JP2020180192A - 薄肉部材及び容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することが可能な薄肉部材及び容器を提供することを目的とする。【解決手段】平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする、薄肉部材。【選択図】なし

Description

本発明は、薄肉部材及び容器に関する。
従来より、揮発性の薬液や溶液を保存ないし輸送するための樹脂製の容器(成形品)はガスバリア性が要求されており、そのような容器としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「PPS」と略すことがある。)をガスバリア性付与のために含有させた樹脂組成物を用いて成形されたものが挙げられる(例えば、特許文献1)。
特開2003−128059号公報
ところで、上記のような容器において、軽量化や容器設計の自由度の向上のため、容器又はその構成部材を薄肉化することが求められているが、容器等を薄肉化すると強度の低下が生じていた。また、このような容器等に対して、強度の低下を抑制するために、例えば、充填材等を用いると、容器等の薄肉化の影響と相まってガスバリア性の低下が生じることがあった。
そこで、本発明は、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することが可能な薄肉部材及び容器を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、当該薄肉部が、ポリフェニレンスルフィド、非晶性樹脂、及び所定の平均繊維長の繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含む、部材及び容器とすることにより、部材や容器の軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、
前記薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする、薄肉部材。
[2]
前記薄肉部の表面の最大高さSzが20μm以下である、[1]に記載の薄肉部材。
[3]
前記(b)非晶性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂である、[1]又は[2]に記載の薄肉部材。
[4]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の極限粘度(クロロホルム中、30℃で測定)が0.16〜0.36dL/gである、[3]に記載の薄肉部材。
[5]
前記(b)非晶性樹脂と前記(a)ポリフェニレンスルフィドとの含有比((b):(a))が5:5〜2:8である、[1]〜[4]のいずれかに記載の薄肉部材。
[6]
前記(c)繊維状無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物100質量%中に10〜40質量%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の薄肉部材。
[7]
前記樹脂組成物が更に(d)結晶核剤を含み、前記樹脂組成物100質量%中の前記(d)結晶核剤の含有量が10〜50質量%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の薄肉部材。
[8]
平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、
前記薄肉部が(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする、容器。
本発明によれば、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することが可能な薄肉部材及び容器を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
[成形体]
本実施形態の成形体は、平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有するものであって、薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含む。薄肉部が当該樹脂組成物を含むことにより、本実施形態の成形体は、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することができる。
本実施形態の成形体としては、下記の薄肉部材、容器等が挙げられる。
〔薄肉部材〕
本実施形態の薄肉部材は、平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有するものであって、薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含む。薄肉部が当該樹脂組成物を含むことにより、本実施形態の薄肉部材は、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することができる。
より具体的には、従来の部材では、ポリフェニレンスルフィドを含有する樹脂組成物で構成してガスバリア性を付与した部分について、軽量化のため薄肉化した場合(薄肉部を設けた場合)、薄肉化によって強度の低下が生じることがあった。これに対して、強度の低下を抑制するために、例えば、充填材等を添加し、薄肉部の平均厚さを0.5mm以下にすると、充填材の存在や薄肉化の影響により、ガスバリア性が低下することがあった。すなわち、ポリフェニレンスルフィドを含有する樹脂組成物で構成した薄肉部について、平均厚さを0.5mm以下にすると、ガスバリア性及び強度の両立が困難となっていた。
これに対して、本実施形態の薄肉部材においては、薄肉部に含まれる樹脂組成物が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有することにより、薄肉部の強度が向上するとともに、薄肉化により生じるガスバリア性の低下を抑制することができる。
ここで、本実施形態の薄肉部材は、特に限定されないが、例えば、揮発性の薬液や溶液(以下、これらの液体を「薬液等」とも称す。)を保存ないし輸送するための容器等を構成する部材のうち、薬液等が存在する容器内部の空間を区画する(仕切る)ための部材、或いは、このような容器等と、当該薬液等を使用するための機器との間を連結する連結部材を構成する部材のうち、連結部材内部の薬液等が存在する空間を区画する(仕切る)ための部材として用いることができる。また、本実施形態の薄肉部材は、薬液等と接触する構成部分、例えば、流路を形成するために用いること、或いは、揮発した薬液等の外部への漏えいを遮断するために用いることもできる。
また、本実施形態の薄肉部材の形状は、少なくとも薄肉部を有するものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも一部が管状になっていることが好ましく、薄肉部が管状部分を有することがより好ましい。
ここで、管状とは、断面視における内側表面の輪郭によって閉じた領域が形成されていればその形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形等の種々の断面形状とすることができる。
また、薄肉部材が管状部分を有する場合、薄肉部材は、当該管状部分以外の部分は任意の形状とすることができる。本実施形態の薄肉部材は、例えば、本実施形態の薄肉部材と、それ以外の他の部品とを共に用いることによって管状となるように、種々の形状とすることができる。
なお、管状部分は、管状部分自体の強度を確保するため、開口面積が400mm以下の大きさであることが好ましく、200mm以下の大きさであることがより好ましく、100mm以下の大きさであることが更に好ましい。
本実施形態の薄肉部材は、その薄肉部が(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むところ、薄肉部以外の部分も当該樹脂組成物を含むことが好ましい。しかしながら、薄肉部以外の部分は、特に限定されず、樹脂又は金属等の任意の材料で形成することができる。
〔容器〕
本実施形態の容器は、平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有するものであって、薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含む。薄肉部が当該樹脂組成物を含むことにより、本実施形態の容器は、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することができる。
本実施形態の容器は、揮発性の薬液や溶液を保存ないし輸送するための容器として好適に使用することができる。
本実施形態の容器は、限定されないが、例えば、メタノールを充填しておくメタノール容器、特にダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFC)へ供給するメタノールを充填しておくためのメタノール容器(燃料カートリッジ、燃料電池用メタノール容器)とすることができる。
また、本実施形態の容器における薄肉部は、上記の薄肉部材における薄肉部と同様の目的で使用したり、同様の形状としたりすることができる。また、容器は、上記薄肉部を有していれば、その形状、薄肉部以外の部分の材料は特に限定されず、例えば、薄肉部に含まれる樹脂組成物と異なる樹脂組成物又は金属等の材料で形成することもできる。また、容器全体を薄肉部に含まれる樹脂組成物と同じ樹脂組成物で形成することもできる。
〔薄肉部〕
本実施形態の成形体(薄肉部材及び容器等)の薄肉部は、成形体の少なくとも一部分であって、平均厚さが0.5mm以下の部分である。
薄肉部の形状は、特に限定されるものではないが、管状部分を有することが好ましい。
薄肉部の平均厚さは、軽量化、小型化の観点から、0.5mm以下であり、0.4mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。薄肉部は、全体として厚さが0.5mm以下であることが好ましいが、その中において、厚さが0.5mm超となる部分が存在していても、薄肉部の全体の平均厚さが0.5mm以下であればよい。
本実施形態の薄肉部は、表面の最大高さSzが20μm以下であることが好ましく、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは16μm以下である。最大高さSzを20μm以下にすることにより、ガスバリア性をより向上させることができる。
薄肉部の最大高さSzは、例えば、充填材の種類、樹脂組成物中の樹脂の組成比等を調整することにより制御することができる。
なお、薄肉部の最大高さSzは、ISO1997に準拠して、3Dマイクロスコープ等の表面粗さ測定器を用いて測定される値であり、評価曲線を基準長さ毎に区切り、この各基準長さにおいて、平均線から最も高い山頂までの高さと最も深い谷底までの深さとの和を求め、平均した値である。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態の薄肉部は、薬液等が存在する容器等に用いた際に、水蒸気による薬液等の変質を防ぐ観点から、水蒸気透過度が0.50g/(m・day)以下であることが好ましく、0.45g/(m・day)以下であることがより好ましい。
なお、水蒸気透過度は、水蒸気透過性試験機を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下、透過面積を50cmとして、JIS K7129 B法に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
また、本実施形態の薄肉部は、薬液等が存在する容器等に用いた際に、酸素による薬液等の変質を防ぐ観点、及び液を輸送する流路に用いた際に、酸素により薬液等の流束が不安定になることを防ぐ観点から、酸素透過度が20cm/(m・day・atm)以下であることが好ましく、15cm/(m・day・atm)以下であることがより好ましい。
なお、酸素透過度は、酸素透過性試験機を用い、温度23℃、湿度0%の雰囲気下、透過面積を38cmとして、JIS K7126−1(圧力センサ法)に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
また、本実施形態の薄肉部は、運搬時に破損しない十分な強度を保つ観点から、曲げ弾性率が7GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましい。
なお、曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態の薄肉部材の薄肉部は、例えば、薬液等が存在する容器等の内部の空間を区画する部分、薬液等と接触する流路等を形成する部分、或いは、揮発した薬液等の外部への漏えいを遮断するための部分に位置させることができる。
なお、本実施形態における薄肉部は、下記に詳述する本実施形態の樹脂組成物を含むことにより、ガスバリア性及び強度の向上に加えて、更に表面平滑性も向上させることができ、これにより、薄肉部が薬液等と接触する流路等である場合には、送液の乱れ等への影響を抑制することができる。
[薄肉部に含まれる樹脂組成物]
本実施形態の薄肉部に含まれる樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する。
<(a)ポリフェニレンスルフィド>
本実施形態で用いられる(a)ポリフェニレンスルフィドは、その製造方法によりリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「リニアPPS」と略記する場合がある。)及び架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「架橋PPS」と略記する場合がある。)に二分される。
<<リニアPPS>>
前者のリニアPPSは、下記式(1)で示されるアリーレンスルフィドの繰返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上を含む重合体である。
[−Ar−S−] ・・・(1)
(ここで、Arはアリーレン基を示し、アリーレン基として、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基が好ましい。)、p,p′−ジフェニレンスルホン基、p,p′−ビフェニレン基、p,p′−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基等が挙げられる。)
リニアPPSは構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよく、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して用いて得られるコポリマーであってもよい。中でも、主構成要素としてp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂が、加工性、耐熱性に優れ、かつ、工業的に入手が容易なことから好ましい。
このリニアPPSの製造方法は、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下で、又は硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が好ましい。
これらの製造方法は公知あり、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号公報及び米国特許第3274165号明細書、更に特公昭46ー27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報等に記載された方法やこれらの文献等に例示された先行技術の方法でリニアPPSを得ることが出来る。
好ましいリニアPPSは、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であり、かつ末端−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)が20μmol/g以上、好ましくは20〜60μmol/gであるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂である。
ここで、塩化メチレンによる抽出量の測定は以下の方法により行うことができる。すなわち、リニアPPS粉末5gを塩化メチレン80mLに加え、6時間ソックスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mLを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量より塩化メチレンによる抽出量、すなわちリニアPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
また、−SX基の定量は以下の方法によって行うことができる。すなわち、リニアPPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、乾燥リニアPPS粉末20gをN−メチル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合し、スラリー状態にする。かかるスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。ここで得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、ついで1Nの塩酸を加えて該スラリーのpHを4.5に調整する。
次に、25℃で30分間撹拌し、濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりリニアPPS中に存在する−SX基の量を求めることができる。
ここで、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%以下、末端−SX基が20μmol/g以上を満足するリニアPPSの製造方法の具体例としては、特開平8−253587号公報に記載されている、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ、反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを反応溶液上部の液層に還流させることによりオリゴマー成分を減少させる方法が挙げられる。
<<架橋PPS>>
そして、架橋型(半架橋型も含む)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、上記したリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を重合した後に、更に酸素の存在下でポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下の温度で加熱処理し、酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めたものである。
この架橋PPSの中で最も好ましい架橋PPSは、本発明で得られる樹脂組成物を成形する際のガス・ヤニ発生の観点及び離型性の観点より、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000質量ppm以下の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂である。ここで言う320℃溶融状態で捕集される揮発分の定量は以下の方法により行うことができる。
すなわち、架橋PPS粉末0.5gを気流入り口と出口を有する密栓付き試験管に秤量し、320℃に加熱したハンダ浴に30分間浸漬しながら、試験管の気流入り口より窒素ガスを100cc/minの流速で注入し、試験管内に発生した架橋型PPSに由来する揮発分を含むガスを試験管の気流出口よりパージし、パージされたガスはアセトンを入れた気流入り口と出口を有する密栓付き試験管の気流入り口より試験管内のアセトン中でバブリングさせ、揮発成分をアセトン中に溶解させる。アセトン中に溶解した架橋PPSの揮発分は、ガスクロマトグラフ質量分析器(GC−MS)を用いて、50℃〜290℃の昇温分析して検出される全成分をモノクロロベンゼンと同一感度と仮定して定量し、架橋PPS中の揮発分を求めることができる。
この320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000質量ppm以下の架橋PPSを得るには、通常、リニアPPSを重合する段階のポリマー濃度、溶媒組成を工夫したり、重合した段階でポリマーを回収する洗浄方法を工夫したり、その後の架橋段階での高温処理の温度、時間等を変化させることによって、所望の揮発分を有する架橋PPSを得ることができる。
<<酸変性されたPPS>>
更にこれらのPPS(リニアPPS、架橋PPS)は酸変性されたPPSでも構わない。ここで酸変性したPPSとは、上記PPSを酸化合物で変性する事によって得られるものであり、該酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物や、飽和型の脂肪族カルボン酸や芳香族置換カルボン酸等を挙げることができる。更に、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸等の無機化合物系の酸化合物も該酸化合物として挙げることができる。
<<PPSの溶融粘度>>
上記したリニアPPS、架橋PPSのそれぞれの300℃における溶融粘度は、1〜10000Pa・s、好ましくは50〜8000Pa・s、より好ましくは100〜5000Pa・sのものが使用できる。
明細書中、溶融粘度とは、JIS K−7210を参考試験法とし、フローテスター((株)島津製作所製CFT−500型)を用いて、PPSを300℃で6分間予熱した後、荷重196N、ダイ長さ(L)/ダイ径(D)=10mm/1mmで測定した値である。
(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量は、樹脂組成物100質量%に対して20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜75質量%であり、更に好ましくは30〜70質量%である。(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量が20質量%以上であることにより、薄肉部のガスバリア性を確保することができる。また、(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量が80質量%以下であることにより、バリを抑制し、成形体からのアウトガスを抑制することができる。
<(b)非晶性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、(b)非晶性樹脂を含有する。(b)非晶性樹脂を含有することにより、バリを抑制し、成形体からのアウトガスを抑制することができる。
(b)非晶性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
本実施形態において用いることができる(b)非晶性樹脂としては、結晶状態をとらないか、結晶化しても結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂、及び、後述に例示するような熱可塑性のポリマーアロイを挙げることができる。
結晶状態をとらないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いとは、結晶化に伴う発熱ピークが観察されない(結晶領域を持たない)か、あるいは観察されたとしても結晶融解熱量が、例えば、10J/g以下となるような、結晶化度が極めて低いことをいう。
なお、結晶融解熱量は、例えば、JIS−K7122に準じて示差走査熱量計により測定することができる。
具体的には、(b)非晶性樹脂としては、非晶性を有する樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、ゴム補強のポリスチレン樹脂(ハイインパクト−ポリスチレン樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下「ABS樹脂」とも記す。)等のポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイ、ポリカーボネート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂アロイ等のポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、「PPE」とも記す。)、ポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂アロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂/ポリプロピレン樹脂アロイ等のポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」とも記す。)等が挙げられる。
また、(b)非晶性樹脂としては、特に、耐熱性、寸法精度、難燃性の観点から、ガラス転移温度が高く、比較的難燃化が容易である樹脂が望ましく、ポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂アロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイ、又はポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイであることがより好ましい。
〔〔ポリスチレン系樹脂〕〕
ポリスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、又はスチレン系化合物とスチレン系化合物に共重合可能な化合物とを、ゴム質重合体存在下又は非存在下に重合して得られる重合体をいう。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、上述のように、ポリスチレン樹脂、ゴム補強のポリスチレン樹脂(ハイインパクト−ポリスチレン樹脂)、ABS樹脂等が挙げられる。中でも、ゴム補強のポリスチレン樹脂(ハイインパクト−ポリスチレン樹脂)が好ましい。
ポリスチレン系樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
前記スチレン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
前記スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。
スチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物とスチレン系化合物と共重合可能な化合物との合計量100質量%に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
また、ゴム質重合体としては、以下に制限されないが、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体系ゴムが挙げられ、より詳細には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらを部分的に又はほぼ完全に水素添加した重合体が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂は、従来公知のいかなる製造方法によって製造されたものでもよい。
〔〔ポリカーボネート系樹脂〕〕
ポリカーボネート系樹脂は、ビスフェノールAを用いて重合された、ビスフェノールA型ポリカーボネートや、他の二価フェノール系化合物を用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネートであってもよい。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、上述のように、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイ、ポリカーボネート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂アロイ等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
上記他の二価フェノール系化合物としては、例えば、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルや、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール等が挙げられる。
また、ポリカーボネート系樹脂は、線状ポリカーボネートの他に、3官能フェノール類を重合させた分岐ポリーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族もしくは脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイである場合、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、ABS樹脂の含有量は、5〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。このような配合範囲のポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物は、耐熱性、難燃性が良好となる傾向にある。
ポリカーボネート系樹脂は、従来公知のいかなる製造方法によって製造されたものでもよい。界面重縮合でポリカーボネート樹脂を製造する場合は、通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。
〔〔ポリフェニレンエーテル系樹脂〕〕
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、上述のように、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂アロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイ、又はポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂/ハイインパクト−ポリスチレン樹脂アロイ等が挙げられる。
PPE系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂のポリフェニレンエーテル樹脂は、下記の式(2)で示される繰返し単位(構造ユニット)を有するホモ重合体及び/又は共重合体であることが好ましい。
Figure 2020180192
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜7の第一級又は第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、nは1以上の整数である。)
上記PPEの具体的な例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等のホモ重合体が挙げられ、更に2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体等の共重合体が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル共重合体とは、上記式(2)で表される繰り返し単位を主たる繰返し単位とする共重合体である。
中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
上記PPEは、公知の方法により製造することができる。PPEの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書に記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、及び特開昭63−152628号公報等に記載された方法が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、上記したPPEが100質量%であるPPEのみからなるものとすることが好ましいが、上述のようなポリマーアロイも用いることができる。かかる場合、ポリマーアロイ100質量%において、PPEの含有量が1質量%以上100質量%未満であることが好ましく、50質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、80質量%以上100質量%未満であることが更に好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂に用いることができるポリスチレン系樹脂としては、スチレン系化合物の単独重合体、2種以上のスチレン系化合物の共重合体、また、スチレン系化合物の重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなるゴム変性スチレン樹脂(ハイインパクト−ポリスチレン樹脂)等が挙げられる。これら重合体をもたらすスチレン系化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂として上述のようなポリマーアロイを用いる場合には、PPEに含有させるポリスチレン系樹脂は、2種以上のスチレン系化合物を併用して得られる共重合体やハイインパクト−ポリスチレン樹脂でもよいが、中でもスチレンを単独で用いて重合して得られるポリスチレン樹脂が好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂には、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン等の立体規則構造を有するポリスチレン樹脂が有効に利用できる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の極限粘度(クロロホルム中、30℃で測定)は、0.16〜0.36dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.34dL/gである。極限粘度を0.16dL/g以上とすることで、機械物性と流動性、離型性のバランスがよく、0.36dL/g以下とすることで、特に高シェア領域の流動性(例えば0.5mmのSFD特性)と難燃性を高めることができる。
また、本実施形態においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂として、ポリフェニレンエーテル樹脂を構成する構成単位の一部または全部が不飽和若しくは飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができる。
上記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特開平2−276823号公報(米国特許第5159027号明細書、米国再発行特許発明第35695号明細書)、特開昭63−108059号公報(米国特許第5214109号明細書、第5216089号明細書)、特開昭59−59724号公報等に記載されているものが挙げられる。
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、ラジカル開始剤の存在下または非存在下において、ポリフェニレンエーテル樹脂に不飽和若しくは飽和カルボン酸またはその誘導体を溶融混練して反応させることによって製造される。あるいは、ポリフェニレンエーテル樹脂と、不飽和若しくは飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル開始剤存在下または非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造される。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等や、これらジカルボン酸の酸無水物、エステル、アミド、イミド等、さらにはアクリル酸、メタクリル酸等や、これらモノカルボン酸のエステル、アミド等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸又はその誘導体としては、本実施形態では、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の誘導体となり得る化合物が挙げられる。具体的には、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物中の(b)非晶性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100質量%に対して、10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜35質量%であり、更に好ましくは、14〜30質量%である。当該含有量を10質量%以上とすることにより、バリを抑制し、成形体からのアウトガスを抑制することができる。また、当該含有量を40質量%以下とすることにより、薄肉部のガスバリア性を確保することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物において、(b)非晶性樹脂の含有量と(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量との比((b):(a))が、5:5〜2:8であることが好ましく、より好ましくは、4:6〜2.2:7.8であり、更に好ましくは3.5:6.5〜2.4:7.6である。(b)非晶性樹脂の含有量と(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量との比((b):(a))を5:5以下とすることにより、薄肉部のガスバリア性を確保することができ、当該比を2:8以上とすることにより、バリを抑制し、成形体からのアウトガスを抑制することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物において、(b)非晶性樹脂としてポリフェニレンエーテル系樹脂を用いる場合には、(b)非晶性樹脂の含有量と(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量との比((b):(a))は、上述のように5:5〜2:8であることが好ましく、より好ましくは、4:6〜2.2:7.8であり、更に好ましくは3.5:6.5〜2.4:7.6である。ポリフェニレンエーテル系樹脂である(b)非晶性樹脂の含有量と(a)ポリフェニレンスルフィドの含有量との比((b):(a))を5:5以下とすることにより、薄肉部のガスバリア性、流動性、難燃性、を確保することができ、当該比を2:8以上とすることにより樹脂組成物の成形時のバリを抑制するとともに、離型性を向上させることができる。
<(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材>
本実施形態の樹脂組成物に含まれる(c)繊維状無機充填材としては、平均繊維長が50〜150μmであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、セルロース繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、石膏繊維、金属繊維、チタン酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイトからなる群から選ばれる、少なくとも一種を用いることができる。これらの繊維状無機充填剤は、更にシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪族金属塩等の表面処理剤で処理したものや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂をバインダーとして処理したもので構わない。中でも、耐熱性と樹脂との密着性の観点から、ガラス繊維が好ましい。
また、(c)繊維状無機充填材としてガラス繊維を用いる場合、当該ガラス繊維は、さらに集束剤を含んでいることが好ましい。集束剤とは、ガラス繊維の表面に塗布する成分であり、(c)繊維状無機充填材は、その表面の少なくとも一部に集束剤を有していることが好ましい。
(c)繊維状無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物に含まれる(c)繊維状無機充填材は、平均繊維長が50〜150μmである。平均繊維長を50μm以上とすることにより、機械的強度を向上させることができ、また、平均繊維長を150μm以下とすることにより、ガスバリア性や表面平滑性を確保することができる。ガスバリア性等が向上する理由としては、繊維長の短い繊維状無機充填材を用いることにより、成形体表面への充填材の突出が抑制され、それにより充填材と樹脂との境界が表面に現れないのでガスバリア性を確保することができると推測される。(c)繊維状無機充填材の平均繊維長は、55〜145μmであることが好ましく、より好ましくは60〜140μmである。
樹脂組成物中の(c)繊維状無機充填材の平均繊維長は、例えば、樹脂組成物を二軸押出機を用いて製造する場合に、(c)繊維状無機充填材を供給する供給口の位置を調節することにより制御することができる。例えば、(c)繊維状無機充填材を供給する供給口の位置が、原料が流れる方向について上流であるほど、平均繊維長は短くなる傾向にあり、下流であるほど、平均繊維長は長くなる傾向にある。
ここで、本実施形態における(c)繊維状無機充填材の平均繊維長は、以下のようにして求めることができる。
まず、平均繊維長を測定するための(c)繊維状無機充填材は、本実施形態における薄肉部を、例えば、電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、得られた残渣分(灰分)から採取することができる。残渣分から(c)繊維状無機充填材を採取するに当たって、例えば、薄肉部に(c)繊維状無機充填材以外の充填材が含まれる場合には、(c)繊維状無機充填材以外の充填材由来の残渣分と(c)繊維状無機充填材由来の残渣分とは、全ての残渣分を水や他溶媒中に分散させて沈降させることにより分離可能である。
次に、(c)繊維状無機充填材の平均繊維長の測定は、残渣分から微塵(例えば、長さ30μm以下)を除いた後、任意に採取した(c)繊維状無機充填材の300本を顕微鏡を用いて測定し、得られた値を算術平均した値を平均繊維長とすることができる。具体的には、実施例に記載の方法で平均繊維長を測定することができる。
本実施形態の樹脂組成物中の(c)繊維状無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100質量%に対して、10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜38質量%であり、更に好ましくは、20〜36質量%である。当該含有量を10質量%以上とすることにより、機械的強度をより向上させることができ、また、当該含有量を40質量%以下とすることにより、ガスバリア性をより確保することができる。
<(d)結晶核剤>
本実施形態の成形体の薄肉部に含まれる樹脂組成物は、(d)結晶核剤を含有することが好ましい。樹脂組成物が(d)結晶核剤を含むことにより、ガスバリア性をより向上させることができるとともに、薄肉部の寸法精度も向上させることができる。
(d)結晶核剤としては、(a)ポリフェニレンスルフィドの結晶核の生成速度を高める添加剤であれば特に限定されるものではないが、シリカ、カオリン、タルク、ハイトロン、ボロンナイトライド等の無機系核剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、コハク酸二カリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸二ナトリウム、トリメリット酸三ナトリウム、ピロメリット酸四カリウム等の有機カルボン酸金属塩、ポリフェニレンスルフィドケトン、ナイロン46等のポリフェニレンスルフィドよりも高融点のポリマー等が挙げられる。この中でも無機系核剤が好ましく、タルクがより好ましい。
なお本開示で、より具体的にタルクとは、平均粒子径が1〜50μmであり、含水ケイ酸マグネシウム(SiO:58〜64%、MgO:28〜32%、Al:0.5〜5%、Fe:0.3〜5%)を主成分とする板状結晶とすることができる。タルクの平均粒子径は、10〜40μmであることがより好ましく、20〜35μmであることが更に好ましい。
(d)結晶核剤の形状は、特に限定されず、板状結晶等が挙げられる。
なお、(d)結晶核剤の形状は、上述の(c)繊維状無機充填材の平均繊維長の測定と同様に、残渣分をから採取した(d)結晶核剤を用いて顕微鏡により観察することができる。
また、(d)成分は、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪族金属塩等を用いて表面処理を施してもよく、インターカレーション法によりアンモニウム塩等を用いて有機化処理を施してもよく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を用いてバインダー処理を施してもよい。
また、本実施形態の樹脂組成物中の(d)結晶核剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100質量%に対して、10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜45質量%であり、更に好ましくは、14〜40質量%である。当該含有量を10質量%以上とすることにより、ガスバリア性、寸法精度、離型性を効果的に向上させることができ、また、当該含有量を50質量%以下とすることにより、成形体の強度の低下が抑制される。
<(e)鱗片状無機充填材>
本実施形態の成形体の薄肉部に含まれる樹脂組成物は、(e)鱗片状無機充填材を含有していてもよい。
なお、鱗片状とは、平均短径L2に比べて平均厚さTが短い扁平状の粒子形状をいう。
(e)鱗片状無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが低い方が好ましく、樹脂組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは含有しないことである。(e)鱗片状無機充填材の含有量が10質量%以下であることにより、ガスバリア性を効果的に向上させることができる。
(e)鱗片状無機充填材は、先述の(d)結晶核剤は含まない。(e)鱗片状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、マイカを挙げることができる。
(e)鱗片状無機充填材は、平均長径L1が、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは1〜500μmであり、更に好ましくは1〜200μmである。
また、平均短径L2が、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは1〜500μm、更に好ましくは1〜200μmである。
また、(e)鱗片状無機充填材は、平均長径L1と平均短径L2とのアスペクト比(L1/L2)が、3以下であることが好ましく、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1.6以下である。
また、(e)鱗片状無機充填材は、平均長径L1と平均厚さTとの平均アスペクト比(L1/T)が、好ましくは5超、より好ましくは10以上、更に好ましくは30以上である。
なお、(e)鱗片状無機充填材の平均長径L1、平均短径L2、平均厚さTは、いずれも数平均である。(e)鱗片状無機充填材の平均長径L1、平均短径L2、及び平均厚さTは、上述の(c)繊維状無機充填材の平均繊維長の測定と同様に、残渣から任意に採取した100個以上の(e)鱗片状無機充填材について顕微鏡を用いて測定し、得られた値を算術平均した値とすることができる。
(e)鱗片状無機充填材は、樹脂成分との親和性を改良する目的で、例えば、(c)繊維状無機充填材と同様に表面処理を行ってもよい。
また、(e)鱗片状無機充填材としてガラスフレークを用いた場合、当該ガラスフレークは、さらに集束剤を含んでいることが好ましい。
<(f)乳化分散剤>
更に、本実施形態では、(a)ポリフェニレンスルフィドと(b)非晶性樹脂とを混合する際、(f)乳化分散剤を添加することが好ましい。
(f)成分として用いる乳化分散剤は、(1)エポキシ樹脂、(2)シランカップリング剤、(3)エポキシ基を含有する化合物及び/又はオキサゾリル基を含有する共重合体が挙げられ、中でも、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーとスチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体がより好ましく利用できる。
スチレンを主たる成分とするモノマーとは、スチレン成分が100質量%である場合は何ら問題ないが、スチレンと共重合可能な他のモノマーが存在する場合は、その共重合体鎖が(b)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性を保持する上で、少なくともスチレンモノマーを65質量%以上、より好ましくは75〜95質量%含むこととする。これらの例として具体的には、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーとスチレンモノマーの共重合体、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーとスチレン/アクリロニトリル=90〜75質量%/10〜25質量%の共重合体等が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和モノマーとしては、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、中でもグリシジルメタアクリレートが好ましい。
また、上記のオキサゾリル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手でき、好ましく使用できる。
これら、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーと共重合する他の不飽和モノマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物の他に、共重合成分としてアクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本実施形態では、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーを除外した成分中にスチレンモノマーを少なくとも65質量%以上含むことが好ましい。また、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマーは、(f)成分の共重合体中に0.3〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは3〜10質量%含有される。
かかる(f)成分の共重合体のエポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する不飽和モノマー量は、0.3質量%以上であることが好ましく、20質量%以下であれば、(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性が良好となり、これにより得られた樹脂組成物を用いて成形した成形体のバリ発生を大きく抑制することができる他に、靱性(衝撃強度)と剛性とのバランスに優れるという効果をもたらす。
共重合可能な不飽和モノマーを共重合して得られる(f)成分の共重合体の例として、例えば、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
この(f)成分の配合量は、上記した(a)成分及び(b)成分の合計100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜10質量部である。かかる(f)成分の配合量が1質量部以上であれば、(a)成分と(b)成分との混和性が良くなり、20質量部以下であれば、得られた樹脂組成物を用いて成形した成形体のバリ発生を大きく抑制することができる他に、靱性(衝撃強度)と剛性とのバランスに優れるという効果をもたらす。
〔樹脂組成物に含まれるその他の材料〕
本実施形態の成形体の薄肉部に含まれる樹脂組成物は、任意で下記のその他の材料を含有することができる
〔〔難燃剤〕〕
本実施形態の成形体の薄肉部に含まれる樹脂組成物は、難燃剤を含有することができる。難燃性を向上させるための難燃剤としては、通常の熱可塑性樹脂に添加される難燃剤を使用できるが、ハロゲンを含まない有機リン系の難燃剤を添加することが好ましい。
難燃剤は1種単独で用いてもよく、2種以上使用してもよい。
有機リン系の難燃剤としては、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。
リン酸エステル系化合物は、樹脂組成物の難燃性を向上するのに添加されるものであり、難燃剤として一般的に用いられる有機リン酸エステル系化合物であればいずれも用いることができる。
リン酸エステル系化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリスノニルフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン等が挙げられるが、これらに制限されることはない。更に上記以外のリン系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系難燃剤、ジフェニル−4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラブロモベンジルホスフォネート、ジメチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、ジフェニル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2、3−ジブロモプロピル)−2、3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、及びビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェートハイドロキノニルジフェニルホスフェート、フェニルノニルフェニルハイドロキノニルホスフェート、フェニルジノニルフェニルホスフェート等のモノリン酸エステル化合物、及び芳香族縮合リン酸エステル化合物等が挙げられる。
これらの中、加工時のガス発生が少なく、熱安定性等に優れることから芳香族縮合リン酸エステル化合物が好適に用いられる。
本実施形態に用いることが可能な芳香族縮合リン酸エステル化合物として、好ましいのは、下記一般式(I)又は下記一般式(II)で示される芳香族縮合リン酸エステル化合物である。特に好ましいのは、下記一般式(I)で示される芳香族縮合リン酸エステル化合物である。
Figure 2020180192
Figure 2020180192
(一般式(I)及び(II)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々置換基であって各々独立に炭素数1から6のアルキル基を表し、R11及びR12は各々メチル基を表し、R13及びR14は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数であり、n1及びn2は各々独立に0から2の整数を示し、m1、m2、m3及びm4は各々独立に0から3の整数を示す。)
上記一般式(I)又は(II)で示される縮合リン酸エステル化合物は、それぞれの分子において、nは、好ましくは1から3の整数である。
上記一般式(I)又は(II)で示される縮合リン酸エステル化合物において、好ましくは一般式(I)で示される縮合リン酸エステル化合物であり、式(I)におけるm1、m2、m3、m4、n1及びn2がゼロであって、R13及びR14がメチル基である縮合リン酸エステル化合物、又は式(I)におけるQ1、Q2、Q3、Q4、R13及びR14がメチル基であり、n1及びn2がゼロであり、m1、m2、m3及びm4が1から3の整数であり、nが1から3の整数である(特に好ましくは、nが1である)縮合リン酸エステル化合物を、有機リン酸エステル系化合物中に50質量%以上含有するものが好ましい。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物は、一般に市販されており、例えば、大八化学工業(株)製のCR741、CR733S、PX200、(株)ADEKA製のFP600、FP700、FP800等が知られている。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物で特に好ましいのは、熱安定性の観点から、酸価(JIS K2501に準拠して得られた値)が0.1以下の芳香族縮合リン酸エステル化合物である。
また、ホスファゼン系化合物としては、フェノキシホスファゼン及びその架橋体が好ましく、特に好ましいのは、熱安定性の観点から、酸価(JIS K2501に準拠して得られた値)が0.1以下のフェノキシホスファゼン化合物である。
難燃剤の含有量は、必要な難燃性レベルにより異なるが、樹脂組成物100質量%中、1〜30質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜25質量%の範囲である。難燃剤の含有量が、1質量%以上であると、樹脂組成物の流動性と難燃性が向上し、30質量%以下であると、樹脂組成物の難燃性が充分であり、流動性、離型性、バリ抑制のバランスが向上する。
〔〔その他の添加剤〕〕
本実施形態の薄肉部に含まれる樹脂組成物には、上述した各種材料の他、必要に応じて、通常の熱可塑性樹脂に添加される各種添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、顔料や染料等の着色剤、離型剤も適宜添加することができる。
その他の添加剤の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。
〔薄肉部中の樹脂組成物の含有量〕
本実施形態の薄肉部中の樹脂組成物の含有量は、薄肉部100質量%に対して、90質量%以上であることが好ましく、特に好ましくは100質量%である。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、種々の溶融混練機や混練押出機等を用いることができる。溶融混練機や混練押出機としては、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の多軸押出機等の押出機;ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等の加熱溶融混練機等が挙げられる。中でも、二軸押出機が好ましい。
上記した各成分を用いて、少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有する280℃以上に設定した二軸押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。
より好ましい二軸押出機による本実施形態の樹脂組成物の具体的な製法態様の一つは、(a)成分と(b)成分と、任意成分の(f)成分とを、二軸押出機の第一供給口に同時に供給して溶融混練し、これら(a)成分、(b)成分、及び(f)成分で構成される基礎的樹脂組成物が溶融混練された状態で二軸押出機の第一ベント口を絶対真空圧95kPa以下で吸引脱気し、続いて、任意成分のその他の材料(例えば、難燃剤)が液状の場合は、液体添加ポンプにより供給し、その下流に設けた二軸押出機のサイド1供給口より任意成分の(d)成分を、更に下流のサイド2供給口より(c)成分及び(e)成分を供給し、(a)〜(f)成分を溶融混練し、最後に二軸押出機の第二ベント口を絶対真空圧95kPa以下で吸引脱気する方法である。
[成形体の製造方法]
本実施形態の薄肉部材及び容器等の成形体は、上述した樹脂組成物等を用いて、従来公知の方法、例えば、射出成形、金属インモールド成形、アウトサート成形、中空成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱プレス成形、回転成形、積層成形等の公知の方法により成形できる。
以下、上記実施形態を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を示す。
[物性の測定方法]
(1)(c)繊維状無機充填材の平均繊維長(μm)の測定
得られた樹脂組成物のペレットを、240℃〜320℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、製品名「EC75SXII射出成形機」)に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度120℃の条件で厚さ0.38〜0.42mmの試験片を作製した。得られた試験片から10mgをサンプリングし、TGAでフィラー(灰分)を取り出した。
TGA条件:昇温速度5℃/minで500℃までNガス雰囲気下で昇温した。その後、大気雰囲気下600℃で30min保持し、25℃まで2℃/minで降温した。
取り出したフィラーを遠心分離し、繊維状無機充填材のみを取り出した。更に繊維状無機充填材をエタノール中で3min超音波照射し分散させ、プレート上に広げて乾燥させた状態でマイクロスコープにより観察・測定した。測定にはWinRoofソフトを用い、300本の繊維状無機充填材の長さを測定し、算術平均した値を平均繊維長とした。
(2)薄肉部の表面の最大高さSz(μm)の測定
得られた樹脂組成物のペレットを、240℃〜330℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、製品名「EC75SXII射出成形機」)に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度100℃の条件で幅60mm×長さ60mm×厚み0.3mmの平板を射出成形した。
得られた平板について、3DマイクロスコープVR−3000((株)キーエンス製)でISO1997に準拠して表面粗さを計測し、最大高さSzを求めた。
なお、最大高さSzとは、評価曲線を基準長さ毎に区切り、この各基準長さにおいて、平均線から最も高い山頂までの高さと最も深い谷底までの深さとの和を求め、平均した値である。
(3)ガスバリア性(水蒸気)
得られた樹脂組成物のペレットを、240℃〜320℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、製品名「EC75SXII射出成形機」)に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度120℃の条件で0.3mm厚みの平板を成形した。この平板を用いて、水蒸気透過性試験機 PERMATRAN W3/31(モコン社製)にて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下、透過面積50cmとし、JIS K7129 B法に準拠して水蒸気透過度(g/(m・day))を測定した。
評価基準として、0.50g/(m・day)以下であれば、水蒸気バリア性が良いと判断した。
(4)ガスバリア性(酸素)
得られた樹脂組成物のペレットを、240℃〜330℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、製品名「EC75SXII射出成形機」)に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度120℃の条件で0.3mm厚みの平板を成形した。この平板を用いて、酸素透過性試験機 MT−C3(東洋精機製作所製)にて、温度23℃、湿度0%の雰囲気下、透過面積38cmとし、JIS K7126−1(圧力センサ法)に準拠して酸素透過度(cm/(m・day・atm))を測定した。
評価基準として、20cm/(m・day・atm)以下であれば、酸素バリア性が良いと判断した。
(5)強度(曲げ弾性率)
得られた樹脂組成物のペレットを、240℃〜330℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、製品名「EC75SXII射出成形機」)に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度100℃の条件で幅10mm×長さ80mm×厚み4mmの曲げ弾性率測定用試験片を射出成形した。当該試験片を用いて、曲げ弾性率(GPa)をISO178に準じて23℃で測定した。
[原材料]
〔(a)ポリフェニレンスルフィド〕
(a−1):溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が30Pa・s、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%、−SX基量が32μmol/gのp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニア型のPPS。
〔(a’)ポリフェニレンスルフィド以外の結晶性樹脂〕
(a’−1):メルトフローレート(MFR)=0.41g/10分のポリプロピレンとMFR=5.9g/10分のポリプロピレンとの、質量比4:1の混合物。
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
〔(b)非晶性樹脂〕
(b−1)2,6−キシレノールを酸化重合し、クロロホルム中、30℃で測定した極限粘度が0.33dL/gのポリフェニレンエーテル。
(b−2)2,6−キシレノールを酸化重合し、クロロホルム中、30℃で測定した極限粘度が0.46dL/gのポリフェニレンエーテル。
(b−3):ゴム補強ポリスチレン(ペトロケミカル社製、商品名「CT60」)とホモポリスチレン(PSジャパン社製、商品名「PSJ−ポリスチレン685」)との、質量比1:1.4の混合物。
〔(c)繊維状無機充填材〕
(c−1)平均繊維径13μm、平均繊維長0.13mmのガラス繊維
(c−2)平均繊維径13μm、平均繊維長3.0mmのガラス繊維
〔(d)結晶核剤〕
(d−1)平均粒子径30μmのタルク(富士タルク工業社製)
〔(e)鱗片状無機充填材〕
(e−1)平均長径160μmのガラスフレーク
〔実施例1〜8、比較例1〜5〕
(樹脂組成物ペレットの調製)
下記表1に示す配合組成に従い、各成分を温度290〜320℃、スクリュー回転数500rpmに設定した二軸押出機(「ZSK−40」、WERNER&PFLEIDERE社製)を用いて溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
具体的には、(a)ポリフェニレンスルフィド(又はポリフェニレンスルフィド以外の結晶性樹脂)と(b)非晶性樹脂とを、二軸押出機の第一供給口に同時に供給して溶融混練し、これら(a)及び(b)成分で構成される基礎的樹脂組成物が溶融混練した状態で二軸押出機の第一ベント口を絶対真空圧95kPa以下で吸引脱気し、続いて、その下流に設けた二軸押出機のサイド1供給口より(d)結晶核剤を、さらに下流のサイド2供給口より(c)繊維状無機充填材及び(e)鱗片状ガラスを供給し、これらの成分を溶融混練し、最後に二軸押出機の第二ベント口を絶対真空圧95kPa以下で吸引脱気した。
(評価用試験片の作製)
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、シリンダー温度240〜330℃、金型温度40〜120℃の条件で、射出成形を行い、各評価試験用の試験片を作製した。
〔実施例9〕
(樹脂組成物ペレットの調製)
(c)繊維状無機充填材を、サイド2供給口ではなく第一供給口から供給し、その他は実施例1と同じ条件で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
(評価用試験片の作製)
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、実施例1と同じ条件で射出成形を行い、各評価試験用の試験片を作製した。
Figure 2020180192
本発明によれば、軽量化と、ガスバリア性及び強度とを両立することが可能な薄肉部材及び容器を提供することができる。
本発明の薄肉部材及び容器は、揮発性の薬液や溶液を保存ないし輸送するための流路等の部材及び容器等として好適に用いられる。

Claims (8)

  1. 平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、
    前記薄肉部が、(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする、薄肉部材。
  2. 前記薄肉部の表面の最大高さSzが20μm以下である、請求項1に記載の薄肉部材。
  3. 前記(b)非晶性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂である、請求項1又は2に記載の薄肉部材。
  4. 前記ポリフェニレンエーテル樹脂の極限粘度(クロロホルム中、30℃で測定)が0.16〜0.36dL/gである、請求項3に記載の薄肉部材。
  5. 前記(b)非晶性樹脂と前記(a)ポリフェニレンスルフィドとの含有比((b):(a))が5:5〜2:8である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄肉部材。
  6. 前記(c)繊維状無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物100質量%中に10〜40質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄肉部材。
  7. 前記樹脂組成物が更に(d)結晶核剤を含み、前記樹脂組成物100質量%中の前記(d)結晶核剤の含有量が10〜50質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄肉部材。
  8. 平均厚さが0.5mm以下の薄肉部を有し、
    前記薄肉部が(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)非晶性樹脂、及び(c)平均繊維長が50〜150μmの繊維状無機充填材を含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする、容器。
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