JP2020178384A - ステータコアおよび回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 外径寸法を大きくすることなく、磁束密度の分布を低減することができるステータコアを提供する。【解決手段】 ステータコアのティース121a〜121jのうち、磁気特性が最も優れたティース121a、121gを除く少なくとも1つのティース(の径方向)の長さを、当該磁気特性が最も優れたティース121a、121gの長さ(の径方向)よりも長くする。【選択図】 図3

Description

本発明は、ステータコアおよび回転電機に関し、特に、積層された電磁鋼板を有するステータコアに用いて好適なものである。
回転電機のステータコア(鉄心)として、電磁鋼板が用いられる。電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板とに大別される。方向性電磁鋼板は磁気特性の異方性が大きい(圧延方向のみ磁気特性が極端に良好である)。このため、ステータコアの平面の全体形状に合わせて切り抜かれた方向性電磁鋼板を積層してステータコアを構成すると、磁気特性が極端に良好な部分とそうでない部分とが生じ、ステータコアの磁気特性に分布が生じる。そこで、ステータコアとして無方向性電磁鋼板が用いられることが多い。しかしながら、無方向性電磁鋼板であっても、磁気特性に異方性がある。このため、ステータコア内の磁束密度が不均一になり、磁束が集中する領域では磁束が流れにくくなる。よって、例えば、モータのトルクを上げることができない虞がある。また、鉄損は、磁束密度の1.6乗〜2.0乗に比例する。このため、ステータコア内の磁束密度の分布が不均一になると、ステータコア内の磁束密度の分布が均一である場合に対し、ステータコアを流れる磁束の総量は同じであっても、ステータコアの鉄損は大きくなる。
以上のような背景の下、磁気特性に異方性がある電磁鋼板を用いてステータコアを構成する技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、ステータコアの溝底と外周との間の磁束の通路寸法(即ち、ステータコアのヨークの径方向の長さ)を、磁気特性が良好な領域で小さくし、磁気特性が劣る領域で大きくすることが記載されている。このように、特許文献1に記載の技術では、ステータコアのヨークの断面積を磁気特性に応じて異ならせることにより、同じ磁束に対して、磁束密度が、磁気特性の劣る領域であるほど低くなるようにする。特許文献1では、方向性電磁鋼板を用いることを想定しているが、特許文献1に記載の技術を、無方向性電磁鋼板に適用することも考えられる。
特開昭59−10142号公報
多田隈 進、他2名著、「電気機器学基礎論」、電気学会、2004年9月、p.3−p.5
しかしながら、磁気特性が劣る領域であっても当該領域が軟磁性材料で構成されていることに変わりはない。このため、特許文献1に記載の技術では、磁気特性が劣る領域の磁束密度を、磁気特性が良好な領域の磁束密度に近づけるのは容易ではない。また、ステータコアの外径寸法が大きくなる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、外径寸法を大きくすることなく、磁束密度の分布を低減することができるステータコアを提供することを目的とする。
本発明のステータコアは、積層された複数の無方向性電磁鋼板を有するステータコアであって、前記ステータコアの複数のティースのうち、磁気特性が最も優れたティースを除く少なくとも1つのティースの長さが、当該磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長いことを特徴とする。
本発明の回転電機は、前記ステータコアを有するステータと、ロータとを有することを特徴とする。
本発明によれば、外径寸法を大きくすることなく、磁束密度の分布を低減することができるステータコアを提供することができる。
回転電機の構成の一例を示す図である。 ステータコアを構成する無方向性電磁鋼板の初磁化曲線の一例を概念的に示す図である。 ステータコアを展開した状態の第1の例を示す図である。 ステータコアを展開した状態の第2の例を示す図である。 正規化B50と圧延方向からの角度との関係の一例を示す図である。 第1の計算例における計算対象のモータの構成を示す図である。 第1の計算例において径方向の長さを長くしたティースを示す図である。 第1の計算例における損失比を示す図である。 第1の計算例における正規化Bmax標準偏差比を示す図である。 第2の計算例における計算対象のモータの構成を示す図である。 第2の計算例において径方向の長さを長くしたティースを示す図である。 第2の計算例における損失比を示す図である。 第2の計算例における正規化Bmax標準偏差比を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。尚、各図に示すX−Y−Z座標は、各図における向きの関係を示すものであり、X−Y−Z座標の原点は、各図に示す位置に限定されない。また、以下の説明において、長さ、形状、方向、大きさ、間隔、その他の物理量が同じであることは、完全に同じであることに限定されず、対象となる部分の機能が損なわれない範囲で異なっている場合も含む。
(回転電機100の構成)
図1は、回転電機100の構成の一例を示す図である。具体的に図1は、回転電機100を、その軸Oに垂直に切った断面を示す図である。以下の説明では、回転電機100の周方向(回転電機100の軸O回りの方向)、径方向(回転電機100の軸Oから放射状に延びる方向)、高さ方向(軸Oに平行な方向(Z軸方向))を、必要に応じて、それぞれ、周方向、径方向、高さ方向と略称する。また、回転電機100の軸Oを、必要に応じて、軸Oと略称する。
図1において、回転電機100は、ロータ110と、ステータ120とを有する。
ロータ110は、回転軸130(軸O)と同軸になるように、直接または部材を介して回転軸130に取り付けられる。ロータ110は、例えば、ロータコア(鉄心)と、永久磁石とを有する。ロータ110は、公知の技術で実現することができるので、ここではその詳細な説明を省略する。
ステータ120は、回転軸130(軸O)と同軸になるように、ロータ110の外側に配置される。ステータ120は、ステータコアと、コイルとを有する。表記の都合上、図1では、コイルの図示を省略する。ステータコアは、複数のティース121a〜121lとヨーク122とを有する。ヨーク122は、概ね中空円筒形状を有する。ティース121a〜121lは、ヨーク122の内周面から軸Oに向かうように径方向に延在する。ティース121a〜121lは、周方向において等間隔に配置される。複数のティース121a〜121lおよびヨーク122は一体となっている(ティースおよびヨークに境界線はない)。また、いわゆる分割コアの場合にヨーク内に存在する境界線もない。
複数のティース121a〜121lの先端面が、ロータ110のロータコアの外周面と間隔(エアギャップ)を有して対向するように、ロータ110およびステータ120の位置が決められる。以下の説明では、ステータコアのティース121a〜121lの先端面と、ロータコアの外周面との間隔(エアギャップ)を、必要に応じて、エアギャップと略称する。また、複数のティース121a〜121lのそれぞれに対してコイル(巻線)が、ティース121a〜121lと電気的に絶縁された状態で配置される。コイルの巻き方は、分布巻であっても集中巻であってもよい。ステータ120のコイルに対して励磁電流を流すことにより回転磁界が発生し、当該回転磁界によりロータ110が回転する。
以上のように本実施形態では、回転電機100が、インナーロータ型のモータ(電動機)である場合を例に挙げて説明する。モータの適用先としては、例えば、電気自動車(Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)、またはコンプレッサが挙げられるが、モータの適用先は特に限定されない。
本実施形態では、ステータコアは、無方向性電磁鋼板を用いて構成される。無方向性電磁鋼板として、例えば、JIS C 2552(2014)に規定される「無方向性電磁鋼帯」に準ずるものが用いられる。
ステータコアの平面の全体形状(図1に示す形状)に合わせて切り抜かれた無方向性電磁鋼板として、同じ形状および大きさを有する複数の無方向性電磁鋼板を積層して固定することによりステータコアが構成される。ステータコアの固定は、例えば、加締めを用いることにより実現される。無方向性電磁鋼板を切り抜く方法は、特に限定されない。例えば、金型による打ち抜き加工や、ワイヤー放電加工等を用いて、無方向性電磁鋼板を切り抜くことができる。
図1において、後述する説明の都合上、角度を2種類で表記する。図1に括弧を付さずに示す角度(0°、30°、60°、90°)は、無方向性電磁鋼板の圧延方向を基準とした場合の、無方向性電磁鋼板の圧延方向と、ティース121a〜121lの長さ方向とのなす角度のうち90°以下を示す角度である。図1に括弧を付して示す角度(0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、330°、360°)は、無方向性電磁鋼板の圧延方向のうちX軸の正の方向を向く方向を基準(0[°])とし、図1の紙面に向かって反時計回りの方向を正の方向として表す場合の角度を示す。このように、図1において、括弧を付さずに示す角度と、その後に括弧を付して示す角度とは、表記の仕方が異なるものであり、その意味は同じである。このことは、後述する図3、図4、図7、図11においても同じである。
ここで、ティース121a〜121lの長さ方向は、当該ティース121a〜121lの周方向の中心と、軸Oとを通る仮想線であって、軸O(ステータコアの軸)に垂直な平面(X−Y平面)に平行な仮想線(図1において破線で示す直線)が伸びる方向に平行な方向である。図1では、無方向性電磁鋼板の圧延方向がX軸方向である場合を例に挙げて示す。
以下の説明では、無方向性電磁鋼板の圧延方向を基準とした場合の、無方向性電磁鋼板の圧延方向と、ティース121a〜121lの長さ方向とのなす角度を、必要に応じて、圧延方向からの角度と称する。尚、以下の説明では、説明の都合上、圧延方向からの角度を、図1に括弧を付さずに示す角度のように定義した角度として説明する場合と、図1に括弧を付して示す角度のように定義とした角度として説明する場合とがあるが、前述したように、括弧を付さずに示す角度と、その後に括弧を付して示す角度とは、表記の仕方が異なるものであり、その意味は同じである。
本実施形態では、前述したようにして切り抜かれた複数の無方向性電磁鋼板は、圧延方向からの角度を揃えた状態で積層される。即ち、前述したようにして切り抜かれた複数の無方向性電磁鋼板の領域のうち、同一のティースに属する領域の、(図1に括弧を付さずに示す角度のように定義とした角度として表す場合の)圧延方向からの角度は同じになる。
図2は、ステータコアを構成する無方向性電磁鋼板の初磁化曲線の一例を概念的に示す図である。初磁化特性は、例えば、JIS C 2556(2015)に規定される「単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」や、JIS C 2550−1(2011)に規定される「電磁鋼帯試験方法−第1部:エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」を用いて測定することができる。
図2において、初磁化曲線201は、圧延方向からの角度が0°の方向(圧延方向)を励磁方向(主磁束が流れる方向)とする場合の初磁化曲線を示す。
初磁化曲線202は、圧延方向からの角度が30°または60°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線を示す。このように、ここでは簡単のため、圧延方向からの角度が30°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線と、圧延方向からの角度が60°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線とが同じである場合を例に挙げて説明する。ただし、必ずしもこのようにする必要はなく、圧延方向からの角度のそれぞれについて個別に初磁化曲線が定められる。例えば、(図1に括弧を付して示す角度のように定義とした角度として表す場合の)圧延方向からの角度がφ°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線と、圧延方向からの角度がφ°+180°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線とが同じであれば、その他の初磁化曲線は同じであっても異なっていてもよいようにしてもよい。
初磁化曲線203は、圧延方向からの角度が90°の方向を励磁方向とする場合の初磁化曲線を示す。
尚、図2において、括弧を付して示す角度(圧延方向からの角度)は、図1において括弧を付さずに示す角度(0°、30°、60°、90°)に対応する。また、圧延方向からの角度は、例えば、圧延時に鋼板の表面に圧延方向に沿って形成されるロールマーク(疵)に基づいて定めることができる。
図2では、圧延方向からの角度が0°の方向を励磁方向として励磁する場合の磁気特性が最も良く、圧延方向からの角度が30°または60°の方向を励磁方向として励磁する場合の磁気特性が2番目に良く、圧延方向からの角度が90°の方向を励磁方向として励磁する場合の磁気特性が3番目に良い(最も悪い)場合を例に挙げて示す。
本発明者らは、空気の比透磁率は、略1であり、電磁鋼板の比透磁率に比べて桁違いに小さいことに着目した。そして、本発明者らは、図2に示すような磁気特性の差により生じるステータコア内の磁束密度の分布を低減するために、ステータコア(ティースの先端面)とロータコアとの間のエアギャップを調整することを着想した。具体的に、本発明者らは、ステータコアのティース121a〜121lのうち、相対的に磁気特性が劣るティースの長さを、相対的に磁気特性が優れたティースの長さよりも長くして、相対的に磁気特性が劣るティースの先端面とロータコアとのエアギャップを小さくすればよいことを着想した。
ここで、磁気特性の値は、初磁化曲線から定められる。磁気特性の値として、例えば、B50(5000[A/m]の磁化力Hで励磁したときの磁束密度)、B25(2500[A/m]の磁化力Hで励磁したときの磁束密度)、またはB10(1000[A/m]の磁化力Hで励磁したときの磁束密度)を用いることができる。図2では、初磁化曲線201〜203におけるB50の値を例示する。初磁化曲線201におけるB50の値が最も大きく、磁気特性が最も優れていることになる。
長さを長くするティースは、磁気特性が最も優れたティース以外のティースのうちの少なくとも1つを選択していればよい。ただし、少なくとも、磁気特性が最も劣るティースを、長さを長くするティースとして選択するのが好ましい。
例えば、ステータコアの複数のティースのうち、当該ティースの長さ方向を励磁方向としてステータコアに使用される無方向性電磁鋼板を励磁した場合の無方向性電磁鋼板の磁気特性の値が基準値以下になるティースを、長さを長くするティースとすることができる。基準値は、ステータコアに使用される無方向性電磁鋼板の板面に平行な方向において予め設定された複数の方向を励磁方向として無方向性電磁鋼板を励磁した場合の無方向性電磁鋼板の磁気特性の値の平均値に基づいて定められる。以下の説明では、ステータコアに使用される無方向性電磁鋼板の板面に平行な方向において予め設定された複数の方向を励磁方向として無方向性電磁鋼板を励磁した場合の無方向性電磁鋼板の磁気特性の値の平均値を、必要に応じて、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値と称する。
例えば、ティースの長さ方向を励磁方向として無方向性励磁鋼板を励磁した場合の磁気特性の値が、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値のX倍以下になる場合に、当該ティースを、磁気特性が劣るティースであるとすることができる。Xは、0を上回り且つ1を下回る値(0<X<1)であり、例えば、0.84以上、1.00未満の値(例えば、0.985)をXの値として採用することができる。
無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値としては、例えば、磁気特性が最も優れていることを示す値と、磁気特性が最も劣ることを示す値と、磁気特性が最も優れていることを示す値と最も劣ることを示す値との間の少なくとも1つの値との算術平均値を採用することができる。
また、例えば、各ティース121a〜121lの長さ方向を励磁方向として無方向性電磁鋼板を励磁した場合の磁気特性の平均値を、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値とすることができる。
例えば、圧延方向(C方向)と圧延方向からの角度が90°の方向(L方向)とを軸として無方向性電磁鋼板の磁気特性が軸対称であると仮定すると、図1に示す例では、圧延方向からの角度が0°(180°)の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値と、圧延方向からの角度が30°(150°、210°、330°)の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の2倍の値と、圧延方向からの角度が60°(120°、240°、300°)の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の2倍の値と、圧延方向からの角度が90°(270°)の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値と和を6で割った値を、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値とすることができる。より具体的には、磁気特性をB50とし、圧延方向からの角度がθ°の方向を励磁方向とする場合のB50をB50_θとすると、無方向性電磁鋼板のB50の平均値B50_aveは、以下の(1)式で表される。
50_ave=(B50_0+2B50_30+2B50_60+B50_90)÷6 ・・・(1)
また、ティース121a〜121lの長さ方向とは異なる方向を含む複数の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の算術平均値を、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値としてもよい。
例えば、圧延方向(L方向)と圧延方向からの角度が90°の方向(C方向)とを軸とした場合の無方向性電磁鋼板の磁気特性が軸対称であると仮定すると、圧延方向からの角度が0°の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値と、圧延方向からの角度が22.5°の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の2倍の値と、圧延方向からの角度が45°の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の2倍の値と、圧延方向からの角度が67.5°の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値の2倍の値と、圧延方向からの角度が90°の方向を励磁方向とする場合の磁気特性の値との和を8で割った値を、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値としてもよい。より具体的には、磁気特性をB50とし、圧延方向からの角度がθ°の方向を励磁方向とする場合のB50をB50_θとすると、無方向性電磁鋼板のB50の平均値B50_aveは、以下の(2)式で表される。
50_ave=(B50_0+2B50_22.5+2B50_45+2B50_67.5+B50_90)÷8 ・・・(2)
図1および図2に示す例では、磁気特性が最も優れたティースは、ティース121a、121gである。また、磁気特性が2番目に優れた(真ん中の)ティースは、ティース121b、121c、121e、121f、121h、121i、121k、121lである。また、磁気特性が最も劣るティースは、ティース121d、121jである。例えば、磁気特性の値が基準値以下のティースが、ティース121d、121jである場合、ティース121d、121j(の径方向)の長さを、その他のティース121a〜121c、121e〜121i、121k、121l(の径方向)の長さよりも長くする。このようにする場合、長さを長くするティース121d、121j(の径方向)の長さは、例えば、図3に示すようにして決定される。
図3は、ヨーク122を変形できると仮定して、ヨーク122が矩形状になるように図1に示すステータコアを展開した状態の第1の例を示す図である。図3では、エアギャップや後述する余裕代の長さの違いを強調して示す(図3では、エアギャップや後述する余裕代の長さを実際の長さよりも長く示す)。
図3において、Gsは、エアギャップの最小値である。エアギャップの最小値Gsは、エアギャップの長さとして最低限確保しなければならない長さである。Gaは、エアギャップの最小値Gsに対する余裕代である。一般に、エアギャップを設計する場合には、エアギャップの長さとして最低限確保しなければならない長さに対して余裕代Gaが設けられている。そこで、本実施形態では、この余裕代Gaの範囲内で、ティース121d、121j(の径方向)の長さを、その他のティース121a〜121c、121e〜121i、121k、121l(の径方向)の長さよりも長くする。即ち、ティース121d、121jにおけるエアギャップGr2を、ティース121a〜121c、121e〜121i、121k、121lにおけるエアギャップGr1よりも短くする(Gr2<Gr1)。尚、エアギャップGr1(=Gs+Ga)は、ティース(の径方向)の長さが全て同じであるとして設計した場合のエアギャップの設計値になる。
ステータコアにおける磁束密度の分布を低減するために、長さを長くするティースにおける磁気抵抗と、当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗が、その他のティースの少なくとも1つのティースの磁気抵抗と、当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗と同じになるように、長さを長くするティース(の径方向)の長さを長くするのが好ましい。例えば、長さを長くするティースの磁気抵抗と、当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗が、磁気特性が最も優れたティースの磁気抵抗と、当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗と同じになるように、ティース(の径方向)の長さを長くするのが好ましい。
ただし、前述したように、余裕代Gaの範囲内で、ティース(の径方向)の長さを長くする。即ち、長さを長くするティースにおけるエアギャップが、エアギャップの最小値Gsを下回る場合、例えば、長さを長くするティースにおけるエアギャップが、エアギャップの最小値Gsになるように、長さを長くするティース(の径方向)の長さを決定する。また、このようにせずに、長さを長くするティースにおけるエアギャップが、エアギャップの最小値Gsを上回るように、長さを長くするティース(の径方向)の長さを、磁気特性が最も優れたティースおよび当該長さを長くするティース以外のティース(の径方向)の長さと同じにしてもよい。
ここで、ティースの長さは、ティースの先端(外周)側の基準位置から基端(内周)側の基準位置までの径方向の長さである。ティースの数をnとすると、それぞれのティースの先端側の基準位置は、軸Oを軸とするn回対称の位置関係を有する。同様に、それぞれのティースの基端側の基準位置は、軸Oを軸とするn回対称の位置関係を有する。図1では、ティース121a〜121lの先端の位置であって、周方向の中心の位置141a〜141lが、ティース121a〜121lの先端側の基準位置である場合を例に挙げて示す。ティース121a〜121lの先端側の基準位置141a〜141lは、12回対称の位置関係を有する。また、スロットの基端を通るように周回する仮想線と、ティース121a〜121lの先端の位置であって、周方向の中心の位置141a〜141lと、軸Oとを通る仮想線との交点131a〜131lが、ティース121a〜121lの基端側の基準位置である場合を例に挙げて示す。ティース121a〜121lの基端側の基準位置131a〜131lは、12回対称の位置関係を有する。
このように長さを長くするティースの磁気抵抗と当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗が、磁気特性が最も優れたティースの磁気抵抗と当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗と同じになるように、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くする場合、図1および図2に示す例では、ティース121d、121jの磁気抵抗と当該ティースにおけるエアギャップGr2の磁気抵抗との合成抵抗が、磁気特性が最も優れたティース121a、121gの磁気抵抗と当該ティースにおけるエアギャップGr1の磁気抵抗との合成抵抗と同じになるように、ティース121d、121j(の径方向)の長さを長くする。ティースにおける磁気抵抗は、例えば、非特許文献1に記載されている手法で磁気回路を表現することを基本として、回転電機100の構成および仕様に合わせて磁気回路を表現し、回転電機100の各部における磁気抵抗を導出することにより得られる。
また、以上のようにして磁気抵抗を定めるのは、ステータコア内の磁束密度の分布を低減するためである。従って、ティース121d、121j(の径方向)の長さが異なる複数の条件で、マクスウェル方程式に基づく電磁場解析(数値解析)を行うことにより、ティース121d、121j(の径方向)の長さとして、ステータコア内の磁束密度の分布が所望の範囲内になる長さを探索してもよい。このような探索を行う場合の、ティース121d、121j(の径方向)の長さの初期値として、前述した磁気回路により導出した長さを設定してもよい。
また、図3に示すようにせず、例えば、図4に示すようにして、ティース121a〜121l(の径方向)の長さを決定してもよい。図4は、ヨーク122を変形できると仮定して、ヨーク122が矩形状になるように図1に示すステータコアを展開した状態の第2の例を示す図である。図4でも、図3と同様に、エアギャップや余裕代の長さの違いを強調して示す。
図1および図2に示す例では、磁気特性が最も優れたティースは、ティース121a、121gである。また、磁気特性が2番目に優れた(真ん中の)ティースは、ティース121b、121c、121e、121f、121h、121i、121k、121lである。また、磁気特性が最も劣るティースは、ティース121d、121jである。従って、図4に示す例では、ティース121a〜121lの磁気抵抗と当該ティースにおけるエアギャップの磁気抵抗との合成抵抗のそれぞれが可及的に近くなる(好ましくは同じになる)ように、余裕代Gaの範囲内で、磁気特性が最も優れたティース121a、121gを除く全てのティース121b〜121f、121h〜121l(の径方向)の長さを長くする。
このようにする場合、図1および図2に示す例では、図4に示すように、ティース121d、121jにおけるエアギャップGr2は、ティース121b、121c、121e、121f、121h、121i、121k、121lにおけるエアギャップエアギャップGr3よりも短くなり(Gr2<Gr3)、ティース121b、121c、121e、121f、121h、121i、121k、121lにおけるエアギャップエアギャップGr3は、ティース121a、121gにおけるエアギャップGr1よりも短くなる(Gr3<Gr1)。
このようにする場合のティース121a〜121l(の径方向)の長さの導出は、例えば、前述した磁気回路の計算や、マクスウェル方程式に基づく電磁場解析を行うことにより実現することができる。
(計算例)
次に、以上のようにして磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることによりステータコア内の磁束密度の分布が低減することを、二次元の(X−Y平面での)有限要素法による電磁場解析により確認した結果を示す。
本計算例では、無方向性電磁鋼板として、磁気特性が相互に異なる2つの素材A、Bで構成された無方向性電磁鋼板を用いる。図5は、これら2つの素材A、Bの正規化B50と圧延方向からの角度との関係を示す図である。正規化B50は、素材BにおけるB50の最大値で、各B50の値を正規化したもの(正規化B50=B50の値÷素材BにおけるB50の最大値)である。グラフ501は、素材Aの正規化B50を示し、グラフ502は、素材Bの正規化B50を示す。また、図5では、表記の都合上、圧延方向からの角度の表記を、図1等において括弧を付して示す角度と同様の表記とする。
本計算例では、ティースの長さ方向に無方向性電磁鋼板を励磁した場合のB50の値が、無方向性電磁鋼板のB50の平均値の0.985倍以下になる場合に、当該ティースを、磁気特性が劣るティースとして、長さを長くするティースとする。図5において、グラフ503は、素材Aの無方向性電磁鋼板のB50の平均値の0.985倍の値を示す。また、グラフ504は、素材Bの無方向性電磁鋼板のB50の平均値の0.985倍の値を示す。従って、素材Aについては、グラフ501において、ティースの圧延方向からの角度が、グラフ503よりも下のB50に対応する角度になる場合、当該ティースは、磁気特性が劣るティースになり、長さを長くするティースになる。同様に、素材Bについては、グラフ502において、ティースの圧延方向からの角度が、グラフ504よりも下のB50に対応する角度になる場合、当該ティースは、磁気特性が劣るティースになり、長さを長くするティースになる。
以下、ステータコアのコイルを分布巻とした第1の計算例と、ステータコアのコイルを集中巻とした第2の計算例の結果について説明する。
<第1の計算例>
図6は、第1の計算例における計算対象のモータ600の構成を示す図である。具体的に図6は、モータ600を、その軸Oに垂直に切った断面を示す図である。
図6において、モータ600は、埋込永久磁石式同期モータ(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)であり、ロータ610と、ステータ620とを有する。
ロータ610は、回転軸630(軸O)と同軸になるように回転軸630に取り付けられる。ロータ610は、永久磁石611a〜611h、612a〜612h、613a〜613h、614a〜614hと、ロータコア615とを有する。永久磁石611a〜611h、612a〜612h、613a〜613h、614a〜614hはロータコア615に埋め込まれている。図6に示すようにモータ600の極数は8である。ロータ610の外径は133[mm]である。
ステータ620は、ステータコア621とコイル622とを有する。ステータ620の外径は207[mm]である。ティース(の径方向)の長さが全て同じであるとして設計した場合のステータ620の内径は135[mm]である。ステータコア621のスロット数は48である。第1の計算例では、コイル622を分布巻とする。
図7は、ステータコア621において、長さを長くしたティースを示す図である。図7(a)は、素材Aを用いたステータコア621において、長さを長くしたティースを示す図であり、図7(b)は、素材Bを用いたステータコア621において、長さを長くしたティースを示す図である。
ティース(の径方向)の長さが全て同じであるとして設計した場合のティースの長さは、22.0[mm]である。第1の計算例において、素材Aを用いたステータコア621では、ティース621a〜621h(の径方向)の長さを、0.1[mm]長くし(ティース621a〜621h(の径方向)の長さを22.1[mm]とし)、その他ティース(の径方向)の長さを22.0[mm]とした。また、素材Bを用いたステータコア621では、ティース621i〜621p(の径方向)の長さを0.1[mm]長くし(ティース621i〜621p(の径方向)の長さを22.1[mm]とし)、その他ティース(の径方向)の長さを22.0[mm]とした。
尚、図5に示したように、素材Aを用いたステータコア621では、磁気特性が劣るティースは、ティース621a〜621h以外にも存在し、素材Bを用いたステータコア621では、磁気特性が劣るティースは、ティース621i〜621p以外にも存在するが、ここでは、素材Aを用いた場合と素材Bとを用いた場合とを対等に評価するため、長さを長くするティースの数およびその長さを、素材Aを用いた場合と素材Bとを用いた場合とで同じにした。
そして、以上のようにして構成されるモータ600を発明例として、回転数が300[rpm]、(高さ方向1m当たりの)トルクが52[Nm/m]となるようにモータ600を動作させた場合のステータコア621内の磁束密度およびモータ600の鉄損を、電磁場解析を行うことにより導出した。以下の説明では、ステータコア621として素材Aを用いた場合のモータ600(発明例)を第1の発明例とし、素材Bを用いた場合のモータ600(発明例)を第2の発明例とする。
また、全てのティース(の径方向)の長さを22.0[mm]として構成されるモータ600を比較例として、発明例と同じ条件になるように((高さ方向1m当たりの)トルクが52[Nm/m]になるように励磁電流の値を調整して)モータ600を動作させた場合のステータコア621の磁束密度およびモータ600の鉄損を、電磁場解析を行うことにより導出した。以下の説明では、ステータコア621として素材Aを用いた場合のモータ600(比較例)を第1の比較例とし、素材Bを用いた場合のモータ600(比較例)を第2の比較例とする。
ここで、モータ600の損失は、励磁電流の値とコイル622の直流抵抗の値とから定まる銅損と、ステータコア621の鉄損との和とした。
そして、素材A、B毎に、比較例を基準とした発明例の損失比を導出した。図8は、第1の計算例における損失比を示す図である。素材Aの損失比は、第1の発明例のモータ600の損失を、第1の比較例のモータ600の損失で割った値である。素材Bの損失比は、第2の発明例のモータ600の損失を、第2の比較例のモータ600の損失で割った値である。
図8より、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることにより、12[%]〜13[%]程度、モータ600の損失を低減することができることが分かる。
また、ステータコア621における磁束密度の分布の程度を示す指標として、正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを導出した。正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxは、以下の(3)式で表される。
σ−Bmax=σBmax÷σBmax_ave ・・・(3)
σBmax_aveは、ステータコア621内の全要素(全メッシュ)における最大磁束密度Bmaxの平均値[T]である。σBmaxは、ステータコア621内の全要素における最大磁束密度Bmaxの標準偏差[T]である。ここで、最大磁束密度Bmaxは、電気角1周期における磁束密度の最大値である。
そして、素材A、B毎に、比較例を基準とした正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxの比を導出した(以下の説明では、この比を、必要に応じて、正規化Bmax標準偏差比と称する)。図9は、第1の計算例における正規化Bmax標準偏差比を示す図である。素材Aの正規化Bmax標準偏差比は、第1の発明例のモータ600に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを、第1の比較例のモータ600に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxで割った値である。素材Bの正規化Bmax標準偏差比は、第2の発明例のモータ600に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを、第2の比較例のモータ600に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxで割った値である。
図9より、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることにより、ステータコア621内の磁束密度の標準偏差が小さくなり、磁束密度の分布が低減(均一化)することが分かる。特に、相対的にB50の異方性が強い材料(素材B)において、このような傾向が顕著になる。
<第2の計算例>
図10は、第2の計算例における計算対象のモータ1000の構成の一例を示す図である。具体的に図10は、モータ1000を、その軸Oに垂直に切った断面を示す図である。
図10において、モータ1000は、埋込永久磁石式同期モータであり、ロータ1010と、ステータ1020とを有する。
ロータ1010は、回転軸1030(軸O)と同軸になるように回転軸1030に取り付けられる。ロータ1010は、永久磁石1011a〜1011h、1012a〜1012hと、ロータコア615とを有する。永久磁石1011a〜1011h、1012a〜1012hはロータコア615に埋め込まれている。図10に示すようにモータ1000の極数は4である。ロータ1010の外径は85[mm]である。
ステータ1020は、ステータコア1021とコイル1022とを有する。ステータ1020の外径は134[mm]である。ティース(の径方向)の長さが全て同じであるとして設計した場合のステータ1020の内径は87.5[mm]である。ステータコア1021のスロット数は12である。第2の計算例では、コイル1022を集中巻とする。
図11は、ステータコア1021において、径方向の長さを長くしたティースを示す図である。図11(a)は、素材Aを用いたステータコア1021において、径方向の長さを長くしたティースを示す図であり、図11(b)は、素材Bを用いたステータコア1021において、径方向の長さを長くしたティースを示す図である。
ティース(の径方向)の長さが全て同じであるとして設計した場合のティースの長さは、16.25[mm]である。第2の計算例において、素材Aを用いたステータコア1021では、ティース1021a〜1021d(の径方向)の長さを0.075[mm]長くし(ティース1021a〜1021d(の径方向)の長さを16.325[mm]とし)、その他ティース(の径方向)の長さを16.25[mm]とした。また、素材Bを用いたステータコア621では、ティース1021e〜1021h(の径方向)の長さを0.075[mm]長くし(ティース1021e〜1021h(の径方向)の長さを16.325[mm]とし)、その他ティース(の径方向)の長さを16.25[mm]とした。
尚、第2の計算例でも、素材Aを用いた場合と素材Bとを用いた場合とを対等に評価するため、径方向の長さを長くするティースの数およびその長さを、素材Aを用いた場合と素材Bとを用いた場合とで同じにした。
そして、以上のようにして構成されるモータ1000を発明例として、回転数が300[rpm]、(高さ方向1m当たりの)トルクが15.5[Nm/m]となるようにモータ1000を動作させた場合のステータコア1021内の磁束密度およびモータ1000の鉄損を、電磁場解析を行うことにより導出した。以下の説明では、ステータコア1021として素材Aを用いた場合のモータ1000(発明例)を第3の発明例とし、素材Bを用いた場合のモータ1000(発明例)を第4の発明例とする。
また、全てのティース(の径方向)の長さを16.25[mm]として構成されるモータ1000を比較例として、発明例と同じ条件になるように((高さ方向1m当たりの)トルクが15.5[Nm/m]になるように励磁電流の値を調整して)モータ1000を動作させた場合のステータコア1021の磁束密度およびモータ1000の鉄損を、電磁場解析を行うことにより導出した。以下の説明では、ステータコア1021として素材Aを用いた場合のモータ1000(比較例)を第3の比較例とし、素材Bを用いた場合のモータ1000(比較例)を第4の比較例とする。
ここで、モータ1000の損失は、励磁電流の値とコイル1022の直流抵抗の値とから定まる銅損と、ステータコア1021の鉄損との和とした。
そして、素材A、B毎に、比較例を基準とした発明例の損失比を導出した。図12は、第2の計算例における損失比を示す図である。素材Aの損失比は、第3の発明例のモータ1000の損失を、第3の比較例のモータ1000の損失で割った値である。素材Bの損失比は、第4の発明例のモータ1000の損失を、第4の比較例のモータ1000の損失で割った値である。
図12より、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることにより、5[%]〜6[%]程度、モータ1000の損失を低減することができることが分かる。
また、ステータコア1021における磁束密度の分布の程度を示す指標として、正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを導出した。正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxは、前述したように(1)式で表される。
そして、素材A、B毎に、正規化Bmax標準偏差比を導出した。図13は、第2の計算例における正規化Bmax標準偏差比を示す図である。素材Aの正規化Bmax標準偏差比は、第3の発明例のモータ1000に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを、第3の比較例のモータ1000に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxで割った値である。素材Bの正規化Bmax標準偏差比は、第4の発明例のモータ1000に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxを、第4の比較例のモータ1000に対する正規化最大磁束密度標準偏差σ−Bmaxで割った値である。
図13より、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることにより、ステータコア1021内の磁束密度の標準偏差が小さくなり、磁束密度の分布が低減(均一化)することが分かる。特に、相対的にB50の異方性が強い材料(素材B)において、このような傾向が顕著になる。
以上のように、ステータコアのコイルを集中巻としても分布巻と同様の効果が得られることが分かる。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、ステータコアのティース121a〜121jのうち、磁気特性が最も優れたティース121a、121gを除く少なくとも1つのティース(の径方向)の長さを、当該磁気特性が最も優れたティース121a、121gの長さ(の径方向)よりも長くする。従って、ステータコアの外径寸法を大きくすることなく、ステータコア内の磁束密度の分布を低減することができる。これにより、ステータコアの鉄損(ひいては回転電機100の損失)を低減することができる。電磁鋼板に比べて空気の比透磁率は極めて小さいため、エアギャップの僅かな変更であっても、磁気抵抗を大きく調整することができる。このため、特許文献1に記載のように、ステータコアのヨークの断面積を大きくすることに比べ、効率良くステータコア内の磁束密度の分布を低減することができる。ここで、ステータコアの複数のティースのうち、磁気特性が最も優れたティースを除く少なくとも1つのティースの長さが、当該磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長いことは、磁気特性が最も優れたティースを除く少なくとも1つのティースの先端とロータとの間に生じるギャップが、当該磁気特性が最も優れたティースの先端とロータの間に生じるギャップより短いことを意味する。
また、本実施形態では、ティースの長さ方向を励磁方向として無方向性励磁鋼板を励磁した場合の磁気特性の値が、無方向性電磁鋼板の磁気特性の平均値のX倍以下になる場合に、当該ティースを、磁気特性が劣るティースであるとし、当該磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くする。従って、少なくとも、ステータコア内の磁束密度の分布を低減することに最も寄与するティース(磁気特性が最も劣るティース)を含め、ステータコア内の磁束密度の分布を低減することに寄与するティースを確実に選択することができる。
また、磁気特性が最も優れたティース121a、121g以外のティース121b〜121f、121h〜121lの全ての長さを長くすることにより、ステータコア内の磁束密度の分布をより低減することができる。
(変形例)
本実施形態では、インナーロータ型のモータを例に挙げて説明したが、アウターロータ型のモータであっても、本実施形態で説明した手法で、磁気特性が劣るティース(の径方向)の長さを長くすることにより、本実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、ラジアルギャップ型のモータ(ステータのティースの先端面とロータコアとが径方向においてエアギャップを介して相互に対向する構成のモータ)を例に挙げて説明したが、アキシャルギャップ型のモータ(ステータのティースの先端面とロータコアとが高さ方向(軸方向)においてエアギャップを介して相互に対向する構成のモータ)であっても、本実施形態で説明した手法で、磁気特性が劣るティース(の高さ方向(軸方向))の長さを長くすることにより、本実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、本実施形態の計算例では、モータが埋込永久磁石式同期モータである場合を例に挙げて示した。しかしながら、本実施形態の適用対象のモータは、埋込永久磁石式同期モータに限定されない。本実施形態の適用対象のモータとして、例えば、表面永久磁石式同期モータ(SPMSM:Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)や、直流モータや、誘導モータが挙げられる。
また、本実施形態では、回転電機100が、モータである場合を例に挙げて説明したが、回転電機100は発電機(ジェネレータ)であってもよい。
また、本実施形態のように、磁気特性が劣るティースの長さを長くすることに加えてまたは代えて、コイルを配置するスペースが確保される範囲で磁気特性が劣るティースの先端幅(周方向の長さ)を長くすることにより、ステータコア内の磁束密度の分布を低減させるようにしてもよい。ティースの先端幅の増加量は、例えば、本実施形態で説明したような磁気回路の計算や、マクスウェル方程式に基づく電磁場解析を行うことにより実現することができる。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
100:回転電機、110:ロータ、120:ステータ、121a〜121l:ティース、122:ヨーク

Claims (7)

  1. 積層された複数の無方向性電磁鋼板を有するステータコアであって、
    前記ステータコアの複数のティースのうち、磁気特性が最も優れたティースを除く少なくとも1つのティースの長さが、当該磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長いことを特徴とするステータコア。
  2. 前記ステータコアの複数のティースのうち、少なくとも磁気特性が最も劣るティースの長さが、前記磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のステータコア。
  3. 前記ステータコアの複数のティースのうち、磁気特性が最も優れたティースを除く全てのティースの長さが、当該磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載のステータコア。
  4. 前記ステータコアの複数のティースのうち、磁気特性の値が基準値以下であるティースの長さが、前記磁気特性が最も優れたティースの長さよりも長く、
    前記基準値は、前記無方向性電磁鋼板の板面に平行な方向において予め設定された複数の方向を励磁方向として前記無方向性電磁鋼板を励磁した場合の前記無方向性電磁鋼板の磁気特性の値の平均値に基づいて定められることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のステータコア。
  5. 前記ティースの前記磁気特性の値は、当該ティースの長さ方向に無方向性電磁鋼板を励磁した場合の無方向性電磁鋼板の磁気特性の値であり、
    前記ティースの長さ方向は、当該ティースの周方向の中心と、前記ステータコアの軸とを通る仮想線であって、当該軸に垂直な平面に平行な仮想線が伸びる方向に平行な方向であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のステータコア。
  6. 前記磁気特性は、磁化力が5000[A/m]であるときの磁束密度の値であるB50、磁化力が2500[A/m]であるときの磁束密度の値であるB25、または磁化力が1000[A/m]であるときの磁束密度の値であるB10であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のステータコア。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載のステータコアを有するステータと、ロータとを有することを特徴とする回転電機。
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