JP2020176520A - スクロール圧縮機 - Google Patents
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特許文献1では、圧縮室への給油を促進するため、ラップの先端部に、潤滑油が供給される給油孔と、給油孔からラップの巻き終わり方向に延びた油溝と、油溝と圧縮室とを連通させる連通孔とを形成している。特許文献1によれば、圧縮室への給油により、圧縮室が冷媒ガスを閉じ込む行程および圧縮を開始する行程における圧縮室間の漏れを低減でき、体積効率の向上が図られる。
また、溝や孔等を加工できたとしても、加工誤差、組立誤差による圧縮室の気密性の低下が避けられない場合がある。
そして、本発明は、旋回ラップの終端が、圧縮機構における油溜まり部に位置し、終端には、水平面に対して交差する軌道が設定されていることを特徴とする。
「295°」は、厳密には、インボリュート曲線に基づく所定の角度296.1…°(小数点第二位以下省略)である。導入空間の容積が増加する角度範囲と、導入空間の容積が減少する角度範囲との境界は、約295°、つまり295°およびその前後近傍の角度、例えば、292°〜300°に設定することができる。
〔第1実施形態〕
まず、図1および図2を参照し、第1〜第5実施形態に共通するスクロール圧縮機1の構成について説明する。
(スクロール圧縮機)
スクロール圧縮機1は、例えば車両に装備されて空気調和機を構成する。本実施形態のスクロール圧縮機1は、エンジン等の動力源から伝達される駆動力により駆動され、冷媒を圧縮するが、モータの駆動力により駆動されるものであってもよい。
ハウジング13には、エンジン等の支持体に取り付けられる取付部133〜136が設けられている。取付部133〜136はそれぞれ、ねじ止めによりハウジング13を支持体に固定する。図1には、ハウジング本体131の孔に挿入される取付部133〜136の各々の軸部を示している。これらの取付部133〜136により、スクロール圧縮機1は、シャフト11およびスクロール10,20の軸線が略水平方向に沿っている状態で支持体に設置される。なお、スクロール圧縮機1が支持体に設置された状態において、当該軸線が水平方向に対して傾斜していてもよい。
また、冷媒の流れにより巻き上げられて冷媒中にミスト状に含まれる潤滑油は、圧縮機構Cに吸入され、圧縮された冷媒と共に吐出されると、冷媒回路を循環する。
油溜まり部30において潤滑油は、圧縮機構Cを囲むハウジング13の内壁における重力方向D1(鉛直方向)の下側の領域に溜まり、固定スクロール10や旋回スクロール20に接触する。
主軸111は、ハウジング本体131から軸線方向の一方側に突出している。主軸111の周りに設けられたシール14により、ハウジング13の内部が気密に保持されている。
偏心軸112には、駆動軸受15を介して旋回スクロール20が連結される。偏心軸112には、旋回する旋回スクロール20とつり合いを取るためのカウンターウェイト16が設けられている。
図1および図2を参照し、圧縮機構Cの構成を説明する。
固定スクロール10は、渦巻状の固定ラップ101と、固定ラップ101を支持する固定端板102とを備えている。固定ラップ101は、インボリュート曲線に従った形状に形成されることが好ましい。旋回スクロール20の旋回ラップ201も同様である。
旋回スクロール20は、固定スクロール10に対して、旋回半径rに相当する偏心距離にて偏心している。
噛み合わせられた固定スクロール10と旋回スクロール20とのそれぞれのラップと端板との間、つまり、固定ラップ101と旋回端板202との間、および、旋回ラップ201と固定端板102との間には、クリアランスが設定されている。
図2に示すように、固定端板102から起立した固定ラップ101の先端部101Aには、シール部材21が配置されるシール溝101Bが形成されている。シール溝101Bに流入した冷媒の圧力によりシール部材21がシール溝101Bの底部に対して浮上し、旋回端板202(図1)に押し付けられることで、固定ラップ101と旋回端板202との間が封止される。
旋回スクロール20の公転旋回運動に伴い、ハウジング13内の冷媒が固定スクロール10と旋回スクロール20との間に吸入される。このとき、例えば図4(c)に示すように、固定ラップ101の終端101Eと旋回ラップ201の側壁201Wとの間の吸入開口103から冷媒が吸入されるとともに、旋回ラップ201の終端201Eと固定ラップ101の側壁との間の吸入開口203から冷媒が吸入される。
上述したように、冷媒中に含まれる微細な油滴(オイルミスト)が、固定スクロール10と旋回スクロール20との間に吸入される。このオイルミストにより、固定ラップ101および旋回ラップ201のそれぞれの先端部101A,201Aと相手の端板との隙間や、固定ラップ101の側壁101Wと旋回ラップ201の側壁201Wとの隙間に油膜が形成されると、油膜は、圧縮機構Cにおける摺動部の潤滑と冷媒の漏れ低減とに寄与する。
ここで、仮に終端201Eが油面30Aよりも上方に位置しているため潤滑油には接触していないとしても、油溜まり部30に溜まる潤滑油と、固定ラップ101の側壁101Wとの間に吸入開口203を形成する終端201Eとが近いことで、油溜まり部30の潤滑油が、吸入開口203から固定スクロール10と旋回スクロール20との間に吸入される冷媒ガスの流れにより搬送され、固定スクロール10と旋回スクロール20との間に導入される。
終端201Eが油溜まり部30の潤滑油に接触する場合は、終端201Eから、固定スクロール10と旋回スクロール20との間に液状の潤滑油を直接的に導入することができるし、終端201Eが潤滑油に接触しないとしても、冷媒ガスと共にスクロール10,20間に吸入される。油溜まり部30の油量によっては、終端201Eが潤滑油に接触する、終端201Eが油面30Aから脱し、終端201Eに付着した潤滑油が冷媒ガスと共にスクロール10,20間に吹き込まれるといった過程が繰り返される。
次に、図4および図5を参照し、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態以降は、第1実施形態を前提としつつ、油溜まり部30から潤滑油をより効率良く圧縮機構Cに導入するための構成を開示する。
図4(b)、(c)に示すように、旋回スクロール20が旋回すると、吸入開口203が開き、導入空間205の容積が増加する。図4(c)に示すように吸入開口203が最大、つまり、終端201Eと固定ラップ101の側壁101Wとの間の距離Dsが最大となる角度を経た後、図4(d)に示すように、導入空間205の容積はさらに増加する。
角度0°から、吸入開口203が最大となる180°を経て、約295°までの角度範囲において、導入空間205の容積は増加する。容積の増加により冷媒圧力が減少した導入空間205にスクロール10,20の外部から冷媒ガスが流入するため、導入空間205の容積が増加する間は、導入空間205に冷媒ガスが吸入される。そのため、0°〜約295°の角度範囲のことを吸入ステップS1と称するものとする。
したがって、吸入ステップS1に相当する角度範囲における所定の角度、例えば、図4(c)に示す180°のときに終端201Eが想定の油面30Aを通過するように、終端201Eの位置を定めるとよい。
特に、角度変化に対する導入空間205の容積の増加率が大きい角度のとき、吸入される冷媒ガスの流量が大きいため、容積の増加率が大きい角度で終端201Eが油面30Aを通過するようにすると、潤滑油をより効率良く取り込むことができる。
次に、図6を参照し、本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態では、終端201Eと油面30Aとの位置関係を定めるにあたり、導入空間205の容積に加えて、終端201Eと固定ラップ101の側壁101Wとの間の距離も考慮する。
次に、図7を参照し、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態では、第2実施形態または第3実施形態と同様に、吸入ステップS1においてスクロール10,20の間に吸入される冷媒ガスの流れを給油に利用しつつ、給油の効率をさらに高めるため、終端201Eにおける接線L4と、重力方向D1との関係を定めている。
そうすると、旋回ラップ201の終端201Eが油面30Aを向くので、旋回ラップ201の側壁201Wに妨げられることなく、例えば図7(c)に矢印で示すように、終端201Eと側壁101Wとの間からスクロール10,20間に、冷媒ガスの流れと共に潤滑油をスムーズに流入させることができる。
延長側Exとは反対側である反延長側OExは、中心線Lcよりも左側を言うものとする。
次に、図8を参照し、本発明の第5実施形態を説明する。
第5実施形態では、第2〜第4実施形態とは異なり、導入空間205の容積が減少する吐出ステップS2に関して、終端201Eの向きを定めている。
加えて、例えば図8(a)に示しているように、終端201Eにおける接線L5は、接点P5から旋回ラップ201の反延長側OExで、重力方向D1の下方へ延びている。換言すると、旋回ラップ201には、終端201Eに向けて上り勾配が与えられている。
そうすると、例えば図8(c)に矢印で示すように導入空間205から冷媒ガスが吐出され、その後導入空間205が締め切られるまでの間、旋回ラップ201の終端201E近傍に、それまでに取り込まれた潤滑油を留めて、スクロール10,20間に流入させることができる。
スクロール圧縮機1は、車両に限らず、建物等の空気調和機を構成していてもよい。また、スクロール圧縮機1の用途は、空気調和機に限らず、冷凍機や給湯機であってもよい。スクロール圧縮機1により圧縮される流体は、冷媒に限らず、例えば空気を圧縮するものであってもよい。
10 固定スクロール
11 シャフト
13 ハウジング
13A 吸入部
14 シール
15 駆動軸受
16 カウンターウェイト
17 プーリ
18 電磁クラッチ
19 軸受
20 旋回スクロール
21,22 シール部材
24 軌道
30 油溜まり部
30A 油面
100 圧縮室
101 固定ラップ
101A 先端部
101B シール溝
101E 終端
101S 始端
101W 側壁
102 固定端板
103 吸入開口
104 吐出ポート
111 主軸
112 偏心軸
121,122 軸受
131 ハウジング本体
131A ボス部
131B ボルト
132 フロントハウジング
132A スラスト部材
133〜136 取付部
201 旋回ラップ
201A 先端部
201E 終端
201W 側壁
202 旋回端板
202A ボス部
203 吸入開口
205 導入空間
A1 軸線
C 圧縮機構
D1 重力方向
Ds 距離
Ex 延長側
OEx 反延長側
L0,L1 直線
L4,L5 接線
Lc 中心線
P1 位置
P4,P5 接点
S1 吸入ステップ
S2 吐出ステップ
Hp 水平面
X 中心部
r 旋回半径
Claims (8)
- スクロール圧縮機であって、
固定スクロールと、前記固定スクロールに対して旋回する旋回スクロールと、を含む圧縮機構を備え、
前記固定スクロールは、固定ラップおよび固定端板を備え、
前記旋回スクロールは、旋回ラップおよび旋回端板を備え、
前記旋回ラップの終端は、前記圧縮機構における油溜まり部に位置し、
前記終端には、水平面に対して交差する軌道が設定されている、
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記軌道は、前記油溜まり部における油面の高さが最大となる位置で重力方向に引いた直線に対して交差する、
請求項1に記載のスクロール圧縮機。 - 前記終端は、径方向外側における前記旋回ラップと前記固定ラップとの間の導入空間の容積が増加する角度範囲において、前記油溜まり部における油面を通過する、
請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。 - 前記終端は、前記導入空間の容積が増加し、かつ、前記終端と前記固定ラップの側壁との間の距離が減少する角度範囲において、前記油溜まり部における油面を通過する、
請求項3に記載のスクロール圧縮機。 - 前記終端における接線は、接点から前記旋回ラップの延長側で、重力方向の下方へ延びる、
請求項3または4に記載のスクロール圧縮機。 - 前記終端は、径方向外側における前記旋回ラップと前記固定ラップとの間の導入空間の容積が減少する角度範囲において、前記油溜まり部における油面を通過し、
前記終端における接線は、接点から前記旋回ラップを延長する側で、重力方向の上方へ延びる、
請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。 - 前記旋回ラップおよび前記固定ラップは、インボリュート曲線に従った形状に形成され、
径方向外側における前記旋回ラップと前記固定ラップとの間の導入空間が締め切られた時の角度を0°としたとき、
前記導入空間の容積が増加する角度範囲と、前記導入空間の容積が減少する角度範囲との境界は、約295°である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。 - 前記圧縮機構を収容するハウジングには、
前記固定スクロールおよび前記旋回スクロールの軸線が略水平方向に沿っている状態で支持体に取り付けられる取付部が設けられている、
請求項1から7のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01155087A (ja) * | 1987-12-14 | 1989-06-16 | Mitsui Seiki Kogyo Co Ltd | 油冷式横形スクロール圧縮機 |
JPH1182331A (ja) * | 1997-09-04 | 1999-03-26 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | スクロール圧縮機 |
JP2017089487A (ja) * | 2015-11-10 | 2017-05-25 | 株式会社ケーヒン | 電動圧縮装置の設計方法及び電動圧縮装置 |
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