JP2020167179A - 溶射用マスキング材、静電チャック装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マスキング材の開口部の内側面に溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、マスキング材を容易に除去することができる溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法を提供する。【解決手段】繊維層20と、繊維層20に積層された粘着層30と、を少なくとも有する積層体40からなり、積層体40は厚さ方向に貫通する開口部41を有し、開口部41は、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20aから、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aに拡径する溶射用マスキング材10。【選択図】図2

Description

本発明は、溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法に関する。
半導体ウエハを使用して半導体集積回路を製造する場合や、ガラス基板、フィルム等の絶縁性基板を使用した液晶パネルを製造する場合には、半導体ウエハ、ガラス基板、絶縁性基板等の基材を所定部位に吸着保持する必要がある。そのため、それらの基材を吸着保持するために、機械的方法によるメカニカルチャックや真空チャック等が用いられていた。しかしながら、これらの保持方法は、基材(被吸着体)を均一に保持することが困難である、真空中で使用することができない、試料表面の温度が上昇し過ぎる等の問題があった。そこで、近年、被吸着体の保持には、これらの問題を解決することができる静電チャック装置が用いられている。
静電チャック装置は、内部電極となる導電性支持部材と、それを被覆する誘電性材料からなる誘電層と、を主要部として備える。この主要部により被吸着体を吸着させることができる。静電チャック装置内の内部電極に電圧を印加して、被吸着体と導電性支持部材との間に電位差を生じさせると、誘電層の間に静電気的な吸着力が発生する。これにより、被吸着体は導電性支持部材に対しほぼ平坦に支持される。また、静電チャック装置の吸着面に、複数の凹凸部を形成し、この複数の凸部の上面により形成される面に被吸着体を吸着することで、溶射により誘電層の吸着面に微細な凹凸を形成する際に、被吸着体にパーティクルが付着することを抑制している。
特許文献1には、静電吸着面となるセラミックス誘電体層の表面を部分的に薄く削り取り、多数の凸凹を形成するディンプル加工を施すことが開示されている。特許文献1では、表面の幅8mmの外周部と規則正しく配列された複数個の直径4mmの円形部分をマスキングし、残りの部分をブラスト処理することにより、深さ20μmを削り取って段差を設けて、静電吸着面に、セラミックスの溶射時にパーティクルが付着することを抑制している。
特許文献2には、Siウエハの裏面のパーティクルは、Siウエハと静電チャック装置との接触部の接触面積が広いほど多くなるため、Siウエハと静電チャック装置の接触面積を小さくするために、静電チャック装置の吸着面に複数の凹凸部を形成することが開示されている。特許文献2では、静電吸着面に所定のパターンでマスキングした後、ブラスト加工を行い、複数の凹凸部を形成している。
特許文献3には、被処理部材の表面を、所定のパターン形状の開口部を有するマスキング材でマスキングした後、そのマスキング材を介して、溶射材を溶射して、溶射膜をパターニングすることが開示されている。
特開2003−264223号公報 特開2007−201068号公報 特開2017−177029号公報
特許文献3のマスキング材を用いて、溶射により、静電チャック装置の吸着面に、微細な凹凸を有する溶射膜を形成すると、マスキング材の開口部の内側面にも、溶射膜が形成されることがあった。マスキング材の開口部の内側面に形成された溶射膜は、静電チャック装置の吸着面に形成された溶射膜と繋がっていることがある。この状態で、マスキング材を除去すると、マスキング材の開口部の内側面に形成された溶射膜と静電チャック装置の吸着面に形成された溶射膜が一緒に剥がれてしまうという課題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、マスキング材の開口部の内側面に溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、マスキング材を容易に除去することができる溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]繊維層と、前記繊維層に積層された粘着層と、を少なくとも有する積層体からなり、前記積層体は厚さ方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記繊維層における前記粘着層とは反対側の面から、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面に拡径することを特徴とする溶射用マスキング材。
[2]前記開口部は、前記繊維層における前記粘着層とは反対側の面から、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面に次第に拡径するテーパ部であることを特徴とする[1]に記載の溶射用マスキング材。
[3]前記開口部は、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面から前記繊維層側に窪む凹部であることを特徴とする[1]に記載の溶射用マスキング材。
[4]第1の絶縁性有機フィルムの表面に金属薄膜を形成した後、エッチングにより、前記金属薄膜をパターニングして内部電極を形成する工程と、前記内部電極の上面に、第2の接着剤層を介して、第2の絶縁性有機フィルムを貼着する工程と、前記第1の絶縁性有機フィルムの下面が基板の表面側となるように、前記第1の絶縁性有機フィルム、前記内部電極、前記第2の接着剤層および前記第2の絶縁性有機フィルムからなる積層体を、第1の接着剤層を介して、基板の表面に接合する工程と、前記積層体の外面全面を覆うように、セラミックス下地層を形成する工程と、前記セラミックス下地層の上面に、[1]〜[3]のいずれかに記載の溶射用マスキング材を貼着し、該溶射用マスキング材を介して、前記セラミックス下地層の上面に、セラミックス表層を構成する材料を溶射して、凹凸を有するセラミックス表層を形成する工程と、を有することを特徴とする静電チャック装置の製造方法。
本発明によれば、マスキング材の開口部の内側面に溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、マスキング材を容易に除去することができる溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法を提供することができる。
本発明の溶射用マスキング材の実施形態の概略構成を示す平面図である。 本発明の溶射用マスキング材の第1の実施形態の概略構成を示し、図1のA−A線に沿う断面図である。 本発明の溶射用マスキング材の第2の実施形態の概略構成を示し、図1のA−A線に沿う断面図である。 本発明の静電チャック装置の概略構成を示し、静電チャック装置の高さ方向に沿う断面図である。
以下、本発明を適用した実施形態の溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[溶射用マスキング材]
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の溶射用マスキング材の概略構成を示す平面図である。図2は、本発明の溶射用マスキング材の第1の実施形態の概略構成を示し、図1のA−A線に沿う断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の溶射用マスキング材10は、繊維層20と、繊維層20に積層された粘着層30と、を少なくとも有する積層体40である。
積層体40は、厚さ方向に貫通する複数の開口部41を有する。開口部41は、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20a(図1では積層体40の上面40a)から、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30a(図1では積層体40の下面40b)に拡径する。
本実施形態では、図2に示すように、積層体40の開口部41は、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20aから、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aに次第に拡径するテーパ部である。
積層体40の上面40aにおける開口部41の口径(開口径)d1は、特に限定されず、後述するように、溶射により、セラミックス下地層の上面にセラミックス表層を形成する際に、セラミックス表層に設けられる凸部の大きさに応じて、適宜調整される。積層体40の上面40aにおける開口部41の口径d1は、例えば、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
また、積層体40の下面40bにおける開口部41の口径(開口径)d2は、特に限定されず、後述するように、溶射により、セラミックス下地層の上面にセラミックス表層を形成する際に、セラミックス表層に設けられる凸部の大きさに応じて、適宜調整される。積層体40の下面40bにおける開口部41の口径d2は、例えば、110μm以上3000μm以下であることが好ましい。
開口部41を平面視した場合の形状は、特に限定されないが、後述する本実施形態の静電チャック装置の製造方法によって形成されるセラミックス表層152の凸部153の形状に応じて、適宜決定される。開口部41を平面視した場合の形状としては、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、正方形状等が挙げられる。
溶射用マスキング材10は、典型的には、シート状である。ここで、本明細書にいう「シート」は、例えば、枚葉、ロール状、薄板状、帯状( テープ状) 等の全ての形態を含む。
繊維層20の厚さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。繊維層20の厚さが10μm以上であれば、溶射する際の熱や衝撃に対しての緩和作用をより発揮でき、溶射物や粒子の粘着層30への貫通を有効に防止できる。一方、繊維層20の厚さが200μm以下であれば、例えば、溶射の際の、物理的外力による溶射用マスキング材10の縦方向の変形による悪影響を低減できる(形態安定性向上)とともに、被処理部材への追従性の向上を図ることができる。
繊維層20としては、特に限定されず、例えば、樹脂繊維層、金属繊維層、紙層等が挙げられる。溶射用マスキング材10の基材層として、一般的な樹脂フィルム層を用いるのではなく、繊維層20を用いることにより、被処理部材から溶射用マスキング材10を剥離した際の糊残りを効果的に防止することが可能となる。
繊維層20は、好適には、単繊維と、フィブリル化繊維と、を組み合わせたものである。単繊維が存在する場合、溶射やブラスト等の外的応力に対して抵抗力を持たせることができる。特に、微細加工の場合、溶射金属等がマスキング材を貫通してしまう事態は望ましくなく、この観点から当該抵抗力を有することが好ましい。また、フィブリル化繊維が存在する場合、アンカー効果により、繊維層20と粘着層30との接合強度が高くなる。このため、処理後に被処理部材から溶射用マスキング材10を剥離する際の、被処理部材上の糊残りを低減することが可能となる。
繊維層20に用いられるフィブリル化繊維としては、例えば、木材繊維等の天然繊維や合成高分子繊維等が挙げられる。
木材繊維としては、例えば、針葉樹、広葉樹からなる、機械パルプ(MP)、化学パルプ(CP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)、セミケミカルパルプ(SCP)等が挙げられる。これらのパルプは、未晒しパルプでも晒しパルプでもよい。
木材以外の天然繊維としては、例えば、木綿、わら、竹、エスパルト、バガス、リンター、マニラ麻、亜麻、麻、黄麻、雁皮等のパルプ化繊維が挙げられる。
合成高分子繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のオレフィン樹脂繊維等が挙げられる。その他、合成高分子繊維としては、例えば、ポリアセタール、ポリイミド、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、スチレンおよびその共重合体、アクリル酸エステルおよびその共重合体等の合成繊維が挙げられる。これらの合成繊維としては、叩解機による繊維のフィブリル化を行ない、パルプ化したものを用いることができる。
叩解機としては、例えば、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、ビーター等が用いられる。
繊維の叩解度は、カナダ標準濾水度(JIS P 8121)で、750CSF〜100CSFであることが好ましく、500CSF〜250CSFあることがより好ましい。
フィブリル化繊維の繊維長は、0.1mm以上であることが好ましい。なお、本実施形態では、物理強度が高いことから、木材繊維としては針葉樹が好ましい。
単繊維としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ、ゼオライト等の無機繊維、銅、鉄、ステンレス等の金属繊維、アラミド繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維等が挙げられる。これらのなかでも、耐熱の観点から、アラミド繊維が特に好ましい。
単繊維のカット長は、1mm以上30mm以下であることが好ましく 、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
単繊維の繊維径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上15μm以下であることがより好ましい。
繊維層20における単繊維の含有量は、フィブリル化繊維100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下であることが好ましく、50質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上400質量部以下であることがさらに好ましい。
粘着層30の厚さは、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
粘着層30の厚さが5μm以上であれば、被処理部材に対して十分な貼付強度を担保できる。一方、粘着層30の厚さが50μm以下であれば、溶射用マスキング材10を剥離した後の糊残りをより抑制することができるとともに、粘着層30が変形することに伴う位置づれを有効に防止することが可能になる。
粘着層30は、水再溶解性または水再分散性である。すなわち、粘着層30は、一般的に水再溶解性または水再分散性と称される性質同様、基材に粘着層成分が付着したとしても、水により容易に除去できる性質を有する。粘着層30としては、例えば、25℃ の水に5分間浸した場合に90質量%以上が溶解または分散して固形分として残らないものが好ましい。このような粘着層30を構成する主成分(全粘着剤質量を基準として、50質量%以上、好適には70質量%以上)は、特に限定されないが、例えば、水溶性ポリマーや水膨潤性ポリマーである。
ここで、水溶性ポリマーや水膨潤性ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、水酸基、アンモニウム基、スルホン酸基を有する単量体の単独重合体または共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン− 酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド、アルギン酸、セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)が挙げられる。
なお、粘着層30の主成分は、ポリマーに限定されず、無機材料(例えば、炭酸カルシウム等)であってもよい。
ここで、熱処理を行なう用途(例えば、金属やセラミックの溶射)においては、粘着層30として好適な材料は、熱分解度が300℃以上のポリマー、例えば、ポリビニルアセトアミドである。
なお、熱分解温度は、セイコーインスツル社製TG/D TA6200を用いて、窒素雰囲気下での5%重量減少温度を測定した値とする。
粘着層30は、主成分に加えて、他の添加剤を含有していてもよい。
例えば、主成分のポリマーが粘着性を有していない場合や粘着性が弱い場合には、粘着層30が、保湿剤(例えば、グリセリン)を含有することが好ましい。この場合、保湿剤の含有量は、全粘着層の質量を基準として、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。保湿剤の含有量が前記の範囲内であると、粘着層30が適度に柔らかくなり、かつ形状保持性に優れるとともに、被処理部材に溶射用マスキング材10を固定させるのに十分なタック性を担保することが可能となる。
本実施形態の溶射用マスキング材10は、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20a(図1では積層体40の上面40a)に保護層(図示略)を設けてもよい。
保護層は、溶射処理やブラスト処理といった繊維層20への物理的な衝撃を緩和する目的で設けられる。
保護層の形成に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等の汎用樹脂の他に、水再溶解性または水再分散性の樹脂が挙げられる。被処理部材の面処理後の溶射用マスキング材10を剥離する際には、繊維層20の繊維間の隙間より水が浸入して溶射用マスキング材10を剥離できるが、剥離の容易さを考慮すると、水再溶解性または水再分散性の樹脂を用いることが好ましい。
本実施形態の溶射用マスキング材10は、繊維層20と粘着層30を少なくとも有する積層体40が、厚さ方向に貫通する複数の開口部41を有し、開口部41が、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20aから、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aに次第に拡径するテーパ部である。そのため、後述する本実施形態の静電チャック装置の製造方法に、本実施形態の溶射用マスキング材10を用いた場合、溶射用マスキング材10(積層体40)の開口部41の内側面41aに溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、溶射用マスキング材10を容易に除去することができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の溶射用マスキング材の第2の実施形態の概略構成を示し、図1のA−A線に沿う断面図である。
なお、図3において、図2に示した第1の実施形態の溶射用マスキング材と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図1および図3に示すように、本実施形態の溶射用マスキング材10は、繊維層20と、繊維層20に積層された粘着層30と、を少なくとも有する積層体50である。
積層体50は、厚さ方向に貫通する複数の開口部51を有する。開口部51は、繊維層20における粘着層30とは反対側の面20a(図3では積層体50の上面50a)から、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30a(図3では積層体50の下面50b)に拡径する。
本実施形態では、図3に示すように、積層体50の開口部51は、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aから粘着層30側(繊維層20側)に窪む凹部である。
積層体50の上面50aにおける開口部51の口径(開口径)d3は、特に限定されず、後述するように、溶射により、セラミックス下地層の上面にセラミックス表層を形成する際に、セラミックス表層に設けられる凸部の大きさに応じて、適宜調整される。積層体50の上面50aにおける開口部51の口径d3は、例えば、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
また、積層体50の下面50bにおける開口部51の口径(開口径)d4は、特に限定されず、後述するように、溶射により、セラミックス下地層の上面にセラミックス表層を形成する際に、セラミックス表層に設けられる凸部の大きさに応じて、適宜調整される。積層体50の下面50bにおける開口部51の口径d4は、例えば、110μm以上3000μm以下であることが好ましい。
本実施形態の溶射用マスキング材10は、繊維層20と粘着層30を少なくとも有する積層体50が、厚さ方向に貫通する複数の開口部51を有し、開口部51が、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aから繊維層20側に窪む凹部である。そのため、後述する本実施形態の静電チャック装置の製造方法に、本実施形態の溶射用マスキング材10を用いた場合、溶射用マスキング材10(積層体50)の開口部51の内側面51aに溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、溶射用マスキング材10を容易に除去することができる。
[溶射用マスキング材の製造方法]
本実施形態の溶射用マスキング材10の製造方法は、特に限定されず、一般の積層体(基材/粘着層)の製造方法であってもよい。本実施形態の溶射用マスキング材10の製造方法は、例えば、粘着層を構成する成分を含有する液状組成物を繊維シートにコーティングして粘着層を形成する塗布工程を有する。
ここで、塗布工程において、前記液状組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法等の慣用のコーティング法が挙げられる。これらのコーティング法のなかでも、ブレードコーター、バーコーター法やグラビアコーター法等が汎用される。
また、本実施形態の溶射用マスキング材10の製造方法は、例えば、粘着層が積層された離型シートから、粘着層を基材に転写する工程を有する。具体的には、本実施形態の溶射用マスキング材10の製造方法は、粘着剤を構成する成分を含有する液状組成物を離型シートに塗布する工程と、基材の片面と粘着層とが接触するように、粘着層が積層された離型シートを、基材に貼り合わせる工程と、を有する。
[溶射用マスキング材の加工方法]
溶射用マスキング材10の打ち抜き方法、すなわち、積層体40,50に開口部41,51を形成する方法としては、特に限定されず、打ち抜き型、ナイフ、ハサミ、超音波カッター等のカッター、ウォータージェット、レーザー光線等が挙げられる。なお、溶射用マスキング材10が、配線パターンのような微細加工を行うために用いられる場合には、レーザー光線により打ち抜きを行うことが好ましい。特に、本実施形態の溶射用マスキング材10は、レーザー光線による打ち抜き加工性に優れる。また、積層体40,50に開口部41,51を形成する際には、粘着層30における繊維層20とは反対側の面30aから繊維層20側に向かって、打ち抜き方法を行う。
[静電チャック装置]
図4は、本実施形態の静電チャック装置の概略構成を示し、静電チャック装置の高さ方向に沿う断面図である。
図4に示すように、本実施形態の静電チャック装置100は、基板110と、複数の内部電極120と、接着剤層130と、絶縁性有機フィルム140と、セラミックス層150と、を備える。詳細には、図4に示すように、本実施形態の静電チャック装置100は、基板110と、第1の内部電極121と、第2の内部電極122と、第1の接着剤層131と、第2の接着剤層132と、第1の絶縁性有機フィルム141と、第2の絶縁性有機フィルム142と、セラミックス層150と、を備える。
本実施形態の静電チャック装置100では、基板110の表面(基板110の厚さ方向の上面)110aにて、第1の接着剤層131と、第1の絶縁性有機フィルム141と、第1の内部電極121および第2の内部電極122と、第2の接着剤層132と、第2の絶縁性有機フィルム142と、セラミックス層150とがこの順に積層されている。
内部電極120の厚さ方向の両面(内部電極120の厚さ方向の上面120a、内部電極120の厚さ方向の下面120b)側にそれぞれ絶縁性有機フィルム140が設けられている。詳細には、第1の内部電極121の厚さ方向の上面121a側および第2の内部電極122の厚さ方向の上面122a側に、第2の絶縁性有機フィルム142が設けられている。また、第1の内部電極121の厚さ方向の下面121b側および第2の内部電極122の厚さ方向の下面122b側に、第1の絶縁性有機フィルム141が設けられている。
少なくとも内部電極120および絶縁性有機フィルム140を含む積層体102の厚さ方向の上面102a(第2の絶縁性有機フィルム142の上面142a)に、セラミックス層150が積層されている。
図4に示すように、セラミックス層150は、積層体102の外面(積層体102の上面102a、側面(積層体102の厚さ方向に沿う面、第1の接着剤層131の側面、第2の接着剤層132の側面、第1の絶縁性有機フィルム141の側面、および、第2の絶縁性有機フィルム142の側面)102b全面を覆うことが好ましい。
図4に示すように、セラミックス層150は、セラミックス下地層151と、セラミックス下地層151の上面(セラミックス下地層151の厚さ方向の上面)151aに形成され、凹凸を有するセラミックス表層152と、を有することが好ましい。
第1の内部電極121および第2の内部電極122は、第1の絶縁性有機フィルム141または第2の絶縁性有機フィルム142に接していてもよい。また、第1の内部電極121および第2の内部電極122は、図4に示すように、第2の接着剤層132の内部に形成されていてもよい。第1の内部電極121および第2の内部電極122の配置は、適宜設計することができる。
第1の内部電極121と第2の内部電極122は、それぞれ独立しているため、同一極性の電圧を印加するだけではなく、極性の異なる電圧を印加することもできる。第1の内部電極121および第2の内部電極122は、導電体、半導体および絶縁体等の被吸着体を吸着することができれば、その電極パターンや形状は特に限定されない。また、第1の内部電極121のみが単極として設けられていてもよい。
基板110としては、特に限定されないが、セラミックス基板、炭化ケイ素基板、アルミニウムやステンレス等からなる金属基板等が挙げられる。
内部電極120としては、電圧を印加した際に静電吸着力を発現できる導電性物質からなるものであれば特に限定されない。内部電極120としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、ニッケル、タングステン等の金属からなる薄膜、および前記の金属から選択される少なくとも2種の金属からなる薄膜が好適に用いられる。このような金属の薄膜としては、蒸着、メッキ、スパッタリング等により成膜されたものや、導電性ペーストを塗布乾燥して成膜されたもの、具体的には、銅箔等の金属箔が挙げられる。
第2の接着剤層132の厚さが、内部電極120の厚さよりも大きくなっていれば、内部電極120の厚さは特に限定されない。内部電極120の厚さは、20μm以下であることが好ましい。内部電極120の厚さが、20μm以下であれば、第2の絶縁性有機フィルム142を形成する際に、その上面142aに凹凸が生じ難い。その結果、第2の絶縁性有機フィルム142上にセラミックス層150を形成する際や、セラミックス層150を研磨する際に、不良が生じ難い。
内部電極120の厚さは、1μm以上であることが好ましい。内部電極120の厚さが1μm以上であれば、内部電極120と、第1の絶縁性有機フィルム141または第2の絶縁性有機フィルム142とを接合する際に、十分な接合強度が得られる。
第1の内部電極121と第2の内部電極122に、極性の異なる電圧を印加する場合、隣接する第1の内部電極121と第2の内部電極122の間隔(内部電極120の厚さ方向と垂直な方向の間隔)は、2mm以下であることが好ましい。第1の内部電極121と第2の内部電極122の間隔が2mm以下であれば、第1の内部電極121と第2の内部電極122の間に十分な静電力が発生し、十分な吸着力が発生する。
内部電極120から被吸着体までの距離、すなわち、第1の内部電極121の上面121aおよび第2の内部電極122の上面122aからセラミックス表層152上に吸着される被吸着体までの距離(第1の内部電極121の上面121aおよび第2の内部電極122の上面122a上に存在する、第2の接着剤層132、第2の絶縁性有機フィルム142、セラミックス下地層151およびセラミックス表層152の厚さの合計)は、0.05mm以上0.15mm以下であることが好ましい。内部電極120から被吸着体までの距離が0.05mm以上であれば、第2の接着剤層132、第2の絶縁性有機フィルム142、セラミックス下地層151およびセラミックス表層152からなる積層体の絶縁性を確保することができる。一方、内部電極120から被吸着体までの距離が0.15mm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
接着剤層130を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン系ブロック共重合体、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アミン化合物、ビスマレイミド化合物等から選択される1種または2種以上の樹脂を主成分とする接着剤が用いられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジグリシジルジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能基または多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、エポキシ樹脂を主成分とする場合、必要に応じて、イミダゾール類、第3アミン類、フェノール類、ジシアンジアミド類、芳香族ジアミン類、有機過酸化物等のエポキシ樹脂用の硬化剤や硬化促進剤を配合することもできる。
フェノール樹脂としては、アルキルフェノール樹脂、p−フェニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂等のノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂、ポリフェニルパラフェノール樹脂等が挙げられる。
スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
絶縁性有機フィルム140を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン等が用いられる。これらの中でも、絶縁性に優れることから、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリイミド、シリコーンゴム、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリイミドがより好ましい。ポリイミドフィルムとして、例えば、東レ・デュポン社製のカプトン(商品名)、宇部興産社製 のユーピレックス(商品名)等が用いられる。
絶縁性有機フィルム140の厚さは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。絶縁性有機フィルム140の厚さが10μm以上であれば、絶縁性を確保することができる。一方、絶縁性有機フィルム140の厚さが100μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
セラミックス層150を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化インジウム、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、窒化ジルコニウム、酸化チタン等が用いられる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの材料は、平均粒子径が1μm以上25μm以下の粉体であることが好ましい。このような粉体を用いることにより、セラミックス層150の空隙を減少させ、セラミックス層150の耐電圧を向上させることができる。
セラミックス下地層151の厚さは、10μm以上80μm以下であることが好ましく、25μm〜50μmであることがより好ましい。セラミックス下地層151の厚さが10μm以上であれば、十分な耐プラズマ性および耐電圧性を示す。一方、セラミックス下地層151の厚さが80μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
セラミックス表層152の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。セラミックス表層152の厚さが5μm以上であれば、セラミックス表層152の全域にわたって、凹凸を形成できる。一方、セラミックス表層152の厚さが20μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
セラミックス表層152は、その表面を研磨することによって、その吸着力を向上することができ、その表面の凹凸を表面粗さRaとして調整することができる。
ここで、表面粗さRaとは、JIS B0601−1994に規定される方法により測定した値を意味する。
セラミックス表層152の表面粗さRaは、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。セラミックス表層152の表面粗さRaが前記の範囲内であれば、被吸着体を良好に吸着することができる。セラミックス表層152の表面粗さRaが大きくなると、被吸着体とセラミックス表層152との接触面積が小さくなるため、吸着力も小さくなる。
以上説明した本実施形態の静電チャック装置100においては、複数の内部電極120と、内部電極120の厚さ方向の両面側に設けられた絶縁性有機フィルム140と、少なくとも内部電極120および絶縁性有機フィルム140を含む積層体102の厚さ方向の上面102aに積層されたセラミックス層150と、を備える。したがって、少なくとも積層体102の厚さ方向の上面102a側において、耐プラズマ性および耐電圧性が向上し、使用中の異常放電を抑制することができる。そのため、本実施形態の静電チャック装置100は、吸着性にも優れる。
本実施形態の静電チャック装置100において、セラミックス層150が、積層体102の外面全面を覆っていれば、積層体102の上面102a側および側面102b側において、耐プラズマ性および耐電圧性が向上し、使用中の異常放電を抑制することができる。そのため、本実施形態の静電チャック装置100は、より吸着性にも優れる。
本実施形態の静電チャック装置100において、セラミックス層150が、セラミックス下地層151と、セラミックス下地層151の上面151aに形成され、凹凸を有するセラミックス表層152と、を有することにより、吸着力を向上することができる。
本実施形態の静電チャック装置100において、絶縁性有機フィルム140が、ポリイミドフィルムであることにより、耐電圧性が向上する。
[静電チャックの製造方法]
図4を参照して、本実施形態の静電チャック装置100の製造方法を説明する。
第1の絶縁性有機フィルム141の表面(第1の絶縁性有機フィルム141の厚さ方向の上面)141aに、銅等の金属を蒸着して、金属の薄膜(金属薄膜)を形成する。その後、エッチングを行って、金属の薄膜を所定の形状にパターニングして、第1の内部電極121と第2の内部電極122を形成する。
次いで、内部電極120の上面120aに、第2の接着剤層132を介して、第2の絶縁性有機フィルム142を貼着する。
次いで、第1の絶縁性有機フィルム141の下面(第1の絶縁性有機フィルム141の厚さ方向の下面)141bが基板110の表面110a側となるように、第1の絶縁性有機フィルム141、内部電極120、第2の接着剤層132および第2の絶縁性有機フィルム142からなる積層体を、第1の接着剤層131を介して、基板110の表面110aに接合する。
次いで、第1の絶縁性有機フィルム141、内部電極120、第2の接着剤層132および第2の絶縁性有機フィルム142からなる積層体の外面全面を覆うように、セラミックス下地層151を形成する。
セラミックス下地層151を形成する方法は、例えば、セラミックス下地層151を構成する材料を含むスラリーを前記の積層体102の外面全面に塗布し、焼結してセラミックス下地層151を形成する方法、セラミックス下地層151を構成する材料を前記の積層体102の外面全面に溶射してセラミックス下地層151を形成する方法等が挙げられる。
ここで、溶射とは、被膜(本実施形態では、セラミックス下地層151)となる材料を加熱溶融後、圧縮ガスを用いて被処理体へ射出することにより成膜する方法のことである。
次いで、セラミックス下地層151の上面151aに、上述の本実施形態の溶射用マスキング材10を貼着し、溶射用マスキング材10を介して、セラミックス下地層151の上面151aに、セラミックス表層152を構成する材料を溶射して、凹凸を有するセラミックス表層152を形成する。すなわち、セラミックス下地層151の上面151aに、上述の溶射用マスキング材10を介して、セラミックス表層152を構成する材料を溶射することにより、間隔を置いて、複数の凸部153を形成することにより、結果として、凹凸を有するセラミックス表層152を形成する。
以上の工程により、本実施形態の静電チャック装置100を作製することができる。
本実施形態の静電チャック装置の製造方法によれば、セラミックス下地層151の上面151aに、本実施形態の溶射用マスキング材10を貼着し、溶射用マスキング材10を介して、セラミックス下地層151の上面151aに、セラミックス表層152を構成する材料を溶射して、凹凸を有するセラミックス表層152を形成するため、溶射用マスキング材10(積層体40,50)の開口部41,51の内側面41a,51aに溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、溶射用マスキング材10を容易に除去することができる。従って、本実施形態の静電チャック装置の製造方法によって得られた静電チャック装置は、その表面(セラミックス表層上)に被吸着体を吸着させるために十分な吸着力を有するものとなる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例]
「溶射用マスキング材の作製」
アラミド単繊維(繊維長3mm、繊維径3μm)と、ポリエチレンテレフタレート単繊維(繊維長3mm、繊維径3μm)と、アラミドパルプ繊維(商品名:トワロン、帝人社製)とを、質量比で、2:1:1となるように配合し、湿式抄紙法により製造した、厚さ50μmの複合繊維からなる基材の一方の面に、粘着層として、厚さ20μmとなるようにデンプン糊を塗工し、基材と粘着層から構成される積層体を得た。
次に、上記積層体の粘着層側から、レーザーにより、規則正しく配列された直径300μmの円形からなり、積層体を厚さ方向に貫通する開口部を複数形成し、実施例の溶射用マスキング材を得た。積層体に形成した開口部は、複合繊維における粘着層とは反対側の面から、粘着層における複合繊維とは反対側の面に次第に拡径するテーパ部であった。
「静電チャック装置」
絶縁層としての膜厚50μmのポリイミドフィルム(商品名:カプトン、東レ・デュポン社製)の片面に、メッキにより、厚さ5μmの銅薄膜を形成した。
次に、銅薄膜の表面にフォトレジストを塗布した後、パターン露光した後に現像処理を行い、エッチングにより不要な銅薄膜を除去した。
その後、ポリイミドフィルム上の銅薄膜を洗浄することにより、フォトレジストを除去し、内部電極を形成した。
次に、その内部電極上に、接着剤層として、乾燥および加熱により半硬化させた絶縁性接着剤シート(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名:EOCN−1020、日本化薬社製、35質量部、ノボラックフェノール樹脂、商品名:マルカリンカーM、丸善石油化学社製、15質量部、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、商品名:1001、日本ゼオン社製、50質量部、ジシアンジアミド、0.2質量部を適量のテトラヒドロフランに混合溶解したもの)を積層した後、さらに、絶縁性有機フィルムとして、膜厚50μmのポリイミドフィルム(商品名:カプトン、東レ・デュポン社製)を貼着し、熱処理により、内部電極上に接着剤層を接着させた。なお、乾燥後の絶縁性接着剤シートの厚さは20μmであった。
さらに、絶縁性有機フィルムであるポリイミドフィルム上に、別の接着剤層として、乾燥および加熱により半硬化させた絶縁性接着剤シート(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名:EOCN−1020、日本化薬社製、35質量部、ノボラックフェノール樹脂、商品名:マルカリンカーM、丸善石油化学社製、15質量部、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、商品名:1001、日本ゼオン社製、50質量部、ジシアンジアミド、0.2質量部を適量のテトラヒドロフランに混合溶解したもの)を積層し、アルミニウム製の基板を貼着させ、熱処理により、別の接着剤層にアルミニウム製の基板を接着させた。なお、乾燥後の絶縁性接着剤シートの厚さは20μmであった。
上記の構成の積層体において、絶縁性有機フィルムに用いたポリイミドフィルムの表面をサンドブラスト処理することで表面を粗くした後、酸化アルミニウムをプラズマ溶射することにより、ポリイミドフィルム上にセラミックス下地層を形成した。
次に、セラミックス下地層の上面に、上記の溶射用マスキング材の粘着層を貼着した。
次に、溶射用マスキング材を介して、セラミックス下地層の上面に酸化アルミニウムをプラズマ溶射した。
その後、セラミックス下地層から溶射用マスキング材を剥がして、溶射用マスキング材のパターン状に対応する凹凸を有するセラミックス表層が形成された実施例の静電チャック装置を得た。
「評価」
得られた静電チャック装置の表面(セラミックス表層)を走査型電子顕微鏡で観察した結果、溶射用マスキング材のパターン状に対応する凹凸が正確に形成され、セラミックス表層を形成する溶射膜が剥がれていないことが確認された。
また、真空下(10Pa以下)にて静電チャック装置の表面(セラミックス表層上)に、被吸着体として無アルカリガラス(縦100cm×横100cm×厚さ0.7mm)を吸着させ、内部電極に±3kVの電圧を印加した後、30秒間保持させた。電圧を印加した状態のままガラスを垂直方向に引き上げた。その結果、吸着力が1000Pa以上であり、実施例の静電チャック装置は、十分な吸着力を有していることが確認された。
[比較例]
実施例にて作製した積層体の複合繊維側から、レーザーにより、規則正しく配列された直径300μmの円形からなり、積層体を厚さ方向に貫通する開口部を複数形成し、比較例の溶射用マスキング材を得た。
その溶射用マスキング材を用いたこと以外は、実施例と同様にして、比較例の静電チャック装置を得た。
実施例と同様にして、得られた静電チャック装置の表面(セラミックス表層)を走査型電子顕微鏡で観察した結果、溶射膜の一部が剥がれており、溶射用マスキング材のパターン状に対応する凹凸形状を有する溶射膜が形成されていないことが確認された。
本発明の溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法によれば、溶射用マスキング材の開口部の内側面に溶射膜が形成されることを抑制し、溶射終了後に、被処理面に形成された溶射膜を剥離することなく、溶射用マスキング材を容易に除去することができる。従って、本発明の溶射用マスキング材、およびそれを用いた静電チャック装置の製造方法によれば、被吸着体の吸着力に優れる静電チャック装置が得られる。
10 溶射用マスキング材
20 繊維層
30 粘着層
40,50 積層体
41,51 開口部
100 静電チャック装置
102 積層体
110 基板
120 内部電極
121 第1の内部電極
122 第2の内部電極
130 接着剤層
131 第1の接着剤層
132 第2の接着剤層
140 絶縁性有機フィルム
141 第1の絶縁性有機フィルム
142 第2の絶縁性有機フィルム
150 セラミックス層
151 セラミックス下地層
152 セラミックス表層

Claims (4)

  1. 繊維層と、前記繊維層に積層された粘着層と、を少なくとも有する積層体からなり、
    前記積層体は厚さ方向に貫通する開口部を有し、
    前記開口部は、前記繊維層における前記粘着層とは反対側の面から、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面に拡径することを特徴とする溶射用マスキング材。
  2. 前記開口部は、前記繊維層における前記粘着層とは反対側の面から、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面に次第に拡径するテーパ部であることを特徴とする請求項1に記載の溶射用マスキング材。
  3. 前記開口部は、前記粘着層における前記繊維層とは反対側の面から前記繊維層側に窪む凹部であることを特徴とする請求項1に記載の溶射用マスキング材。
  4. 第1の絶縁性有機フィルムの表面に金属薄膜を形成した後、エッチングにより、前記金属薄膜をパターニングして内部電極を形成する工程と、
    前記内部電極の上面に、第2の接着剤層を介して、第2の絶縁性有機フィルムを貼着する工程と、
    前記第1の絶縁性有機フィルムの下面が基板の表面側となるように、前記第1の絶縁性有機フィルム、前記内部電極、前記第2の接着剤層および前記第2の絶縁性有機フィルムからなる積層体を、第1の接着剤層を介して、基板の表面に接合する工程と、
    前記積層体の外面全面を覆うように、セラミックス下地層を形成する工程と、
    前記セラミックス下地層の上面に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶射用マスキング材を貼着し、該溶射用マスキング材を介して、前記セラミックス下地層の上面に、セラミックス表層を構成する材料を溶射して、凹凸を有するセラミックス表層を形成する工程と、を有することを特徴とする静電チャック装置の製造方法。
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