JP2020164642A - カルボキシル基含有変性セルロース繊維、その乾燥固形物及びその製造方法 - Google Patents

カルボキシル基含有変性セルロース繊維、その乾燥固形物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化された変性セルロース繊維、その乾燥固形物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カルボキシル基を含有する変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合し、更に、該変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合してなる変性セルロース繊維であって、該アミン化合物及び該カルボン酸がそれぞれ炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する、変性セルロース繊維、この変性セルロース繊維を乾燥させて得られる乾燥固形物である。
【選択図】なし

Description

この発明は、疎水性に変性されたカルボキシル基含有変性セルロース繊維、その乾燥固形物及びその製造方法に関する。
セルロース繊維を酸化して親水性に変性することにより、解繊を容易にする技術が開発されて以降(非特許文献1、特許文献1)、繊維径が数nm〜数百nmのセルロースナノファイバー(以下、「微細セルロース繊維」又は「CNF」ともいう。)を用いた用途が拡大した。
しかし、このような微細化された変性セルロース繊維は親水性であるため、疎水性の溶媒や疎水性の高分子に分散させることが困難であったため、このような用途に用いるために、微細化されて親水性のセルロース繊維を疎水化する技術及び再分散を容易にする技術が開発されてきた(特許文献2〜5等)。
また、この湿潤状態のままのCNFでは、保存スペースの確保、保存及び輸送コストの増大等、種々の問題点があるため、CNFを乾燥し、乾燥後に再分散を容易にする方法(特許文献3)などが提案されている。
特開2008−1728 特開2011−140738 国際公開WO2015/107995 特開2017−95664 特開2017−78145
Biomacromolecule vol.7 No.6, 2006 1687-1691
従来変性セルロースナノファイバーを疎水化するためにセルロース表面に疎水基を導入することが知られており、特に酸化されてカルボキシル基が導入されて微細化(解繊)された変性セルロースナノファイバーについてはそのカルボキシル基に疎水基を導入することが行われてきている(特許文献2等)。また、保管等のためにセルロースナノファイバーを乾燥した場合に、乾燥後のCNF分散液が乾燥前のCNF分散液と比較して同等の分散性(再分散性)を有していることが求められる。しかし、変性セルロースナノファイバーはこのような従来の修飾を施しただけでは、乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができないことが分かってきた(例えば、比較例1など)。
本願発明は、乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化された変性セルロースナノファイバー、その乾燥固形物及びその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本明細書中「再分散」とは、解繊したセルロースナノファイバーを乾燥して得た乾燥固形物を溶媒に分散させたものをいう。また、未解繊のセルロースパルプを乾燥して得た乾燥固形物を溶媒に分散させたものは「乾燥後」の分散液と呼び、この未解繊のセルロースパルプを乾燥前に溶媒に分散させたものを「乾燥前」の分散液と呼ぶ。
発明者らは、上記課題を解決するために、解繊された変性セルロースナノファイバーのセルロース構造の何処に疎水基を導入すれば効果的であるかという検討を行い、更に、その際どのような疎水基が効果的であるかという検討も行った。
その結果、本発明者らは、変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基に疎水基を有するアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させ、更に、変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基に疎水基を有するカルボン酸をエステル結合させることにより、この修飾された変性セルロースナノファイバーが乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、カルボキシル基を含有する変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合し、更に、該変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合してなる変性セルロース繊維であって、該アミン化合物及び該カルボン酸がそれぞれ炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する、変性セルロース繊維である。
また、本発明は、この変性セルロース繊維を解繊することにより得られる平均繊維径は1〜500nmの変性セルロースナノファイバーである。
更に、本発明は、この変性セルロース繊維を乾燥させて得られる乾燥固形物である。
また、本発明は、この乾燥固形物の製造方法であって、(A)酸型のカルボキシル基を有する変性セルロース繊維の水溶液を用意する段階、(B)アミン化合物を用いて該変性セルロース繊維のカルボキシル基にアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させる段階、(C)該変性セルロース繊維の水酸基にカルボン酸がエステル結合させる段階、及び(D)その後、得られた変性セルロース繊維を乾燥して乾燥固形物を得る段階、から成る製造方法である。
変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の1%トルエン分散液を示す図である。(1)は実施例1、(2)は実施例2、(3)実施例3、(4)は比較例1、(5)は比較例2のものを示し、各図のAは乾燥前、Bは乾燥後、Cは再分散の分散液を示す。 実施例3で得られた修飾セルロースナノファイバー分散物のFTIRチャートを示す。
本発明においてセルロース繊維は解繊及び未解繊のセルロースナノファイバーを含む。
本発明のセルロース繊維の平均繊維径は1〜500nm、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜10nmであり、その少なくとも一部のセルロース構成単位(化1(a))のC6位にカルボキシル基を有する。このセルロースの変性として、化1(b)はカルボキシル化されたセルロース、化1(c)はカルボキシメチル化されたセルロースを示す。
Figure 2020164642
このようなセルロース繊維は、例えば、下記のようにして用意することができる。
(セルロース原料)
アニオン変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものを挙げることができ、それらのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
(カルボキシル化)
本発明において、カルボキシル化セルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されるものではないが、カルボキシル化の際には、カルボキシル化セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が好ましくは0.05〜6mmol/g、より好ましくは0.6〜3.0mmol/g、更に好ましくは1.0mmol/g〜2.0mmol/gになるように調整する。
カルボキシル化(酸化)方法の一例として、セルロース原料を、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)又はカルボキシレート基(−COO−)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4−ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1〜4mmol/L程度がよい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4〜40℃が好ましく、また15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mであることが好ましく、50〜220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100重量部とした際に、0.1〜30重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
(カルボキシメチル化)
カルボキシメチル化方法の一例としては、セルロースを発底原料にし、マーセル化剤と混合してマーセル化処理を行った後、エーテル化剤を用いてエーテル化処理を行うことによりアニオン変性セルロースを得ることができる。溶媒としては水単独、又は3〜20重量倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95重量%である。マーセル化剤としては発底原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。また、マーセル化剤は5〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の水溶液を用いる。エーテル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル及びモノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。発底原料のグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モルのエーテル化剤を、5〜70重量%、好ましくは30〜60重量%のエーテル化剤の水溶液を用いる。この際、発底原料であるセルロースの持込水分から最終的に投入するすべての薬品の水溶液の水を合算した際の、セルロース絶乾固形分に対するセルロース絶乾固形分と水の合計重量(液比)が1.0〜4.0となるように調節する。
マーセル化処理は、反応器を反応温度0〜50℃、好ましくは10〜40℃に調節し、セルロースを混合しながらマーセル化剤の水溶液を添加し、反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜3時間撹拌することにより行う。これにより、アルカリセルロースを得る。その後、反応器中のアルカリセルロースにエーテル化剤の水溶液を投入し、温度を一定に保ったまま15分〜4時間撹拌し、その後、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行い、カルボキシメチル化セルロースを得る。
このカルボキシメチル化セルロース繊維のカルボキシル基含有量は好ましくは0.05〜6mmol/g、より好ましくは0.1〜3.0mmol/g、更に好ましくは0.1〜2.0mmol/gである。
本発明においては、カルボキシル基を含有する変性セルロースナノファイバーが下記の2つの疎水基による修飾を受ける:
(1)アミン化合物による修飾:
即ち、変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合する。このカルボキシル基は、変性セルロースナノファイバーのピラノース環のC6位のカルボキシル基であってもよいが、セルロース構成単位の二級水酸基がカルボキシメチル化されて生じるカルボキシル基であってもよい。
(2)カルボン酸による修飾:
即ち、変性後のセルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合する。
本発明で用いるこれらアミン化合物及び該カルボン酸は、それぞれ独立に、疎水基として、炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。
これら(1)および(2)の修飾工程の順序に特に制限はないが、(1)アミン化合物による修飾を先に行う方が、パルプが膨潤しやすく、修飾反応が均一に進行しやすい特徴を持ち、さらにアミン化合物による修飾は含水状態でも十分に反応が進行するため、溶媒置換が不要である点から、反応の均一化と効率化が優れるという理由から好ましい。
セルロース繊維のカルボキシル化(変性工程)、解繊、及び(1)アミン化合物による修飾と(2)カルボン酸によるエステル化(以下これらをまとめて「疎水化」という。)並びに乾燥および再分散の各工程の順序としては、例えば、以下のような順序が挙げられるが、これらに限定されない。
(a)カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊
(b)カルボキシル化→解繊→疎水化→乾燥→再分散
(c)カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散
(d)カルボキシル化→解繊→疎水化→再分散→乾燥→再分散
(a)の工程は、未解繊のセルロースパルプを乾燥して乾燥固形物を得る点に特徴があり、(b)〜(d)の工程は、解繊したセルロースパルプを乾燥して乾燥固形物を得る点に特徴がある。
(a)の工程(カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊)の具体例については後述の実施例1、(c)の工程(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)の具体例については後述の実施例2及び3に示す。
以下2つの疎水基による修飾の内容を説明する:
(1)アミン化合物による修飾:
用いることのできるアミン化合物は、炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。このアミン化合物としては、例えば、第1級〜3級アミン化合物や第4級アンモニウム化合物が挙げられ、このアミン化合物は第1級〜3級アミン化合物であることが好ましい。
この第1〜3級アミン化合物としては、第1〜3級のアミン構造を有する直鎖又は分岐のアルキルアミン化合物が好ましい。この第1〜3級アルキルアミン化合物としては、例えば、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ココナットアミン等が挙げられる。
これらアミン化合物は、変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基にアミド結合してもよいし、イオン結合してもよい。
このCNFのカルボキシル基のアミン化合物による修飾割合(修飾度)は、セルロース繊維1gに対して、好ましくは0.1〜5.0mmol/g、より好ましくは0.3〜4.0mmol/g、更に好ましくは0.5〜3.0mmol/gである。
この修飾割合(修飾度)は、如何なる方法で測定してもよいが、疎水化後の重量増加分から、疎水基の分子量をもとに導入量を算出することができる。
(2)カルボン酸による修飾:
このカルボン酸は、炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。このカルボン酸は、例えば、RCOOH(式中、Rは炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を表す。)で表される、
変性セルロース繊維の少なくとも一部の二級水酸基の少なくとも一部がこのカルボン酸とエステル結合する。
この炭化水素基としては脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられるが、好ましくは脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。その炭素数は好ましくは1〜30、より好ましくは7〜18、更に好ましくは13〜18である。
この脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐の、好ましくは直鎖の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。
この芳香族炭化水素基としては、アリール基及びアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。
これらの基には、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基などの置換基を有してもよいが、置換基としては、短鎖アルキル基や短鎖アリール基等の疎水性の置換基が好ましい。
こようなカルボン酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグニセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、安息香酸、トルイル酸、桂皮酸等を挙げることができるが、好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、又は、ステアリン酸を用いることができる。
このCNFの水酸基のカルボン酸による修飾(エステル化)割合(修飾度)は、セルロース繊維1gに対して、好ましくは0.1〜8.0mmol/g、より好ましくは0.3〜5.0mmol/g、更に好ましくは0.5〜3.0mmol/gである。
この修飾割合(修飾度)は、如何なる方法で測定してもよいが、疎水化後の重量増加分から、疎水基の分子量をもとに導入量を算出することができる。
(解繊)
これらのセルロース繊維を解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散体に強力なせん断力を印加できる装置を用いることが好ましい。効率よく解繊するには、分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。高圧または超高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体を加圧して高圧にし、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化、分散、解細、粉砕、及び超微細化を行う装置である。高圧ホモジナイザーでの解繊および分散処理の前に、必要に応じて高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて予備処理を施すこともできる。
分散媒中の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1〜10質量%程度が好ましく、1〜5質量%程度がより好ましい。
固液分離の方法としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、遠心式、真空式、加圧式のタイプの装置を使用することができ、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
乾燥方法としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、スプレイドライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、及び真空乾燥を挙げることができる。乾燥装置は、特に限定されないが、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、ベルト乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置、回分式の箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。
(再分散)
本発明により得られた乾燥固形物は、溶媒に再分散させることによって、セルロースナノファイバー分散体とすることができる。乾燥固形物を溶媒に再分散する装置は特に限定されないが、ホモミキサーなどの分散機で分散することができる。
分散媒は、水または有機溶媒、あるいはこれらの混合物を適宜選択できる。有機溶媒の種類は問わないが、例えばセルロース中の水酸基との親和性が高い極性溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を挙げることができる。上記分散媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。例えば、有機溶媒を2種類以上混合する形態、水と有機溶媒を含む形態、水のみの形態などを適宜選択することができる。水のみを分散媒として用いること(すなわち、水100%)は、取扱いの容易性から好ましい。水と有機溶媒とを混合する場合の混合割合は特に限定されず、使用する有機溶媒の種類に応じて適宜混合割合を調整すればよい。
分散体におけるアニオン変性セルロース濃度は、解繊時の操業性を考慮すると0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
本発明の乾燥固形物を再分散して得られるセルロース繊維分散液は、当業者の公知な成形方法又は公知な材料や液状物と混合又は複合又は含侵等の手段により、インキ、塗料への添加剤、増粘剤、樹脂複合化、ゴム複合化、フィルム、化粧品、粘着剤、オイルのレオコン剤、セパレータ、多孔質膜、洗浄剤、フィルター、離形剤、有機ELなどの用途に使用することができる。
また、本発明の変性セルロースナノファイバー及びその乾燥固形物は、当業者の公知な成形方法又は公知な材料や液状物と混合又は複合又は含侵等の手段により、自動車部材、住宅建材、内装材、半導体封止材、プリント基板、フィルター、紙おむつ用消臭シート、透明シート、食品包装容器、化粧品、食品、塗料(バリアフィルム)等などの用途に使用することができる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
なお、セルロース繊維のカルボキシル基含有量と、アミン化合物又はカルボン酸による修飾度、並びに分散液の粘度及び透明度は以下のようにして測定した。
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維のカルボキシル基含有量は以下の方法で測定した。セルロース繊維の0.5重量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:カルボキシル基量〔mmol/gセルロース繊維〕=a〔ml〕×0.05/セルロース繊維質量〔g〕。
<アミン化合物又はカルボン酸による修飾度の測定>
アミンまたはカルボン酸による反応前のTEMPO酸化CNF分散液を105℃度条件下で3時間乾燥させ、固形物の重量〔g〕を測定した。その後、疎水化反応を行い、メンブレンフィルターを用いて反応液からCNFを分離し、105℃で3時間乾燥させ、固形物(CNF)の重量〔g〕を測定した。下記式により、疎水化後の重量増加分〔g〕から、疎水基の分子量をもとに導入量〔mol〕を算出し、この導入量と反応前のCNF重量から、疎水基の導入量〔mmol/gセルロース繊維〕を算出した:
疎水基の導入量〔mmol/gセルロース繊維〕=((反応後のCNFの重量〔g〕−反応前のCNFの重量〔g〕)/(疎水基の分子量−18))/反応前のCNFの重量〔g〕
<分散液の粘度及び透明度>
分散液の粘度は、TV−10型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した固形分濃度1.0%のセルロースナノファイバートルエン分散液のB型粘度(60rpm、20℃)を示す。分散液の透明度は、UV−VIS分光光度計 UV−265FS(島津製作所製、光路長10mm)を用いて測定した固形分濃度1.0%のセルロースナノファイバートルエン分散液の透明度(660nm光の透過率)を示す。
製造例1
<カルボキシル化/カルボキシル基含有パルプ(酸型)の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後、塩酸10%水溶液を添加し、pH3に低下させ、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース、カルボキシル化パルプ、TEMPO酸化パルプ)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
実施例1
本実施例においては、工程(a)(カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊)を例証する。
22.25wt%の製造例1で得たTEMPO酸化パルプ5gを、THF1000mlに懸濁し、TEMPO酸化パルプのTHF分散品を得た。このTHF分散TEMPO酸化パルプにドデシルアミン(東京化成工業株式会社製)を50mmol、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(脱水縮合剤)を50mmol加え50℃で終夜反応させた。反応終了後、塩酸10%水溶液を加え、pH3に調整し、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、メタノール、次いでTHFで洗浄し、カルボキシ基をアミンにて修飾したTEMPO酸化アミド化パルプを得た。
次に、得られたTEMPO酸化アミド化パルプをTHF500mlに懸濁し、ラウリン酸(東京化成工業株式会社製)を50mmol、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)(脱水縮合剤)を50mmol、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(触媒)を10mmol加え、50℃で終夜反応させた。反応終了後、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、メタノール、次いでトルエンで洗浄し、水酸基をカルボン酸にて修飾したTEMPO酸化アミド化エステル化パルプを得た。
ここで、このTEMPO酸化アミド化エステル化パルプにトルエンを加え、修飾基の重量分を除したセルロース繊維固形分濃度が1%になるように、トルエン分散液を調整し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで10分間混合した。続いて、このトルエン分散液を超高圧ホモジナイザー(処理圧140MPa)で3回処理することにより、セルロースナノファイバートルエン分散液を得た。このセルロースナノファイバー分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(1)A)。
次に、このTEMPO酸化アミド化エステル化パルプを70℃の温度下に2時間静置して乾燥させ、乾燥固形物を得た。続いて、修飾基の重量分を除したセルロース繊維固形分濃度が1%になるように、トルエン分散液を調整し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで10分間混合した。続いて、このトルエン分散液を超高圧ホモジナイザー(処理圧140MPa)で3回処理することにより、セルロースナノファイバーのトルエン分散液を得た。このセルロースナノファイバー分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(1)B)。
実施例2[N1]
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにヘキサデシルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにステアリン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(2)A、B)。
得られた[N2]セルロースナノファイバー分散液を70℃の温度下に2時間静置して乾燥させた。得られた乾燥固形物に対し、固形分量がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで30分間混合・分散(再分散)して、トルエンを分散媒とする疎水化されたセルロースナノファイバー再分散液を得た。このセルロースナノファイバー再分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(2)C)。
実施例3[N3]
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにオレイルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにオレイン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(3)A、B)。
得られた修飾セルロースナノファイバーのFTIRチャートを図2に示す。このチャートの1650、1550 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化パルプのカルボキシ基がアミド結合で修飾されていることがわかる。また、このチャートの1750 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化アミド化パルプの水酸基がエステル結合で修飾されていることがわかる。
得られた[N4]セルロースナノファイバー分散液を70℃の温度下に2時間静置して乾燥させ、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。この乾燥固形物に対して、固形分量がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで30分間混合・分散(再分散)して、トルエンを分散媒とする疎水化されたセルロースナノファイバー再分散液を得た。このセルロースナノファイバー再分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(3)C)。
比較例1
ステアリン酸を用いたエステル化を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。
ここで、乾燥前のTEMPO酸化アミド化パルプから調整したセルロースナノファイバー分散液は、沈殿物は見られなかったが微小な固形物が分散している分散状態であった(図1(4)A)。同様に乾燥後のTEMPO酸化アミド化パルプからセルロースナノファイバー分散液の製造を試みたが、底に固形物が沈殿していると共に、微小な固形物が分散しており(図1(4)B)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
次に、得られた乾燥固形物について、実施例2と同様に再分散を試みたが、底に固形物が沈殿しており(図1(4)C)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
比較例2
ヘキサデシルアミンを用いたアミド化を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。
ここで、乾燥前のTEMPO酸化エステル化パルプから調整したセルロースナノファイバー分散液は、沈殿物は見られなかったが微小な固形物が分散している分散状態であった((図1(5)A)。同様に乾燥後のTEMPO酸化アミド化エステル化パルプからセルロースナノファイバー分散液の製造を試みたが、底に固形物が沈殿していると共に、微小な固形物が分散しており(図1(5)B)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
次に、得られた乾燥固形物について、実施例2と同様に再分散を試みたが、底に固形物が沈殿しており(図1(5)C)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2020164642
実施例2
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにヘキサデシルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにステアリン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(2)A、B)。
得られたセルロースナノファイバー分散液を70℃の温度下に2時間静置して乾燥させた。得られた乾燥固形物に対し、固形分量がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで30分間混合・分散(再分散)して、トルエンを分散媒とする疎水化されたセルロースナノファイバー再分散液を得た。このセルロースナノファイバー再分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(2)C)。
実施例3
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにオレイルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにオレイン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(3)A、B)。
得られた修飾セルロースナノファイバーのFTIRチャートを図2に示す。このチャートの1650、1550 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化パルプのカルボキシ基がアミド結合で修飾されていることがわかる。また、このチャートの1750 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化アミド化パルプの水酸基がエステル結合で修飾されていることがわかる。
得られたセルロースナノファイバー分散液を70℃の温度下に2時間静置して乾燥させ、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。この乾燥固形物に対して、固形分量がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで30分間混合・分散(再分散)して、トルエンを分散媒とする疎水化されたセルロースナノファイバー再分散液を得た。このセルロースナノファイバー再分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(3)C)。


Claims (11)

  1. カルボキシル基を含有する変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合し、更に、該変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合してなる変性セルロース繊維であって、該アミン化合物及び該カルボン酸がそれぞれ炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する、変性セルロース繊維。
  2. 前記変性セルロース繊維のカルボキシル基含有量が0.05〜6mmol/gであり、前記アミン化合物による修飾度が0.1〜5.0mmol/gであり、前記カルボン酸による修飾度が0.1〜8.0mmol/gである、請求項1に記載の変性セルロース繊維。
  3. 前記アミン化合物が第1級〜3級アミン化合物又は第4級アンモニウム化合物である請求項1又は2に記載の変性セルロース繊維。
  4. 前記カルボン酸がRCOOH(式中、Rは炭素数が5〜30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を表す。)で表される請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性セルロース繊維。
  5. 前記変性セルロース繊維が平均繊維径が1〜500nmの変性セルロースナノファイバーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性セルロース繊維。
  6. 前記変性セルロース繊維が、酸化セルロースナノファイバー又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性セルロース繊維。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性セルロース繊維を乾燥させて得られる乾燥固形物。
  8. 請求項7に記載の乾燥固形物の製造方法であって、
    (A)酸型のカルボキシル基を有する変性セルロース繊維の水溶液を用意する段階、
    (B)アミン化合物を用いて該変性セルロース繊維のカルボキシル基にアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させる段階、
    (C)該変性セルロース繊維の水酸基にカルボン酸がエステル結合させる段階、及び
    (D)その後、得られた変性セルロース繊維を乾燥して乾燥固形物を得る段階、
    から成る製造方法。
  9. 更に、(A)段階と(B)段階との間に、又は(C)段階と(D)段階との間に、前記変性セルロースを解繊する段階を含む請求項8に記載の製造方法。
  10. 請求項8又は9に記載の方法により得られた乾燥固形物を溶媒に再分散させる段階を含む、カルボキシル基含有変性セルロースナノファイバーの分散体の製造方法。
  11. 前記変性セルロース繊維が平均繊維径が1〜500nmの変性セルロースナノファイバーである請求項8〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
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