JP2020176016A - サポナイト型粘土鉱物の合成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
粘土鉱物の利用においては、天然品を精製して純度を高くして用いる場合と、高純度な合成品を用いる場合があるが、合成品は高純度であるものの価格が高いため、さらなる低コストで合成できることが求められている。
例えば、特許文献1には、シリカ原料、アルミナ原料、マグネシウム原料、ナトリウムおよび/またはリチウム原料とフッ化物原料を、固相状態で790〜930℃により加熱溶融し、合成サポナイトを製造することが記載されている。
例えば、特許文献2には、水ガラス、マグネシウム塩、アルミニウム塩の混合液から過剰のアルカリ、特にアンモニア水和ゲルを沈殿させ、副生溶解質を水洗除去した後、一価あるいは二価の陽イオン及びフッ素イオンを添加し、これを300℃程度の水熱反応によって合成することが記載されている。
しかし、特許文献1に記載された方法においては、固相状態で溶融反応を行っているため加熱溶融に必要な700℃以上という高い温度条件で行なわれており、また、フッ化物原料を必要とするという問題があった。
また、特許文献2、3に記載された方法は、マグネシウム原料に硫酸マグネシウムや塩化マグネシウムなどの安価な酸性マグネシウムを用いて水熱合成により合成するものであって、特許文献1に記載の方法に比べて低温で合成できる。しかし、特許文献2に記載の方法は、反応操作が複数段階あること、多量のアンモニアまたはアルカリを用いることから多量の副生塩を生じる。また、特許文献2,3に記載の方法ではいずれも、原料に水ガラス(ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)の濃水溶液)を用いており、水ガラスではSiO4四面体が複雑に重合しているため、300℃程度の高温での合成が行われていた。
これに対し、特許文献4に記載された方法では、原料にケイ酸ナトリウムを用いており、低温での水熱条件(100〜300℃)が可能である。しかし、この方法では、マグネシウム成分として用いる塩基性炭酸マグネシウムとして、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムあるいはこれらの混合物を用いると、サポナイトを高収率及び高純度で得ることができないため、高価なハイドロマグネサイトを用いるのが特に望ましいとされている。
[1]原料として、酸性マグネシウム塩、オルトケイ酸ナトリウム、及びアルミニウム塩を用い、これらの水溶液を混合後、pHを9〜12に調整し、脱塩処理を行った後、130〜200℃で加熱することにより、X線源としてCu用いた粉末X線回折図形において、2θ=5.2〜6.5°付近と2θ=60.5°付近にピークを有するとともに、2θ=5.2〜6.5°のピークがエチレングリコール処理によって2θ=4.3〜5.1にシフトすることを特徴とするサポナイト型粘土鉱物を合成する方法。
[2]酸性マグネシウム塩の水溶液、オルトケイ酸ナトリウムの水溶液、及びアルミニウム塩の水溶液を、Mg:Si:Alのモル比が、5.0〜6.0:6.8〜7.5:0.5〜1.2となるように混合することを特徴とする[1]に記載の方法。
本発明のサポナイト型粘土鉱物は、主な構成元素をケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、酸素(O)及び水素(H)とし、Si四面体からなる四面体層とAlおよびMgからなる八面体層の組み合わせから形成された3八面体型の層状ケイ酸塩粘土鉱物である。
そしてこの層状ケイ酸塩粘土鉱物は、酸性マグネシウム塩の水溶液、オルトケイ酸ナトリウムの水溶液、及びアルミニウム塩の水溶液を、Mg:Si:Alのモル比が、5.0〜6.0:6.8〜7.5:0.5〜1.2となるように混合し、酸にてpHを9〜12に調整し、その後脱塩処理したものを130〜200℃にて加熱することにより人工的に得ることが可能である。
またケイ素源としてオルトケイ酸ナトリウムが用いられる。
さらにアルミニウム塩としては、アルミニウムイオンであればよく、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物が挙げられる。これらのケイ素源及びアルミニウム源は、上記の化合物に限定されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。
(実施例1)
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液の約半分に対してpHが10.1になるまで、1mol/LのHClを48mL添加し、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が200mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロン(登録商標)カップに入れ、200℃にて7日間加熱を行った。11000rpmの速さで加熱後遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
Mg5.7 (Si7.5, Al0.5) O20(OH)4
図1に得られた生成物の粉末X線回折図形を示す。図1(a)に見られるように、2θ=6.0°にピークが見られ、このピークはエチレングリコール処理によって2θ=5.0°に移動した。また、図1(b)に見られるように、2θ=60.7°にピークが見られた。
化学組成および粉末X線回折の結果から、実施例1の物質はサポナイト型粘土鉱物であることが確認された。
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液の約半分に対してpHが10.1になるまで、1mol/LのHClを48mL添加し、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が200mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロンカップに入れ、200℃にて2日間加熱を行った。11000rpmの速さで加熱後遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
Mg5.7 (Si7.5, Al0.5) O20(OH)4
図2に得られた生成物の粉末X線回折図形を示す。図2(a)に見られるように、2θ=6.0°にピークが見られ、このピークはエチレングリコール処理によって2θ=5.0°に移動した。また、図2(b)に見られるように2θ=60.7°にピークが見られた。
化学組成および粉末X線回折の結果から、実施例2の物質はサポナイト型粘土鉱物であることが確認された。
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液の約6分の1に対して、撹拌後pHが12.0になるまで、1mol/LのHClを13.5mL添加し、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が200mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロンカップに入れ、130℃にて7日間加熱を行った。11000rpmの速さで加熱後遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
Mg5.7 (Si7.5, Al0.5) O20(OH)4
図3に得られた生成物の粉末X線回折図形を示す。図3(a)、(b)に見られるように、2θ=5.3°にピークが見られ、このピークはエチレングリコール処理によって2θ=4.5°に移動した。また、図3(c)に見られるように、2θ=60.5°にピークが見られた。
化学組成および粉末X線回折の結果から、実施例3の物質はサポナイト型粘土鉱物であることが確認された。
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液の約6分の1に対して、撹拌後pHが8.9となるように、1mol/LのHClを16.5mLと1mol/LのNaOHを0.6mL添加し、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が80mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロンカップに入れ、200℃にて7日間加熱を行った。11000rpmの速さで加熱後遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
図4に見られるように、粉末X線回折図形によってピークが確認できなかったため、サポナイト型粘土鉱物が合成されていないことが確認された。
次にサポナイト型粘土鉱物が生成する加熱時のpHの範囲を調べるため、以下の実験を行った。
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液をいくつかのビーカーに分け、それぞれに異なる量の1mol/LのHClと1mol/LのNaOHを加え、pHを2.8、8.3、8.9、9.3、9.8、10.1、11.4、12.0、13.1とし、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が80〜230mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロンカップに入れ、200℃にて7日間加熱を行った。加熱後11000rpmの速さで遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
この結果より、溶液を混合した際にサポナイト型粘土鉱物が生成するpHの範囲は9〜12であることが示された。
さらにサポナイト型粘土鉱物が生成する加熱時の温度の範囲を調べるため、以下の実験を行った。
MgおよびAl源として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Mg濃度0.34mol/LおよびAl濃度0.047mol/Lの水溶液175mLを用いた。またSi源として、オルトケイ酸ナトリウムを純水に溶解させSi濃度0.41mol/Lの水溶液175mLを用いた。オルトケイ酸ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムを溶解させた水溶液を添加し、溶液が均質になるまで600rpmの速さで撹拌子を回転させ撹拌を約2時間行った。撹拌後の溶液をいくつかのビーカーに分けて、それぞれに1mol/LのHClを加えて、pHを10〜12とし、一晩撹拌した。
一晩撹拌後、遠心分離によって固液を分離する。回収した固形分に純水を加え10分間撹拌を行う。再度遠心分離により固液を分離し、回収した固形分に純水を加え、溶液の総量が80〜230mLとなるようにした後、さらに一晩撹拌した。
撹拌後、懸濁液の約18mLをテフロンカップに入れ、130〜200℃にて7日間加熱を行った。加熱後11000rpmの速さで遠心分離により固液分離を行い、回収した固形分の一部をスライドガラスにペーストした後、残りの固形分を60℃にて1日以上乾燥した。
この結果より、懸濁液を加熱した際にサポナイト型粘土鉱物が生成する温度の範囲は130〜200℃であることが示された。
Claims (2)
- 原料として、酸性マグネシウム塩、オルトケイ酸ナトリウム及びアルミニウム塩を用い、これらの水溶液を混合後、pHを9〜12に調整し、脱塩処理を行った後、130〜200℃で加熱することにより、X線源としてCu用いた粉末X線回折図形において、2θ=5.2〜6.5°付近と2θ=60.5°付近にピークを有するとともに、2θ=5.2〜6.5°のピークがエチレングリコール処理によって2θ=4.3〜5.1にシフトすることを特徴とするサポナイト型粘土鉱物を合成する方法。
- 酸性マグネシウム塩の水溶液、オルトケイ酸ナトリウムの水溶液、及びアルミニウム塩の水溶液を、Mg:Si:Alのモル比が、5.0〜6.0:6.8〜7.5:0.5〜1.2となるように混合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
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