JP7336783B2 - カルボキシル基含有変性セルロース繊維、その乾燥固形物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、このような微細化された変性セルロース繊維は親水性であるため、疎水性の溶媒や疎水性の高分子に分散させることが困難であったため、このような用途に用いるために、微細化されて親水性のセルロース繊維を疎水化する技術及び再分散を容易にする技術が開発されてきた(特許文献2~5等)。
また、この湿潤状態のままのCNFでは、保存スペースの確保、保存及び輸送コストの増大等、種々の問題点があるため、CNFを乾燥し、乾燥後に再分散を容易にする方法(特許文献3)などが提案されている。
本願発明は、乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化された変性セルロースナノファイバー、その乾燥固形物及びその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本明細書中「再分散」とは、解繊したセルロースナノファイバーを乾燥して得た乾燥固形物を溶媒に分散させたものをいう。また、未解繊のセルロースパルプを乾燥して得た乾燥固形物を溶媒に分散させたものは「乾燥後」の分散液と呼び、この未解繊のセルロースパルプを乾燥前に溶媒に分散させたものを「乾燥前」の分散液と呼ぶ。
その結果、本発明者らは、変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基に疎水基を有するアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させ、更に、変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基に疎水基を有するカルボン酸をエステル結合させることにより、この修飾された変性セルロースナノファイバーが乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明は、この変性セルロース繊維を解繊することにより得られる平均繊維径は1~500nmの変性セルロースナノファイバーである。
更に、本発明は、この変性セルロース繊維を乾燥させて得られる乾燥固形物である。
また、本発明は、この乾燥固形物の製造方法であって、(A)酸型のカルボキシル基を有する変性セルロース繊維の水溶液を用意する段階、(B)アミン化合物を用いて該変性セルロース繊維のカルボキシル基にアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させる段階、(C)該変性セルロース繊維の水酸基にカルボン酸がエステル結合させる段階、及び(D)その後、得られた変性セルロース繊維を乾燥して乾燥固形物を得る段階、から成る製造方法である。
本発明のセルロース繊維の平均繊維径は1~500nm、好ましくは1~100nm、より好ましくは1~10nmであり、その少なくとも一部のセルロース構成単位(化1(a))のC6位にカルボキシル基を有する。このセルロースの変性として、化1(b)はカルボキシル化されたセルロース、化1(c)はカルボキシメチル化されたセルロースを示す。
アニオン変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものを挙げることができ、それらのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
本発明において、カルボキシル化セルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されるものではないが、カルボキシル化の際には、カルボキシル化セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が好ましくは0.05~6mmol/g、より好ましくは0.6~3.0mmol/g、更に好ましくは1.0mmol/g~2.0mmol/gになるように調整する。
カルボキシメチル化方法の一例としては、セルロースを発底原料にし、マーセル化剤と混合してマーセル化処理を行った後、エーテル化剤を用いてエーテル化処理を行うことによりアニオン変性セルロースを得ることができる。溶媒としては水単独、又は3~20重量倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60~95重量%である。マーセル化剤としては発底原料のグルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。また、マーセル化剤は5~70重量%、より好ましくは30~60重量%の水溶液を用いる。エーテル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル及びモノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。発底原料のグルコース残基当たり0.05~10.0倍モルのエーテル化剤を、5~70重量%、好ましくは30~60重量%のエーテル化剤の水溶液を用いる。この際、発底原料であるセルロースの持込水分から最終的に投入するすべての薬品の水溶液の水を合算した際の、セルロース絶乾固形分に対するセルロース絶乾固形分と水の合計重量(液比)が1.0~4.0となるように調節する。
このカルボキシメチル化セルロース繊維のカルボキシル基含有量は好ましくは0.05~6mmol/g、より好ましくは0.1~3.0mmol/g、更に好ましくは0.1~2.0mmol/gである。
(1)アミン化合物による修飾:
即ち、変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合する。このカルボキシル基は、変性セルロースナノファイバーのピラノース環のC6位のカルボキシル基であってもよいが、セルロース構成単位の二級水酸基がカルボキシメチル化されて生じるカルボキシル基であってもよい。
(2)カルボン酸による修飾:
即ち、変性後のセルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合する。
本発明で用いるこれらアミン化合物及び該カルボン酸は、それぞれ独立に、疎水基として、炭素数が5~30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。
これら(1)および(2)の修飾工程の順序に特に制限はないが、(1)アミン化合物による修飾を先に行う方が、パルプが膨潤しやすく、修飾反応が均一に進行しやすい特徴を持ち、さらにアミン化合物による修飾は含水状態でも十分に反応が進行するため、溶媒置換が不要である点から、反応の均一化と効率化が優れるという理由から好ましい。
(a)カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊
(b)カルボキシル化→解繊→疎水化→乾燥→再分散
(c)カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散
(d)カルボキシル化→解繊→疎水化→再分散→乾燥→再分散
(a)の工程は、未解繊のセルロースパルプを乾燥して乾燥固形物を得る点に特徴があり、(b)~(d)の工程は、解繊したセルロースパルプを乾燥して乾燥固形物を得る点に特徴がある。
(a)の工程(カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊)の具体例については後述の実施例1、(c)の工程(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)の具体例については後述の実施例2及び3に示す。
(1)アミン化合物による修飾:
用いることのできるアミン化合物は、炭素数が5~30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。このアミン化合物としては、例えば、第1級~3級アミン化合物や第4級アンモニウム化合物が挙げられ、このアミン化合物は第1級~3級アミン化合物であることが好ましい。
この第1~3級アミン化合物としては、第1~3級のアミン構造を有する直鎖又は分岐のアルキルアミン化合物が好ましい。この第1~3級アルキルアミン化合物としては、例えば、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ココナットアミン等が挙げられる。
これらアミン化合物は、変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基にアミド結合してもよいし、イオン結合してもよい。
この修飾割合(修飾度)は、如何なる方法で測定してもよいが、疎水化後の重量増加分から、疎水基の分子量をもとに導入量を算出することができる。
このカルボン酸は、炭素数が5~30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を有する。このカルボン酸は、例えば、RCOOH(式中、Rは炭素数が5~30の脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素基を表す。)で表される、
変性セルロース繊維の少なくとも一部の二級水酸基の少なくとも一部がこのカルボン酸とエステル結合する。
この炭化水素基としては脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられるが、好ましくは脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。その炭素数は好ましくは1~30、より好ましくは7~18、更に好ましくは13~18である。
この脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐の、好ましくは直鎖の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基である。
この芳香族炭化水素基としては、アリール基及びアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。
これらの基には、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基などの置換基を有してもよいが、置換基としては、短鎖アルキル基や短鎖アリール基等の疎水性の置換基が好ましい。
この修飾割合(修飾度)は、如何なる方法で測定してもよいが、疎水化後の重量増加分から、疎水基の分子量をもとに導入量を算出することができる。
これらのセルロース繊維を解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散体に強力なせん断力を印加できる装置を用いることが好ましい。効率よく解繊するには、分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。高圧または超高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体を加圧して高圧にし、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化、分散、解細、粉砕、及び超微細化を行う装置である。高圧ホモジナイザーでの解繊および分散処理の前に、必要に応じて高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて予備処理を施すこともできる。
分散媒中の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1~10質量%程度が好ましく、1~5質量%程度がより好ましい。
本発明により得られた乾燥固形物は、溶媒に再分散させることによって、セルロースナノファイバー分散体とすることができる。乾燥固形物を溶媒に再分散する装置は特に限定されないが、ホモミキサーなどの分散機で分散することができる。
分散体におけるアニオン変性セルロース濃度は、解繊時の操業性を考慮すると0.01質量%~10質量%であることが好ましい。
また、本発明の変性セルロースナノファイバー及びその乾燥固形物は、当業者の公知な成形方法又は公知な材料や液状物と混合又は複合又は含侵等の手段により、自動車部材、住宅建材、内装材、半導体封止材、プリント基板、フィルター、紙おむつ用消臭シート、透明シート、食品包装容器、化粧品、食品、塗料(バリアフィルム)等などの用途に使用することができる。
なお、セルロース繊維のカルボキシル基含有量と、アミン化合物又はカルボン酸による修飾度、並びに分散液の粘度及び透明度は以下のようにして測定した。
セルロース繊維のカルボキシル基含有量は以下の方法で測定した。セルロース繊維の0.5重量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:カルボキシル基量〔mmol/gセルロース繊維〕=a〔ml〕×0.05/セルロース繊維質量〔g〕。
アミンまたはカルボン酸による反応前のTEMPO酸化CNF分散液を105℃度条件下で3時間乾燥させ、固形物の重量〔g〕を測定した。その後、疎水化反応を行い、メンブレンフィルターを用いて反応液からCNFを分離し、105℃で3時間乾燥させ、固形物(CNF)の重量〔g〕を測定した。下記式により、疎水化後の重量増加分〔g〕から、疎水基の分子量をもとに導入量〔mol〕を算出し、この導入量と反応前のCNF重量から、疎水基の導入量〔mmol/gセルロース繊維〕を算出した:
疎水基の導入量〔mmol/gセルロース繊維〕=((反応後のCNFの重量〔g〕-反応前のCNFの重量〔g〕)/(疎水基の分子量-18))/反応前のCNFの重量〔g〕
分散液の粘度は、TV-10型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した固形分濃度1.0%のセルロースナノファイバートルエン分散液のB型粘度(60rpm、20℃)を示す。分散液の透明度は、UV-VIS分光光度計 UV-265FS(島津製作所製、光路長10mm)を用いて測定した固形分濃度1.0%のセルロースナノファイバートルエン分散液の透明度(660nm光の透過率)を示す。
<カルボキシル化/カルボキシル基含有パルプ(酸型)の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後、塩酸10%水溶液を添加し、pH3に低下させ、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース、カルボキシル化パルプ、TEMPO酸化パルプ)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
本実施例においては、工程(a)(カルボキシル化→疎水化→乾燥→解繊)を例証する。
22.25wt%の製造例1で得たTEMPO酸化パルプ5gを、THF1000mlに懸濁し、TEMPO酸化パルプのTHF分散品を得た。このTHF分散TEMPO酸化パルプにドデシルアミン(東京化成工業株式会社製)を50mmol、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(脱水縮合剤)を50mmol加え50℃で終夜反応させた。反応終了後、塩酸10%水溶液を加え、pH3に調整し、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、メタノール、次いでTHFで洗浄し、カルボキシ基をアミンにて修飾したTEMPO酸化アミド化パルプを得た。
次に、得られたTEMPO酸化アミド化パルプをTHF500mlに懸濁し、ラウリン酸(東京化成工業株式会社製)を50mmol、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)(脱水縮合剤)を50mmol、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(触媒)を10mmol加え、50℃で終夜反応させた。反応終了後、混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、メタノール、次いでトルエンで洗浄し、水酸基をカルボン酸にて修飾したTEMPO酸化アミド化エステル化パルプを得た。
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにヘキサデシルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにステアリン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(2)A、B)。
得られたセルロースナノファイバー分散液を70℃の温度下に2時間静置して乾燥させた。得られた乾燥固形物に対し、固形分量がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて3000rpmで30分間混合・分散(再分散)して、トルエンを分散媒とする疎水化されたセルロースナノファイバー再分散液を得た。このセルロースナノファイバー再分散液は、十分に透明性があり、沈殿物が生じていない良好な分散状態であった(図1(2)C)。
本実施例においては、工程(c)(カルボキシル化→疎水化→解繊→乾燥→再分散)を例証した。
実施例1において、ドデシルアミンのかわりにオレイルアミン(東京化成工業株式会社)、ラウリン酸のかわりにオレイン酸(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た(図1(3)A、B)。
得られた修飾セルロースナノファイバーのFTIRチャートを図2に示す。このチャートの1650、1550 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化パルプのカルボキシ基がアミド結合で修飾されていることがわかる。また、このチャートの1750 cm-1にピークが存在することから、TEMPO酸化アミド化パルプの水酸基がエステル結合で修飾されていることがわかる。
ステアリン酸を用いたエステル化を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。
ここで、乾燥前のTEMPO酸化アミド化パルプから調整したセルロースナノファイバー分散液は、沈殿物は見られなかったが微小な固形物が分散している分散状態であった(図1(4)A)。同様に乾燥後のTEMPO酸化アミド化パルプからセルロースナノファイバー分散液の製造を試みたが、底に固形物が沈殿していると共に、微小な固形物が分散しており(図1(4)B)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
次に、得られた乾燥固形物について、実施例2と同様に再分散を試みたが、底に固形物が沈殿しており(図1(4)C)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
ヘキサデシルアミンを用いたアミド化を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た。
ここで、乾燥前のTEMPO酸化エステル化パルプから調整したセルロースナノファイバー分散液は、沈殿物は見られなかったが微小な固形物が分散している分散状態であった((図1(5)A)。同様に乾燥後のTEMPO酸化アミド化エステル化パルプからセルロースナノファイバー分散液の製造を試みたが、底に固形物が沈殿していると共に、微小な固形物が分散しており(図1(5)B)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
次に、得られた乾燥固形物について、実施例2と同様に再分散を試みたが、底に固形物が沈殿しており(図1(5)C)、B型粘度及び透明度を測定することができなかった。
Claims (5)
- 乾燥後に疎水性の溶媒や疎水性の高分子に十分に分散させることができるように疎水化された変性セルロース繊維の乾燥固形物の製造方法であって、
該乾燥固形物が、カルボキシル基を含有する変性セルロース繊維の少なくとも一部のカルボキシル基にアミン化合物がイオン結合又はアミド結合し、更に、該変性セルロース繊維の少なくとも一部の水酸基にカルボン酸がエステル結合してなる変性セルロース繊維を乾燥させて得られる乾燥固形物であり、
該アミン化合物が、第1級~3級アミン化合物又は第4級アンモニウム化合物であって、炭素数が16の直鎖の脂肪族炭化水素基を有し、該カルボン酸が、RCOOH(式中、Rは炭素数が13~18の直鎖の脂肪族炭化水素基を表す。)で表され、
該方法が、
(A)酸型のカルボキシル基を有する変性セルロース繊維の水溶液を用意する段階、
(B)該アミン化合物を用いて該変性セルロース繊維のカルボキシル基にアミン化合物をイオン結合又はアミド結合させる段階、
(C)該変性セルロース繊維の水酸基に該カルボン酸をエステル結合させる段階、及び
(D)その後、得られた変性セルロース繊維を乾燥して乾燥固形物を得る段階、
から成る製造方法。 - 前記変性セルロース繊維のカルボキシル基含有量が0.05~6mmol/gであり、前記アミン化合物による修飾度が0.1~5.0mmol/gであり、前記カルボン酸による修飾度が0.1~8.0mmol/gである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記変性セルロース繊維が平均繊維径が1~500nmの変性セルロースナノファイバーである請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記変性セルロース繊維が、酸化セルロースナノファイバー又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 更に、(A)段階と(B)段階との間に、又は(C)段階と(D)段階との間に、前記変性セルロース繊維を解繊する段階を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
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