JP2020165142A - スラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スラリー攪拌式深層混合処理工法の低変位施工として、ゼロ変位ないしは極小の低変位施工を迅速かつ的確に実施容易にする。【解決手段】改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、前記回転軸と前記攪拌翼の少なくとも一方に設けられた吐出口より圧縮エアーを混合した固化系スラリーを吐出させ、この吐出させた固化系スラリーの供給量に応じて前記地盤中の攪拌域の余剰の泥土を前記圧縮エアーと共に地上へ押し上げて排出して、前記改良域周辺の変位を低減させるスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法において、前記吐出された固化系スラリーで改良される単位改良土量当たりのスラリー注入量であるスラリー注入率を30%程度に調整することにより、前記余剰泥土の排泥率を90%以上にして地盤変位ゼロに近づけることを特徴としている。【選択図】図4

Description

本発明は、基礎工事や地盤改良において、その隣接地の既設構造物や地盤に変位を生じないようにするスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法に関する。
スラリー攪拌式深層混合処理工法は、固化系スラリー(流動物)を地盤中に添加して攪拌翼により粘性土等の原位置土と攪拌混合することで、固結した柱状パイルを造成する地盤改良工法である。スラリー攪拌式深層混合処理工法として、図5は固化系スラリーを圧縮エアーを用いることなくポンプ移送して吐出した場合の地盤変位発生を、図6は圧縮エアーを用いて固化系スラリーを霧状に吐出した場合の地盤変位発生を模式的に示している。ここで、図5の工法はスラリー攪拌式深層混合処理工法と称されており、改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、回転軸又は攪拌翼に設けられた吐出口より固化系スラリーを原位置土へ低圧吐出される。吐出されたスラリーは、撹拌翼の回転に伴って回転軌跡に散布され原位置土と撹拌混合される。その際、スラリーが地盤中に吐出されると未解泥の地中に滞留して地中の圧力が上昇し、図中に付記した矢印のごとく側方地盤を押し広げることで地盤変位が発生する。
これに対し、図6の工法はCI−CMC工法(登録商標)と称されており、特許文献1に開示されているごとく改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、回転軸と攪拌翼の少なくとも一方に設けられたエジェクターより圧縮エアーを混合した固化系スラリーを霧状に吐出される。吐出された霧状のスラリーは、原位置土を細分化したりほぐし土粒子の流動性を高め、泥状となった土が圧縮エアーのリフトアップ作用(エアーリフト効果)で移動し易くなることで、投入したスラリー量に応じて攪拌域の泥土が地表側へ上昇し排出されるため周辺変位が少なくなる効果が得られる。
なお、特許文献1の要部は、固化系スラリーであるセメントスラリーに遅延性減水材を添加することにより、水セメント比(W/C)を大きくすることなく低変位性能を向上する構成である。
特許第5759151号公報
上記図6の工法は、図5のものに比べ地盤変位を大幅に抑制できるが、全ての施工域で低変位施工が常に実現される分けではない。また、より効果の高い低変位施工を達成するには、エジェクターの適用に加え、攪拌域の土の流動性を高めスムースに排土させるようにすることが好ましい。この実現のため、本出願人らは、例えば、スラリーや攪拌土のテーブルフロー値を色々変えるようにしたり、スラリーの水セメント比(W/C)を通常よりも高く設定したり、添加剤として流動化促進剤を加える態様などで試験施工を行いながら検討してきた。しかしながら、事前に混合ないしは攪拌土のテーブルフロー値を予測することが難しく、添加剤を用いる場合の経済性の観点などの問題があり、また、実施に際し試験施工の実施が必要であるなどの問題があった。
本発明の目的は以上のような背景から、スラリー攪拌式深層混合処理工法の低変位施工として、地盤変位ゼロに近づける、つまり極小の低変位施工を簡明かつ的確に実施容易にし、例えば試験施工が実施できないような現場ないしは状況において配合計画を管理する指標として好適な構成を提供することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、前記回転軸と前記攪拌翼の少なくとも一方に設けられた吐出口より圧縮エアーを混合した固化系スラリーを吐出させ、この吐出させた固化系スラリーの供給量に応じて前記地盤中の攪拌域の余剰の泥土を前記圧縮エアーと共に地上へ押し上げて排出して、前記改良域周辺の変位を低減させるスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法において、前記吐出された固化系スラリーで改良される単位改良土量当たりのスラリー注入量であるスラリー注入率を30%程度に調整することにより前記余剰泥土の排泥率を90%以上にして地盤変位ゼロに近づける構成である。
請求項2の発明は、前記固化系スラリーとしてセメントスラリーを前記圧縮エアーに混合し、前記吐出口から霧状に吐出可能にするエジェクターを有している構成である。ここで、対象のエジェクターは、少なくとも後述する特許第3416774号に開示の構成と、特許第3389527号に開示の構成とを含む。また、排泥率は(排泥量/スラリ注入量)×100の式から算出される。固化系スラリーであるセメントスラリーには、特許文献1に例示されるように遅延性減水材その他の改良剤などを添加しても差し支えない。
以上の本発明において、通常は排泥率が約100%であれば、地盤中に注入スラリーによる圧力増加が生じていないと推定でき、実際の施工でも地盤変位を殆ど生じていない。地盤変位を排泥率で評価する方法は、変位を変位計測計で直接計測する場合と比べると少ない施工数量で判定可能なため有効な手段である。但し、例外としては、攪拌に伴う負のダイレイタンシーが生じるようなルーズな砂地盤やスラリーの逸散が生じるような透水性の高い砂礫地盤の場合は排泥率<100%であっても、地盤変位が生じないケースも見られる。
また、本発明は、以下に例示されるような試験施工結果の検討評価等を動機付けとして完成されたものである。すなわち、本発明者らは、上記したCI−CMC工法において、極低変位つまりほぼ変位ゼロを実現する上で、攪拌域の流動性を高めることが重要であるとの観点から特にセメントスラリーの水セメント比(W/C)による影響を試験施工を通し調べてきた。図1〜図3はその試験施工の代表事例を示している。図1は試験施工した地盤の概要である。この施工では、軟弱層厚18m程度、中間にw≒120%の高有機質土を挟み、概ねw≒50〜60%のシルト質粘土主体の地盤である。固化材の添加量は設計強度1MN/mに対して、室内配合試験により3倍の3MN/mを目標強度に設定し、W/C=0.8で、スラリー添加量260〜220kg/m (注入率25%)、又、W/C=1.0で、スラリー添加量290〜240kg/m (注入率32%)である。それぞれのケースで4セット(回転軸が2本構成であり合計8本)の改良杭の施工を行った。図2と図3にはこの試験結果として改良体からの離隔と水平変位及び鉛直変位を示している。また、各図には併せて隣接工区で行ったW/C=0.9(別途室内配合試験により設定、注入率23%)のケースも含めて示している。
図2と図3の試験結果より、W/C=1.0のケースでは水平変位と鉛直変位共に最大値が6mmであり、地盤変位は殆ど発生していない。ところが、W/C=0.8、及びW/C=0.9のケースでは地盤変位がかなり大きく生じている。また、この試験では、施工に伴う盛り上がり土量ないしは排泥量の測定を行っている。その測定結果では、W/C=1.0のケースでは排泥率98%、W/C=0.8のケースでは排泥率67%、W/C=0.9のケースでは排泥率60%であった。このため、W/C=1.0のケースでは攪拌域の流動性が確保されたが、W/C=0.8とW/C=0.9のケースでは攪拌域の流動性の確保が不十分であったと考えられる。
換言すると、CI−CMC工法による低変位施工の実現に対し、これまでは一般的に水セメント比W/Cが大きくなると変位が小さくなる、つまりW/Cを目安に判断を行ってきた。しかしながら、この考え方では図2や図3において、W/C=0.8よりもW/C=0.9で変位が大きくなるという現象について説明ができない。また、施工条件として、目標強度が高い場合や強度発現の低い高有機質土などでセメント添加量を多くしなければならない場合はW/Cを低く設定しなけばならないケースもある。本発明者らは、このような試験結果及び認識に基づいて、これまで自社が行ってきたW/Cを変化させて実施した各現場での試験施工データについて再検討したところ、図4に示されるようなスラリー注入率と排泥率の関係から、ほぼゼロ変位つまり極低変位施工を実現するための条件である排泥率≒100%又は排泥率を90%以上にするためにはスラリー注入率を30%程度にする必要があることが判明し本発明に至った。本発明において、スラリー注入率が30%程度となるよう調整することを必須としている。なお、30%程度とは28%以上を目安とし、上限値は経済性つまり材料費が高くなり過ぎるのを避けるため32%を目安とする。
請求項1の発明では、スラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法として、ほぼゼロ変位つまり極低変位施工を実現するための条件として、排泥率を90%以上を確保する必要があり、それを実現するためには単位改良土量当たりのスラリー注入量であるスラリー注入率を30%程度とすることを必須とし、これにより極小の低変位施工を実施可能にし、例えば試験施工が実施できないような現場ないしは状況において配合計画を管理する指標として有効活用できる。
請求項2の発明では、既存のCI−CMC工法に用いられているエジェクターを使用するためより的確な施工が行えて地盤変位ゼロを確実に達成可能となる。
CI−CMC工法において、地盤変位ほぼゼロを実現する上で、水セメント比による影響を調べたときの試験施工した地盤の概要を示す模式図である。 図1の地盤において、CI−CMC工法により複数本の改良杭を打設して改良体からの離隔と水平変位を調べた結果を示す模式図である。 図1の地盤において、CI−CMC工法により複数本の改良杭を打設して改良体からの離隔と鉛直変位を調べた結果を示す模式図である。 CI−CMC工法を適用した多数の施工現場で計測したスラリー注入率と排泥率の関係を示す図である。 スラリー攪拌式深層混合処理工法による吐出したスラリーの挙動を概念的に示し、(a)は上からみた模式図、(b)は地盤を縦方向に断面した模式図である。 CI−CMC工法による吐出したスラリーの挙動を概念的に示し、(a)は上からみた模式図、(b)は地盤を縦方向に断面した模式図である。
下記表1は、本出願人らがこれまで地盤改良としてCI−CMC工法を適用した多数の施工現場の施工履歴データを示している。図4は、表1に基づいて各施工現場A〜Eで行ったスラリー注入率と排泥率の関係を示す図である。以下、これらを使用して本発明のスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法を明らかにする。
(表1)
Figure 2020165142
表1中、W/Cは水セメント比、つまり水とセメントの比率を百分率で表した値である。水セメント比の大きさは改良杭の品質(強度、耐久性など)に影響する。一般的には、水セメント比が大きすぎると強度や耐久性の不足につながり、小さすぎるとワーカビリティの低下につながる。添加量はセメントスラリーの添加量(kg/m)である。単位注入量は単位体積当たりのスラリー注入量(リットル/m)である。排泥率は、杭造成に伴って地上に排出される排出土量を計測し、注入したスラリー量に対する割合として算出、つまり(杭造成に伴って地上に排出される排出土量/単位体積当たりのスラリー注入量)×100である。注入率は、スラリー注入率であり、吐出された固化系スラリーで改良される単位改良土量当たりのスラリー注入量、例えば、表1の現場AのW/C=100のケースだと、(180/1,000)×100である。なお、表1の単位注入量は小数点以下を四捨五入している。
CI−CMC工法については、特許文献1に開示のものと実質的に同じため図示を省いたが、改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、回転軸と攪拌翼の少なくとも一方に設けられた吐出口より圧縮エアーを混合した固化系スラリーを吐出させ、この吐出させた固化系スラリーの供給量に応じて地盤中の攪拌域の余剰の泥土を圧縮エアーと共に地上へ押し上げて排出して、改良域周辺の変位を低減可能にするものである。
詳述すると、この工法では、施工装置として、回転軸及び該回転軸と一体に回転される撹拌翼と、回転軸を昇降駆動する駆動機構と、固化系のスラリー供給手段及び圧縮エアー供給手段と、回転軸又は/及び撹拌翼側に設けられて、スラリー供給手段及び圧縮エアー供給手段に対応する配管を介し接続されるエジェクターとを備えている。そして、施工要領は、回転軸の地中への貫入や引き抜き過程等で、エジェクターによりスラリー供給手段から対応配管を介し送られるセメントスラリー等のスラリーを圧縮エアー供給手段から対応配管を介し送られる圧縮エアーに同伴混合させてエジェクターの吐出口、又はエジェクターに連結されたノズルより攪拌翼の回転方向である前方へ霧状に吐出させて原位置土と混合攪拌させ、また、吐出させたスラリーの供給量に応じて地盤中の攪拌域の余剰の泥土を圧縮エアーと共に地上へ押し上げて排出して、改良域周辺の変位を低減可能にする。
施工手順としては、第1に施工機を所定位置にセットする。第2に回転軸を連続貫入しながら混合エジェクターがスラリーを圧縮エアーに同伴させ混合した態様で吐出口より霧状に攪拌翼の回転方向へ吐出する。第3に回転軸の先端が支持層に到達したことを確認した後、スラリーの吐出を停止し、回転軸を所定寸法だけ上下動して先端処理を行う。第4に攪拌翼を逆回転させながら引き抜く。第5に地表面の設計位置まで改良体を造成した後、次の施工位置に移動する。但し、スラリーの吐出を回転軸の貫入及び引き抜き共に行うようにしてもよい。
各施工現場A〜Eの地盤改良では、改良杭造成に伴う排出土量の測定を行っている。排出土量の測定要領は施工セット当たりの排出土を四角錐台に入れて整形し各辺長を測定することで求めた。なお、各施工現場A〜Eの地盤は何れも粘性土を主体としており、含水比(自然含水比)は同表のごとく概ねwが40〜75%の範囲であった。
そして、地盤変位制御方法としては、スラリー注入率と排泥率の関係を示した図4より、ほぼゼロ変位つまり極低変位施工を実現するための条件、つまり排泥率≒100%又は排泥率を90%以上にするためにはスラリー注入率を30%程度とする必要があることが判る。すなわち、スラリー攪拌式深層混合処理工法、特にCI−CMC工法による地盤変位制御方法について、ほぼゼロ変位つまり極低変位施工を実現するためには攪拌翼の流動性の確保が必要であり、その条件としてスラリー注入率を30%程度以上とすることが重要であることが判る。換言すると、30%程度とは28%以上を目安とし、上限値は経済性つまり材料費が高くなり過ぎるのを避けるため32%を目安とする。
以上の利点は、例えば、地盤改良の試験施工を計画するうえで配合計画や試験施工が実施できないような現場ないしは状況において配合計画を管理する指標として有効活用できる。なお、現場の地盤には、土質性状等が極端なケースの場合だと、スラリー注入率が25%より低くても排泥率が排泥率≒100%又は排泥率を90%になっている現場もあるが、そのような例外的なケースは本発明から除外されるものである。
なお、以上のCI−CMC工法において、回転軸としては、単軸に限られず特許文献1に示されているごとく2軸以上であってもよい。攪拌翼は、複数段を設ける以外に一段構成でもよい。エジェクターとしては、図6(c)に例示されているごとく吐出口を先端側に形成しており、圧縮エアーを混合した固化系スラリーをその吐出口から吐出する構成(例えば、特許第3416774号公報を参照)と、前記吐出口が専用ノズルで構成され、エジェクターで圧縮エアーを混合した固化系スラリーを供給管路を通してそのノズルから吐出する構成(例えば、特許第3389527号公報を参照)とがあり、何れの構成でも差し支えない。また、エジェクターは、攪拌翼ではなく回転軸に設けるようにすることも可能である。
また、以上の形態例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
1・・・・回転軸
2・・・・攪拌翼
3・・・・エジェクター
4・・・・配管
5・・・・配管
6・・・・配管
7・・・・吐出口

Claims (2)

  1. 改良域の地盤中に攪拌翼を備えた回転軸を回転させながら貫入し、前記回転軸と前記攪拌翼の少なくとも一方に設けられた吐出口より圧縮エアーを混合した固化系スラリーを吐出させ、この吐出させた固化系スラリーの供給量に応じて前記地盤中の攪拌域の余剰の泥土を前記圧縮エアーと共に地上へ押し上げて排出して、前記改良域周辺の変位を低減させるスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法において、
    前記吐出された固化系スラリーで改良される単位改良土量当たりのスラリー注入量であるスラリー注入率を30%程度に調整することにより、前記余剰泥土の排泥率を90%以上にして地盤変位ゼロに近づけることを特徴とするスラリー攪拌式深層混合処理工法の地盤変位制御方法。
  2. 前記固化系スラリーとしてセメントスラリーを前記圧縮エアーに混合し、前記吐出口から霧状に吐出可能にするエジェクターを有していることを特徴とする請求項1に記載の深層混合処理工法の地盤変位制御方法。
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