JP5613583B2 - エチレン重合用触媒、それを用いたエチレン系重合体の製造方法、並びにそれによって得られるエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子 - Google Patents
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Description
一般に、エチレン系重合体は、重合触媒を用いたエチレンの単独重合によって、あるいは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとの共重合によって製造されるが、用途に応じた適切な特性を有するエチレン系重合体を製造するために、様々な重合触媒が開発されている。現在、主要な重合触媒として、ラジカル重合触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒と並んで、フィリップス触媒が重用されている。
フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム元素の少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であるが、比較的広い分子量分布と長鎖分岐構造に起因する優れた溶融加工特性を有するエチレン系重合体を生成することから、特に中空成形分野において重要なエチレン重合用触媒となっている。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、粉砕による粒子形状や微細構造の破壊が生じることを避けることはできないため、触媒粒子性状やα−オレフィン共重合性が悪かったり、重合活性や生成ポリマー粒子性状の改善が不十分であったりして、改善の余地が大きかった。
しかしながら、これらの方法により得られたエチレン重合用触媒は、固体担体粒子や原料シリカゲルの粒子性状や微細構造の特性が凝集後の形状や微細構造にそのまま受け継がれるため、粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であった。
しかしながら、この方法により得られたエチレン重合用触媒は、均一なヒドロゲル由来部分の材料強度が大きすぎることによる担体粒子の不均一性が生じることが避けられず、触媒粒子性状や生成ポリマー粒子性状が必ずしも良好なものではなく、また、α−オレフィン共重合性や重合活性の改善への寄与が不十分であったり、高価なアルコキシシランを出発原料とする故、経済的に不利であった。
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たし、
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記xを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度x 10 ;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x 50 」、「90%ケイ素濃度x 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式1a]〜[式1c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.20≦x 10 /z 10 ≦4.00 [式1a]
1.05≦x 50 /z 50 ≦4.00 [式1b]
1.05≦x 90 /z 90 ≦4.00 [式1c]
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たし、
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記yを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度y 10 」、「50%ケイ素濃度y 50 」、「90%ケイ素濃度y 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.05≦y 10 /z 10 ≦4.00 [式2a]
1.02≦y 50 /z 50 ≦4.00 [式2b]
1.02≦y 90 /z 90 ≦4.00 [式2c]
また、本発明の第3の発明によれば、 主成分がシリカである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たし、かつ、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たし、
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、x、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記xを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度x 10 ;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x 50 」、「90%ケイ素濃度x 90 」とし、上記yを、各々「10%ケイ素濃度y 10 」、「50%ケイ素濃度y 50 」、「90%ケイ素濃度y 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式1a]〜[式1c]、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
1.20≦x 10 /z 10 ≦4.00 [式1a]
1.05≦x 50 /z 50 ≦4.00 [式1b]
1.05≦x 90 /z 90 ≦4.00 [式1c]
1.05≦y 10 /z 10 ≦4.00 [式2a]
1.02≦y 50 /z 50 ≦4.00 [式2b]
1.02≦y 90 /z 90 ≦4.00 [式2c]
本発明のエチレン系重合用触媒は、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在することを特徴とする。
ところで、無機酸化物担体にクロム化合物を担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となるクロム触媒は、一般にフィリップス触媒として知られており公知である。この触媒の概要は、M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volime 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.; M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH; M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker等の文献に記載されている。
本発明で用いられる無機酸化物担体としては、周期律表第2〜14族の金属の酸化物であり、好ましくは第2、4、5、7、8、13、14族の金属の酸化物であり、更に好ましくは第2、4、13又は14族の金属の酸化物である。
具体的な例としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、又はこれらの混合物が挙げられる。なかでも、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナが好ましい。無機酸化物担体が複合酸化物あるいは混合物の場合、該複合酸化物あるいは混合物の主成分はシリカであることが好ましい。この場合、主成分とは金属元素として50モル%、より好ましくは60モル%、更に好ましくは70モル%を超えて存在する金属酸化物のことをいう。シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナの場合、シリカ以外の金属成分としてチタン、ジルコニウム又はアルミニウム原子が0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%含有されたものが用いられる。
これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers; C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年等の文献に記載されている。本発明では、上記無機酸化物担体に20重量%を上限に、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のリン酸塩や、同硫酸塩、同硝酸塩、同ハロゲン化物等を含有することもある。
本発明によるエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有するものである。この特徴的な粒子構造の形成は、使用する無機酸化物担体の粒子構造、粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成されたものである。
また、50nm以下の細孔の細孔容積としては、0.3〜3.0cm3/g、好ましくは0.7〜2.0cm3/g、さらに好ましくは1.0〜1.6cm3/gの範囲のものが用いられる。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積としては、0.000〜0.20cm3/g、好ましくは0.005〜0.10cm3/g、さらに好ましくは0.01〜0.08cm3/gの範囲のものが用いられる。50nm以下の細孔容積が0.3cm3/gより小さいと、生成するエチレン系重合体のHLMFRが小さくなりすぎて溶融流動性が不足して溶融成形に支障をきたしたり、長鎖分岐が増えすぎてエチレン系重合体強度が低下したり、担体強度が強くなり過ぎて、エチレン系重合体中への触媒破片の分散が不十分となって製品外観を悪化させたりするので好ましくない。また50nm以下の細孔容積が3.0cm3/gより大きいと、担体強度が弱くなるので破砕による触媒粒子微粉やエチレン系重合体微粉の増加が生じたり、長鎖分岐が減ってしまうのでエチレン系重合体の溶融成形加工性が低下したりするので好ましくない。より大きなHLMFRを示すエチレン系重合体の製造のために特に好ましい50nm以下の細孔容積は1.2〜1.5cm3/gである。更に、2.0〜6.0nmの細孔の細孔容積が0.20cm3/gより大きいと、HLMFRの小さいエチレン系重合体成分の生成量が多くなって溶融成形に支障をきたすので好ましくない。
凝集成長法による定形粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液と酸水溶液の混合液を放置して生成する粒状ゾルとして得られるが、このとき、凝集成長剤としてカルボキシメチルセルロース、アクリルアミド系重合体等の水溶性高分子を添加したり、更に凝集成長助剤として、上記以外にも水溶性高分子や、水溶性無機電解質である金属鉱産塩あるいは有機酸塩を使用することも出来る。助剤として使用可能な水溶性高分子としては、例えば、澱粉、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビヤガム、トラガントガム、プリテイシュガム、クリスタルガム、セネガールガム、PVA、メチールセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、等のノニオン系の高分子を使用することができ、また、水溶性無機電解質としては、アルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属の鉱酸塩;アルカリ土類金属塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の鉱酸塩;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸チタニル等の他の水溶性金属塩を使用することができる。
湿式粉砕により、2次粒子の粒径が4μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下の微細ヒドロゲルスラリーを準備し、非晶質シリカ系複合粒子の製造に用いられる。
上記の定形粒子と微粒子のスラリーを噴霧造粒することにより、本発明のエチレン重合用触媒の担体として好適な無機酸化物担体を製造する。噴霧造粒に供するスラリーとしては、該定形粒子と微粒子がSiO2基準のシリカ重量比が好ましくは20:80〜80:20、更に好ましくは30:70〜70:30で混合されたスラリーが用いられる。
加熱処理は、通常窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下あるいは気流下、100〜900℃、好ましくは150〜700℃、更に好ましくは200℃〜650℃の温度で実施される。
本発明で上記の無機酸化物担体(a)にクロム元素を担持するために使用されるクロム化合物としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム元素が6価となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。具体的には三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム元素は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V.J.Ruddickら著,J.Phys.Chem.,Volume100,11062頁,1996年; S.M.Augustineら著,J.Catal.,Volume 161,641頁,1996年)。
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム元素として担体に対して0.2〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.7重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
フッ素化合物の含有方法(フッ素化)は、溶媒中でフッ素化合物溶液を含浸させた後、
溶媒を留去する方法、あるいは溶媒を用いずにフッ素化合物を昇華させる方法など、公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって、適宜好適な方法を用いればよい。無機酸化物担体にクロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させてもよいし、フッ素化合物を含有させてからクロム化合物を担持してもよいが、クロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させる方が好ましい。
フッ素化合物の含有量は、フッ素元素の含有量として、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
化アンモニウム(NH4)HF2、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムNH4PF6、テ
トラフルオロホウ酸HBF4のようなフッ素含有塩類が用いられ、なかでも、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムが好ましい。
これらを、水又はアルコールなどの有機溶媒に溶解させた後、クロム触媒に含浸させるのが均一性の観点から好ましいが、固体のままクロム触媒と混合するだけでもよい。溶解して含浸させる場合は、表面張力による細孔体積の縮小(shrinkage)を抑えるために、アルコールなどの有機溶媒を用いるのがより好ましい。また、溶媒を用いた場合は、風乾、真空乾燥、スプレードライなど、既知の方法によって、溶媒を飛ばして乾燥させる。あるいは、賦活工程の間にフッ素化合物を投入する方法でもよい。ただし、この場合、フッ素化合物の固体をガス中で流動化させるので、均一性の観点からできるだけ微細な粒子状のフッ素化合物固体を用いることが好ましい。
クロム化合物の担持後に焼成して活性化処理を行う。焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば酸素又は空気下で行なうことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行う。焼成活性化は通常400〜900℃、好ましくは430〜800℃、より好ましくは450〜650℃、さらに好ましくは490〜600℃の温度にて30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間行う。この焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム元素が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。焼成活性化を400℃未満で行うと重合活性が低下し、また分子量分布が広くなって耐久性は向上するものの耐衝撃性が低下する。焼成活性化を、800℃を越える温度で行うと、分子量分布が狭くなって耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下し、さらに900℃を超える温度で行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。
これらの方法は、C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年; T.Pullukatら著,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,Volume 18,2857頁,1980年; M.P.McDanielら著,J.Catal.,Volume 82,118頁,1983年等の文献に記載されている。
次に、上記有機金属処理で使用される有機金属がアルミニウムである場合について、以下に具体的に例示する。
R’1R’2R’3Al (A)
(式中、R’1、R’2、R’3は、炭素原子数1〜18のアルキル基であり、同一であ
っても異なっていてもよい。)で示される化合物である。
トリアルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられ、なかでもトリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムが好ましい。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドの具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、ジエチルアルミニウムi−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウムi−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジメチルアルミニウムt−ブトキシド、ジエチルアルミニウムt−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムt−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシドが好適である。
上記(a)〜(d)の手順により得られる本発明のエチレン重合用触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在するという従来に無い特徴的な粒子構造を保有している。この特徴的な粒子構造は、得られた該触媒をある断面でカットして、その断面についての該無機酸化物を主に構成する金属元素含量、好ましくはケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウムの原子含量、より好ましくはケイ素元素含量を、電子線プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer;以下、単に「EPMA」と略称することもある。)により、測定することにより顕在化することが可能である。なお、EPMAは、以下のような原理を持った装置である。
なお、本発明の触媒粒子において、無機酸化物が触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、触媒粒子の断面であって、その長径が30μm以上の断面(粒子の平均粒径が30μmより小さい場合は、該平均粒径以上の長径を有する断面)を見た場合に、触媒粒子の表面から内部に向かって、1μm以上、好ましくは2μm以上、更に好ましくは5μm以上、長径の2/5以下、好ましくは長径の1/3以下、更に好ましくは長径の1/4以下である。この範囲に無機酸化物が多く集中することにより、本発明の著しい効果を発揮することができる。
無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が1.001倍未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、無機酸化物量の触媒粒子内部に対する触媒粒子表面の割合が20倍より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
本発明の触媒粒子において、上記で規定した触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に多く集中して存在する領域は、上記で規定した断面を見た場合、その外周部の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上を占める。該領域は、厳密に完全なリング状に分布していることが最も好ましいことはいうまでもない。
EPMA法においては、測定対象元素の含有量が直接測定されるのではなく、該元素のX線強度が測定されて、試料中のケイ素のX線強度に関するマッピング画像が得られる。その際に、このX線強度に関するマッピング画像を、ケイ素濃度に関するマッピング画像に変換するためには、測定されたX線強度を該元素濃度に換算する必要がある。X線強度の元素濃度への換算は、対象試料の組成に近い組成を持つ複数の標準試料を用いてX線強度と該濃度との関係を予め検量線として求めるいわゆる検量線法で行う。
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦x/z≦3.00である。x/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、x/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
1.05≦y/z ≦4.00 [式2]
ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。より好ましくは、1.10≦y/z≦3.00である。y/zが1.05未満の場合、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、y/zが4.00より大きい場合、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
1.20≦x10/z10≦4.00 [式1a]
1.05≦x50/z50≦4.00 [式1b]
1.05≦x90/z90≦4.00 [式1c]
1.05≦y10/z10≦4.00 [式2a]
1.02≦y50/z50≦4.00 [式2b]
1.02≦y90/z90≦4.00 [式2c]
さらに、下記の[式1a’]〜[式1c’]、[式2a’]〜[式2c’]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更に好ましい。
1.30≦x10/z10≦3.00 [式1a’]
1.10≦x50/z50≦2.00 [式1b’]
1.10≦x90/z90≦2.00 [式1c’]
1.10≦y10/z10≦2.00 [式2a’]
1.05≦y50/z50≦2.00 [式2b’]
1.08≦y90/z90≦2.00 [式2c’]
さらに、下記の[式1a”]〜[式1c”]、[式2a”]〜[式2c”]の少なくともいずれか1つ以上を満たす場合が、更により好ましい。
1.50≦x10/z10≦2.00 [式1a”]
1.24≦x50/z50≦1.50 [式1b”]
1.15≦x90/z90≦1.50 [式1c”]
1.15≦y10/z10≦1.60 [式2a”]
1.10≦y50/z50≦1.50 [式2b”]
1.10≦y90/z90≦1.50 [式2c”]
上記触媒粒子の外周部と中央部のケイ素濃度比が好ましい範囲より小さいと、重合活性や触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状や溶融流動性が悪化したりするので好ましくない。また、該ケイ素濃度比が好ましい範囲より大きいと、触媒粒子強度が不足して、触媒粒子性状等が悪化したり、重合パウダー粒子性状が悪化したりするので好ましくない。
また、本発明の触媒を用いると、担体が適度な強度を有するため、重合の初期段階においては、触媒粒子は比較的割れにくく効率的に重合が進行し、さらに重合が進行した段階においては、触媒粒子の適度な割れが発生して、細か過ぎる重合体微粉粒子の発生が抑制される。
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用して実施され、具体的には、上記[I]で得られたエチレン重合用触媒を使用してエチレンを単独重合させるか、あるいは、エチレンとα−オレフィンを共重合させることによって実施される。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜12、更に好ましくは3〜8のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を使用することができる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
液相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃、特に好ましくは70〜110℃である。反応器中の触媒濃度及びエチレン濃度は重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。
例えば、触媒濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約0.0001〜約5重量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、液相重合の場合反応器内容物の重量を基準にして約1%〜約10%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。また、水素を共存させて重合を行うことも可能であり、耐久性、耐衝撃性、剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造するためには、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させるのがよい。水素は、一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有するとされているが、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることにより、耐久性を向上させ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスを向上させることができる。水素の共存によりかかる効果が得られる理由の詳細は不明であるが、特定の分子量域に適度な長さ又は数の長鎖分岐を導入する働きを有するため、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合による短鎖分岐の分布を変える働きを有するためと考えられる。
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素及び同じく流れ込むα−オレフィンがあるが、必要に応じてそれぞれ新たな水素、α−オレフィンを加えることができる。従って、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比(Hc/ETc)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行うだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物又はその両者を供給してもよい。
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、上記[II]のエチレン系重合体の製造方法によって製造される。該エチレン系重合体はエチレン単独重合体の場合もあるし、コモノマーとしてプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを1種類以上含むエチレン・α−オレフィン共重合体の場合もあり、この時得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含量は15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。α―オレフィンとしては好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンが好適に用いられる。また上述のように少量のジエン類やスチレン類等の改質用モノマーを含有することもできる。
密度が0.900g/cm3未満であると、中空プラスチック成形品の剛性が不足し、0.980g/cm3を越えると中空プラスチック成形品の耐久性が不足する。密度は、α−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含有量を低くする(重合時のα−オレフィン添加量を低くする)、又は同じ含有量であれば、炭素数の小さいα−オレフィンを用いることにより、密度を高くすることができる。密度は、JIS K−7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ測定したものである。
[ゲル透過クロマトグラフ(GPC)測定条件]
装 置:Waters社製150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
得られたエチレン系重合体は、次いで混練することも好ましい。単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行われる。上記の方法により製造されたエチレン系重合体は、1種類でも複数種類を混合して使用してもよく、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができるが、本発明で製造されるエチレン系重合体粒子は、そのきわめて良好な粉体粒子性状を活用することにより、ペレット化を経ることなく、直接各種成形機に供給して成形を行って所望の成形品とすることも可能であり、ペレット化の工程を省略することが可能であるので省エネルギー化の観点で非常に好ましい。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレン系樹脂に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、特に限定されず、従来からの公知の多層中空成形機を用いて押出ブロー成形法により成形することができる。例えば、複数の押出機で各層の構成樹脂を加熱溶融させた後、多層のダイにより溶融パリソンを押出し、次いでこのパリソンを金型で挟み、パリソンの内部に空気を吹き込むことにより、多層の中空プラスチック成形品が製造される。
さらに、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて目的を損なわない範囲で、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、充填剤、無機フィラー、紫外線防止剤、分散剤、耐候剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤などの公知の添加剤を添加することができる。
また、本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子は、具体的には、製品としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等の製品、特に自動車用燃料タンクとして供され、或いは本発明の中空プラスチック成形品の用途としては、燃料タンク等のタンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、各種プラスチックボトル等が挙げられ、特に自動車用燃料タンクとして用いられるのが最も好ましい。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。
オートクレーブ重合で得られたポリエチレン系樹脂の物性評価東洋精機製作所社製プラストグラフ(ラボプラストミルME25;ローラー形状はR608型)を用い、添加剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガノックスB225(リン系安定剤のIRGAFOS 168とフェノール系酸化防止剤のIRGANOX 1010の1/1ブレンド物)を0.2重量%添加し、窒素雰囲気下、回転数毎分40回転にて、180℃で7分間混練した。
JIS K−7210(2004年版)の附属書A表1−条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgにおける測定値をHLMFRとして示した。
(b)密度:
JIS K−7112(2004年版)に従い測定した。
生成エチレン系重合体について下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めて分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]
装 置:Waters 150Cモデル、
カラム:昭和電工社製Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式にn−アルカン及びMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレンのデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求めた後、サンプル実測値の補正を行なった。
分子量Mの感度=a+b/M
(式中、a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
(a)電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)による触媒分析:
賦活後のクロム触媒の試料を樹脂包埋後研磨し、Au蒸着後、島津製作所社製EPMA−1600でマッピング分析を行った。EPMAによるマッピングのX線強度は、測定対象元素(Si−Kα線)のX線プロファイルを測定し、ピーク波長を求め、この波長でX線強度を測定した。カラー画像は強度を16段階に色分けし、表示される。
加速電圧:15kV
ビーム電流:50nA
ビーム径:1μm
分光結晶:PET(Pentaerythritol)
測定時間:50msecまた100msec
測定面積:512μm×512μmまたは256μm×256μm
以上のようにして、EPMAによって触媒分析を行った結果を図1〜7に示す。
すなわち、標準試料としてポアがなく密度一定で均一なソーダ石灰シリカガラス(Na2O・K2O−CaO・MgO−Al2O3−SiO2系)に着色のためにクロムを添加した市販の色ガラスを用いた。色ガラス中のケイ素とクロムの均一性については、EPMAで分析し偏在のないことを確認した。色ガラス2点(標準試料)の測定は、EPMAマッピング分析と同様の前処理、測定条件で、各20箇所測定を行い、その平均値をX線強度とした。ケイ素含有量0重量%は測定対象元素のX線プロファイルを測定しバックグラウンド波長を求め、前述同様の測定条件で平均X線強度を求め使用した。また、濃度は色ガラス2点の化学分析を行い、含有量を決定した。このX線強度と濃度から検量線を作成し、マッピング分析データを濃度データに変換し、濃度範囲を1.5重量%刻みで16段階に色分けしカラー画像化した。
市販の色ガラス(Si;32.2重量%、Cr;0.11重量%)
市販の色ガラス(Si;31.5重量%、Cr;0.24重量%)
[化学分析方法]
ケイ素:試料をアルカリ溶融し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)にて測定により求めた。
クロム:試料を酸分解し、ICP−AESにて測定により求めた。
(i)EPMA画像(1μm/画素)(ケイ素濃度1.5重量%刻み16段階で色分けしたカラー画像)を入力した。
(ii)ケイ素濃度3.0重量%以下を粒子外として認識させ、粒子を1画素縮小させた。
(iii)粒子内部をユークリッド法による距離変換処理をした。
(iv)外周から4μm領域を「粒子最外周部領域」、5〜8μm領域を「粒子外周下層部領域」、それより内部を「粒子中央部領域」とした。
(v)「粒子最外周部領域」、「粒子外周下層部領域」、「粒子中央部領域」のそれぞれの領域での16階調のEPMA像の面積割合を求めた。なお、これら画像処理は、(株)日本ローパー製Image Pro Plusを用いた。
装置名 MICROTRAC MT3000II型(日機装)、屈折率:粒子1.81、分散媒1.33(0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)、超音波照射40W・120秒の条件にて測定した。
<比表面積、細孔容積>
各試料は加熱、減圧下で十分な前処理を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ3B型を用いて、液体窒素温度下で窒素の吸着等温線測定を行った。得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔容積を、BET多点法解析を実施して比表面積を算出した。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、式(1)に従い平均細孔径を算出した。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔容積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
Dave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔容量を算出した。
(a)かさ密度:
金属シリンダー法により測定を行った。
(b)篩粒径測定:
内径75mmの標準篩7個(目開き44μm、88μm、177μm、350μm、710μm、1410μm、2830μm)に製品粒子6.0gを入れ、10分間振とうして測定される篩下50%積算値をもって平均粒径とした。
(1)クロム触媒前駆体の調製及び使用したシリカゲルの細孔分布測定
攪拌装置付き1Lフラスコにシリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST191201)50gとイオン交換水200mLを加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。反応に提供したシリカゲルの細孔分析結果を表1、2に示す。
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを、多孔板目皿付き、管径3cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて賦活温度550℃で12時間焼成活性化を行った。こうして6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒を得た。こうして得られた触媒をEPMA分析により触媒断面におけるケイ素元素含量を測定した結果を図1Aに示す。図1Aより、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量が触媒内部に存在するケイ素元素より多いことが明らかであり、すなわち、該触媒内部よりも該触媒表面にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図1Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図1Bおよび表3に示す。
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られたクロム触媒70mg及びイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。ここに更に1−ヘキセン5.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保持することにより重合を開始した。重合を開始してからエチレン消費速度が40g/hを超えるまでに有した時間を誘導期と定義すると、この時の誘導期は10分であった。誘導期を過ぎて更に42分間重合を継続した後、内容ガスを系外に放出することにより重合を終了した。こうして流動性のよいポリエチレン粒子211gを得た。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4300g/g/hであった。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図8に示す。
実施例1(2)で賦活温度を450℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(2)で賦活温度を450℃とし、実施例1(3)で重合温度を103℃とした以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に400℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図9に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを事前に窒素気流下200℃1時間、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図2に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210601)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図3に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(水澤化学工業社製;商品名シルビードMST210602)を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。さらに、EPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図4に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図10に示す。
比較例1のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間で予備乾燥した後、更に600℃にて6時間焼成処理を行ったものを用いた以外は、比較例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図11に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−8)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図12に示す。
比較例3で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図13に示す。
比較例6で賦活温度を630℃とした以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
比較例3のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に800℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例3と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(富士シリシア化学社製;商品名
CARiACT P−10)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
比較例9のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間
、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例9と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図14に示す。
(1)シリカ粒子の合成
ケイ酸ナトリウムと硫酸の反応で生成したシリカヒドロゲル分散液を乾燥後、湿式粉砕して得た平均粒径約3μmのシリカ微粒子分散液(固形分濃度15重量%)に、ケイ酸ナトリウムと硫酸を加え、この複合分散液を噴霧造粒することにより、球状のシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の粒径分布と細孔構造分析結果を表1、2に示した。
(2)クロム触媒の製造とエチレン・1−ヘキセン共重合
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、上記(1)で得られたシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図15に示す。
比較例11(2)で賦活温度を450℃とし、重合温度を103℃とした以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
比較例11(2)のシリカ粒子の代わりに、該シリカ粒子を事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図5Aに示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を図5Bおよび表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図16に示す。
実施例1(1)のシリカゲルの代わりに、シリカゲル(ダブリュー・アール・グレース社製;商品名 C−952)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図17に示す。
比較例14のシリカゲルの代わりに、該シリカゲルを、事前に窒素気流下200℃1時間、更に600℃にて6時間乾燥処理を行ったものを用いた以外は、比較例14と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。また、得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図6に示す。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図18に示す。
市販のクロム触媒前駆体(グレース社製HA30W)を、実施例1(2)(3)と同様にして、賦活及びエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。結果を表1、2に示した。同一賦活温度及び重合温度の実施例の重合活性、HLMFR、共重合性を上回ることはなく、実施例のクロム触媒に比べて、劣っていた。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に粗粉や微粉が多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。得られたクロム触媒のEPMA分析結果を図7に示すが、得られた触媒のケイ素原子検出量は触媒内においてほぼ一定しており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。さらに、このEPMA分析結果を画像解析した結果を表3に示す。
さらに、得られたポリエチレン粒子を篩分けし、目開き88〜177μm品、350〜710μm品、および710〜1410μm品の3グレードを得た後、これらのグレードのポリエチレン粒子の形状を顕微鏡写真によって確認した。得られた顕微鏡写真を図19に示す。
上記表1、2より明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた重合活性と触媒粒子性状を示した。そしてそのクロム触媒を用いて製造されたエチレン系重合体とエチレン系重合体粒子は、パウダー粒子性状、溶融流動性の点で優れた特性を示した。
また、上記表3より明らかなように、実施例1(実施例1〜7は全て同じ担体から製造した触媒の例)、実施例8、実施例10、および実施例11のクロム触媒は、いずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が全て1より大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する触媒であると判定できるが、一方、比較例1(比較例1〜10は全て同種の担体から製造した触媒の例)、比較例15(比較例14、15は同じ担体から製造した触媒の例)、および比較例16のクロム触媒はいずれも、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を下回る傾向が大きいことから、これらの触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在していない触媒であり、また、比較例13(比較例11〜13は同じ担体から製造した触媒の例)のクロム触媒は、粒子の外周部領域と中央部領域の平均ケイ素濃度の比が1を上回る傾向が弱いことから、この触媒は、触媒粒子内部よりも該触媒粒子表面に無機酸化物が多く集中して存在する傾向が実施例の触媒よりも小さいと判定できる。
本発明の要件を満たす実施例1〜11では、調製されたクロム触媒はいずれも優れた1−ヘキセン共重合性を示した。すなわち、図20に示すように、実施例(図中の添字1〜11)の触媒で生成したエチレン・1−ヘキセン共重合体は、比較例(図中の添字c1〜c16)のエチレン・1−ヘキセン共重合体に比べ、HLMFR見合いの密度(D)が小さかった。なお、実施例2、実施例3、実施例5、実施例6、実施例7の値は密度が高い傾向を有するように見えるが、賦活温度が低温であったり、重合温度が低かったり、事前高温乾燥した無機酸化物担体を使用しているためであり、対応する比較例の値と比較するとやはり共重合性が優れていた。
そして、比較例1で得られたクロム触媒は、図4と表3より、得られた触媒の触媒表面のケイ素元素検出量よりも触媒内部に存在するケイ素原子の方が多い傾向にあることが明らかであり、すなわち、該触媒表面よりも該触媒内部にシリカ粒子が多く集中して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは逆の傾向であった。
なお、該比較例のシリカ種で実施例と同程度の高HLMFRの重合体を得るには、実施例2と比較例4の比較でわかるように重合温度を3℃以上高くするか、実施例9と比較例7の比較でわかるように賦活温度を80℃程度高くする必要があるので、実施例の触媒が高HLMFRを得るのに経済的である。
また、比較例11、比較例12、比較例13で使用したシリカは、同一乾燥温度、賦活温度及び重合温度の実施例(例えば実施例1、3、6)に匹敵する重合活性を有していたが、HLMFRが低いという欠点を有していた。また、特段に低密度のポリエチレンが得られてはおらず、1−ヘキセン共重合性に優れていることもなかった。更に、触媒粒子及びエチレン重合体粒子に微粉がやや多く、重合体粒子のかさ密度も低かった。
そして、比較例13で得られたクロム触媒は、図5と表3より、ケイ素元素検出量が多い領域と少ない領域を有していたが、それらの分布が実施例の触媒に見られたように明らかに表面や内部に偏在している訳ではなく、粒子内にほぼ均一に分散して存在するクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
そして、比較例15で得られたクロム触媒は、図6と表3より、得られた触媒のケイ素元素検出量は触媒内においてほぼ一定か内部にやや多く検出されており、すなわち、シリカに関して非常に均一性の高いクロム触媒であった。これは実施例のクロム触媒とは異なる傾向であった。
以上から、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する優越性が明らかである。
したがって、このようなエチレン系重合体粒子を安定にかつ効率的に製造する本発明のエチレン重合用触媒の工業的価値は極めて大きい。
Claims (16)
- 主成分がシリカである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たし、
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
(但し、x、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記xを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度x 10 ;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x 50 」、「90%ケイ素濃度x 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式1a]〜[式1c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒。
1.20≦x 10 /z 10 ≦4.00 [式1a]
1.05≦x 50 /z 50 ≦4.00 [式1b]
1.05≦x 90 /z 90 ≦4.00 [式1c] - 主成分がシリカである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たし、
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、一方、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記yを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度y 10 」、「50%ケイ素濃度y 50 」、「90%ケイ素濃度y 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒。
1.05≦y 10 /z 10 ≦4.00 [式2a]
1.02≦y 50 /z 50 ≦4.00 [式2b]
1.02≦y 90 /z 90 ≦4.00 [式2c] - 主成分がシリカである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒であって、
電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、触媒粒子の断面におけるケイ素元素含量を測定した際に、触媒粒子の最外周部領域における平均ケイ素濃度(x)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(x/z)が、下記の[式1]を満たし、かつ、触媒粒子の外周下層部領域における平均ケイ素濃度(y)と該触媒粒子の中央部領域における平均ケイ素濃度(z)との比(y/z)が、下記の[式2]を満たし、
1.05≦x/z≦4.00 [式1]
1.05≦y/z≦4.00 [式2]
(但し、x、y、zの単位は、いずれも重量%であり、ここで、触媒粒子の最外周部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向の幅4μmに渡って形成される領域をいい、触媒粒子の外周下層部領域とは、EPMAマッピング画像の画像処理(1μm/画素)により定義される外周から粒子内方向への距離5μm〜8μmの間の幅4μmに渡って形成される領域をいい、中央部領域とは、同外周から粒子内方向の幅8μmに渡る領域を除いた残りの領域をいう。)
上記xを、各領域内においてケイ素濃度1.5重量%刻みで識別されるエリアの面積分率の平均値を、低ケイ素濃度エリアからスタートして面積分率が累計10%、50%、90%となるケイ素濃度として、各々「10%ケイ素濃度x 10 ;単位 重量%」、「50%ケイ素濃度x 50 」、「90%ケイ素濃度x 90 」とし、上記yを、各々「10%ケイ素濃度y 10 」、「50%ケイ素濃度y 50 」、「90%ケイ素濃度y 90 」とし、上記zを、各々「10%ケイ素濃度z 10 」、「50%ケイ素濃度z 50 」、「90%ケイ素濃度z 90 」とし、[式1a]〜[式1c]、[式2a]〜[式2c]の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを特徴とするエチレン重合用触媒。
1.20≦x 10 /z 10 ≦4.00 [式1a]
1.05≦x 50 /z 50 ≦4.00 [式1b]
1.05≦x 90 /z 90 ≦4.00 [式1c]
1.05≦y 10 /z 10 ≦4.00 [式2a]
1.02≦y 50 /z 50 ≦4.00 [式2b]
1.02≦y 90 /z 90 ≦4.00 [式2c] - 前記無機酸化物担体(a)は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を反応させてシリカゾルとし、固形物を分離、乾燥して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいすれかに記載のエチレン重合用触媒。
- 前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径50nm以下の細孔容積が0.30〜1.6ml/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
- 前記無機酸化物担体(a)の細孔分布は、細孔径2.0乃至6.0nmの細孔容積が0.005ml/g以上0.10ml/g未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
- 前記無機酸化物担体(a)は、BET比表面積が100m2/g以上600m2/g未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
- 前記無機酸化物担体(a)の粒径分布は、粒子径が250μm以上の粒子が全体の0.3重量%以下、粒子径が10μm以下の粒子が全体の4.0重量%以下、平均粒径の1/10倍の粒径以下の粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
- 前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項9に記載のエチレン系重合体の製造方法。
- 前記エチレン系重合体は、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3であることを特徴とする請求項9又は10に記載のエチレン系重合体の製造方法。
- 前記エチレン系重合体は、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3であることを特徴とする請求項9又は10に記載のエチレン系重合体の製造方法。
- 請求項9〜12のいずれかの方法により製造されることを特徴とするエチレン系重合体粒子の製造方法。
- 前記エチレン系重合体粒子は、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.35〜0.55g/cm3であり、かつ、篩法で測定された平均粒径が100μm〜5mmであり、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の1.0重量%以下であることを特徴とする請求項13に記載のエチレン系重合体粒子の製造方法。
- 前記エチレン系重合体粒子は、重合反応終了後の状態における嵩密度が0.38〜0.55g/cm3であることを特徴とする請求項13又は14に記載のエチレン系重合体粒子の製造方法。
- 前記エチレン系重合体粒子は、重合反応終了後の状態における目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.7重量%以下であることを特徴とする請求項14又は15に記載のエチレン系重合体粒子の製造方法。
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