JP2020172494A - ヒアルロナン分解酵素の脂質製剤 - Google Patents

ヒアルロナン分解酵素の脂質製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒアルロナン分解酵素を含有する、組成物および製剤または共製剤の提供。【解決手段】ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物、製剤または共製剤は、良性前立腺肥大症の治療に適しているもの、例えば、5−αレダクターゼ阻害剤などの他の治療薬も含有し得る。組成物および製剤は、良性前立腺肥大症の治療のために使用され得る。組成物および製剤は、良性前立腺肥大症の治療のための1種または複数の他の薬剤と組み合わせて提供され得る。【選択図】なし

Description

関連適用
Xiaoming Li、Mysore Ramprasad、Curtis Thompson、H. Michael ShepardおよびLouis Bookbinderの2011年2月8日に出願された「COMPOSITION AND LIPID FORMULATION OF A HYALURONAN-DEGRADING ENZYME AND THE USE THEREOF FOR TREATMENT OF BENIGN PROSTATIC HYPERPLASIA」と題された、米国仮出願番号第61/462,875号の優先権の利益が主張される。認められる場合には、上記の参照出願の対象は、その全文が参照により組み込まれる。
電子的に提供された配列表の参照による組み込み
配列表の電子版が、本明細書とともに提出され、その内容は、その全文が参照により組み込まれる。電子ファイルは、799キロバイトの大きさであり、3082SEQPC1.txtとタイトルが付けられている。
ヒアルロナン分解酵素を含有する、組成物および製剤または共製剤(co−formulation)が提供される。組成物、製剤または共製剤(co−formulations)はまた、良性前立腺肥大症の治療に適しているもの、例えば、5−αレダクターゼ阻害剤などの他の治療薬も含有し得る。組成物および製剤は、良性前立腺肥大症の治療に使用され得る。組成物および製剤は、良性前立腺肥大症の治療のための1種または複数の他の薬剤と組み合わせて提供され得る。
良性前立腺肥大または肥大症(BPH)は、加齢に伴う前立腺成長の自然進行の結果としての前立腺の拡大に起因する非癌性状態である。前立腺の周囲の前立腺被膜は、前立腺がさらに拡大するのを防ぎ得る。これによって、前立腺の内部領域が尿道を圧迫する。尿道の圧迫は、前立腺によって囲まれた尿道の領域を通る尿流に対する抵抗を増大させる。制限された尿道に尿を通すには、膀胱はより大きな圧力を発揮しなくてはならず、これが、膀胱壁の肥大、硬直および種々の下部尿路症状(LUTS)の提示もたらす。LUTSとして、排尿しながらの弱いまたは間欠性の尿流、排尿時のいきみ、尿が流れ始める前のためらい、排尿後にさえ膀胱が完全に空になっていない感覚、排尿の最後での滴下または後での漏れ、特に夜間の排尿の頻度の増大および排尿の差し迫った必要性が挙げられる。BPHは、男性、特に高齢の男性を侵す最もよくある医学的状態の1種である。BPHは、50歳までに50%、80歳までに75%の男性が発症すると報告されている。人口の加齢のために、BPHの有病率は、来たる20年にわたって実質的に増大すると予測される。重篤なBPHは、生活の質の低下、尿路感染、膀胱および腎臓の損傷、失禁などの深刻な問題、最も深刻には、閉塞性尿路疾患による肉眼的血尿および腎不全を引き起こし得る。薬物および手術の使用を含めた、BPHを治療するために利用可能な現在の戦略のうち、すべてが、有害事象を有する。したがって、代替治療計画が必要である。
中性脂質、両親媒性脂質およびヒアルロナン分解酵素を含有する多小胞リポソーム(MVL)が、本明細書において提供される。MVL中のヒアルロナン分解酵素は、概して、少なくとも40,000U/mgの活性を有する。ヒアルロナン分解酵素の濃度は、0.1mg/mL〜1mg/mL、0.2mg/mL〜0.5mg/mLの間またはおよそその間であるか、あるいは少なくとも0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLもしくは0.9mg/mLまたは約0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLもしくは0.9mg/mLまたは0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLもしくは0.9mg/mLである。
いくつかの例では、MVLは、ヒアルロン酸(HA)を含有する。HAは、ヒアルロナン分解酵素のカプセル封入および酵素活性を高めるのに十分な量で存在し得る。MVL中のヒアルロン酸の濃度は、0.05mg/mL〜50mg/mL、0.75mg/mL〜13.0mg/mLもしくは1mg/mL〜10mg/mLの間またはおよそその間であるか、あるいは少なくとも0.1mg/mL、0.5mg/mLもしくは1mg/mLまたは約0.1mg/mL、0.5mg/mLもしくは1mg/mLまたは0.1mg/mL、0.5mg/mLもしくは1mg/mLである。いくつかの例では、ヒアルロン酸対ヒアルロナン分解酵素の比は、1:500、1:400、1:300、1:200、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1である。
本明細書における例では、MVLは、a)ヒアルロナン分解酵素を2mg/mL未満の濃度で含有する第1の水性成分を形成する工程と、b)少なくとも1種の有機溶媒と、少なくとも1種の両親媒性(amphiphatic)脂質と、少なくとも1種の中性脂質とを含有する脂質成分を形成する工程と、c)第1の水性成分および脂質成分からエマルジョンを形成する工程と、d)エマルジョンを第2の水性成分中に分散して溶媒小球を形成する工程と、e)溶媒小球から有機溶媒を除去して、第2の水性成分中に懸濁された多小胞リポソームを形成する工程とを含むプロセスによって製造され得るか、または得ることができる。このプロセスでは、第1の水性成分中のヒアルロナン分解酵素は、0.1mg/mL〜1.9mg/mL、0.5mg/mL〜1.5mg/mLの間またはおよそその間の濃度であるか、あるいは、1mg/mLまたは約1mg/mLである。第1の水性成分はまた、スクロース、塩化カルシウム(CaCl)、グリセロール、デキストラン、PEG(例えば、PEG−6000)、ヒアルロン酸(HA)、プロリン、Arg−HCl、ソルビトール、トレハロース、ヒト血清アルブミン(HSA)またはそれらの組合せである賦形剤も含有し得る。このような例では、CaClは、1mM〜50mMのCaCl、5mM〜25mMのCaCl、10mM〜20mMのCaClの間またはおよそその間であるか、あるいは、少なくとも10mM、15mMもしくは20mMまたは約10mM、15mMもしくは20mMまたは10mM、15mMもしくは20mMであり;デキストランは、0.01%〜1%もしくは0.05%〜0.5%の間またはおよそその間であるか、あるいは、少なくとも0.1%または約0.1%または0.1%であり;PEGは、0.01%〜1%もしくは0.05%〜0.5%の間またはおよそその間であるか、あるいは、少なくとも0.1%または約0.1%または0.1%であり;プロリンは、1mM〜1M、10mM〜500mMプロリンの間もしくはおよそその間であるか、または少なくとも100mMもしくは約100mMもしくは100mMであり;アルギニンは、1mM〜1M、10mM〜500mMの間もしくはおよそその間であるか、または少なくとも100mMもしくは約100mMもしくは100mMであり;ソルビトールは、1%〜20%、5%〜15%ソルビトールの間もしくはおよそその間であるか、または少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくは約5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくは5%、6%、7%、8%、9%、10%であり;および/あるいは、トレハロースは、1%〜20%、5%〜15%トレハロースの間もしくはおよそその間であるか、または少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくは約5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくは5%、6%、7%、8%、9%、10%であり;および/あるいは、ヒアルロン酸(HA)は、1mg/mL〜100mg/mL、10mg/mL〜75mg/mLもしくは15mg/mL〜50mg/mLの間またはおよそその間であるか、あるいは、少なくとも1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAまたは約1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAまたは1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAである。
本明細書において提供されるMVLでは、MVLは、第2の水性成分を除去することおよび多小胞リポソームを第3の水性成分中に懸濁することも含むプロセスによって製造され得る。第3の水性成分は、例えば、100mM〜150mMの間またはおよそその間であるか、あるいは、少なくとも100mM、110mM、120mM、130mM、140mMもしくは150mMまたは約100mM、110mM、120mM、130mM、140mMもしくは150mMまたは100mM、110mM、120mM、130mM、140mMもしくは150mMであるNaCl;および/あるいは例えば、1mM〜100mM、5mM〜15mMの間であるか、あるいは、少なくとも1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mMもしくは50mMまたは約1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mMもしくは50mMであるヒスチジンを含有し得る。第3の水性バッファーのpHは、6.0〜8.0または6.5〜7.5の間であるか、またはおよそその間であるか、少なくとも6.0、6.5、7.0もしくは7.4または約6.0、6.5、7.0もしくは7.4または6.0、6.5、7.0もしくは7.4である。
本明細書において提供されたMVLでは、MVLは、ジグリセリドもしくはトリグリセリドである中性脂質を含有し得るか、またはジグリセリドもしくはトリグリセリドである中性脂質を含有するプロセスによって製造され得るか、もしくは得ることができる。例えば、中性脂質は、トリオレインまたはトリカプリリン、またはトリオレインおよびトリカプリリンの混合物であるトリグリセリドである。いくつかの例では、トリオレインおよびトリカプリリンは、50:50(1:1)のモル比にある。本明細書において提供されたMVLの例では、MVLは、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリンもしくはジアシルトリメチルアンモニウムプロパン(DITAP)である両親媒性脂質を含有し得るか、またはホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリンもしくはジアシルトリメチルアンモニウムプロパン(DITAP)である両親媒性脂質を含有するプロセスによって製造され得るか、もしくは得ることができる。例えば、両親媒性脂質は、DEPCまたはDOPC、またはDEPCおよびDOPCの混合物であるホスファチジルコリンである。DEPCおよびDOPCは、少なくともまたはおよそ少なくとも50:50(1DEPC:1DOPC)、75/25または90/10のモル比であるモル比にある。本明細書において提供されたMVLの例では、MVLは、DPPG、コレステロールもしくはDPPGおよびコレステロールをさらに含有し得るか、またはDPPG、コレステロールもしくはDPPGおよびコレステロールを含有するプロセスによって製造され得る。
本明細書において提供されたMVLのいずれかでは、MVLは、さらなる治療薬を含有するプロセスによる製造などから、さらなる治療薬を含有する。治療薬は、親水性であっても、疎水性であってもよい。一般に、治療薬は、良性前立腺肥大症を治療するための薬剤である。例えば、治療薬は、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素または加水分解酵素である。抗アンドロゲン薬は、ステロイド抗アンドロゲン薬、非ステロイド抗アンドロゲン薬または5α−レダクターゼ阻害剤であり得る。特定の例では、薬剤は、フィナステリドまたはデュタステリドである。
本明細書において提供されたMVLのいずれかを含有する組成物または組合せもまた、本明細書において提供される。組成物または組合せは、治療薬をさらに含有し得る。治療薬は、多小胞リポソームから別個に製剤され得る。治療薬の例示として、良性前立腺肥大症を治療するのに適した薬剤がある。例えば、治療薬は、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および加水分解酵素である。抗アンドロゲン薬は、ステロイド抗アンドロゲン薬、非ステロイド抗アンドロゲン薬または5α−レダクターゼ阻害剤である。5α−レダクターゼ阻害剤は、フィナステリドまたはデュタステリドである。また、組成物または組合せのいずれかを含有する容器またはキットも、本明細書において提供される。
ヒアルロナン分解酵素と、ヒアルロン酸とを含有し、それによって、ヒアルロナン分解酵素が、少なくとも50%のヒアルロニダーゼ活性を、28℃〜32℃で少なくとも6カ月間または2℃〜8℃で少なくとも1年間保持する組成物も、本明細書において提供される。例えば、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のヒアルロニダーゼ活性が保持される。組成物中のヒアルロナン分解酵素およびヒアルロン酸は、5000:1、4000:1、3000:1、2000:1、1900:1、1800:1、1700:1、1650:1、1600:1、1500:1、1400:1、1300:1、1200:1、1100:1、1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、1:1、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1100、1:1200、1:1300、1:1400、1:1500、1:1600、1:1700、1:1800、1:1900、1:2000、1:3000、1:4000、1:5000の、または約5000:1、4000:1、3000:1、2000:1、1900:1、1800:1、1700:1、1650:1、1600:1、1500:1、1400:1、1300:1、1200:1、1100:1、1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、1:1、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1100、1:1200、1:1300、1:1400、1:1500、1:1600、1:1700、1:1800、1:1900、1:2000、1:3000、1:4000、1:5000のモル比である。組成物中のヒアルロナン分解酵素の濃度は、1U/mL〜10000U/mL、10U/mL〜5000U/mL、100U/mL〜1000U/mLであるか、もしくは、およそ1U/mL〜10000U/mL、10U/mL〜5000U/mL、100U/mL〜1000U/mLの間、もしくは、少なくとも1U/mL〜10000U/mL、10U/mL〜5000U/mL、100U/mL〜1000U/mLであるか、または、少なくとも10U/mL、50U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたはそれ以上もしくは約10U/mL、50U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたはそれ以上もしくは10U/mL、50U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたはそれ以上である。ヒアルロン酸の濃度は、1mg/mL〜100mg/mL、10mg/mL〜50mg/mL、1mg/mL〜20mg/mLであるか、またはおよそその間であるか、または、少なくとも9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mLもしくは50mg/mLまたは約9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mLもしくは50mg/mLである。組成物は、単回使用または複数回使用用に製剤され得る。組成物は、0.5mL〜50mL、1mL〜10mL、1mL〜5mLの間もしくはおよそ0.5mL〜50mL、1mL〜10mL、1mL〜5mLまたは少なくとも1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、20mL、30mL、40mLもしくは50mLまたは約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、20mL、30mL、40mLもしくは50mLであるか、または1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、20mL、30mL、40mLもしくは50mLの投与あたりの容量で製剤され得る。
本明細書において提供されたMVLまたは本明細書において提供された組成物の例のいずれかでは、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼまたはリアーゼである。例えば、ヒアルロニダーゼは、哺乳類型ヒアルロニダーゼまたは細菌ヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、PH20ヒアルロニダーゼである。PH20ヒアルロニダーゼは、ヒツジ、マウス、サル、ウシ、細菌およびヒトPH20であり得る。PH20は、一般に、可溶性であるか、またはCHO細胞などの哺乳類細胞において発現される場合には、分泌される形態である。可溶性PH20は、C末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合部位、またはGPI結合部位の一部を欠くものであり得る。例えば、可溶性PH20は、配列番号2に示されるポリペプチの末端切断型形態であるアミノ酸の配列を有し、それによって、可溶性PH20は、C末端GPI結合部位のすべてまたは一部を欠くか、またはその末端切断型形態と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。特定の例では、可溶性PH20は、配列番号4〜9および46〜48のいずれかに示されるアミノ酸の配列、それらの対立遺伝子変異体、種変異体および他の変異体を有する。本明細書における例では、ヒアルロナン分解酵素は、グリコシル化されている。ヒアルロナン分解酵素はまた、ポリマーとのコンジュゲーションによっても修飾され得る。ポリマーは、PEGまたはデキストランである。ヒアルロナン分解酵素はまた、標識または検出可能な部分と直接または間接的に連結され得る。例えば、標識または検出可能な部分は、蛍光タンパク質である。
本明細書において提供される組成物または組合せのいずれかの投与による、良性前立腺肥大症などのヒアルロナン分解酵素の治療の方法が、本明細書において提供される。また、良性前立腺肥大症を治療するための本明細書において提供された組成物または組合せのいずれかの使用も提供される。
概略
A.定義
B.概要−疾患における蓄積されたヒアルロナン(HA)およびその加水分解
C.ヒアルロナン分解酵素
1.ヒアルロニダーゼ
a.哺乳類型ヒアルロニダーゼ
i.PH20
ii.ヒトPH20
b.細菌ヒアルロニダーゼ
c.ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ
2.他のヒアルロナン分解酵素
3.可溶性ヒアルロナン分解酵素
a.可溶性ヒトPH20
4.変異体ヒアルロナン分解酵素
5.ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
6.修飾されたヒアルロナン分解酵素
7.ヒアルロナン分解酵素の核酸およびコードされたポリペプチドを製造する方法
a.ベクターおよび細胞
b.発現
i.真核細胞
ii.酵母細胞
iii.昆虫細胞
iv.哺乳類細胞
v.植物
c.精製技術
D.ヒアルロナン分解酵素の組成物および徐放性製剤
1.ヒアルロナン分解酵素組成物
2.徐放性製剤
a.デポーゲル製剤
b.多小胞リポソーム(MVL)
i.カプセル封入、安定性および放出速度を改善するためのパラメータ
ii.例示的MVL−ヒアルロナン分解酵素製剤
iii.MVL共製剤
iv.カプセル封入および効率の評価
E.投与量、投与&治療方法
F.良性前立腺肥大の治療のための併用療法
1.抗アンドロゲン剤
a.ステロイド系抗アンドロゲン剤
b.非ステロイド系抗アンドロゲン剤
c.5α−レダクターゼ阻害剤
2.α遮断薬
3.ボツリヌス毒素および修飾BT
4.他の薬剤
5.製品
6.キット
G.有効性を評価する方法
1.動物モデル
2.インビトロ(in vitro)手順
H.実施例
A.定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。すべての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、Genbank配列、データベース、ウェブサイトおよび本明細書における全開示内容を通じて参照される他の公開された材料は、別段に記載されない限り、参照によりその全文が組み込まれる。本明細書における用語について複数の定義がある事象では、この節におけるものが優先する。URLまたは他のこのような識別子またはアドレスが参照される場合には、このような識別子は変わる場合があり、インターネット上の特定の情報は移り変わる場合があるが、インターネットを検索することによって同等の情報を見出すことができることは理解される。それに対する参照によって、このような情報の利用の可能性および一般への普及が証明される。
本明細書において、ほぼ同じとは、当業者が同一であると考える量内を意味する。通常、医薬組成物については、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%内がほぼ同じと考えられる。このような量は、対象による特定の組成物における変動に対する耐性に応じて変わり得る。
本明細書において、対象のmg/kgに基づいて投与量を参照する場合には、平均ヒト対象は、約70kgの質量を有すると考えられる。
本明細書において、「静脈内投与」とは、治療的な直接的な静脈へのデリバリーを指す。
本明細書において、「ヒアルロニダーゼ」とは、ヒアルロナンを分解する酵素のクラスを指す。ヒアルロニダーゼとして、それだけには限らないが、細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.2.1またはEC4.2.99.1)、ヒル、他の寄生生物および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)および哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)が挙げられる。ヒアルロニダーゼは、それだけには限らないが、ネズミ、イヌ、ネコ、ウサギ、鳥類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、魚、カエル、細菌を含めた非ヒト起源のいずれか、ならびに、ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来する任意のものを含む。例示的ヒトヒアルロニダーゼとして、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびPH20(配列番号1)が挙げられる。また、ヒアルロニダーゼの中には、ヒツジおよびウシPH20、可溶性ヒトPH20およびrHuPH20を含めた可溶性ヒアルロニダーゼも含まれる。市販のウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼの例として、Vitrase(登録商標)ヒアルロニダーゼ(ヒツジヒアルロニダーゼ)およびAmphadase(登録商標)ヒアルロニダーゼ(ウシヒアルロニダーゼ)がある。
本明細書において、「PH20」とは、精子中に生じ、中性活性であるヒアルロニダーゼの種類を指す。PH−20は、精子表面上およびリソソーム由来先体中に生じ、ここで、内先体膜と結合される。PH20は、それだけには限らないが、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、ネズミ、ウシ、ヒツジ、モルモット、ウサギおよびラット起源を含めた任意の起源のものを含む。例示的PH20ポリペプチドとして、ヒト(配列番号1)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)、カニクイザル(配列番号29)、ウシ(例えば、配列番号11および64)、マウス(配列番号32)、ラット(配列番号31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号27、63および65)およびモルモット(配列番号30)に由来するものが挙げられる。PH20への言及は、前駆体PH20ポリペプチドおよび成熟PH20ポリペプチド(シグナル配列が除去されているものなど)、活性を有するその末端切断型形態を含み、対立遺伝子変異体および種変異体、スプライシング変異体によってコードされる変異体および配列番号93および95に示される前駆体ポリペプチドまたはその成熟した形態に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドを含めた他の変異体を含む。PH20ポリペプチドはまた、化学修飾または翻訳後修飾を含有するものおよび化学修飾または翻訳後修飾を含有しないものも含む。このような修飾として、それだけには限らないが、ペグ化、アルブミン化(albumination)、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、水酸化、リン酸化および当技術分野で公知の他のポリペプチド修飾が挙げられる。末端切断型PH20ヒアルロニダーゼは、その任意のC末端が短くなった形態、特に、末端切断型であり、N−グリコシル化されると中性活性である形態である。
本明細書において、「可溶性PH20」とは、生理学的条件下で可溶性であるPH20の任意の形態を指す。可溶性PH20は、例えば、37℃でのTriton(登録商標)X−114溶液の水相へのその分配によって同定され得る(Bordier et al., (1981) J. Biol. Chem., 256:1604-7)。GPI固定型PH20を含めた脂質固定型PH20などの膜固定型PH20は、界面活性剤が豊富な相へ分配されるが、ホスホリパーゼ−Cで処理した後は、界面活性剤が乏しい相または水相へ分配される。可溶性PH20の中に、膜へのPH20の固定と関連している1つまたは複数の領域が除去または修飾されている、膜固定型PH20が含まれ、これでは、可溶性形態は、ヒアルロニダーゼ活性を保持する。可溶性PH20はまた、組換え可溶性PH20および例えば、ヒツジまたはウシに由来する精巣抽出物などの天然供給源中に含有されるものまたはそれから精製されたものも含む。このような可溶性PH20例示的なものとして、可溶性ヒトPH20がある。
本明細書において、可溶性ヒトPH20またはsHuPH20は、C末端のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定配列のすべてまたは一部を欠き、その結果、発現されると、ポリペプチドが、生理学的条件下で可溶性であるPH20ポリペプチドを含む。溶解度は、生理学的条件下での溶解度を実証する任意の適した方法によって評価できる。このような方法の例示的なものとして、水相への分配を評価し、上記および実施例に記載されるTriton(登録商標)X−114アッセイがある。さらに、可溶性ヒトPH20ポリペプチドは、CHO−S細胞などのCHO細胞において製造される場合には、発現され、細胞培養培地中に分泌されるポリペプチドである。しかしながら、可溶性ヒトPH20ポリペプチドは、CHO細胞において製造されるものに限定されず、任意の細胞において、または組換え発現およびポリペプチド合成を含めた任意の方法によって製造され得る。CHO細胞における分泌への言及は、定義的なものである。したがって、ポリペプチドが、CHO細胞において発現および分泌され得、可溶性である、すなわち、Triton(登録商標)X−114を用いて抽出されると水相に分配される場合には、そのように製造されようとなかろうと可溶性PH20ポリペプチドである。sHuPH20ポリペプチドの前駆体ポリペプチドは、異種または非異種(すなわち、天然)シグナル配列などのシグナル配列を含み得る。前駆体の例示的なものとして、アミノ酸位置1〜35の天然の35アミノ酸のシグナル配列(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜35参照のこと)などのシグナル配列を含むものがある。
本明細書において、「拡張可溶性PH20」または「esPH20」は、esPH20が生理学的条件下で可溶性であるよう、GPIアンカー結合シグナル配列までの残基と、GPIアンカー結合シグナル配列に由来する1個または複数の連続する残基とを含有する可溶性PH20ポリペプチドを含む。生理学的条件下での溶解度は、当業者に公知の任意の方法によって決定できる。例えば、上記および例において記載されるTriton(登録商標)X−114アッセイによって評価できる。さらに、上記で論じたように、可溶性PH20は、CHO−S細胞などのCHO細胞において製造される場合には、発現され、細胞培養培地中に分泌されるポリペプチドである。しかしながら、可溶性ヒトPH20ポリペプチドは、CHO細胞において製造されるものに限定されず、任意の細胞において、または組換え発現およびポリペプチド合成を含めた任意の方法によって製造され得る。CHO細胞における分泌への言及は、定義的なものである。したがって、ポリペプチドが、CHO細胞において発現および分泌され得、可溶性である、すなわち、Triton(登録商標)X−114を用いて抽出されると水相に分配される場合には、そのように製造されようとなかろうと可溶性PH20ポリペプチドである。ヒト可溶性esPH20ポリペプチドは、得られるポリペプチドが可溶性であるよう、残基36〜490に加えて、配列番号1のアミノ酸残基位置491から(491を含めて)1個または複数の連続するアミノ酸を含む。例示的ヒトesPH20可溶性ポリペプチドとして、配列番号1のアミノ酸36〜491、36〜492、36〜493、36〜494、36〜495、36〜496および36〜497に対応するアミノ酸残基を有するものがある。これらの例示的なものとして、配列番号151〜154および185〜187のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するものがある。また、中性活性を保持し、可溶性である、配列番号151〜154および185〜187の対応するポリペプチドと40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するいずれかのものなどの、対立遺伝子変異体および他の変異体も含まれる。配列同一性への言及は、アミノ酸置換を有する変異体を指す。
本明細書において、「esPH20」への言及は、前駆体esPH20ポリペプチドおよび成熟esPH20ポリペプチド(シグナル配列が除去されているものなど)、酵素活性を有し(全長形態の少なくとも1%、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上を保持する)、可溶性であるその末端切断型形態を含み、対立遺伝子変異体および種変異体、スプライシング変異体によってコードされる変異体および配列番号1および3に示される前駆体ポリペプチドまたはその成熟形態に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドを含めた他の変異体を含む。
本明細書において、「esPH20」への言及はまた、化学修飾または翻訳後修飾を含有するものおよび化学修飾または翻訳後修飾を含有しないものを含む。このような修飾として、それだけには限らないが、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、水酸化、リン酸化および当技術分野で公知の他のポリペプチド修飾が挙げられる。
本明細書において、「可溶性組換えヒトPH20(rHuPH20)」とは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において組換えによって発現され、分泌されるヒトPH20の可溶性形態を指す。可溶性rHuPH20は、シグナル配列を含み、配列番号49に示される核酸によってコードされる。また、その対立遺伝子変異体および他の可溶性変異体であるDNA分子も含まれる。可溶性rHuPH20をコードする核酸は、成熟ポリペプチドを分泌するCHO細胞において発現される。培養培地において製造されるので、C末端に不均一性があり、その結果、生成物は、配列番号4から配列番号9のうち任意の1種または複数を種々の存在量で含み得る種の混合物を含む。
同様に、esPH20などのPH20の他の形態については、組換えによって発現されたポリペプチドおよびその組成物は、そのC末端が不均一性を示す複数の種を含み得る。例えば、アミノ酸36〜497を有するesPH20をコードする配列番号151のポリペプチドの発現によって製造された、組換えによって発現されたesPH20の組成物は、36〜496、36〜495などのより少ないアミノ酸を有する形態を含み得る。
本明細書において、「N結合型部分」とは、ポリペプチドの翻訳後修飾によってグリコシル化され得るポリペプチドのアスパラギン(N)アミノ酸残基を指す。ヒトPH20の例示的N結合型部分として、配列番号1に示されるヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393が挙げられる。
本明細書において、「N−グリコシル化ポリペプチド」とは、少なくとも3個のN結合型アミノ酸残基、例えば、配列番号1のアミノ酸残基N235、N368およびN393に対応するN結合型部分のオリゴ糖結合を含有する、PH20ポリペプチドまたは末端切断型形態を指す。N−グリコシル化ポリペプチドは、N結合型部分のうち3、4、5個および最大すべてがオリゴ糖と結合されているポリペプチドを含み得る。N結合型オリゴ糖は、オリゴマンノース、複合体、ハイブリッドまたは硫酸化オリゴ糖または他のオリゴ糖および単糖を含み得る。
本明細書において、「N−部分グリコシル化ポリペプチド」とは、少なくとも3個のN結合型部分と結合しているN−アセチルグルコサミングリカンを最小に含有するポリペプチドを指す。部分グリコシル化ポリペプチドは、EndoH、EndoF1、EndoF2および/またはEndoF3を用いるポリペプチドの処理によって形成されるものを含めた、単糖、オリゴ糖および分岐糖形態を含めた種々のグリカンの形態を含み得る。
本明細書において、「脱グリコシル化PH20ポリペプチド」とは、すべての可能性あるグリコシル化部位より少ないものがグリコシル化されているPH20ポリペプチドを指す。脱グリコシル化は、例えば、グリコシル化を除去することによって、それを防ぐことによって、またはグリコシル化部位を排除するようポリペプチドを修飾することによって達成できる。特定のN−グリコシル化部位は、活性にとって必要ではないが、他のものは必要である。
本明細書において、「ペグ化された」とは、通常、ヒアルロナン分解酵素の半減期を増大するための、ポリエチレングリコール(ペグ化部分PEG)などのポリマー分子の、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素との共有結合または他の安定な結合を指す。
本明細書において、「コンジュゲート」とは、1種または複数の他のポリペプチドまたは化学的部分と直接または間接的に連結しているポリペプチドを指す。このようなコンジュゲートは、融合タンパク質、化学的コンジュゲートによって製造されるものおよび任意の他の方法によって製造されるものを含む。例えば、コンジュゲートとは、1種または複数の他のポリペプチドまたは化学的部分と直接または間接的に連結している可溶性PH20ポリペプチドを指し、それによって、コンジュゲートがヒアルロニダーゼ活性を保持する限り、少なくとも1種の可溶性PH20ポリペプチドが、他のポリペプチドまたは化学的部分と直接または間接的に連結されている。本明細書において提供されたコンジュゲートの例示的なものとして、Fc部分などの多量体化ドメイン、毒素、標識または薬物と直接または間接的に連結しているPH20ポリペプチドが挙げられる。
本明細書において、「融合」タンパク質とは、ある核酸分子に由来するコード配列と、他の核酸分子に由来するコード配列とを含有し、融合コンストラクトが、宿主細胞において転写および翻訳されると、2種のタンパク質を含有するタンパク質が製造されるよう、コード配列が同一リーディングフレーム中にある核酸配列によってコードされるポリペプチドをさす。2種の分子は、コンストラクト中で隣接している場合も、1、2、3個またはそれ以上であるが、通常、10、9、8、7または6個よりも少ないアミノ酸を含有するリンカーポリペプチドによってわかれている場合もある。融合コンストラクトによってコードされるタンパク質生成物は、融合ポリペプチドと呼ばれる。融合ポリペプチドの例示的なものとして、Fc融合物が挙げられる。
本明細書において、「ポリマー」とは、ポリペプチドと直接またはリンカーを介して間接的にコンジュゲートしている、すなわち、安定に連結されている任意の高分子量天然または合成部分を指す。このようなポリマーは、通常、血清半減期を増大し、それだけには限らないが、シアル部分、ペグ化部分、デキストランならびに糖およびグリコシル化のためなどの他の部分を含む。例えば、可溶性PH20またはrHuPH20などのヒアルロニダーゼは、ポリマーにコンジュゲートされ得る。
本明細書において、「活性」とは、全長(完全)タンパク質と関連しているポリペプチドまたはその部分の機能活性または活性を指す。例えば、ポリペプチドの活性断片は、全長タンパク質の活性を示し得る。機能活性として、それだけには限らないが、生物活性、触媒または酵素活性、抗原性(抗ポリペプチド抗体と結合するか、または抗ポリペプチド抗体との結合についてポリペプチドと競合する能力)、免疫原性、多量体を形成する能力およびポリペプチドの受容体またはリガンドと特異的に結合する能力が挙げられる。
本明細書において、「ヒアルロニダーゼ活性」とは、ヒアルロン酸の切断を酵素的に触媒する能力を指す。ヒアルロニダーゼについての米国薬局方(USP)XXIIアッセイによって、37℃で30分間酵素をHAと反応させた後に残存する、高分子量ヒアルロン酸またはヒアルロナン、(HA)基質の量を測定することによって間接的に、ヒアルロニダーゼ活性が決定される(USP XXII-NF XVII(1990)644-645米国薬局方 Convention,Inc、Rockville、MD)。アッセイでは、参照標準溶液を使用して、任意のヒアルロニダーゼのユニットでの相対活性を確認できる。可溶性PH20およびesPH20を含めたPH20などのヒアルロニダーゼのヒアルロニダーゼ活性を調べるためのインビトロアッセイは、当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。例示的アッセイとして、切断されていないヒアルロン酸が、血清アルブミンと結合すると形成される不溶性沈殿物を検出することによって、間接的に、ヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の切断を測定するマイクロ濁度(microturbidity)アッセイが挙げられる。参照標準を使用して、例えば、試験されているヒアルロニダーゼのユニットでの活性を決定するための標準曲線を作成できる。
本明細書において、「中性活性」とは、PH20ポリペプチドの、中性pH(例えば、pH7.0、または約pH7.0)でヒアルロン酸の切断を酵素的に触媒する能力を指す。一般に、中性活性で可溶性のPH20、例えば、C末端で末端切断された、またはN−部分グリコシル化PH20は、C末端で末端切断されていないか、N−部分グリコシル化されていない、対応する中性活性PH20のヒアルロニダーゼ活性と比較して、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%もしくはそれ以上または約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%もしくはそれ以上の活性を有する。
本明細書において、「GPIアンカー結合シグナル配列」とは、ERの内腔内のポリペプチドへの、予め形成されたGPIアンカーの付加を指示するアミノ酸のC末端配列である。GPIアンカー結合シグナル配列は、GPIによって固定されるPH20ポリペプチドなどのGPIによって固定されるポリペプチドの前駆体ポリペプチド中に存在する。C末端GPIアンカー結合シグナル配列は、通常、ω−部位またはGPIアンカー結合の部位のすぐ下流に、8〜12個のアミノ酸の親水性スペーサー領域が先行する、8〜20個のアミノ酸の大部分は疎水性の領域を含有する。GPIアンカー結合シグナル配列は、当技術分野で周知の方法を使用して同定できる。これらとして、それだけには限らないが、ExPASyプロテオミクスツールサイト(例えば、ワールドワイドウェブサイトexpasy.ch/tools/)などの生物情報科学ウェブサイトで容易に入手可能であるものを含めた、コンピューターによる方法およびアルゴリズムが挙げられる(例えば、Udenfriend et al. (1995) Methods Enzymol. 250:571-582、Eisenhaber et al., (1999) J. Biol. Chem. 292: 741-758、Fankhauser et al., (2005) Bioinformatics 21:1846-1852、Omaetxebarria et al., (2007) Proteomics 7:1951-1960、Pierleoni et al., (2008) BMC Bioinformatics 9:392参照のこと)。
本明細書において、「核酸」は、DNA、RNAおよびペプチド核酸(PNA)を含めたその類似体ならびにそれらの混合物を含む。核酸は一本鎖である場合も、二本鎖である場合もある。蛍光または放射標識などの検出可能な標識などを用いて所望により標識されている、プローブまたはプライマーに言及する場合には、一本鎖分子が考慮される。このような分子は、ライブラリーをプロービングまたはプライミングするために、通常、その標的が統計的に独特であるか、または低コピー数(通常、5未満、一般に、3未満)のものであるような長さのものである。一般に、プローブまたはプライマーは、対象の遺伝子と相補的であるか、または同一である、少なくとも14、16または30の連続するヌクレオチドの配列を含有する。プローブおよびプライマーは、10、20、30、50、100個またはそれ以上の核酸長であり得る。
本明細書において、ペプチドとは、2アミノ酸長以上であり、40アミノ酸長以下であるポリペプチドを指す。
本明細書において、本明細書において提供されたアミノ酸の種々の配列中に生じるアミノ酸は、その公知の三文字または一文字略語に従って同定される(表1)。種々の核酸断片中に生じるヌクレオチドは、当技術分野で日常的に使用される標準的な一文字命名を用いて命名される。
本明細書において、「アミノ酸」とは、アミノ基およびカルボン酸基を含有する有機化合物である。ポリペプチドは、2個以上のアミノ酸を含有する。本明細書における目的上、アミノ酸は、20種の天然に生じるアミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体(すなわち、α−炭素が側鎖を有するアミノ酸)を含む。
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、そのペプチド結合でのポリペプチドの化学消化(加水分解)の際に形成されるアミノ酸を指す。本明細書に記載されるアミノ酸残基は、「L」異性体形態にあると推定される。そのように命名される「D」異性体形態にある残基は、ポリペプチドによって所望の機能特性が保持される限り、任意のL−アミノ酸残基と置換されてもよい。NH2とは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHとは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシ基を指す。J. Biol. Chem., 243: 3557-3559 (1968)に記載され、37 C.F.R.□§§1.821−1.822において採用された、標準ポリペプチド命名法を踏まえて、アミノ酸残基の略語が、表1に示されている:
表1-対応表
Figure 2020172494
式によって本明細書において表されるすべてのアミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の従来の方向で、左から右の配向を有する。さらに、語句「アミノ酸残基」は、対応表(表1)中に列挙されるアミノ酸ならびに37 C.F.R. §§ 1.821−1.822において参照され、参照により本明細書に組み込まれるものなどの修飾されたアミノ酸および普通でないアミノ酸を含むよう定義される。さらに、アミノ酸残基配列の始めまたは最後のダッシュ記号は、1個または複数のアミノ酸残基のさらなる配列との、NHなどのアミノ末端基との、またはCOOHなどのカルボキシル末端基とのペプチド結合を示すことに留意されなければならない。
本明細書において、「天然に存在するα−アミノ酸」とは、ヒトにおいて、そのコグネイトmRNAコドンを用いる荷電tRNA分子の特異的認識によってタンパク質中に組み込まれる天然に見られる20種のα−アミノ酸の残基である。したがって、天然に存在しないアミノ酸は、例えば、20種の天然に存在するアミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸の類似体を含み、それだけには限らないが、アミノ酸のD−イソステレオマー(isostereomers)を含む。例示的非天然アミノ酸は、本明細書に記載され、当業者に公知である。
本明細書において、DNAコンストラクトは、天然には見られない方法で組み合わされ、並置されたDNAのセグメントを含有する、一本鎖または二本鎖の、直鎖または環状DNA分子である。DNAコンストラクトは、ヒトの操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
本明細書において、DNAセグメントとは、特定の特質を有する大きなDNA分子の一部である。例えば、特定のポリペプチドをコードするDNAセグメントは、プラスミドまたはプラスミド断片などのより長いDNA分子の一部であり、5’から3’方向に読まれる場合に、特定のポリペプチドのアミノ酸の配列をコードする。
本明細書において、用語ポリヌクレオチドとは、5’から3’末端に読まれるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは、RNAおよびDNAを含み、天然の供給源から単離される場合も、インビトロ合成される場合も、天然および合成分子の組合せから調製される場合もある。ポリヌクレオチド分子の長さは、ヌクレオチドを単位として(「nt」と略される)または塩基対を単位として(「bp」と略される)本明細書では与えられている。用語ヌクレオチドは、文脈が許す場合には、一本鎖および二本鎖分子のために使用される。この用語が二本鎖分子に適用される場合には、長さ全体を表すよう使用され、用語塩基対と同等であると理解される。当業者ならば、二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖が、長さがわずかに異なっている場合もあることおよびその末端がねじれ型である場合もあり、したがって、二本鎖ポリヌクレオチド分子内のすべてのヌクレオチドが対を形成していない場合もあるということは認識されよう。このような対を形成していない末端は、一般に、20ヌクレオチドの長さを超えない。
本明細書において、2種のタンパク質または核酸間の「類似性」とは、タンパク質のアミノ酸の配列または核酸のヌクレオチド配列間の関連性を指す。類似性は、残基の配列およびそれに含有される残基の同一性および/または相同性の程度に基づき得る。タンパク質または核酸間の類似性の程度を評価する方法は、当業者に公知である。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2種のアミノ酸またはヌクレオチド配列が、配列間で最大レベルの同一性を生じる方法でアラインされる。「同一性」とは、アミノ酸またはヌクレオチド配列が不変である程度を指す。アミノ酸配列のアラインメントおよびある程度はヌクレオチド配列のアラインメントは、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または高頻度の置換も考慮できる。保存的相違とは、関与する残基の物理−化学的特性を保つものである。アラインメントは、グローバル(配列の全長にわたる、すべての残基を含む比較される配列のアラインメント)である場合も、ローカル(最も類似した領域(単数または複数)のみを含む配列の一部のアラインメント)である場合もある。
「同一性」は、それ自体、技術分野で認識された意味を有し、公開された技術を使用して算出できる。(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991参照のこと)。2種のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するためのいくつかの方法が存在するが、用語「同一性」は、当業者には周知である(Carrillo, H. & Lipton, D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
本明細書において、相同である(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)とは、およそ25%を超えるまたはそれに匹敵する配列相同性、通常、25%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%を超えるまたはそれに匹敵する配列相同性を意味し、正確なパーセンテージは必要に応じて指定できる。本明細書における目的上、用語「相同性」および「同一性」は、文脈によって別段の指示のない限り、同義的に使用されることが多い。一般に、相同性または同一性パーセンテージの決定には、最高次のマッチが得られるよう配列をアラインする(例えば:Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin、H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073参照のこと)。配列相同性によって、保存されているアミノ酸の数が、標準アラインメントアルゴリズムプログラムによって決定され、それは各供給者によって確立されたデフォルトギャップペナルティーを用いて使用できる。実質的に相同な核酸分子は、対象とする核酸の長さすべてに沿って、通常、中程度のストリンジェンシーで、または高ストリンジェンシーでハイブリダイズする。また、核酸分子のハイブリダイズにおいては、コドンの代わりに縮重コドンを含有する核酸分子も考慮される。
任意の2種の分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の「同一である」または「相同である」ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有するかどうかは、例えば、Pearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444におけるようなデフォルトパラメータを使用する「FASTA」プログラムなどの既知コンピュータアルゴリズムを使用して決定できる(他のプログラムとして、GCGプログラムパッケージ(Devereux、J. et al. Nucleic Acids Research 12(I):387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul、S.F. et al. J. Mol. Biol. 215:403(1990)); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994およびCarrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073が挙げられる)。例えば、National Center for Biotechnology InformationデータベースのBLAST関数を使用して同一性を決定できる。他の市販の、または公的に入手可能なプログラムとして、DNAStar「MegAlign」プログラム(Madison、WI)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)「Gap」プログラム(Madison WI)が挙げられる。タンパク質および/または核酸分子の相同性または同一性パーセントは、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えば、Smith and Waterman((1981) Adv. Appl. Math. 2:482によって修正されたようなNeedleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443)を使用して配列情報を比較することによって決定できる。手短には、GAPプログラムは、2種の配列のうち短いほうの記号の総数によって除された、類似であるアラインされた記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数として類似性を規定する。GAPプログラムのデフォルトパラメータは:(1)単項比較マトリックス(同一性に対して1および非同一性に対して0の値を含有する)およびSchwartz and Dayhoff, eds., ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)によって記載される、Gribskov et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対して3.0のペナルティーおよび各ギャップ中の各記号に対してさらなる0.10のペナルティーおよび(3)末端ギャップに対するペナルティーなしを含み得る。
したがって、本明細書において、用語「同一性」または「相同性」とは、試験および参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチド間の比較を表す。本明細書において、用語少なくとも「90%同一である」とは、参照核酸またはポリペプチドのアミノ酸配列に対して、90〜99.99の同一性パーセントを指す。90%以上のレベルの同一性は、例示目的で、100個のアミノ酸の試験および参照ポリペプチドの長さが比較されると仮定して、試験ポリペプチド中のアミノ酸の10%(すなわち、100個のうち10個)以下が参照ポリペプチドのものとは異なっているという事実を示す。試験および参照ポリヌクレオチド間で同様の比較を行うことができる。このような相違は、ポリペプチドの全長にわたって無作為に分配された点突然変異として表される場合もあり、または最大の許容可能な、例えば、10/100のアミノ酸の相違(およそ90%の同一性)までの変動する長さの1つまたは複数の位置に密集している場合もある。相違は、核酸またはアミノ酸置換、挿入または欠失として定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果は、プログラムおよびギャップパラメータセットとは無関係であるはずである。このような高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼らない手作業によるアラインメントによって容易に評価できる。
本明細書において、アラインされた配列とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列中の対応する位置をアラインするための相同性(類似性および/または同一性)の使用を指す。通常、50%以上の同一性によって関連している2種以上の配列がアラインされる。アラインされた配列のセットとは、対応する位置でアラインされている2種以上の配列を指し、ゲノムDNA配列とアラインされる、ESTおよび他のcDNAなどのRNAに由来するアラインする配列を含み得る。
本明細書において、「プライマー」とは、適当なバッファー中の適当な条件下(例えば、4種の異なるヌクレオシド三リン酸およびDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合剤の存在下で)、適した温度で、鋳型による(template−directed)DNA合成の開始点として作用し得る核酸分子を指す。当然のことではあるが、特定の核酸分子は、「プローブ」として、および「プライマー」として役立ち得る。しかし、プライマーは、拡張のための3’ヒドロキシル基を有する。プライマーは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)−PCR、RNA PCR、LCR、マルチプレックスPCR、パンハンドルPCR、キャプチャーPCR、発現PCR、3’および5’RACE、インサイツPCR、ライゲーション介在PCRおよび他の増幅プロトコールをはじめとする種々の方法で使用できる。
本明細書において、「プライマー対」とは、増幅される(例えば、PCRによって)配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅される配列の3’末端の相補体とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含むプライマーのセットを指す。
本明細書において、「特異的にハイブリダイズする」とは、核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)の、標的核酸分子との相補的塩基対形成によるアニーリングを指す。当業者ならば、個々の分子の長さおよび組成などの特定のハイブリダイゼーションに影響を及ぼすインビトロおよびインビボ(in vivo)パラメータに精通している。インビトロハイブリダイゼーションに特に関連しているパラメータとして、さらに、アニーリングおよび洗浄温度、バッファー組成および塩濃度が挙げられる。高ストリンジェンシーで非特異的に結合している核酸分子を除去するための例示的洗浄条件として、0.1×SSPE、0.1% SDS、65℃があり、中程度のストリンジェンシーでは、0.2×SSPE、0.1% SDS、50℃がある。同等のストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である。当業者ならば、これらのパラメータを、核酸分子の、特定の適用にとって適当な標的核酸分子との特異的ハイブリダイゼーションを達成するよう容易に調整できる。相補的とは、2種のヌクレオチド配列に言及する場合には、ヌクレオチドの2種の配列が、通常、対向するヌクレオチド間で25%、15%または5%未満のミスマッチを伴ってハイブリダイズできることを意味する。必要に応じて、相補性のパーセンテージは、指定される。通常、2種の分子は、それらが高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするよう選択される。
本明細書において、製剤に対して実質的に同一とは、製剤の代わりに実質的に同一の製剤を使用することができるよう、対象とする特性が十分に不変であるよう十分に類似していることを意味する。
本明細書において、用語「実質的に同一」または「類似している」は、関連技術分野の当業者によって理解されるように文脈に応じて変わるということも理解される。
本明細書において、対立遺伝子変異体または対立遺伝子変異とは、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の2種以上の代替形態のいずれかに言及する。対立遺伝子変異は、突然変異によって天然に起こり、集団内に表現型多型をもたらし得る。遺伝子突然変異は、サイレント(コードされるポリペプチドには変化がない)である場合も、変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする場合もある。用語「対立遺伝子変異体」はまた、本明細書では、遺伝子の対立遺伝子変異体によってコードされるタンパク質を示すために使用される。通常、遺伝子の参照形態は、種の集団または単一参照メンバーから得たポリペプチドの野生型形態および/または優勢な形態をコードする。通常、種間および種の中で変異体を含む対立遺伝子変異体は、通常、同一種に由来する野生型および/または優勢な形態と少なくとも80%、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有し、同一性の程度は、遺伝子および比較が種間であるか、種内であるかに応じて変わる。一般に、種内対立遺伝子変異体は、野生型および/または優勢な形態と少なくとも約80%、85%、90%または95%の同一性またはそれ以上、例えば、ポリペプチドの野生型および/または優勢な形態と96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する。本明細書において、対立遺伝子変異体への言及は、一般に、同一種のメンバー間のタンパク質における変異を指す。
本明細書において、「対立遺伝子変異体」と本明細書において同義的に使用される「対立遺伝子」とは、遺伝子またはその一部の代替形態を指す。対立遺伝子は、相同染色体上の同じ遺伝子座または位置を占める。対象が遺伝子の2つの同一の対立遺伝子を有する場合には、対象は、その遺伝子または対立遺伝子についてホモ接合性であるといわれる。対象が、遺伝子の2種の異なる対立遺伝子を有する場合には、対象は、その遺伝子についてヘテロ接合性であるといわれる。特定の遺伝子の対立遺伝子は、単一ヌクレオチドまたはいくつかのヌクレオチドで互いに異なる場合があり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入などの修飾を含み得る。遺伝子の対立遺伝子はまた、突然変異を含有する遺伝子の形態であり得る。
本明細書において、種変異体とは、マウスおよびヒトなどの異なる哺乳類種を含めた異なる種間でのポリペプチドにおける変異体を指す。例えば、PH20について、本明細書において提供される種変異体の例示的なものとして、それだけには限らないが、ヒト、チンパンジー、マカクザルおよびカニクイザル(cynomologus monkey)などの霊長類PH20がある。一般に、種変異体は、70%、75%.80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を有する。種変異体間および種変異体の中での対応する残基は、マッチするヌクレオチドまたは残基の数を最大にするよう、例えば、配列間の同一性が、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるよう配列を比較し、アラインすることによって決定できる。次いで、対象とする位置に、参照核酸分子中で割り当てられた数が与えられる。アラインメントは、特に、配列同一性が80%を超える場合には、手作業で、または眼で見て達成できる。
本明細書において、ヒトタンパク質とは、すべての対立遺伝子変異体およびそれらの保存的変異を含めたヒトのゲノム中に存在するDNAなどの核酸分子によってコードされるものである。タンパク質の変異体または修飾は、修飾がヒトタンパク質の野生型または顕著な配列に基づく場合には、ヒトタンパク質である。
本明細書において、スプライス変異体とは、2種以上のmRNAをもたらす、ゲノムDNAの一次転写物の異なるプロセシングによって生じた変異体を指す。
本明細書において、修飾は、ポリペプチドのアミノ酸の配列または核酸分子中のヌクレオチドの配列の修飾に関連しており、それぞれ、アミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換(replacement)(例えば、置換(substitution))を含む。修飾の例示的なものとして、アミノ酸置換(substitutions)がある。アミノ酸が置換されたポリペプチドは、アミノ酸置換を含有しないポリペプチドに対して65%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。アミノ酸置換は、保存的である場合も、非保存的である場合もある。一般に、ポリペプチドの任意の修飾は、ポリペプチドの活性を保持する。組換えDNA法を使用することなどによってポリペプチドを修飾する方法は、当業者には日常的なものである。
本明細書において、アミノ酸の適した保存的置換は、当業者に公知であり、一般に、得られる分子の生物活性を変更することなく行うことができる。当業者ならば、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は、生物活性を実質的に変更しないということは認識している(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. co., p.224参照のこと)。このような置換は、以下の表2に示されるものに従って行うことができる。
表2
Figure 2020172494

他の置換も許容され、経験的にまたは公知の保存的置換に従って決定され得る。
本明細書において、用語プロモーターとは、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始を提供するDNA配列を含有する遺伝子の一部を意味する。プロモーター配列は、一般に、常にではないが、遺伝子の5’非コード領域中に見られる。
本明細書において、単離されたまたは精製されたポリペプチドまたはタンパク質またはその生物学的に活性な部分は、タンパク質が導かれる細胞または組織に由来する細胞性物質または他の混入タンパク質を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合には、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。調製物は、このような純度を評価するために当業者によって使用される、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)などの分析の標準法によって決定されるように、容易に検出可能な不純物を含まないと思われる場合には、実質的に含まない、またはさらなる精製が、物質の酵素活性および生物活性などの物理的および化学的特性を検出可能に変更しないよう実質的に純粋であると決定できる。実質的に化学的に純粋な化合物を製造するために化合物を精製する方法は、当業者に公知である。しかし、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物である場合もある。このような例では、さらなる精製は、化合物の比活性を増大し得る。
したがって、実質的に精製された可溶性PH20などの実質的に精製されたポリペプチドへの言及は、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質の調製物を指し、タンパク質が、それが単離されるか、または組換えによって製造される細胞の細胞成分から分離されているタンパク質の調製物を含む。一実施形態では、用語細胞性物質を実質的に含まないとは、約30%(乾重で)未満の非酵素タンパク質(本明細書では、混入タンパク質とも呼ばれる)、一般に、約20%未満の非酵素タンパク質または10%の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を有する酵素タンパク質の調製物を含む。酵素タンパク質が、組換えによって製造される場合には、培養培地も実質的に含まない、すなわち、培養培地は、酵素タンパク質調製物の容量の約20%、10%もしくは5%未満または20%、10%もしくは5%に相当する。
本明細書において、用語化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないとは、タンパク質が、タンパク質の合成に関与している化学的前駆体または他の化学物質から分離されている酵素タンパク質の調製物を含む。この用語は、約30%(乾重で)、20%、10%、5%未満またはそれ以下の化学的前駆体または非酵素化学物質または成分を有する酵素タンパク質の調製物を含む。
本明細書において、例えば、合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドに関連して合成とは、組換え法によって、および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子を指す。
本明細書において、組換え手段による製造または組換えDNA法を使用する製造とは、クローニングされたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるための分子生物学の周知の方法の使用を意味する。
本明細書において、ベクター(またはプラスミド)とは、異種核酸をその発現または複製いずれかのために細胞中に導入するために使用される別個のエレメントを指す。通常、ベクターは、エピソームのままであるが、遺伝子またはその一部のゲノムの染色体への組み込みを達成するよう設計することもできる。また、酵母人工染色体および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターも考慮される。このような媒体の選択および使用は、当業者には周知である。
本明細書において、発現ベクターは、このようなDNA断片の発現を達成できるプロモーター領域などの調節配列と作動可能に連結されているDNAを発現できるベクターを含む。このようなさらなるセグメントは、プロモーターおよびターミネーター配列を含む場合もあり、所望により、1つまたは複数の複製起点、1種または複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含む場合もある。発現ベクターは、一般に、プラスミドまたはウイルスDNAから誘導され、または両方のエレメントを含有する場合もある。したがって、発現ベクターとは、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは適当な宿主細胞に導入すると、クローニングされたDNAの発現をもたらす他のベクターなどの組換えDNAまたはRNAコンストラクトを指す。適当な発現ベクターは、当業者には周知であり、真核細胞および/または原核細胞において複製可能であるものおよびエピソームのままであるものまたは宿主細胞ゲノム中に組み込まれるものを含む。
本明細書において、ベクターはまた、「ウイルスベクター(virus vector)」または「ウイルスベクター(viral vectors)」を含む。ウイルスベクター(viral vectors)とは、外因性遺伝子を細胞中に移すための(媒体またはシャトルとして)、外因性遺伝子と作動可能に連結されている操作されたウイルスである。
本明細書において、DNAセグメントに関して「作動可能に(operably)」または「作動可能に(operatively)連結された」とは、セグメントが、それらが意図される目的に呼応して機能するよう配置されていることを意味する。例えば、転写は、プロモーターの下流および任意の転写される配列の上流で開始する。プロモーターは、普通、転写装置が結合して転写を開始し、コーディングセグメントを通って、ターミネーターに進むドメインである。
本明細書において、用語「評価すること」とは、サンプル中に存在する酵素またはそのドメインなどのタンパク質の活性の絶対値を得るという意味で、また活性のレベルを示す指数、割合、パーセンテージ、視覚的価値または他の価値を得るという意味で定量的および定性的決定を含むものとする。評価は、直接的である場合も間接的である場合もある。例えば、実際に検出される化学種はもちろん、酵素的に切断された生成物自体である必要はなく、例えば、その誘導体または何らかのさらなる物質であってもよい。例えば、切断生成物の検出は、蛍光部分などの検出可能な部分であり得る。
本明細書において、生物活性とは、化合物のインビボ活性または化合物、組成物もしくは他の混合物のインビボ投与の際に結果として得られる生理反応を指す。したがって、生物活性は、このような化合物、組成物および混合物の治療効果および医薬活性を包含する。生物活性は、このような活性を試験または使用するよう設計されたインビトロ系において観察できる。したがって、本明細書における目的上、ヒアルロニダーゼ酵素の生物活性は、そのヒアルロン酸の分解である。他の例では、BPH治療薬の生物活性は、その作用機序およびそのBPHと関連する1種または複数の症状の低減を含む。
本明細書において、同等なとは、2種の核酸配列に言及する場合には、問題の2種の配列が、アミノ酸の同一配列または同等のタンパク質をコードすることを意味する。同等なが、2種のタンパク質またはペプチドへの言及において使用される場合には、2種のタンパク質またはペプチドが、タンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変更しないアミノ酸置換のみを有する実質的に同一のアミノ酸配列を有することを意味する。同等なが、特性を指す場合には、特性は同程度を示す必要はない(例えば、2種のペプチドは、異なる割合の同種の酵素活性を示し得る)が、活性は、普通、実質的に同一である。
本明細書において、「モジュレートする」および「モジュレーション」または「変更する」とは、タンパク質などの分子の活性の変化を指す。例示的活性として、それだけには限らないが、シグナル変換などの生物活性が挙げられる。モジュレーションは、活性の増大(すなわち、上方制御またはアゴニスト活性)、活性の減少(すなわち、下方制御または阻害)または活性の任意の他の変更(周期性、頻度、期間、動態または他のパラメータの変化など)を含み得る。モジュレーションは、状況依存的であり、一般に、モジュレーションは、指定された状態、例えば、野生型タンパク質、恒常的状態にあるタンパク質または指定された細胞種または条件で発現されたようなタンパク質と比較される。
本明細書において、組成物とは、任意の混合物を指す。溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはそれらの任意の組合せであり得る。
本明細書において、組合せとは、2種以上のアイテム間またはその中の任意の関連を指す。組合せは、2種の組成物または2種の収集物などの2種以上の別個のアイテムであり得、2種以上のアイテムの単一の混合物などのそれらの混合物またはそれらの任意の変異であり得る。組合せの要素は、一般に、機能的に関連または関係している。
本明細書において、「疾患または障害」とは、それだけには限らないが、感染、後天性の状態、遺伝的状態を含めた原因または状態に起因し、同定可能な症状を特徴とする生物における病状を指す。
本明細書において、疾患または状態を有する対象を「治療すること」とは、対象の症状が、治療後に、部分的もしくは完全に軽減されるか、または静的なままであることを意味する。したがって、治療は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、可能性ある疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を指す。
本明細書において、治療とは、状態、障害もしくは疾患または他の徴候の症状が、寛解されるか、またはそうでなければ、有利に変更される任意の方法を意味する。
本明細書において、治療薬とは、対象に投与された場合に治療効果を提供できる任意の薬剤を指す。例えば、良性前立腺肥大症の治療には、治療薬は、前立腺容量、成長または大きさの低減、一部の場合には、前立腺の縮小を達成する任意の薬剤である。
本明細書において、疎水性薬剤または薬物とは、容易に水または他の水溶液を吸収しないか、またはそれに溶解しない、一般に、水溶液に可溶性ではない薬剤である。薬物または薬剤の疎水性を決定するための種々の方法が、当技術分野で公知である(Wasik et al. (1981) NBS Techn. Rep., 81:S1-56; Sangster J. A Databank of evaluated octanol-water partition coefficients (LogP), logkow.cisti.nrc.ca/logkow/)。例えば、2種の非混和性溶媒(水およびオクタノールなどの疎水性溶媒)によって形成される2相系に溶解された物質の平衡濃度の割合である、オクタノール/水分配係数(log Po/w)を決定できる。これは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して実施できる。
本明細書において、親水性薬剤または薬物とは、容易に水または他の水溶液を吸収できるか、またはそれに溶解できる薬剤である。上記の分配係数測定値はまた、薬物または薬剤がどの程度親水性であるかを測定するために使用できる。
本明細書において、治療効果とは、疾患もしくは状態の症状を変更、通常、改善もしくは寛解させるか、または疾患もしくは状態を治癒する、対象の治療に起因する効果を意味する。治療上有効な量とは、対象への投与後に治療効果をもたらす、組成物、分子または化合物の量を指す。治療上有効な量とは、少なくとも、1週間、より好ましくは、1カ月、最も好ましくは、6〜8カ月またはそれ以上の間、対象においてBPHの1種または複数の症状を低減するのに十分である投与量である。改善または治療の成功の指標として、閉塞性前立腺組織の大きさの低減および尿路閉塞の症状の軽減が挙げられる。
本明細書において、用語「対象」とは、ヒトなどの哺乳類を含めた動物を指す。
本明細書において、患者とは、疾患または障害の症状を示しているヒト対象を指す。
本明細書において、医薬組成物または他の治療薬の投与などによる、治療による特定の疾患または障害の症状の寛解とは、組成物または治療薬の投与に起因し得るか、または関連し得る、恒久的であろうと一時的であろうと、持続性であろうと一過性であろうと、症状の任意の緩和を指す。
本明細書において、防止または予防とは、疾患または状態の発生のリスクが低減される方法を指す。
本明細書において、「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」とは、薬剤、化合物、物質または治療効果をもたらすのに少なくとも十分である化合物を含有する組成物の量を指す。したがって、疾患または障害の症状を防止、治癒、寛解、停止または部分的に停止するのに必要な量である。
本明細書において、単位投与形とは、ヒトおよび動物対象に適しており、当技術分野で公知であるように個別にパッケージングされている物理的に別個の単位を指す。
本明細書において、単回投与量製剤とは、直接投与用の製剤を指す。
本明細書において、「製造品」とは、製造され、販売されている製品である。本出願を通じて使用されるように、この用語は、同一または別個のパッケージング品中に含有される、ヒアルロニダーゼ、例えば、可溶性PH20と、1種または複数の抗アンドロゲン薬、α遮断薬およびボツリヌス毒素とを包含するものとする。
本明細書において、流体とは、流動し得る任意の組成物を指す。したがって、流体は、半固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームの形態である組成物および他のこのような組成物を包含する。
本明細書において、「キット」とは、本明細書において提供された組成物と、それだけには限らないが、再構成、活性化を含めた目的のための他の物品、および生物活性または特性のデリバリー、投与、診断および評価のための機器/デバイスとの組合せを指す。キットは、所望により、使用説明書を含む。
本明細書において、細胞抽出物または溶解物とは、溶解した細胞または破壊された細胞から製造される調製物または画分を指す。
本明細書において、動物は、それだけには限らないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含めた霊長類、マウスおよびラットなどのげっ歯類、ニワトリなどの家禽、ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物、ブタおよび他の動物などの任意の動物を含む。非ヒト動物は、考慮される動物としてヒトを含まない。本明細書において提供されるヒアルロニダーゼは、任意の供給源、動物、植物、原核生物および真菌に由来するものである。ほとんどのヒアルロニダーゼは、哺乳類起源を含めた、動物起源のものである。一般に、ヒアルロニダーゼは、ヒト起源のものである。
本明細書において、対照とは、試験パラメータで処理されないという点を除いて、試験サンプルと実質的に同一であるサンプルを指す。または、血漿サンプルである場合には、対象とする状態を患っていない正常なボランティアから得たものである場合もある。対照はまた、内部対照である場合もある。
本明細書において、ヒアルロナン関連疾患、障害または状態とは、ヒアルロナンレベルが原因、結果として、そうでなければ、疾患または状態において観察されるように上昇している任意の疾患または状態を指す。ヒアルロナン関連疾患または状態は、組織または細胞におけるヒアルロナン発現の上昇、間質性流体圧の増大、血管容量の減少および/または組織中の水分含量の増大と関連している。例示的ヒアルロナン関連疾患および状態として、癌、椎間板圧および浮腫を含めた、間質性流体圧の上昇、血管容量の減少および/または組織中の水分含量の増大と関連している疾患および状態が挙げられる。一例では、ヒアルロナン関連状態、疾患または障害の治療として、間質性流体圧(IFP)の増大、血管容量の減少および組織中の水分含量の増大のうち1種または複数に対する、寛解、低減または他の有益な効果が挙げられる。
本明細書において、疾患または状態を有する対象を「治療すること」とは、対象の症状が、治療後に、部分的もしくは完全に軽減されるか、または静的なままであることを意味する。したがって、治療は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、可能性ある疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を指す。治療はまた、修飾されたインターフェロンおよび本明細書において提供された組成物の任意の薬剤使用も包含する。
本明細書において、「良性前立腺肥大症」または「肥大」(BPH)とは、前立腺が肥大しているか、または肥厚化を示し、悪性疾患または状態ではない、前立腺の疾患または状態を指す。
本明細書において、良性前立腺肥大症の治療に適している薬剤への言及は、対象に投与された場合に、前立腺容量または成長の低減を達成し、一部の場合には、前立腺の縮小を達成する任意の薬剤を指す。このような薬剤として、それだけには限らないが、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素が挙げられる。このような薬剤は、当業者には周知である。例示的薬剤は、本明細書に記載される。
本明細書において、「抗アンドロゲン薬」とは、アンドロゲンのアンドロゲン受容体との結合を干渉することまたはアンドロゲンの産生を干渉することのいずれかによって、その効果を発揮する薬剤の広いクラスを指す。アンドロゲン受容体を介して作用する抗アンドロゲン剤は、その化学構造に基づいてステロイド系または非ステロイド系抗アンドロゲン剤として分類される。ステロイド系抗アンドロゲン剤は、ステロイドの構造を有し、すなわち、それらは、3つのシクロヘキサンと1つのシクロペンタン環からなる四環系炭化水素である。非ステロイド系抗アンドロゲン剤は、ステロイドの化学構造を有さない。アンドロゲンの産生を干渉する抗アンドロゲン薬の一例として、5α−レダクターゼ阻害剤がある。
本明細書において、「α遮断薬」とは、α1−アドレナリン受容体の刺激を干渉するか、または妨げ、前立腺および膀胱頸部に見られる平滑筋組織を弛緩させるよう作用し、尿が膀胱からより容易に流れ出ることを可能にする薬剤を指す。
本明細書において、「5α−レダクターゼ阻害剤」とは、酵素5α−レダクターゼを阻害し、その結果、テストステロンが5α−ジヒドロテストステロンに変換されない薬剤を指す。
本明細書において、「ボツリヌス毒素」とは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)によって産生される神経毒;非クロストリジウム種によって組換えによって製造されたボツリヌス毒素(または軽鎖もしくは重鎖);ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、FおよびG;ボツリヌス毒素複合体(300、600および900kDa複合体);修飾されたボツリヌス毒素、ペグ化ボツリヌス毒素、キメラボツリヌス毒素、組換えボツリヌス毒素、ハイブリッドボツリヌス毒素および化学修飾ボツリヌス毒素を指す。修飾ボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素と比較して、そのアミノ酸の少なくとも1個が欠失、修飾または置換されているボツリヌス毒素である。修飾ボツリヌス毒素は、組換えによって製造された神経毒、または組換えによって製造された神経毒の誘導体もしくは断片であり得る。修飾ボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素の少なくとも1つの生物活性を保持する。
本明細書において、「前立腺内に」とは、注射または注入によって前立腺中へ直接的にを指し、それだけには限らないが、経尿道的、経会陰的および経直腸的投与を含む。
本明細書において、「持続放出または徐放性」または「制御放出製剤」とは、1日から約1年の間、一度にとは対照的に一定期間にわたって、周囲の細胞および組織と接触するよう、前立腺中への局所注射後に、治療薬(単数または複数)が医薬組成物から放出されるのを可能にする1種または複数の治療薬の医薬組成物の製剤を指す。したがって治療薬は、直ちにではなく、一定期間かけて(数時間、数日、数週間、数カ月)前立腺細胞に、ならびに周囲の細胞および組織にデリバリーされる。徐放性製剤として、それだけには限らないが、単層膜小胞(LUV)および多重膜小胞(MVL)を含めた脂質小胞、薬物−樹脂複合体(樹脂酸塩)およびデポー製剤が挙げられる。
本明細書において、「加水分解酵素」とは、それだけには限らないが、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、トリプシン、キモトリプシン、プロナーゼ、エラスターゼ、DNアーゼI、ディスパーゼ、プラスミン、ブロメリン、クロストリパイン、サーモリシン、ノイラミニダーゼ、ホスホリパーゼ、コレステロールエステラーゼ、スブチリシン、パパイン、キモパパイン、プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、セラチオペプチダーゼ、パンクレアチン、アミラーゼ、リゾチーム、カテプシン−GおよびPMN白血球セリンプロテアーゼを含めた、前立腺組織を消化または溶解するために使用できる加水分解酵素を指す。
本明細書において、「総活性」とは、リポソーム内にカプセル封入されている活性薬剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素の酵素活性を指す。
本明細書において、「多小胞リポソーム」または「脂質膜小胞」または「リポソーム」とは、複数の非同心性水性房を封入する脂質膜を含有する人工の、顕微鏡的脂質小胞を指す。本明細書において、多小胞リポソームとは、水中油中水型(w/o/w)エマルジョンである。
本明細書において、「揮発性有機溶媒」とは、容易に蒸発される有機溶媒を指す。例示的揮発性有機溶媒として、それだけには限らないが、エーテル、ハロゲン化エーテル、炭化水素、エステル、ハロゲン化炭化水素またはフレオン、例えば、ジエチルエーテル、イソプロピルおよび他のエーテル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、フォーレンおよびそれらの組合せが挙げられる。
本明細書において、「中性脂質」とは、それ自体で膜形成能を有さず、親水性「頭部」基を欠くオイルまたは脂肪を指す。中性脂質の例として、ジオレフィン、ジパルミトレイン(dipalmitolein)などのジグリセリド;プロピレングリコールでのカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステルなどのプロピレングリコールエステル;トリオレイン、トリパルミトレイン、トリリノレイン、トリカプリリンおよびトリラウリンなどのトリグリセリド;ダイズ油などの植物油;ラードまたは牛脂;スクアレン;トコフェロール;およびそれらの組合せが挙げられる。中性脂質は、徐放性中性脂質および速放性中性脂質の両方を含む。徐放性中性脂質として、例えば、トリオレイン、トリパルミトレイン、トリミリストレイン、トリラウリンおよびトリカプリンが挙げられる。速放性中性脂質として、例えば、トリカプリリンおよびトリカプロインおよびそれらの混合物が挙げられる。
本明細書において、「両親媒性脂質」とは、親水性「頭部」基と、疎水性「尾部」基とを有し、膜形成能を有する分子を指す。両親媒性脂質は、双性イオン性、酸性または陽イオン性脂質を含めた、pH7.4で正味の負電荷、ゼロの正味電荷および正味の正電荷を有するものを含む。このような例示的両親媒性脂質として、それだけには限らないが、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン、ジアシルトリメチルアンモニウムプロパン(DITAP)およびそれらの組合せが挙げられる。
本明細書において、「長鎖両親媒性脂質」とは、それだけには限らないが、DOPCまたはDC18:1PC=1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DLPCまたはDC12:0PC=1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DMPCまたはDC14:0PC=1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DPPCまたはDC16:0PC=1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DSPCまたはDC18:0PC=1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DAPCまたはDC20:0PC=1,2ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DBPCまたはDC22:0PC=1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC16:1PC=1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC20:1PC=1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC22:1PC=1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DPPG=1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール;DOPG=1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロールを含めた、炭素鎖中に増大した数の炭素を有する両親媒性脂質を指す。通常、長鎖両親媒性脂質の使用は、リポソーム製剤のカプセル封入効率を高める。
本明細書において、「ヒアルロン酸」または「HA」とは、結合組織、上皮組織および神経組織中に広く分布している非硫酸化グリコサミノグリカンを指す。それ自体がD−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンからなる最大25,000の二糖単位のポリマーである。HAの分子量は、約5kDaから20,000kDaの範囲である。本明細書において、ヒアルロン酸オリゴマーは、ヒアルロン酸の断片である。
本明細書において、ヒアルロナン分解酵素またはヒアルロナン分解酵素を含有する組成物に関して「安定な」または「安定性」とは、ヒアルロナン分解酵素が、規定の条件、例えば、2℃〜8℃の低温または冷蔵温度、20℃〜30℃の周囲温度または32℃〜40℃の高温という温度条件下で、6カ月超の期間、ヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%のその活性の少なくとも必要なレベルを保持することを意味する。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、2℃〜8℃、20℃〜30℃または32℃〜40℃の温度で、6カ月超の期間、その活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上を保持する。
本明細書において、「活性薬剤」または「生物学的に活性な薬剤」とは、多小胞リポソームの房中に、またはリポソームの製造の際に使用される水溶液中に存在する薬剤を説明するために使用される場合には、それだけには限らないが、ヒアルロナン分解酵素、薬物およびプロドラッグ、小分子およびタンパク質を含めた、所望の生物活性を有する薬剤を含む。
本明細書において、「浸透圧」とは、任意の添加された賦形剤を含めた、水溶液中に存在する溶質のモル濃度の合計を指す。
本明細書において、「賦形剤」とは、ヒアルロナン分解酵素の安定性を維持もしくは増強するか、またはヒアルロナン分解酵素のカプセル封入効率をモジュレート(増大)する、任意の分子、薬剤または化合物を指す。賦形剤は、当業者には公知であるか、または経験的に決定され得る。例示的賦形剤は、本明細書に記載されている。
本明細書において、「浸透圧賦形剤」とは、生物学的に活性な薬剤ではない、水溶液中の生物学的に適合する溶質分子を指す。浸透圧賦形剤は、活性薬剤がカプセル封入のために溶解される水性成分の浸透圧を変更するために使用できる。電解質および非電解質の両方とも、浸透圧賦形剤として機能する。任意の特定の分子が、浸透圧賦形剤として機能するかどうかを決定する場合には、または溶液中の浸透圧賦形剤、例えば、多小胞リポソーム中にカプセル封入されるものの濃度を決定する場合には、溶液内の条件、例えば、pH下で、分子が、部分的にイオン化されているか、完全にイオン化されているかどうかを考慮しなくてはならない。浸透圧賦形剤として、活性薬剤の活性を促進し得るものが挙げられる。多小胞リポソームを形成するために、または多小胞リポソームからのカプセル封入された薬剤の薬物負荷をモジュレートするために使用できる浸透圧賦形剤として、それだけには限らないが、グルコース、スクロース、トレハロース、コハク酸塩、グリシルグリシン、グルコン酸、シクロデキストリン、アルギニン、ガラクトース、マンノース、マルトース、マンニトール、グリシン、リシン、クエン酸、ソルビトール、デキストランおよびそれらの組合せが挙げられる。
本明細書において、「安定剤」とは、多小胞リポソームに添加された場合に、活性薬剤を安定化する賦形剤を指す。
本明細書において、「デポーゲル」または「デポー製剤」とは、活性薬剤の徐放を可能にするゲル製剤を指す。一般に、ゲルは、ヒドロゲル、相当な量の水を含有するゲルであり、生体適合性であり、ゲルは、生分解性である。ゲル形成材料として、それだけには限らないが、アルギン酸およびその修飾形態などの多糖が挙げられ、他のポリマーヒドロゲル前駆体として、プルロニクス(Pluronics)(登録商標)またはテトロニクス(Tetronics)(登録商標)などのポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックポリマーが挙げられる。
本明細書において、「カプセル封入効率」または「カプセル封入パーセント」とは、プロセスの第1の水溶液中で使用されるカプセル封入される化合物の総量に対する、リポソームの最終懸濁液中でカプセル封入される化合物の量の割合に100を乗じたものを指す。
本明細書において、「薬物負荷能」とは、生成物リポソーム懸濁液中に負荷される、活性薬剤、すなわち、ヒアルロナン分解酵素の量を指す。薬物負荷能は、リポソーム製剤の単位容量中の利用可能な活性薬剤の量の尺度であり、リポソーム自体中にカプセル封入された容量パーセントに対する、リポソーム懸濁液の単位容量あたりのカプセル封入された薬物の割合である。低い遊離薬物パーセントについては、懸濁液のリポクリット(lipocrit)によって除された懸濁液中の活性薬剤の濃度にほぼ等しい。
本明細書において、「リポクリット」とは、総懸濁液容量に対する、リポソームによって占められた容量の割合に100を乗じたものを指す。
本明細書において、「遊離薬物パーセント」とは、最終懸濁液中の薬物の総量に対する、最終リポソーム懸濁液中のリポソームの外側の薬物の量の割合に100を乗じたものを指す。
本明細書において、「BPHを治療するのに有用な他の薬剤」とは、抗アンドロゲン剤、α遮断薬およびボツリヌス毒素以外の薬剤を指す。
本明細書において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上別段の明確な指示のない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞外ドメイン」を含有する化合物への言及は、1種または複数の細胞外ドメインを有する化合物を含む。
本明細書において、範囲および量は、「約(およそ)」特定の値または範囲として表現され得る。約はまた、正確な量も含む。したがって、「約5塩基」とは、「約5塩基」および「5塩基」も意味する。
本明細書において、「任意選択の」または「所望により」とは、続いて記載される事象または状況が起こるか起こらないことおよび記載が前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、所望により置換されていてもよい基とは、基が非置換であるか、置換されていることを意味する。
本明細書において、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略語は、別段の指示のない限り、その一般的な使用、認識されている略語または生化学命名法に関するIUPAC−IUB委員会(IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature)((1972) Biochem. 11:1726参照のこと)を踏まえる。
B.概要−疾患において蓄積されたヒアルロナン(HA)およびその加水分解
ヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤、例えば、脂質製剤に含有された組成物が、本明細書において提供される。ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンレベルの上昇または蓄積が原因であるか、またはそうでなければ疾患もしくは状態と関連しているヒアルロナン(HA)関連疾患または状態を治療する方法において使用され得る。しかし、局所組織部位でHAを分解するためのヒアルロナン分解酵素の使用に伴う問題は、ヒアルロナン分解酵素が、ひとたび投与されると、迅速に消失するということであると見出された。対照的に、HAを製造する細胞は、3〜10日毎に再生される。したがって、ヒアルロナン分解酵素の徐放または制御放出を使用して、局所部位で、例えば、前立腺の間質細胞などでHAを分解するための酵素の連続的なまたは持続性の供給源を提供でき、HAの長期の限局的な加水分解を提供できることが、本明細書において見出された。したがって、本明細書に記載されるように、ヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤を提供して、酵素の局在性を促進でき、標的部位、例えば、前立腺で高濃度の酵素を提供でき、および/または標的部位で酵素の長期放出を提供できる。
特に、間質におけるヒアルロナン(HA)蓄積は、BPHの特徴である。したがって、徐放性製剤を含有する組成物およびそれらの組合せは、特に、前立腺が肥大した男性における、良性前立腺肥大症(BPH)の治療にとって有用である。ヒアルロナン分解酵素、例えば、ヒアルロニダーゼは、肥大化した前立腺に提供されると、肥大化した腺の間質に蓄積し、腺の間質中に存在する細胞のアポトーシスを引き起こすヒアルロン酸を分解することが本明細書において見出された。間質におけるHAの枯渇は、テストステロンによって刺激される間質細胞の選択的アポトーシスをもたらすが、正常な間質細胞は影響を受けない。間質細胞のアポトーシスは、間質拡大を停止し、前立腺縮小をもたらし、BPH進行を低減または停止する。したがって、肥大化した前立腺をヒアルロニダーゼに曝露することによって、肥大化した腺の大きさの低減およびさらなる増殖の阻害がもたらされる。特に、ヒアルロナン分解酵素の効果は、テストステロンによって刺激される間質細胞に選択的であり、臓器不全などの望ましくない結果をもたらし得る上皮細胞のアポトーシスを引き起こさない。したがって、ヒアルロナン分解酵素の使用は安全であり、組織と関連する副作用を伴わない。
BPHの治療のために、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素を含有する徐放性製剤を、前立腺中に直接的に注入してもよい。ヒアルロナン分解酵素組成物は、ひとたび前立腺中に導入されると長期間に渡って放出されるようデポーとして製剤できる。このような投与方法は、これらの薬剤に対する、前立腺以外の組織および臓器の曝露時間を最小にすることによって副作用を低減し、治療薬が、高い局所濃度を達成することならびに前立腺および周囲の細胞および組織が治療薬に曝露される時間を延長することを可能にするので有益である。
ヒアルロナン分解酵素の使用は、BPHを治療するためのこれまでには認識されていなかった方法に相当する。肥大化した前立腺に対するヒアルロナン分解酵素のこの効果は、展着剤としてのその使用とは異なっている。例えば、ヒアルロナン分解酵素の公知の使用は、治療薬のその標的への接近を容易にすることによって治療薬の効果を増強するための展着剤としての使用を含む。
ヒアルロナン分解酵素を用いるBPHの治療は、BPHの既存の治療によっては示されない有効な特性を示す。例えば、α遮断薬または5−α−レダクターゼ阻害剤を使用する既存の治療には、制限がある。フィナステリドなどのα遮断薬は症状を軽減するが、それらは前立腺の大きさを低減せず、進行に影響も与えない。さらに、5−α−レダクターゼ阻害剤は、前立腺を縮小させるが、それらは作用するのに6カ月超かかる場合もあり、患者は、抵抗性になる場合もあり、性的副作用が一般的である。さらに、前立腺(TURP)の経尿道的切除または他のインターベンショナル手術などの手術を含むBPHを治療するための他の方法は、例えば、逆行性射精、感染および尿道狭小化を含み得る、望まない副作用を伴う。対照的に、ヒアルロナン分解酵素、例えば、PH20などのヒアルロニダーゼを用いるBPHの治療は、前立腺容量の迅速な低減をもたらし、性的副作用がなく、手術に伴われる副作用もない。
いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物または製剤は、良性前立腺肥大症の治療に有用な1種または複数の他の薬剤と、併用療法において組み合わせることができる。このような他の薬剤として、それだけには限らないが、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素およびBPHの治療にとって有用な任意の他の種類の薬剤が挙げられる。他の薬剤は、ヒアルロナン分解酵素と、別個に投与してもよく、または徐放性製剤中で同時投与してもよい。BPHの治療薬としてのヒアルロニダーゼおよび他の補完性BPH治療薬の組合せは、長期間の、肥大化した腺の大きさを低減する増強された能力をもたらし得、したがって、治療薬が単独で使用される場合に観察されるものよりもより大きな治療効果を達成する可能性がある。
以下の節は、ヒアルロナン分解酵素、例えば、BPHを治療するためのこのようなものの徐放性製剤、併用療法および使用方法の限定されない説明を提供する。
C.ヒアルロナン分解酵素
徐放性または制御放出製剤を含めた、ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物および製剤が本明細書において提供される。徐放性製剤を含有する組成物は、疾患と関連するHA蓄積を回避するために局所注射において使用できる。例えば、このような組成物および製剤は、間質と結合しているHAを分解することによって、良性前立腺肥大症の治療のための方法において使用できる。ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素は、肥大化した前立腺組織の大きさを減少させ、また、さらなる増殖を防ぐためのBPH治療薬として利用できる。
ヒアルロナンはまた、ヒアルロン酸またはヒアルロネート(hyaluronate)とも呼ばれ、結合組織、上皮組織および神経組織中に広く分布している非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロナンは、細胞外マトリックスの必須成分であり、間質バリアの主要成分である。ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンの加水分解を触媒することによって、ヒアルロナンの粘度を低下させ、それによって、非経口的に投与された流体の組織透過性を高め、吸収速度を高める。そのようなものとして、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロンナン分解酵素は、例えば、他の薬剤、薬物およびタンパク質とともに、その分散およびデリバリーを促進するために、展着剤または分散剤として使用されてきた。ヒアルロナン分解酵素はまた、皮下点滴療法(皮下流体投与)のための、他の注入される薬物の吸収および分散を高めるためのアジュバントとして、また放射不透過性薬剤の再吸収を改善するために、皮下尿路造影における補助剤としても使用される。ヒアルロナン分解酵素、例えば、ヒアルロニダーゼは、眼科手順、例えば、眼科手術の前の局所麻酔における眼球周囲およびテノン嚢下ブロックの適用において使用できる。ヒアルロニダーゼはまた、例えば、眼瞼形成術およびフェースリフトなどの美容整形において無動を促進することによって、他の治療的および化粧的使用においても使用できる。
ヒアルロナン分解酵素は、交互のβ−1→4およびβ−1→3グリコシド結合によって一緒に連結されている、反復二糖類単位、D−グルクロン酸(GlcA)およびN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)からなるヒアルロナンポリマーを切断することによってヒアルロナンを分解するよう作用する。ヒアルロナン鎖は、約25,000の二糖反復またはそれ以上の長さに達することもあり、ヒアルロナンのポリマーは、インビボで約5,000〜20,000,000Daの大きさの範囲であり得る。したがって、本明細書において製剤中のヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン二糖鎖またはポリマーの切断を触媒する能力を有する任意の酵素を含む。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン鎖またはポリマー中のβ−1→4グリコシド結合を切断する。他の例では、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン鎖またはポリマー中のβ−1→3グリコシド結合の切断を触媒する。
本明細書における製剤、方法および組合せにおいて使用するためのヒアルロナン分解酵素として、例えば、ヒアルロニダーゼおよびコンドロイチナーゼ(chrondroitinases)およびGPIアンカーのすべてまたは一部を欠き、細胞から分泌されるそれらの可溶性形態が挙げられる。種々のヒアルロナン分解酵素の説明は、以下に提供される。HAを分解または切断する任意のヒアルロナン分解酵素、特に、肥大化した前立腺の間質中に蓄積するヒアルロン酸を分解する任意のものを、本明細書における製剤および方法において使用できることは理解される。特に、ヒアルロン(hyaluron)分解酵素は、ヒトPH20などのPH20、特に、C末端切断型PH20である。本明細書に提供された方法および使用は、可溶性ヒアルロニダーゼの使用を説明する場合には、それに応じて、任意のヒアルロナン分解酵素、一般に、可溶性ヒアルロナン分解酵素を使用できる。本明細書において提供される方法および使用において、任意のヒアルロニダーゼを使用できることは理解される(例えば、米国公開番号US20040268425およびUS20100143457を参照のこと)。
特に、ヒアルロナン分解酵素は、発現されると細胞から分泌される可溶性酵素である。例えば、本明細書において提供される例示的ヒアルロナン分解酵素は、GPIアンカーのすべてまたは一部を除去するためにC末端切断を含有する。特定の例では、ヒアルロナン分解酵素は、PH20酵素である。また、ヒアルロナン分解酵素は、例えば、その半減期をさらに延長するためにさらに修飾され得る。
通常、本明細書における組成物、製剤、組合せおよび方法において使用するために、可溶性ヒトPH20などの可溶性ヒトヒアルロナン(hylauronan)分解酵素が使用される。他の動物に由来するPH20などのヒアルロナン分解酵素も使用され得るが、このような調製物は、それらが動物タンパク質であるので免疫原性である可能性がある。例えば、患者の相当な割合が、摂取された食物に続いて事前感作を示し、これらは動物タンパク質であるので、すべての患者が二次感作のリスクを有する。したがって、非ヒト調製物は、慢性使用には適していないものであり得る。非ヒト調製物が望ましい場合には、このようなポリペプチドが減少した免疫原性を有するよう調製され得ることが本明細書において考慮される。このような修飾は、当業者のレベルの範囲内にあり、例えば、分子上の1つまたは複数の抗原性エピトープの除去および/または置換を挙げることができる。
本明細書における方法において使用されるヒアルロニダーゼ(例えば、PH20)を含めたヒアルロナン分解酵素は、組換えによって製造できるか、または天然供給源から、例えば、精巣抽出物などから、精製もしくは部分精製できる。組換えヒアルロナン分解酵素を含めた組換えタンパク質の製造方法は、本明細書において他の場所で提供され、当技術分野で周知である。
活性にとってヒアルロニダーゼのグリコシル化が必要である場合には、一般に、ヒアルロナン分解酵素は、ポリペプチドが活性を保持することを確実にするよう正しいN−グリコシル化を促進するタンパク質発現系を使用して製造される。例えば、グリコシル化は、ヒトPH20などのヒアルロニダーゼの触媒活性および安定性にとって重要である。このような細胞として、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、DG44CHO細胞)が挙げられる。
1.ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素の大きなファミリーのメンバーである。ヒアルロニダーゼの3つの一般的なクラス:哺乳類型ヒアルロニダーゼ、細菌ヒアルロニダーゼならびにヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼがある。このような酵素は、提供される組成物、製剤、組合せおよび方法において使用できる。
a.哺乳類型ヒアルロニダーゼ
哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)は、ヒアルロナンのβ−1→4グリコシド結合を、四糖および六糖などの種々のオリゴ糖の長さに加水分解するエンド−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼである。これらの酵素は、加水分解およびトランスグリコシダーゼ活性の両方を有し、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸(CS)、一般に、C4−SおよびC6−Sを分解できる。この種のヒアルロニダーゼとして、それだけには限らないが、ウシ(ウシ(bovine))由来のヒアルロニダーゼ(配列番号:10、11および64ならびにBH55(米国特許第5,747,027号および同5,827,721号))、ヒツジ(ヒツジ(ovis aries))(配列番号26、27、63および65)、イエロージャケットスズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、ホワイトフェーススズメバチ(white−face hornet)(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)およびヒトヒアルロニダーゼが挙げられる。本明細書において提供される組成物、組合せおよび方法におけるヒアルロニダーゼの例示的なものとして、可溶性ヒアルロニダーゼがある。
哺乳類ヒアルロニダーゼは、主に、精巣抽出物において見られる中性活性であるもの、肝臓などの臓器において主に見られる酸性活性であるものにさらに分けられる。例示的中性活性ヒアルロニダーゼとしてPH20があり、それだけには限らないが、ヒツジ(配列番号27)、ウシ(配列番号11)およびヒト(配列番号1)などの種々の種に由来するPH20が挙げられる。ヒトPH20(SPAM1または精子表面タンパク質PH20としても知られる)は、一般に、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによって細胞膜と結合している。天然には、精子−卵子接着に関与しており、ヒアルロン酸を消化することによって卵丘細胞の層の精子による浸透を補助する。
ヒトゲノムでは、ヒトPH20(SPAM1とも呼ばれる)に加え、5種のヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびHYALP1が同定されている。HYALP1は、偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号38)は、任意の既知基質に向けた酵素活性を有するとはわかっていない。HYAL4(配列番号39に示される前駆体ポリペプチド)は、コンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対しては活性をほとんど示さない。HYAL1(配列番号36に示される前駆体ポリペプチド)は、プロトタイプの酸性活性酵素であり、PH20(配列番号1に示される前駆体ポリペプチド)は、プロトタイプの中性活性酵素である。HYAL1およびHYAL2(配列番号37に示される前駆体ポリペプチド)などの酸性活性ヒアルロニダーゼは、一般に、中性pH(すなわち、pH7)で触媒活性を欠く。例えば、HYAL1は、pH4.5を超えると触媒活性をインビトロでほとんど有さない(Frost et al. (1997) Anal. Biochem. 251:263-269)。HYAL2は、インビトロで極めて低い特異的活性を有する酸性活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素はまた、ヒトHYAL2およびヒトPH20などの、一般に、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによって細胞膜と結合しているもの(Danilkovitch-Miagkova et al. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4580-5)およびヒトHYAL1などの一般に可溶性であるもの(Frost et al. (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-5)を特徴とし得る。
i.PH20
PH20は、他の哺乳類ヒアルロニダーゼと同様、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を四糖および六糖などの種々のオリゴ糖の長さに加水分解するエンド−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼである。それらは、加水分解およびトランスグリコシダーゼ活性の両方を有し、ヒアルロン酸およびC4−SおよびC6−Sなどのコンドロイチン硫酸を分解できる。PH20は、天然には、精子−卵子接着に関与しており、ヒアルロン酸を消化することによって卵丘細胞の層の精子による浸透を補助する。PH20は、精子表面およびリソソーム由来先体中に位置しており、ここでは、内先体膜と結合している。細胞膜PH20は、中性pHでのみヒアルロニダーゼ活性を有するが、内先体膜PH20は、中性および酸性pHの両方で活性を有する。PH20は、ヒアルロニダーゼであることに加え、HA誘導性細胞シグナル伝達の受容体、および卵母細胞の周囲の透明帯の受容体でもあると思われる。
例示的PH20タンパク質として、それだけには限らないが、ヒト(配列番号1に示される前駆体ポリペプチド、配列番号2に示される成熟ポリペプチド)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)ウシ(配列番号11および64)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、ラット(配列番号31)およびマウス(配列番号32)PH20ポリペプチドが挙げられる。
ウシPH20は、553アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号11)である。ウシPH20のヒトPH20とのアラインメントは、弱い相同性しか示さず、ウシポリペプチド中にGPIアンカーがないために、アミノ酸470からそれぞれのカルボキシ末端に存在する複数のギャップを有する(例えば、Frost GI (2007) Expert Opin. Drug. Deliv. 4: 427-440参照のこと)。実際、ヒトの他に、多数の他のPH20種において、明確なGPIアンカーは予測されていない。したがって、ヒツジおよびウシから製造されるPH20ポリペプチドは、可溶性形態として天然に存在する。ウシPH20は、細胞膜と極めて緩く結合して存在するが、ホスホリパーゼ感受性アンカーによって固定されていない(Lalancette et al. (2001) Biol Reprod. 65(2):628-36)。
ウシヒアルロニダーゼの構造によって、臨床使用のための抽出物として可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素を使用することが可能となった(Wydase(登録商標)、Hyalase(登録商標))。他の動物由来PH20ヒアルロニダーゼ調製物として、Vitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)、精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼおよびHydase(Akorn)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼが挙げられる。
ii.ヒトPH20
ヒトPH20mRNA転写物は、正常に翻訳されて、N末端に35個のアミノ酸のシグナル配列(アミノ酸残基位置1〜35)およびC末端に19個のアミノ酸のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー結合シグナル配列(アミノ酸残基位置491〜509)を含有する509個のアミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号1)が生じる。したがって、成熟PH20は、配列番号2に示される474個のアミノ酸のポリペプチドである。ERへの前駆体ポリペプチドの輸送およびシグナルペプチドの除去後、C末端GPI結合シグナルペプチドが切断されて、配列番号1に示される前駆体ポリペプチドの位置490に対応するアミノ酸位置で、GPIアンカーの、新規に形成されたC末端アミノ酸との共有結合が促進される。したがって、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、474個のアミノ酸のGPIによって固定された成熟ポリペプチドが生じる。
ヒトPH20は、中性および酸性pHの両方でヒアルロニダーゼ活性を示す。一態様では、ヒトPH20は、一般に、GPIアンカーによって細胞膜に固定されているプロトタイプの中性で活性のヒアルロニダーゼである。他の態様では、PH20は、内先体膜上で発現され、ここでは、中性および酸性pHの両方でヒアルロニダーゼ活性を有する。PH20は、ポリペプチドの別個の領域で2つの触媒部位:ペプチド1およびペプチド3領域を含有すると思われる(Cherr et al., (2001) Matrix Biology 20:515-525)。証拠は、PH20のペプチド1領域は、配列番号2に示される成熟ポリペプチドのアミノ酸位置107〜137および配列番号1に示される前駆体ポリペプチドの位置142〜172に対応し、中性pHでの酵素活性に必要であるということを示唆する。この領域内の位置111および113のアミノ酸(配列番号2に示される成熟PH20ポリペプチドに対応する)は、アミノ酸置換による突然変異誘発が、野生型PH20と比較して、それぞれ、3%のヒアルロニダーゼ活性または検出不能なヒアルロニダーゼ活性を有するPH20ポリペプチドをもたらすので、活性にとって重要であると思われる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
ペプチド3領域は、配列番号2に示される成熟ポリペプチドのアミノ酸位置242〜262および配列番号1に示される前駆体ポリペプチドの位置277〜297に対応し、酸性pHでの酵素活性にとって重要であると思われる。この領域内では、成熟PH20ポリペプチドの位置249および252のアミノ酸は、いずれか一方の突然変異誘発が、活性を本質的に欠くポリペプチドをもたらすので、活性にとって必須であると思われる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
PH20はまた、触媒部位に加え、ヒアルロナン結合部位も含有する。実験的証拠は、この部位は、配列番号1に示される前駆体ポリペプチドのアミノ酸位置205〜235および配列番号2に示される成熟ポリペプチドの位置170〜200に対応するペプチド2領域中に位置することを示唆する。この領域は、ヒアルロニダーゼ間で高度に保存されており、ヘパリン結合モチーフに類似している。位置176(配列番号2に示された成熟PH20ポリペプチドに対応する)のアルギニン残基の、グリシンへの突然変異は、野生型ポリペプチドの約1%のヒアルロニダーゼ活性しか有さないポリペプチドをもたらす(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
ヒトPH20には、配列番号1に例示されるポリペプチドのN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に、7つの可能性あるN結合型グリコシル化部位がある。配列番号1のアミノ酸36〜464は、最小にしか活性でないヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含有すると思われるので、N結合型グリコシル化部位N−490は、適切なヒアルロニダーゼ活性にとって必要ではない。ヒトPH20には、6つのジスルフィド結合がある。配列番号1に例示されるポリペプチドのシステイン残基C60とC351の間およびC224とC238の間(それぞれ、配列番号2に示される成熟ポリペプチドの残基C25とC316およびC189とC203に対応する)の2つのジスルフィド結合。さらなる4つのジスルフィド結合は、配列番号1に例示されるポリペプチドのシステイン残基C376とC387の間、C381とC435の間、C437とC443の間およびC458とC464の間(それぞれ、配列番号2に示される、成熟ポリペプチドの残基C341とC352、C346とC400の間、C402とC408の間ならびにC423とC429の間に対応する)に形成される。
PH20のほとんどの動物調製物とは異なり、ヒトPH20は、細胞膜に発現されたタンパク質を固定するGPIアンカーを含有する。通常、ヒトPH20の治療調製物は、C末端アミノ酸残基を欠く可溶性ポリペプチドとして提供される。可溶性PH20ヒアルロニダーゼを含めた例示的可溶性ヒアルロニダーゼは、以下に記載されている。ヒトPH20の調製物として、Hylenex(登録商標)およびEnhanze(商標)Technologyが挙げられる。
b.細菌ヒアルロニダーゼ
細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.2.1またはEC4.2.99.1)は、ヒアルロナンを種々の程度に、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を分解する。細菌から単離されたヒアルロナンリアーゼは、ヒアルロニダーゼ(他の供給源に由来する、例えば、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、EC3.2.1.35)とは、その作用様式によって異なる。それらは、ヒアルロナン中のN−アセチル−β−D−グルコサミンとD−グルクロン酸残基間のβ1→4−グリコシド結合の加水分解というよりも、排除反応を触媒するエンド−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼであり、3−(4−デオキシ−β−D−グルカ−4−エヌロノシル)−N−アセチル−D−グルコサミン四糖および六糖、ならびに二糖最終生成物が生じる。反応は、その非還元末端に不飽和ヘキスロン酸残基を有するオリゴ糖の形成をもたらす。
細菌由来の例示的ヒアルロニダーゼとして、それだけには限らないが、アルスロバクター属(Arthrobacter)、デロビブリオ属(Bdellovibrio)、クロストリジウム属(Clostridium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ぺプトコッカス属(Peptococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)の株を含めた、微生物中のヒアルロナン分解酵素が挙げられる。このような酵素の特定の例として、それだけには限らないが、ヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を切断しない、アルスロバクター属の種(FB24株)(配列番号67)、デロビブリオ・バクテリオボラス(Bdellovibrio bacteriovorus)(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)((配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);血清型III(配列番号73))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(COL株(配列番号74);MRSA252株(配列番号75および76);MSSA476株(配列番号77);NCTC8325株(配列番号78);ウシRF122株(配列番号79および80);USA300株(配列番号81))、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)((配列番号82);ATCC BAA−255/R6株(配列番号83);血清型2、D39/NCTC7466株(配列番号84))、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)((血清型M1)(配列番号85);血清型M2、MGAS10270株(配列番号86);血清型M4、MGAS10750株(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、MGAS2096株(配列番号89および90);血清型M12、MGAS9429株(配列番号91);血清型M28(配列番号92));ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)(配列番号93〜95);ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)(ATCC 700601/ES114株(配列番号96))およびストレプトマイセス・ヒアルロノリチクス(Streptomyces hyaluronolyticus)ヒアルロニダーゼ酵素が挙げられる(Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。
c.ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ
ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)は、四糖および六糖最終生成物を生成するエンド−β−グルクロニダーゼである。これらの酵素は、ヒアルロネート中のβ−D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミン残基間の1→3結合の加水分解を触媒する。ヒル由来の例示的ヒアルロニダーゼとして、それだけには限らないが、ヒルド科(Hirudinidae)(例えば、ヒルド・メディシナリス(Hirudo medicinalis))、イシビル科(Erpobdellidae)(例えば、ネフェロプシス・オブスクラ(Nephelopsis obscura)およびエルポブデラ・プンクタタ(Erpobdella punctata))、グロシフォニ科(Glossiphoniidae)(例えば、デセロデラ・ピクタ(Desserobdella picta)、ヌマビル(Helobdella stagnalis)、ヒラタビル(Glossiphonia complanata)、カメビル(Placobdella ornata)およびテロミゾン種(Theromyzon sp.))およびヘモビ科(Haemopidae)(ヘモピス・マルモラタ(Haemopis marmorata))(Hovingh et al. (1999) Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 124(3):319-26)由来のヒアルロニダーゼが挙げられる。ヒルヒアルロニダーゼと同一の作用機序を有する細菌由来の例示的ヒアルロニダーゼとして、シアノバクテリア、シネココッカス種に由来するもの(RCC307株、配列番号97)がある。
2.他のヒアルロナン分解酵素
ヒアルロニダーゼファミリーに加えて、提供される組成物、製剤、組合せおよび方法において、他のヒアルロナン分解酵素を使用してもよい。例えば、ヒアルロナンを切断する能力を有する、特定のコンドロイチナーゼおよびリアーゼを含めた酵素を使用できる。ヒアルロナンを分解できる例示的コンドロイチナーゼとして、それだけには限らないが、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼ(eliminase)としても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼが挙げられる。提供される組成物、製剤、組合せおよび方法において使用するための、このような酵素を製造および精製する方法は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,054,569号;Yamagata, et al. (1968) J. Biol. Chem. 243(7):1523-1535;Yang et al. (1985) J. Biol. Chem. 160(30):1849-1857)。
コンドロイチンABCリアーゼは、2種の酵素、コンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼ(EC4.2.2.20)およびコンドロイチン硫酸−ABCエキソリアーゼ(EC4.2.2.21)を含有し(Hamai et al. (1997) J Biol Chem. 272(14):9123-30)、これらは、コンドロイチン硫酸種およびデルマタン硫酸種の種々のグリコサミノグリカンを分解する。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンおよびデルマタン硫酸は、コンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼの好ましい基質であるが、この酵素は、ヒアルロナンに対しても少ない割合で作用し得る。コンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼは、コンドロイチン硫酸種およびデルマタン硫酸種の種々のグリコサミノグリカンを分解し、最終的にΔ4−不飽和四糖および二糖に分解される、種々の大きさのΔ4−不飽和オリゴ糖の混合物を生成する。コンドロイチン硫酸−ABCエキソリアーゼは、同一基質特異性を有するが、重合体コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼによって生じたそのオリゴ糖断片の両方の非還元末端から二糖残基を除去する(Hamai, A. et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:9123-9130)。例示的コンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼおよびコンドロイチン硫酸−ABCエキソリアーゼとして、それだけには限らないが、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)およびフラボバクテリウム・ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)に由来するものが挙げられる(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン硫酸−ABCエンドリアーゼは、配列番号98に示されている(Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)。
コンドロイチンACリアーゼ(EC4.2.2.5)は、コンドロイチン硫酸AおよびCに対して活性であるが、コンドロイチンおよびヒアルロン酸は、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)に対しては活性ではない。細菌由来の例示的コンドロイチナーゼAC酵素として、それだけには限らないが、それぞれ、配列番号99および100に示されるフラボバクテリウム・ヘパリナムおよびビクチバリス・バデンシス(Victivallis vadensis)に由来するものならびにアルスロバクター・オウレセンス(Arthrobacter aurescens)に由来するもの(Tkalec et al. (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35; Ernst et al. (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)が挙げられる。
コンドロイチナーゼCは、コンドロイチン硫酸Cを切断し、四糖および不飽和6硫酸化二糖(デルタDi−6S)が生成する。また、ヒアルロン酸も切断し、不飽和非硫酸化二糖(デルタDi−OS)が生成する。細菌由来の例示的コンドロイチナーゼC酵素として、それだけには限らないが、連鎖球菌およびフラボバクテリウム由来のものが挙げられる(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4; Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8; Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
3.可溶性ヒアルロナン分解酵素
特定の例では、ヒアルロナン分解酵素は、発現時に細胞から分泌され得る可溶性酵素として提供される。したがって、可溶性酵素は、発現されると、細胞培地中に分泌される酵素を含み、そこで単離または精製され得る。上記のように、ヒアルロナン分解酵素は、膜結合形態または細胞から分泌される可溶性形態で存在する。したがって、ヒアルロナン分解酵素が、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを含む、および/またはそうではなく膜に固定されているか、または不溶性である場合には、このようなヒアルロナン分解酵素は、酵素を分泌させ、可溶性にするためにGPIアンカーのすべてまたは一部を末端切断または欠失させることによって可溶性形態で本明細書において提供される。当業者ならば、当技術分野で周知の方法を使用して、ポリペプチドがGPIによって固定されているかどうかを決定できる。このような方法として、それだけには限らないが、GPIアンカー結合シグナル配列およびω部位の存在および位置を予測するために既知アルゴリズムを使用することおよびホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)またはD(PI−PLD)を用いる消化の前後に溶解度分析を実施することが挙げられる。一例では、普通、GPIアンカーによって膜に固定されているヒトヒアルロニダーゼPH20を、C末端のGPIアンカーのすべてまたは一部を末端切断することおよび除去することによって可溶性にすることができる。
可溶性ヒアルロナン分解酵素はまた、中性活性および酸性活性ヒアルロニダーゼも含む。それだけには限らないが、投与後の酵素の活性の所望のレベルおよび/または投与部位などの因子に応じて、中性活性および酸性活性ヒアルロニダーゼを選択できる。特定の例では、本明細書における組成物、組合せおよび方法において使用するためのヒアルロナン分解酵素は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼである。中性pHを含む、種々のpH条件でヒアルロニダーゼの活性を評価するためのアッセイは、当業者に周知である。
したがって、ヒアルロナン分解酵素は、末端切断型変異体、例えば、GPIアンカーのすべてまたは一部を除去するためのポリペプチドのC末端内の末端切断型変異体を含む。このような酵素として、それだけには限らないが、非ヒト可溶性ヒアルロニダーゼ、細菌可溶性ヒアルロニダーゼおよびヒトヒアルロニダーゼ、Hyal1、ウシPH20およびヒツジPH20、それらの対立遺伝子変異体およびそれらの他の変異体を含めた可溶性ヒアルロニダーゼが挙げられる。可溶性ヒアルロニダーゼの例示的なものとして、任意の種に由来するPH20、例えば、配列番号1、2、11、25、27〜32、63〜65および101〜102のいずれかに示される任意のもの、配列番号1、2、11、25、27〜32、63〜65および101〜102のいずれかに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を示すそれらの変異体またはそれから発現されるとヒアルロニダーゼが細胞から培地中に分泌される限りC末端GPIアンカーのすべてまたは一部を欠き、ヒアルロニダーゼ活性を保持するそれらの末端切断型形態がある。本明細書において提供される可溶性ヒアルロナン分解酵素は、得られる末端切断型ポリペプチドがヒアルロニダーゼ活性示す限り、野生型ポリペプチドと比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60個もしくはそれ以上または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60個もしくはそれ以上のアミノ酸だけC末端内で末端切断され得る。例えば、活性に必要なヒトPH20の最小のヒアルロニダーゼドメインは、アミノ酸36〜464である(例えば、米国特許第7,767,429号参照のこと)。したがって、ヒトPH20ヒアルロニダーゼでは、少なくとも45個のアミノ酸がC末端から除去され得る。ヒアルロニダーゼ活性は、出発ポリペプチドの活性の0.5%〜100%の間または約0.5%〜100%、例えば、GPIアンカーを含有するヒアルロナン分解酵素の活性の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上であり得る。
可溶性ヒアルロナン分解酵素が、GPIアンカー結合シグナル配列の一部を保持する例では、ポリペプチドが、発現時に細胞培地から単離され得る、例えば、細胞膜と緩く結合され得るか、またはそれからの発現時に細胞から培地中に分泌され得るという条件で、GPIアンカー結合シグナル配列中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7個もしくはそれ以上または1、2、3、4、5、6、7個もしくはそれ以上のアミノ酸残基が保持され得る。GPIアンカーの1個または複数のアミノ酸を含有するポリペプチドは、拡張可溶性ヒアルロナン分解酵素と呼ばれる(例えば、例示的な拡張可溶性ヒアルロナン分解酵素についての公開米国出願番号第2010−0143457号を参照のこと)。
a.可溶性ヒトPH20
可溶性ヒアルロニダーゼの例示的なものとして、可溶性ヒトPH20がある。組換えヒトPH20の可溶性形態が製造されており、本明細書において記載される組成物、製剤、組合せおよび方法において使用され得る。PH20のこのような可溶性形態の製造は、米国公開特許出願番号US20040268425;US20050260186およびUS20060104968ならびに国際PCT出願番号WO2009111066に記載されている。
本明細書において提供される例示的C末端切断型ヒトPH20ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸の配列のC末端アミノ酸残基465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499または500を有する任意のもの、またはその対立遺伝子または種変異体または他の変異体中の対応する位置を含む。哺乳類細胞において発現される場合には、35個のアミノ酸のN末端シグナル配列は、プロセシングの際に切断され、タンパク質の成熟形態が分泌される。したがって、例示的な成熟C末端切断型可溶性PH20ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸の配列のアミノ酸36〜465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499もしくは500またはその対立遺伝子または種変異体または他の変異体中の対応する位置を含有し得る。例えば、本明細書において提供された組成物および製剤において使用するための例示的末端切断型C末端PH20ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸の配列のアミノ酸36〜465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499または500に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を示す任意のものである。細胞におけるポリペプチドの変更されたプロセシングのために、ポリペプチドのN末端のアミノ酸残基において変異性が存在し得ることは理解される。さらに、異種シグナル配列を使用して、細胞におけるコードする核酸の発現を変更または改善できる。
表3は、C末端切断型可溶性PH20ポリペプチドを含めた、例示的C末端切断型PH20ポリペプチドの限定されない例を提供する。以下の表3では、C末端切断型PH20タンパク質の前駆体および成熟ポリペプチドの例示的アミノ酸配列が示されている、前駆体および成熟ポリペプチドの長さ(アミノ酸での)および配列識別子(配列番号)が提供されている。野生型PH20ポリペプチドもまた比較のために表3に含まれている。このような例示的C末端切断型PH20ポリペプチドは、配列番号4〜9、47、48、151〜170、185〜189、242、275または276のいずれかに示される任意のものまたは配列番号4〜9、47、48、151〜170、185〜189、242、275または276のいずれかに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を示すポリペプチドを含む。
特に、このようなポリペプチドの例示的なものとして、配列番号1のアミノ酸1〜482(配列番号3に示される)をコードする核酸分子から生成するものがある。このような例示的核酸分子は、配列番号49に示されている。翻訳後プロセシングによって、35個のアミノ酸のシグナル配列が除去され、447個のアミノ酸可溶性組換えヒトPH20(配列番号4)が残る。培養培地中で製造されるので、C末端には不均一性があり、その結果、rHuPH20と名づけられる生成物は、配列番号4〜9のうちいずれか1種または複数を種々の存在量で含み得る種の混合物を含む。一般に、rHuPH20は、活性を保持するために正しいN−グリコシル化を促進する細胞、例えば、CHO細胞(例えば、DG44CHO細胞)中で製造される。
Figure 2020172494
4.変異体ヒアルロナン分解酵素
本明細書において提供されたヒアルロナン分解酵素はまた、ヒアルロナン分解酵素の対立遺伝子または種変異体または他の変異体も含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、アミノ酸置換、付加および/または欠失などの一次配列中に1種または複数の変異を含有し得る。ヒアルロナン分解酵素の変異体は、一般に、変異を含有しないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のまたは約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示す。本明細書における目的上、酵素が、ヒアルロニダーゼ活性、例えば、変異を含有しないヒアルロナン分解酵素の活性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれ以上または約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれ以上(当技術分野で周知のインビトロおよび/またはインビボアッセイによって測定される)を保持する限り、ヒアルロナン分解酵素中には任意の変異が含まれ得る。
例えば、配列番号1、2、11、25、27〜32、63〜65および101〜102またはその末端切断型形態のいずれかの対立遺伝子変異体または他の変異体も、ヒアルロナン(haluronan)分解酵素の中に含まれる。対立遺伝子変異体および他の変異体は、配列番号1、2、11、25、27〜32、63〜65および101〜102のいずれかまたはその末端切断型形態のいずれかに対して60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む。アミノ酸変異体は、保存的および非保存的突然変異を含む。ヒアルロニダーゼの活性にとって重要であるか、またはそうでなければ必要である残基、例えば上記の任意のものまたは当業者に公知であるものは一般に不変であり、変更され得ないということは理解される。これらは、例えば、活性部位残基を含む。したがって、例えば、ヒトPH20ポリペプチドまたはその可溶性形態のアミノ酸残基111、113および176(配列番号2に示される成熟PH20ポリペプチド中の残基に対応する)は、一般に、不変であり、変更されない。適切なフォールディングに必要な、グリコシル化およびジスルフィド結合の形成を付与する他の残基も不変であり得る。
5.ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
ヒアルロニダーゼを含めたいくつかのヒアルロナン分解酵素の、N結合型およびO結合型グリコシル化を含めたグリコシル化は、その触媒活性および安定性にとって重要であり得る。糖タンパク質を修飾するグリカンの種類を変更することは、タンパク質の抗原性、構造的フォールディング、溶解度および安定性に対して著しい効果を有し得るが、ほとんどの酵素は、最適な酵素活性にグリコシル化を必要としないと思われる。いくつかのヒアルロニダーゼについては、N結合型グリコシル化の除去が、ヒアルロニダーゼ活性のほぼ完全な不活性化をもたらし得る。したがって、このようなヒアルロニダーゼについては、活性酵素を生成するのに、N結合型グリカンの存在が重大である。
N結合型オリゴ糖は、いくつかの主要な種類(オリゴマンノース、複合体、ハイブリッド、硫酸化)に分類され、そのすべてが、Asn−Xaa−Thr/Ser配列(式中、XaaはProではない)内に含まれるAsn残基のアミド窒素を介して結合している(Man)3−GlcNAc−GlcNAc−コアを有する。Asn−Xaa−Cys部位でのグリコシル化は、血液凝固タンパク質Cについて報告されている。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素は、Nグリコシド結合およびOグリコシド結合の両方を含有し得る。例えば、PH20は、O結合型オリゴ糖ならびにN結合型オリゴ糖を有する。配列番号1に例示されるヒトPH20のN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に、7箇所の可能性あるN結合型グリコシル化部位がある。アミノ酸残基N82、N166およびN254は、複合型グリカンによって占められるのに対し、アミノ酸残基N368およびN393は、高マンノース型グリカンによって占められる。アミノ酸残基N235は、およそ80%の高マンノース型グリカンによって占められ、20%の複合型グリカンによって占められる。上記のように、N490のN結合型グリコシル化は、ヒアルロニダーゼ活性にとって必要ではない。
いくつかの例では、提供される組成物、製剤、組合せおよび/または方法において使用されるヒアルロナン分解酵素は、グリコシル化部位のうち1つまたはすべてでグリコシル化されている。例えば、ヒトPH20またはその可溶性形態については、配列番号1のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393に対応するN−グリコシル化部位のうち2、3、4、5または6つがグリコシル化されている。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素は、1つまたは複数の天然グリコシル化部位でグリコシル化されている。他の例では、ヒアルロナン分解酵素は、1つまたは複数のさらなる部位でのポリペプチドのグリコシル化を付与するよう、1つまたは複数の非天然グリコシル化部位で修飾されている。このような例では、さらなる糖部分の結合によって、半減期の改善および/または活性の改善など、分子の薬物動態特性を増強できる。
他の例では、本明細書において提供される組成物、製剤、組合せおよび/または方法において使用されるヒアルロナン分解酵素は、部分的に脱グリコシル化されている(またはN−部分グリコシル化されたポリペプチド)。グリコシダーゼまたはグリコシド加水分解酵素は、グリコシド結合の加水分解を触媒して、2つの小さい糖を生成する酵素である。脊椎動物におけるN−グリカンの主要な種類として、高マンノースグリカン、ハイブリッドグリカンおよび複合グリカンが挙げられる。高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを切断するEndoF1;二分岐複合型グリカンを切断するEndoF2;二分岐およびより分岐した複合グリカンを切断するEndoF3および高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを切断するEndoHを含め、部分タンパク質脱グリコシル化のみをもたらすいくつのかのグリコシダーゼがある。可溶性PH20などの可溶性ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素の、これらのグリコシダーゼのうち1種またはすべてでの処理は、部分脱グリコシル化のみをもたらし得、したがって、ヒアルロニダーゼ活性は保持される。
部分脱グリコシル化可溶性ヒアルロニダーゼなどの部分脱グリコシル化されたヒアルロナン分解酵素は、1種または複数のグリコシダーゼ、一般に、すべてのN−グリカンを除去しないが、タンパク質を部分的にのみ脱グリコシル化するグリコシダーゼでの消化によって製造できる。例えば、PH20(例えば、rHuPH20と名づけられた組換えPH20)の、上記のグリコシダーゼのうち1種またはすべて(例えば、EndoF1、EndoF2および/またはEndoF3)での処理は、部分脱グリコシル化をもたらす。これらの部分脱グリコシル化PH20ポリペプチドは、完全グリコシル化ポリペプチドに匹敵するヒアルロニダーゼ酵素活性を示し得る。対照的に、PH20の、PNGaseF、すべてのN−グリカンを切断するグリコシダーゼでの処理は、すべてのN−グリカンの完全な除去をもたらし、それによって、PH20を酵素的に不活性にする。したがって、すべてのN結合型グリコシル化部位(例えば、配列番号1に例示された、ヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393のものなど)が、グリコシル化され得るが、1種または複数のグリコシダーゼでの処理は、1種または複数のグリコシダーゼで消化されていないヒアルロニダーゼと比較して、グリコシル化の程度を低減させ得る。
部分脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドを含めた部分脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドのグリコシル化のレベルの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を有し得る。一例では、配列番号1のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393に対応するN−グリコシル化部位のうち1、2、3、4、5または6つが、部分脱グリコシル化されており、その結果、それらはもはや、高マンノースまたは複合型グリカンを含有せず、むしろ、少なくとも1つのN−アセチルグルコサミン部分を含有する。いくつかの例では、配列番号93のアミノ酸N82、N166およびN254に対応するN−グリコシル化部位のうち1、2または3つが、脱グリコシル化されており、すなわち、それらは、糖部分を含有しない。他の例では、配列番号1のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393に対応するN−グリコシル化部位のうち3、4、5または6つがグリコシル化されている。グリコシル化されたアミノ酸残基は、N−アセチルグルコサミン部分を最小にしか含有しない。通常、部分脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドを含めた部分脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドによって示されるヒアルロニダーゼ活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上であるヒアルロニダーゼ活性を示す。
6.修飾されたヒアルロナン分解酵素
一例では、提供された組成物および組合せは、ヒアルロナン分解酵素の半減期を増大するよう、例えば、対象における長期治療/持続治療効果を促進するよう修飾されている、ヒアルロナン分解酵素、特に、可溶性ヒアルロニダーゼを含有する。例示的修飾として、それだけには限らないが、直接またはリンカーを介して間接的に、例えば、共有結合によって、または他の安定な連結によって、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミンもしくはシアリル部分などのポリマー、または天然ポリマーもしくは糖ポリマーなどの他のこのようなポリマーを結合することが挙げられる。他の修飾として、ヒト血清アルブミン(HAS)または免疫グロブリンFcとの連結などによる融合タンパク質の作製が挙げられる。
例えば、ヒアルロナン分解酵素は、1種または複数のポリマー分子(ポリマー)とのコンジュゲーションによって修飾され得る。ポリエチレングリコール(ペグ化部分(PEG))などのポリマー分子の共有結合または他の安定な結合(コンジュゲーション)は、得られるヒアルロナン分解酵素−ポリマー組成物に有益な特性を与える。このような特性として、生体適合性の改善、血液、細胞における、および/または、対象内の他の組織におけるタンパク質(および酵素活性)半減期の延長、プロテアーゼおよび加水分解からのタンパク質の有効な遮蔽ならびに、体内分布の改善、薬物動態および/または薬動力学の増強および水溶解度の増大が挙げられる。
ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素にコンジュゲートされ得る例示的ポリマーとして、天然および合成ホモポリマー、例えば、ポリオール(すなわち、ポリ−OH)、ポリアミン(すなわち、ポリ−NH)およびポリカルボン酸(すなわち、ポリ−COOH)ならびにさらなるヘテロポリマー、すなわち、1つまたは複数の種々のカップリング基、例えば、ヒドロキシル基およびアミン基を含有するポリマーが挙げられる。適したポリマー分子の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)およびポリプロピレングリコールを含めたポリアルキレングリコール(PAG)などのポリアルキレンオキシド(PAO)、PEG−グリシジルエーテル(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)分岐ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリ−D,L−アミノ酸、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、カルボキシメチル−デキストランを含めたデキストラン、ヘパリン、相同アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含めたセルロース、キトサンの加水分解物、ヒドロキシエチル−デンプンおよびヒドロキシプロピル−デンプンなどのデンプン、グリコーゲン、アガロースおよびそれらの誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラゲニン、ペクチン、アルギン酸加水分解物およびバイオポリマーの中から選択されるポリマー分子が挙げられる。
通常、これらのポリマーは、ポリエチレンオキシド、例えば、PEG、通常、mPEGなどのポリアルキレンオキシド(PAO)であり、これらはデキストランおよびプルランなどの多糖と比較して、架橋できる反応性基が少ない。通常、ポリマーは、比較的簡単な化学を使用して、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素に(例えば、タンパク質の表面上の結合基に)共有結合によってコンジュゲートされ得る(m)ポリエチレングリコール(mPEG)などの非毒性ポリマー分子である。
ポリエチレングリコール(PEG)は、PEGは、生体適合性の、非毒性の、非免疫原性の、水溶性ポリマーであるので、主に、生体材料、バイオテクノロジーおよび医薬において広く使用されている(Zhao and Harris, ACS Symposium Series 680: 458-72, 1997)。薬物デリバリーの領域では、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解および腎臓クリアランスを低下させるための、また溶解度を増強するためのタンパク質への共有結合(すなわち、「ペグ化」)において広く使用されている(Zalipsky, Adv. Drug Del. Rev. 16:157-82, 1995)。同様に、PEGは、溶解度を増強し、毒性を低減し、体内分布を変更するために、低分子量の、比較的疎水性の薬物に結合されている。通常、ペグ化された薬物は、溶液として注入される。
ヒアルロニダーゼを含めたヒアルロナン分解酵素への結合に適したポリマー分子として、それだけには限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)およびメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PEG−グリシジルエーテル(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)、分岐PEGおよびポリエチレンオキシド(PEO)などのPEG誘導体が挙げられる(例えば、Roberts et al., Advanced Drug Delivery Review 2002、54: 459-476; Harris and Zalipsky, S (eds.) 「Poly(ethylene glycol), Chemistry and Biological Applications」 ACS Symposium Series 680, 1997; Mehvar et al., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3(1):125-136, 2000; Harris, Nature Reviews 2:215 et seq. (2003);およびTsubery, J Biol. Chem 279(37):38118-24, 2004参照のこと)。
ペグ化のための多数の試薬が、当技術分野では記載されている。このような試薬として、それだけには限らないが、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG−N−ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルα−メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3−ヒドロキシブタン酸スクシンイミジルエステル、ホモ二官能性PEG−スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二官能性PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二官能性PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p−ニトロフェニル−カルボネートPEG、mPEG−ベンゾトリアゾールカルボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブトリアルデヒド(butryaldehyde)、分岐mPEGブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG「リンカーレス」マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc−PEG−NHS、Boc−PEG−NHS、ビニルスルホンPEG−NHS、アクリレートPEG−NHS、フルオレセインPEG−NHSおよびビオチンPEG−NHSが挙げられる(例えば、Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995; Veronese et al., J. Bioactive Compatible Polymers 12:197-207,1997;U.S.5,672,662;U.S.5,932,462;U.S.6,495,659;U.S.6,737,505;U.S.4,002,531;U.S.4,179,337;U.S.5,122,614;U.S.5,324,844;U.S.5,446,090;U.S.5,612,460;U.S.5,643,575;U.S.5,766,581;U.S.5,795,569;U.S.5,808,096;U.S.5,900,461;U.S.5,919,455;U.S.5,985,263;U.S.5,990,237;U.S.6,113,906;U.S.6,214,966;U.S.6,258,351;U.S.6,340,742;U.S.6,413,507;U.S.6,420,339;U.S.6,437,025;U.S.6,448,369;U.S.6,461,802;U.S.6,828,401;U.S.6,858,736;U.S.2001/0021763;U.S.2001/0044526;U.S.2001/0046481;U.S.2002/0052430;U.S.2002/0072573;U.S.2002/0156047;U.S.2003/0114647;U.S.2003/0143596;U.S.2003/0158333;U.S.2003/0220447;U.S.2004/0013637;US2004/0235734;U.S.2005/0114037;U.S.2005/0171328;U.S.2005/0209416;EP1064951;EP0822199;WO01076640;WO0002017;WO0249673;WO9428024;WO0187925;およびWO0500360参照のこと)。
ポリマー分子は、通常、約3kDa〜約60kDaの範囲の分子量であり得る。いくつかの実施形態では、rHuPH20などのタンパク質とコンジュゲートしているポリマー分子は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60または60kDaを超える分子量を有する。一例では、ポリエチレングリコールは、約3kD〜約50kD、好ましくは、約5kD〜約30kDの範囲の分子量を有する。PEGの薬物との共有結合(「ペグ化」として知られる)は、既知化学合成技術によって達成され得る。例えば、タンパク質のペグ化は、適した反応条件下で、NHS活性化PEGを、タンパク質と反応させることによって達成され得る。
PEGまたはPEG誘導体を共有結合によって結合すること(コンジュゲートすること)によってポリペプチドを修飾する(すなわち「ペグ化」)種々の方法が、当技術分野で公知である(例えば、U.S.2006/0104968;U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照のこと)。ペグ化のための技術として、それだけには限らないが、特殊化されたリンカーおよびカップリング化学(例えば、Roberts et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-476, 2002参照のこと)、単一コンジュゲーション部位との複数のPEG部分の結合(分岐PEGの使用などによる;例えば,Guiotto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:177-180, 2002参照のこと)、部位指定ペグ化および/またはモノペグ化(例えば、Chapman et al., Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照のこと)および部位特異的酵素的ペグ化(例えば、Sato, Adv. Drug Deliv. Rev., 54:487-504, 2002参照のこと)が挙げられる。当技術分野で記載されている方法および技術によって、単一のタンパク質分子と結合している1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10を超えるPEGまたはPEG誘導体を有するタンパク質を製造できる(例えば、U.S.2006/0104968参照のこと)。
修飾ヒアルロナン分解酵素、特に、可溶性ヒト組換えヒアルロニダーゼ(例えば、rHuPH20)を、種々のPEG試薬を使用して調製できる。例示的PEG試薬として、例えば、mPEG−SBA(30kD)、mPEG−SMB(30kD)およびmPEG2−NHSをベースとする分岐版(40kD)、mPEG2−NHS(60kD)を使用することが挙げられる。PH20、例えば、rHuPH20などのヒアルロナン分解酵素のペグ化版は、以下の試薬のいずれか:mPEG2−NHS−40K分岐、mPEG−NHS−10K分岐、mPEG−NHS−20K分岐、mPEG−NHS−40K分岐、mPEG2−NHS−60K分岐;mPEG−SBA−5K;mPEG−SBA−20K;mPEG−SBA−30K;mPEG−SMB−20K;mPEG−SMB−30K;mPEG−ブチルアルデヒド(butyrldehyde)−;mPEG−SPA−20K;mPEG−SPA−30K;およびPEG−NHS−5K−ビオチンを使用して、NHS化学ならびにカルボネートおよびアルデヒドを使用して製造できる。Dowpharmaのp−ニトロフェニル−カルボネートPEG(30kDa)を用いて、またプロピオンアルデヒドPEG(30kDa)を用いてペグ化されたヒアルロニダーゼを含め、ペグ化ヒアルロナン分解酵素はまた、Dow Chemical Corporationの一部門であるDowpharmaから入手できるPEG試薬を使用して調製できる。
ペグ化のための多数の反応が記載されているが、最も一般的に適用可能であるものは、方向性を付与し、穏やかな反応条件を利用し、毒性触媒または副生成物(biproduct)を除去するための大規模な下流処理を必要としない。例えば、モノメトキシPEG(mPEG)は、1個の反応性末端ヒドロキシルしか有さず、したがって、その使用によって、得られるPEG−タンパク質生成物混合物の不均一性の一部が制限される。通常、末端メトキシ基の反対側のポリマーの末端のヒドロキシル基の活性化が、誘導体化PEGを求核攻撃に対してより感受性にすることを目的とした有効なタンパク質ペグ化を達成するために必要である。攻撃性求核試薬は、通常、リシル残基のε−アミノ基であるが、局所条件が好都合である場合には、他のアミンも反応し得る(例えば、N末端α−アミンまたはヒスチジンの環アミン)。単一のリシンまたはシステインを含有するタンパク質では、より指向性のある結合が起こり得る。後者の残基は、チオール特異的修飾のためにPEG−マレイミドによって標的とされ得る。あるいは、PEGヒドラジドを、過ヨウ素酸酸化されたヒアルロナン分解酵素と反応させ、NaCNBHの存在下で還元することができる。より詳しくは、ペグ化CMP糖を、適当なグリコシル−トランスフェラーゼの存在下でヒアルロナン分解酵素と反応させることができる。1つの技術として、いくつかのポリマー分子が、問題のポリペプチドとカップリングされる「ペグ化」技術がある。この技術を使用する場合には、免疫系が、抗体の形成に関与するポリペプチドの表面上のエピトープを認識することが困難になり、それによって、免疫応答が低減する。特定の生理学的効果を与えるようヒト身体の循環系に直接導入されるポリペプチド(すなわち、医薬品)については、通常の可能性ある免疫応答は、IgGおよび/またはIgM応答であるが、呼吸器系によって吸入されるポリペプチド(すなわち、工業用ポリペプチド)は、IgE応答(すなわち、アレルギー反応)を潜在的に引き起こし得る。免疫応答の低減を説明する理論の1つは、ポリマー分子(単数または複数)が、抗体形成につながる免疫応答に関与するポリペプチドの表面上にあるエピトープ(単数または複数)を遮蔽するということである。他の理論または少なくとも部分的な要因は、コンジュゲートが重いほど、より低減された免疫応答が得られるということである。
直鎖または分岐PEGのいずれかを含有するスクシンイミジルPEGを、ヒアルロナン分解酵素にコンジュゲートできる。例えば、mPEG−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)、mPEG−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)および(「分岐」PEGを結合するため)mPEG2−N−ヒドロキシルスクシンイミドを含めたスクシンイミジルモノPEG(mPEG)試薬を用いて、PH20、例えば、rHuPH20などのヒアルロナン分解酵素がコンジュゲートされ得る。これらのペグ化スクシンイミジルエステルは、PEG基と活性化されたクロスリンカーの間の種々の長さの炭素骨格と、単一または分岐PEG基のいずれかとを含有する。これらの相違は、例えば、異なる反応速度論を提供するため、およびコンジュゲーションプロセスの際に酵素へのPEG結合に利用可能な可能性ある部位の制限を提供するために使用できる。
一例では、ペグ化は、mPEG−SBA、例えば、mPEG−SBA−30K(約30KDaの分子量を有する)またはPEGブタン酸誘導体の他のスクシンイミジルエステルの、可溶性ヒアルロニダーゼへのコンジュゲーションを含む。mPEG−SBA−30KなどのPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステルは、タンパク質のアミノ基と容易にカップリングする。例えば、以下のスキーム1に示されるように、mPEG−SBA−30KおよびrHuPH20(およそ60KDaの大きさである)の共有結合コンジュゲーションによって、rHuPH20およびmPEG間の安定なアミド結合が提供される。
Figure 2020172494
通常、mPEG−SBA−30Kまたは他のPEGが、ヒアルロナン分解酵素、いくつかの例では、ヒアルロニダーゼに、適したバッファー、例えば、pH6.8の130mM NaCl/10mM HEPES中、10:1のPEG:ポリペプチドモル比で付加され、その後、滅菌、例えば、滅菌濾過し、例えば、低温室中、4℃で一晩撹拌しながらコンジュゲーションを続ける。一例では、コンジュゲートされたPEG−ヒアルロナン分解酵素を濃縮し、バッファー交換する。
mPEG−SBA−30KなどのPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステルをカップリングする他の方法は、当技術分野では公知である(例えば、U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照のこと)。例えば、ヒアルロナン分解酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)などのポリペプチドを、4℃で1時間のホウ酸バッファー(0.1M、pH8.0)中での反応によってNHS活性化PEG誘導体へカップリングできる。得られたペグ化タンパク質は、限外濾過によって精製できる。あるいは、ウシアルカリ性ホスファターゼのペグ化は、0.2Mリン酸ナトリウムおよび0.5M NaCl(pH7.5)を含有するバッファー中、4℃で30分間、ホスファターゼを、mPEG−SBAと混合することによって達成できる。未反応のPEGは、限外濾過によって除去できる。他の方法は、脱イオン水中でポリペプチドをmPEG−SBAと反応させ、それにトリエチルアミンが付加されてpHを7.2〜9に高める。得られた混合物を、室温で数時間撹拌してペグ化を完了する。
PEGを使用して、酵素あたり3から6個の間または約3から6個のPEG分子を有する、PH20、例えば、rHuPH20などのヒアルロナン分解酵素を作製できる。このようなペグ化rHuPH20組成物は、容易に精製して、およそ25,000または30,000ユニット/mgタンパク質ヒアルロニダーゼ活性の比活性を有し、非ペグ化酵素(5%未満の非ペグ化)を実質的に含まない組成物を得ることができる。
7.ヒアルロナン分解酵素の核酸およびコードされるポリペプチドを製造する方法
本明細書に示される可溶性ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素のポリペプチドは、タンパク質精製および組換えタンパク質発現のための当技術分野で周知の方法によって得ることができる。所望の遺伝子をコードする核酸の同定のための当業者に公知の任意の方法を使用できる。当技術分野で利用可能な任意の方法を使用して、細胞または組織供給源などから、ヒアルロニダーゼをコードする、全長(すなわち、全コーディング領域を包含する)cDNAまたはゲノムDNAクローンを得ることができる。修飾された、または変異体の可溶性ヒアルロニダーゼは、位置指定突然変異誘発などによって、野生型ポリペプチドから操作することができる。
ポリペプチドは、核酸分子をクローニングおよび単離するための当技術分野で公知の任意の利用可能な方法を使用してクローニングまたは単離できる。このような方法として、核酸のPCR増幅ならびに核酸ハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体ベースのスクリーニングおよび活性ベースのスクリーニングを含めたライブラリーのスクリーニングが挙げられる。
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を含めた核酸を増幅する方法を使用して、所望のポリペプチドをコードする核酸分子を単離できる。核酸を含有する物質を、所望のポリペプチドをコードする核酸分子が単離され得る出発物質として使用してもよい。増幅方法では、例えば、健常および/または病気の対象から得たサンプル、DNAおよびmRNA調製物、細胞抽出物、組織抽出物、流体サンプル(例えば、血液、血清、唾液)を使用できる。核酸ライブラリーはまた、出発物質の供給源としても使用できる。プライマーは、所望のポリペプチドを増幅するよう設計できる。例えば、プライマーは、所望のポリペプチドが生成する発現される配列に基づいて設計できる。プライマーは、ポリペプチドアミノ酸配列の逆翻訳に基づいて設計できる。増幅によって生じた核酸分子を配列決定し、所望のポリペプチドをコードすると確認することができる。
合成遺伝子をベクター、例えば、タンパク質発現ベクターまたはコアタンパク質コーディングDNA配列の増幅のために設計されたベクターにクローニングすることを目的として、ポリペプチドをコードする核酸分子に、制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するリンカー配列を含めたさらなるヌクレオチド配列を結合してもよい。さらに、機能的DNAエレメントを規定するさらなるヌクレオチド配列を、ポリペプチドをコードする核酸分子と作動可能に連結してもよい。このような配列の例として、それだけには限らないが、細胞内タンパク質発現を促進するよう設計されたプロモーター配列、およびタンパク質分泌を促進するよう設計された分泌配列、例えば、異種シグナル配列が挙げられる。このような配列は、当業者には公知である。タンパク質結合領域を規定する塩基の配列などのさらなるヌクレオチド残基配列も、酵素をコードする核酸分子に連結してもよい。このような領域として、それだけには限らないが、酵素の特定の標的細胞への取り込みを促進する、あるいは、そうでなければ、合成遺伝子の生成物の薬物動態を変更するタンパク質を促進またはコードする残基の配列が挙げられる。例えば、酵素をPEG部分に連結してもよい。
例えば、ポリペプチドの検出またはアフィニティー精製において役立つよう、さらに、タグまたは他の部分を加えてもよい。例えば、エピトープタグまたは他の検出可能なマーカーを規定する塩基の配列などのさらなるヌクレオチド残基配列を、酵素をコードする核酸分子に連結できる。このような配列の例示的なものとして、Hisタグ(例えば、6xHis、HHHHHH;配列番号54)またはFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号55)をコードする核酸配列が挙げられる。
次いで、同定および単離された核酸を、適当なクローニングベクターに挿入できる。当技術分野で公知の多数のベクター−宿主系を使用できる。可能性のあるベクターとして、それだけには限らないが、プラスミドまたは修飾されたウイルスが挙げられるが、ベクター系は、使用される宿主細胞と適合しなければならない。このようなベクターとして、それだけには限らないが、λ誘導体などのバクテリオファージまたはpCMV4、pBR322もしくはpUCプラスミド誘導体などのプラスミドまたはBluescriptベクター(Stratagene、La Jolla、CA)が挙げられる。他の発現ベクターとして、HZ24発現ベクターが挙げられる。クローニングベクターへの挿入は、例えば、DNA断片を、相補的な付着末端を有するクローニングベクター中にライゲーションすることによって達成できる。挿入は、TOPOクローニングベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して達成できる。DNAを断片化するために使用された相補的制限部位が、クローニングベクター中に存在しない場合には、DNA分子の末端を酵素的に修飾できる。あるいは、DNA末端にヌクレオチド配列(リンカー)をライゲーションすることによって所望の任意の部位を製造してもよく;これらのライゲーションされるリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特定の化学合成されたオリゴヌクレオチドを含有し得る。代替法では、切断されたベクターおよびタンパク質遺伝子を、ホモポリマーテーリングによって修飾できる。組換え分子は、例えば、形質転換、トランスフェクション、注射(infection)、エレクトロポレーションおよびソノポレーションによって宿主細胞に導入でき、その結果、遺伝子配列の多数のコピーが作製される。
特定の実施形態では、単離されたタンパク質遺伝子、cDNAまたは合成DNA配列を組み込む、宿主細胞の組換えDNA分子を用いる形質転換によって、遺伝子のマルチプルコピーの作製が可能となる。したがって、形質転換体を増殖させること、形質転換体から組換えDNA分子を単離することおよび必要に応じて、単離された組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することとによって遺伝子を多量に得ることができる。
a.ベクターおよび細胞
本明細書に記載されるいずれかなどの1種または複数の所望のタンパク質の組換え発現のために、タンパク質をコードするヌクレオチド配列のすべてまたは一部を含有する核酸を、適当な発現ベクター、すなわち、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳にとって必要なエレメントを含有するベクターに挿入できる。必要な転写および翻訳シグナルはまた、酵素遺伝子の天然プロモーターおよび/またはそのそれぞれの両端に位置する領域によっても供給され得る。
また、酵素をコードする核酸を含有するベクターも提供される。ベクターを含有する細胞も提供される。細胞は、真核細胞および原核細胞を含み、ベクターは、それにおいて使用するための任意の適したものである。
ベクターを含有する、内皮細胞を含めた原核細胞および真核細胞が提供される。このような細胞として、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、古細菌、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞が挙げられる。細胞は、コードされるタンパク質が細胞によって発現される条件下で上記の細胞を増殖させることおよび発現されたタンパク質を回収することによってそのタンパク質を産生するよう使用される。本明細書における目的上、例えば、酵素は、培地中に分泌され得る。
天然または異種シグナル配列と結合している、ヒアルロナン分解酵素ポリペプチドをコードするヌクレオチド、いくつかの例では、可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドの配列、ならびにそのマルチプルコピーを含有するベクターが提供される。ベクターは、細胞における酵素タンパク質の発現のために、または酵素タンパク質が分泌タンパク質として発現されるよう選択され得る。
タンパク質コード配列を発現するために種々の宿主−ベクター系を使用できる。これらとして、それだけには限らないが、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスおよび他のウイルス)に感染した哺乳類細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;またはバクテリオファージで形質転換された細菌、DNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAが挙げられる。ベクターの発現エレメントは、その強度および特異性が異なる。使用される宿主−ベクター系に応じて、いくつかの適した転写および翻訳エレメントのうち任意の1種を使用できる。
適当な転写/翻訳制御シグナルおよびタンパク質コード配列を含有するキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築するために、DNA断片をベクターに挿入するための当業者に公知の任意の方法を使用できる。これらの方法として、インビトロ組換えDNAおよび合成技術およびインビボ組換え(遺伝子組換え)を挙げることができる。タンパク質またはそのドメイン、誘導体、断片もしくは相同体をコードする核酸配列の発現は、組換えDNA分子(単数または複数)で形質転換された宿主において遺伝子またはその断片が発現されるよう第2の核酸配列によって調節され得る。例えば、タンパク質の発現は、当技術分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーによって制御され得る。特定の実施形態では、プロモーターは、所望のタンパク質の遺伝子にとって天然ではない。使用できるプロモーターとして、それだけには限らないが、SV40初期プロモーター(Bernoist and Chambon, Nature 290:304-310 (1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長い末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto et al. Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature 296:39-42 (1982));β−ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物の発現ベクター(Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5543)またはtacプロモーター(DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983));Scientific American 242:79-94 (1980)中の「Useful Proteins from Recombinant Bacteria」も参照のこと);ノパリンシンセターゼプロモーターを含有する植物発現ベクター(Herrera-Estrella et al., Nature 303:209-213 (1984))またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardner et al., Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))および光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 310:115-120 (1984));Gal4プロモーターなどの酵母および他の真菌に由来するプロモーターエレメント、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターならびに組織特異性を示し、トランスジェニック動物において使用されてきた以下の動物転写制御領域:膵臓腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., Cell 38:639-646 (1984);Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986);MacDonald, Hepatology 7:425-515 (1987));膵臓β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan et al., Nature 315:115-122 (1985))、リンパ球細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., Cell, 38:647-658 (1984); Adams et al., Nature 318:533-538 (1985);Alexander et al., Mol. Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ系および肥満細胞において活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al., Cell 45:485-495 (1986))、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓において活性であるα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648 (1985); Hammer et al., Science 235:53-58 1987))、肝臓において活性であるα−1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄系細胞において活性であるβグロビン遺伝子制御領域(Magram et al., Nature 315: 338-340 (1985); Kollias et al., Cell 46:89-94 (1986))、脳の乏突起神経膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク遺伝子制御領域(Readhead et al., Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Shani, Nature 314:283-286 (1985))および視床下部の性腺刺激ホルモン分泌細胞において活性であるゴナドトロフィン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., Science 234:1372-1378 (1986))が挙げられる。
特定の実施形態では、所望のタンパク質またはそのドメイン、断片、誘導体または相同体をコードする核酸、1つまたは複数の複製起点、および所望により、1種または複数の選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)と作動可能に連結しているプロモーターを含有するベクターが使用される。大腸菌(E.coli)細胞の形質転換のための例示的プラスミドベクターとして、例えば、pQE発現ベクター(Qiagen、Valencia、CAから入手可能;その系を記載しているQiagenによって公開された文献も参照のこと)が挙げられる。pQEベクターは、ファージT5プロモーター(大腸菌RNAポリメラーゼによって認識される)および厳重に調節された、大腸菌における組換えタンパク質の高レベル発現を提供するための二重lacオペレーター抑制モジュール、効率的な翻訳のための合成リボソーム結合部位(RBS II)、6XHisタグコード配列、tおよびT1転写ターミネーター、ColE1複製起点およびアンピシリン耐性を付与するためのβ−ラクタマーゼ遺伝子を有する。pQEベクターは、6xHisタグを組換えタンパク質のN−またはC末端のいずれかに配置することができる。このようなプラスミドとして、3種のリーディングフレームすべての多重クローニング部位を提供し、N末端に6xHisタグのついたタンパク質の発現を提供する、pQE32、pQE30およびpQE31が挙げられる。大腸菌細胞の形質転換のための他の例示的プラスミドベクターとして、例えば、pET発現ベクター(米国特許第4,952,496号参照のこと;Novagen、Madison、WIから入手可能;この系を記載するNovagenによって公開された文献も参照のこと)が挙げられる。このようなプラスミドとして、T7lacプロモーター、T7ターミネーター、誘導可能な大腸菌lacオペレーターおよびlacレプレッサー遺伝子を含有するpET 11a;T7プロモーター、T7ターミネーターおよび大腸菌ompT分泌シグナルを含有するpET 12a−c;ならびにHisカラムを用いる精製において使用するためのHis−Tag(商標)リーダー配列およびカラムを通した精製後の切断を可能にするトロンビン切断部位、T7−lacプロモーター領域およびT7ターミネーターを含有するpET 15bおよびpET19b(Novagen、Madison、WI)が挙げられる。
哺乳類細胞発現のためのベクターの例示的なものとして、HZ24発現ベクターがある。HZ24発現ベクターは、pCIベクター骨格(Promega)から導いた。それは、β−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)、F1複製起点、サイトメガロウイルス最初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)をコードするDNAを含有する。発現ベクターはまた、ECMVウイルス(Clontech)由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子も有する。
b.発現
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドを含めたヒアルロナン分解酵素ポリペプチドは、インビボおよびインビトロ法を含めた当業者に公知の任意の方法によって製造できる。所望のタンパク質は、例えば、投与および治療に必要とされるなど、必要である量および形態のタンパク質を産生するのに適した任意の生物において発現させることができる。発現宿主として、大腸菌、酵母、植物、昆虫細胞、ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含めた哺乳類細胞などの原核生物および真核生物が挙げられる。発現宿主は、そのタンパク質製造レベルならびに発現されるタンパク質に存在する翻訳後修飾の種類において異なり得る。発現宿主の選択は、これらならびに調節性および安全性の検討事項、製造コストおよび精製に必要なものおよび方法などの他の因子に基づいて行うことができる。
多数の発現ベクターが利用可能であり、当業者に公知であり、タンパク質の発現のために使用できる。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって影響を受ける。一般に、発現ベクターは、転写プロモーター、および所望により、エンハンサー、翻訳シグナルならびに転写および翻訳終結シグナルを含み得る。安定な形質転換に使用される発現ベクターは、通常、形質転換細胞の選択および維持を可能にする選択マーカーを有する。いくつかの場合には、複製起点をベクターのコピー数を増幅するために使用できる。
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのヒアルロナン分解酵素ポリペプチドを、タンパク質融合物として利用または発現させることができる。例えば、酵素にさらなる機能性を付加するために酵素融合物を作製できる。酵素融合タンパク質の例として、それだけには限らないが、局在のためなどのシグナル配列、タグ、例えば、hisタグもしくはmycタグ、または精製のためのタグ、例えば、GST融合物、およびタンパク質分泌および/または膜結合に向かわせる配列の融合物が挙げられる。
i.原核細胞
原核生物、特に、大腸菌は、多量のタンパク質を産生する系を提供する。大腸菌の形質転換は、当業者に周知の簡単で迅速な技術である。大腸菌の発現ベクターは、誘導プロモーターを含有し得、このようなプロモーターは、高レベルのタンパク質発現を誘導するのに、また宿主細胞にとって幾分か毒性を示すタンパク質を発現するのに有用である。誘導プロモーターの例として、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーターおよび温度調節λPLプロモーターが挙げられる。
本明細書において提供されるいずれかのものなどのタンパク質は、大腸菌の細胞質環境中に発現させることができる。細胞質は、還元性環境であり、一部の分子にとっては、これが、不溶性封入体の形成をもたらし得る。ジチオトレイトールおよびβ−メルカプトエタノールなどの還元剤およびグアニジン−HClおよび尿素などの変性剤を使用して、このようなタンパク質を再可溶化できる。代替アプローチは、酸化環境およびシャペロニン様およびジスルフィドイソメラーゼを提供し、可溶性タンパク質の産生をもたらし得る細菌の細胞膜周辺腔におけるタンパク質の発現である。通常、リーダー配列が、発現されるタンパク質に融合され、これがタンパク質を周辺質に向ける。次いで、リーダーは、周辺質の内側のシグナルペプチダーゼによって除去される。細胞膜周辺にターゲッティングするリーダー配列の例として、ペクチン酸リアーゼ遺伝子由来のpelBリーダーおよびアルカリホスファターゼ遺伝子由来のリーダーが挙げられる。いくつかの場合には、細胞膜周辺の発現によって、発現されたタンパク質の培養培地中への漏出が可能となる。タンパク質の分泌によって、培養上清からの迅速で、簡単な精製が可能となる。分泌されないタンパク質は、浸透圧溶解によって周辺質から得ることができる。いくつかの場合には、細胞質発現と同様に、タンパク質が不溶性となる場合があり、変性剤および還元剤を使用して可溶化および再フォールディングを促進できる。誘導および増殖の温度も、発現レベルおよび溶解度に影響を及ぼす場合があり、一般に、25℃から37℃の間の温度が使用される。通常、細菌は、無グリコシル化された(aglycosylated)タンパク質を産生する。したがって、タンパク質が機能のためにグリコシル化を必要とする場合、宿主細胞から精製した後にグリコシル化をインビトロで加えることができる。
ii.酵母細胞
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母は、本明細書に記載されるいずれかのものなどのタンパク質の製造に使用できる周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソーム複製ベクターを用いてまたは相同組換えによる安定な染色体組込みによって形質転換できる。通常、誘導プロモーターを使用して、遺伝子発現を調節する。このようなプロモーターの例として、GAL1、GAL7およびGAL5ならびにCUP1、AOX1などのメタロチオネインプロモーターまたは他のピチア(Pichia)または他の酵母プロモーターが挙げられる。発現ベクターは、形質転換DNAの選択および維持のために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3などの選択マーカーを含むことが多い。酵母において発現されるタンパク質は、可溶性であることが多い。Bipなどのシャペロニンおよびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの同時発現によって、発現レベルおよび溶解度を改善できる。さらに、酵母において発現されるタンパク質は、サッカロミセス・セレビシエ由来の酵母接合型α因子分泌シグナルなどの分泌シグナルペプチド融合物およびAga2p接合接着受容体またはアークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)グルコアミラーゼなどの酵母細胞表面タンパク質との融合物を使用して分泌に向けることができる。Kex−2プロテアーゼなどのプロテアーゼ切断部位を操作して、それらが分泌経路から出る時に発現されたポリペプチドから融合している配列を除去できる。酵母はまた、Asn−X−Ser/Thrモチーフでグリコシル化できる。
iii.昆虫細胞
特に、バキュロウイルス発現を使用する昆虫細胞は、ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのポリペプチドを発現するのに有用である。昆虫細胞は、高レベルのタンパク質を発現し、高等真核生物によって使用される翻訳後修飾のほとんどが可能である。バキュロウイルスは、安全性を改善し、真核細胞の発現の調節上の懸念を低減する限定的宿主域を有する。通常の発現ベクターは、バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターなどの高レベル発現のためのプロモーターを使用する。よく使用されるバキュロウイルス系として、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)およびカイコ(Bombyx mori)核多角体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルス、ならびにスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、シューダレチア・ウニプンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびダナウス・プレクシップス(Danaus plexippus)(DpN1)由来のSf9などの昆虫細胞株が挙げられる。高レベル発現のためには、発現される分子のヌクレオチド配列を、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合する。哺乳類分泌シグナルは、昆虫細胞において正確にプロセシングされ、これを使用して発現されるタンパク質を培養培地中に分泌できる。さらに、細胞株シューダレチア・ウニプンクタ(A7S)およびダナウス・プレクシップス(DpN1)は、哺乳類細胞系と同様のグリコシル化パターンを有するタンパク質を産生する。
昆虫細胞における代替発現系は、安定に形質転換された細胞の使用である。Schneider2(S2)およびKc細胞(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))およびC7細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))などの細胞株を、発現のために使用できる。ドロソフィラ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターを使用して、カドミウムまたは銅を用いる重金属誘導の存在下で高レベルの発現を誘導できる。発現ベクターは、通常、ネオマイシンおよびハイグロマイシンなどの選択マーカーの使用によって維持される。
iv.哺乳類細胞
哺乳類発現系を使用して、可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのヒアルロナン分解酵素ポリペプチドをはじめとするタンパク質を発現できる。発現コンストラクトを、アデノウイルスなどのウイルス感染によって、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランなどの直接DNA導入によって、およびエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの物理的手段によって哺乳類細胞に導入することができる。哺乳類細胞のための発現ベクターは、通常、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(Kozakコンセンサス配列)およびポリアデニル化エレメントを含む。また、IRESエレメントを加えて、選択マーカーなどの他の遺伝子を用いてバイシストロニック発現を可能にすることができる。このようなベクターは、高レベル発現のための転写プロモーター−エンハンサー、例えば、SV40プロモーター−エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)の長い末端反復配列を含むことが多い。これらのプロモーター−エンハンサーは、多数の細胞種において活性である。組織および細胞種プロモーターおよびエンハンサー領域もまた、発現のために使用できる。例示的プロモーター/エンハンサー領域として、それだけには限らないが、エラスターゼI、インスリン、免疫グロブリン、マウス乳房腫瘍ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2および性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御などの遺伝子に由来するものが挙げられる。選択マーカーを使用して、発現コンストラクトを含む細胞を選択および維持することができる。選択マーカー遺伝子の例として、それだけには限らないが、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼが挙げられる。例えば、発現は、DHFR遺伝子を発現する細胞のみを選択するようメトトレキサートの存在下で実施できる。TCR−ζおよびFcεRI−γなどの細胞表面シグナル伝達分子との融合物は、活性な状態のタンパク質の発現を細胞表面に向けることができる。
マウス、ラット、ヒト、サル、ニワトリおよびハムスター細胞を含めた多数の細胞株が哺乳類発現に利用可能である。例示的細胞株として、それだけには限らないが、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌性)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8およびHKB細胞が挙げられる。細胞培養培地からの分泌されたタンパク質の精製を容易にする血清不含培地に適応している細胞株も利用可能である。例として、CHO−S細胞(Invitrogen、Carlsbad、CA、カタログ番号11619−012)および血清不含EBNA−1細胞株(Pham et al., (2003) Biotechnol. Bioeng. 84:332-42.)が挙げられる。最大発現のために最適化された特定の培地で増殖するよう適応している細胞株も利用可能である。例えば、DG44 CHO細胞は、化学的に定義された動物産物を含まない培地で懸濁培養において増殖するよう適応している。
v.植物
トランスジェニック植物細胞および植物を使用して、本明細書に記載されるいずれかのものなどのタンパク質を発現できる。発現コンストラクトは、通常、微粒子銃およびプロトプラストへのPEG媒介性導入などの直接DNA導入を使用して、またアグロバクテリウム媒介性形質転換を用いて植物に導入される。発現ベクターは、プロモーターおよびエンハンサー配列、転写終結エレメントおよび翻訳制御エレメントを含み得る。発現ベクターおよび形質転換技術は、通常、シロイヌナズナおよびタバコなどの双子葉植物宿主と、トウモロコシおよびイネなどの単子葉植物宿主の間に分けられる。発現のために使用される植物プロモーターの例として、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリンシンセターゼプロモーター、リボースビスホスフェートカルボキシラーゼプロモーターおよびユビキチンおよびUBQ3プロモーターが挙げられる。形質転換細胞の選択および維持を容易にするために、ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼなどの選択マーカーが使用されることが多い。形質転換された植物細胞は、細胞、凝集塊(カルス組織)として培養物で維持でき、植物全体に再生できる。トランスジェニック植物細胞はまた、ヒアルロニダーゼポリペプチドを産生するよう操作された藻類を含み得る。植物は、哺乳類細胞とは異なるグリコシル化パターンを有するので、これは、これらの宿主において産生されるタンパク質の選択に影響を及ぼし得る。
c.精製技術
宿主細胞からヒアルロナン分解酵素ポリペプチド(例えば、可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチド)または他のタンパク質を含めたポリペプチドを精製する方法は、選択された宿主細胞および発現系に応じて変わる。分泌される分子については、タンパク質は、通常、細胞を回収した後に培養培地から精製される。細胞内発現については、細胞を溶解し、抽出物からタンパク質を精製することができる。トランスジェニック植物および動物などのトランスジェニック生物が発現のために使用される場合には、組織または臓器を出発物質として使用し、溶解した細胞抽出物を製造できる。さらに、トランスジェニック動物製造は、回収できるミルクまたは卵中でのポリペプチドの製造を含み得、必要に応じて、タンパク質を抽出し、当技術分野における標準方法を使用してさらに精製できる。
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのタンパク質は、それだけには限らないが、SDS−PAGE、サイズ分画およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿および陰イオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィーを含めた当技術分野で公知の標準タンパク質精製技術を使用して精製できる。また、アフィニティー精製技術を利用して、調製物の効率および純度を改善できる。例えば、アフィニティー精製において、抗体、受容体およびヒアルロニダーゼ酵素と結合する他の分子を使用できる。発現コンストラクトはまた、mycエピトープ、GST融合物またはHisなどの親和性タグをタンパク質に付加するよう操作し、それぞれ、myc抗体、グルタチオン樹脂およびNi樹脂を用いてアフィニティー精製できる。純度は、ゲル電気泳動および染色および分光光度的技術を含めた当技術分野で公知の任意の方法によって評価できる。本明細書において提供されるような、精製されたrHuPH20組成物は、通常、少なくとも70,000〜100,000ユニット/mg、例えば、約120,000ユニット/mgの比活性を有する。比活性は、ポリマーなどを用いた修飾に応じて変わり得る。
D.ヒアルロナン分解酵素の組成物および徐放性製剤
ヒアルロナン分解酵素組成物を含有する組成物および徐放性または制御放出製剤が、本明細書において提供される。また、ヒアルロナン分解酵素と、5−αレダクターゼ阻害剤などの他のBPH治療薬とを含有する組成物および徐放性または制御放出製剤も本明細書において提供される。組成物および徐放性製剤中のヒアルロナン分解酵素は、安定であり、そのように製剤されていないヒアルロニダーゼの活性を保持する。徐放性製剤は、徐放性を可能にし、全身循環への接近を防ぎ、組成物の前立腺特異的局在性を増大する任意のものを含む。徐放性製剤の限定されない例として、例えば、ヒアルロナン分解酵素を含有するデポー製剤および脂質膜小胞が挙げられる。
1.ヒアルロナン分解酵素組成物
医薬上許容される組成物は、動物において、およびヒトにおいて使用するための一般に認識される薬局方に一致して用意された監督官庁または他の機関の承認を考慮して調製される。化合物は、溶液、懸濁液、散剤または徐放性製剤などの、経口、皮下、静脈内および前立腺内投与のいずれかのための任意の適した医薬品に製剤され得る。通常、化合物は、当技術分野で周知の技術および手順を使用して医薬組成物に製剤される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, 1985, 126参照のこと。製剤は、投与様式に適合しなくてはならない。
一般に、注射または注入を特徴とする、前立腺への酵素の直接導入が、本明細書において考慮されている。注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射の前の液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態としてか、またはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製できる。前立腺内投与のための調製物として、注射準備のできた滅菌溶液、皮下錠を含めた、使用の直前に溶媒と組み合わされる準備のできた凍結乾燥粉末などの滅菌乾燥可溶性製剤、注射の準備のできた滅菌懸濁液、使用の直前に媒体と組み合わされる準備のできた滅菌乾燥不溶性製剤、滅菌エマルジョン、滅菌ゲルおよび身体中でゲルを形成する滅菌溶液が挙げられる。溶液は、水性または非水性のいずれかであり得る。したがって、組成物は、凍結乾燥形態または液体形態で製剤され得る。組成物が、凍結乾燥形態で提供される場合には、それらは、適当なバッファー、例えば、滅菌生理食塩水溶液によって使用の直前に再構成され得る。
一例では、医薬品は、液体形態、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であり得る。医薬品は、液体形態で提供される場合には、使用前に治療上有効な濃度に希釈される予定の濃縮調製物として提供され得る。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアガム);非水性媒体(例えば、アーモンドオイル、油性エステルまたは精留植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの医薬上許容される添加物を用いて従来の手段によって調製できる。
他の例では、医薬品は、使用前に水または他の適した媒体で再構成するため凍結乾燥形態で用意され得る。例えば、凍結乾燥粉末は、溶液、エマルジョンおよび他の混合物として投与のために再構成され得る。それらはまた、固体またはゲルとして再構成され、製剤され得る。滅菌、凍結乾燥粉末は、バッファー溶液に活性化合物を溶解することによって調製される。バッファー溶液は、粉末または粉末から調製された再構成された溶液の、安定性を改善する賦形剤または他の薬理学的成分を含有し得る。溶液のその後の滅菌濾過と、それに続く、当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥とが、所望の製剤を提供する。手短には、凍結乾燥粉末は、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースなどのまたは他の適した薬剤などの賦形剤を、クエン酸、リン酸ナトリウムもしくはカリウムまたは当業者に公知の他のこのようなバッファーなどの適したバッファーに溶解することによって調製される。次いで、選択された化合物が、得られた混合物に付加され、溶解するまで撹拌される。得られた混合物は、滅菌濾過されるか、または微粒子を除去し、無菌性を保証するよう処理され、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、単回投与量または複数回投与量の化合物を含有する。凍結乾燥粉末は、約4℃〜室温などの適当な条件下で保存され得る。この凍結乾燥粉末のバッファー溶液を用いる再構成によって、投与において使用するための製剤が提供される。
医薬組成物は、それとともにヒアルロニダーゼが投与される、希釈液、アジュバント、賦形剤または媒体などの担体を含み得る。適した製薬担体の例は、E. W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、一般に、治療上有効な量の化合物または薬剤を精製された形態または部分精製された形態で、患者への適切な投与のための形態を提供するのに適した量の担体と一緒に含有する。このような製薬担体は、ピーナッツオイル、ダイズオイル、鉱油およびゴマ油などの、石油、動物、植物または合成起源のものを含めた、水およびオイルなどの滅菌液体であり得る。水は、代表的な担体である。生理食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液も、特に、注射用溶液のための液体担体として使用できる。組成物は、有効成分とともに、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムまたはカルボキシメチルセルロースなどの希釈液;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクなどの滑沢剤;ならびにデンプン、アカシアゴムなどの天然ゴム、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン(polvinylpyrrolidine)、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドンおよび当業者に公知の他のこのような結合剤などの結合剤を含有し得る。適した製薬賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールが挙げられる。例えば、適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。組成物はまた、必要に応じて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、可溶性増強剤および例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリンなどの他のこのような薬剤などの他の微量の非毒性補助物質も含有し得る。
非経口調製物において使用される医薬上許容される担体として、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張剤、バッファー、抗酸化物質、局所麻酔、懸濁剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート化剤および他の医薬上許容される物質が挙げられる。水性媒体の例として、Sodium Chloride Injection、Ringers Injection、Isotonic Dextrose Injection、Sterile Water Injection、DextroseおよびLactated Ringers Injectionが挙げられる。非水性非経口媒体として、植物起源の硬化油、綿実油、コーンオイル、ゴマ油およびピーナッツオイルが挙げられる。静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤を、複数回用量容器にパッケージングされた非経口製剤に加えることができ、これとして、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤として、塩化ナトリウムおよびデキストロースが挙げられる。バッファーとして、リン酸およびクエン酸が挙げられる。抗酸化物質として、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔として、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤として、ポリソルベート80(TWEENs 80)が挙げられる。金属イオンの金属イオン封鎖剤またはキレート化剤として、EDTAが挙げられる。製薬担体としてまた、水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールおよびpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸も挙げられる。
ヒアルロナン分解酵素の組成物は、一般に、広範な温度範囲にわたって、数日、数週間または数年安定である。例えば、ヒアルロナン分解酵素組成物は、4℃から37℃の間の温度で、特に、少なくとも5℃、25℃、30℃もしくは37℃でまたは5℃、25℃、30℃もしくは37℃の温度で安定である。ヒアルロナン分解酵素は、少なくとも1カ月、6カ月、1年2年またはそれ以上の間安定である。一般に、組成物は、2℃〜8℃で少なくとも2年間安定である。
ヒアルロナン分解酵素組成物中に含まれ得る安定化剤の種類の中に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミン、ポリオールおよび他の薬剤が含まれる。例示的安定化剤として、それだけには限らないが、ポロキサマー188(例えば、プルロニック(登録商標)F68)、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、L−アルギニン、グルタミン、リシン、メチオニン、プロリン、Lys−Lys、Gly−Gly、トリメチルアミンオキシド、ベタイン、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、スクロース、トレハロース、塩化マグネシウム、亜鉛、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、フェニル酪酸、タウロコール酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストランおよびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素を安定化するために、ヒアルロン酸(HA)オリゴマーが、本明細書において提供される製剤中に含まれる。ヒアルロン酸(HA、ヒアルロナンおよびヒアルロナートとしても知られる)は、rHuPH20を含めた可溶性ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素の天然基質である。HAは、結合組織、上皮組織および神経組織中に広く分布している非硫酸化グリコサミノグリカンである。それ自体が、D−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンからなる最大25,000の二糖単位のポリマーである。HAの分子量は、約5kDa〜20,000kDaの範囲である。ヒアルロナン分解酵素、例えば、rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナンの加水分解を触媒することによって、ヒアルロナンの粘度を低下させ、それによって、組織透過性を高め、非経口的に投与される流体の吸収速度を高める。
本明細書において示されるように、ヒアルロン酸(HA)は、ヒアルロナン分解酵素、例えば、rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼの有効な安定剤である。特に、ヒアルロナンは、他の不安定化剤および例えば、低塩、高pHおよび高温などの条件の存在下で有効な安定剤である。したがって、HAおよびヒアルロナン分解酵素を含有する組成物が、本明細書において提供される。任意の大きさのHAを、安定剤として組成物中で使用できる。いくつかの例では、HAの分子量は、5kDaもしくは約5kDaから5,000kDaもしくは約5,000kDa;5kDaもしくは約5kDaから1,000kDaもしくは約1,000kDa;5kDaもしくは約5kDaから500kDaもしくは約500kDa;または5kDaもしくは約5kDaから200kDaもしくは約200kDaである。例えば、HAおよび可溶性ヒアルロニダーゼ(例えば、rHuPH20)などのヒアルロナン分解酵素の本明細書において提供された組成物の中に、少なくとも5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、120kDa、140kDa、160kDa、180kDa、200kDa、220kDa、240kDa、260kDa、280kDa、300kDa、3500kDa、400kDa、450kDaもしくは500kDaまたはおよそ少なくとも5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、120kDa、140kDa、160kDa、180kDa、200kDa、220kDa、240kDa、260kDa、280kDa、300kDa、3500kDa、400kDa、450kDaもしくは500kDaの分子量を有するHAを含有するものが含まれる。
1mg/mLから100mg/mLまたは1mg/mLから100mg/mLの間、例えば、1mg/mLから20mg/mL、特に、少なくとも1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mLもしくは20mg/mLまたはおよそ少なくとも1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mLもしくは20mg/mLまたはそれ以上のHAのHAオリゴマーが、ヒアルロナン分解酵素の組成物中に含まれる。ヒアルロナン分解酵素、例えば、rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼの例示的な安定製剤は、8mg/mLもしくは約8mg/mLから15mg/mLもしくは約15mg/mLのHA、例えば、10mg/mLもしくは約10mg/mLまたは15mg/mLもしくは約15mg/mLなどを含む。いくつかの例では、HA対ヒアルロナン分解酵素のモル比は、5000:1、4000:1、3000:1、2000:1、1900:1、1800:1、1700:1、1650:1、1600:1、1500:1、1400:1、1300:1、1200:1、1100:1、1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、1:1、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1100、1:1200、1:1300、1:1400、1:1500、1:1600、1:1700、1:1800、1:1900、1:2000、1:3000、1:4000、1:5000以下または約5000:1、4000:1、3000:1、2000:1、1900:1、1800:1、1700:1、1650:1、1600:1、1500:1、1400:1、1300:1、1200:1、1100:1、1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、1:1、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1100、1:1200、1:1300、1:1400、1:1500、1:1600、1:1700、1:1800、1:1900、1:2000、1:3000、1:4000、1:5000以下である。
いくつかの例では、本明細書において提供されるようなヒアルロナン分解酵素の標準的な安定化された製剤は、EDTA、NaCl、CaCl2、ヒスチジン、ラクトース、アルブミン、プルロニック(登録商標)F68、TWEEN(登録商標)および/または他の界面活性剤または他の同様の薬剤のうち1種または複数とともに製剤される。例えば、本明細書において提供された組成物は、pHバッファー(例えば、ヒスチジン、リン酸または他のバッファーなど)または酸性バッファー(酢酸、クエン酸、ピルビン酸、Gly−HCl、コハク酸、乳酸、マレイン酸または他のバッファーなど)、張力モディファイヤー(例えば、アミノ酸、ポリアルコール、NaCl、トレハロース、他の塩および/または糖など)、安定剤、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラアセテートまたはカルシウムEDTAなどのキレート化剤、メチオニン、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩、クエン酸/クエン酸塩もしくはアルブミンなどの酸素スカベンジャーおよび/または芳香環(例えば、フェノールまたはクレゾール)を含有する防腐剤などの防腐剤のうち1種または複数を含有し得る。
例えば、本明細書において提供される共製剤中に含まれ得るバッファーとして、それだけには限らないが、Tris(Tromethamine)、ヒスチジン、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸バッファーおよびクエン酸バッファーが挙げられる。このような緩衝剤は、1mM〜100mMもしくは約1mM〜100mMの間、例えば、少なくとも1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mMもしくはそれ以上またはおよそ少なくとも1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mMもしくはそれ以上または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mMもしくはそれ以上または1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mMもしくはそれ以上の濃度で存在し得る。
ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物にとって有用である例示的安定化剤として、ポリソルベートなどの界面活性剤およびヒト血清アルブミンなどのタンパク質が挙げられる。本明細書において組成物において有用である血清アルブミンの例示的濃度として、0.1mg/mLから1mg/mLもしくは0.1mg/mLから1mg/mLの間、例えば、少なくとも0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLもしくは1mg/mLまたは0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLもしくは1mg/mLが挙げられるが、それより多くまたは少ないものでもあり得る。ポリソルベートはまた、例えば、0.001%〜0.1%もしくは約0.001%〜0.1%、例えば、少なくとも0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、00.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.1%または0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、00.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.1%の濃度で組成物中に存在し得る。カルシウムEDTA(CaEDTA)などの金属キレート化剤も、例えば、およそ0.02mMから20mMの間、例えば、少なくとも0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM以上または0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM以上の濃度で存在し得る。組成物のpHおよび浸透圧は、組成物の所望の活性および安定性のために条件を最適化するよう当業者によって調整され得る。いくつかの例では、本明細書において提供された組成物は、100mOsm/kg〜500mOsm/kgもしくは約100mOsm/kg〜500mOsm/kgの間、例えば、少なくとも100mOsm/kg、120mOsm/kg、140mOsm/kg、160mOsm/kg、180mOsm/kg、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kg、400mOsm/kg、420mOsm/kg、440mOsm/kg、460mOsm/kg、500mOsm/kg以上または約100mOsm/kg、120mOsm/kg、140mOsm/kg、160mOsm/kg、180mOsm/kg、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kg、400mOsm/kg、420mOsm/kg、440mOsm/kg、460mOsm/kg、500mOsm/kg以上の浸透圧および6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8もしくは8または約6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8もしくは8のpHを有する。
一般に、NaClは、例えば、100mM〜150mM以上または約100mM〜150mM以上である量で、本明細書において製剤中に提供される。例えば、例示的製剤は、10mMもしくは約10mMのヒスチジンおよび/または130mMもしくは約130mMのNaClを含有し得る。他の製剤は、さらに、または代わりに、例えば、13mg/mlまたは約13mg/mlのラクトースを含有し得る。さらに、それだけには限らないが、チオメルサールを含めた抗菌剤または抗真菌剤が、製剤中に存在し得る。製剤は、アルブミン、プルロニック(登録商標)F68、TWEEN(登録商標)および/または他の界面活性剤をさらに含有し得る。製剤は、6.0〜7.4もしくは約6.0〜7.4の間、例えば、少なくとも6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3もしくは7.4または6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3もしくは7.4である、一般に、pH6.5であるか、約pH6.5であるpHで提供される。本明細書において使用するための、ヒアルロナン分解酵素、例えば、rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼの濃縮製剤は、一般に、適当な塩濃度を維持するよう投与の前に生理食塩水溶液または他の塩緩衝溶液に希釈される。
可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば、rHuPH20と呼ばれる組換えPH20の医薬組成物は、当技術分野で公知である(例えば、公開米国特許出願第20040268425号、同20050260186号および同20060104968号参照のこと)。
2.徐放性製剤
ヒアルロナン分解酵素組成物は、徐放性または制御放出製剤で提供される。いくつかの例では、徐放性または制御放出製剤はまた、第2の治療薬、例えば、BPH治療薬も含有する。製剤は、局所注射用に製剤され得る。例えば、製剤は、前立腺への経直腸的、経尿道的または経会陰的注入などによる前立腺内注入用に製剤される。
例示的徐放性製剤として、それだけには限らないが、単層膜小胞(LUV)および多重膜小胞(MVL)を含めた脂質小胞、薬物−樹脂複合体(樹脂酸塩)およびデポー製剤が挙げられる。このような徐放性または制御放出製剤は、当業者に公知である。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、コロイド分散系で、またはポリマー安定化結晶でカプセル封入され得る。有用なコロイド分散系として、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズおよび水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含めた脂質ベースの系が挙げられる。脂質−ポリマーコンジュゲートおよびリポソームのいくつかの例が、その全文が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,631,018号に開示されている。多重膜および単層リポソームの作製プロセスの例は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,522,803号、同4,310,506号、同4,235,871号、同4,224,179号、同4,078,052号、同4,394,372号、同4,308,166号、同4,485,054号および同4,508,703号参照のこと)。徐放性(slow release)デリバリー媒体の他の例として、生分解性ヒドロゲルマトリックス(米国特許第5,041,292号)、樹枝状結晶高分子コンジュゲート(米国特許第5,714,166号)および多小胞リポソーム(Depofoam(登録商標)、Depotech、San Diego、Calif.)(米国特許第5,723,147号および第5,766,627号)がある。例えば、前立腺への局所注射のための組成物のカプセル封入に適したある種のマイクロスフェアとして、Fletcher, D. Anesth. Analg. 84:90-94 (1997)に記載されるポリ(D,L−ラクチド)マイクロスフェアがある。
特に、本明細書において提供される徐放性製剤は、酵素(または他の薬剤(単数または複数))が、所定の速度で放出されるように、または一定レベルの薬物が、指定の期間維持されるように設計できる。特に、製剤によって、ヒアルロナン分解酵素(または他の薬剤(単数または複数))の前立腺組織などの局所組織への制御放出が可能となる。放出の速度は、組織(例えば、間質)におけるHA分解に対する酵素の得られる効果が、数時間、数日、数週間または数カ月にわたって延長されるよう十分に遅いものである。例えば、ひとたび前立腺に導入されたヒアルロニダーゼおよび他の治療薬の放出は、およそ24時間、36時間または48時間からおよそ90日であり得る。例えば、前立腺内注入などによる局所組織注入によって、少なくとも週に1回、月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、7カ月に1回、8カ月に1回、9カ月に1回、10カ月に1回、11カ月に1回または1年に1回の製剤の投与量を可能にする徐放性製剤が提供される。ヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤の最適放出速度および期間は、特定の薬剤の薬理学的特性、状態の重篤度、対象の年齢および健康状態ならびに他の因子に基づいて、当業者によって決定できる。
酵素の放出速度または薬物のレベルが、前立腺組織などの局所組織に対する効果をもたらすのに十分であるかどうかを経験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内である。例えば、前立腺の大きさ(例えば、縮小)を調べることができる。他の例では、局所組織(例えば、間質)におけるHAの分解は、組織サンプル、例えば、前立腺サンプルから、例えば、生検サンプルから組織学または他の方法によって経時的にモニタリングできる。さらなる例では、血液または血清中に放出されたヒアルロナン分解酵素の活性は、測定できる。血漿中のヒアルロニダーゼを測定するための当業者に公知の任意のアッセイを実施してよい。例えば、血漿中のタンパク質に関して、マイクロ濁度アッセイまたは酵素アッセイを実施できる。血漿は、普通、ヒアルロニダーゼ酵素を含有するということは理解される。このような血漿ヒアルロニダーゼ酵素は、通常、酸性pHで活性を有する(米国特許第7,105,330号)。従って、本明細書において記載される徐放性製剤を用いる治療の前に、ヒアルロニダーゼの血漿レベルを決定し、ベースラインとして使用するべきである。治療後の血漿ヒアルロニダーゼレベルのその後の測定を、治療前のレベルと比較することができる。あるいは、アッセイは、普通は、酸性pHで活性を示す血漿中の内因性リソソームヒアルロニダーゼ活性を抑制するpH条件下で実施してもよい。したがって、ヒアルロナン分解酵素が中性pHで活性である場合は(例えば、ヒトPH20)、中性で活性な酵素のレベルのみが測定される。
さらに、本明細書において提供される徐放性製剤は、ヒアルロナン分解酵素が比較的安定で活性であるように設計され得る。例えば、徐放性製剤は、製剤の総ヒアルロナン分解酵素活性が、25,000U/mg〜200,000U/mgもしくは25,000U/mg〜200,000U/mgの間、例えば、40,000U/mg〜150,000U/mg、例えば、75,000U/mg〜120,000U/mg、特に、少なくとも40,000U/mg、50,000U/mg、60,000U/mg、70,000U/mg、80,000U/mg、90,000U/mg、100,000U/mg、110,000U/mg、120,000U/mg、130,000U/mg、140,000U/mg、150,000U/mgもしくはそれ以上または40,000U/mg、50,000U/mg、60,000U/mg、70,000U/mg、80,000U/mg、90,000U/mg、100,000U/mg、110,000U/mg、120,000U/mg、130,000U/mg、140,000U/mg、150,000U/mgもしくはそれ以上であるように提供される。特に、徐放性製剤は、安定性が、2℃〜37℃もしくは2℃〜37℃の間、例えば、4℃〜25℃、特に、2℃〜8℃もしくは2℃〜8℃の間または20℃〜30℃もしくは20℃〜30℃の間、例えば、25℃もしくは約25℃の温度で達成されるように設計される。特定の例では、徐放性製剤は、少なくとも1週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、1年、2年またはそれ以上の間、保存条件下で安定である。
本明細書における例では、ヒアルロナン分解酵素と、所望の疾患または状態を治療するための他の治療薬とを含有する徐放性製剤が提供される。例えば、疾患または状態が、BPHである場合には、ヒアルロナン分解酵素に加えて、BPHの治療に適した他の薬剤も含有する徐放性製剤が調製され得る。組み合わされた徐放性製剤は、疾患または状態を治療するための少なくとも2種の薬剤の長期間持続する長期活性を提供する。BPHを治療するための併用療法は、本明細書における節Fにおいてさらに記載される。したがって、節Fに示される治療薬のいずれかを、本明細書における徐放性製剤においてヒアルロナン分解酵素と共製剤してもよい。
徐放性製剤および例示的製剤の限定されない例を以下に提供する。
a.デポーゲル製剤
ヒアルロナン分解酵素組成物は、徐放性を可能にし、全身循環への接近を防ぎ、組成物の前立腺特異的局在性を増大するデポーゲル製剤として投与できる。当業者ならば、単一薬物および組合せを、所定の放出速度および期間を有する、注射用液体、身体中に置くことができるゲルまたはペーストとして製剤するために利用できる材料および方法について精通している。
組成物はゲルで提供され得るか、または通常、注射によるものである投与後にゲルを形成できる。ゲルは、身体への導入後にゲルを形成する材料を含有する液体組成物としてデリバリーされてもよい。ゲル形成材料およびヒアルロナン分解酵素を含有する溶液は、任意の適した方法を使用して、例えば、ゲル形成材料を含有する溶液に酵素を添加することによって、溶液中でゲル形成材料と酵素を組み合わせることによって調製できる。溶液は、身体への導入後に、例えば、生理学的流体との接触時にゲルを形成する。
ゲルからの薬剤の放出は、任意の機序によって、例えば、ゲルの分解の結果としてのゲルからの薬剤の拡散によって、または両方によって起こり得る。ゲル形成材料はまた、酵素または他の治療薬の放出を調節できる固体などのいくつかの他の材料も含有し得る。
種々の異なるゲル形成材料を使用できる。一般に、ゲルは、ヒドロゲル、相当量の水を含有するゲルであり、生体適合性であり、ゲルは生分解性である。ゲル形成材料として、それだけには限らないが、アルギン酸およびその修飾形態などの多糖が挙げられ、他のポリマーヒドロゲル前駆体として、水素結合によって、および/または温度変化によって架橋される、プルロニクス(Pluronics)(登録商標)またはテトロニクス(Tetronics)(登録商標)(BASF、Florham Park、New Jersey)などのポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリマー混合物、例えば、混合時に水素結合によってゲルになるポリエチレンオキシドとポリアクリル酸の混合物および他の可溶性ゲル形成材料(米国特許第6,129,761号)が挙げられる。他の適したヒドロゲルは、Peppas, N.A.,et al. (2000) Eur J Pharm Biopharm. 50(1):27-46; Megeed、Z., et al., (2002) Pharm Res. 19(7):954-9および米国特許第6129761号に記載されている。注射用ゲルを形成するための適した添加物は、医療等級のゲル化剤である。1種のこのようなゲル化剤として、Gelfoam(登録商標)滅菌粉末(Pfizer、New York)がある。Gelfoam(登録商標)は、40〜60ミクロンの大きさの範囲の粒子を含有するゼラチン粉末である。
本明細書において提供されるヒアルロナン分解製剤において使用するためのデポーゲル製剤はまた、ゲル組成物が、注入用のニードルを通って押し出され得るよう、20〜80%、例えば、25〜70重量%、例えば、30〜60重量%の1種または複数のリン脂質と、0.1〜70重量%の水とを含有するリン脂質ゲル組成物を含み得る。リン脂質デポーは、水性または実質的に無水であり得る1相ゲルである。したがって、いくつかの例では、水の代わりに、1相リン脂質ゲル組成物は、5〜60%、例えば、10〜50%、例えば、20〜40重量%の非水性成分を用いて調製できる。非水性成分は、糖、オイルまたは溶媒であり得る。例えば、オイルは、ゴマ油、中鎖オイル、オレイン酸エチルまたは合成トリグリセリドであり得る。このような1相リン脂質デポーゲル組成物は、国際公開PCT出願番号WO2011/075623に詳細に記載されている。このようなデポーゲル製剤は、フィナステリドおよび他のBPH治療薬などの水不溶性または疎水性薬剤を溶解するのに特に有用である。1相ゲル組成物を使用して、ヒアルロナン分解酵素と、フィナステリドなどの疎水性薬物である他の治療薬とを含有するデポー製剤を調製できる。
b.多小胞リポソーム(MVL)
ヒアルロナン分解酵素、特に、PH20または可溶性または組換えPH20などのヒアルロニダーゼが中にカプセル封入されている多小胞リポソーム(MVL)製剤などの合成膜小胞が、本明細書において提供される。本明細書に記載されたいくつかの例では、他の治療薬のカプセル封入をさらに含有するMVL共製剤が提供される。多小胞リポソーム製剤は、デリバリーされるべき薬物または薬剤をカプセル封入する多数の非同心円状水性チャンバーからなる顕微鏡的、球形粒子を含有する。個々のチャンバーは、生体適合性および生分解性の両方であるデリバリー媒体をもたらす合成複製物または天然に存在する脂質からなる脂質二重層膜によって分離されている。本明細書における例では、親水性であるヒアルロナン分解酵素または他の治療薬を、水相にカプセル封入できる。本明細書における他の例では、MVL共製剤は、同一製剤中への親水性薬物および疎水性薬物の同時カプセル封入によって提供される。例えば、このようなMVL共製剤では、ヒアルロナン分解酵素は、水相中にカプセル封入され、疎水性薬物、例えば、フィナステリドまたはデュタステリドは、脂質層中に入り込んでいる。
他の薬剤もまた、アジュバント、展着剤または治療薬として対象に使用されることが望ましい場合には、ヒアルロナン分解酵素をデリバリーするための方法において、膜小胞を使用できる。特に、膜小胞は、治療薬として使用するための医薬組成物において提供される。例えば、ヒアルロナン分解酵素、特に、ヒアルロナン分解酵素を含有する膜小胞が、良性前立腺肥大症(BPH)を治療するための方法、使用およびプロセスにおいて使用され得る。膜小胞の例示的なものとして、ヒアルロナン分解酵素の制御放出または徐放を達成するものがある。
本明細書において提供される多小胞リポソーム(MVL)は、当業者に公知のプロセスに基づいて製造される(例えば、米国特許第5,723,147号;同5,766,627号;同6,106,858号;同6,306,432号;同5,962,016号;同6,241,999号;公開米国特許出願番号US2007/0235889およびUS2010/030550;ならびに公開国際出願番号WO02/096368参照のこと)。このようなリポソームの作製では、節Cにおいて上記の、または当業者に公知のヒアルロナン分解酵素組成物のいずれかを、多小胞リポソーム内にカプセル封入できる。手短には、脂質成分については、揮発性有機溶媒に両親媒性脂質および中性脂質を溶解すること、脂質成分に、カプセル封入されるべき酵素および/または他の薬剤と、MVLに有用および有益な特性を提供する1種または複数のヘルパー分子、すなわち、浸透圧賦形剤を含有する非混和性の第1の水性成分を添加することによって、カプセル封入されるヒアルロナン分解酵素を含有する「油中水」エマルジョンをまず製造する。混合物を、混合、振盪、超音波処理によってのように、例えば、機械的に混合することによって、超音波エネルギー、ノズル噴霧またはそれらの組合せによって乳化する。カプセル封入されるべきヒアルロナン分解酵素は、第1の水性成分または脂質成分中または両方に含有され得る。次いで、全油中水エマルジョンを、第2の水性成分と混合し、次いで、上記のように機械的に撹拌して、第2の水性成分中に懸濁された溶媒小球を形成する。溶媒小球は、それに溶解しているカプセル封入されるべき物質を有する複数の水性液滴を含有する。例えば、小球からの蒸発によって揮発性有機溶媒を除去する。溶媒が完全に蒸発した時点で、多小胞リポソームが形成される。MVLは、生理食塩水または保存温度で粒子安定性を可能にする適したバッファーなどの第3の水溶液中で、再懸濁、洗浄および保存される。溶媒を蒸発させることにおいて使用するのに満足のいく代表的なガスとして、窒素、ヘリウム、アルゴン、酸素、水素および二酸化炭素が挙げられる。あるいは、有機溶媒は、スパージング、ロータリーエバポレーションまたは溶媒選択膜によって除去され得る。
一般に、カプセル封入の成功は、親水性分子に対してのみ達成され得る。以下にさらに記載するように、本明細書において、疎水性分子は、脂質および疎水性薬物を有機溶媒中に溶解すること、その後、親水性薬物(例えば、ヒアルロナン分解酵素)を含有する第1の水性成分と混合することによって脂質二重層中に組み込まれ得るということがわかる。したがって、同一製剤中での疎水性および親水性薬物の同時カプセル封入によって、本明細書における方法を使用してまた、MVL共製剤も作製できる。
エーテル、ハロゲン化エーテル、炭化水素、エステル、ハロゲン化炭化水素またはフレオンなどの多数の異なる種類の揮発性疎水性溶媒を、脂質相溶媒として使用できる。例えば、ジエチルエーテル、イソプロピルおよび他のエーテル、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、フォーレンおよびそれらの組合せを、多小胞リポソームの製造において使用できる。
脂質成分が、1種の中性脂質と、1種の両親媒性脂質を含有する限り、種々の種類の脂質を使用して、多小胞リポソームを製造できる。中性脂質の例として、ジオレフィン、ジパルミトレイン(dipalmitolein)などのジグリセリド;プロピレングリコールでのカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステルなどのプロピレングリコールエステル;トリオレイン、トリパルミトレイン、トリリノレイン、トリカプリリンおよびトリラウリンなどのトリグリセリド;ダイズ油などの植物油;ラードまたは牛脂;スクアレン;トコフェロール;およびそれらの組合せが挙げられる。特定の例では、徐放性中性脂質として、例えば、トリオレイン、トリパルミトレイン、トリミリストレイン、トリラウリンおよびトリカプリンが挙げられる。速放性中性脂質として、例えば、トリカプリリンおよびトリカプロインおよびそれらの混合物が挙げられる。両親媒性脂質の例として、pH7.4で正味の負電荷、ゼロの正味電荷および正味の正電荷を有するものが挙げられる。これらは、双性イオン、酸性または陽イオン性脂質を含む。このような例示的両親媒性脂質として、それだけには限らないが、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン、ジアシルトリメチルアンモニウムプロパン(DITAP)およびそれらの組合せが挙げられる。さらに、コレステロールまたは植物ステロールを使用して、多小胞リポソームを製造できる。選択される脂質成分はまた、MVLが保存および/または使用されるべき温度より低い融点を有するものであり得る(例えば、米国特許第5,962,016号参照のこと)。
本明細書において提供される合成膜小胞の例では、ヒアルロナン分解酵素、特に、PH20または組換えPH20などのヒアルロニダーゼは、酵素の安定性を保つか、または増強する、および/または酵素のカプセル封入の速度を増大する1種または複数の賦形剤の存在下でカプセル封入される。特定の例では、賦形剤は、ヒアルロン酸(ヒアルロナン;HAとも呼ばれる)である。例えば、徐放または制御放出のための、中にヒアルロナン分解酵素、特に、PH20または組換えPH20などのヒアルロニダーゼと、酵素の安定性を保つか、または増強する、および/または酵素のカプセル封入の速度を増大する1種または複数の賦形剤とがカプセル封入されている多小胞リポソーム(MVL)が本明細書において提供される。
提供される方法において使用できるミキサーの例示的なものとして、ホモジナイザー(シアーとも呼ばれる)、例えば、第1の水相と溶媒、例えば、クロロホルムを乳化するために、または第1のエマルジョンを第2の水相とともに乳化するために使用できるハイシアーラボホモジナイザーがある。提供された方法において使用できるホモジナイザーの例示的なものとして、ハイシアーホモジナイザー、例えば、Omni International、Kennesaw、GAによって販売されているオムニミキサー、例えば、1,800ワットのモーター、1,000〜20,000rpmの速度制御、0.25mLから30Lのサンプル処理容量および混合のための可変羽根集合体を有するオムニマクロホモジナイザーまたはオムニマクロESホモジナイザーがある。
得られるMVLの粒径は、変わり得る。膜小胞の大きさを決定することおよび所望の適用に基づいて小胞を選択することは当業者のレベルの範囲内である。例えば、粒径分析は、例えば、レーザー回折粒径分析器を使用して実施できる。いくつかの例では、本明細書において提供される膜小胞は、約0.5μm〜100μmもしくは0.5μm〜100μmの間、例えば、少なくとも0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μM、50μmもしくは100μmまたは約0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μM、50μmもしくは100μmまたは0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μM、50μmもしくは100μmである平均直径を有する。
得られるMVL製剤または共製剤は、注射用または埋め込み可能な徐放性デポー製剤を得るために、懸濁媒介物または他の生物学的に許容される担体の添加によってさらに希釈または懸濁され得る。一般的な適した担体として、水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンがある。非水性溶液の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体として、水、アルコール性水溶液、生理食塩水(aline)および緩衝媒介物を含めたエマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口媒体として、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび乳酸加リンガー溶液が挙げられる。静脈内媒体として、流体および栄養補給物、電解質補給物(リンガーデキストロースをベースとするものなど)が挙げられる。抗菌剤、抗酸化物質、キレート化剤および不活性ガスなどの保存料および他の添加物も存在し得る(Remingtons Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., A. Oslo, ed., Mack, Easton, Pa. 1980参照のこと)。
ヒアルロナン分解酵素とともにカプセル封入されたMVL製剤の安定な組成物が、本明細書において提供される。また、ヒアルロナン分解酵素および疎水性薬物、特に、フィナステリド、ディアスツリド(diasturide)などの薬物または他の適した薬物とともにカプセル封入されたMVL共製剤の安定な組成物も提供される。製剤または共製剤は、2℃〜32℃で、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、少なくとも2年またはそれ以上の間安定である。例えば、製剤または共製剤は、2℃〜8℃で、少なくとも1年または少なくとも2年間安定である。他の例では、共製剤の製剤は、28℃〜32℃で少なくとも6カ月または少なくとも1年間安定である。
i.カプセル封入、安定性および放出速度を改善するためのパラメータ
上記のMVL製剤の製造において、本明細書において、ヒアルロナン分解酵素のカプセル封入効率、安定性および放出速度は、特定のパラメータおよび条件に基づいて修飾され得る(例えば、増大または改善される)ということがわかる。例えば、ヒアルロナン分解酵素のカプセル封入の効率を高めるための方法を使用できる。それを用いて薬剤(例えば、ヒアルロナン分解酵素)がカプセル封入される効率は、リポソーム製剤の調製において使用される両親媒性脂質のうち少なくとも1種の炭素鎖中の炭素の数を変更することによってモジュレートできる。例えば、カプセル封入効率は、リポソーム製剤の調製において使用される両親媒性脂質のうち少なくとも1種の炭素鎖中の炭素の数を増大することによって増大され得る(例えば、米国特許第6,241,999号参照のこと)。本明細書における多小胞リポソームの作製において使用され得る長鎖両親媒性脂質の限定されない一覧は、例えば:DOPCまたはDC18:1PC=1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DLPCまたはDC12:0PC=1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DMPCまたはDC14:0PC=1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DPPCまたはDC16:0PC=1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DSPCまたはDC18:0PC=1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DAPCまたはDC20:0PC=1,2ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DBPCまたはDC22:0PC=1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC14:1PC=1,2−ジミリストレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC16:1PC=1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC20:1PC=1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DC22:1PC=1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;DPPG=1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール;DOPG=1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロールを含む。
リポソーム製剤からの活性薬剤(例えば、ヒアルロナン分解酵素)の放出速度は、両親媒性脂質、許容される膜形成脂質の選択によって、リン脂質/コレステロール比の操作によって、徐放性および速放性中性脂質成分のモル比をモジュレートすることによって、および/または当業者に公知の他の因子によって修飾できる(例えば、米国特許第5,962,016号参照のこと)。例えば、リポソーム中の中性脂質成分は、0%から100%の徐放性および速放性成分であり得る。例えば、中性脂質成分は、約0.0:1.0〜1.0:0.0、例えば、1:1〜1:100もしくは1:4〜1:18または約1:1〜1:100もしくは1:4〜1:18のモル比範囲の徐放性中性脂質および速放性中性脂質の混合物であり得る。
活性薬剤(例えば、酵素)の放出速度は、決定またはモニタリングできる。例えば、放出速度は、変更される温度(例えば、少なくとも4℃もしくは約4℃または少なくとも37℃もしくは約37℃)でインキュベートされた、生理食塩水、適したバッファー中で、または血漿もしくは血漿様媒介物中で、変更される時間の間(例えば、少なくとも10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、30日またはそれ以上)、インビトロで脂質懸濁液で実施できる。指定された時間および/または温度の間インキュベートした後、インキュベートされた試験管を遠心分離し、上清溶液を回収し、分析することができる。酵素の放出速度は、例えば、タンパク質の検出もしくは定量化および/またはヒアルロニダーゼ活性決定によって決定できる。特に、標識または他の検出可能部分との酵素のコンジュゲーションは、放出された酵素の検出に役立ち得る。検出可能部分の例示的なものとして、蛍光タグ(例えば、GFPまたはAlexa488)がある。同様のアッセイは、インビボでも実施できる。例えば、標識されたか、または他の検出可能なヒアルロナン分解酵素(例えば、Alexa488 PH20)が、本明細書におけるMVL懸濁液にカプセル封入され、その放出が、前立腺の局所部位において直接的にモニタリングされ得る。
特定の放出速度は、対象とする特定の適用に応じて、脂質成分、ヒアルロナン分解酵素の濃度を変更すること、賦形剤および/または本明細書に記載されるか、もしくは当技術分野で公知の他のパラメータを添加することによって、経験的にモジュレートできる。したがって、酵素の放出速度は、制御され得る。本明細書における目的上、リポソーム製剤からのヒアルロナン分解酵素の放出速度は、酵素が、前立腺の間質におけるHA合成に対抗できるようなものである。したがって、放出速度は、経時的に持続される。ヒアルロニダーゼおよび他のヒアルロナン分解酵素の半減期は、比較的短い。したがって、酵素が迅速に消失するので、長期の活性およびHAの加水分解には徐放性が必要とされる。間質では、HAは、3〜10日毎に再生されるので、HAの作用と戦うために、局所間質において活性酵素を維持することが必要である。
本明細書において上記のように、節Cにおいて上記で記載されるか、または当業者に公知のヒアルロナン分解酵素組成物のいずれも、多小胞リポソーム内にカプセル封入できる。カプセル封入された酵素の濃度は、約数ピコモルから約数百ミリモルで変わり得る。薬剤の濃度は、治療されるべき疾患、患者の年齢および状態ならびに薬剤の個々の特性のような特徴に応じて変わる。一般に、製造の際の第1の水性成分中の溶液中の酵素の濃度は、任意の所与の製剤中に付加され得る酵素の量と直接的に比例する。しかし、本明細書において、タンパク質濃度は、ヒアルロナン分解酵素、特に、PH20ヒアルロニダーゼのカプセル封入に影響を及ぼすことがわかる。例えば、本明細書に例示されるように、2mg/mLのヒアルロナン分解酵素の出発量を用いるカプセル封入プロセスは、酵素の活性および比活性の低下をもたらす。したがって、本明細書における製剤は、2mg/mL未満のヒアルロナン分解酵素を含有するヒアルロナン分解酵素カプセル封入のための第1の水相を形成しながら調製される。例えば、第1の水性成分は、一般に、2mg/mLの未満ヒアルロナン分解酵素、例えば、0.1〜1.9mg/mL酵素の間またはおよそその間、例えば、0.25〜1.9mg/mLの酵素、0.5mg/mL〜1.5mg/mL、例えば、0.75mg/mL〜1.25mg/mL、特に、少なくとも1mg/mLまたは約1mg/mLのヒアルロナン分解酵素であるが2mg/mL未満の酵素を含有する。得られたMVL製剤は、バッファーまたは生理食塩水中、50%リポソーム懸濁液中、0.1mg/mL〜1mg/mLの間またはおよそその間のヒアルロナン分解酵素、例えば、0.2mg/mL〜0.5mg/mL、例えば、少なくとも0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLまたは約0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLの酵素、特に、少なくとも0.3mg/mLの酵素濃度を含有する。
pHは、水溶液中の活性薬剤の溶解度に影響を及ぼし得るとわかっている。例えば、水溶液におけるIGF−Iの溶解度は、約5のpHで急落する(例えば、米国特許第6,306,432号参照のこと)。したがって、通常、当技術分野で、第1の水溶液中の溶液において十分な薬剤を得、維持するために、製造の際に、バッファーまたは酸も、十分な高濃度を確実にするようそれに添加される。しかし、本明細書において、得られるカプセル封入されたヒアルロナン分解酵素の溶解度、活性および安定性を維持しながら高pH範囲を使用できることがわかる。例えば、第1の水溶液のpHは、6.0〜7.5、6.0〜7.0もしくは6.0〜6.5の間または約6.0〜7.5、6.0〜7.0もしくは6.0〜6.5、特に、少なくとも6.0もしくは約6.0、例えば、少なくとも6.5もしくは約6.5である。
カプセル封入の効率を高めるために、賦形剤もまた、第1の水相に添加され得る。いくつかの例では、添加された賦形剤は、活性薬剤(例えば、ヒアルロナン分解酵素)の放出速度をモジュレートする。他の例では、賦形剤は、カプセル封入されたヒアルロナン分解酵素の安定性を増強または保つために添加され得る。通常、カプセル封入されたヒアルロナン分解酵素の安定性を増強するか、または保ちながら、カプセル封入の効率および/または酵素の放出速度を高めるよう両方作用する賦形剤が添加される。種々の賦形剤のいずれかを使用する安定性、カプセル封入効率および放出速度は、実験的に決定できる。カプセル封入効率、安定性および放出速度を評価する方法は、当業者には公知である。
例えば、種々の種類の浸透圧賦形剤を添加できる。電解質および非電解質の両方とも、浸透圧賦形剤として機能する。任意の特定の分子が浸透圧賦形剤であるかどうかの決定において、または溶液中の浸透圧賦形剤、例えば、多小胞リポソーム内にカプセル封入されたものの濃度の決定において、溶液内の条件下(例えば、pH)で、分子が全体的にか、または部分的にイオン化されているかどうかを考慮しなければならない。このようなイオンが、脂質膜を透過するかどうかも決定しなければならない(Mahendra K. Jain, van Nostrand Reinhold Co., The Bimolecular Lipid Bilayer Membrane, 1972、470 pp.)。当業者には当然ながら、浸透圧賦形剤は、リポソームの使用によって治療を受けている対象にとって毒性を示すか、そうでなければ有害であるものを避けるよう選択されなければならない。一般に、それ自体は対象に対して生物学的効果または治療効果を有さない浸透圧賦形剤が選択される。
一般に、浸透圧賦形剤は、カプセル封入のために活性薬剤が溶解される水性成分の浸透圧を変更するために使用され得る。浸透圧および薬物負荷の間に逆相関が存在し、水性成分の浸透圧が低下するにつれて、活性薬剤の負荷は、一般に、増大する(米国特許第6,106,858号)。浸透圧は、任意の添加される賦形剤を含めた水溶液中に存在する溶質のモル濃度の合計である。したがって、使用されるヒアルロナン分解酵素の任意の選択された濃度については、製造の際の薬物負荷は、第1の水性成分の全浸透圧への溶液中の賦形剤によって行われる寄与を変更することによってモジュレートされ得る。
浸透圧賦形剤は、活性薬剤、すなわち、ヒアルロナン分解酵素の活性を促進できるものを含む。例えば、薬剤の有効期間を増大するため、またはバイオアベイラビリティを高めるために、カルシウムイオンを対イオンとして同時カプセル封入してもよい。さらに、種々の安定化剤を使用してもよい。多小胞リポソームを形成し、多小胞リポソームからのカプセル封入された薬剤の薬物負荷をモジュレートするために使用できる浸透圧賦形剤として、それだけには限らないが、グルコース、スクロース、トレハロース、スクシネート、グリシルグリシン、グルコン酸、シクロデキストリン、アルギニン、ガラクトース、マンノース、マルトース、マンニトール、グリシン、ヒスチジン、リシン、クエン酸、リン酸、ソルビトール、デキストランおよびそれらの組合せが挙げられる。
第1の乳化に先立って、第1の水性成分および脂質成分のいずれかまたは両方に、塩酸塩が添加され得る。十分な塩酸塩の添加は、高カプセル封入効率の達成における、またカプセル封入された酵素の制御された放出速度のための因子であり得る(例えば、米国特許第5,723,147号参照のこと)。使用できる塩酸塩として、それだけには限らないが、塩酸、リシン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、ピリジン塩酸塩およびそれらの組合せが挙げられる。また、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸などの他のハロゲン化水素酸を使用してもよい。例えば、カプセル封入された酵素の放出速度のモジュレーションは、酵素の所望の放出速度、すなわち、治療上有効な放出速度に達するよう、多小胞リポソームの形成の際に油中水エマルジョンを形成するために使用される脂質成分中または第1の水性中のいずれかに存在する塩酸塩の濃度を調整することによって達成できる。使用される塩酸塩の濃度に応じて、多小胞リポソームからの酵素の放出速度は、塩酸塩が、リポソームの製造において使用されていない場合に達成されるものを超えて増大または低減され得るということは、留意されなければならない。任意の特定の多小胞リポソーム製剤とともに使用される塩酸塩の量は、リポソームの化学特性(すなわち、製剤中に使用される脂質の組合せ)、リポソーム中にカプセル封入される水溶液、リポソームが配置される環境に応じて、ならびにカプセル封入される特定の酵素に応じて変わる。
他の例では、第1の乳化に先立って、第1の水性成分および脂質成分のいずれかまたは両方に非ハロゲン化水素酸が添加され得る。非ハロゲン化水素酸の添加は、MVLからの酵素の放出速度の制御における因子であり得る(例えば、米国特許第5,766,627号参照のこと)。酸として、それだけには限らないが、過塩素酸、硝酸、グルクロン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸、リン酸およびそれらの組合せが挙げられる。使用される酸の量は、所望の、制御された放出速度、特に、前立腺間質において治療上有効なレベルのカプセル封入された酵素をもたらす放出速度を提供するのに有効なものである。例えば、それが添加され得る脂質成分または第1の水性成分中の非ハロゲン化水素酸の濃度は、0.1mM〜0.5Mもしくはその間、例えば、10mM〜200mM、例えば、少なくとも0.1mM、10mM、100mMもしくは200mMであり得る。
使用できる他の賦形剤として、酵素の安定性を保つか、または増強し、および/または酵素のカプセル封入の割合を高める任意のものが挙げられる。ヒアルロン酸(ヒアルロナン;HA)は、第1の水相中に含まれる場合には、ヒアルロナン分解酵素のカプセル封入を高めることが本明細書においてわかる。HAはまた、ヒアルロナン分解酵素の安定性を保つ、および/または増強する。したがって、ヒアルロナン分解酵素およびHAを含有するMVL製剤が本明細書において提供される。このようなMVL製剤は、製造の際に、ヒアルロナン分解酵素ヒアルロン酸を1mg/mLのHA〜100mg/mLのHAもしくは約1mg/mLのHA〜100mg/mLのHAの間、例えば、10mg/mLのHA〜75mg/mLのHA、例えば、15mg/mLのHA〜50mg/mLのHA、特に、少なくとも1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上または約1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上または1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上の範囲で含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。いくつかの例では、MVL製剤は、製造の際に、1:500、1:400、1:300、1:200、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1もしくはそれ以上であるか、または約1:500、1:400、1:300、1:200、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1である、HA対ヒアルロナン分解酵素のモル比を含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。カプセル封入効率に応じて、得られるMVL製剤は、製造プロセスに使用されるHAのうち少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%またはそれ以上であるカプセル封入されたHAを含有する。例えば、得られるMVL製剤は、0.05mg/mL〜90mg/mLまたはその間、例えば、0.75mg/mL〜13.0mg/mL、例えば、1mg/mL〜10mg/mL、一般に、少なくとも0.1mg/mLのHAである量のHAを含有する。いくつかの例では、HA対ヒアルロナン分解酵素のモル比は、1:500、1:400、1:300、1:200、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1もしくはそれ以上であるか、または約1:500、1:400、1:300、1:200、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1もしくはそれ以上である。
ii.例示的MVL−ヒアルロナン分解酵素製剤
多小胞リポソーム(MVL)中にカプセル封入されている、ヒアルロナン分解酵素、例えば、PH20または組換えPH20などのヒアルロニダーゼを含有する製剤が、本明細書において提供される。MVL製剤は、製造の際に、溶解ヒアルロナン分解酵素2mg/mL未満のヒアルロナン分解酵素、例えば、0.1〜1.9mg/mLの酵素の間もしくは0.25〜1.9mg/mLの酵素の間またはおよそその間、例えば、0.5mg/mL〜1.5mg/mL、例えば、0.75mg/mL〜1.25mg/mL、特に、少なくとも1mg/mLまたは約1mg/mLのヒアルロナン分解酵素であるが、2mg/mL未満の酵素の濃度を含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。得られるMVL製剤は、懸濁液濃度において、0.1mg/mL〜1mg/mLの間またはおよそその間のヒアルロナン分解酵素、例えば0.2mg/mL〜0.5mg/mL、例えば、少なくとも0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLまたは約0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLの酵素、特に、少なくとも、0.3mg/mLの酵素を含有する。
いくつかの例では、製剤の製造において使用される第1の水性成分は、中性pHまたはその付近である。バッファーまたは水溶液のpHを調整することは、当業者のレベルの範囲内である。一般に、MVL製剤は、製造の際に、6.0〜7.5、6.0〜7.0もしくは6.0〜6.5の間またはおよそその範囲、特に、少なくとも6.0または約6.0、例えば、少なくとも6.5または約6.5であるpHを有する第1の水溶液を使用することによって得られる。
他の例では、第1の水性成分は、浸透圧賦形剤などの1種または複数の賦形剤を含有し得る。特に、賦形剤は、ヒアルロナン分解酵素の安定性を高め、ヒアルロナン分解酵素のカプセル封入の割合を高めるものまたはヒアルロナン分解酵素の安定性を高め、カプセル封入の割合も高めるものである。賦形剤の限定されない例として、スクロース、塩化カルシウム(CaCl)、グリセロール、デキストラン、PEG(例えば、PEG−6000)、ヒアルロン酸(HA)、プロリン、Arg−HCl、ソルビトール、トレハロースまたはヒト血清アルブミン(HSA)または上記のいずれかの組合せが挙げられる。例えば、例示的MVL製剤は、製造の際に、1mM〜50mMのCaCl、例えば、5mM〜25mMのCaCl、例えば、10mM〜20mMのCaCl、特に、少なくとも10mM、15mMもしくは20mMのCaClまたは約10mM、15mMもしくは20mMのCaClまたは10mM、15mMもしくは20mMのCaClを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。他の例では、例示的MVL製剤は、ボルテックスミキサーを使用し、製造の際に、有機溶媒相に対するヒアルロナン分解酵素の初期曝露を最小にするために、10μl〜500μlのグリセロール、例えば、100μl〜200μl、例えば、少なくとも150μlまたは約150μlまたは150μlのグリセロールを含有する中間相上に層状にされた第1の水性成分を使用することによって得られる。さらなる例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、0.01%〜1%の間またはおよそその間のデキストラン(例えば、デキストラン40,000)、例えば、0.05%〜0.5%のデキストラン、例えば、少なくとも0.1%または約0.1%または0.1%のデキストランを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。他の例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、0.01%〜1%の間またはおよそその間のPEG(例えば、PEG−6000)、例えば、0.05%〜0.5%のPEG、例えば、少なくとも0.1%または約0.1%または0.1%のPEGを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。他の例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、1mM〜1Mの間またはおよそその間のプロリン、例えば、10mM〜500mMのプロリン、例えば、少なくとも100mMまたは約100mMまたは100mMのプロリンを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。さらなる例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、1mM〜1Mの間またはおよそその間のArg−HCl(例えば、pH6.44)、例えば、10mM〜500mMのArg−HCl、例えば、少なくとも100mMまたは約100mMまたは100mMのArg−HClを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。さらなる例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、1%〜20%の間またはおよそその間のソルビトール、例えば、5%〜15%のソルビトール、例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上または約5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上または5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上のソルビトールを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。いくつかの例では、例示的MVL製剤は、製造の際に、1%〜20%の間またはおよそその間のトレハロース、例えば、5%〜15%のトレハロース、例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上または約5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上または5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上のトレハロースを含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。上記の任意のものの組合せを使用できることは理解される。
特定の例では、MVL製剤は、製造の際に、1mg/mLのHA〜100mg/mLのHAまたはおよそ1mg/mLのHA〜100mg/mLのHAの間、例えば、10mg/mLのHA〜75mg/mLのHA、例えば、15mg/mLのHA〜50mg/mLのHA、特に、少なくとも1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上または約1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上または1mg/mLのHA、2mg/mLのHA、3mg/mLのHA、4mg/mLのHA、5mg/mLのHA、6mg/mLのHA、7mg/mLのHA、8mg/mLのHA、9mg/mLのhA、10mg/mLのHA、11mg/mLのHA、12mg/mLのHA、13mg/mLのHA、14mg/mLのHA、15mg/mLのHA、16mg/mLのHA、17mg/mLのHA、18mg/mLのHA、19mg/mLのHA、20mg/mLのHA、25mg/mLのHA、30mg/mLのHA、40mg/mLのHA、50mg/mLのHAもしくはそれ以上の範囲のヒアルロン酸(HA)を含有する第1の水性成分を使用することによって得られる。カプセル封入効率に応じて、得られるMVL製剤は、製造プロセスに使用されるHAのうち少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%またはそれ以上であるカプセル封入されたHAを含有する。例えば、得られるMVL製剤は、HAを0.05mg/mL〜90mg/mLまたは0.05mg/mL〜90mg/mLの間、例えば、0.75mg/mL〜13.0mg/mL、例えば、1mg/mL〜10mg/mL、一般に、少なくとも0.1mg/mLのHAである量で含有する。
中性脂質の混合物、両親媒性脂質の混合物を含有する、ヒアルロナン分解酵素をカプセル封入する、本明細書において提供されるMVL製剤が調製される。脂質製剤のための例示的中性脂質および両親媒性脂質は、上記に提供されている。一般に、製剤はまた、コレステロールも含有する。いくつかの例では、製剤は、DPPGをさらに含有する。例えば、中性脂質成分は、25/75(徐放性/速放性)、50/50、75/25または90/10、特に、50/50のモル比範囲で、徐放性中性脂質(例えば、トリオレインまたは他の徐放性中性脂質)および速放性中性脂質(例えば、トリカプリリンまたは他の速放性中性脂質)の混合物を含有する。両親媒性(amphipatic)脂質成分はまた、一般に、DEPCおよびDOPCを、50/50、75/25または90/10、特に、50/50のモル比(DEPC/DOPC)で含有する混合物である。例えば、MVL製剤は、製造の際に、19.8mM DEPC、30mMコレステロール、3.75mMトリオレインを含有する混合物と、19.8mM DOPC、30mMコレステロールおよび3.75mMトリカプリリンを含有する混合物の50:50混合物として、揮発性有機溶媒中の両親媒性脂質および中性脂質を使用することによって得られる。例示的MVL製剤は、表19に示されている。
iii.MVL共製剤
ヒアルロナン分解酵素と同時カプセル封入された他の治療薬をさらに含有するMVL共製剤が本明細書において提供される。他の治療薬は、当業者に公知の任意の薬物または薬剤であり得る。他の薬剤は、親水性または疎水性であり得る。一般に、このようなリポソーム製剤の作製では、節D.2、特に、小節iおよびiiにおいて上記に記載された手順およびパラメータが使用され得る。例えば、MVL製剤は、一般に、製造の際に、中性および両親媒性脂質の混合物を使用することによって調製される。本明細書において記載されるように、中性および両親媒性脂質は、各々、混合物として提供され得る。一般に、製剤はまた、コレステロールも含有する。いくつかの例では、製剤は、DPPGをさらに含有する。
いくつかの例では、MVL共製剤は、ヒアルロナン分解酵素および他の薬剤を含有する第1の水性成分を、有機溶媒中の脂質成分と混合することによって調製される。他の例では、他の薬剤は、疎水性薬物であり、MVL共製剤は、ヒアルロナン分解酵素を含有する第1の水性成分と、疎水性薬物も含有する有機溶媒中の脂質成分を混合することによって調製される。有機溶媒中に脂質成分とともに疎水性薬物を含むことが、疎水性薬物の、MVLの脂質相へのカプセル封入またはインターカレーションをもたらすことが本明細書においてわかる。したがって、ヒアルロナン分解酵素と組み合わせて作製する場合には、MVL製剤は、同一製剤中に同時カプセル封入された親水性および疎水性薬物を含有し、それによって、ヒアルロナン分解酵素は、水相中にあり、疎水性薬物は、脂質相中にある。当業者に公知の任意の疎水性薬物は、ヒアルロナン分解酵素とともにMVL製剤中に同時カプセル封入され得る。このような疎水性薬物として、それだけには限らないが、ドセタキセル、プレドニゾン、プレドニゾロン、イブプロフェン、クロトリアマゾール(clotriamazole)、リスペリドン、クエン酸タモキシフェン、ジアセパン(diasepan)、NPHインスリン、ベンゾジアゼピン、クロフィブラート、クロルフェニラミン、ジニトラート、ジゴキシン、ジギトキシン、酒石酸エルゴタミン、エストラジオール、フェノフィブラート、グリスコフルビン(griscofulvin)、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、イソソルビド、メドロゲストン、オキシフェンブタゾン、ポリチアジド、プロゲンステロン(progensterone)、スピロノラクトン、トルブタミド、10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロ−ヘプテン−5−カルボキサミド、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−カルボキサミド、フィナステリドまたはデュタステリドなどの5α−レダクターゼ阻害剤および当業者に公知の他のものが挙げられる。
疎水性薬物を含有するMVL共製剤の作製に関して、脂質共製剤粒子の形態は、薬物濃度および脂質濃度によって影響を受け得るということが、本明細書においてわかる。活性カプセル封入薬物の活性を保持しながら、治療的適用にとって十分な形態の粒子を得るために、薬物および脂質の最適濃度を決定することは、当業者のレベルの範囲内である。実施例は、形態および活性を評価およびモニタリングするための手順を例示する。
一例では、疎水性薬物の濃度が、5mg/mLもしくは5mg/mL未満または約5mg/mLもしくは5mg/mL未満、一般に、0.1mg/mL〜5mg/mLの間またはおよそその間であるMVL共製剤が、作製される。さらに、共製剤の製造の際に、高い総脂質濃度を使用するMVL共製剤が作製され得る。例えば、本明細書において提供される共製剤の作製では、脂質の濃度は、20mMを超える、例えば、20mM〜100mM、例えば、30mM〜60mMである、両親媒性脂質(例えば、DEPCまたはDOPCまたはそれらの混合物)の量;3mMまたは3mMを超える、例えば、4mM〜20mM、例えば、5mM〜12mMである量の中性脂質(例えば、トリオレインまたはトリカプリリンまたはそれらの混合物)の量;3mMを超える、例えば、4mM〜20mM、例えば、5mM〜12mMであるDPPGの量;および/または15mMを超える、例えば、15mM〜100mM、例えば、20mM〜80mMまたは30mM〜60mM、例えば、少なくとも30mMであるコレステロールの量を含み得る。
本明細書における特定の例では、他の薬剤は、本明細書において記載されるようなBPHを治療するのに適した薬剤である。このような薬剤は、以下の節Fに示される任意のものを含む。例えば、薬剤は、ステロイド系抗アンドロゲン薬、非ステロイド系抗アンドロゲン薬または5α−レダクターゼ阻害剤などの抗アンドロゲン薬;α1−アドレナリン受容体アンタゴニストなどのα遮断薬;またはボツリヌス毒素もしくは修飾ボツリヌス毒素であり得る。特定の例では、他の薬剤は、疎水性5α−レダクターゼ阻害剤フィナステリドまたはデュタステリドである。例えば、本明細書において提供されるMVL製剤は、ヒアルロナン分解酵素が、水相中にあり、フィナステリドまたはデュタステリドが、脂質相中にあるものを含む。例示的MVL共製剤は、本明細書において実施例8および表20に示されている。このようなMVL共製剤は、本明細書において記載されるようなBPHの治療において使用され得る。
iv.カプセル封入および効率の評価
リポソームサンプル中に存在するタンパク質の相対量を評価するためのアッセイは、当業者に公知である。例えば、このようなアッセイとして、それだけには限らないが、高分子量タンパク質(HMWP)、例えば、凝集物を特性決定するサイズ排除クロマトグラフ−HPLC(SEC−HPLC)およびRP−HPLCによる含量分析が挙げられる。これらの例では、親水性タンパク質薬物を抽出する方法は、特定の界面活性剤を必要とすることが本明細書においてわかる。例えば、RP−HPLCによる含量分析のための1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の使用。他の例では、HMWP凝集体を特性決定するための、SEC−HPLC分析のための1%オクチルグルコシドの使用。
例えば、カプセル封入効率は、例えば、本明細書において記載されるようなRP−HPLCを使用して、得られたMVL製剤のヒアルロナン分解酵素または他の薬物の含量(懸濁液濃度および/または遊離濃度パーセント)を決定することによって評価できる。カプセル封入の効率を決定できる。カプセル封入パーセントは、プロセスの第1の水溶液中に使用されるカプセル封入されるべき化合物の総量に対する、リポソーム製造プロセスの最終懸濁液中のカプセル封入された化合物の量の割合に100をかけたものとして決定できる。カプセル封入パーセントは、一般に、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%もしくはそれ以上または10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%もしくはそれ以上または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%もしくはそれ以上である。
他の例では、薬物負荷能、すなわち、生成物リポソーム懸濁液中に負荷される活性薬剤(例えば、ヒアルロナン分解酵素または他の薬物)の量を決定できる。薬物負荷能は、リポソーム製剤の単位容量中で利用可能な活性薬剤の量の尺度であり、リポソーム自体の中のカプセル封入される容量のパーセントに対するリポソーム懸濁液の単位容量あたりのカプセル封入された薬物の割合である。それは、低いパーセントの遊離薬物については、懸濁液のリポクリットで除した、懸濁液中の活性薬剤の濃度にほぼ等しい。リポクリットとは、総懸濁液容量に対するリポソームによって占められた容量の割合に100をかけたものである。
他の例では、カプセル封入されたヒアルロナン分解酵素または他の薬物の安定性は、製剤中の活性薬剤(例えば、PH20などのヒアルロナン分解酵素または他の薬物)の凝集、溶解度および/または活性を評価することによって決定できる。例えば、ヒアルロナン分解酵素の活性(総活性および/または遊離酵素活性パーセント)は、基質の切断または分解を評価するアッセイによって、本明細書に例示されるように決定できる。このようなアッセイは、当業者に公知である。例えば、ヒアルロニダーゼについてのUSP XXIIアッセイは、酵素をヒアルロン酸(HA)と37℃で30分間反応させた後に残存する未分解ヒアルロン酸またはヒアルロナン基質の量を測定することによって、活性を間接的に決定する(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。任意のヒアルロニダーゼの活性をユニットで確かめるために、アッセイにおいてヒアルロニダーゼ参照標準(USP)または国民医薬品集(NF)標準ヒアルロニダーゼ溶液を使用してもよい。一例では、活性を、マイクロ濁度アッセイを使用して測定する。これは、ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合する場合の不溶性沈殿物の形成に基づいている。活性は、ヒアルロニダーゼをヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)とともに一定期間(例えば、10分)インキュベートすること、次いで、酸性化血清アルブミンの添加によって未消化ヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させることによって測定する。さらなる発展期間の後、得られたサンプルの濁度を640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対するヒアルロニダーゼ活性に起因する濁度の低下が、ヒアルロニダーゼ酵素活性の尺度である。他の例では、ヒアルロニダーゼ活性を、ヒアルロニダーゼととものインキュベーション後に、残存するビオチン化ヒアルロン酸が測定されるマイクロタイターアッセイを使用して測定する(例えば、Frost and Stern (1997) Anal. Biochem. 251:263-269、米国特許公報第20050260186参照のこと)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基をビオチン化し、ビオチン化ヒアルロン酸基質は、マイクロタイタープレートに共有結合している。ヒアルロニダーゼとともにインキュベートした後、残存するビオチン化ヒアルロン酸基質を、アビジン−ペルオキシダーゼ反応を使用して検出し、既知活性のヒアルロニダーゼ標準との反応後に得られたものと比較する。ヒアルロニダーゼ活性を測定するための他のアッセイはまた、当技術分野で公知であり、本明細書における方法において使用できる(例えば、Delpech et al., (1995) Anal. Biochem. 229:35-41; Takahashi et al., (2003) Anal. Biochem. 322:257-263参照のこと)。
E.投与量、投与および治療方法
上記のヒアルロナン分解酵素のいずれか、特に、MVL製剤などのヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤を、ヒアルロナン関連疾患または状態の治療のために投与できる。例えば、上記のヒアルロナン分解酵素のいずれか、特に、MVL製剤などのヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤は、良性前立腺肥大症(BPH)の治療のために投与できる。
組成物および製剤は、任意の所望の経路、例えば、腫瘍内、関節内(関節中への)、眼内、筋肉内の、くも膜下腔内、腹腔内、皮下、静脈内の、リンパ内、経口および粘膜下および頬側(例えば、舌下)によって投与できる。本明細書において提供された組成物は、通常、前立腺内経路(経尿道的、経会陰的および経直腸的)による投与のために製剤される。このような経路に適した製剤は、当業者に公知である。投与は、局所(local)、局所(topical)または全身であり得る。治療を必要とする領域への局所投与は、例えば、それだけには限らないが、手術の間の局所注入によって、注射またはカテーテルによる点滴注入によって、坐剤によって、または移植錠によって達成され得る。組成物はまた、他の生物学的に活性な薬剤とともに、逐次、間欠性に、または同一組成物中のいずれかで投与され得る。投与はまた、制御放出製剤およびポンプなどによるデバイス制御放出を含めた制御放出系を含み得る。
任意の所与の場合における最も適した経路は、疾患の進行、疾患の重篤度、治療に使用される特定の組成物(単数または複数)などの種々の因子に応じて変わる。本明細書における目的上、ヒアルロニダーゼおよび他の薬剤が、それらが高い治療濃度を達成し、前立腺中に局在されるよう投与されることが望ましい。したがって、前立腺内注射などによる前立腺への直接投与が考慮される。例えば、局所投与は、シリンジまたはニードルなどの注射装置を含有する他の製造品などからの注射によって達成され得る。他の例では、局所投与は、注入によって達成され得、これは、ポンプまたは他の同様のデバイスの使用によって促進され得る。他の投与様式も考慮される。医薬組成物は、各投与経路にとって適当な投与形に製剤され得る。
前立腺への直接的な薬剤の投与は、当業者に公知の手順である。肥大化した前立腺中の好ましい注射部位として、左右の外側葉および中葉が挙げられる。1つの葉が注射されようと、複数の葉が注射されようと、注射(単数または複数)の容量および各葉内の位置は、BPHの診断のもとになったデータを使用してか、または薬剤の投与を補助するために使用される超音波機器によって集められた情報を使用してのいずれかで、主治医によって決定され得る。
前立腺内注射は、指での直腸管理および/または超音波誘導下で前立腺中に挿入された長い、細針によって達成される。注射は、普通、局所麻酔下で行われる。注射溶液は、リドカインで希釈され得る。注射の際、針は、組成物(単数または複数)の最良の可能性ある分布を得るために頻繁に再配置され得る。前立腺中に注射される液体またはゲルの通常の容量は、前立腺容量のおよそ20〜30%である。開示された組成物の前立腺への導入のために、いくつかの注射経路が利用可能である。
1つの投与経路は、経尿道的前立腺内(病巣内)注射によってである。経尿道的技術では、直前にカテーテル法を行う。注射される組成物の容量は、通常、1〜20cc/葉で変わる。注射された組成物の効果を最適化するために、可膨張性のバルーンを用いて前立腺尿道を広げることが望ましいことがある。膀胱鏡検査によって挿入されたバルーンは、尿道に流れ込む多孔性の管系によって注射された酵素溶液の即時放出を阻害する。この注射経路の利点は、この方法によって、病理学のための結節性領域の直接的な膀胱鏡検査可視化および代謝不活性化のリスクを伴わずに所望の位置に高濃度の組成物を配置することが可能になることである。前立腺の直接注射の際に患者によって経験される疼痛および不快感は、通常、最小のものであり、筋肉内注射に相当する。
あるいは、前立腺注射の経会陰的または経直腸的経路が使用され得る。注射の経会陰的経路は、超音波および/または指診によって誘導される会陰から前立腺への22g×20cmの吸引生検針の配置を含む。やはり、1〜20ccの開示された組成物が、通常、前立腺の各片側葉中に注射される。注射は、一般に、局所麻酔下で行われる。注射の際、針は、組成物の最良の可能性ある分布を得るために頻繁に再配置される。針の位置は、一定の指での直腸管理下に維持しながら超音波によって誘導され得る。注射の経会陰的経路は、注射後細菌感染による合併症の可能性の低減という点で、経尿道的または経直腸的経路のいずれかよりも良好な代替案であり得る。
経直腸的経路によって、指での直腸触診を実施しながらの直腸壁を通る針の導入および前立腺の注射が可能となる。経直腸的経路による注射は、わずかに曲がった22g×20cmの可動性吸引生検針を用いて実施され得る。Franzen針ガイド(Precision Dynamics、San Fernando、CA)の使用は、例えば、針が、超音波および/または触覚ガイダンス技術下で被検病変に安全に向けられるのを可能にする。滅菌前立腺針ガイドを、手袋をした人差し指上に配置する。指サックを針ガイドの上に配置する。人差し指および針ガイドを、直腸中に挿入し、前立腺の被検病変を触診する。針を、ガイドを通して挿入し、組織中に進める。およそ1〜20ccの溶液が、前立腺の片側葉中に注射され得る。十分な物質を注射するために、針を3〜5回前後に動かすことができる。針穿刺の際の疼痛を低減するために、麻酔ゼリーを注射前に適用してもよい。他のデバイスは、当業者に周知であり、本明細書における方法において適用および使用してもよい。例えば、GelTx(商標)−超音波イメージング(例えば、経直腸バイプレーンプローブを使用して)と組み合わせた前立腺内ゲル注射治療は、注射針配置のための優れたイメージングガイダンスを提供し得る(例えば、ProSurg、San Jose、CA参照のこと)。
医薬上活性な薬剤(単数または複数)の濃度は、注射が、所望の薬理学的効果をもたらすのに有効な量を提供するよう調整される。正確な用量は、当技術分野で公知であるように、患者または動物の年齢、体重および状態に応じて変わる。単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアルまたは針を有するシリンジにパッケージングされる。医薬上活性な薬剤(単数または複数)を含有する液体溶液または再構成される粉末調製物の容量は、疾患の重篤度およびパッケージングのために選択される特定の製造品の関数である。非経口投与のためのすべての調製物は、当技術分野で公知であり、実施されるように、無菌でなくてはならない。
投与法は、選択された薬剤の、タンパク質分解ならびに抗原性および免疫原性反応による免疫学的介入などの分解プロセスに対する曝露を低減するために使用され得る。このような方法の例として、治療部位での局所投与が挙げられる。治療薬のペグ化は、タンパク質分解に対する抵抗性を高め、血漿半減期を増大し、抗原性および免疫原性を低減すると報告されている。ペグ化方法論の例は、当技術分野で公知である(例えば、Lu and Felix、Int. J. Peptide Protein Res., 43: 127-138, 1994; Lu and Felix, Peptide Res., 6: 140-6、1993; Felix et al., Int. J. Peptide Res., 46: 253-64, 1995; Benhar et al., J. Biol. Chem., 269: 13398-404, 1994; Brumeanu et al., J Immunol., 154: 3088-95, 1995を参照のこと;Caliceti et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55(10):1261-77およびMolineux (2003) Pharmacotherapy 23 (8 Pt 2):3S-8Sも参照のこと)。ペグ化はまた、インビボでの核酸分子のデリバリーにおいても使用され得る。例えば、アデノウイルスのペグ化は、安定性および遺伝子導入を増大させ得る(例えば、Cheng et al. (2003) Pharm. Res. 20(9): 1444-51参照のこと)。
医薬上治療上活性な薬剤およびその誘導体は、通常、単位投与形で、または複数回投与形で製剤され、投与される。各単位用量は、必要な製薬担体、媒体または希釈液と関連して所望の治療効果をもたらすのに十分な所定の量の治療上活性な薬剤を含有する。単位用量形の例は、アンプルおよびシリンジおよび個々にパッケージングされた錠剤またはカプセル剤が挙げられる。単位用量形は、画分またはその複数回のもので投与され得る。複数回用量形は、分離された単位用量形で投与されるべき、単一容器中にパッケージングされた複数の個々の単位投与形である。複数回用量形の例として、バイアル、錠剤またはカプセル剤の瓶またはパイントもしくはガロン瓶が挙げられる。したがって、複数回用量形は、パッケージングにおいて分離されていない複数の単位用量である。一般に、0.005%〜100%の範囲の有効成分を含有し、非毒性担体でバランスがとられた投与形または組成物が調製され得る。
一定レベルの投与量が維持されるような徐放性(slow−release)または徐放性(sustained−release)系の埋め込みも(例えば、米国特許第3,710,795号参照のこと)本明細書において考慮される。例えば、MVL製剤または他の徐放性製剤のいずれかが投与され得る。このような組成物中に含有される活性薬剤のパーセンテージは、その特定の性質、ならびに薬剤の活性および対象が必要としていることに高度に依存している。制御放出および徐放性製剤もまた、複数回および単回用量形で提供され得る。
例えば、本明細書において提供されるMVL製剤などの脂質製剤は、シリンジで提供される。いくつかの例では、シリンジは、膜小胞を含有する単一チャンバーを有する。他の例では、シリンジは、それによって、一方のチャンバー中に膜小胞があり、BPHを治療するための他の薬剤が他のチャンバー中にある、2つのチャンバーを有する。シリンジは、単回使用または複数回使用注射用であり得る。他の例では、製剤は、滅菌容器、例えば、単回使用または複数回使用容器中で提供される。複数回使用容器として提供される場合には、一般に、防腐剤が含まれる。さらに、シリンジまたは容器および使用説明書を含有するキットが提供される。
特定の例では、BPHの症状を寛解させるか、または低減するのに治療上有効である量または投与計画で投与される治療薬。治療上有効な量は、少なくとも1週間、一般に、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月またはそれ以上の間、対象においてBPHの1種または複数の症状を低減するのに十分な投与量である。改善または治療の成功の指標として、閉塞性前立腺組織の大きさの減少および尿路閉塞の症状の軽減が挙げられる。治療の効果の客観的評価は、尿流動態フロー分析、経尿道的検査、経直腸的超音波検査を含めた標準法によって、または国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score)(IPSS)または米国泌尿器科学会症状指数スコア(American Urological Association Symptom Index Score)(AUAスコア)などの閉塞性症状スコアリング質問表によって測定され得る。
BPH治療薬は、治療上有効な用量で提供される。治療上有効な濃度は、本明細書において提供されるアッセイなどの既知インビトロおよびインビボ系において化合物を試験することによって実験的に決定され得る。組成物中の選択された治療薬の濃度は、吸収、不活性化および排泄速度、物理化学的特徴、投与量スケジュールおよび投与される量ならびに当業者に公知の他の因子に応じて変わる。例えば、正確な投与量および治療期間は、治療されている組織の関数であり、既知試験プロトコールを使用してか、またはインビボもしくはインビトロ試験データからの外挿によって実験的に決定され得るということは理解される。濃度および投与量値はまた、治療される個体の年齢によって変わり得るということは留意されるべきである。任意の特定の対象に対して、特定の投与計画は、個体の必要性および製剤を投与しているか、もしくは製剤の投与を監督している人物の専門的判断に従って経時的に調整されなくてはならないということ、および本明細書に示される濃度範囲は、単に例示的なものであって、その範囲を制限しようとするものではないということはさらに理解されるべきである。BPHの治療のために投与されるべき選択されるBPH治療薬(単数または複数)の量は、標準臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロアッセイおよび動物モデルは、最適投与量範囲を同定するのに役立つよう使用され得る。
したがって、実験的に決定され得る正確な投与量は、特定の治療用調製物、投与計画および投与スケジュール、投与経路および疾患の重篤度に応じて変わり得る。したがって、正確な投与量および量は、当業者に公知であるか、または文献またはインビトロもしくはインビボ(例えば、動物モデル)実験に基づいて実験的に決定され得る。例えば、前立腺内投与のための投与量または量は、経口または静脈内投与に使用される投与量および量またはその投与量から外挿され得る投与量もしくは量であり得る。当業者ならば、特定のBPH治療薬の投与のための投与計画について精通している。
可溶性ヒアルロニダーゼは、本明細書において提供された組合せ、製剤および組成物において提供される。選択された可溶性ヒアルロニダーゼは、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で含まれる。治療上有効な濃度は、本明細書において提供されたか、もしくは当技術分野で公知のアッセイを使用することによってなど、既知インビトロおよびインビボ系において試験することによって実験的に決定され得る(例えば、Taliani et al. (1996) Anal. Biochem., 240: 60-67; Filocamo et al. (1997) J Virology, 71: 1417-1427; Sudo et al. (1996) Antiviral Res. 32: 9-18; Buffard et al. (1995) Virology, 209:52-59; Bianchi et al. (1996) Anal. Biochem., 237: 239-244; Hamatake et al. (1996) Intervirology 39:249-258; Steinkuhler et al. (1998) Biochem., 37: 8899-8905; D’Souza et al. (1995) J Gen. Virol., 76:1729-1736; Takeshita et al. (1997) Anal. Biochem.、247:242-246参照のこと;また、例えば、Shimizu et al. (1994) J. Virol. 68:8406-8408; Mizutani et al. (1996) J. Virol. 70:7219-7223; Mizutani et al. (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun., 227:822-826; Lu et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci (USA)、93:1412-1417; Hahm et al., (1996) Virology, 226:318-326; Ito et al. (1996) J. Gen. Virol., 77:1043-1054; Mizutani et al. (1995) Biochem. Biophys. Res. Commun., 212:906-911; Cho et al. (1997) J. Virol. Meth. 65:201-207も参照のこと、次いで、ヒトのための投与量については、それから外挿される。
患者の状態が改善すると、必要に応じて、化合物または組成物の維持量が投与され得、投与量、投与形または投与の頻度またはそれらの組合せは修飾され得る。いくつかの場合には、対象は、疾患症状の何らかの再発の際には長期的に、または予定された投与量に基づいて間欠性の治療を必要とし得る。
特定の例では、本明細書において提供された、共製剤または他の脂質製剤を含めたMVL製剤は、0.1mL〜50mLの、またはおよそその間の、例えば、0.5mL〜10mL、例えば、1mL〜2mLの感染または注入のための投与量容積で投与される。一般に、ヒアルロナン分解酵素とともにカプセル封入された、少なくとも1mLのMVL製剤または他の脂質製剤がデリバリーされる。製剤は、1つの部位または複数の異なる前立腺部位に注射され得る。例えば、前立腺の各葉中に1回の注射が行われる。BPHの治療の目的上、MVL製剤は、経直腸的超音波下で経直腸的、経尿道的または経会陰的注射によって前立腺中にデリバリーされる。MVL製剤は、少なくとも1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、7カ月に1回、8カ月に1回、9カ月に1回、10カ月に1回、11カ月に1回または1年に1回、投与計画で投与される。例えば、MVL製剤は、3〜6カ月毎に投与される。
F.良性前立腺肥大の治療のための併用療法
上記のヒアルロナン分解酵素のいずれか、特に、上記のMVL製剤などのヒアルロナン分解酵素の徐放性製剤は、BPHの治療に適した1種または複数の他の薬剤と一緒に投与できる。他の薬剤は、ヒアルロナン分解酵素(例えば、カプセル封入されたヒアルロナン分解酵素を含有するMVL製剤)に対して、逐次(例えば、前に、または後に、または間欠性に)または同時に投与できる。ヒアルロナン分解酵素および補完的治療作用様式を有する他の治療薬は、同時または逐次投与された場合にBPHの治療を増強する。例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えば、PH20などのヒアルロニダーゼ、特に、本明細書において提供されるような膜小胞中にカプセル封入された任意のものを、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素およびBPHを治療するのに有用な他の薬剤のうち1種または複数と組み合わせることができる。抗アンドロゲン剤として、例えば、ステロイド抗アンドロゲン剤、非ステロイド抗アンドロゲン剤および/または5α−レダクターゼ阻害剤が挙げられる。任意の組合せが考慮される。さらに、上記のように、BPHを治療するのに適した薬剤などの、それにカプセル封入された他の治療薬をさらに含有するMVL共製剤などの徐放性製剤を作製できる。したがって、このような例では、ヒアルロナン分解酵素および他の薬剤は、MVL共製剤のデリバリーの際に同時に投与される。BPHの治療に適した他の薬剤が、本明細書において提供されるようなMVL共製剤と組み合わせてさらに投与され得る。
本明細書において以下に記載されるような、BPHの治療のための他の薬剤は、当技術分野で公知である。このような薬剤は、単独で使用されても、本明細書において提供されるヒアルロナン分解酵素製剤との種々の組合せで使用されてもよい。例えば、BPH薬の組合せは公知である。BPHを治療するために、5α−レダクターゼ阻害剤と、α遮断薬、フィナステリドおよびテラゾシン(米国特許第5,753641号)、ノコギリヤシ(saw palmetto)抽出物およびテラゾイン(terazoin)(米国特許第6,200,573号)およびデュタステリドおよびタムスロシン(GSKウェブサイト)との経口投与される組合せが使用されてきた。フィナステリドなどの5α−レダクターゼ阻害剤およびフルタミドまたはビカルタミドなどの非ステロイド系抗アンドロゲン薬の組合せは、前立腺癌のために利用されてきた(米国特許第5,994,362号)。また、ボツリヌス毒素は、併用療法を用いる追加療法として使用されてきた。ボツリヌス毒素A(200〜600U)の単回前立腺内注射を施された5α−レダクターゼ阻害剤およびα遮断薬の併用療法を受けている患者は、治療の6カ月内に、併用療法のみを受けている患者と比較して、前立腺容量の低減および尿路症状スコアの改善を示した。治療後12カ月では、併用療法を受けている患者と併用療法およびBotox追加療法を受けているものとの間に、相違は観察されなかった(Kuo et al, Scand J Urol Nephrol. 43(3):206 (2009)。
1種または複数のBPH治療薬ととものヒアルロナン分解酵素の医薬組成物および組成物の組合せが、本明細書において提供される。ヒアルロナン分解酵素および他の薬剤は、別個に投与されても、一緒に投与されてもよい。別個に製剤される場合には、別個の組成物が逐次、間欠性に、または他の成分の後に投与されてもよい。BPH治療薬およびヒアルロナン分解酵素は、一緒に、逐次または間欠性に投与するための別個の組成物としてパッケージングされ得る。組合せは、キットとしてパッケージングされ得る。
ヒアルロナン分解酵素および他の薬剤の投与経路は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、1種の薬剤は、経口的にまたは静脈内に投与され、他の薬剤は、前立腺内投与によってデリバリーされる。例えば、ヒアルロナン分解酵素が抗アンドロゲン薬またはα遮断薬とともに投与される場合には、抗アンドロゲン薬またはα遮断薬は、経口的に与えられ得るのに対し、酵素は、通常、静脈内または前立腺中に直接的に投与される。BPHを治療する目的上、治療用組合せを投与する特に有用な様式は、薬剤を共製剤として前立腺に直接的にデリバリーすることによってである。抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および他のBPH治療薬のうち1種または複数と組み合わせたヒアルロナン分解酵素は、例えば、前立腺内注射、経尿道的、経会陰的または経直腸的によって、前立腺に直接的にデリバリーされ得る。本明細書において論じられるように、薬剤が、ひとたび前立腺に導入されると、長期間かけてゆっくりと放出され、その結果、長期の治療効果および治療効果を達成するのに必要な治療数の低減をもたらすように、ヒアルロナン分解酵素と1種または複数の他の薬剤のこのような組合せを製剤することはさらに有利である。
他の治療薬(例えば、抗アンドロゲン剤、α遮断薬およびボツリヌス毒素)の用量は、状態、すなわち、前立腺の大きさおよび症状の重篤度、投与経路、患者および投与されている治療薬の特定の組合せに応じて変わり得る。
他の薬剤と組み合わせたヒアルロニダーゼの濃度および投与量、所望の治療効果を得るために必要な最小数に治療数を低減するための特定の製剤および投与様式を利用することは特に有利である。他の治療薬と組み合わせた本明細書において提供されるヒアルロナン分解酵素の製剤の前立腺内注射は、治療が、毎月、年4回、年2回、年1回のみ、または最適には単回のみ投与されることを可能にしなくてはならない。
また、薬剤および薬剤の組合せの正確な投与量および治療期間は、既知試験プロトコールを使用して、またはインビボもしくはインビトロ試験データからの外挿によって、実験的に決定され得るということは理解される。濃度および投与量の値はまた、軽減されるべき状態の重篤度によって変わり得るということは留意されなければならない。任意の特定の対象に対して、特定の投与計画は、個体の必要性および組成物を投与しているか、もしくは組成物の投与を監督している人物の専門的判断に従って経時的に調整されなければならないということ、および本明細書に示される濃度範囲は、単に例示的なものであって、それらを含有する組成物および組合せの範囲または使用を制限しようとするものではないということはさらに理解されるべきである。組成物は、毎日、毎週、毎月、毎年または一度、投与され得る。一般に、投与計画は、毒性を制限するよう選択される。主治医は、毒性または骨髄、肝臓もしくは腎臓もしくは他の組織の機能障害のために、どのように、いつ治療を終了、中断するか、またはより少ない投与量に治療を調整するかは、承知しているということは留意されなければならない。逆に、主治医はまた、臨床反応が十分ではない場合には、どのように、いつ、治療をより高いレベルに調整するか(毒性副作用を妨げながら)も承知している。治療薬の投与は、米国食品医薬品局によって確立されたか、または医師用卓上参考書中に公開された最大投与量レベルを超えてはならない。
必要に応じて、特定の投与量および期間および治療プロトコールは、実験的に決定されるか、または外挿され得る。例えば、経口的にまたは静脈内に投与されるBPH治療薬の例示的用量は、前立腺中への直接注射のための適当な投与量を決定するための出発点として使用され得る。任意のBPH治療薬について、治療上有効である個々の投与量は、当技術分野で周知の種々の技術を使用して最初に推定され得る。例えば、用量は、細胞培養において決定されるようなIC50を含む循環濃度範囲を達成するよう、動物モデルにおいて処方され得る。ヒト対象にとって適当な投与量範囲は、例えば、細胞培養アッセイおよび他の動物研究から得られたデータを使用して決定され得る。
投与量レベルおよび投与計画は、既知投与量および投与計画に基づいて決定され得るか、または種々の因子に基づいて実験的に決定され得る。このような因子として、個体の体重、全身の健康状態、年齢、使用される特定の薬剤の活性、性別、食事、投与時間、投与頻度、排泄速度、治療薬の特定の組合せ、疾患の重篤度および経過、患者のその疾患に対する傾向、症状の所望の低減、治療医師の判断および投与される医薬品の有効性に影響を及ぼすと周知の他の因子が挙げられる。
BPHの治療のための例示的な他の薬剤は、以下に提供されている。BPHの治療のための薬剤は、当業者に公知である。以下に提供されるBPHの治療のための治療薬の考察は、単に例示のためのものであるということは理解される。本明細書における組成物および組み合わせ中のBPHの治療のための任意の薬剤を使用することは当業者のレベルの範囲内である。
1.抗アンドロゲン剤
男性における良性前立腺肥大症の発達におけるアンドロゲンの役割は、十分に実証されている(Wilsom, N. Engl. J. Med. 317, 628 (1987))。前立腺では、テストステロンは、酵素5αレダクターゼによって、強力なアンドロゲン性ホルモン5α−ジヒドロテストステロン(DHT)に変換される。前立腺の拡大は、DHTに応じて異なる。DHTは、細胞質内のサイトゾルアンドロゲン受容体に結合され、DHT−受容体複合体は、細胞核中に輸送され、ここで、成長に関与している遺伝子の転写を達成する。
抗アンドロゲン剤は、アンドロゲンのアンドロゲン受容体との結合を干渉し、ひいては、アンドロゲン性ホルモンが核に入り、前立腺に対してアンドロゲン性効果を発揮するのを防ぐことによってか、またはアンドロゲンの産生を干渉することによってその効果を発揮する薬剤の広いクラスである。アンドロゲン受容体を介して作用する抗アンドロゲン剤は、その化学構造に基づいてステロイド系または非ステロイド系抗アンドロゲン剤として分類される。ステロイド系抗アンドロゲン剤は、ステロイドの構造、すなわち、3つのシクロヘキサンおよび1つのシクロペンタン環からなる四環系炭化水素を有する。非ステロイド系抗アンドロゲン剤は、ステロイドの化学構造を有さない。
アンドロゲン受容体との結合によってアンドロゲン性ホルモンの作用を競合阻害する抗アンドロゲン剤は、BPHの治療のために承認されている薬物の1つのクラスである。これらの抗アンドロゲン薬は、ステロイド系薬物および非ステロイド系薬物を含む。
a.ステロイド系抗アンドロゲン剤
ステロイド系抗アンドロゲン薬として、それだけには限らないが、酢酸シプロテロン(CPA)(米国以外では、Androcur(登録商標)(Schering、Germany)として入手可能)またはCyprostat(登録商標)(Bayer、plc、United Kingdom)などのプロゲスチン化合物、酢酸メゲストロール(Megace(登録商標)、Strativa Pharmaceuticals、Woodcliff Lake、New Jersey)、酢酸メドロキシプロゲステロン(Provera(登録商標)、Pfizer、New York)、酢酸クロルマジノン(CMA)(日本において入手可能)、ザノテロン(WIN 49596と名づけられる、LGM Pharmaceuticals,Inc.、Boca Raton、Florida)および酢酸オサテロン(TZP−4238)(Takezawa et al. Prostate 1992; 21(4):315-329; Takezawa et al. Prostate 1993; 27:321-328)が挙げられる。アリルエステノール(Allylesternol)は、BPHの治療において有効であると示されている、プロゲステロン活性を有する合成ステロイドである(Noguchi et al., International Journal of Urology 5(5):466-470 (2007)参照のこと)。
BPHの治療において使用するための、本明細書において組み合わされるべき用量を実験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内である。8mg/kgまたは25mg/kgいずれかの徐放性酢酸クロルマジノン(CMA−SR)の単回用量を、ラットに前立腺内に注射した(Goya et al. (2006) Journal Compilation BJU International, 99:202-206)。
b.非ステロイド系抗アンドロゲン剤
非ステロイド系抗アンドロゲン薬として、それだけには限らないが、ビカルタミド(Casodex(登録商標)、AstraZeneca Wilmington、Del)、ニルタミド(Nilandron(登録商標)、Sanofi Aventis、Bridgewater、N.J);Anandron(登録商標)(Sanofi Aventis Australia Pty Ltd、Macquarie Park NSW 2113)、フルタミド(Eulexin(登録商標)、Schering Laboratories、Kenilworth、New Jersey);およびRU58642(Battman, et al., J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 64, 103 (1998))が挙げられる。非ステロイド系抗アンドロゲンRU58841(Kouting Chemical Co.Ltd.,Shanghai)は、脱毛のための局所治療として探求されてきたが、前立腺疾患のためのホルモン治療においても有効であり得る。
ビカルタミドの化学名は、(±)N[4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパンイミド(参照により本明細書に組み込まれる、Tuckerの米国特許第4,636,505号において記載された)である。ビカルタミドのR−エナンチオマーは、活性のほとんどを有する。医師用卓上参考書において公開されたCasodex(登録商標)の投与量ガイドラインでは、前立腺癌腫のための併用療法(すなわち、LHRH類似体と組み合わせたCasodex(登録商標))における通常の投与量は、1個の50mg錠剤の1日1回の経口投与であると報告されている。1日あたりの最大200mg投与量が、長期の臨床試験において耐容性良好であると報告されている。
Nilandron(登録商標)は、300mg/日、30日間と、その後の、150mg/日の推奨投与量で前立腺癌の治療のために承認されている(Nilandron Prescribing Information, products.sanofi-aventis.us/nilandron/nilandron.html参照のこと)。
他の適した非ステロイド系抗アンドロゲン剤として、Goldの米国特許第3,875,229号、Perronnet, et al.の米国特許第4,097,578号、Glen, et al.の米国特許第4,239,776号、Crossley, et al.の米国特許第4,386,080号、Gormley, et al.の米国特許第5,994,362号またはElbrecht, et al.の米国特許第5,872,150号に記載された(それら各々の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)非ステロイド系抗アンドロゲン剤が挙げられる。
BPHの治療において使用するために組み合わされるべき用量を実験的に決定することは当業者のレベルの範囲内にある。例えば、前立腺の転移性癌の治療のための、黄体(lutenizing)ホルモン放出ホルモン類似体と組み合わせた、ニルタミド(Nilandron(登録商標))150Casodex 50mg毎日。
c.5α−レダクターゼ阻害剤
BPHの治療のための承認を受けている他のクラスの抗アンドロゲン薬として、酵素5α−レダクターゼの阻害剤がある。酵素5α−レダクターゼは、I型およびII型の2つの形態で存在する。II型は、主に前立腺において発現される。5α−レダクターゼの阻害剤を用いる治療によって、DHTの産生を低減でき、前立腺組織の成長を遅くすることができる。5α−レダクターゼ阻害剤の例示的なものとして、それだけには限らないが、フィナステリド、デュタステリド、FR146687またはPNU157706が挙げられる。フィナステリドおよびデュタステリドを含めたこれらの5α−レダクターゼ阻害剤は、前立腺の成長の進行を防ぐことおよび前立腺の実際の縮小によるものであると考えられている。
フィナステリドは、合成4−アザステロイド化合物であり、5α−レダクターゼのII型形態を阻害することによって作用する。フィナステリドは、商標Proscar(登録商標)(Merck&Co.,Inc.、Whitehouse Station、N.J.)の下で利用可能である。フィナステリドは、化学名(5α,17β)−N−(1,1−ジメチルエチル(dimethethylethy))−3−オキソ−4−アザアンドロスト−1−エン−17−カルボキサミドである。フィナステリドは、酵素と安定な複合体を形成することによって5α−レダクターゼを阻害する。フィナステリドは、細胞質においてアンドロゲン受容体に対して親和性を有さないと報告されている。Rasmusson et al.の米国特許第4,220,735号、同4,377,584号、同4,760,071号および同4,859,681号には、フィナステリドの合成が記載されており、BPHの治療にとって有用な他の適した4−アザステロイド化合物が記載されている。フィナステリドの投与量は、組成物中に含まれるヒアルロナン分解酵素および他の治療薬の投与様式、治療効果、疾患の重篤度を考慮することによって決定され得、一般に、BPHの治療のために認められたガイドラインに従う。例として、フィナステリドの推奨1日投与量は、経口投与される5mgである。
デュタステリド(Duagen(登録商標)、Avodart(登録商標)、GlaxoSmithKline、Research Triangle Park、NC)、(5α,17β)−N−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−2−オキソ−4−アザアンドロスト−1−エン−17−カルボキサミドは、I型およびII型5α−レダクターゼの両方を阻害すると報告されている承認された合成4−アザステロイド薬である。デュタステリドの推奨された経口用量は、1日あたり0.5mgである。
FR156687はまた、インビボおよびインビトロで前立腺の成長を低減すると実証されている阻害剤である(例えば、Nakayama et al. (1997) Prostate, 31:241-9参照のこと)。他のいわゆる「二重阻害剤」は、PNU157706、[N−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロフェニル−プロピル)−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド]と名づけられている(diSalle, et al., J Steroid Biochem. Mol. Biol. 64、179 (1998))。
ハーブ系サプリメントノコギリヤシは、前立腺の健康のために摂取されており、5α−レダクターゼ阻害剤を含有する。
BPHの治療において使用するために、本明細書において組み合わされるべき用量を実験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内である。フィナステリドは、数年の治療期間の間、5mg/日で経口的に投与される(Lam et al. Urology, 2003 Feb;61(2):354-8)。デュタステリド(Avodart(登録商標))は、数年の治療期間の間0.5mg/日で経口的に投与される。
2.α遮断薬
α1−アドレナリン受容体アンタゴニスト(α遮断薬(blockers)またはα遮断薬(blocking gents))は、BPHの治療において使用されてきた。承認薬として、テラゾシン(Hytrin(登録商標)、Deflox(登録商標)、Abbott Laboratories、Abbott Park、Illinois)、ドキサゾシン(Cardura(登録商標)、Pfizer.New York)、タムロシン(tamulosin)(Flomax(登録商標)、Boehringer Ingelheim、Ridgefield、CT)、アルフゾシン(Uroxatral(登録商標)Sanofi−Aventis、Bridgewater、New Jersey)、ナフトピジル(Flivas(登録商標)、Asahi Kasei Pharma Corp.、Tokyo、Japan)およびシロドシン(Rapaflo(登録商標)、Watson Pharmaceuticals,Inc、Corona、CA))が挙げられる。これらの薬物は、前立腺および膀胱頸部の平滑筋を弛緩させるよう作用し、尿道抵抗を低減し、尿流の改善をもたらす。アルファ1−アドレナリン受容体アンタゴニストは、BPHの症状だけを治療し、前立腺の大きさを低減しない。
BPHの治療において使用するための本明細書において組み合わされるべき用量を実験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内である。例えば、テラゾシンの最小/最大1日経口用量は、1.0mg/20.0mgであり;シロドシンは、8mg/日で経口投与される;アルフゾシン(SR、徐放性)は、5mgで1日2回投与され(Debruyne et al. Eur Urol 1998;34:169-175);タムスロシン(Flomax(登録商標))は、1日あたり0.4mgまたは1日あたり0.8mgの有効経口用量を有する。Hytrin経口投薬は、1mg/日〜2mg/日〜5mg/日で徐々に増大される。
通常、5α−レダクターゼ阻害剤およびα遮断薬のような、2種以上のBHP治療薬が、患者に同時に投与される場合には、各薬剤は、単独で投与される場合に与えられる用量で提供される。デュタステリド、5α−レダクターゼ阻害剤0.5mg/日およびタムスロシン、α遮断薬0.4mg/日。
3.ボツリヌス毒素および修飾ボツリヌス毒素
ボツリヌス毒素は、拡大した前立腺の大きさを低減するためにBPHの治療において使用されている。徐放のために0.9%塩化ナトリウム中、20%ポロキサマー407(BASF、Florham Park、New Jersey)で製剤された100ユニットのボツリヌス毒素A型は、前立腺の両側葉の各々の中に経会陰的に注射された場合に、有益な効果を約6カ月間もたらした(米国出願番号第20090214685号)。
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌によって産生される神経毒;非クロストリジウム種によって組換えによって製造されたボツリヌス毒素(または軽鎖もしくは重鎖);ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、FおよびG;ボツリヌス毒素複合体(300、600および900kDa複合体);修飾されたボツリヌス毒素、ペグ化ボツリヌス毒素、キメラボツリヌス毒素、組換えボツリヌス毒素、ハイブリッドボツリヌス毒素および化学修飾ボツリヌス毒素を含む。修飾ボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素と比較して、そのアミノ酸の少なくとも1個が欠失、修飾または置換されているボツリヌス毒素である。修飾ボツリヌス毒素は、組換えによって製造された神経毒、または組換えによって製造された神経毒の誘導体もしくは断片であり得る。修飾ボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素の少なくとも1つの生物活性を保持する。
市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物として、Botox(登録商標)、ヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウム中のボツリヌス毒素A型神経毒複合体(Allergen,Inc.、Irvine、CA);Dysport(登録商標)、ヒト血清アルブミンおよびラクトースを有するボツリヌス菌A型毒素血球凝集素複合体(Ipsen Limited、Berkshire、U.K.)およびMyobloc(登録商標)、ボツリヌス毒素B型、ヒト血清アルブミンナトリウムコハク酸塩および塩化ナトリウム(Solstice Neurosciences,Inc.、South San Francisco、CA)が挙げられる。
本明細書における組成物にとって有用なボツリヌス毒素として、ボツリヌス毒素A型、ボツリヌス毒素B型、ボツリヌス毒素C型、ボツリヌス毒素D型、ボツリヌス毒素E型、ボツリヌス毒素F型およびボツリヌス毒素G型が挙げられる。使用するのに好ましいボツリヌス毒素として、ボツリヌス毒素A型およびボツリヌス毒素B型が挙げられる。有用であるボツリヌス毒素の他の形態として、キメラまたはハイブリッドボツリヌス毒素、例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第5,939,070号参照のこと;組換えによって製造されたボツリヌス毒素、例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第5,919,665号参照のこと;および再標的化ボツリヌス毒素、例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第5,989,545号および/または同6,461,617号参照のことが挙げられる。再標的化ボツリヌス毒素とは、選択された標的組織に対して親和性を有する非天然ターゲッティング部分と結合しているボツリヌス毒素を指す。本明細書における組合せと適合するボツリヌス毒素の製剤として、徐放または制御放出のための、デポー製剤、例えば、ポリマー移植片、マイクロスフェア、ウエハおよびゲルが挙げられる。例えば、そのすべてが参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,585,993号;同6,506,399号;同6,306,423号;同6,312,708号;同6,383,509号を参照のこと。
通常、患者に投与されるボツリヌス毒素の量は、約1〜約2000ユニットのボツリヌス毒素A型または約50〜約25,000ユニットのボツリヌス毒素B型である。
ボツリヌス毒素の調製および使用は、米国特許第7,579,010号、同7,556,817号、同7,491,799号、同7,491,403号、同7,465,457号、同7,455,845号、同7,452,697号、同7,449,192号、同7,445,914号、同7,262,291号、同7,233,577号、同7,189,541号、同7,148,041号、同7,041,792号、同5,955,368号、同5,837,265号および同5,696,077号に記載されており、それらは、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
BPHの治療において使用するために本明細書において組み合わされるべき用量を実験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内である。例えば、公開された米国特許出願第7,153,514号には、良性前立腺肥大症の単回治療、50ユニットのヒアルロニダーゼの3回の前立腺内注射と、それに続く50ユニットのボツリヌス毒素A型注射の3回の注射による単回治療が記載されている。他の例では、BPHの治療は、単回または分割用量として100IU/70kg〜1200IU/70kgのボツリヌス毒素A型を前立腺へ注射することによる(例えば、米国特許第7,153,514号参照のこと)。Chuang et al. Journal Compilation BJU International 98:28-32 (2006)も参照のこと。
4.他の薬剤
BPHの治療にとって有用である他の薬剤が、抗アンドロゲン剤、α遮断薬およびボツリヌス毒素の代わりに、またはそれらとともに、ヒアルロナン分解酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)製剤、特に、徐放性製剤とともに投与され得る。以下は、BPHの治療にとって有用な他の薬剤のいくつかの例であり、制限であるよう意図されない。
PRX302は、BPHを治療するために前立腺内に注射され得る、PSA活性化細菌プロ毒素である(Protox Therapeuticssee www.protox.com WO2006/133553)。
BPHを治療するのに有用なコンジュゲートとして、ビンカアルカロイド細胞傷害性薬剤と化学的に連結している、PSAによって選択的に切断されるアミノ酸配列を有するオリゴペプチドが挙げられる(USP20040081659)。
NX−1207(2.5mg)は、前立腺内注射、単回治療(Nymox Pharmaceuticals)によって投与される。
Cernilton(登録商標)−花粉抽出物は、尿流を改善し、BPHを有する患者に与えられると前立腺容量を減少させることが分かっている(Dutkiewicz, International Urology and Nephrology 28(1):49-53 (1996)参照のこと)。
エロカルシトールは、非高カルシウム血症ビタミンDアゴニストであり、150mcg/日の用量で経口投与された場合に前立腺成長を停止すると実証されている(BioXellウェブサイト、www.bioxell.com参照のこと)。
BPHの治療では、エタノールアブレーションが使用され得る(例えば、Ditrolio et al. (2002) Journal of Urology, 167:2100-2104; Grise et al. (2004) Eur. Urol.、46:496-501参照のこと)。したがって、本明細書における例では、BPHを治療するためのエタノールアブレーションに合わせて、ヒアルロナン分解酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)製剤、特に、徐放性製剤が使用され得る。
5.製品
選択された治療薬の医薬化合物は、パッケージング材料、BPHの治療にとって有効である医薬組成物および選択された薬剤(単数または複数)が疾患または障害を治療するために使用されるべきものであることを示す標識を含有する製品として、ヒアルロナン分解酵素製剤と組み合わせてパッケージングされ得る。ヒアルロナン分解酵素製剤と、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および他のBPH治療薬のうち1種または複数の組み合わせが、製造品にパッケージングされ得る。
本明細書において提供される製品は、パッケージング材料を含有する。医薬製剤のパッケージングにおいて使用するためのパッケージング材料は、当業者に周知である。例えば、その各々がその全文で本明細書に組み込まれる、米国特許第5,323,907号、同5,052,558号および同5,033,252号参照のこと。製薬パッケージング材料の例として、それだけには限らないが、ブリスターパック、瓶、試験管、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶および選択された製剤および意図される投与および治療様式にとって適した任意のパッケージング材料が挙げられる。製品として、局所注射目的で投与を容易にするための、針または他の注射デバイスを挙げることができる。本明細書において提供された化合物および組成物の多様な製剤が、BPHの種々の治療がそうであるように考慮される。
パッケージの選択は、ヒアルロナン分解酵素および他の薬剤、およびこのような組成物が一緒にパッケージングされるか、または別個にパッケージングされるかに応じて異なる。一般に、パッケージングは、それに含有される組成物と非反応性である。一例では、ヒアルロナン分解酵素は、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および他のBPH治療薬のうち1種または複数との混合物としてパッケージングされ得る。例えば、ヒアルロナン分解酵素およびフィナステリドまたはデュタステリドなどの5α−レダクターゼ阻害剤の徐放性製剤が考慮される。他の例では、一部の成分が、混合物としてパッケージングされ得る。他の例では、すべての成分が別個にパッケージングされる。したがって、例えば、成分は、投与の直前に混合されると、一緒に直接的に投与され得る、別個の組成物としてパッケージングされ得る。あるいは、成分は、別個に投与するための別個の組成物としてパッケージングされ得る。
成分は、容器中にパッケージングされ得る。容器は、ヒアルロナン分解酵素製剤を含有し、ユーザーによる、例えば、区画中の開口部を通る、1種または複数の他の薬剤の添加に適している、単一区画を有し得る。ヒアルロニダーゼの含有のための明確な空間を有するのに適しており、最終成分の添加を可能にする簡単な操作に適している、任意の容器または他の製造品が考慮される。他の成分は、使用の前に添加される。
他の例では、成分は、同一容器中に別個にパッケージングされる。一般に、このような容器の例として、続く領域が、容易に除去可能な膜によって分離され、除去すると、成分が混合するのを可能にするように、ヒアルロニダーゼを含有する囲まれた明確な空間と、他の成分(単数または複数)を含有する別個の囲まれた明確な空間とを有するものが挙げられる。ヒアルロニダーゼが、投与の前に他の成分から分離される限り、任意の容器または他の製造品が考慮される。適した実施形態については、例えば、米国特許第3,539,794号および同5,171,081号に記載された容器を参照のこと。
例えば、単一チャンバー装置として、装置が、単一チャンバーまたは容器と、必要に応じて、放出手段を含有するものが挙げられる。単一チャンバーハウジングまたは容器は、容器中にヒアルロニダーゼが含まれる任意のアイテムを含む。ヒアルロナン分解酵素は、液相中で、または粉末もしくは他のペーストもしくは他の好都合な組成物として容器中に収容される。他の成分、例えば、抗アンドロゲン薬、α遮断薬またはボツリヌス毒素は、使用の直前に導入されるか、または別個に投与される。
他の例では、本明細書において使用するために考慮される装置として、デュアルチャンバーまたはマルチチャンバー容器がある。一般に、この装置は、少なくとも2つのチャンバーまたは区画を有し、それによって、ヒアルロナン分解酵素を、混合が望まれるまで、抗アンドロゲン薬および/またはα遮断薬またはボツリヌス毒素から分離して維持する。装置は、装置から分配する前に成分の混合を可能にする混合チャンバーを含み得る。あるいは、混合は、1つのチャンバーから、ヒアルロニダーゼを含有する第2のチャンバー中に1種の成分を放出することによって起こり得る。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、凍結乾燥形態で提供され得、再構成は、第1のチャンバーから、凍結乾燥ヒアルロニダーゼを含有する第2のチャンバーへ、液体溶液中のような抗アンドロゲン薬またはα遮断薬の放出によって達成され得る。
いくつかの例では、デュアルチャンバーまたはマルチチャンバー装置は、その操作において機械的ポンプ機構を使用する。このような例では、分配装置は、別個のチャンバー中に成分を維持する。ポンプ機構は各チャンバーから混合チャンバー中へ、または1つのチャンバーから第2のチャンバー中へ内容物を引き出すように作動した。ポンプ機構は、手作業で、例えば、プランジャーによって作動されてもよい。このようなデュアルチャンバー装置の例示的なものとして、デュアルチャンバーシリンジが挙げられる(例えば、米国特許第6,972,005号、同6,692,468号、同5,971,953号、同4,529,403号、同4,202,314号、同4,214,584号、同4,983,164号、同5,788,670号、同5,395,326号;および国際特許出願番号WO2007006030およびWO2001047584参照のこと)。
本明細書において使用するために考慮されるデュアルチャンバーまたはマルチチャンバー流体分配装置の他の例は、圧縮性瓶またはチューブまたは他の同様のデバイスの形態をとる。デバイスは、その中に、成分を分離して維持する少なくとも2つの区画を有する。デバイスのキャップは、混合チャンバーとして働くことができ、混合チャンバーは、2つのチャンバーとキャップの間に配置され得るか、または混合は、チャンバーの一方内で達成され得る。成分は、別個の区画から混合チャンバーへ、圧迫によって推し進められる。次いで、それらは混合チャンバーから分散される。例えば、混合された内容物は、分配末端にプランジャー/シリンジ装置を取り付けることおよびそれを通して内容物を引き出すことによってデバイスから出され得る。このようなデバイスは、当技術分野で公知である(例えば、国際特許出願番号WO1994015848参照のこと)。
6.キット
ヒアルロナン分解酵素と、抗アンドロゲン薬、α遮断薬、ボツリヌス毒素または他のBPH治療薬のうち1種または複数の、選択された組成物および組合せはまた、その製品を含めて、キットとして提供され得る。キットは、本明細書において記載される医薬組成物および製造品として提供される投与のためのアイテムを含み得る。例えば、ヒアルロナン分解酵素および抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および他のBPH治療薬のうち1種または複数は、シリンジなどの投与のためのデバイスを用いて供給され得る。組成物は、投与のためのアイテム中に含有され得るか、または後に添加されるために別個に提供され得る。例えば、1〜2mlの製剤されたヒアルロナン分解酵素およびフィナステリドなどの抗アンドロゲン薬を有するプレフィルド単回使用シリンジが考慮される。一般に、キットは、ヒアルロナン分解酵素製剤または組成物ならびに抗アンドロゲン薬組成物および/またはα遮断薬および/またはボツリヌス毒素組成物を有するアイテムを含有する。キットは、所望により、投与量、投与計画を含めた適用のための使用説明書および投与様式についての使用説明書を含み得る。キットはまた、本明細書において記載された医薬組成物および診断のためのアイテムを含み得る。例えば、このようなキットは、対象におけるPSAの濃度、量を測定するためのアイテムを含み得る。
G.有効性を評価する方法
BPHの治療の主要な目的は、尿流出閉塞および随伴症状を軽減することである。閉塞性前立腺組織の大きさの低減および尿路閉塞の症状のその後の軽減は、治療の成功を示す。本明細書において提供される組成物および方法によって果たされる役割にとって重要なものは、治療の評価に関わる方法論である。治療の効果の客観的評価は、閉塞性症状スコアリングチャートとともに、尿流動態フロー分析、経尿道的検査または経直腸的超音波検査を含めた標準法によって測定され得る。
BPHの閉塞性症状の軽減における本方法、組成物および組合せの役割を評価するために、前立腺の大きさを定量化し、ピーク尿流出を測定する正確な手段が不可欠である。BPHの治療に対する反応の評価は、客観的判定基準に基づくものでなくてはならない。現在の前立腺イメージング技術および尿流動態分析の方法は、BPHの治療的処置の評価において有効であると証明されている。BPHの臨床経過の変動性を考慮して、一般に、特に、個々の患者内で、治療の前後で、長期のベースライン評価が必要である。最初の患者評価は、病歴;健康診断;症状スコアリング;膀胱鏡検査;全血球計算および生化学的プロフィール;残尿の測定;および尿の流速を含むべきである。前立腺の大きさは、三次元経直腸的超音波検査を用いて決定され得る。治療経過をたどること、フォローアップ評価が実施されなくてはならない。前立腺肥大に対して治療された患者の治療後フォローアップは、身体検査;膀胱鏡検査;実験室での研究;およびイメージング手順を含み得る。治療から恩恵を受けたと考えられる患者は、ピーク尿流速および症状スコアなどに関して臨床的改善を有するものである。
身体検査で前立腺の大きさを推定するための慣習は、正常から4+の範囲の評価尺度を含む。正常な腺は、およそトチノキ(horse chestnut)の大きさ、重量およそ10gmであり、直腸検査で最小にしか知覚できない所見として現れる。1+拡大前立腺は、およそプラムの大きさであり、重量約25gmであり、直腸内腔の1/4未満の部分を占める。3+拡大前立腺は、オレンジの大きさに達し、およそ75gmの重量に達し、直腸直径のおよそ3/4を満たす。4+の腺は、小さいグレープフルーツの大きさ、100gmを超える重量に達することもあり、直腸内腔の大半を満たし、適当な検査が困難である。
超音波イメージング計測手段および技術における最近の進歩は、前立腺が絡んだ疾患の診断、ステージ分類および治療において有用であると証明されている。経直腸的(TRUS)または経尿道的超音波走査機器を使用する三次元イメージング技術は、治療に対する前立腺の局所反応の評価において正確な、役立つものであるとわかっている。プローブが、前立腺を調べるために肛門中に挿入される。プローブは、音波を内臓に反射させて、超音波画像を製造するために使用される。超音波検査の排尿研究によって、現在使用されている従来の研究よりも臨床的に有用な情報が得られる。さらに、経直腸的超音波検査の使用は、超音波誘導の下で、疑わしい領域へ直接針を設置することを可能にすることによって前立腺注射の正確性を改善する。前立腺の経直腸的超音波検査によって、指で触診され得ない前立腺前側部分が可視化されることが可能となる。前立腺内解剖所見、カプセル剤の完全性および精嚢もイメージングされ得る。
前立腺容量の決定における経直腸的超音波検査の使用は、信頼性のある方法であると証明されており、実際の前立腺重量の5%内に正確であるとわかっている。前立腺の比重は、1.0に近く、立方センチメートルでの前立腺容量は、グラムでのその重量に等しいと考えられる。前立腺重量は、簡単な式:重量=0.5(D1×D2×D3)を使用して算出され得、D1、D2およびD3は、前立腺の3次元の直径を表す。この技術の日常的な再現性は、約95%であると考えられている。使用され得る他のイメージング手順として、尿路腎盂造影図、コンピューター断層撮影法および磁気共鳴画像法技術が挙げられる。
静脈内腎盂造影図は、前立腺の大きさの評価において制限された値のものである。コンピューター断層撮影法は、前立腺周囲の領域を示し、リンパ節の大きさを示し得る。しかし、前立腺内の詳細には乏しく、塊はめったに可視化されない。拡大した節の検出は、高感度であるが、正常な大きさの節は、顕微鏡的癌腫を含有し得る。経直腸的超音波のような磁気共鳴画像法は、前立腺内の解剖所見を示す。この技術は、骨盤内腺腫大、前立腺周囲浸潤および精嚢関与の実証において、経直腸的超音波またはコンピューター断層撮影法と同程度に正確で感度が高い。
1.動物モデル
BPH治療を評価するために開発されたインビボ哺乳類モデル系は、有効投与量に関するデータならびに可能性ある毒性または免疫学的副作用に関する情報を提供するはずである。実験動物のうち、イヌは、ヒトBPHを研究するための最も適当なモデルと考えられてきた。イヌ前立腺の大きな大きさならびに老犬におけるBPHの自然発生は、ヒト系との類似性を提供する。形態学的および生化学的相違にもかかわらず、イヌ前立腺は、治療の効果を評価するための適した実験モデルを提供する。
イヌ動物モデルにおける、記載された組成物および投与方法の安全性および有効性を評価するために、インビボ研究が設計され得る。組成物のインビボ前立腺内注射によって引き起こされる前立腺組織に対する効果は、前立腺のインビボおよびインビトロ超音波スキャンによって、また剖検組織の巨視的および顕微鏡的検査によって評価され得る。注射された組成物の効果の病理組織学的評価は、前立腺、尿道、膀胱、精巣、腎臓、肝臓、心臓および肺の検査を含んでいた。さらに、狭窄、瘻孔、付着および肉芽腫の証拠が、注射部位に隣接する組織において調べられ得る。試験されるべき組成物の一連のインビボ前立腺内注射後に、動物は、インビボイヌ研究の承認されたGLPプロトコールに従って、ナトリウムペントバルビタールの過剰投与によって安楽死させられ得る。前立腺は、正中線切開によって露出され、取り出され、過剰の細片が切りとられ、秤量され得る。前立腺は、取り出されると、正常な生理食塩水を含んだ容器に入れられ、超音波でスキャンされる。前立腺の超音波イメージは、フィルムに記録される。できる限り正確に同一領域において超音波知見および組織学的知見が比較され得るように、超音波スキャンが実施される。スキャン後、前立腺全体が、0.5cmの切片に連続切片にされ、写真をとられ、顕微鏡的病理組織学的検査用に調製され得る。超音波画像との比較のために、正しい解剖学的位置づけを保つよう注意が払われなければならない。前立腺がインビトロでスキャンされる場合には、トランスデューサーと標的組織の間に介在する組織はなく、それによって最適な超音波イメージが提供された。インビボ前立腺スキャンの超音波パターンは、血液の循環および介在する組織のためにインビトロで得られるパターンと同一ではない。しかし、比較は行うことができ、インビボおよびインビトロ超音波スキャンの間には良好な相関が見られた。
動物実験から得られたデータの、ヒト条件への外挿における制限のために、任意の生物学的治療薬の最終評価は、ヒトで実施されなくてはならない。現在使用される外科的方法によるBPHに続発する尿路閉塞の軽減の結果は、良好である。非外科的方法は、受け入れられるには、同等に有効な結果を提供しなくてはならず、有害な副作用がないものでなくてはならない。適切に構築された臨床試験が、不可欠であるが、疾患の経過および治療に対するその反応の、長期間にわたるモニタリングにおける制限のために高齢者集団において実施することが困難である。治療を評価する臨床研究は、治療後少なくとも3年間継続するプラセボ対照二重盲検測定を含まなくてはならない。治療の効果は、間質成分および上皮成分の割合によって、または治療の用量および期間に応じて変わり得る。治療の非外科的方法を用いる治療の候補をより客観的に選択するために、また開示された組成物の効果をより正確にモニタリングするために、薬物療法の候補として認定するためのBPHを有する男性の必要な判定基準は、15mL/秒未満のピーク尿流速を有する中程度から重篤な症状を含まなければならない。排除されるべき患者は、事前の前立腺切除術、急性尿貯留、感染、神経因性膀胱、尿道狭窄、前立腺の癌腫または他の命を脅かす病気を有するものである。
ヒト対象が関係する臨床研究は、BPHの治療のための最適な治療様式を確立するために、以下のパラメータのうち1つまたは複数を含み得る。BPHのために定量的閉塞性症状を示す前向き患者集団がスクリーニングされ、治療のための適した候補が選択される。選択された患者は、治療薬の医薬上許容される溶液0.1ccの皮内注射によってアレルギー反応について皮膚試験される。薬剤の種々の組合せおよび濃度を用いる病巣内前立腺注射が実施される。治療薬の適した、有効な量は、治療薬の濃度、組合せ、製剤、注射の容量、閉塞性症状の軽減に必要な注射の位置および回数の点で変わる研究から決定され得る。実験的治療は、前立腺組織の所望の低減が達成された時点または治療間で症状のさらなる改善が観察されない時点で終了されなくてはならない。
2.インビトロ手順
インビトロ研究は、市販の、外科的に切り出された、モルモット、イヌおよびヒトから得られた前立腺組織チップ、モルモットおよびイヌ前立腺の全臓器試料における前立腺組織の注射を含んでいた。
BPHを示す個体から得たヒト前立腺組織の試料(剖検、死体臓器移植ドナーまたは前立腺切除術を受けている患者から得られ得る)も、治療薬を注射され得る。治療されたサンプルは、標準明視野、落射蛍光および位相差顕微鏡によって評価され得る。
種々の治療薬の前立腺内注射によって引き起こされた前立腺組織における顕微鏡的組織学的変化を比較および評価するために、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された凍結組織切片の調製のための手順を開発した。組織学的検査のために、前立腺を、およそ0.5cmの横断切片に連続分割する。これらの横断切片が、前立腺の中央部を横切り、前立腺尿道の部分を含むことが重要である。すべての切片が、尿道粘膜および前立腺被膜(prostatic capsule)の外側周縁部を含まなくてはならない。組織横断切片を−20℃で凍結し、予冷したクリオスタットチャック上にマウントし、8lmの薄い凍結切片を、クリオスタット中、−40℃で調製する。薄い切片を、顕微鏡スライド上に解凍マウントし、95%エタノール中で直ちに固定し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、Permount(Fisher、Pittsburgh、PA)を用いてカバーガラスを乗せた。あるいは、組織横断切片を4〜10%のホルマリン度(formality)pH7.2で直ちに固定し、パラフィン中に包埋し、連続薄切片にし、マウントし、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色してもよい。薄組織切片を100lm毎に得、各前立腺について合計少なくとも20の薄切片を顕微鏡検査する。前立腺組織をメスで横断切片にし、クリオスタットにおける薄切片作製のために凍結する。組織横断切片は、−20℃で凍結しても、ドライアイス/アセトン溶液中に浸漬することによって−80℃でスナップ凍結してもよい。薄切片作製が遅れる場合には、組織を−20℃で、密閉容器中で数日間保存してもよい。薄切片作製に先立って、凍結組織横断切片をクリオスタット中に少なくとも1時間置くことによって、それらを切断温度(−30〜−40℃)にする。顕微鏡スライドを70%〜95%エタノール中に浸漬することによって洗浄する。クリオスタットで、H&E染色に適した薄凍結切片(6〜8lmの厚さ)を調製する。切断温度、ナイフの刃の角度および鋭さおよび周囲湿度はすべて、薄切片の品質に影響を及ぼす。温度が低すぎる場合には、組織は砕け、細かく砕ける傾向がある。温度が高すぎる場合には、切片は曲がり上がり、ナイフの刃に粘着する傾向がある。低湿度は、ナイフの刃の上で切片が曲がるのを防ぐようであり、その結果、組織形態学のゆがみが少なくなる。組織切片がナイフの刃から剥がれるときに、小さいラクダの毛の画筆を用いてそれらが顕微鏡スライド上にあるように助けてもよい。室温で清潔なスライドを保存することも、組織切片をナイフの刃から摘み取り、切片をスライドに融解するのに役立つ。調製されたスライドを、22℃の95%エタノール中で直ちに固定し、凍結切片のH&E染色のプロトコールに付す。
凍結切片のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色手順は、Harrisヘマトキシリン(James Phillips Co.、Minneapolis、MN)、LernerエオシンY(Baxter、McGaw Park、IL)、1%リチウムカルボネート(Sigma)およびAmericlear(Baxter)の溶液を使用して以下のように実施してもよい。凍結組織切片(8lm)を、95%エタノール中で1〜30分間固定する。スライドを、以下の工程に処理する:
脱イオンH0中で30秒間すすぐ;
ヘマトキシリン中で1分間染色し;暖かい水道H0中で15秒間洗浄し;
希釈LiCO中、2〜4回の浸漬(50mlの脱イオンH0中の50 11 1% LiCO)で浸漬し;
脱イオンH0で15秒間洗浄し;
エオシンY中、10回の浸漬で浸漬し;70%エタノール中、5回の浸漬で浸漬し;
95%エタノール中、5回の浸漬で浸漬し;100%エタノール中、10回の浸漬で浸漬し;
100%エタノール中、10回の浸漬で再度浸漬し;
Americlear中、10回の浸漬で浸漬し;
Americlear中、10回の浸漬で再度浸漬し;
Permountを用いて直ちにカバーガラスを乗せる。
H.実施例
以下の実施例は、単に例示目的で含まれるのであって、本発明の範囲を制限しようとするものではない。
ヒトBPH組織におけるヒアルロン酸発現
この実施例では、ヒト正常および良性前立腺肥大症(BPH)前立腺組織サンプルの両方におけるヒアルロン酸(HA)の発現を、HA−結合タンパク質(HABP)および3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)ペルオキシダーゼ基質を用いる組織学的染色によって分析した。
予め切断された組織学パラフィン(FFPE)組織切片は、US BioMax Inc(カタログ番号PR804、PR806およびPR808、Rockville、MD)から入手した。手短には、BPHおよび正常前立腺組織をPBS中、10%中性緩衝ホルマリンで、24時間固定し、勾配エタノールを用いて脱水し、キシレンで透徹し、パラフィン中に包埋した。組織切片を脱脂し、再水和し、次いで、3%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに37℃で30分間インキュベートした。カルシウムおよびマグネシウム不含リン酸緩衝生理食塩水(PBS−CMF)ですすいだ後、各スライドに、HABP−バッファー(1.5M NaCl、0.3M グアニジン−HCl、0.08% BSAおよび0.02% アジ化ナトリウム、pH7.0を含有する、0.25M リン酸ナトリウムバッファー、pH7.0)で1:100希釈したビオチン化HA−結合タンパク質(bHABP、カタログ番号400763−1A、Associates of Cape Cod、MA)0.3mLを加えた。次いで、スライドを4℃で一晩インキュベートした。次いで、スライドをPBS−CMFですすぎ、室温のメタノール中、0.6% Hに移した。PBS−CMFですすいだ後、切片にストレプトアビジン−HRP(1mg/mL、カタログ番号SA5004、Vector Laboratories,Inc.、Burlingame、CA)を加え、ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB、カタログ番号D3939、Sigma)を用いて発色させ、Mayerのヘマトキシリン(カタログ番号S3309、Dako、Carpenteria、CA)中で対比染色した。
合計67種のBPHおよび19種の正常前立腺組織サンプルを分析した。サンプルセットでは、BPHおよび正常前立腺組織サンプルドナーの平均年齢は、それぞれ、69.7±7.9歳および36.7±5.4歳であった。BPH組織のHA染色の結果は、以下の表4に示されている。HA発現を、以下の判定基準に従ってスコア化した:
高HA−組織切片の細胞/間質領域における染色(>70〜80%)
中HA−組織切片の細胞/間質領域の>40%〜70%における染色
低HA−組織切片の細胞/間質領域の<40%における染色
陰性HA−観察される染色なし
間質領域における、HA染色は、正常前立腺サンプルにおける31.6%(6/19)と比較して、BPHサンプルの85%(57/67)において中から高であった。基底細胞では、BPHサンプルの40%は、HAリッチであると、正常前立腺サンプルにおける0%と比較して高HA染色によって証明された。上皮細胞HA染色は、BPHサンプルの半分超(38/67)において陰性であった。
Figure 2020172494
エナント酸テストステロン誘導性前立腺肥大症のラットモデル
この実施例では、エナント酸テストステロン(TE)の、ラット前立腺において前立腺肥大症を誘導する能力を調べた。手短には、25(25)匹の8週齢の雄のスプラーグドーリーラット(Harlan、USA)に、0、7、14および21日目に、1週間に1回の、ラットあたり25mgのTE(ロット番号80G010A、Abraxis Bioscience、Phoenix、AZ)を用いる筋肉内注射によって投薬した。25匹のラットのうち5(5)匹を、TE治療前に屠殺し、残りの20匹のラットのうち5匹を週毎に屠殺した。前立腺の腹葉を分析のために回収した。TEを用いる治療は、前立腺成長をもたらし、週に1回1カ月間の治療後に大きさがおよそ3倍増大した。さらに、ラット前立腺重量の増大は、持続したTE曝露と直線的に相関していた。ラット血液におけるTEの半減期は、およそ10.5日であった(Anderson RA, J Clin Endocrinol Metab., (1996) 81(3):896-901)。
正常ラット前立腺およびTE誘導性ラット前立腺肥大症に対するPEGPH20の効果
この実施例では、ペグ化−PH20(PEGPH20)を、正常ラット前立腺組織に対する、またTE誘導性過形成性前立腺組織(上記の実施例2に記載されたラットBPHモデル)に対するその効果について調べた。
A.正常ラット前立腺に対するPEGPH20の効果
この実施例では、正常前立腺組織に対するPEGPH20の効果を調べた。5匹の8週齢の雄のスプラーグドーリーラット(Harlan、USA)に、月曜日、水曜日および金曜日ごとに2週間、0.82mg/kgのPEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を用いて静脈内に投薬した。5(5)匹の非処理ラットは、対照群として役立った。PEGPH20治療後12日目に、ラットを屠殺し、前立腺の腹葉を、分析のために回収した。前立腺重量は、電子はかりを使用して測定した。PEGPH20の投与は、媒体単独での治療と比較して、正常ラット前立腺の前立腺重量の大幅な変化を引き起こさなかった(P=0.18)。
B.前立腺間質HAに対するPEGPH20の効果
この実施例では、正常およびTE誘導性前立腺肥大症ラットの前立腺間質および間質HAに対するPEGPH20の効果を、ヘマトキシリンおよびエオシン染色ならびにIHC染色を含めた前立腺組織学的検査によって分析した。間質増殖は、間質の大きさを視覚的に比較することによって決定した。8週齢の雄のスプラーグドーリーラットを4群にステージ分類し、これらを以下の表5に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)および対照を静脈内に投与した。治療後、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。
Figure 2020172494
前立腺組織を、PBS中、10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定し、勾配エタノールで脱水し、キシレンで透徹し、パラフィン中に包埋した。パラフィンブロックを5μm切片に切断した。組織切片を脱脂し、再水和し、標準ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色によって処理した。HAの組織化学的位置確認は、ビオチン化−HABPプローブ(bHABP、カタログ番号400763−1A、Associates of Cape Cod、MA)を使用して実施した。切片は、キシレン中で2×5分脱パラフィンし、100%エタノール中で、2×3分間、95%エタノール中で1分間水和させ、次いで、蒸留水ですすぎ、トリプシン溶液中、37℃で20分間インキュベートし、PBS中で2×2分間すすいだ。PBS中の2%ヤギ血清および1%BSA中で30分間インキュベートした後、切片をアビジンおよびビオチンブロック溶液(カタログ番号MB−1220、Vector Laboratories,Inc.、Burlingame、CA)とともにインキュベートし、PBSで洗浄し;切片をPBS中の1%BSA中、4μg/mLのbHABPとともに37℃で1時間インキュベートした。0.05% PBS−Tween20中で3×3分間すすいだ後、切片を、FITC−ストレプトアビジン(PBSで1:500希釈した、カタログ番号CB4741954、Vector Laboratories,Inc.、Burlingame、CA)中、RTで30分間インキュベートし、DAPIマウント培地(カタログ番号H−1200、Vector Laboratories,Inc.、Burlingame、CA)中でマウントし、透明マニキュアで密閉した。スライドを、適当なフィルターを備えたAxioskop蛍光顕微鏡下で研究者によって盲検化されて観察した。カメラスキャナーおよびSPOTアドバンスドイメージプログラム(SPOT advanced image program)(DIAGNOSTIC Instrument,Inc.)を用いて各切片の顕微鏡写真をとった。
結果は、以下の表6に示されている。PEGPH20を用いる正常前立腺組織の治療によって、間質中のヒアルロン酸を分解した。TEを用いる正常前立腺組織の治療は、間質増殖の増大ならびに間質におけるHAレベルの上昇をもたらした。前立腺肥大症を誘導するためのTEを用いる治療と、それに続くPEGPH20を用いた治療は、間質におけるヒアルロン酸レベルの低下および間質増殖の低減をもたらし、その結果、間質が大きさにおいて対照のものに匹敵していた。
Figure 2020172494
C.TE誘導性ラット前立腺肥大症モデルにおける前立腺重量に対するPEGPH20の効果
この実施例では、PEGPH20をTE誘導性前立腺過形成(hyperplasic)ラットに投与し、前立腺重量に対するその効果を評価した。8週齢の雄のスプラーグドーリーラットを2群にステージ分類し、これらを以下の表7に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を静脈内に投与した。治療後、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量を、電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
前立腺重量は、TE曝露後、それぞれ、7日目および18日目に18.9%および85.7%増大した。7日目に開始した、TEを投与されたラットの、PEGPH20を用いる治療は、前立腺重量の増大を26.5%阻害した(P<0.001)。さらに、TEによって引き起こされた前立腺重量の増大は、PEGPH20投薬のおよそ5日後に停止し、投薬の継続で、前立腺の大きさの増大は観察されなかった。
D.PEGPH20投薬の期間の評価
この実施例では、PEGPH20を用いる治療の期間の効果を、TEおよびPEGPH20を種々の期間投与することによって評価した。TEを2、3または4週間のいずれかの間投与し、PEGPH20を1週間または2週間のいずれかの間投与した。
8週齢の雄のラットを8群にステージ分類し、これらを以下の表8に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を静脈内に投与した。治療後、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量を、電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
結果は、以下の表9に示されている。結果は、PEGPH20治療が、投薬および時間の両方に依存していることを示す。
Figure 2020172494
E.最初の投与の時間の評価
この実施例では、ラットBPHのPEGPH20を用いる治療の時間依存性を、種々の時点でPEGPH20を投与することによって評価した。手短には、8週齢の雄のスプラーグドーリーラットを8群にステージ分類し、これらを以下の表10に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を静脈内に投与した。治療後、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量を、電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
結果は、以下の表11に示される。TEを用いるBPHの4週の誘導(群2)は、最大の前立腺重量をもたらした。すべての群において、PEGPH20を用いる治療は、TE単独を用いる治療と比較して、平均前立腺重量を低減した。7日目に開始した、PEGPH20のTEとの同時投与は、平均前立腺重量の最大の減少をもたらした。したがって、PEGPH20の長期投与を用いて、より良好な有効性が観察される。
前立腺水分重量は、試験管中の前立腺を秤量することと、それに続いて、液体窒素中でスナップ凍結することによって測定した。試験管を凍結乾燥機中に7日間入れ、それが、完全に乾燥した後、試験管中の前立腺を再度秤量した。前立腺の水含量は、湿重および乾重から算出した。すべての郡について、各群の前立腺水含量は、同一であるとわかった(約80%)。したがって、前立腺重量の変化が、組織水の減少に起因することはあり得ない。
Figure 2020172494
TE誘導性ラット前立腺肥大症に対するPEGPH20およびフィナステリドの効果
この実施例では、PEGPH20を用いるTE誘導性ラット前立腺肥大症の治療の効果を、フィナステリド、BPHを治療するために使用される5α−レダクターゼ阻害剤である抗アンドロゲン薬を用いる治療と比較した。さらに、PEGPH20およびフィナステリドを用いる併用療法を評価した。
A.PEGPH20対フィナステリドを用いる治療の比較
この実施例では、ラットTE前立腺肥厚化モデルを使用して、PEGPH20を用いる治療の効果を、フィナステリドを用いる治療と比較した。8週齢の雄のラットを、3群にステージ分類し、これらを以下の表12に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を静脈内に投与し、フィナステリドを腹膜内に投与した。21日目に、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量を、電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
結果は、PEGPH20の投与は、前立腺成長のおよそ30%の阻害をもたらすのに対し、フィナステリドを用いる治療は、前立腺成長のおよそ37%の阻害をもたらすことを示す。TE単独で治療された群1と比較した、両治療群の前立腺重量の減少は、統計的に有意である(両方についてP<0.01)。各群の前立腺水含量は、湿重および乾重から算出し、すべての群について同一であることがわかった(約80%)。したがって、前立腺重量の変化が、組織水の減少に起因することはあり得ない。
B.PEGPH20およびフィナステリドの同時投与
この実施例では、PEGPH20およびフィナステリドを用いる併用療法の効果を評価した。PEGPH20は、0.82mg/kg(低用量)または2mg/kg(高用量)のいずれかの用量で投与した。手短には、8週齢の雄のスプラーグドーリーラットを6群にステージ分類し、これらを以下の表13に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20(正常生理食塩水で希釈した)を静脈内に投与し、フィナステリドは腹膜内に投与した。21日目に、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量を、電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
結果は、以下の表14に示されている。阻害パーセント(%)は、式:((対照−治療されたもの)/対照)×100に従って決定した。低用量のPEGPH20、フィナステリド単独を用いる治療または低用量のPEGPH20+フィナステリドを用いる併用療法は、前立腺成長のおよそ25%の阻害をもたらした。高用量のPEGPH20(2mg/kg)+フィナステリドの併用療法は、前立腺成長の最大阻害をもたらした(41%、P<0.001)。各群の前立腺水含量を湿重および乾重から算出し、すべての群について同一であるとわかった(約80%)。したがって、前立腺重量の変化が組織水の減少に起因することはあり得ない。
Figure 2020172494
TE誘導性ラット前立腺肥大症におけるHA除去後の間質細胞のアポトーシス
この実施例では、PEGPH20の、間質細胞のアポトーシスを引き起こす能力を分析した。TUNELアッセイによる細胞アポトーシスのインサイツ検出は、インサイツ末端デオキシヌクレオチジル−トランスフェラーゼ(TdT)媒介性ビオチン化UTPニック末端標識(TUNEL)の反応に基づいていた。これは、FragEL DNA(カタログ番号QIA39−1EA、Calbiochem、Gibbstown、NJ)を、製造業者の指示に従って使用することによって本質的に実施した。手短には、脱パラフィンした組織切片を、プロテイナーゼK(0.02mg/mL、カタログ番号25530、Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて処理した。次いで、スライドをTris緩衝生理食塩水(TBS)で洗浄し、メタノールで希釈した3%H中で5分間内因性ペルオキシダーゼをブロックした。TBSで洗浄した後、切片を1×TdT平衡バッファーを用いて室温で、30分間処理し、続いて、TdT標識反応ミックス(57mL 平衡バッファーおよび3mLのTdT酵素)とともに、37℃で1.5時間インキュベートした。スライドをTBSですすぎ、Fluorein−FragELマウント培地を使用してマウントし、次いで、マニキュアで密閉した。光学顕微鏡下、×200で、各切片上のTUNEL陽性細胞の数を計数した。
免疫組織化学的染色によって、間質細胞においてのみアポトーシスが誘導されたことが示された。以下の表15は、治療計画、TE7日およびTE18日と比較した、切片あたりのアポトーシス細胞の平均数およびP値を示す。非テストステロン処理前立腺では、PEGPH20は、間質アポトーシスを誘導しなかった。TE誘導性前立腺肥大症を有するラットのPEGPH20治療は、前立腺間質細胞において相当なアポトーシスを引き起こした。
Figure 2020172494
TE誘導性ラット前立腺肥大症に対するDepo−PH20の効果
この実施例では、Depo−PH20が、TE誘導性ラット前立腺肥大症を治療するその能力について、PEGPH20を用いる治療と比較して調べた。Depo−PH20は、流体担体中にPH20およびリン脂質ゲルを含有する。
8週齢の雄のスプラーグドーリーラットを5群にステージ分類し、これらを以下の表16に示されるように治療した。エナント酸テストステロンを筋肉内注射によって投与し、PEGPH20を静脈内に、または前立腺内注射によって投与し、DepoGel媒体またはDepoPH20を前立腺内注射によって投与した。21日目に、動物を屠殺し、前立腺の腹葉を分析のために回収した。前立腺重量は電子はかりを使用して測定した。
Figure 2020172494
結果は、以下の表17に示されている。静脈内または前立腺内注射のいずれかによるPEGPH20を用いる治療は、大幅に小さい前立腺をもたらすことが、前立腺重量の減少によって証明された。前立腺重量の大きな相違は、DepoGel(対照)およびDepo−PH20を用いて治療された群間で観察されず、さらに、Depo−PH20を用いる治療は、TE単独を用いる治療と比較して、前立腺重量の大幅な低減を引き起こさなかった。投与されたDepo−PH20ゲル製剤は厚く、この製剤を用いて治療されたラットの前立腺において眼に見える白色の凝集塊が観察された。これらの白色凝集塊はまた、Depo−ゲル単独で治療されたラットの前立腺においても観察された。ラット前立腺の全体の大きさおよび重量は、本質的に小さいので、これらの凝集塊の存在は、Depo−PH20を用いる治療について観察された効果の欠如に寄与している可能性がある。
Figure 2020172494
多小胞リポソーム(MVL)PH20製剤
以下の一般手順を使用して、種々の持続放出多小胞リポソームPH20(MVL−PH20)製剤を調製した。脂質溶液は、トリグリセリド(TG)トリオレイン(C18:1)、トリカプリリン(C8:0)およびコレステロールを含めた種々の中性脂質ならびにホスファチジルコリン(PC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC、C18:1)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC、C22:1)およびジパルミトイルホスホリルグリセロール(DPPG、C16:1)を含めた、正よび負電荷の両方を有する脂質の混合物を含有していた。総PC濃度は、最大19.8mMであり、コレステロール濃度は、30mMであり、TG濃度は、最大3.9mMであり、DPPG濃度は、4.2mMであった。
A.MVL−PH20製剤の作製
さまざまなモルパーセントのDEPCおよびDOPC(0〜100%)およびさまざまなモルパーセントのトリオレインおよびトリカプリリン(0〜100%)、DPPG、コレステロールおよび0.1、0.25、0.5、1または2mg/mLのPH20を含有するMVL製剤を調製した。手短には、第1の工程において、クロロホルム(油相)中の脂質および第1の水溶液(水相)中のPH20を組み合わせ、乳化して、油中水エマルジョンを形成し、それによって、PH20をリン脂質単層によってカプセル封入した。第2の工程において、第2の水溶液を加え、乳化し、それによって、水中油中水型エマルジョンを形成した。続いて、第2の水溶液の第2のアリコートを加えた後、クロロホルム溶媒を蒸発させ、多小胞リポソームを含有する得られた生成物を、第3の水溶液で複数回洗浄し、およそ50%のリポクリット(パッケージングされる粒子容量)に再懸濁し、2〜8℃で保存した。
具体的には、製剤をミニボルテックスを使用して調製した、またはオムニミキサー(Omni Macro ES、Omni International、Kennesaw、GA)を使用して大規模で調製した。後者のオムニミキサー法では、クロロホルム(6mL)中の脂質溶液を、6mLの第1の水溶液(さまざまな濃度のPH20を含有する、10mM His−HCl、pH6.5および5%スクロース)と、オムニミキサーを用いて7,000rpmで8分間乳化し、油中水型エマルジョンを得た。20mLの40mMリシンを含有する3.2%グルコースの第2の水溶液、pH10.0との4500rpmで1〜3分間のその後の乳化の結果、水中油中水型の第2のエマルジョンが得られた。第2のエマルジョンを2つのエルレンマイヤーフラスコ中に等しく移し、第2の水溶液の他の50mLのアリコートを両フラスコに加えた。35℃でエマルジョンの表面上に窒素をフラッシュすることによってクロロホルムを除去した。溶液を加え、反転によって遠心管を混合し、冷蔵卓上遠心機中、4℃で3500rpmで10分間遠心分離することによって、PH20を含有するMVL粒子を、50mLの第3の水溶液(120mM NaClを含有する25mM His−HClバッファー、pH6.0)を用いて3回洗浄した。最後に、MVL粒子を第3の水溶液に再懸濁して、およそ50%のリポクリット製剤を形成し、2〜8℃で冷蔵保存した。ミニボルテックス手順は、表18に示されたパラメータを使用して同様であった。
以下の表18は、第1、第2および第3の水溶液を要約する。表18はまた、容積、試薬濃度およびMVLプロセスの各工程の他のパラメータも要約する。
Figure 2020172494

Figure 2020172494
B.MVL−PH20製剤の要約
上記のような同一の一般的手順を使用して、さまざまなモル比の脂質、PH20および他の添加物を含有するいくつかのMVL−PH20製剤を調製した。カプセル封入されたPH20の安定性を増強し、保つために、第1の水溶液中に種々のさらなる添加物を含めた。例えば、製剤F68およびF69は、塩化カルシウムを含有していた。製剤F82は、600μLのクロロホルム相と600μLの第1の水溶液相を分離する中間相として150μLのグリセロールを含有していた。製剤F83は、0.1%デキストラン40,000および0.1%PEG−6000を含有していた。製剤F85〜F87は、ヒアルロン酸(HA)オリゴマーを含有していた。いくつかの製剤は、その混合/乳化手順が変わった。例えば、製剤F66については、第1の乳化工程を8分間の代わりに4分間実施し、その結果、より小さいリポソームペレットが得られた。製剤F67は、ミニボルテックスの代わりにローターホイールを用いて混合して、混合の際により少ないせん断しか生じなかった。
以下の表19は、製剤数、製剤PC(ホスファチジルコリン)およびTG(トリグリセリド)モル%比、mg/mLでのPH20の出発濃度、エマルジョンを製造するために使用されるミキサーおよび第1の水溶液中に含まれる任意の添加物を含めて、種々のMVL−PH20製剤を示す。
Figure 2020172494

Figure 2020172494

Figure 2020172494

1より短い第1のエマルジョン混合時間(4分)
2脂質溶液中の、植物由来コレステロールの代わりに使用された動物由来コレステロール
3より短い第1のエマルジョン混合時間(4分)およびより短い第2のエマルジョン混合時間(30秒)
多小胞リポソーム(MVL)共製剤
以下の一般的手順を使用して、フィナステリド、デュタステリドまたはPH20組合せ製剤を含有する種々の多小胞リポソームを調製した。脂質溶液は、トリグリセリド(TG)トリオレイン(C18:1)、トリカプリリン(C8:0)およびコレステロールを含めた種々の中性脂質ならびにホスファチジルコリン(PC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC、C18:1)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC、C22:1)およびジパルミトイルホスホリルグリセロール(DPPG、C16:1)を含めた、正および負電荷の両方を有する脂質の混合物を含有していた。総PC濃度は、最大19.8mMであり、コレステロール濃度は、30mMであり、TG濃度は、最大3.9mMであり、DPPG濃度は、4.2mMであった。一部の製剤では、すべての脂質成分の総濃度が増大し、一部の他のものでは、コレステロール含量は低下した。フィナステリドまたはデュタステリド溶液は脂質溶液で調製した。
A.MVL−フィナステリド、デュタステリドまたはPH20組合せ製剤の作製
第1の水溶液中にPH20を含有しないか、または0.1mg/mLのPH20を含有する、さまざまな濃度のフィナステリドまたはデュタステリドを含有するMVL製剤を調製した。手短には、第1の工程において、クロロホルム(油相)中のフィナステリドまたはデュタステリドおよび脂質と、第1の水溶液(水相)中のPH20を組み合わせ、乳化して、油中水型エマルジョンを形成し、それによってPH20を、リン脂質単層によってカプセル封入し、フィナステリドまたはデュタステリドを、脂質層中に組み込んだ。第2の工程において、第2の水溶液を加え、乳化し、それによって、水中油中水型エマルジョンを形成した。続いて、第2の水溶液の第2のアリコートを加えた後、クロロホルム溶媒を蒸発させ、多小胞リポソームを含有する得られた生成物を、第3の水溶液で複数回洗浄し、およそ50%のリポクリット(パッケージングされる粒子容量)に再懸濁し、2〜8℃で保存した。
具体的には、製剤をミニボルテックスを使用して調製した。ミニボルテックス手順は、第1の水溶液相の容量が、600μLの代わりに500μLであった点を除いて、表18に示されたパラメータを使用する実施例7のもとで記載されたものと同様であった。
B.MVL−フィナステリド、デュタステリドまたはPH20共製剤の要約
上記のような同一の一般的手順を使用して、いくつかのMVL−フィナステリド、デュタステリドまたはPH20を含有する組合せ製剤を調製した。さまざまな濃度のフィナステリドまたはデュタステリドを有する製剤を調製した。さまざまな脂質濃度も調べた。例えば、製剤F3およびF4は、低濃度のコレステロール;30mMの代わりに15mMを含有していた。製剤F5、F6およびF7は、すべて高濃度の脂質を含有していた。以下の表20は、製剤番号、脂質組成およびmg/mLでのフィナステリド、デュタステリドまたはPH20の出発濃度を含めた、種々のMVL−フィナステリド、デュタステリドおよびPH20組合せ製剤を示す。
Figure 2020172494

Figure 2020172494

Figure 2020172494
製剤の分析方法および特性決定
この実施例では、種々の分析試験方法およびMVL−PH20製剤および共製剤の特性決定のための手順が記載されている。試験方法によって、PH20含量、PH20活性の決定ならびに粒径、リポクリット、顕微鏡的観察およびPH20のインビトロ放出などのMVL粒子の特性決定が可能となる。
A.逆相(RP)HPLCによるPH20、フィナステリドおよびデュタステリド含量
この実施例では、逆相HPLCによって、懸濁液濃度および遊離PH20濃度パーセントを含めたPH20含量を決定した。HPLCカラムおよび方法パラメータは、以下の表21に示されている。分離は、以下の表22に示されるようなHPLC勾配を使用して実施した。
Figure 2020172494
Figure 2020172494
1.PH20総(懸濁液)濃度
PH20懸濁液濃度は、MVL懸濁液中のPH20の濃度である。リポクリットが、50%に調整される場合には、PH20の製剤濃度は、薬物負荷の半量である。PH20懸濁液濃度を決定するために、MVL製剤を室温にし、懸濁液が均一になるまで、Hemavet Blood−Mixer上に、室温で10分間置くことによって前後に穏やかに揺り動かすことによって再懸濁した。Eppendorf微量遠心管中で、450μLの第1の水性バッファー(5%スクロースを有する10mM His−HCl、pH6.5)中、1% SDSに、50μLのMVL懸濁液を加えた。管を十分にボルテックス処理し、続いて、室温で10〜15分間静置させた。抽出材料を14,000rpmで2分間遠心分離し、上記のようなRP−HPLC分析のために上清を採取した。PH20濃度を、上記の表20に従って決定されたような、また総濃度として報告された標準曲線に対して算出した。主なピークの純度パーセント、酸化ピークのパーセント、クリップおよび他の分解物も、クロマトグラムから非タンパク質ピークを差し引いた後に報告した。
2.遊離PH20濃度パーセント
遊離PH20パーセントは、上清中にあるカプセル封入されていないPH20の量であり、製剤中のPH20の総量のパーセンテージとして表される。遊離PH20濃度パーセントを決定するために、MVL製剤を室温にし、懸濁液が均一になるまで、Hemavet Blood−Mixer上に、室温で10分間置くことによって前後に穏やかに揺り動かすことによって再懸濁した。Eppendorf微量遠心管に0.5mLのMVL懸濁液を加え、3,000rpmで10分間遠心分離した。リポソームペレットを乱さないことを確かめながら、100μLの上清をHPLCバイアルインサートに移した。インサート中に、100μLの第1の水性バッファー中の2% SDSを加え、ピペッティングによって内容物を完全に混合し、続いて、室温で10〜15分インキュベートさせた。サンプルをオートサンプラーに置き、次いで、低温でのSDS沈殿を避けるために、室温で、RP−HPLCによって分析した。PH20濃度を、標準曲線に対して算出し、以下の方程式を使用して遊離PH20%を算出するために使用した:
Figure 2020172494
B.サイズ排除クロマトグラフィー−HPLC(SEC−HPLC)
この実施例では、SEC−HPLCを使用して、サンプル中に存在するPH20の高分子量タンパク質(HMWP)、すなわち、共有結合している凝集体の相対量を決定した。手短には、MVL製剤を室温にし、懸濁液が均一になるまで、Hemavet Blood−Mixer上に、室温で10分間置くことによって前後に穏やかに揺り動かすことによって再懸濁した。Eppendorf微量遠心管中で、450μLの第1の水性バッファー(5%スクロースを有する10mM His−HCl、pH6.5)中、1%オクチルグルコシドに、50μLのMVL懸濁液を加え、管を短時間ボルテックス処理した。サンプルを30℃のインキュベーター中、600rpmで30分間振盪した。抽出材料を、14,000rpmで2分間遠心分離し、以下の表23に示されるカラムおよび方法パラメータに従う、SEC−HPLC分析のために上清を採取した。モノマーピーク濃度を標準曲線から算出し、濃度を報告した。スペクトル分析からタンパク質凝集体が検出可能であった場合には、脂質ミセルピークを排除した後に、凝集パーセント(%)を報告した。
Figure 2020172494
C.粒子特性決定
1.粒径分析
粒径分布または分布の平均直径は、レーザー回折粒径分析機によって測定されるような、MVL粒子直径の容量加重した大きさ分布である。懸濁液中のMVL粒子の平均直径は、Horiba LA−910レーザー散乱式粒径分布分析機を使用して測定される。手短には、MVL製剤を、Hemavet Blood−Mixer上で、室温で10分間再懸濁する。12mL容量の石英セルに10(10)mLの正常生理食塩水を加え、それに続いて、およそ10μLのMVL懸濁液を添加する。キュベットの内容物を十分に混合し、粒径を測定する。
2.リポクリット(パッケージングされる粒子容量、PPV)
リポクリットとは、MVL懸濁液のパッケージングされる粒子容量のパーセントである。リポクリットは、マイクロヘマトクリット毛細管チューブに70μLのMVL懸濁液を加えること、Crit−O−Sealまたは同様の密閉パテを使用して一方の末端を止めることおよび管を600gで10分間遠心分離することによって決定した。回転後、上清およびペレットの長さを測定した。リポクリットは、組み合わされた上清/ペレット長に対するペレットの長さの商×100を得て、PPV%またはリポクリット%を得ることによって算出した。標的リポクリットは、50%である。
3.MVL粒子の顕微鏡的観察
MVL粒子を、位相差顕微鏡を使用して観察した。手短には、MVL懸濁液を完全に再懸濁し、50μLのアリコートを、50〜200μL正常生理食塩水を含有するEppendorf管中に加えた。管を穏やかに反転することによってサンプルを混合し、10μLを顕微鏡スライドに移した。カバーガラスをMVLサンプル上に穏やかに置き、サンプルを、10X、20Xおよび40Xの倍率を使用して顕微鏡下で調べた。顕微鏡に接続したデジタルカメラを用いてイメージを記録した。
MVL製剤は、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡によって特性決定された。
D.PH20酵素活性
1.ビオチン化HA酵素活性測定法
PH20活性は、ヒアルロニダーゼとともにインキュベートした後に、残存するビオチン化ヒアルロン酸が測定されるマイクロタイターアッセイを使用して、酵素活性が測定される、迅速ビオチン化HA酵素アッセイを使用して評価した(例えば、Frost and Stern (1997) Anal. Biochem. 251:263-269、米国特許公報第20050260186号参照のこと)。このようなアッセイでは、ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基がビオチン化され、ビオチン化ヒアルロン酸基質は、共有結合によってマイクロタイタープレートと結合していた。ヒアルロニダーゼとともにインキュベートした後、アビジン−ペルオキシダーゼ反応を使用して、残存するビオチン化ヒアルロン酸基質を検出し、既知活性のヒアルロニダーゼ標準との反応後に得られたものと比較した。
2.総(懸濁液)PH20活性
総PH20活性は、リポソームの内側および外側にあるPH20の活性の尺度である。手短には、MVL製剤を室温にし、懸濁液が均一になるまで、Hemavet Blood−Mixer上に、室温で10分間置くことによって前後に穏やかに揺り動かすことによって再懸濁した。Eppendorf微量遠心管中で、450μLの第1の水性バッファー(5%スクロースを有する10mM His−HCl、pH6.5)中、10%オクチルグルコシドに、50μLのMVL懸濁液を加え、管を短時間ボルテックス処理した。サンプルを30℃のインキュベーター中、600rpmで30〜90分間か、または4℃で一晩振盪した。抽出材料を、14,000rpmで2分間遠心分離した。サンプルを採取し、1%オクチルグルコシドを含有するアッセイバッファーで希釈し、マイクロタイタープレートにロードした。PH20酵素活性は、迅速ビオチン化HA加水分解アッセイを使用して決定した(実施例D.1参照のこと)。活性は、U/mLで報告した。以下の方程式に従って、比活性を算出した:
Figure 2020172494
3.遊離PH20活性パーセント
遊離PH20活性パーセントは、MVL−PH20調製の際の漏出/残存PH20のためにリポソームの外側にあるPH20活性の尺度である。MVL製剤を室温にし、懸濁液が均一になるまで、Hemavet Blood−Mixer上に、室温で10分間置くことによって前後に穏やかに揺り動かすことによって再懸濁した。Eppendorf微量遠心管に、0.5mLのMVL懸濁液を加え、3,000rpmで10分間遠心分離した。リポソームペレットを乱さないことを確かめながら、100μLの上清をHPLCバイアルインサートに移した。インサート中に、100μLの第1の水性バッファー中の2% SDSを加え、ピペッティングによって内容物を完全に混合し、続いて、室温で10〜15分静置させた。PH20活性を、上記の実施例D.1に記載されるように決定した。
E.種々のMVL−PH20調製物の特性決定の要約
1.MVL−PH20製剤
上記の試験方法を使用して、いくつかのMVL−PH20製剤を作製し、分析した。調製された製剤の一部の結果が、以下の表24〜27に要約されている。使用前に、作製された各製剤を、上記のように特性決定した。例えば、オムニミキサーを用いて調製されたMVL−PH20製剤も、上記のように評価した。これらの製剤は、総溶解物において、良好なカプセル封入、31,000〜55,000U/mgのPH20の比活性を示した。総溶解物PH20活性を、抽出時間の増大(60〜90分)を用いて、オクチルグルコシドを用いて、71,000〜90,000U/mgの範囲にさらに増強した。リポソームから漏出した遊離PH20は、>100,000U/mgの比活性を示した。
以下の表26は、MVL−PH20製剤の上清画分中のPH20含量および活性を示す。抽出時間を増大し、オクチルグルコシドを用いた後のMVL−PH20製剤の総溶解物(懸濁液)PH20含量および活性が、表27に示されている。さらに、PH20の完全性は、製造プロセスの間、保たれ、>90%の純度のRP−HPLC分析から得られた主なPH20ピークを有していた。
Figure 2020172494
Figure 2020172494

Figure 2020172494

NA:該当なし
ND:未決定
Figure 2020172494
Figure 2020172494
2.MVL−PH20共製剤
PH20も含有する、いくつかのMVL−フィナステリド、デュタステリドまたは組合せ製剤を作製し、上記の試験方法を使用して分析した。結果は、高濃度のフィナステリドまたはデュタステリド(5〜25mg/mL)では、特徴的なMVL粒子に加えて微小管構造が観察されたことを示す。微小管構造の相対分布は、フィナステリドまたはデュタステリドの濃度が高まるにつれて高かった。丸い滑らかな構造の点で全体的に良好な形態を有する粒子が、30mMコレステロールを使用して5mg/mLの薬物濃度で形成されたのに対し、15mMコレステロールを使用する製剤は、この薬物濃度で不十分な粒子形成をもたらした。低濃度のフィナステリドまたはデュタステリド(0.5〜5mg/mL)では、または高い総脂質濃度を使用すると、MVL構造のかなり良好な粒子形態特徴および薬物組み込み効率の増大が観察された。表28には、一部の製剤の特徴が記載されている。表28に示された、PH20を含有する製剤から抽出された総(懸濁液)PH20活性は、<150U/mLであった。
Figure 2020172494
MVL−PH20特性に対する第1の水相中のPH20濃度の効果
0.25、0.5、1および2mg/mLの出発PH20量を含有する製剤F71〜F75を、実施例7に記載されるとおりに作製し、実施例9に記載されるような方法を使用してPH20酵素活性、PH20含量および総容量収率について比較し、これらの特性に対する出発PH20濃度の効果を決定した。結果は、出発PH20量が増大するにつれ、U/mLでの活性およびU/mgでの比活性は、両方とも増大し、1mg/mLの出発PH20を含有する製剤において、活性および比活性において、それぞれ、5倍および3倍増大したことを示す。2mg/mLの出発PH20を含有する製剤では、活性および比活性はわずかに低下した。すべての製剤について、全タンパク質濃度は増大したが、mLでの総容量収率は、すべての製剤についてほぼ同じであった。
バッファーまたはラット血漿におけるインビトロタンパク質放出
MVL−PH20製剤を、バッファーまたはラット血漿において、そのPH20放出について経時的に評価した。手短には、0.01%アジ化ナトリウムを含有するラット血漿か、または第3の水性バッファーのいずれか2mLに、MVL−PH20製剤の500μLのアリコートを加え、十分に混合した。混合物を、37℃のシェーカー上で12サイクルローテーションに付した。分析のために、0、1、3、5および7日目に2.5mLのアリコートを採取した。200μLの各アリコートを光学顕微鏡によって分析した。2mLの各アリコートを、2mLの生理食塩水に加え、15mLの試験管に移し、3500rpmで10分間遠心分離した。上清を採取し、上記の実施例9、節Dに記載されるように、1%オクチルグルコシドの存在下でそのPH20活性を決定した。ペレットを生理食塩水で洗浄し、遠心分離し、1000μLの1% SDSを加えた。HPLCによってPH20含量が決定された。
結果は、リポソームペレット中のPH20のパーセンテージの低下が経時的に観察され、5日目にプラトーに達したことを示す。例えば、バッファー中で、インビトロタンパク質放出は、1日目で0日目タンパク質含量のおよそ90%、3日目で0日目タンパク質含量のおよそ75%および5日目で0日目タンパク質含量のおよそ60%であった。リポソームペレット中のPH20のパーセンテージは、7日目でこれ以上は低下せず、定常のままであった。ラット血漿では、インビトロタンパク質放出は、1日目で0日目タンパク質含量のおよそ90%、3日目で0日目タンパク質含量のおよそ80%、5日目で0日目タンパク質含量のおよそ65%であり、それもまた7日目で定常を維持した。
結果はまた、培地中に放出されたPH20活性は、第3の水性バッファー中よりもラット血漿において高いということを示した。各々について、1日目に培地中に観察された活性の初期増大があり、0日目ラット血漿に対してほぼ200%の活性および0日目バッファーに対しておよそ150%の活性を有していた。活性は、1日目にプラトーに達し、7日目までわずかに低下した。
TE誘導性過形成性前立腺組織に対するMVL−PH20製剤の効果
この実施例では、種々のMVL−PH20製剤を、上記の実施例2に記載されるラットBPHモデルを使用してTE誘導性過形成性前立腺組織に対するその効果について評価した。
A.組織学的分析
1.使用されたMVL−PH20製剤の特性決定
この実施例では、実験が実施されるのに先立って、実施例8において上記で記載されるように製剤を特性決定した。PH20を含有する製剤の各々は、0.25mg/mL PH20の初期出発量を含有していた。結果は、以下の表29に示されている。MVL−PH20F40および媒体対照製剤も、光学顕微鏡によって分析した。結果は、リポソームにカプセル封入されたPH20を示した。AlexaFluor 488−PH20製剤を、光学顕微鏡および蛍光顕微鏡によって分析した。結果はAlexaFluor 488標識されたPH20が、リポソーム中にカプセル封入されたことを示した。
Figure 2020172494

LLOQ:定量化の下限
2.治療された前立腺の組織学的分析の要約
ラットに、MVL−PH20を前立腺内注射によって投与した点を除いて実施例3.Bと同様に、MVL−PH20を伴って、およびMVL−PH20を伴わずに、TEを投薬した。HA位置確認のための、前立腺組織収集、固定および組織学を、実施例3.Bに記載のとおりに実施した。
結果は、1日目の前立腺内注射によるMVL−PH20F40の投与後にほとんどのHAが分解したことおよび3日目に、MVL−PH20F40投与に近接した領域では、HAは、部分的に分解したことを示す。5、7および10日目には、HAは、分解していなかった。Alexa488−PH20F42を投薬されたラットは、注射部位に残っている、大きなパーセンテージの蛍光PH20を含有することが観察され、このことは、放出の初期期間とそれに続く極めてわずかな放出を示唆する。これは、この製剤の膜を安定化させた極めて徐放性の脂質成分によると予測された。
B.MVL−PH20F40を用いる治療
別個の研究では、MVL−H20F40を、TE誘導性過形成性前立腺組織に対するその効果について試験した。
1.MVL製剤の特性決定
試験した各MVL−PH20製剤は、0.25mg/mL PH20の初期出発量を含有しており、実施例9に記載されるように特性決定し、結果は以下の表30に示されている。
Figure 2020172494

LLOQ:定量化の下限
2.治療された前立腺組織の分析
この研究では、各ラットに、1日目および7日目に25mgのTEを静脈内に投与した。7日目に50μLの4700U/mL(0.18mg/mL)MVL−PH20F40および50μLのMVL−媒体を前立腺内に投与した。前立腺[HA]を分析するために9日目に、アポトーシスを分析するために8、10および14日目に、前立腺重量を分析するために14日目にラットを屠殺した。
結果は、MVL−PH20F40投与の1および3日後、MVLに隣接するHAが除去されたことを示す。治療の7日後、HAは存在していた。したがって、治療後3日までは前立腺HAの減少が観察された。8、10および14日目に間質細胞のアポトーシスを分析した。投与後1日目では、媒体治療およびMVL−PH20F40治療された前立腺間でアポトーシスレベルの相違は観察されなかった。投与後3日目に、MVL−PH20F40治療された前立腺においてアポトーシスの増大が観察された。投与後7日目には、MVL−PH20F40治療された前立腺ではPH20誘導性アポトーシスは観察されなかった。前立腺重量に対するMVL−PH20F40を用いる治療の効果は、以下の表31に示されている。比較目的で、正常ラット前立腺重量はおよそ0.6gである。MVL−PH20F40を用いる治療は、MVL−媒体対照を用いる治療と比較して、前立腺の大きさの大幅な低減をもたらした。
Figure 2020172494
C.MVL−PH20製剤を用いる治療
MVL−PH20製剤を、TE誘導性過形成性前立腺組織に対するその効果について試験した。
1.MVL−PH20製剤の特性決定
試験した各MVL−PH20製剤は、第1の水溶液中の0.25mg/mL PH20の初期出発量を含有しており、実施例9に記載のとおりに特性決定し、結果が以下の表32に示されている。
Figure 2020172494
2.治療された前立腺組織の分析
この研究では、各ラットに、1日目および7日目に25mgのTEを静脈内に投与した。前立腺の右葉に、50μLのMVL−PH20FXを前立腺内に投与し、同一ラット前立腺の左葉に50μLのMVL−媒体FXを前立腺内に投与した。記号FXは、F53、F54、F55またはF56などの評価された特定の製剤を指す。ラットを、14日目に屠殺し、前立腺重量および組織学的検査について分析した。
データが、以下の表33に示されており、これは、製剤、活性および媒体を用いる治療と比較した前立腺重量のおよその低減%を示す。すべての製剤を用いる治療が、前立腺の大きさの低減を引き起こした。製剤F54を用いる治療は、前立腺の大きさの45%の低減につながった。
Figure 2020172494
D.MVL−PH20F40およびMVL−PH20F54およびフィナステリドを用いる治療
1.MVL−PH20製剤の特性決定
各MVL−PH20製剤は、第1の水溶液中の0.25mg/mL PH20の初期出発量を含有しており、実施例9に記載のとおりに特性決定し、結果が以下の表34に示されている。PCおよびTG組成物の脂肪酸鎖長に基づいて、MVL−PH20F40は、遅いPH20放出速度を有すると予測され、MVL−PH20F54は、中程度のPH20放出速度を有すると予測される。
Figure 2020172494
2.治療された前立腺組織の分析
この研究では、各ラットに、1日目および7日目に25mgのTEを静脈内に投与した。7日目に各ラットに、50μLのMVL−PH20F40またはMVL−PH20F54を前立腺内に投与した。7日目に開始して毎日、各ラットに、2.5mg/kgのフィナステリドを腹膜内注射によって投与した。研究デザインは、以下の表35に示されている。
Figure 2020172494

I-Pr:前立腺内に
結果は、以下の表36に示されている。フィナステリドを用いる治療は、媒体対照と比較して、前立腺の大きさの18.7%の低減につながった。MVL−PH20製剤のいずれかを用いる治療は、前立腺の大きさの10〜12%の低減をもたらした。MVL−PH20製剤およびフィナステリドを用いる同時治療は、前立腺の大きさの19〜20%の低減をもたらした。この研究に使用したMVL−PH20のPH20酵素活性は、低く、それぞれ、1320および3057U/mLであった。
Figure 2020172494
当業者には修飾は明らかであるので、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。

Claims (20)

  1. 中性脂質と、
    両親媒性脂質と
    ヒアルロニダーゼと
    を含む多小胞リポソームであって、ヒアルロニダーゼの濃度は、0.1mg/mL〜1mg/mLの間である、多小胞リポソーム。
  2. ヒアルロニダーゼが、リポソーム内にカプセル封入されている、請求項1に記載の多小胞リポソーム。
  3. ヒアルロニダーゼが、可溶性ヒアルロニダーゼである、請求項1または2に記載の多小胞リポソーム。
  4. ヒアルロニダーゼが、可溶性PH20ヒアルロニダーゼである、請求項1から3のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  5. 可溶性PH20が、配列番号4〜9および47〜48のいずれかに示されるアミノ酸の配列または配列番号4〜9および47〜48のいずれかと少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を示すアミノ酸の配列を含有するポリペプチドの中から選択される、請求項4に記載の多小胞リポソーム。
  6. ヒアルロニダーゼが、ポリマーとのコンジュゲーションによって修飾されているか、または標識または検出可能な部分と直接または間接的に連結されている、請求項1から5のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  7. 中性脂質が、ジグリセリドまたはトリグリセリドである、請求項1から6のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  8. 両親媒性脂質が、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリンまたはジアシルトリメチルアンモニウムプロパン(DITAP)である、請求項1から7のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  9. DPPGまたはコレステロールの1つまたは両方をさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  10. ヒアルロニダーゼではない治療薬をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の多小胞リポソーム。
  11. 治療薬が、抗アンドロゲン剤、α遮断薬、ボツリヌス毒素および加水分解酵素の中から選択される良性前立腺肥大症を治療するための薬剤である、請求項10に記載の多小胞リポソーム。
  12. a)ヒアルロニダーゼを2mg/mL未満の濃度で含む第1の水性成分を形成する工程と、
    b)少なくとも1種の有機溶媒と、少なくとも1種の両親媒性脂質と、少なくとも1種の中性脂質とを含む脂質成分を形成する工程と、
    c)第1の水性成分および脂質成分からエマルジョンを形成する工程と、
    d)エマルジョンを第2の水性成分中に分散して溶媒小球を形成する工程と、
    e)溶媒小球から有機溶媒を除去して、第2の水性成分中に懸濁された多小胞リポソームを形成する工程と
    を含む多小胞リポソームを製造する方法であって、得られる多小胞リポソームは、0.1mg/mL〜1mg/mLのヒアルロニダーゼを含む、請求項1から11のいずれかに記載の多小胞リポソームを製造する方法。
  13. 医薬上許容される担体中に請求項1から11のいずれかに記載の多小胞リポソームを含む、組成物。
  14. 請求項1から11のいずれかに記載の多小胞リポソームを含む第1の組成物と、
    ヒアルロニダーゼではない治療薬を含む第2の組成物と
    を含む、組合せ生成物。
  15. 治療薬が、癌を治療するための薬剤である、請求項13に記載の組成物または請求項14に記載の組合せ生成物。
  16. ヒアルロニダーゼが、可溶性PH20である、請求項13から15のいずれかに記載の組成物または組み合わせ組成物。
  17. ヒアルロナン関連疾患または状態の治療において使用するための、請求項13から16のいずれかに記載の組成物または組合せ生成物。
  18. 疾患または状態が、癌である、請求項17に記載の組成物または組合せ生成物。
  19. 多小胞リポソームが、全身投与用に製剤される、請求項13から16のいずれかに記載の組成物または組合せ生成物。
  20. 多小胞リポソームが、静脈内投与用に製剤される、請求項13から16のいずれかに記載の組成物または組合せ生成物。
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