気記録再生装置の一例を示す。
図3に示す磁気記録再生装置は、磁気記録媒体10(図1参照)と、磁気記録媒体10を回転駆動させる媒体駆動部11と、磁気記録媒体10に情報を記録再生する磁気ヘッド12と、磁気ヘッド12を磁気記録媒体10に対して相対運動させるヘッド駆動部13と、記録再生信号処理系14とを備えている。
記録再生信号処理系14は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド12に送り、磁気ヘッド12からの再生信号を処理してデータを外部に送ることができるようになっている。
磁気ヘッド12としては、再生素子として、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有する高記録密度化に適した磁気ヘッドを用いることができる。
(実施例1)
以下の方法により、磁気記録媒体を作製した。
洗浄済みの外径2.5インチのガラス製の非磁性基板1(HOYA社製)を、DCマグネトロンスパッタリング装置C−3040(アネルバ社製)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度が1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、Cr−50Ti{Tiの含有量50at%、残部Cr}のターゲットを用いて、厚さ10nmの密着層を非磁性基板1上に形成した。
次に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Feの含有量20at%、Zrの含有量5at%、Taの含有量5at%、残部Co}のターゲットを用いて、非磁性基板1の温度を100℃以下にして、厚さ25nmの軟磁性層を密着層上に形成した。次に、Ruのターゲットを用いて、厚さ0.7nmのRu層を軟磁性層上に形成した。さらに、Co−20Fe−5Zr−5Taのターゲットを用いて、非磁性基板1の温度を100℃以下にして、厚さ25nmの軟磁性層をRu層上に形成して、軟磁性下地層2とした。
次に、Ni−6W{Wの含有量6at%、残部Ni}のターゲットおよびRuのターゲットを用いて、それぞれ厚さ5nmのNi−6W層および厚さ20nmのRu層を、この順で軟磁性下地層2上に形成し、配向制御層3とした。
次に、91(Co15Cr18Pt)−6(SiO)−3(TiO){Crの含有量15at%、Ptの含有量18at%、残部Coの合金の含有量91mol%、SiOの含有量6mol%、TiOの含有量3mol%}のターゲットを用いて、厚さ9nmのグラニュラー構造の磁性層7aを配向制御層3上に形成した。このとき、スパッタ圧力を2Paとした。
次に、88(Co30Cr)−12(TiO){Crの含有量30at%、残部Coの合金の含有量8mol%、TiOの含有量12mol%}のターゲットを用いて、厚さ0.3nmのグラニュラー構造の非磁性層7bを磁性層7a上に形成した。
次に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO){Crの含有量11at%、Ptの含有量18at%、残部Coの合金の含有量92mol%、SiOの含有量5mol%、TiOの含有量3mol%}のターゲットを用いて、厚さ6nmの第1の磁性層4aを非磁性層7b上に形成した。このとき、スパッタ圧力を2Paとした。
次に、Ruのターゲットを用いて、厚さ0.3nmの非グラニュラー構造の非磁性層7eを第1の磁性層4a上に形成した。
次に、Co10Cr20Pt14B{Crの含有量10at%、Ptの含有量20at%、Bの含有量14at%、残部Co}のターゲットを用いて、厚さ10nmの非グラニュラー構造の磁性層を非磁性層7e上に形成した。このとき、スパッタ圧力を0.6Paとした。
次に、非グラニュラー構造の磁性層を反応性炭素プラズマに10秒曝して炭化処理して、97(Co12Cr22Pt2B)−3(BC){Crの含有量12at%、Ptの含有量22at%、Bの含有量2at%、残部Coの合金の含有量93mol%、BCの含有量3mol%}からなるグラニュラー構造の磁性層、即ち、第二の磁性層4bとした。このとき、反応性炭素プラズマは、トルエン中にアルゴンガスをバブリングすることで、トルエンガスの含有量5体積%、アルゴンガスの含有量95体積%の混合ガスを生成させた後、RF電力(500W)を印加して発生させた。
次に、イオンビーム法により、厚さ3nmの保護層5を第二の磁性層4b上に形成した。
次に、ディッピング法により、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層6を保護層5上に形成し、磁気記録媒体10を得た。
(実施例2)
第二の磁性層4bを形成する際に、Co10Cr20Pt14Tiのターゲットを用い、93(Co12Cr22Pt7Ti)−7(TiC)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体10を得た。
(実施例3)
第二の磁性層4bを形成する際に、Co10Cr20Pt14Alのターゲットを用い、97(Co12Cr22Pt2Al)−3(Al)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体10を得た。
(実施例4)
第二の磁性層4bを形成する際に、Co10Cr20Pt14Taのターゲットを用い、93(Co12Cr22Pt7Ta)−7(TaC)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体10を得た。
(実施例5)
第二の磁性層4bを形成する際に、Co10Cr20Pt14Zrのターゲットを用い、93(Co12Cr22Pt7Zr)−7(ZrC)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体10を得た。
(実施例6)
第二の磁性層4bを形成する際に、Co10Cr20Pt14Siのターゲットを用い、93(Co12Cr22Pt7Si)−7(SiC)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体10を得た。
(比較例1)
第二の磁性層4bを形成する際に、炭化処理せず、Co10Cr20Pt14Bからなる非グラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体を得た。
(比較例2)
第二の磁性層4bを形成する際に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO)のターゲットを用い、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO)からなるグラニュラー構造の磁性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体を得た。
(第1の磁性層4aおよび第2の磁性層4bの組成)
XPSにより、第1の磁性層4aおよび第2の磁性層4bの組成を測定した。
次に、磁気記録媒体のノイズ特性および耐腐食性を評価した。
(ノイズ特性)
リードライトアナライザRWA1632及びスピンスタンドS1701MP(以上、GUZIK社製)を用いて、磁気記録媒体の記録再生特性として、SNR(信号/ノイズ比(S/N比))を評価した。
(耐腐食性)
温度90℃、湿度90%RHの環境下に、磁気記録媒体を96時間放置した後、磁気記録媒体の表面に発生したコロージョンスポットの個数(個/面)を光学式表面検査機でカウントし、磁気記録媒体の耐腐食性を評価した。このとき、検出精度を直径5μm以上に設定した。
表1に、磁気記録媒体のノイズ特性および耐腐食性の評価結果を示す。
Figure 2020181628
表1から、実施例1〜6の磁気記録媒体は、ノイズ特性および耐腐食性に優れ、高記録密度化に適していることがわかる。
これに対して、比較例1の磁気記録媒体は、最も表層側の磁性層が非グラニュラー構造の磁性層であるため、ノイズ特性が低下し、高記録密度化に適していない。
また、比較例2の磁気記録媒体は、最も表層側の磁性層がグラニュラー構造の磁性層であるものの、粒界部に酸化ケイ素及び酸化チタンを含むため、耐腐食性が悪く、高記録密度化に適していない。
1 非磁性基板
2 軟磁性下地層
3 配向制御層
4 垂直磁性層
5 保護層
6 潤滑層
4a 第1の磁性層
4b 第2の磁性層
7a〜7e 磁性層または非磁性層
8 非磁性下地層
10 磁気記録媒体
11 媒体駆動部
12 磁気ヘッド
13 ヘッド駆動部
14 記録再生信号処理系
41 磁性粒子または非磁性粒子
42 粒界部

Claims (4)

  1. 非磁性基板上に、軟磁性下地層と、配向制御層と、垂直磁性層と、保護層を、この順で有する磁気記録媒体であって、
    前記垂直磁性層は、前記非磁性基板の側から、第1の磁性層と、第2の磁性層を、この順で有し、
    前記第2の磁性層は、磁性粒子を含む最も表層側の磁性層であり、
    前記第1の磁性層は、粒界部に酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層であり、
    前記第2の磁性層は、粒界部に炭化物を含むグラニュラー構造の磁性層であり、
    前記炭化物は、前記磁性粒子に含まれる元素の炭化物であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記磁性粒子に含まれる元素は、硼素、チタン、クロム、アルミニウム、タンタル、ジルコニウムまたはシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記酸化物は、シリコン、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、イットリウム、硼素、マグネシウム、タングステンまたはコバルトの酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、
    前記磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
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