JP2020164830A - エチレン系重合触媒成分、エチレン系重合触媒の製造方法、およびエチレン系重合体の製造方法 - Google Patents

エチレン系重合触媒成分、エチレン系重合触媒の製造方法、およびエチレン系重合体の製造方法 Download PDF

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【課題】超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒成分を提供する。【解決手段】エチレン系重合触媒成分は、分析の前処理として600℃で24時間焼成した後に測定して、以下の特性1及び特性2を有する無機酸化物を含む。特性1:赤外線スペクトルにおいて、3600cm−1〜3699cm−1の範囲Xで最大となるピーク強度Pxに対する3700cm−1〜3799cm−1の範囲Yで最大となるピーク強度Pyの比率Py/Pxが10未満である。特性2:SiO2を90重量%以上含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、エチレン系重合触媒成分、エチレン系重合触媒の製造方法、およびエチレン系重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、超高分子量のエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒成分、エチレン系重合触媒の製造方法、およびエチレン系重合体の製造方法に関する。
エチレン系重合体は、産業分野におけるプラスチック材料を代表する基幹資材である。エチレン系重合体は、非常に多くの技術分野において汎用されているので、その用途や成形法に応じて要求される、分子量分布や流動性などの特性及び機械的物性や熱的性質などの各種の性能が広範囲にわたっている。
そのようなエチレン系重合体を製造するために、各種の重合触媒が開発され、改良が重ねられている。そのなかで、チーグラー触媒やメタロセン触媒と共に、フィリップス触媒が重用されている。フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニアのような無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより担持されたクロム原子の少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒である。フィリップス触媒では、広い分子量分布のエチレン系重合体が得られ、一般に成形性が良好でありブロー成形などに用いられる。
大型のブロー成形製品においては、耐クリープ性と耐衝撃性が重要な性能である。従来のフィリップス触媒によって得られる広い分子量分布を有するエチレン系重合体を、大型製品などにブロー成形した場合、成形品は、耐クリープ性と耐衝撃性のバランスが必ずしも十分でない。耐クリープ性と耐衝撃性は、相反する物性であり、耐クリープ性が向上すると、耐衝撃性が低下し、逆に耐衝撃性が向上すると、耐クリープ性が低下するのが一般的である。
従って、フィリップス触媒において、耐クリープ性などの物性と成形性が共に優れたエチレン系重合体が得られるのであれば、従来のレベルを超えて物性と成形性のバランスに優れた材料になる。ところが、フィリップス触媒を用いて、適当な長さの長鎖分岐を適切な分子量領域に適度な量だけ導入するような精密な触媒制御方法は、現段階の技術では困難なため、物性と成形性をともに向上させる方法については具体的な指針は未だ得られていない。
フィリップス触媒を用いて良好な物性バランスと成形性を持ったエチレン系重合体を得る試みとして、特定の構造を有する担体を用いる検討が行われている。例えば特許文献1、特許文献2には、特定の表面積、平均細孔容積、平均細孔径を有する高多孔質シリカを用いることが開示されている。また、特許文献3には、特定の構造を有するシリカから得られるフィリップス触媒と有機アルミニウム化合物を組み合わせて、ポリマーの分子量分布を広げる技術が開示されている。さらに特許文献4では特異な細孔の構造と結晶性を有するシリカを用いることについて開示されている。
しかしながら、これらの触媒ではポリマーの分子量分布や組成分布を制御することは困難であり、目標とする材料特性を発現するように触媒を設計することは出来ていない。
そこで、高分子量成分と低分子量成分とを別々の触媒により重合させる試みが行われている。例えば、分子量が高くかつ分子量分布が広い高分子量成分を製造し、同時に分子量が低くかつ分子量分布が狭い低分子量成分を製造すれば、高分子量成分を増加させ、低分子量成分を減少させることができ、耐クリープ性及び耐衝撃性を共に向上させることが可能になる。このような観点から、特許文献5では、粘土鉱物を担体として用いたフィリップス触媒により高分子量のポリエチレンが得られることが開示されている。また、特許文献6、特許文献7では、粘土鉱物と通常のシリカを組み合わせることにより、得られるポリマーの分子量分布を制御可能なことが開示されている。
このように、種々の触媒が開発され、様々なエチレン系重合体が合成されているが、既存の触媒を用いて製造されたエチレン系重合体では所望の効果が得られない場合もある。そこで、エチレン系重合体のバリエーションの一つとして、超高分子量成分を有するエチレン系重合体が望まれている。
特表2002−533536号公報 特許第5821746号公報 特表2006−512454号公報 特表2007−517962号公報 特開2006−257255号公報 特開2008−150566号公報 国際公開第2002/088196号
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒成分を提供することを目的とする。また、本発明は、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒の製造方法、超高分子量成分を有するエチレン系重合体の製造方法を提供することも目的とする。本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の赤外線スペクトル及び化学組成を有するエチレン系重合触媒成分を用いることで、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造できることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
〔1〕分析の前処理として600℃で24時間焼成した後に測定して、以下の特性1及び特性2を有する無機酸化物を含むことを特徴とするエチレン系重合触媒成分。
特性1:赤外線スペクトルにおいて、3600cm−1〜3699cm−1の範囲Xで最大となるピーク強度Pxに対する3700cm−1〜3799cm−1の範囲Yで最大となるピーク強度Pyの比率Py/Pxが10未満である。
特性2:SiOを90重量%以上含有する。
〔2〕前記無機酸化物が、粉末X線回折において2θ=23°〜29°に半値幅0.2°以上5°以下の結晶性を示すピークを有することを特徴とする〔1〕に記載のエチレン系重合触媒成分。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のエチレン系重合触媒成分にクロム化合物を担持する工程(I)、
前記工程(I)で得られたクロム化合物担持成分を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(II)、
を含むことを特徴とするエチレン系重合触媒の製造方法。
〔4〕前記工程(I)において、クロム原子を0.01重量%〜2.0重量%含有する前記クロム化合物担持成分を得ることを特徴とする〔3〕に記載のエチレン系重合触媒の製造方法。
〔5〕前記工程(II)において、前記クロム化合物担持成分に含まれるクロム原子のうち50%以上のクロム原子を6価に酸化することを特徴とする〔3〕または〔4〕に記載のエチレン系重合触媒の製造方法。
〔6〕上記〔3〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法により得られるエチレン系重合触媒を用いて、エチレンを少なくとも含むモノマーを重合することを特徴とする、エチレン系重合体の製造方法。
本発明のエチレン系重合触媒成分を用いると、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒を提供できる。
本発明のエチレン系重合体触媒の製造方法によれば、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造可能なエチレン系重合触媒を製造できる。
本発明のエチレン系重合体の製造方法によれば、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造できる。
実施例1と比較例1の赤外線スペクトルを表すグラフである。 無機酸化物粒子B1の板厚T、及びD/Tを説明するための模式図である。 クロム触媒A1のSEM画像である。
以下、本発明について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値範囲について「〜」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10〜20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10〜20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
1.エチレン系重合触媒成分
エチレン系重合触媒成分は、分析の前処理として600℃で24時間焼成した後に測定して、以下の特性1及び特性2を有する無機酸化物を含むことを特徴とする。
特性1:赤外線スペクトルにおいて、3600cm−1〜3699cm−1の範囲Xで最大となるピーク強度Pxに対する3700cm−1〜3799cm−1の範囲Yで最大となるピーク強度Pyの比率Py/Pxが10未満である。
特性2:SiOを90重量%以上含有する。
2.無機酸化物としての無機酸化物粒子B1
特性1及び特性2を有する無機酸化物として、下記の無機酸化物粒子B1が好適に例示される。
(1)無機酸化物粒子B1の特性1
特性1は、赤外線スペクトルにおいて、3600cm−1〜3699cm−1の範囲Xで最大となるピーク強度Pxに対する3700cm−1〜3799cm−1の範囲Yで最大となるピーク強度Pyの比率Py/Pxが10未満であるという特性である。
赤外線スペクトルにおいて、3550cm−1付近に現れるピークは、水素結合性OH基に由来する。また、3650cm−1付近に現れるピークは、他と相互作用できない部位にあるOH基に由来する。他方、3750cm−1付近に現れるピークは、外表面の孤立OH基に由来する。上述の特性1の要件を充足する無機酸化物は、3650cm−1付近のピーク強度が相対的に強くなっている。このことは、無機酸化物粒子B1が、高温に加熱した場合にも、脱水縮合に関与しないOH基を多く含有する構造を有していることを示している。このような構造は、熱的に安定な規則性のある構造と考えられ、構造の規則性がOH基の配列に影響していると推定される。
なお、図1のグラフにおいて、無機酸化物粒子B1の一例(後述する実施例1)の赤外線スペクトルを実線で示す。
(2)無機酸化物粒子B1の特性2
特性2は、SiOを90重量%以上含有するという特性である。つまり、無機酸化物粒子B1は、主成分がSiOの無機酸化物である。無機酸化物粒子B1におけるSiOの含有率は、90重量%以上であればよいが、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が更に好ましい。もちろん、SiOの含有率は、100重量%であってもよい。無機酸化物粒子B1は、主成分がSiOの粒子であるから、無機酸化物の形状を制御し易く、また触媒性能に優れる。
含有率が100重量%未満の場合、残りの成分は任意の無機酸化物成分であって良いが、周期表(無機化合物命名法の1990年規則による周期律表)の第2,3,4、及び13族金属を含む酸化物が好ましい。具体的には、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、及びこれらの複合酸化物、すなわちアルミナ−チタニア(Al−TiO)、アルミナーマグネシア(Al−MgO)、アルミナ−ジルコニア(Al−ZrO)、チタニア−マグネシア(TiO−MgO)、チタニア−ジルコニア(TiO−ZrO)等が例示できる。これらの中で、マグネシア、アルミナ、チタニアが好ましく、さらにはアルミナ、チタニアが好ましい。
(3)無機酸化物粒子B1の粉末X線回折
無機酸化物粒子B1は、粉末X線回折において2θ=23°〜29°に半値幅0.2°以上5°以下の結晶性を示すピークを有することが好ましい。無機酸化物粒子B1が結晶性であると、エチレン系重合体が高分子量化する傾向にある。
(4)無機酸化物粒子B1の表面積
無機酸化物粒子B1の表面積は、特に限定されない。クロム原子が分散した状態で担持されるという観点から、表面積が10m/g以上1000m/g以下であることが好ましく、20m/g以上500m/g以下であることがより好ましく、50m/g以上400m/g以下であることが更に好ましい。
(5)無機酸化物粒子B1の細孔容積
無機酸化物粒子B1の細孔容積は、特に限定されないが、細孔容積が0.05〜5mL/gであることが好ましく、0.1〜3mL/gであることが更に好ましい。
(6)無機酸化物粒子B1の形状
無機酸化物粒子B1の形状は特に限定されない。例えば、無機酸化物粒子B1は、粒子形状が板状である態様を採用することができる(第1態様)。
または、無機酸化物粒子B1は、板状の無機酸化物粒子B1が凝集した凝集体が含有されている態様を採用することができる(第2態様)。この第2態様の場合には、無機酸化物粒子B1は、凝集体のみから構成されていてもよい。また、この第2態様では、板状の無機酸化物粒子B1が凝集した凝集体と、板状の無機酸化物粒子B1であって凝集していない粒子と、が混在していてもよい。
板状の無機酸化物粒子B1の板厚T(nm)は、特に限定されない。結晶性構造を維持すること、及び重合時のポリマー中への分散性を維持する観点から、無機酸化物粒子B1の板厚T(nm)の平均値が1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることが更に好ましい。
なお、無機酸化物粒子B1の板厚T(nm)の平均値は、10個の無機酸化物粒子B1の板厚T(nm)を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定し、その測定値を平均化することにより求める。図2は、無機酸化物粒子B1を走査型電子顕微鏡により観察した場合のSEM像の模式図であり、板厚T(nm)が示されている。
無機酸化物粒子B1の最大径D(nm)と板厚T(nm)との比であるD/Tの平均値は、特に限定されない。粒子中に板状構造として存在するという観点から、D/Tの平均値は10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。D/Tの平均値の上限は、特に限定されないが、通常、2000である。
なお、D/Tの平均値は、10個の無機酸化物粒子B1を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより求める。すなわち、D/Tの平均値は、10個の無機酸化物粒子B1を用い、各粒子について、それぞれ粒子の最大径D(nm)と板厚T(nm)との比であるD/Tを計算し、その値を平均することで求まる。図2は、無機酸化物粒子B1を走査型電子顕微鏡により観察した場合のSEM像の模式図であり、最大径D(nm)が示されている。この最大径D(nm)と、上述の板厚T(nm)から、各粒子のD/Tが求められる。
3.無機酸化物としての無機酸化物粒子B2
エチレン系重合触媒成分には、無機酸化物粒子B1以外に無機酸化物粒子B2を含むことができる。
無機酸化物粒子B2は、非晶質である。
無機酸化物粒子B2は、主成分がシリカ(SiO)の粒子、主成分がシリカ−チタニア(SiO−TiO)の粒子、及び主成分がシリカ−アルミナ(SiO−Al)の粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の粒子から構成されていることが好ましい。ここで、主成分とは、含有率(重量%)が90重量%以上の物質をいう。
主成分がシリカ(SiO)の粒子におけるシリカ(SiO)の含有率は、90重量%以上であればよいが、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が更に好ましい。もちろん、シリカ(SiO)の含有率は、100重量%であってもよい。
主成分がシリカ−チタニア(SiO−TiO)の粒子におけるシリカ(SiO)及びチタニア(TiO)の合計含有率は、90重量%以上であればよいが、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が更に好ましい。もちろん、シリカ(SiO)及びチタニア(TiO)の合計含有率は、100重量%であってもよい。
主成分がシリカ−アルミナ(SiO−Al)の粒子におけるシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)の合計含有率は、90重量%以上であればよいが、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が更に好ましい。もちろん、シリカ(SiO)及びアルミナ(Al)の合計含有率は、100重量%であってもよい。
これらの中でも、無機酸化物の粒子形状制御の容易さや触媒性能の観点から、無機酸化物粒子B2は、主成分がシリカ(SiO)の粒子であることが好ましい。
なお、主成分がシリカ−チタニア(SiO−TiO)の粒子を用いる場合には、金属成分として、チタン原子が0.2重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜20重量%含有された粒子が用いられる。
また、主成分がシリカ−ジルコニア(SiO−ZrO)の粒子を用いる場合には、金属成分として、ジルコニウム原子が0.2重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜20重量%含有された粒子が用いられる。
また、主成分がシリカ−アルミナ(SiO−Al)の粒子を用いる場合には、金属成分として、アルミニウム原子が0.2重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜20重量%含有された粒子が用いられる。
無機酸化物粒子B2の表面積は、特に限定されない。クロム原子が分散した状態で担持されるという観点から、表面積が100m/g以上1000m/g以下であることが好ましく、150m/g以上950m/g以下であることがより好ましく、200m/g以上900m/g以下であることが更に好ましい。
無機酸化物粒子B2の細孔容積は、特に限定されない。クロム原子が分散した状態で担持され、さらに重合中に粒子が崩壊しながらポリマーが成長しやすいという観点から、細孔容積が0.1mL/g以上5.0mL/g以下であることが好ましく、0.2mL/g以上3.0mL/gであることがより好ましい。
4.エチレン系重合触媒の製造方法
エチレン系重合触媒の製造方法は、エチレン系重合触媒成分にクロム化合物を担持する工程(I)、
工程(I)で得られたクロム化合物担持成分を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(II)、
を含む。
4.1 クロム触媒A1の製造方法
エチレン系重合触媒の製造方法において、エチレン系重合触媒成分に無機酸化物粒子B1を含む場合は、次のような製造方法とされる(この製造方法で製造されるエチレン系重合触媒をクロム触媒A1とする)。
クロム触媒A1の製造方法は、無機酸化物粒子B1にクロム化合物Dを担持する工程(I)、工程(I)で得られたクロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1(クロム化合物担持成分)を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(II)、を含むことになる。
ここで、クロム触媒A1について説明する。クロム触媒A1は、無機酸化物粒子B1にクロム化合物C1が担持された触媒である。
クロム触媒A1は、少なくとも一部のクロム原子が6価のクロム触媒であり、一般にフィリップス触媒と呼ばれる触媒に分類される。
松浦一雄・三上尚孝編著「ポリエチレン技術読本」81頁 2001年 工業調査会、M.P.McDaniel; Advances in Catalysis Vol.33 p.47(1985)Academic Press Inc.、M.P.McDaniel「Handbook of Heterogeneous Catalysis」p.2400(1997)VCH、M.B.Welch etal.「Handbook of Polyolefins Synthesis and Properties」p.21(1993)Marcel Dekkerなどの文献に、この触媒の概要が記載されている。クロム触媒A1は、一般的には、無機酸化物粒子B1(無機酸化物担体)に、後述するクロム化合物Dを接触させ、非還元性雰囲気で賦活して製造される。
上記クロム化合物C1は、少なくとも一部のクロム原子が6価であるクロム化合物であれば、特に限定されない。例えば、クロム化合物C1は、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等(以下、ここに列挙された酸化クロム〜クロム酸エステル等の3価のクロム化合物を「クロム化合物D」ともいう)に由来する。クロム化合物Dは、無機酸化物粒子B1に担持された後、非還元性雰囲気で賦活されてクロム化合物C1になる。無機酸化物粒子B1に、6価のクロム化合物C1を直接担持しても良い。
クロム化合物Dとして、より具体的には、酸化クロム(III)、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。特に、クロム化合物Dとして、酸化クロム(III)、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。
なお、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での賦活によって有機基部分は、燃焼し、最終的には、酸化クロム(III)を用いた場合と同様に、無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V.J.Ruddic etal.;J.Phys.Chem.Vol.100 p.11062(1996)、S.M.Augustin etal.;J.Catal.Vol.161 p.641(1996)参照)。
工程(I)では、次の方法を採用できる。無機酸化物粒子B1にクロム化合物D溶液を含浸させた後、溶媒を留去する方法、溶媒を用いずにクロム化合物Dを昇華させる方法が好適に例示される。また、他の公知の方法も採用できる。なお、担持方法は、使用するクロム化合物Dの種類によって、適宜選択される。
また、無機酸化物粒子B1の製造時に、予めクロム化合物Dを添加した原料を用いることによって、クロム化合物Dが担持された無機酸化物粒子B1を直接得てもよい。
工程(I)において、クロム原子を0.01重量%〜2.0重量%含有するクロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1を得てもよい。クロム触媒A1におけるクロム原子の含有量は、特に限定されないが、担持されるクロム原子がクロム原子同士で凝集を起こさず、効率的に活性化される観点から、0.01重量%〜2.0重量%であることが好ましく、0.1重量%〜2.0重量%であることがより好ましく、0.2重量%〜1.5重量%であることが更に好ましい。
工程(II)は、工程(I)で得られたクロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1を、賦活炉で焼成して賦活を行う。賦活は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気で行う。例えば、酸素又は空気下で行われるが、不活性ガスが共存していてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブスなどを流通させ充分に乾燥した空気を用い流動状態下で行う。
賦活の温度は、400℃〜900℃であり、430℃〜900℃が好ましく、450℃〜850℃がより好ましい。賦活を行う時間は、特に限定されない。賦活を行う時間は、30分〜48時間が好ましく、1時間〜35時間がより好ましく、2時間〜30時間が更に好ましい。賦活により、無機酸化物粒子B1に担持されたクロム化合物Dのクロム原子の少なくとも一部が、6価に酸化され、前述したように、無機酸化物粒子B1上にクロム化合物C1が化学的に固定される。賦活を400℃未満で行うと重合活性が低下し、さらに900℃を超える温度で行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。
クロム化合物Dの担持時又は賦活時に、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムのようなフッ素化合物、チタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムに例示される有機アルミニウム類、ジアルキルマグネシウムに例示される有機マグネシウム類等に代表される金属アルコキシド類、又は有機金属化合物を添加して、エチレン重合活性や得られるエチレン系重合体の分子量と分子量分布を調節する公知の方法を、併用してもよい。
これらの金属アルコキシド類又は有機金属化合物では、非還元性雰囲気での賦活によって、有機基部分は燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナ又はマグネシアのような金属酸化物に酸化されて、触媒中に含まれる。また、フッ素化合物は、賦活時、熱分解することによって、無機酸化物担体をフッ素化する。
これらの方法は、C.E.Marsden;Plastics,Rubber and Composites Processing and Aplications Vol.21 p.193(1994)、T.Pullukat etal.;J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.Vol.82 p.118(1980)、M.P.McDaniel etal.;J.Catal.Vol.82 p.118(1983)等の文献に概要又は詳細が記載されている。
工程(II)において、クロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1に含まれるクロム原子のうち50%以上のクロム原子を6価に酸化することが好ましい。クロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1に含まれるクロム原子のうち6価に酸化されるクロム原子は、60%以上がより好ましい。6価に酸化されるクロム原子の上限値は、100%である。6価に酸化されるクロム原子の割合は、賦活の温度及び時間により調節される。
クロム原子の総量は、通常一般の金属分析法、例えば、プラズマ発光分析、蛍光X線法により測定することができる。クロムの価数は、固体生成物の色変化(一般的には、6価は黄色からオレンジ色、3価は緑色、2価は青色)を肉眼観察することにより、概略を知ることができるが、定量を行うには、簡便な手法として、キレート滴定法や吸光光度法が知られている。具体的には、日本化学会編「実験化学講座15 分析」丸善(1991年)P.246〜248に記載がある。例えば、3価のクロムの場合は、酸性溶液中の3価のクロムに対して、過剰の濃度既知のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加え5〜10分煮沸し、3価の鉄の標準液で滴定することにより、定量できる。また、6価のクロムの場合は、アルカリ性溶液ではCrO 2−として存在することを利用し、366nmの波長の吸光度を測定することにより定量が可能である。
4.2 クロム触媒A2の製造方法
エチレン系重合触媒の製造方法において、エチレン系重合触媒成分に無機酸化物粒子B2を含む場合は、次のような製造方法とされる(この製造方法で製造されるエチレン系重合触媒をクロム触媒A2とする)。
クロム触媒A2の製造方法は、無機酸化物粒子B2にクロム化合物Eを担持する工程(III)、工程(III)で得られたクロム化合物Eを担持した無機酸化物粒子B2を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(IV)、を含むことになる。
ここでクロム触媒A2について説明する。
クロム触媒A2は、非晶質の無機酸化物粒子B2にクロム化合物C2が担持されてなる。
クロム触媒A2は、少なくとも一部のクロム原子が6価のクロム触媒であり、一般にフィリップス触媒と呼ばれる触媒に分類される。
松浦一雄・三上尚孝編著「ポリエチレン技術読本」81頁 2001年 工業調査会、M.P.McDaniel; Advances in Catalysis Vol.33 p.47(1985)Academic Press Inc.、M.P.McDaniel「Handbook of Heterogeneous Catalysis」p.2400(1997)VCH、M.B.Welch etal.「Handbook of Polyolefins Synthesis and Properties」p.21(1993)Marcel Dekkerなどの文献に、この触媒の概要が記載されている。クロム触媒A2は、一般的には、非晶質の無機酸化物粒子B2(無機酸化物担体)に、後述するクロム化合物Eを接触させ、非還元性雰囲気で賦活して製造される。
クロム触媒A2の粒子の平均粒子径は、特に限定されない。取扱い上の観点から、平均粒子径は、0.001μm以上200μm以下であることが好ましく、0.005μm以上150μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
なお、クロム触媒A2の粒子の平均粒子径は、レーザー回折法による測定か、20個のクロム触媒A2の粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定し、その測定値を平均化することにより求められる。今回は、平均粒子径が0.1μm以上の粒子についてはレーザー回折法による粒度分布測定装置により平均粒子径を求め、平均粒子径が0.1μm未満の粒子についてはSEM観察により平均粒子径を求めた。
クロム化合物C2は、少なくとも一部のクロム原子が6価であるクロム化合物であれば、特に限定されない。例えば、クロム化合物C2は、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等(以下、ここに列挙された酸化クロム〜クロム酸エステル等の3価のクロム化合物を「クロム化合物E」ともいう)に由来する。クロム化合物Eは、無機酸化物粒子B2に担持された後、非還元性雰囲気で賦活されてクロム化合物C2になる。無機酸化物粒子B2に、6価のクロム化合物C2を直接担持しても良い。
クロム化合物Eとして、より具体的には、酸化クロム(III)、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(t−ブチル)クロメート等が挙げられる。特に、クロム化合物Eとして、酸化クロム(III)、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。
なお、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での賦活によって有機基部分は、燃焼し、最終的には、酸化クロム(III)を用いた場合と同様に、無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V.J.Ruddic etal.;J.Phys.Chem.Vol.100 p.11062(1996)、S.M.Augustin etal.;J.Catal.Vol.161 p.641(1996)参照)。
なお、クロム化合物C1とクロム化合物C2は、同一であっても異なっていてもよい。
また、クロム化合物Dとクロム化合物Eは、同一であっても異なっていてもよい。
工程(III)では、次の方法を採用できる。無機酸化物粒子B2にクロム化合物E溶液を含浸させた後、溶媒を留去する方法、溶媒を用いずにクロム化合物Eを昇華させる方法が好適に例示される。また、他の公知の方法も採用できる。なお、担持方法は、使用するクロム化合物Eの種類によって、適宜選択される。
また、無機酸化物粒子B2の製造時に、予めクロム化合物Eを添加した原料を用いることによって、クロム化合物Eが担持された無機酸化物粒子B2を直接得てもよい。
工程(III)において、クロム原子を0.01重量%〜2.0重量%含有するクロム化合物Eを担持した無機酸化物粒子B2を得てもよい。クロム触媒A2におけるクロム原子の含有量は、特に限定されないが、担持されるクロム原子がクロム原子同士で凝集を起こさず、効率的に活性化される観点から、0.01重量%〜2.0重量%であることが好ましく、0.1重量%〜2.0重量%であることがより好ましく、0.2重量%〜1.5重量%であることが更に好ましい。
工程(IV)は、工程(III)で得られたクロム化合物Eを担持した無機酸化物粒子B2を、賦活炉で焼成して賦活を行う。賦活は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気で行う。例えば、酸素又は空気下で行われるが、不活性ガスが共存していてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブスなどを流通させ充分に乾燥した空気を用い流動状態下で行う。
賦活の温度は、特に限定されない。賦活の温度は、400℃〜900℃であり、430℃〜900℃が好ましく、450℃〜850℃がより好ましい。賦活を行う時間は、特に限定されない。賦活を行う時間は、30分〜48時間が好ましく、1時間〜35時間がより好ましく、2時間〜30時間が更に好ましい。賦活を400℃未満で行うと重合活性が低下し、また得られる重合体の分子量分布が広くなることから、耐久性は向上するものの耐衝撃性が低下する。賦活を、800℃を越える温度で行うと、得られる重合体の分子量分布が狭くなることから、耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下する。さらに900℃を超える温度で行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。賦活により、無機酸化物粒子B2に担持されたクロム化合物Eのクロム原子の少なくとも一部は、6価に酸化され、前述したように、無機酸化物粒子B2上にクロム化合物C2が化学的に固定される。
クロム化合物Eの担持時又は賦活時に、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムのようなフッ素化合物、チタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムに例示される有機アルミニウム類、ジアルキルマグネシウムに例示される有機マグネシウム類等に代表される金属アルコキシド類、又は有機金属化合物を添加して、エチレン重合活性や得られるエチレン系重合体の分子量と分子量分布を調節する公知の方法を、併用してもよい。
これらの金属アルコキシド類又は有機金属化合物では、非還元性雰囲気での賦活によって、有機基部分は燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナ又はマグネシアのような金属酸化物に酸化されて、触媒中に含まれる。また、フッ素化合物は、賦活時、熱分解することによって、無機酸化物担体をフッ素化する。
これらの方法は、C.E.Marsden;Plastics,Rubber and Composites Processing and Aplications Vol.21 p.193(1994)、T.Pullukat etal.;J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.Vol.82 p.118(1980)、M.P.McDaniel etal.;J.Catal.Vol.82 p.118(1983)等の文献に概要又は詳細が記載されている。
工程(IV)において、クロム化合物Eを担持した無機酸化物粒子B2に含まれるクロム原子のうち50%以上のクロム原子を6価に酸化することが好ましい。クロム化合物Eを担持した無機酸化物粒子B2に含まれるクロム原子のうち6価に酸化されるクロム原子は、60%以上がより好ましい。6価に酸化されるクロム原子の上限値は、100%である。6価に酸化されるクロム原子の割合は、賦活の温度及び時間により調節される。
クロム原子の総量は、通常一般の金属分析法、例えば、プラズマ発光分析、蛍光X線法により測定することができる。クロムの価数は、固体生成物の色変化(一般的には、6価は黄色からオレンジ色、3価は緑色、2価は青色)を肉眼観察することにより、概略を知ることができるが、定量を行うには、簡便な手法として、キレート滴定法や吸光光度法が知られている。具体的には、日本化学会編「実験化学講座15 分析」丸善(1991年)P.246〜248に記載がある。例えば、3価のクロムの場合は、酸性溶液中の3価のクロムに対して、過剰の濃度既知のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加え5〜10分煮沸し、3価の鉄の標準液で滴定することにより、定量できる。また、6価のクロムの場合は、アルカリ性溶液ではCrO 2−として存在することを利用し、366nmの波長の吸光度を測定することにより定量が可能である。
4.3 クロム触媒A3の製造方法
エチレン系重合触媒の製造方法において、エチレン系重合触媒成分に無機酸化物粒子B1及び無機酸化物粒子B2(混合担体)を含む場合は、次のような製造方法とされる(この製造方法で製造されるエチレン系重合触媒は、クロム触媒A1とクロム触媒A2との混合物であり、これをクロム触媒A3とする)。
クロム触媒A3の製造方法は、無機酸化物粒子B1,B2にクロム化合物Dを担持する工程(V)、工程(V)で得られたクロム化合物Dを担持した無機酸化物粒子B1,B2を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(VI)、を含むことになる。
工程(V)は既述の工程(I)と同じであり、工程(VI)は既述の工程(II)と同じであるため、重複する記載は省略する。
なお、クロム触媒A3は、無機酸化物粒子B1,B2を予め混合し、その後、造粒して無機酸化物粒子B3とし、これにクロム化合物Dを担持した後に、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価として製造してもよい。この場合には、製造されたクロム触媒A3では、無機酸化物粒子B1にクロム化合物C1が担持されるとともに、無機酸化物粒子B2にクロム化合物C1が担持されていることになり、結局、このクロム触媒A3は、クロム触媒A1の粒子と、クロム触媒A2の粒子の接触部分が結合した結合粒子からなる。
なお、クロム触媒A3は、無機酸化物粒子B1、及び無機酸化物粒子B2を造粒してなる無機酸化物粒子B3にクロム化合物C1が担持されてなる形態であってもよい。この場合には、製造されたクロム触媒A3では、無機酸化物粒子B1にクロム化合物C1が担持されるとともに、無機酸化物粒子B2にクロム化合物C1が担持されていることになり、結局、このクロム触媒A3は、クロム触媒A1の粒子と、クロム触媒A2の粒子が結合した結合粒子からなる。
このエチレン系重合触媒(クロム触媒A3)は、板状及びその凝集体を含む無機酸化物粒子B1、及び非晶質の無機酸化物粒子B2を造粒して無機酸化物粒子B3とし、無機酸化物粒子B3にクロム化合物C1を担持する製造方法によって製造できる。
造粒して無機酸化物粒子B3とする方法は、公知の造粒方法を用いることが出来、例えば、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、流動造粒法が挙げられる。これらの中で、混合前の粒子の性質を維持させやすいという観点から、噴霧造粒法が好ましい。
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水、メタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いることが出来る。好ましくは水である。
また、造粒の際に有機物、無機溶媒、無機塩、等、公知のバインダーを用いても良い。
噴霧造粒の場合、原料スラリー中における無機酸化物粒子(B1およびB2の合計)の濃度は、0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%である。また、噴霧造粒の熱風の入口温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。板状の無機酸化物粒子B1、及び非晶質の無機酸化物粒子B2の混合比率は、重量比で、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5であることがより好ましく、10:90〜90:10であることが更に好ましい。
クロム触媒A3の表面積は、特に限定されないが、通常、10m/g以上1000m/g以下であり、20m/g以上950m/g以下であることが好ましく、50m/g以上900m/g以下であることが更に好ましい。
クロム触媒A3の細孔容積は、特に限定されないが、通常、細孔容積が0.05以上5.0mL/g以下であり、0.1以上3.0mL/g以下であることが好ましく、0.1以上2.5mL/g以下であることが更に好ましい。
クロム触媒A3の粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、取扱い上の観点から、平均粒子径は、0.1μm以上200μm以下であることが好ましく、0.2μm以上150μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
5.エチレン系重合触媒の特徴
(1)エチレン系重合触媒
本発明において、エチレン系重合体を製造するにあたり、エチレン系重合触媒としてクロム触媒A1を単独で用いてもよく、クロム触媒A3(クロム触媒A1,A2)を用いてもよい。クロム触媒A1及びクロム触媒A2を混合して用いる場合には、下記(a)〜(d)のいずれの方法も用いることができる。
(a)2種類の触媒を混合してから賦活炉で賦活を行い、抜き出した混合触媒を、予め溶媒の存在下または不存在下、あるいは有機金属化合物の存在下または不存在下で、重合反応器に導入する方法。
(b)2種類の触媒をそれぞれ個別に賦活炉で賦活を行い、抜き出したそれぞれの触媒を、予め溶媒の存在下または不存在下、あるいは有機金属化合物の存在下または不存在下で混合してから、重合反応器に導入する方法。
(c)2種類の触媒をそれぞれ個別に賦活炉で賦活を行い、抜き出したそれぞれの触媒を、予め溶媒の存在下または不存在下、あるいは有機金属化合物の存在下または不存在下で、別々に重合反応器に導入し、さらに一つの重合反応器中で混合する方法。
(d)無機酸化物粒子B1と無機酸化物粒子B2を予め混合し、その後、造粒して無機酸化物粒子B3(混合担体)とし、クロム化合物(クロム化合物D又はクロム化合物E)を担持して、賦活炉で賦活を行い、抜き出した混合触媒を、予め溶媒の存在下または不存在下、あるいは有機金属化合物の存在下または不存在下で、重合反応器に導入する方法。
(2)クロム触媒A3(クロム触媒A1,A2)を含有するエチレン系重合触媒におけるクロム触媒A1,A2の混合比率
エチレン系重合触媒が、クロム触媒A3含有する、すなわち、クロム触媒A1及びクロム触媒A2を含有する場合に、クロム触媒A1とクロム触媒A2の混合比率は、特に限定されない。クロム触媒A1とクロム触媒A2の混合比率は、重量比で、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5であることがより好ましく、10:90〜90:10であることが更に好ましい。
(3)エチレン系重合触媒におけるクロム原子の含有量
エチレン系重合触媒におけるクロム原子の含有量は、特に限定されない。担持されるクロム原子がクロム原子同士で凝集を起こさず、効率的に活性化される観点から、クロム原子の含有量が、0.01重量%〜2.0重量%であることが好ましく、0.1重量%〜2.0重量%であることがより好ましく、0.2重量%〜1.5重量%であることが更に好ましい。
(4)エチレン系重合触媒におけるクロム触媒A1,A2以外の他の成分
エチレン系重合触媒は、本発明の作用効果を阻害しない限り、クロム触媒A1,A2以外の他の成分を含有していてもよい。
他の成分は、特に限定されない。他の成分の含有率(重量%)は、5重量%以下が好ましい。
6.エチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上述のエチレン系重合触媒を用いて、エチレンを少なくとも含むモノマーを重合する。
(1)重合方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、スラリー重合や溶液重合等の液相重合法又は気相重合法等で実施できる。
液相重合法は、通常には炭化水素溶媒中で実施される。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素の単体又は混合物が用いられる。
また、気相重合法では、不活性ガス共存下にて、流動床や撹拌床などの通常知られている重合法を採用できる。気相重合法では、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用できる。
重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を、続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器から第二段の反応器への移送は、連結管を通して行う。この移送は、第二段反応器からの重合反応混合物の連続的排出による差圧を利用して行うことが好ましい。
(2)重合条件
液相又は気相重合法における重合温度は、一般的には0℃〜300℃であり、実用的には20℃〜200℃、好ましくは50℃〜180℃、さらに好ましくは70℃〜150℃である。
反応器中の触媒濃度及びエチレン濃度は、重合を進行させるのに充分な濃度であれば任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合には反応器内容物の重量を基準にして、約0.0001重量%〜約5重量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1MPa〜10MPaの範囲とすることができる。
また、必要に応じて水素を重合反応器に導入して、分子量を調節することもできる。
(3)共重合
本発明のエチレン系重合体の製造方法において、エチレン単独重合以外に、必要に応じて、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンを単独又は2種類以上重合反応器に導入して、共重合させることもできる。
得られるエチレン系共重合体中のα−オレフィン含量は、15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。
(4)有機金属化合物
重合に際しては、エチレン系重合体の分子量又は分子量分布を微調整する目的、又はスカベンジャーとして重合系内の不純物を除去する目的で、助触媒として有機金属化合物を導入して、エチレン系重合触媒と接触させることもできる。
特に、有機金属化合物は、エチレン系重合触媒に対しては、触媒活性を向上させる効果、分子量調節剤としての水素をより効きやすくするという効果を有する。
有機金属化合物としては、周期律表第1族、2族、13族の有機金属化合物、具体的には有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。更には、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物が好ましい。
有機リチウム化合物としては、アルキルリチウム、具体的には、メチルリチウム、n−ブチルリチウム等が挙げられる。
有機マグネシウム化合物としては、ジアルキルマグネシウム、具体的には、ブチルエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウムが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシドが挙げられる。
有機ホウ素化合物としては、トリアルキルボラン、具体的には、トリエチルボランが挙げられる。
接触させる有機金属化合物の量としては、金属原子とクロム原子のモル比が0.2〜1000、好ましくは0.5〜100となる量が好ましい。
得られたエチレン系重合体は、次いで、混練することが好ましい。混練は、単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行うことができる。次いで、得られたエチレン系重合体は、常法によりブロー成形等の成形をすることができる。
7.本実施形態の作用効果
本実施形態のエチレン系重合触媒成分、エチレン系重合体触媒の製造方法、エチレン系重合体の製造方法によれば、耐久性と流動性のバランスに優れるHDPE材料(高密度ポリエチレン材料)の設計が可能になる。
以下において、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、これらの実施例によって制約を受けるものではない。
1.物性の測定方法
実施例及び比較例において使用した物性の測定方法等は、以下の通りである。
(1)無機酸化物粒子B1の赤外線スペクトルのピーク強度の測定(赤外分光法)
無機酸化物を高純度アルゴンで置換されたグローブボックス内で、拡散反射IR用のサンプルホルダーに充填し、サンプル表面を平滑にした。その後、窓のついた蓋で試料を密封し、IR測定装置に設置して測定した。
測定条件は以下の通りである。
装置:日本分光株式会社製 FT/IR−6600
検出器:TGS
測光方法:拡散反射法
波長範囲:1000〜4000cm−1
分解能:4cm−1
測定回数:512回
雰囲気:アルゴン
(2)粉末X線回折(XRD):粉末X線回折は、以下の装置および条件で測定した。
装置:リガク社製X−ray Diffractometer Smartlab
X線源:Cu−Kα線(Kβ吸収板使用)、管電圧40kV、管電流30mA
光学系:集中法
発散スリット2/3度、散乱スリット2/3度、受光スリット0.300mm
スキャンモード:2θ/θスキャン
2θスキャン範囲:3.0000〜55.0000度
角度ステップ幅:0.0200度
スキャン速度:4.0000度/分
検出器:シンチレーションカウンタ
(3)表面積および細孔容積
シリカの各試料は加熱、減圧下で十分な乾燥を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ3B型を用いて、液体温度下における窒素の吸着等温線測定を行った。得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔容積を、BET多点法解析を実施して比表面積を算出した。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、式(1)に従い平均細孔径を算出した。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔容積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
ave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔容積を算出した。
(4)SEM観察:SEM観察は、以下の装置および条件で実施した。
装置:日立製FE−SEM
加圧電圧:1kV
装置倍率:20k
WD:4mm
(5)HLMI:ASTM−D−1238−57Tに準拠し、190℃、21.6kg荷重で測定した。
(6)6価のクロムの含有量:NaOH水溶液(0.1M)を触媒成分に添加し、6価のクロムを溶解させ、溶液の一部をとり波長366nmの吸光度を測定することにより定量した。
(7)平均粒径:堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.0、形状係数1.0の条件で測定し、メジアン径の値を平均粒径とした。
2.実施例及び比較例
(1)実施例1
(1.1)無機酸化物粒子B1の赤外線スペクトル
無機酸化物粒子B1である「サンラブリー」(AGCエスアイテック社製)の赤外線スペクトルを図1において実線で示す。表1に示すように、この赤外線スペクトルにおいて、範囲Xの最大ピークは3661cm−1であり、ピーク強度Pxは1.32であった。また、範囲Yの最大ピークは3746cm−1であり、ピーク強度Pyは0.88であった。ピーク強度比Py/Pxは0.67であった。
(1.2)無機酸化物粒子B1の構造解析データ
無機酸化物粒子B1の構造解析データは、以下の通りである。
<無機酸化物粒子B1の構造解析データ>
XRD:2θ=25.8°にピーク、半値幅1.5°
BET法:表面積84m/g
細孔容積:0.2mL/g
SiO純度:99.5%(重量基準)
(1.3)クロム触媒A1の調製
無機酸化物粒子B1を、酢酸クロム水溶液に含浸した後、水分を留去することによりクロム含量0.5重量%のクロム含有シリカを得た。その後、クロム含有シリカを、乾燥空気雰囲気下、600℃、20時間の条件で賦活して、クロム触媒A1(Phillipsタイプ触媒)を得た。賦活により、クロム含有シリカは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは、実質的に99重量%が6価に変換されていた。
(1.4)クロム触媒A1の物性
クロム触媒A1のXRDのピーク位置は、200℃で乾燥した無機酸化物粒子B1(原料)と、酢酸クロムを担持し600℃賦活したクロム触媒A1とでは、ほとんど変化しなかった。これは、無機酸化物粒子B1の熱安定性が良好であることを意味している。クロム触媒A1のSEM画像を図3に示す。
(1.5)エチレン重合
充分に窒素置換した1.5Lの重合槽に、クロム触媒A1を185mg、イソブタン700mLを導入し、内温を100℃まで昇温した。
次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、重合温度100℃で、120分間重合を行った。次いで内容ガスを系外に放出することにより、重合を停止した。その結果、エチレン系重合体を21g得た。得られたエチレン系重合体のHLMIは、ポリマーが流れなかった。従って0.01g/10分未満と判断される。密度は0.9520g/cmであった。
(2)実施例2
(2.1.1)クロム触媒A1の調製
実施例1と同様に調製した。
(2.1.2)クロム触媒A2の調製
無機酸化物粒子B2(非晶質シリカ凝集体)を、酢酸クロム水溶液に含浸した後、水分を留去することによりクロム含量1.0重量%のクロム含有シリカを得た。その後、クロム含有シリカを、乾燥空気雰囲気下、820℃、18時間の条件で賦活して、クロム触媒A2(Phillipsタイプ触媒)を得た。賦活により、クロム含有シリカは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは、実質的に99重量%が6価に変換されていた。
なお、無機酸化物粒子B2の赤外線スペクトルについては、後述の「(3.1)無機酸化物粒子B2の赤外線スペクトル」の欄で記載した通りである。また、無機酸化物粒子B2の構造解析データについては、後述の「(3.2)無機酸化物粒子B2の構造解析データ」の欄で記載した通りである。
(2.2)エチレン重合
充分に窒素置換した1.5Lの重合槽に、クロム触媒A1を152mg、クロム触媒A2を39mg、イソブタン700mLを導入し、内温を100℃まで昇温した。
次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、重合温度100℃で、120分間重合を行った。次いで内容ガスを系外に放出することにより、重合を停止した。その結果、エチレン系重合体を200g得た。得られたエチレン系重合体のHLMIは、5.1g/10分、密度は0.9577g/cmであった。
(3)比較例1
(3.1)無機酸化物粒子B2の赤外線スペクトル
無機酸化物粒子B2の赤外線スペクトルを図1において破線で示す。表1に示すように、この赤外線スペクトルにおいて、範囲Xの最大ピークは3697cm−1であり、ピーク強度Pxは0.42であった。また、範囲Yの最大ピークは3747cm−1であり、ピーク強度Pyは5.82であった。ピーク強度比Py/Pxは13.86であった。
(3.2)無機酸化物粒子B2の構造解析データ
なお、無機酸化物粒子B2の構造解析データは、以下の通りである。
<無機酸化物粒子2の構造解析データ>
XRD:2θ=22°付近に非晶質特有のブロードなピーク
BET法:表面積310m/g
細孔容積:1.7mL/g
SiO純度:99.8%(重量基準)
(3.3)クロム触媒A2の調製
実施例2と同様に調製した。
(3.4)エチレン重合
充分に窒素置換した1.5Lの重合槽に、クロム触媒A2を29mg、イソブタン700mLを導入し、内温を100℃まで昇温した。
次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、重合温度100℃で、120分間重合を行った。次いで内容ガスを系外に放出することにより、重合を停止した。その結果、エチレン系重合体を149g得た。得られたエチレン系重合体のHLMIは、9.8g/10分、密度は0.9582g/cmであった。
(4)実施例3
(4.1)クロム触媒A3の調製
無機酸化物粒子B2−2(非晶質シリカ凝集体、40g、平均粒径12μm)と実施例1で用いた無機酸化物粒子B1(120g、平均粒径4.3μm)を蒸留水340mL中でスラリー化した。このスラリーを、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、次の条件下で上記の無機酸化物粒子/水スラリーの噴霧乾燥造粒を行った。
アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
アトマイザー回転数:10,000rpm
スラリー供給速度:1.0L/h
入口温度:150℃
造粒の結果、平均粒径37.5μmの無機酸化物粒子B3を本体下から回収した。
得られた無機酸化物粒子B3を、酢酸クロム水溶液に含浸した後、水分を留去することによりクロム含量0.5重量%のクロム含有シリカを得た。その後、クロム含有シリカを、乾燥空気雰囲気下、730℃、12時間の条件で賦活して、クロム触媒A3(Phillipsタイプ触媒)を得た。賦活により、クロム含有シリカは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは、実質的に99重量%が6価に変換されていた。
<無機酸化物粒子B2−2の構造解析データ>
XRD:2θ=22°付近に非晶質特有のブロードなピーク
BET法:表面積320m/g
細孔容積:1.6mL/g
SiO純度:99.8%(重量基準)
平均粒径:12μm
(4.2)エチレン重合
充分に窒素置換した2.0Lの重合槽に、実施例3(4.1)で得られたクロム触媒A3を130mg、イソブタン800mLを導入し、内温を100℃まで昇温した。
次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、重合温度100℃で、200分間重合を行った。次いで内容ガスを系外に放出することにより、重合を停止した。その結果、エチレン系重合体を340g得た。得られたエチレン系重合体のHLMIは、1.0g/10分、密度は0.9522g/cmであった。
(5)比較例2
(5.1)クロム触媒A4の調製
実施例3の無機酸化物粒子B2−2(非晶質シリカ凝集体、100g、平均粒径12μm)を蒸留水400mL中でスラリー化した。このスラリーを、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、実施例3(4.1)と同様に行い、平均粒径98.2μmの無機酸化物粒子B2−2の造粒体を得た。
得られた無機酸化物粒子B2−2造粒体を、酢酸クロム水溶液に含浸した後、水分を留去することによりクロム含量0.5重量%のクロム含有シリカを得た。その後、クロム含有シリカを、乾燥空気雰囲気下、730℃、12時間の条件で賦活して、クロム触媒A4(Phillipsタイプ触媒)を得た。賦活により、クロム含有シリカは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは、実質的に99重量%が6価に変換されていた。
(5.2)エチレン重合
充分に窒素置換した2.0Lの重合槽に、比較例2(5.1)で得られたクロム触媒A4を60mg、イソブタン800mLを導入し、内温を100℃まで昇温した。
次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、重合温度100℃で、60分間重合を行った。次いで内容ガスを系外に放出することにより、重合を停止した。その結果、エチレン系重合体を170g得た。得られたエチレン系重合体のHLMIは、2.5g/10分、密度は0.9562g/cmであった。
3.実施例及び比較例の結果の考察
実施例及び比較例の結果を表1及び表2に示す。なお、表2におけるポリマー密度には、小数点第4位を四捨五入した値を記載している。
表2に示されるように、実施例1と比較例1の比較により、Px/Pyが10未満である無機酸化物が担体であるクロム触媒A1を用いることで、分子量が高いエチレン系重合体が得られることがわかる。また、実施例2と比較例1の比較により、クロム触媒A1とクロム触媒A2を混合して用いることで、クロム触媒A2単独で得られるエチレン系重合体よりも、高分子量のエチレン系重合体が得られることがわかる。また、実施例2は比較例1に対して、HLMIが低い(PE分子量が高い)にも関わらず密度は同等となった。これはブロー向け材料向けには好ましい物性バランスである。さらに、実施例3と比較例2の比較により、板状シリカ凝集体である無機酸化物粒子B1と非晶質シリカ凝集体である無機酸化物粒子B2−2を混合して造粒した担体を用いたクロム触媒A3においても、非晶質シリカ凝集体である無機酸化物粒子B2−2単独で造粒した担体を用いた場合より高分子量のエチレン系重合体が得られることがわかる。
以上の結果から、ピーク強度の比率Py/Pxが10未満であり、SiOを90重量%以上含有する板状シリカ凝集体(平面状シリカ凝集体)を含有するエチレン系重合触媒を用いると、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造できることが確認された。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
本発明によれば、超高分子量成分を有するエチレン系重合体を製造できる。このエチレン系重合体は、幅広い用途に適用することができるため、工業的に非常に利用価値が高い。

Claims (6)

  1. 分析の前処理として600℃で24時間焼成した後に測定して、以下の特性1及び特性2を有する無機酸化物を含むことを特徴とするエチレン系重合触媒成分。
    特性1:赤外線スペクトルにおいて、3600cm−1〜3699cm−1の範囲Xで最大となるピーク強度Pxに対する3700cm−1〜3799cm−1の範囲Yで最大となるピーク強度Pyの比率Py/Pxが10未満である。
    特性2:SiOを90重量%以上含有する。
  2. 前記無機酸化物が、粉末X線回折において2θ=23°〜29°に半値幅0.2°以上5°以下の結晶性を示すピークを有することを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合触媒成分。
  3. 請求項1または請求項2に記載のエチレン系重合触媒成分にクロム化合物を担持する工程(I)、
    前記工程(I)で得られたクロム化合物担持成分を、非還元性雰囲気下、400℃〜900℃で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とする工程(II)、
    を含むことを特徴とするエチレン系重合触媒の製造方法。
  4. 前記工程(I)において、クロム原子を0.01重量%〜2.0重量%含有する前記クロム化合物担持成分を得ることを特徴とする請求項3に記載のエチレン系重合触媒の製造方法。
  5. 前記工程(II)において、前記クロム化合物担持成分に含まれるクロム原子のうち50%以上のクロム原子を6価に酸化することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエチレン系重合触媒の製造方法。
  6. 請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の製造方法により得られるエチレン系重合触媒を用いて、エチレンを少なくとも含むモノマーを重合することを特徴とする、エチレン系重合体の製造方法。
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