JP2020176180A - セルロース繊維を含有する繊維強化樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】車載用途、電材用途等の部材の成形及び使用に耐え得る、熱分解開始温度が高く分散性に優れたセルロース微細繊維を所定量含有する繊維強化樹脂組成物であって、高い力学物性及び高い耐熱性を有する樹脂複合体を与える繊維強化樹脂組成物を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂100質量部と、数平均繊維径が10nm〜500nmのセルロース繊維0.1〜50質量部と、難燃剤成分0.01〜25質量部とを含む、繊維強化樹脂組成物が提供される。【選択図】なし

Description

本発明はセルロース繊維を含有する繊維強化樹脂組成物に関する。
セルロースナノファイバー(CNF)は、樹脂の補強材として注目されている。セルロースナノファイバーを樹脂補強材とすることで、樹脂複合体の衝撃強度の低下が少なく、低比重にして高剛性で成形外観に優れ、廃棄が容易で環境負荷の低いバイオマス材料を得ることができる。
特許文献1には、平均繊維径500nm以下のセルロース繊維の水分散液中で、熱可塑性ポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合することで、当該セルロース繊維が凝集することなく均一に分散されたポリアミド樹脂組成物を得る方法が記載されている。しかしこの方法では、得られた組成物を高温で溶融し、射出成形等により成形体を形成する際にセルロースの変色及び熱劣化を防ぐことができない。
特許文献2には、リン系難燃剤と、平均繊維径3〜200nmのナノセルロースとを含む難燃性熱可塑性樹脂組成物が記載されている。しかしこの技術ではナノセルロースによる難燃剤の分散性向上による樹脂の難燃性向上が目的であり、ポリアミドなどの高融点樹脂と溶融混練される場合のナノセルロースそのものの熱による変色及び劣化は防ぐことができない。
特許文献3には、セルロースナノファイバーの製造において、イオン液体、有機溶媒及び修飾剤を用いてセルロース原料の解繊と化学修飾とを同時に行うことで、セルロースの水酸基を化学修飾して耐熱性及び樹脂分散性を向上させる技術が記載されている。しかしながら、イオン液体はセルロースに付着している水との親和性が高く除去のための負荷が大きいため、上記技術は高コストであり、高純度のセルロースを得ることが難しいという問題がある。
特許第5885658号公報 国際公開第2017/169494号 特開2013−44076号公報
特許文献1〜3に記載される技術では、樹脂の物理特性を向上させる効果がある程度期待できるものの、車載用途や電材用途への使用に耐え得る耐熱性向上等の観点から、依然として、より高耐熱性の樹脂複合体を提供する必要がある。より高耐熱性の樹脂複合体を得るために必要な、66ナイロンやアクリロニトリル系樹脂などの比較的高い融点を有する樹脂と相溶し、かつ、高融点のペレットを用いて部材を成形する際の高温に耐える、熱分解開始温度の高いセルロースナノファイバーを安定して低コストで提供する技術は未だ提供されていない。また、セルロースナノファイバーと、ポリオレフィンなどの比較的融点の低い樹脂との複合体の成型においては、成型時に、高温で一定時間、溶融状態での分散混練が必要であるため、高温での熱履歴によりセルロースナノファイバーが成型過程で熱劣化し、物性低下が避けられない。これを防止するためにも、樹脂複合体を構成するセルロースナノファイバーには高い耐熱性が求められている。更には、こうした樹脂補強材としての性能を樹脂複合体にて発現させるためには、樹脂の中にセルロースナノファイバーを高度に均一に分散させることにより樹脂の中で補強材による微細ネットワークの構造化を促進させる必要もある。
すなわち、広範囲の樹脂を用い、セルロースナノファイバーを含み力学物性に優れる樹脂複合体を得るためには、耐熱性向上と分散性向上の両立を達成する必要がある。
前記した従来技術の状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、車載用途、電材用途等の部材の成形及び使用に耐え得る、熱分解開始温度が高く分散性に優れたセルロース微細繊維を所定量含有する繊維強化樹脂組成物であって、高い力学物性及び高い耐熱性を有する樹脂複合体を与える繊維強化樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、数平均繊維径が10nm〜500nmであるセルロース繊維(本開示で、「セルロース微細繊維」ともいう。)と、難燃剤成分とを所定量樹脂に添加することによって、車載用途等に望まれる特性である高い耐熱性及び高い力学物性を有する樹脂複合体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 熱可塑性樹脂100質量部と、数平均繊維径が10nm〜500nmのセルロース繊維0.1〜50質量部と、難燃剤成分0.01〜25質量部とを含む、繊維強化樹脂組成物。
[2] 前記難燃剤成分が金属塩を含み、前記金属塩の量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する金属質量基準で0.001〜0.2質量部である、上記態様1に記載の繊維強化樹脂組成物。
[3] 前記金属塩が銅元素を有する、上記態様2に記載の繊維強化樹脂組成物。
[4] 前記セルロース繊維の少なくとも一部に前記難燃剤成分が固定化されている、上記態様1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
[5] 前記難燃剤成分がホウ酸又はホウ酸塩を含む、上記態様1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
[6] 前記セルロース繊維においてセルロースの水酸基の少なくとも一部がホウ酸エステル化されている、上記態様1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
本発明によれば、車載用途、電材用途等の部材の成形及び使用に耐え得る、熱分解開始温度が高く分散性に優れたセルロース微細繊維を所定量含有する繊維強化樹脂組成物であって、高い力学特性及び高い耐熱性を有する樹脂複合体を与える繊維強化樹脂組成物が提供される。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で主々変化して実施することができる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂組成物(本開示で、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、熱可塑性樹脂と、数平均繊維径が10nm〜500nmのセルロース繊維と、難燃剤成分とを含む。樹脂組成物は、無機充填材その他の成分をさらに含んでもよい。
<数平均繊維径が10nm〜500nmのセルロース繊維(セルロース微細繊維)>
本実施形態の樹脂組成物中のセルロース微細繊維の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは1〜20質量部である。
セルロース微細繊維の数平均繊維径は、10nm〜500nmであり、好ましくは20nm〜300nmであり、より好ましくは50nm〜200nmである。数平均繊維径が500nm以下のセルロース微細繊維を得る方法としては、特に制限は無いが、ボールミル、ビーズミル、グラインダー、石臼粉砕機、高圧ホモジナイザー、ホモミキサーなどの各種粉砕装置を使用して湿式で物理的なセルロース解繊工程を経る方法を例示できる。
セルロース微細繊維の原料となるセルロースとしては、天然セルロース及び再生セルロースが挙げられる。
天然セルロースとしては、広葉樹又は針葉樹から得られる木材パルプ、非木材種からの精製パルプ(すなわち非木材パルプ)のいずれも使用できる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ(例えば精製リンター)、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプなどを使用できる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント、コットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のものが多い)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程を経て得られる精製パルプが代表例として挙げられる。この他、海藻由来のセルロースやホヤセルロースの精製物も使用できる。ここで、パルプに残存するセルロース以外の成分としてリグニン及びヘミセルロースを挙げることができるが、これらの成分はいずれも樹脂との複合化において耐熱性低下及びそれに伴う変色を誘起するため、セルロース原料中に含まれる含有量は少ない方がよい。具体的には、セルロース原料に含まれるリグニン含有率は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。セルロース原料に含まれるヘミセルロースの含有量は、好ましくは13質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
他方、再生セルロースとは、天然セルロースを溶解又は結晶膨潤(マーセル化)処理し再生して得られる物質であって、粒子線回折によって格子面間隔0.73nm、0.44nm及び0.40nmに相当する回折角を頂点とする結晶回折パターン(セルロースII型結晶)を与えるような分子配列を有するβ−1,4結合グルカン(グルコース重合体)を言う。セルロースII型結晶のX線回折パターンにおいては、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークとを有する。再生セルロースとしては、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセル等が挙げられる。再生セルロースからは100nmを超える繊維径の繊維を作り易いため、分散性の観点から好ましい場合がある。これらの中でも微細化のし易さの観点から、繊維軸方向への分子配向性の高いキュプラ又はテンセルを原料として微細化した繊維を用いることが好ましい。さらに、再生セルロース繊維のカット糸やセルロース誘導体繊維のカット糸も使用できる。また、原料として天然セルロースと再生セルロースを混合して用いても構わない。
また、セルロース微細繊維として、バクテリアが産出するバクテリアセルロースを使用することもでき、例えば、アセトバクター族の酢酸菌を生産菌として産出されたものを使用することができる。植物のセルロースは、セルロースの分子鎖が収束したもので、非常に細いミクロフィブリルが束になって形成されているものであるのに対し、酢酸菌より産出されたセルロースはもともと、ネバードライで幅20〜50nmのリボン状であり、植物のセルロースと比較すると極めて細い網目状を形成している。
セルロース微細繊維の数平均繊維径は以下のように測定する。
まず、後述の作製法で得られたセルロース微細繊維シートの表面の無作為に選んだ3箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、微細繊維の繊維径に応じて10,000〜100,000倍相当の倍率で観察する。得られた3つのSEM画像の各々において、画面に対しヨコ方向とタテ方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の本数と、各繊維の繊維径とを拡大画像から実測し、1つの画像につきタテヨコ2系列の数平均繊維径を算出する。数平均繊維径の3画像での数平均を、対象とする試料の数平均繊維径とする。
SEM観察用のセルロース微細繊維シートの作製は、次の通り行う。
まず、セルロース微細繊維の水分散体を遠心分離により固形分率5質量%以上の濃度に濃縮する。得られたセルロース微細繊維濃縮物を、tert−ブタノール中に、セルロース微細繊維の濃度が0.2質量%となるように分散させ、さらに超音波分散等で分散処理を行う。得られた分散液をガラスフィルター上で濾過し、フィルター上に形成された湿紙を60℃にて乾燥させ、セルロース微細繊維シートとする。
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂としては、鎖状又は環状のポリオレフィン系樹脂、ポリアセテート系樹脂、芳香族又は脂肪族のポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族又は脂肪族のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂(POMともいう。)、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂複合体の耐熱性を高める観点から、アクリル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、更にこれらの中でも、ナイロン系樹脂及びアクリロニトリル系樹脂が好ましく、更には、ポリアミド6,6(以下、PA66と称することがある。)、及びアクリロニトリル樹脂(以下、ANということがある。)が好ましい。
また、樹脂複合体の耐熱性を高めるため、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは245℃以上である。熱可塑性樹脂の融点は、製造容易性の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下であってよい。熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温していった際に、現れる吸熱ピークのピークトップ温度を指し、吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
ポリアミド系樹脂の好適例としては、ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12や、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミンなどのジアミン類と、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのジカルボン酸類との共重合体として得られるポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体、一例としてポリアミド6,T/6,I等の共重合体が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。更により好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド6,6が挙げられ、ポリアミド6,6が最も好ましい。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、好ましくは20μモル/g、より好ましくは30μモル/gである。また、その末端カルボキシル基濃度の上限値は、好ましくは150μモル/g、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは80μモル/gである。
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらに好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらに好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロースの組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコールなどの末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7−228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003−055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H−NMRによる定量がより好ましい。
ポリアミド系樹脂は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]が、0.6〜2.0dL/gであることが好ましく、0.7〜1.4dL/gであることがより好ましく、0.7〜1.2dL/gであることが更に好ましく、0.7〜1.0dL/gであることが特に好ましい。好ましい範囲、その中でも特に好ましい範囲の固有粘度を有する上記ポリアミドを使用すると、樹脂組成物の射出成形時の金型内流動性を大幅に高め、成形片の外観を向上させるという効用を与えることができる。
本開示において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。この粘度を求める具体的な方法は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法である。このゼロに外挿した値が固有粘度である。これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering (Prentice-Hall, Inc 1994)の第291ページ〜第294ページ等に記載されている。このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
アクリロニトリル系樹脂としては、単量体としてアクリロニトリルを主成分とする重合体を例示できる。アクリロニトリル系樹脂のアクリロニトリル含量は、50質量%以上であることが好ましい。アクリロニトリル系樹脂を得るための重合には、一般的にはラジカル重合が用いられ、水溶液又は乳化重合で行われることが多い。
また、アクリロニトリルと共重合可能な単量体を共重合させても構わない。具体的な共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
<難燃剤成分>
難燃剤成分は、典型的には、セルロースの水酸基と化学的又は物理的に相互作用し得る構造を有する化合物を含む。このような構造としては、水酸基と水素結合又は化学反応が可能な構造(例えば、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、水和構造、エステル結合等)が挙げられる。好ましい態様において、難燃剤成分は、金属水和物、ホウ酸、及びホウ酸化合物から選ばれる1種以上を含む。金属水和物は耐変色性に優れる点で好ましい。金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ドロマイド、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム又は酸化スズの水和物が挙げられる。ホウ酸化合物としては、ホウ酸塩、メタホウ酸及びその塩、ポリホウ酸及びその塩等が挙げられ、ホウ酸塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、金属塩等が挙げられる。なかでも、水酸化アルミニウム、ホウ酸、及びホウ酸化合物が好ましく、ホウ酸及びホウ酸化合物がより好ましく、ホウ酸及びホウ酸塩が特に好ましい。
樹脂組成物に高い耐熱性を付与する観点から、難燃剤成分の少なくとも一部はセルロース繊維の表面に固定化されている。固定化は、化学的な結合(共有結合若しくは非共有結合)、又は物理的な吸着であってよい。好ましい態様において、難燃剤成分はセルロース繊維と化学的に結合している。化学的な結合の態様としては、エステル化、エーテル化等が挙げられる。例えば、ホウ酸及びホウ酸化合物は、セルロース繊維の水酸基の少なくとも一部をホウ酸エステル化してホウ酸セルロースを形成でき好ましい。なお、難燃剤成分がセルロース繊維と化学的に結合していること(例えば上記ホウ酸エステル化していること)は、赤外分光法で確認できる。
難燃剤成分は、セルロースの水酸基との親和性が高い点、特に、熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を用いる場合にセルロースの水酸基及び樹脂の両者との親和性が高い点で、銅元素を含むことが好ましい。一態様において、難燃剤成分は、銅元素を含む化合物を含む。銅元素を含む化合物としては、シュウ酸銅、チオシアン化銅、酸化銅、ハロゲン化銅、酢酸銅等が挙げられ、塩化銅やヨウ化銅などのハロゲン化銅が特に好ましい。
一態様において、難燃剤成分は金属塩を含む。金属塩は、セルロース繊維と樹脂との親和性向上、即ち分散性向上という利点に寄与する。金属塩としては、典型金属塩(例えば、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩)、及び遷移金属塩が挙げられるが、中でも銅元素を有する金属塩が好ましい。銅元素を有する金属塩は、セルロースの水酸基との親和性が高い点、特に、熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を用いる場合に、セルロースの水酸基及び樹脂の両者との親和性が高い点で好ましい。
繊維強化樹脂組成物中の金属塩の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対する金属質量基準で、熱可塑性樹脂中でのセルロース繊維の分散を良好にする観点から、好ましくは0.00001質量部以上であり、金属による着色又は変色の防止の観点から好ましくは0.2質量部以下である。上記含有量は、より好ましくは、0.0001〜0.15質量部、更に好ましくは0.001〜0.1質量部である。
本実施形態の繊維強化樹脂組成物において、難燃剤成分の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、樹脂組成物の耐熱性向上の観点から0.01質量部以上であり、樹脂組成物の所望の特性(機械強度等)を良好に保持する観点から25質量部以下である。上記含有量は、好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは1〜15質量部である。
<繊維強化樹脂組成物>
本実施形態の繊維強化樹脂組成物は、例えば後述するような方法で製造でき、セルロース繊維の含有量が少量であっても当該セルロース繊維が熱可塑性樹脂中に均一に分散するため、機械的特性(例えば機械強度)に優れ、線膨張係数が低く、かつ、難燃剤成分によるセルロース繊維の耐熱性向上により樹脂組成物の耐熱性にも優れたものとなる。
セルロース繊維は水との親和性が非常に高く、数平均繊維径が小さいほど水に対して良好な分散状態を保つことができる。また、数平均繊維径が小さくなるほど、水を除去した際にセルロース繊維の水素結合による強固な凝集体を形成し、また、一旦凝集したセルロース繊維を凝集前の分散状態に戻すことが困難となる。したがって、セルロース繊維は水を含んだ状態で樹脂と複合化することが好ましい。その際、セルロース繊維を含む水分散体に難燃剤成分を添加し、セルロース繊維と難燃剤成分を均質に分散した後に樹脂と複合化することが耐熱性と分散性に優れた組成物を得る点で好ましい。
そこで、繊維強化樹脂組成物の製造法としては、セルロース繊維水分散体と難燃剤成分とを混合して得た分散液に熱可塑性樹脂の原料であるモノマーを添加し、重合反応を行う方法が好ましい。また、難燃剤成分が金属塩と他の化合物(例えば金属水和物、ホウ酸及びホウ酸化合物から選ばれる化合物)とを含む場合、セルロース繊維水分散体と当該他の化合物とを混合する際に金属塩を添加し、重合反応を行うこともできる。つまり、セルロース繊維水分散体中で当該他の化合物及び金属塩を添加することで、セルロース繊維と当該他の化合物及び金属塩とが均質に混合され、その中で熱可塑性樹脂の原料であるモノマーを重合反応させることで、セルロース繊維が凝集することなく、また、難燃剤成分がセルロース繊維に均一に分散した、繊維強化樹脂組成物を得ることができる。これにより、耐熱性と機械的特性とに優れる繊維強化樹脂組成物が得られる。
本実施形態の繊維強化樹脂組成物は耐熱性に優れる。耐熱性は、下記方法で測定される黄色度差を指標とすることができる。黄色度差は、カラーメーター(例えばスガ試験機株式会社製)を用い、JIS K−7373に基づき測定される、繊維強化樹脂組成物の溶融成形後の黄色度(YIb)と、セルロース繊維を含まない他は上記繊維強化樹脂組成物と同組成の樹脂組成物の黄色度(YIa)との差(ΔYI)として評価できる。本実施形態の繊維強化樹脂組成物の黄色度差は、良好な耐熱性の観点から、50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。上記黄色度差は、最も好ましくは0であるが、繊維強化樹脂組成物の製造容易性の観点から、例えば5以上、又は10以上であってもよい。
繊維強化樹脂組成物の機械的特性の指標の1つとしての線熱膨張係数は、120ppm/K以下であることが好ましく、中でも100ppm/K以下であることが好ましく、更には80ppm/K以下であることが好ましく、特に50ppm/K以下であることが好ましい。線熱膨張係数は、繊維強化樹脂組成物の製造容易性の観点から、例えば10ppm/K以上、又は20ppm/K以上であってよい。
上記線膨張係数は、熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂、特にナイロン6又はナイロン66を用いた場合は、80ppm/K以下であることが好ましく、中でも50ppm/K以下であることが好ましく、さらには30ppm/K以下であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂としてナイロン11又はナイロン12を用いた場合、線膨張係数は120ppm/K以下であることが好ましく、中でも100ppm/K以下であることが好ましい。
なお、本開示で、線膨張係数は、繊維強化樹脂組成物を射出成形機を用いて、ISO294−3に準拠した多目的試験片を成形して得た成形体のMD方向の線膨張係数である。具体的には、線膨張係数は、成形体を3mm幅(成形体のTD方向)×25mm長(成形体のMD方向)に切断した測定サンプルを、熱機械分析(TMA)装置(例えば、SII社製TMA6100型装置)を用いて、引っ張りモードでチャック間距離10mm、荷重5g、窒素雰囲気下で、室温から120℃まで5℃/min.で昇温した後、25℃まで5℃/min.で降温し、再び25℃から120℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時における30〜100℃の領域での平均の熱膨張率として測定される値である。
繊維強化樹脂組成物の機械的特性の指標として、曲げ強度は、好ましくは65MPa以上、より好ましくは70MPa以上、更に好ましくは100MPa以上であり、また、引張降伏強度は、好ましくは40MPa以上、より好ましくは45MPa以上、更に好ましくは70MPa以上である。曲げ強度が65MPa以上、及び/又は引張降伏強度が40MPa以上である場合、繊維強化樹脂組成物は良好な強度を有し、様々な用途に好適に使用できる。繊維強化樹脂組成物の製造容易性の観点から、曲げ強度は例えば200MPa以下、又は180MPa以下であってよく、また引張降伏強度は例えば100MPa以下、又は90MPa以下であってよい。
例えば、熱可塑性樹脂としてナイロン6及び/又はナイロン66を用いた場合の繊維強化樹脂組成物において、曲げ強度は120MPa以上であることが好ましく、130MPa以上であることが好ましく、さらには140MPa以上であることが好ましく、また引張降伏強度は70MPa以上であることが好ましく、75MPa以上であることが好ましく、さらには80MPa以上であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂としてナイロン11及び/又はナイロン12を用いた場合の繊維強化樹脂組成物において、曲げ強度は65MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることが好ましく、また引張降伏強度は40MPa以上であることが好ましく、45MPa以上であることが好ましい。
繊維強化樹脂組成物の曲げ弾性率は、1.8GPa以上であることが好ましく、2.5GPa以上であることが好ましく、さらには3.0GPa以上であることが好ましい。また繊維強化樹脂組成物の引張弾性率は、1.4GPa以上であることが好ましく、2.0GPa以上であることが好ましく、さらには2.2GPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が1.8GPa以上及び/又は引張弾性率が1.4GPa以上である場合、柔軟性が良好で、剛性が強くなりすぎないため好ましく、特に曲げ強度及び/又は引張降伏強度も上記の範囲内のものである場合には、汎用性が良好で実用上更に好ましい。繊維強化樹脂組成物の製造容易性の観点から、曲げ弾性率は例えば10GPa以下、又は8GPa以下であってよく、また引張弾性率は例えば6GPa以下、又は5GPa以下であってよい。
熱可塑性樹脂としてナイロン6及び/又はナイロン66を用いた場合の繊維強化樹脂組成物において、曲げ弾性率は2.5GPa以上であることが好ましく、3.0GPa以上であることが好ましく、さらには3.3GPa以上であることが好ましく、また引張弾性率は2.0GPa以上であることが好ましく、2.2GPa以上であることが好ましく、さらには2.4GPa以上であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂としてナイロン11及び/又はナイロン12を用いた場合の繊維強化樹脂組成物において、曲げ弾性率は1.8GPa以上であることが好ましく、2.0GPa以上であることが好ましく、また引張弾性率は、1.4GPa以上であることが好ましく、さらには1.5GPa以上であることが好ましい。
なお、本開示における曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率、引張弾性率は、以下のような射出成形条件によって得た試験片を用い、JIS K7017に基づき測定を行って得られる値である。
(射出成形条件)
繊維強化樹脂組成物を、小型混練機(例えばXplore Instruments社製 Xplore)を用いて製造した後、付属の射出成形機にてJIS K7127規格の試験片を得る。
<繊維強化樹脂組成物の製造>
次に、繊維強化樹脂組成物の製造法の例について説明する。
本実施形態の繊維強化樹脂組成物の製造方法としては、限定されるものではないが、数平均繊維径が10nm以上500nm以下であり、水を含んだ状態のセルロース繊維に、難燃剤成分、及び熱可塑性樹脂の原料であるモノマーを混合して混合液を得た後、当該混合液中で当該モノマーの重合反応を行う方法が好ましく挙げられる。セルロース繊維の水分散体は、数平均繊維径が10nm以上500nm以下のセルロース繊維を水に分散させたものであり、水分散体中のセルロース繊維の含有量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。このような水分散体は、例えば、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で攪拌することにより得ることができ、このときに難燃剤成分を更に加えて攪拌することが好ましい。また、水分散体は、有機溶媒を更に含んでもよい。有機溶媒は、アルコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルアセタミド(DMAc)などから選ばれる1種以上であってよい。このような水分散体と、熱可塑性樹脂の原料であるモノマーとを混合し、ミキサー等で攪拌することで均一な混合液とし、その後、モノマーを重合反応させる。このとき、混合液を加熱することで水蒸気を徐々に排出することにより、混合液中の水分を排出することもできる。
上記の製造法では、セルロース繊維を水分散体中で難燃剤成分と均一混合し、混合液中でモノマーを重合反応させるため、セルロース繊維が凝集することなく良好に分散するとともに難燃剤成分がセルロース繊維に均質に分散する。これにより、セルロース繊維の分散性と耐熱性とに優れた繊維強化樹脂組成物を得ることができる。
<樹脂成型体>
本実施形態の繊維強化樹脂組成物を用いて、成型(成形)材料及び成型体を製造することができる。成型体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、粉末状、立体構造など各種形状が挙げられる。成型方法として、金型成型、射出成型、押出成型、中空成型、発泡成型等を用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
各実施例及び比較例で製造した樹脂組成物の特性評価を下記方法で行った。
(1)セルロース微細繊維の平均繊維径
セルロース微細繊維の水分散液を遠心分離により固形分率5質量%以上の濃度に濃縮した。得られたセルロース微細繊維濃縮物を、tert−ブタノール中に、セルロース微細繊維の濃度が0.2質量%となるように分散させ、さらに超音波分散等で分散処理を行った。得られた分散液をガラスフィルター上で濾過し、フィルター上に形成された湿紙を60℃にて乾燥させ、セルロース微細繊維シートとした。
得られたセルロース微細繊維シートの表面の無作為に選んだ3箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、微細繊維の繊維径に応じて10,000〜100,000倍相当の倍率で観察した。得られた3つのSEM画像の各々において、画面に対しヨコ方向とタテ方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の本数と、各繊維の繊維径とを拡大画像から実測し、1つの画像につきタテヨコ2系列の数平均繊維径を算出した。数平均繊維径の3画像での数平均を、対象とする試料の数平均繊維径とした。
(2)熱膨張係数
樹脂組成物を、射出成形で成形して得た成形体を、3mm幅(成形体のTD方向)×25mm長(成形体のMD方向)に切断して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、熱機械分析(TMA)装置(SII社製TMA6100型装置)を用いて、引っ張りモードでチャック間距離10mm、荷重5g、窒素雰囲気下で、室温から120℃まで5℃/min.で昇温した後、25℃まで5℃/min.で降温し、再び25℃から120℃まで5℃/min.で昇温した際の、2度目の昇温時における30〜100℃の領域での平均の熱膨張率を熱膨張係数の値とした。
(3)曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、引張弾性率
樹脂組成物を、小型混練機(Xplore Instruments社製 Xplore)に供し、付属の射出成形機にてJIS K7127規格の試験片を得た。この試験片を用い、JIS K7017に基づき測定を行った。
(4)黄色度ΔYI
カラーメーター(例えばスガ試験機株式会社製)を用い、JIS K−7373に基づき測定される、繊維強化樹脂組成物の溶融成形後の黄色度(YIb)と、セルロース繊維を含まない他は上記繊維強化樹脂組成物と同組成の樹脂組成物の黄色度(YIa)との差(ΔYI)として評価できる。
[実施例1]
セリッシュKY100G(ダイセルファインケム社製)(セルロース繊維の水分散液)に精製水を加えてセルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液とし、これに難燃剤成分としてホウ酸15質量部(セルロース繊維100質量部に対して)を加えミキサーで攪拌して、水分散体を得た。
この水分散体170質量部と、ε−カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とをミキサーで攪拌、混合して、均一な混合液を得た。続いて、この混合液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で、得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練を行い、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は225℃、末端カルボキシル基濃度は53.8μモル/gであった。なお本例では末端調整剤を使用していないことから[COOH]/[全末端基]比率は1:1近傍である。
[実施例2]
セリッシュKY100G(ダイセルファインケム社製)(セルロース繊維の水分散液)に精製水を加えてセルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液とし、これにホウ酸10質量部と銅0.5質量部(いずれもセルロース繊維100質量部に対して)を含む難燃剤成分を加えミキサーで攪拌して、水分散体を得た。
この水分散液170質量部と、ε−カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とをミキサーで攪拌、混合して、均一な混合液を得た。続いて、この混合液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練を行い、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は225℃、末端カルボキシル基濃度は53.2μモル/gであった。
[実施例3]
実施例2と同様にして得た水分散体70質量部と、ε−カプロラクタム100質量部とを混合し、ミキサーで均一になるまで攪拌して混合液を得た。続いて、この混合液を攪拌しながら240℃で加熱し、少しずつ水蒸気を放出しながら圧力を7kg/cm2まで昇圧した。その後、常圧まで放圧し、240℃で1時間重合させた。重合終了後に樹脂組成物を取り出し、切断してペレット化し、得られたペレットを95℃の熱水で洗浄し、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は225℃、末端カルボキシル基濃度は52.4μモル/gであった。
[実施例4]
実施例2と同様にして得た水分散体を70質量部、ナイロン66を100質量部混合し、ミキサーで均一になるまで攪拌して混合液を得た。続いて、この混合液を230℃で攪拌しながら内圧15kgf/cm2まで過熱し、圧力到達後、加熱を続けながら少しずつ水蒸気を放出しながら圧力を維持した。280℃に到達した時点で常圧まで放圧し、更に1時間重合させた。重合終了後に樹脂組成物を取り出し、切断してペレット化し、得られたペレットを95℃の熱水で洗浄し、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度290℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は267℃、末端カルボキシル基濃度は55.0μモル/gであった。
[実施例5]
実施例2と同様にして得た水分散体をセルロース繊維含有率1.3質量%に精製水で希釈して得た希釈物210質量部と、アミノウンデカン酸140質量部と、亜リン酸0.14質量部とをミキサーで均一になるまで混合して混合液を得た。続いて、この混合液を、水蒸気を排出しながら徐々に加熱し200℃まで温度を上げ、240℃で1時間重合させた。重合終了後、樹脂組成物を取り出し、切断してペレットとした。得られたペレットをそのまま試験片に成形した。
尚、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度210℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は187℃、末端カルボキシル基濃度は67.7μモル/gであった。
[実施例6]
コットンリンターパルプを水に分散させて1.5質量%とし、ディスクレファイナー(熊谷理機(株)製、No.2500−I)により叩解処理を施した後、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製、NS305H)を用いて圧力100MPaで20回微細化処理を施し、これにホウ酸10質量部と銅0.5質量部(いずれもセルロース繊維100質量部に対して)を含む難燃剤成分を加えミキサーで攪拌して、水分散体を得た。この水分散液170質量部と、ε−カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とをミキサーで攪拌、混合して、均一な混合液を得た。続いて、この混合液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練を行い、乾燥させた。
曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
なお、熱可塑性樹脂の融点は225℃、末端カルボキシル基濃度は53.6μモル/gであった。
[比較例1]
セリッシュKY100G(ダイセルファインケム社製)(セルロース繊維の水分散液)に精製水を加えてミキサーで撹拌し、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散体を得た。
この水分散体170質量部と、ε−カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とをミキサーで攪拌、混合して均一な混合液を得た。続いて、この混合液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練を行い、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
[比較例2]
比較例1と同様にして得た水分散体70質量部と、ε−カプロラクタム100質量部とを混合し、ミキサーで均一になるまで攪拌して混合液を得た。続いて、この混合液を攪拌しながら240℃で加熱し、少しずつ水蒸気を放出しながら圧力を7kg/cm2まで昇圧した。その後、常圧まで放圧し、240℃で1時間重合させた。重合終了後に樹脂組成物を取り出し、切断してペレット化し、得られたペレットを95℃の熱水で洗浄し、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃とした。
[比較例3]
比較例1と同様にして得た水分散体を70質量部、ナイロン66を100質量部混合し、ミキサーで均一になるまで攪拌して混合液を得た。続いて、この混合液を230℃で攪拌しながら内圧15kgf/cm2まで過熱し、圧力到達後、加熱を続けながら少しずつ水蒸気を放出しながら圧力を維持した。280℃に到達した時点で常圧まで放圧し、更に1時間重合させた。重合終了後に樹脂組成物を取り出し、切断してペレット化し、得られたペレットを95℃の熱水で洗浄し、乾燥させた。
なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、シリンダ温度290℃、金型温度80℃とした。
Figure 2020176180
以上の評価結果の通り、難燃剤成分を加えること、更に好ましくはホウ酸及び銅からなる難燃剤成分を加えることで、良好な外観及び高い機械物性を持つ樹脂複合体が得られることが分かる。
なお、実施例1〜6で製造した樹脂組成物を赤外分光法で調べたところ、セルロース繊維にホウ酸がエステル化していること(すなわち、セルロース繊維に難燃剤成分が固定化されていること)が確認された。
本発明に係る繊維強化樹脂組成物は、高い耐熱性による良好な外観と、優れた機械特性とを有する樹脂複合体を与えるため、車載用途、電材用途等に好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂100質量部と、数平均繊維径が10nm〜500nmのセルロース繊維0.1〜50質量部と、難燃剤成分0.01〜25質量部とを含む、繊維強化樹脂組成物。
  2. 前記難燃剤成分が金属塩を含み、前記金属塩の量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する金属質量基準で0.001〜0.2質量部である、請求項1に記載の繊維強化樹脂組成物。
  3. 前記金属塩が銅元素を有する、請求項2に記載の繊維強化樹脂組成物。
  4. 前記セルロース繊維の少なくとも一部に前記難燃剤成分が固定化されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂組成物。
  5. 前記難燃剤成分がホウ酸又はホウ酸塩を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂組成物。
  6. 前記セルロース繊維においてセルロースの水酸基の少なくとも一部がホウ酸エステル化されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂組成物。
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