本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている様に、エポキシ樹脂とコアシェル構造を有するポリマー微粒子と含有する硬化性樹脂組成物に、炭酸カルシウムなどの無機充填剤を添加する事は可能である。しかし、硬化性樹脂組成物に無機充填剤を多量に添加すると、硬化性樹脂組成物の靭性が更に低下することが課題である。
靱性および耐衝撃性を有するエポキシ樹脂組成物(本発明の一実施形態における硬化性樹脂組成物に相当する。)を用いた接着剤は、車両用構造接着剤などの構造接着剤に好適に使用されている。エポキシ樹脂は脆性的な性質を有している、そのため、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物は接着性が不十分となる傾向があり、接着性の改善が望まれている。車両用構造接着剤の分野では、接着性の中でも特に、ISO11343に記載される耐衝撃剥離接着強さ(耐衝撃剥離接着性とも称される。)が重視されている。
また、構造接着剤は、特許文献4に記載されている様に、構造用接着剤組成物の塗布時の作業性の改良が望まれている。
また、特許文献5〜7に記載されている様に、車両などの製造ラインにおいて硬化性樹脂組成物(接着剤)の被接着対象物への塗布工程と、硬化性樹脂組成物の硬化工程との間に、水洗シャワー工程が存在する場合がある。従来の硬化性樹脂組成物では、水洗シャワー工程中に、シャワー水圧により、未硬化状態の硬化性樹脂組成物の一部が溶解したり、硬化性樹脂組成物の一部が飛散したりして洗い落されたり、また硬化性樹脂組成物が変形したりするなどの問題がある。
水圧による未硬化の硬化性樹脂組成物の飛散および変形を少なくするために、特許文献8などに開示されている様に、従来、硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性を改良する検討がなされている。
本発明者は硬化性樹脂組成物の粘度について検討し、以下のように推察した。すなわち、シャワー水圧により硬化性樹脂組成物が変形する現象は、静止状態の硬化性樹脂組成物の変形であり、低せん断速度域での硬化性樹脂組成物の粘度が重要であると考えた。そして、塗布時の高せん断速度域での硬化性樹脂組成物の粘度を低くし、低せん断速度域での硬化性樹脂組成物の粘度を高くする、つまり、硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性を高くすることにより、水洗シャワー工程における硬化性樹脂組成物の飛散および変形抑制と塗布作業性とを両立できるということを、本発明者は独自に見出した。
さらに本発明者は、硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性を高くするためには、無機充填剤の添加が重要であり、無機充填剤の添加量が増えるほど、硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性が高くなることを、独自に見出した。しかしながら上述したように、硬化性樹脂組成物における無機充填剤の添加剤が増えるほど、硬化性樹脂組成物の耐衝撃剥離接着性は低下する。
従来、耐衝撃剥離接着性に優れる硬化物の提供と、粘度のせん断速度依存性に優れる硬化性樹脂組成物の提供とは、それぞれ独立した課題として認識されていた。例えば、特許文献1では、剥離接着性および耐衝撃剥離接着性を課題としており、エポキシ樹脂とコアシェルポリマー微粒子を含む硬化性樹脂組成物に表面処理した重質炭酸カルシウムを添加して得られる組成物が例示されている。しかしながら、硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性は課題とされておらず、粘度のせん断速度依存性を改善する手段は何ら教示されていない。また、特許文献2では、粘度のせん断速度依存性と貯蔵安定性とを両立することを課題としており、エポキシ樹脂とコアシェルポリマー微粒子とを含む硬化性樹脂組成物に膠質炭酸カルシウムを添加する技術が開示されている。しかしながら、衝撃剥離接着性は課題とされておらず、耐衝撃剥離接着性を改善する手段は何ら教示されていない。
そこで、本発明者は、粘度のせん断速度依存性に優れ、さらに、耐衝撃剥離接着性に優れる硬化物を提供し得る硬化性樹脂組成物を提供するという新たな課題を設定した。
本発明者は、前記課題を解決するため、エポキシ樹脂とポリマー微粒子とを含む硬化性樹脂組成物に対して添加する、炭酸カルシウムの種類および炭酸カルシウムの表面処理剤の種類について鋭意検討し、本発明を完成させた。
〔2.硬化性樹脂組成物〕
以下、本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物について詳述する。
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、並びに、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、ポリマー微粒子(B)1〜100質量部、およびシランカップリング剤で表面処理された膠質炭酸カルシウム(C)10〜150質量部、を含有する。前記ポリマー微粒子(B)は、弾性体と当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部とを有するゴム含有グラフト共重合体を含む。「本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物」、「エポキシ樹脂(A)」、「ポリマー微粒子(B)」および「シランカップリング剤で表面処理された膠質炭酸カルシウム(C)」を、以下、それぞれ、「本硬化性樹脂組成物」、「(A)成分」、「(B)成分」および「(C)成分」と称する場合もある。本硬化性樹脂組成物は、当該硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を提供し得る。
本硬化性樹脂組成物は、前記構成を有するため、粘度のせん断速度依存性に優れるものである。本明細書において、粘度のせん断速度依存性は、せん断速度5s−1のときの粘度とせん断速度50s−1のときの粘度との比により評価している。粘度の測定方法は、実施例にて詳述する。
本硬化性樹脂組成物は、前記構成を有するため、耐衝撃剥離接着性に優れる硬化物を提供できるという利点を有する。本明細書において、硬化物の耐衝撃剥離接着性は、23℃および−40℃における動的割裂抵抗力(kN/m)の値により評価している。動的割裂抵抗力(kN/m)の測定方法は実施例にて詳述する。
本硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性が優れる理由は明確ではないが、以下の様に推定している。
本硬化性樹脂組成物に含まれるポリマー微粒子(B)の靱性改良効果により、当該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は靱性および耐衝撃剥離接着性に優れる。しかし、ポリマー微粒子(B)と併用される膠質炭酸カルシウムなどの無機充填材は、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂(A)と無機充填材との界面において剥離によるクラックが生じやすい。そのため、前記クラックの進展により、得られる硬化物の靭性が低下する。本発明の一実施形態の特徴である(C)成分に使用される表面処理剤のシランカップリング剤は、分子中に2個以上の異なった反応基を有する。前記表面処理剤のシランカップリング剤は、少なくとも、無機質材料と化学結合する反応基であるシリル基、および、有機質材料と化学結合する反応基である有機基を有する。本発明の一実施形態に係る(C)成分は、表面処理剤のシランカップリング剤を介して、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂(A)と強く結びつき、その結果、(A)成分と(C)成分との界面におけるクラックの伸展による硬化物の靭性低下が生じ難いと推定される。なお、本発明はかかる理由(推定)に限定されるものではない。
(エポキシ樹脂(A))
本硬化性樹脂組成物は、主成分として、エポキシ樹脂(A)を含むともいえる。本明細書において、「エポキシ樹脂(A)」を「(A)成分」とも称する。
エポキシ樹脂(A)としては、各種のエポキシ樹脂を使用することができる。エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(又はF)型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンジオキシド、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリコールジグリシジルエーテル、脂肪族多塩基酸のジグリシジルエステル、グリセリンのような二価以上の多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、キレート変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物、含アミノグリシジルエーテル樹脂、およびこれら上述のエポキシ樹脂にビスフェノールA(又はF)類または多塩基酸類などを付加反応させて得られるエポキシ化合物などが例示される。エポキシ樹脂(A)としては、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。
前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、前記グリコールジグリシジルエーテル、前記脂肪族多塩基酸のジグリシジルエステル、および前記二価以上の多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の[0015]〜[0017]段落に記載の樹脂を使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、比較的低い粘度を有するエポキシ樹脂である。これらのエポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂などの他のエポキシ樹脂と併用する場合、これらのエポキシ樹脂は、反応性希釈剤として機能し得る。その結果、これらのエポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物の粘度と当該硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の物性とのバランスを改良する事ができる。本硬化性樹脂組成物は、反応性希釈剤として機能し得るエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
エポキシ樹脂に多塩基酸類などを付加反応させて得られるエポキシ化合物としては、例えば、WO2010−098950号公報に記載されているような、トール油脂肪酸の二量体(ダイマー酸)とビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応物が挙げられる。
前記キレート変性エポキシ樹脂としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の[0018]〜[0019]段落に記載の樹脂を使用することができる。
前記ゴム変性エポキシ樹脂としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の[0124]〜[0132]段落に記載の樹脂を使用することができる。
前記ウレタン変性エポキシ樹脂としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の0133]〜[0135]段落に記載の樹脂を使用することができる。
ゴム変性エポキシ樹脂、または、ウレタン変性エポキシ樹脂は、得られる硬化物の靭性、耐衝撃性、せん断接着性および剥離接着性などの性能を更に向上させ得る。
上述したエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、硬化するときの反応性が高く、得られる硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。
上述したエポキシ樹脂は1種類を単独で用いても良く2種以上を併用しても良い。
上述したエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂は、弾性率が高く、かつ耐熱性および接着性に優れる硬化物が得られ、また比較的安価である為好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、上述したエポキシ樹脂の中でも、エポキシ当量が220未満のエポキシ樹脂は、得られる硬化物の弾性率および耐熱性が高い為に好ましい。上述したエポキシ樹脂の中でも、エポキシ当量が90以上210未満のエポキシ樹脂がより好ましく、150以上200未満のエポキシ樹脂が更に好ましい。
特に、エポキシ当量が220未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂は、常温で液体であり、得られる硬化性樹脂組成物の取扱い性が良い為に好ましい。
エポキシ当量が220以上5000未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂を、(A)成分100質量%中に、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下の範囲で添加することが好ましい。前記構成によると、得られる硬化物が耐衝撃性に優れるという利点を有する。
<ポリマー微粒子(B)>
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分100質量部に対して、弾性体と当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部とを有するゴム含有グラフト共重合体を含むポリマー微粒子(B)1〜100質量部を含有する。(B)成分の靱性改良効果により、得られる硬化物は靱性および衝撃剥離接着性に優れる。
得られる硬化性樹脂組成物の取扱いやすさ、および得られる硬化物の靭性改良効果のバランスから、(A)成分100質量部に対して、(B)成分は1〜100質量部が好ましく、3〜70質量部がより好ましく、5〜50質量部が更に好ましく、10〜40質量部が特に好ましい。
ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径(Mv)は特に限定されないが、工業的生産性を考慮すると、10nm〜2000nmが好ましく、30nm〜600nmがより好ましく、50nm〜400nmが更に好ましく、100nm〜200nmが特に好ましい。前記構成によると、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を得ることができるという利点も有する。なお、本明細書において、「ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径(Mv)」とは、特に言及する場合を除き、ポリマー微粒子(B)の1次粒子の体積平均粒子径を意図する。ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径(Mv)は、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置(例えばマイクロトラックUPA150(日機装株式会社製))を用いて測定することができる。ポリマー微粒子(B)の体体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。また、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は、硬化性樹脂組成物の硬化物を切断し、切断面を電子顕微鏡などを用いて撮像し、得られた撮像データ(撮像画像)を用いて測定することもできる。
(B)成分は、本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物中において、その体積平均粒子径の個数分布において、前記体積平均粒子径の0.5倍以上、1倍以下の半値幅を有することが、得られる硬化性樹脂組成物が低粘度で取扱い易い為に好ましい。
上述の特定の粒子径分布を容易に実現する観点から、(B)成分の体積平均粒子径の個数分布において、極大値が2個以上存在することが好ましく、製造時の手間やコストの観点から、極大値が2〜3個存在することがより好ましく、極大値が2個存在することが更に好ましい。(B)成分は、特に、体積平均粒子径が10nm以上150nm未満のポリマー微粒子10〜90質量%と、体積平均粒子径が150nm以上2000nm以下のポリマー微粒子(B)90〜10質量%を含むことが好ましい。
(B)成分は硬化性樹脂組成物中で1次粒子の状態で分散していることが好ましい。本発明の一実施形態における、「ポリマー微粒子(B)が硬化性樹脂組成物中で1次粒子の状態で分散している」(以下、一次分散とも呼ぶ。)とは、ポリマー微粒子(B)同士が実質的に独立して(接触なく)分散していることを意味し、その分散状態は、例えば、硬化性樹脂組成物の一部をメチルエチルケトンのような溶剤に溶解し、これを動的光散乱式の粒子径分布測定装置などにより、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)を測定することにより確認できる。
前記粒子径測定による体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)の値は、特に制限されないが、3以下であることが好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.5以下が特に好ましい。体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)が3以下であれば、良好に分散していると考えられる。逆に、3を超えた粒度分布を有する硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の耐衝撃性や接着性などの物性が低い場合がある。
なお、体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)は、マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を用いて体積平均粒子径(Mv)および個数平均粒子径(Mn)をそれぞれ測定し、MvをMnで除することによって求めることができる。
また、ポリマー微粒子(B)の「安定な分散」とは、ポリマー微粒子(B)が、連続層中で凝集したり、分離したり、沈殿したりすることなく、定常的に通常の条件下にて、長期間に渡って、分散している状態を意味する。また、ポリマー微粒子(B)の連続層中での分布も実質的に変化せず、また、当該連続層(例えば硬化性樹脂組成物)を危険がない範囲で加熱することで連続層の粘度を下げて攪拌したりしても、ポリマー微粒子(B)の「安定な分散」が保持されることが好ましい。
(B)成分は単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
(弾性体)
弾性体は、天然ゴム、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましい。弾性体は、ゴム粒子と言い換えることもできる。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。ポリシロキサンゴム系弾性体は、オルガノシロキサン系ゴムと称される場合もある。
(a)得られる硬化物の靱性改良効果が高い点、および(b)マトリックス樹脂(例えばエポキシ樹脂(A))との親和性が低い為に、得られる硬化性樹脂組成物において弾性体の膨潤による経時での粘度上昇が起こり難い点から、弾性体はジエン系ゴムを含むことが好ましく、ジエン系ゴムであることがより好ましい。弾性体がジエン系ゴムを含む場合、得られる硬化性樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物を提供することもできる。
以下、弾性体がジエン系ゴムを含む場合(場合A)について説明する。前記ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系モノマーに由来する構成単位を含む弾性体である。前記ジエン系モノマーは、共役ジエン系モノマーと言い換えることもできる。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位100質量%中、ジエン系モノマーに由来する構成単位を50〜100質量%、およびジエン系モノマーと共重合体可能なジエン系モノマー以外のビニル系モノマーに由来する構成単位を0〜50質量%、含むものであってもよい。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系モノマーに由来する構成単位よりも少ない量において、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
ジエン系モノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらのジエン系モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジエン系モノマーと共重合体可能なジエン系モノマー以外のビニル系モノマー(以下、ビニル系モノマーA、とも称する。)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマー、などが挙げられる。上述した、ジエン系モノマー以外のビニル系モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述した、ジエン系モノマー以外のビニル系モノマーの中でも、特に好ましくはスチレンである。
弾性体は、ブタジエンゴム、および/または、ブタジエン−スチレンゴムであることが好ましく、ブタジエンゴムであることがより好ましい。前記ブタジエンゴムは、1,3−ブタジエンに由来する構成単位からなるゴムであり、ポリブタジエンゴムとも称される。前記ブタジエン−スチレンゴムは、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体であり、ポリスチレン−ブタジエンとも称される。前記構成によると、(a)得られる硬化物の靱性改良効果がより高いという利点、および(b)マトリックス樹脂(例えばエポキシ樹脂(A))との親和性がより低い為に、得られる硬化性樹脂組成物において弾性体の膨潤による経時での粘度上昇が起こりより難いという利点を有する。また、ブタジエン−スチレンゴムは、屈折率の調整により、得られる硬化物の透明性を高めることができる点においても、より好ましい。
多種のモノマーの組合せにより、幅広い重合体設計が可能なことから、弾性体は(メタ)アクリレート系ゴムを含むことが好ましく、(メタ)アクリレート系ゴムであることがより好ましい。以下、弾性体が(メタ)アクリレート系ゴムを含む場合(場合B)について説明する。
前記(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構成単位を含む弾性体である。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位100質量%中、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構成単位を50〜100質量%、および(メタ)アクリレート系モノマーと共重合体可能な(メタ)アクリレート系モノマー以外のビニル系モノマーに由来する構成単位を0〜50質量%、含むものであってもよい。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構成単位よりも少ない量において、ジエン系モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレートなどのアリルアルキル(メタ)アクリレート類;モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリレート系モノマーの中でも、特に好ましくは、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
(メタ)アクリレート系モノマーと共重合体可能な(メタ)アクリレート系モノマー以外のビニル系モノマー(以下、(メタ)アクリレート系モノマー以外のビニル系モノマー、とも称する。)としては、前記ビニル系モノマーAにおいて列挙したモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマー以外のビニル系モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリレート系モノマー以外のビニル系モノマーの中でも、特に好ましくはスチレンである。
得られる硬化物の耐熱性を低下させることなく、硬化物の低温での耐衝撃性を向上しようとする場合には、弾性体はポリシロキサンゴム系弾性体を含むことが好ましく、ポリシロキサンゴム系弾性体であることがより好ましい。以下、弾性体がポリシロキサンゴム系弾性体を含む場合(場合C)について説明する。
ポリシロキサンゴム系弾性体としては、例えば、(a)ジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ−ジフェニルシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体、(b)側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール1置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体、が挙げられる。これらのポリシロキサン系重合体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのポリシロキサン系重合体の中でも、(a)得られる硬化性樹脂組成物が耐熱性に優れる硬化物を提供することができることから、ジメチルシリルオキシ単位、メチルフェニルシリルオキシ単位、および/またはジメチルシリルオキシ−ジフェニルシリルオキシ単位から構成される重合体が好ましく、(b)容易に入手できて経済的でもあることから、ジメチルシリルオキシ単位から構成される重合体が最も好ましい。
場合Cにおいて、ポリマー微粒子(B)は、ポリマー微粒子(B)に含まれる弾性体100質量%中、ポリシロキサンゴム系弾性体を80質量%以上含有していることが好ましく、90質量%以上含有していることがより好ましい。前記構成によると、得られる硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れる硬化物を提供することができる。
弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体以外の弾性体をさらに含んでいてもよい。ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体以外の弾性体としては、例えば天然ゴムが挙げられる。
(弾性体の架橋構造)
ポリマー微粒子(B)の硬化性樹脂組成物中での分散安定性を保持する観点から、弾性体には、架橋構造が導入されていることが好ましい。弾性体に対する架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができ、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、弾性体の製造において、弾性体を構成し得るモノマーに、多官能性モノマーおよび/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性モノマーを混合し、次いで重合する方法が挙げられる。本明細書において、弾性体など重合体を製造することを、重合体を重合する、とも称する。
また、ポリシロキサンゴム系弾性体に架橋構造を導入する方法としては、次のような方法も挙げられる:(a)ポリシロキサンゴム系弾性体を重合するときに、多官能性のアルコキシシラン化合物を他の材料と共に一部併用する方法、(b)ビニル反応性基、メルカプト基などの反応性基をポリシロキサンゴム系弾性体に導入し、その後ビニル重合性のモノマーまたは有機過酸化物などを添加してラジカル反応させる方法、または、(c)ポリシロキサンゴム系弾性体を重合するときに、多官能性モノマーおよび/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性モノマーを他の材料と共に混合し、次いで重合を行う方法、など。
多官能性モノマーは、同一分子内にラジカル重合性反応基を2以上有するモノマーともいえる。前記ラジカル重合性反応基は、好ましくは炭素−炭素二重結合である。多官能性モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類、および、アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類などのようなエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートなどが例示される。(メタ)アクリル基を2つ有するモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。前記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレートなどが例示される。また、3つの(メタ)アクリレート基を有するモノマーとして、アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが例示される。アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、4つの(メタ)アクリル基を有するモノマーとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、などが例示される。またさらに、5つの(メタ)アクリル基を有するモノマーとして、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが例示される。またさらに、6つの(メタ)アクリル基を有するモノマーとして、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示される。多官能性モノマーとしては、また、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等も挙げられる。これらの中でも、多官能性モノマーとして特に好ましくは、アリルメタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびジビニルベンゼンである。
メルカプト基含有化合物としては、アルキル基置換メルカプタン、アリル基置換メルカプタン、アリール基置換メルカプタン、ヒドロキシ基置換メルカプタン、アルコキシ基置換メルカプタン、シアノ基置換メルカプタン、アミノ基置換メルカプタン、シリル基置換メルカプタン、酸基置換メルカプタン、ハロ基置換メルカプタンおよびアシル基置換メルカプタンなどが挙げられる。アルキル基置換メルカプタンとしては、炭素数1〜20のアルキル基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基置換メルカプタンがより好ましい。アリール基置換メルカプタンとしては、フェニル基置換メルカプタンが好ましい。アルコキシ基置換メルカプタンとしては、炭素数1〜20のアルコキシ基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1〜10のアルコキシ基置換メルカプタンがより好ましい。酸基置換メルカプタンとしては、好ましくは、カルボキシル基を有する炭素数1〜10のアルキル基置換メルカプタン、または、カルボキシル基を有する炭素数1〜12のアリール基置換メルカプタン、である。
(弾性体のゲル含量)
ポリマー微粒子(B)の弾性体は、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物の靱性を高める為に、ゴムとしての性質を有することが好ましい。弾性体は、適切な溶媒に対して膨潤し得るが、実質的には溶解しないものであることが好ましい。弾性体は、使用する熱硬化性樹脂(B)に対して、不要であることが好ましい。
弾性体のゲル含量は、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が靭性に優れることから、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
本明細書においてゲル含量の算出方法は下記の通りである。先ず、ポリマー微粒子(B)を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、ポリマー微粒子(B)の粉体を得る。水性ラテックスからポリマー微粒子(B)の粉体を得る方法としては、具体的には、(i)前記水性ラテックス中のポリマー微粒子(B)を凝集させ、(ii)得られる凝集物を脱水し、(iii)さらに凝集物を乾燥することにより、ポリマー微粒子(B)の粉体を得る方法が挙げられる。次いで、ポリマー微粒子(B)の粉体0.5gをトルエン100gに浸漬する。次に、得られた混合物を、23℃で24時間静置する。その後、得られた混合物を、トルエンに可溶な成分(トルエン可溶分)とトルエンに不溶な成分(トルエン不溶分)とに分離する。得られたトルエン可溶分とトルエン不溶分との質量を測定し、次式よりゲル含量を算出する。
ゲル含量(%)=(トルエン不溶分の質量)/{(トルエン不溶分の質量)+(トルエン可溶分の質量)}×100
(弾性体のガラス転移温度)
弾性体のガラス転移温度(以下、単に「Tg」と称する場合がある)は、得られる硬化物の靱性を高めるために、0℃以下であることが好ましく、−20℃以下がより好ましく、−40℃以下が更に好ましく、−60℃以下であることが特に好ましい。
一方、得られる硬化物の弾性率(剛性)の低下を抑制したい場合には、弾性体のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
弾性体のTgは、弾性体に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、弾性体を製造(重合)するときに使用するモノマーの組成を変化させることにより、得られる弾性体のTgを調整することができる。
ここで、1種類のモノマーのみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃よりも大きいTgを有する単独重合体を提供するモノマーの群を、モノマー群aとする。また、1種類のモノマーのみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃未満のTgを有する単独重合体を提供するモノマーの群を、モノマー群bとする。Tgが0℃よりも大きく、得られる硬化物の剛性低下を抑制し得る弾性体を形成し得るポリマーとしては、
モノマー群aから選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を50〜100質量%(より好ましくは、65〜99質量%)、およびモノマー群bから選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を0〜50質量%(より好ましくは、1〜35質量%)含んで構成されるポリマーが挙げられる。
弾性体のTgが0℃よりも大きい場合も、弾性体には架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造の導入方法としては、前記の方法が挙げられる。
前記モノマー群aに含まれ得るモノマーとしては、以下に限るものではないが、例えば、スチレン、2−ビニルナフタレンなどの無置換ビニル芳香族化合物類;α―メチルスチレンなどのビニル置換芳香族化合物類;3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6―トリメチルスチレンなどの環アルキル化ビニル芳香族化合物類;4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレンなどの環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;2−クロロスチレン、3―クロロスチレンなどの環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;4−アセトキシスチレンなどの環エステル置換ビニル芳香族化合物類;4−ヒトロキシスチレンなどの環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類;ビニルベンゾエート、ビニルシクロヘキサノエートなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのビニルハロゲン化物類;アセナフタレン、インデンなどの芳香族モノマー類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート類;フェニルメタクリレートなどの芳香族メタクリレート;イソボルニルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレートなどのメタクリレート類;メタクリロニトリルなどのメタクリル酸誘導体を含むメタクリルモノマー;イソボルニルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどのある種のアクリル酸エステル;アクリロニトリルなどのアクリル酸誘導体を含むアクリルモノマー、などが挙げられる。さらに、前記モノマー群aに含まれ得るモノマーとしては、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート及び1−アダマンチルメタクリレート、など、単独重合体としたとき120℃以上のTgを有する単独重合体を提供し得るモノマーが挙げられる。また、モノマー群aに含まれ得るモノマーとしては、例えば、WO2014−196607号公報の明細書の、[0084]段落に記載の各種の化合物が挙げられる。これらのモノマーaは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記モノマーbとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーbは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのモノマーbの中でも、特に好ましくは、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートである。
(弾性体の体積平均粒子径)
弾性体の体積平均粒子径は、0.03〜2μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜0.8μmがさらに好ましく、0.1〜0.5μmが特に好ましい。弾性体の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有する弾性体を安定的に得ることができ、(b)2μm以下である場合、得られる硬化物の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。弾性体の体積平均粒子径は、弾性体を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。弾性体の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
(弾性体の割合(比率))
ポリマー微粒子(B)中に占める弾性体の割合は、ポリマー微粒子(B)全体を100質量%として、40〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましく、80〜90質量%が特に好ましい。弾性体の前記割合が、(a)40質量%以上である場合、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物の靱性改良効果が低下する虞がなく、(b)97質量%以下である場合、ポリマー微粒子(B)は凝集しにくいため、硬化性樹脂組成物が高粘度となることがなく、その結果、得られる硬化性樹脂組成物は取り扱い易いものとなり得る。
(弾性体の変形例)
本発明の一実施形態において、弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種類であり、かつ同一の組成の構成単位を有する1種の弾性体のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、弾性体は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種の弾性体からなってもよい。
本発明の一実施形態において、弾性体が複数種の弾性体からなる場合について説明する。この場合、複数種の弾性体のそれぞれを、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nとする。ここで、nは2以上の整数である。弾性体は、それぞれ別々に重合された弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nを混合して得られる混合物を含んでいてもよい。弾性体は、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nをそれぞれ順に重合して得られる重合体を含んでいてもよい。このように、複数の重合体(弾性体)をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称する。複数種の弾性体を多段重合して得られる重合体を、多段重合弾性体とも称する。多段重合弾性体の製造方法については、後に詳述する。
弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nからなる多段重合弾性体について説明する。当該多段重合弾性体において、弾性体nは、弾性体n−1の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体n−1の全体を被覆し得る。当該多段重合弾性体において、弾性体nの一部は弾性体n−1の内側に入り込んでいることもある。
多段重合弾性体において、複数の弾性体のそれぞれが、層構造を有していてもよい。例えば、多段重合弾性体が、弾性体1、弾性体2、および弾性体3からなる場合、弾性体1を最内層とし、弾性体1の外側に弾性体2の層が存在し、さらに弾性体2の層の外側に弾性体3の層が弾性体における最外層として存在する態様も、本発明の一態様である。このように、複数の弾性体のそれぞれが層構造を有する多段重合弾性体は、多層弾性体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、弾性体は、複数種の弾性体の混合物、多段重合弾性体および/または多層弾性体を含んでいてもよい。
(グラフト部)
本明細書において、弾性体に対してグラフト結合された重合体をグラフト部と称する。グラフト部は、種々の役割を担い得る。「種々の役割」とは、例えば、(a)(B)成分と(A)成分との相溶性を向上させること、(b)エポキシ樹脂(A)中におけるポリマー微粒子(B)の分散性を向上させること、および(c)本硬化性樹脂組成物またはその硬化物中においてポリマー微粒子(B)が一次粒子の状態で分散することを可能にすること、などである。
(B)成分の硬化性樹脂組成物中での相溶性および分散性が良好となることから、グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のモノマーに由来する構成単位を含む重合体であることが好ましく、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。
芳香族ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびジビニルベンゼンなどのビニルベンゼン類が挙げられる。
(B)成分のグラフト部の総質量に対するシアノ基の含有量は、特に限定は無いが、得られる硬化性樹脂組成物の粘度の温度依存性および硬化して得られる硬化物の衝撃強度が良好となることから、0.5mmol/g〜15mmol/gが好ましく、1mmol/g〜13mmol/gがより好ましく、2mmol/g〜11mmol/gがさらに好ましく、3mmol/g〜9mmol/gが特に好ましい。(B)成分のグラフト部の総質量に対するシアノ基の含有量が、(a)0.5mmol/g以上である場合、得られる硬化性樹脂組成物の粘度の温度依存性が小さくなるという利点を有し、(b)15mmol/g以下である場合、ポリマー微粒子(B)中に残存するシアノ基含有モノマーの量が増加する虞がなく、その結果、安全性が高いという利点を有する。
ビニルシアンモノマーの具体例としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、(a)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;および(b)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、などが挙げられる。
上述した、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のモノマーは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニルモノマーに由来する構成単位、ビニルシアンモノマーに由来する構成単位および(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を合計で、全構成単位100質量%中に、10〜95質量%含むことが好ましく、30〜92質量%含むことがより好ましく、50〜90質量%含むことがさらに好ましく、60〜87質量%含むことが特に好ましく、70〜85質量%含むことが最も好ましい。
グラフト部は、構成単位として、反応性基含有モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。前記反応性基含有モノマーは、エポキシ基、ヒドロキシ基、オキセタン基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基およびシアン酸エステル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を含有するモノマーであることが好ましく、エポキシ基、ヒドロキシ基およびカルボン酸基からなる群から選択される1種以上の反応性基を含有するモノマーであることがより好ましく、エポキシ基を含有するモノマーであることがさらに好ましい。前記構成によると、硬化性樹脂組成物およびその硬化物中でポリマー微粒子(B)のグラフト部とエポキシ樹脂(A)とを化学結合させることができる。これにより、硬化性樹脂組成物中またはその硬化物中で、ポリマー微粒子(B)を凝集させることなく、ポリマー微粒子(B)の良好な分散状態を維持することができる。すなわち、グラフト部は、エポキシ基を有する重合体であることが好ましい。また、グラフト部は、構成単位として、エポキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む重合体であることが好ましい。
グラフト部は、エポキシ基を有する重合体であり、グラフト部の質量に対するエポキシ基の含有量が0.1mmol/g〜5.0mmol/gであることが好ましく、0.2mmol/g〜3.5mmol/gであることがより好ましく、0.3mmol/g〜3.0mmol/gであることが更に好ましく、0.4mmol/g〜2.5mmol/gであることが特に好ましい。当該構成によると、得られる硬化性樹脂組成物は、粘度の温度依存性および貯蔵安定性に優れるという利点を有する。グラフト部の質量に対するエポキシ基の含有量は、(B)成分のグラフト部の総質量に対するエポキシ基の含有量ともいえる。
エポキシ基を有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルおよびアリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
ヒドロキシ基を有するモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ直鎖アルキル(メタ)アクリレート(特に、ヒドロキシ直鎖C1−6アルキル(メタ)アクリレート);カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート;α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどのヒドロキシ分岐アルキル(メタ)アクリレート;二価カルボン酸(フタル酸など)と二価アルコール(プロピレングリコールなど)とから得られるポリエステルジオール(特に飽和ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
カルボン酸基を有するモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸などのモノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。カルボン酸基を有するモノマーとしては、前記モノカルボン酸が好適に用いられる。
上述した反応性基含有モノマーは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、グラフト部100質量%中、反応性基含有モノマーに由来する構成単位を、0.5〜90質量%含むことが好ましく、1〜50質量%含むことがより好ましく、2〜35質量%含むことがさらに好ましく、3〜20質量%含むことが特に好ましい。グラフト部が、グラフト部100質量%中、反応性基含有モノマーに由来する構成単位を、(a)0.5質量%以上含まれている場合、得られる硬化性樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、(b)90質量%以下含まれている場合、得られる硬化性樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、かつ、当該硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となるという利点を有する。
反応性基含有モノマーに由来する構成単位は、グラフト部に含まれることが好ましく、グラフト部にのみ含まれることがより好ましい。
グラフト部は、構成単位として、多官能性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。グラフト部が、多官能性モノマーに由来する構成単位を含む場合、(a)硬化性樹脂組成物中においてポリマー微粒子(B)の膨潤を防止することができる、(b)硬化性樹脂組成物の粘度が低くなるため、硬化性樹脂組成物の取扱い性が良好となる傾向がある、および(c)熱硬化性樹脂(B)におけるポリマー微粒子(B)の分散性が向上する、などの利点を有する。
グラフト部が多官能性モノマーに由来する構成単位を含まない場合、得られる硬化性樹脂組成物は、硬化物の靱性改良効果および耐衝撃剥離接着性改良効果に優れるという利点を有する。
グラフト部の重合に用いられ得る多官能性モノマーとしては、上述の多官能性モノマーと同じモノマーが挙げられる。それら多官能性モノマーの中でも、グラフト部の重合に好ましく用いられ得る多官能性モノマーとしては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられ、アリルメタクリレートおよびトリアリルイソシアヌレートがより好ましい。これら多官能性モノマーは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、グラフト部100質量%中、多官能性モノマーに由来する構成単位を、0〜20質量%含んでいてもよく、1〜20質量%含むことが好ましく、5〜15質量%含むことがより好ましい。
グラフト部は、構成単位として全構成単位100質量%中に、好ましくは、芳香族ビニルモノマー(特にスチレン)に由来する構成単位0〜50質量%(より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは2〜48質量%)、ビニルシアンモノマー(特にアクリロニトリル)に由来する構成単位0〜50質量%(より好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%)、(メタ)アクリレートモノマー(特にメチルメタクリレート)に由来する構成単位0〜90質量%(より好ましくは5〜85質量%、さらに好ましくは20〜80質量%)、エポキシ基を有するモノマー(特にグリシジルメタクリレート)に由来する構成単位5〜90質量%(より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜30質量%)、合計100質量%含む。当該構成によると、粘度の温度依存性が小さい硬化性樹脂組成物が得られる。
グラフト部の重合において、上述したモノマーは、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト部は、構成単位として、上述したモノマーに由来する構成単位の他に、他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
(グラフト部のグラフト率)
本発明の一実施形態において、ポリマー微粒子(B)は、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を有していてもよい。本明細書において、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を、非グラフト重合体とも称する。当該非グラフト重合体も、本発明の一実施形態に係るポリマー微粒子(B)の一部を構成するものとする。前記非グラフト重合体は、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合していないものともいえる。
本明細書において、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合された重合体、すなわちグラフト部の割合を、グラフト率と称する。グラフト率は、(グラフト部の質量)/(グラフト部の質量)+(非グラフト重合体の質量)×100で表される値、ともいえる。
グラフト部のグラフト率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。グラフト率が70%以上である場合、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎないという利点を有する。
本明細書において、グラフト率の算出方法は下記の通りである。先ず、ポリマー微粒子(B)を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、ポリマー微粒子(B)の粉体を得る。水性ラテックスからポリマー微粒子(B)の粉体を得る方法は、(弾性体のゲル含量)の項にて説明した方法を用いることができる。次いで、ポリマー微粒子(B)の粉体2gをメチルエチルケトン(以下、MEKと称する場合もある。)100gに浸漬する。次に、得られた混合物を、23℃で24時間静置する。その後、得られた混合物を、その後、得られた混合物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。さらに、MEK可溶分をメタノールと混合するなどして、MEK可溶分からメタノール不溶分を分離する。そして、得られたMEK不溶分とメタノール不溶分との質量を測定し、MEK不溶分とメタノール不溶分との合計量に対するMEK不溶分の比率を求めることによってグラフト率を算出する。具体的には次式によりグラフト率を算出する。
グラフト率(%)=(MEK不溶分の質量)/{(MEK不溶分の質量)+(メタノール不溶分の質量)}×100
(グラフト部の変形例)
本発明の一実施形態において、グラフト部は、同一の組成の構成単位を有する1種のグラフト部のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、グラフト部は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種のグラフト部からなってもよい。
本発明の一実施形態において、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合について説明する。この場合、複数種のグラフト部のそれぞれを、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nとする(nは2以上の整数)。グラフト部は、それぞれ別々に重合されたグラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nを混合して得られる混合物を含んでいてもよい。グラフト部は、グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nを多段重合して得られる重合体を含んでいてもよい。複数種のグラフト部を多段重合して得られる重合体を、多段重合グラフト部とも称する。多段重合グラフト部の製造方法については、後に詳述する。
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、これら複数種のグラフト部の全てが弾性体に対してグラフト結合されていなくてもよい。少なくとも1種のグラフト部の少なくとも一部が弾性体に対してグラフト結合されていればよく、その他の種(その他の複数種)のグラフト部は、弾性体に対してグラフト結合されているグラフト部にグラフト結合されていてもよい。また、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない複数種の重合体(非グラフト重合体)を有していてもよい。
グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nからなる多段重合グラフト部について説明する。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nは、グラフト部n−1の少なくとも一部を被覆し得るか、またはグラフト部n−1の全体を被覆し得る。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nの一部はグラフト部n−1の内側に入り込んでいることもある。
多段重合グラフト部において、複数のグラフト部のそれぞれが、層構造を有していてもよい。例えば、多段重合グラフト部が、グラフト部1、グラフト部2、およびグラフト部3からなる場合、グラフト部1をグラフト部における最内層とし、グラフト部1の外側にグラフト部2の層が存在し、さらにグラフト部2の層の外側にグラフト部3の層が最外層として存在する態様も、本発明の一態様である。このように、複数のグラフト部のそれぞれが層構造を有する多段重合グラフト部は、多層グラフト部ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、グラフト部は、複数種のグラフト部の混合物、多段重合グラフト部および/または多層グラフト部を含んでいてもよい。
ポリマー微粒子(B)の製造において弾性体とグラフト部とがこの順で重合される場合、得られるポリマー微粒子(B)において、グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆し得る。弾性体とグラフト部とがこの順で重合されるとは、換言すれば、弾性体とグラフト部とが多段重合されるともいえる。弾性体とグラフト部とを多段重合して得られるポリマー微粒子(B)は、多段重合体ともいえる。
ポリマー微粒子(B)が多段重合体である場合、グラフト部は弾性体の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。ポリマー微粒子(B)が多段重合体である場合、グラフト部の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。
ポリマー微粒子(B)が多段重合体である場合、弾性体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層とも称する。)とし、弾性体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層とも称する。)として存在する態様も、本発明の一態様である。弾性体をコア層とし、グラフト部をシェル層とする構造はコアシェル構造ともいえる。このように、弾性体およびグラフト部が層構造(コアシェル構造)を有するポリマー微粒子(B)は、多層重合体またはコアシェル重合体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、ポリマー微粒子(B)は、多段重合体であってもよく、かつ/または、多層重合体もしくはコアシェル重合体であってもよい。ただし、グラフト部が弾性体に対してグラフト結合している限り、ポリマー微粒子(B)は前記構成に制限されるわけではない。
グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆していることが好ましい。換言すれば、グラフト部の少なくとも一部分は、ポリマー微粒子(B)の最も外側に存在することが好ましい。
(表面架橋重合体)
ポリマー微粒子(B)は、弾性体、および当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体を有することが好ましい。前記構成によると、(a)ポリマー微粒子(B)の製造において、耐ブロッキング性を改善することができるとともに、(b)熱硬化性樹脂(B)におけるポリマー微粒子(B)の分散性がより良好となる。これらの理由としては、特に限定されないが、以下のように推測され得る:表面架橋重合体が弾性体の少なくとも一部を被覆することにより、ポリマー微粒子(B)の弾性体部分の露出が減り、その結果、弾性体同士が引っ付きにくくなるため、ポリマー微粒子(B)の分散性が向上する。
ポリマー微粒子(B)が表面架橋重合体を有する場合、さらに以下の効果も有し得る:(a)本硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる効果、(b)弾性体における架橋密度を上げる効果、および(c)グラフト部のグラフト効率を高める効果。弾性体における架橋密度とは、弾性体全体における架橋構造の数の程度を意味する。
得られる硬化物が靱性および耐衝撃剥離接着性に優れることから、ポリマー微粒子(B)は、表面架橋重合体を含有しないことが好ましい。
表面架橋重合体は、構成単位として、多官能性モノマーに由来する構成単位を30〜100質量%、およびその他のビニル系モノマーに由来する構成単位を0〜70質量%、合計100質量%含むポリマーからなる。
表面架橋重合体の重合に用いられ得る多官能性モノマーとしては、上述の多官能性モノマーと同じモノマーが挙げられる。それら多官能性モノマーの中でも、表面架橋重合体の重合に好ましく用いられ得る多官能性モノマーとしては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられ、アリルメタクリレートおよびトリアリルイソシアヌレートがより好ましい。これら多官能性モノマーは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
ポリマー微粒子(B)は、ゴム含有グラフト共重合体の重合とは独立して重合された表面架橋重合体を含んでいてもよく、または、ゴム含有グラフト共重合体と共に重合された表面架橋重合体を含んでいてもよい。ポリマー微粒子(B)は、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体であってもよい。これらいずれの態様においても、表面架橋重合体は弾性体の少なくとも一部を被覆し得る。
表面架橋重合体は、弾性体の一部とみなすこともできる。ポリマー微粒子(B)が表面架橋重合体を含む場合、グラフト部は、(a)表面架橋重合体以外の弾性体に対してグラフト結合されていてもよく、(b)表面架橋重合体に対してグラフト結合されていてもよく、(c)表面架橋重合体以外の弾性体および表面架橋重合体の両方に対してグラフト結合されていてもよい。ポリマー微粒子(B)が表面架橋重合体を含む場合、上述した弾性体の体積平均粒子径とは、表面架橋重合体を含む弾性体の体積平均粒子径を意図する。
ポリマー微粒子(B)が、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体である場合(場合D)について説明する。場合Dにおいて、表面架橋重合体は、弾性体の一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、表面架橋重合体の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、グラフト部は、表面架橋重合体の一部を被覆し得るか、または表面架橋重合体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、グラフト部の一部は表面架橋重合体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、弾性体、表面架橋重合体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層)とし、弾性体の外側に表面架橋重合体の層が中間層として存在し、表面架橋重合体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層)として存在する態様も、本発明の一態様である。
(ポリマー微粒子(B)の製造方法)
ポリマー微粒子(B)は、弾性体を重合した後、弾性体の存在下にて弾性体に対してグラフト部を構成する重合体をグラフト重合することによって、製造できる。グラフト部を構成する重合体を、グラフト重合体とも称する。
ポリマー微粒子(B)は、公知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができる。具体的には、ポリマー微粒子(B)における弾性体の重合、グラフト部の重合(グラフト重合)、表面架橋重合体の重合は、公知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができる。これらの中でも特に、ポリマー微粒子(B)の組成設計が容易である、工業生産が容易である、および本樹脂組成物の製造に好適に用いられ得るポリマー微粒子(B)の水性ラテックスが容易に得られることから、ポリマー微粒子(B)の製造方法としては、乳化重合が好ましい。以下、ポリマー微粒子(B)に含まれ得る弾性体、グラフト部、および任意の構成である表面架橋重合体の製造方法について、説明する。
(弾性体の製造方法)
弾性体が、ジエン系ゴムおよび(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種以上を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2005/028546号公報に記載の方法を用いることができる。
弾性体が、ポリシロキサンゴム系弾性体を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2006/070664号公報に記載の方法を用いることができる。
弾性体が複数種の弾性体(例えば弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体n)からなる場合の、弾性体の製造方法について説明する。この場合、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されることにより、複数種の弾性体を有する弾性体が製造されてもよい。または、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ順に多段重合され、複数種の弾性体を有する弾性体が製造されてもよい。
弾性体の多段重合について、具体的に説明する。例えば、(1)弾性体1を重合して弾性体1を得る;(2)次いで弾性体1の存在下にて弾性体2を重合して2段弾性体1+2を得る;(3)次いで弾性体1+2の存在下にて弾性体3を重合して3段弾性体1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、弾性体1+2+・・・+(n−1)の存在下にて弾性体nを重合して多段重合弾性体1+2+・・・+nを得る。
(グラフト部の製造方法)
グラフト部は、例えば、グラフト部の形成に用いるモノマーを、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。(a)弾性体、または(b)弾性体および表面架橋重合体を含むポリマー微粒子前駆体、を水性ラテックスとして得た場合には、グラフト部の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。グラフト部は、例えば、WO2005/028546号公報に記載の方法に従って製造することができる。
グラフト部が複数種のグラフト部(例えばグラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部n)からなる場合の、グラフト部の製造方法について説明する。この場合、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されることにより、複数種のグラフト部を有するグラフト部が製造されてもよい。または、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ順に多段重合され、複数種のグラフト部を有するグラフト部が製造されてもよい。
グラフト部の多段重合について、具体的に説明する。例えば、(1)グラフト部1を重合してグラフト部1を得る;(2)次いでグラフト部1の存在下にてグラフト部2を重合して2段グラフト部1+2を得る;(3)次いでグラフト部1+2の存在下にてグラフト部3を重合して3段グラフト部1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、グラフト部1+2+・・・+(n−1)の存在下にてグラフト部nを重合して多段重合グラフト部1+2+・・・+nを得る。
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部を有するグラフト部を重合した後、弾性体にそれらグラフト部をグラフト重合して、ポリマー微粒子(B)を製造してもよい。弾性体の存在下にて、弾性体に対して複数種のグラフト部構成する複数種の重合体を順に多段グラフト重合して、ポリマー微粒子(B)を製造してもよい。
(表面架橋重合体の製造方法)
表面架橋重合体は、表面架橋重合体の形成に用いるモノマーを公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。弾性体を水性ラテックスとして得た場合には、表面架橋重合体の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。
表面架橋重合体は、重合された弾性体を含む水性ラテックスに、表面架橋重合体の形成に用いるモノマーを一度に添加するか、または一定量ずつ連続で添加して追加した後、重合する方法で得られてもよい。このような重合は、1段で行われる表面架橋重合体の重合ともいえる。表面架橋重合体の重合は、2段以上で行ってもよい。すなわち、あらかじめ表面架橋重合体の形成に用いるモノマーが仕込まれた反応器に重合された弾性体を含む水性ラテックスを加えてから重合を実施する方法などを採用することもできる。
(乳化剤)
ポリマー微粒子(B)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、ポリマー微粒子(B)の製造には、公知の乳化剤を用いることができる。乳化重合において用いることができる乳化剤としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の、[0073]段落に記載の各種の乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤は、分散剤ともいえる。
ポリマー微粒子(B)の水性ラテックス中の分散安定性に支障を来さない限り、乳化剤(分散剤)の使用量は少なくすることが好ましい。また、乳化剤は、その水溶性が高いほど好ましい。乳化剤の水溶性が高い場合、乳化剤の水洗除去が容易になり、最終的に得られる硬化物に対する乳化剤(残存乳化剤)の悪影響を容易に防止できる。
(開始剤)
ポリマー微粒子(B)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、ポリマー微粒子(B)の製造には、熱分解型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの公知の開始剤を挙げることができる。
ポリマー微粒子(B)の製造には、レドックス型開始剤を使用することもできる。前記レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などと、を併用した開始剤である。前記有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよびt−ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
レドックス型開始剤を用いる場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになる。そのため、レドックス型開始剤を用いることが好ましい。レドックス型開始剤の中でも、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドおよびt−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、並びに、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩およびキレート剤などの使用量は、公知の範囲で用いることができる。
弾性体、グラフト部または表面架橋重合体に架橋構造を導入する目的で、弾性体、グラフト部または表面架橋重合体の重合に多官能性モノマーを使用する場合、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。連鎖移動剤を使用することにより、得られる弾性体、グラフト部もしくは表面架橋重合体の分子量および/または架橋度を容易に調節することができる。
ポリマー微粒子(B)の製造には、上述した成分に加えて、さらに界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の種類および使用量は、公知の範囲である。
ポリマー微粒子(B)の製造において、重合における重合温度、圧力および脱酸素などの条件は、公知の範囲のものが適用することができる。
(シランカップリング剤で表面処理した膠質炭酸カルシウム(C))
本硬化性樹脂組成物は、(A)成分100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理した膠質炭酸カルシウム(C)10〜150質量部を含有することが必須である。(A)成分100質量部に対して10〜150質量部添加された(C)成分は、(B)成分との組み合わせの効果により、硬化物の耐衝撃剥離接着性を維持しながら、得られる硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性を著しく向上させる。「硬化物の耐衝撃剥離接着性を維持する」とは、(C)成分を含まない硬化性樹脂組成物と比較して、同等の耐衝撃剥離接着性を有する硬化物を提供できることを意図する。
膠質炭酸カルシウムは、一般に、生石灰に水を加えてできた石灰乳に、炭酸ガスを反応させて製造され得る。膠質炭酸カルシウムは、均一な粒子の炭酸カルシウムであり、「沈降炭酸カルシウム」、「コロイド炭酸カルシウム」、あるいは、「合成炭酸カルシウム」と呼ばれる場合もある。
膠質炭酸カルシウムは、(A)成分への分散性の点から、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸などの脂肪酸、または樹脂酸で表面処理したものが一般的である。本発明の一実施形態に係る(C)成分は、シランカップリング剤で表面処理した膠質炭酸カルシウムであることが必須である。硬化性樹脂組成物において、脂肪酸または樹脂酸で表面処理した膠質炭酸カルシウムを使用する場合、得られる硬化物における耐衝撃剥離接着性の低下が顕著である。一方、硬化性樹脂組成物において、本発明の一実施形態に係るシランカップリング剤で表面処理した膠質炭酸カルシウム(C)を使用する場合、硬化性樹脂組成物における優れた粘度のせん断速度依存性と、得られる硬化物における高い耐衝撃剥離接着性とを両立させることができる。
(C)成分の表面処理剤として使用するシランカップリング剤としては、特に制限されない。前記シランカップリング剤の具体例としては、(a)γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン、(イソシアネートメチル)トリエトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジエトキシメチルシランなどのイソシアネート基含有シラン類;(b)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N‘−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのアミノ基含有シラン類;(c)N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのケチミン型シラン類;(d)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;(e)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シラン類;(f)β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシシラン類;(g)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシランなどのビニル型不飽和基含有シラン類;(h)γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン含有シラン類;(i)トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン類、などを挙げることができる。これらの中でも、(A)成分との反応性に優れることから、シランカップリング剤としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類が好ましく、エポキシ基含有シラン類がより好ましい。
(C)成分の製造方法は、特に制限されないが、例えばWO2004/009711号公報、特開2003−112920号公報、特開2005−048102号公報などに記載の方法を用いることができる。
(C)成分の平均粒子径は、特に制限されないが、0.03μm〜0.30μmが好ましく、0.05μm〜0.20μmがより好ましく、0.07μm〜0.15μmが更に好ましい。(C)成分の平均粒子径が小さいほど、得られる硬化性樹脂組成物は、粘度のせん断速度依存性に優れると推察される。(C)成分の平均粒子径は、0.03μm〜0.15μmであってもよく、0.03μm〜0.10μmであってもよく、0.03μm〜0.05μmであってもよい。
前記シランカップリング剤の処理量は、膠質炭酸カルシウム100質量%に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲で処理するのが好ましく、1質量%〜5質量%の範囲で処理するのがより好ましい。前記シランカップリング剤の処理量が、(a)0.1質量%以上である場合、得られる硬化物における耐衝撃剥離接着性の改善効果が十分となり、(b)20質量%以下である場合、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する虞がない。
(C)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、10質量部〜150質量部であり、20質量部〜120質量部が好ましく、30質量部〜100質量部がより好ましく、40質量部〜80質量部が特に好ましい。(C)成分の使用量が、(a)10質量部以上である場合、硬化性樹脂組成物における粘度のせん断速度依存性の付与効果が十分となり、(b)150質量部以下である場合、硬化性樹脂組成物が高粘度となることがないため、取り扱い易いという利点を有する。「使用量」は、「添加量」ともいえ、また硬化性樹脂組成物における「含有量」ともいえる。
(C)成分は1種類を単独で用いても良く2種以上を併用しても良い。
本発明の一実施形態では、本発明の一実施形態に係る効果を低下させない程度に、(C)成分以外の膠質炭酸カルシウム、つまりシランカップリング剤以外で表面処理した膠質炭酸カルシウムおよび/または表面無処理の膠質炭酸カルシウムを少量含むことができる。
(C)成分以外の膠質炭酸カルシウムの含有量は、(C)成分100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が特に好ましく、実質的に(C)成分以外の膠質炭酸カルシウムを含有しないことが最も好ましい。(C)成分以外の膠質炭酸カルシウムが、(C)成分100質量部に対して、100質量部以下である場合、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性が低下する虞がない。
(エポキシ樹脂硬化剤(D))
本発明の一実施形態では、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤(D)を使用することができる。「エポキシ樹脂硬化剤(D)」を、以下、「(D)成分」と称する場合もある。
本硬化性樹脂組成物を仮に一成分型組成物(一液型硬化性樹脂組成物など)として使用する場合、80℃以上、好ましくは140℃以上の温度まで硬化性樹脂組成物を加熱すると硬化性樹脂組成物が急速に硬化するように、(D)成分の種類および量を選択するのが好ましい。逆に、硬化性樹脂組成物が室温(約22℃)および少なくとも50℃までの温度では硬化性樹脂組成物が硬化するとしても非常にゆっくりとなるよう、(D)成分および後述の(E)成分の種類および量を選択するのが好ましい。
(D)成分としては、加熱により活性を示す成分(潜在性エポキシ硬化剤と称する場合もある)が使用できる。このような潜在性エポキシ硬化剤としては、特定のアミン系硬化剤(イミン系硬化剤を含む)などのN含有硬化剤が使用できる。(D)成分としては、例えば、三塩化ホウ素/アミン錯体、三フッ化ホウ素/アミン錯体、ジシアンジアミド、メラミン、ジアリルメラミン、グアナミン(例えば、アセトグアナミンおよびベンゾグアナミン)、アミノトリアゾール(例えば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール)、ヒドラジド(例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セミカルバジド)、シアノアセトアミド、並びに芳香族ポリアミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなど)が挙げられる。(D)成分としては、ジシアンジアミド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを用いることがより好ましく、ジシアンジアミドを用いることが特に好ましい。
前記(D)成分の中でも、潜在性エポキシ硬化剤は、本硬化性樹脂組成物の一液型硬化性樹脂組成物としての使用を可能にするため好ましい。
一方、本硬化性樹脂組成物を二成分型または多成分型組成物として使用する場合、上記以外のアミン系硬化剤(イミン系硬化剤を含む)および/またはメルカプタン系硬化剤(室温硬化性硬化剤と称する場合もある)を、室温程度の比較的低温で活性を示す(D)成分として選択することができる。
このような室温程度の比較的低温で活性を示す(D)成分としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の、[0113]段落に記載の各種の化合物が挙げられる。
ポリエーテル主鎖を含み、1分子あたり平均して、1〜4個(好ましくは1.5〜3個)のアミノ基および/またはイミノ基を有するアミン末端ポリエーテルもまた(D)成分として使用できる。市販されているアミン末端ポリエーテルとしては、Huntsman社製のJeffamine D−230、Jeffamine D−400、Jeffamine D−2000、Jeffamine D−4000、Jeffamine T−5000、などが挙げられる。
更に、共役ジエン系ポリマー主鎖を含み、1分子あたり平均して、1〜4個(より好ましくは1.5〜3個)のアミノ基および/またはイミノ基を有するアミン末端ゴムもまた(D)成分として使用できる。ここで、ゴムの主鎖、すなわち共役ジエン系ポリマー主鎖はポリブタジエンのホモポリマーまたはコポリマーが好ましく、ポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマーがより好ましく、アクリロニトリルモノマー含量が、5〜40質量%(より好ましくは10〜35質量%、更に好ましくは15〜30質量%)であるポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマーが特に好ましい。市販されているアミン末端ゴムとしては、CVC社製のHypro 1300X16 ATBNなどが挙げられる。
室温程度の比較的低温で活性を示す上記アミン系硬化剤の中では、ポリアミドアミン類、アミン末端ポリエーテル、および、アミン末端ゴムがより好ましく、ポリアミドアミン類とアミン末端ポリエーテルとアミン末端ゴムとを併用することが特に好ましい。
また、(D)成分としては、酸無水物類およびフェノール類なども使用できる。酸無水物類およびフェノール類などは、アミン系硬化剤と比較して高温を必要とするが、ポットライフが長く、得られる硬化物は電気的特性、化学的特性、機械的特性などの物性バランスが良好となる。酸無水物類としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の、[0117]段落に記載の各種の化合物が挙げられる。
(D)成分は、1種類を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(D)成分は、硬化性樹脂組成物を硬化させるのに十分な量で使用され得る。典型的には、硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシド基の少なくとも80%を消費するのに十分な量の(D)成分が使用され得る。エポキシド基の消費に必要な量を超える大過剰量の(D)成分は、通常必要ない。
本硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、更に、エポキシ硬化剤(D)1〜80質量部を含有することが好ましく、2〜40質量部を含有することがより好ましく、3〜30質量部を含有することが更に好ましく、5〜20質量部を含有することが特に好ましい。(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、(a)1質量部以上である場合、本硬化性樹脂組成物の硬化性が悪くなる虞が無く、(b)80質量部以下である場合、本硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となり、取り扱い易いという利点を有する。
(硬化促進剤(E))
本発明の一実施形態では、必要に応じて硬化促進剤(E)を使用することができる。「硬化促進剤(E)」を、以下、「(E)成分」と称する場合もある。
(E)成分は、エポキシ基と、硬化剤および硬化性樹脂組成物の他の成分に含まれるエポキシド反応性基と、の反応を促進するための触媒である。
(E)成分としては、例えば、(a)p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(商品名:Monuron)、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(商品名:Fenuron)、3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(商品名:Diuron)、N−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素(商品名:Chlortoluron)、1,1−ジメチルフェニルウレア(商品名:Dyhard)などの尿素類;(b)ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリ(p−ビニルフェノール)マトリックスに組み込まれた2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペリジンなどの三級アミン類;(c)C1−C12アルキレンイミダゾール、N−アリールイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−2−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、エポキシ樹脂とイミダゾールとの付加生成物、などのイミダゾール類;(d)6−カプロラクタムなどが挙げられる。触媒は封入されていてもよく、あるいは、温度を上げた場合にのみ活性となる潜在的な触媒であってもよい。
なお、三級アミン類およびイミダゾール類は、(D)成分のアミン系硬化剤と併用することにより、硬化速度並びに得られる硬化物の物性および耐熱性などを向上させることができる。
(E)成分は、1種類を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、更に、硬化促進剤(E)0.1〜10.0質量部を含有することが好ましく、0.2〜5.0質量部を含有することがより好ましく、0.5〜3.0質量部を含有することがさらに好ましく、0.8〜2.0質量部を含有することが特に好ましい。(E)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、(a)0.1質量部以上である場合、本硬化性樹脂組成物の硬化性が悪くなる虞が無く、(b)10.0質量部以下である場合、本硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となり、取り扱い易いという利点を有する。
((B)成分以外の強化剤)
本発明の一実施形態では、得られる硬化物の靭性、耐衝撃性、せん断接着性および剥離接着性などの性能を更に向上させる目的で、(B)成分以外の強化剤として、ブロックドウレタンを、必要に応じて使用することができる。
ブロックドウレタンは、1種類を単独で用いても良く2種以上を併用しても良い。
ブロックドウレタンとしては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の、[0079]〜[0103]段落に記載の樹脂を使用することができる。
(膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材)
本硬化性樹脂組成物は、膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材を使用することができる。
膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材の具体例としては、乾式シリカ、湿式シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク、ドロマイト、カーボンブラック、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華などが挙げられる。
前記乾式シリカはヒュームドシリカとも称される。前記乾式シリカとしては、表面無処理の親水性ヒュームドシリカ、および、親水性ヒュームドシリカのシラノール基部分にシランおよび/またはシロキサンで化学的に処理することによって製造された疎水性ヒュームドシリカが挙げられる。前記乾式シリカとしては、(A)成分への分散性に優れることから、疎水性ヒュームドシリカが好ましい。
膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材は、表面処理剤により表面処理されていることが好ましい。表面処理により無機充填材の硬化性樹脂組成物への分散性が向上し、その結果、得られる硬化物の各種物性が向上する。
膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材の使用量は、(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、2〜70質量部がより好ましく、5〜40質量部が更に好ましく、7〜20質量部が特に好ましい。
膠質炭酸カルシウム以外の無機充填材は1種類を単独で用いても良く2種以上を併用しても良い。
(酸化カルシウム)
本硬化性樹脂組成物は、酸化カルシウムを使用することができる。
酸化カルシウムは、硬化性樹脂組成物中の水分との反応により硬化性樹脂組成物から水分を除去し、水分の存在により引き起こされる種々の物性上の問題を解決する。酸化カルシウムは、例えば、水分除去による気泡防止剤として機能し、得られる硬化物の接着強度の低下を抑制する。
酸化カルシウムは、表面処理剤により表面処理されることが可能である。表面処理により酸化カルシウムの硬化性樹脂組成物への分散性が向上する。その結果、表面処理された酸化カルシウムを使用する場合、表面処理を施していない酸化カルシウムを使用する場合と比較して、得られる硬化物の接着強度などの物性が向上する。表面処理された酸化カルシウムは、特に、得られる硬化物のT字剥離接着性、耐衝撃剥離接着性を顕著に改善し得る。酸化カルシウムの表面処理にもちられ得る表面処理剤は、特に制限はないが、脂肪酸が好ましい。
酸化カルシウムの使用量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が更に好ましく、1〜2質量部が特に好ましい。酸化カルシウムの使用量が、(a)0.1質量部以上である場合、水分除去効果が十分となり、(b)10質量部以下である場合、得られる硬化物の強度が低くなる虞がない。
酸化カルシウムは1種類を単独で用いても良く2種以上を併用しても良い。
本硬化性樹脂組成物は、酸化カルシウム以外の脱水剤を使用することができる。酸化カルシウム以外の脱水剤としては、例えば、WO2014−196607号公報の明細書の、[0155]段落に記載の各種の化合物が挙げられる。
(その他の配合成分)
本発明の一実施形態では、必要に応じて、その他の配合成分を使用することができる。その他の配合成分としては、ラジカル硬化性樹脂、モノエポキシド、光重合開始剤、有機質充填材、顔料、難燃剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、溶剤、粘着性付与剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、低収縮剤、アゾタイプ化学的発泡剤および熱膨張性マイクロバルーンなどの膨張剤、アラミド系パルプなどの繊維パルプ、並びに、熱可塑性樹脂、などが挙げられる。
ラジカル硬化性樹脂、モノエポキシドおよび光重合開始剤の具体例としては、例えば、WO2016−163491号公報の明細書の、それぞれ、[0143]〜[0144]、[0146]、[0148]の各段落に記載の各種の化合物が挙げられる。顔料、難燃剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、溶剤、粘着性付与剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤およびシランカップリング剤の具体例としては、例えば、WO2014−196607号公報の明細書の、それぞれ、[0124]、[0126]〜[0127]、[0129]〜[0130]、[0132]、[0134]、[0136]、[0139]、[0141]、[0143]、[0147]、[0149]、[0151]、[0153]の各段落に記載の各種の化合物が挙げられる。
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
本硬化性樹脂組成物は、(A)成分を主成分とする硬化性樹脂組成物中に、ポリマー微粒子(B)を含有する組成物であり、好ましくは、ポリマー微粒子(B)が(A)成分中に1次粒子の状態で分散した組成物である。「ポリマー微粒子(B)が(A)成分中に1次粒子の状態で分散した組成物」を、以下、「ポリマー微粒子組成物」と称する場合もある。
このような、ポリマー微粒子組成物を得る方法は、種々の方法が利用できる。当該方法としては、例えば、(a)水性ラテックス状態で得られたポリマー微粒子(B)を(A)成分と接触させた後、混合物から水などの不要な成分を除去する方法、および(b)ポリマー微粒子(B)を一旦有機溶剤に抽出後に、抽出されたポリマー微粒子(B)を(A)成分と混合してから、混合物から有機溶剤を除去する方法、などが挙げられる。当該方法としては、WO2005/028546号公報に記載の方法を利用することが好ましい。
ポリマー微粒子組成物の具体的な製造方法としては、順に、(1)ポリマー微粒子(B)を含有する水性ラテックス(詳細には、乳化重合によってポリマー微粒子(B)を製造した後の反応混合物)を、20℃における水に対する溶解度が5質量%以上40質量%以下の有機溶媒と混合した後、得られる混合物をさらに過剰の水と混合して、ポリマー微粒子(B)を凝集させる第1工程と、(2)凝集させたポリマー微粒子(B)を液相から分離および回収した後、ポリマー微粒子(B)を再度有機溶媒と混合して、ポリマー微粒子(B)が分散している有機溶媒溶液を得る第2工程と、(3)得られる有機溶媒溶液をさらに(A)成分と混合した後、混合物から前記有機溶媒を留去する第3工程と、を含む方法が好ましい。ポリマー微粒子組成物は、当該方法によって調製されることが好ましい。
前記第3工程が容易となる為、(A)成分は、23℃で液状であることが、好ましい。「23℃で液状である」とは、軟化点が23℃以下であることを意味し、23℃で流動性を示すものである。
上記の工程を経て得られた、ポリマー微粒子組成物に、更に(A)成分および(C)成分、並びに任意で(D)成分、(E)成分、および、前記その他配合成分の各成分を、必要により更に添加し、混合する事により、ポリマー微粒子(B)が(A)成分中に1次粒子の状態で分散している本硬化性樹脂組成物が得られる。
一方、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックスを用いて、塩析などの方法によりポリマー微粒子(B)を凝固させた後に、得られる凝固物を乾燥させることにより、粉体状のポリマー微粒子(B)を得ることができる。当該粉体状のポリマー微粒子(B)は、3本ペイントロール、ロールミル、ニーダーなどの高い機械的せん断力を有する分散機を用いて、(A)成分中に再分散することが可能である。このとき、(A)成分および(B)成分の混合物に対して、高温で機械的せん断力を与えることにより、効率良く、(A)成分中に(B)成分を分散させることができる。分散させるときの温度(せん断力を与えるときの温度)は、50〜200℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜150℃が更に好ましく、90〜120℃が特に好ましい。分散させるときの温度が、(a)50℃以上である場合、十分に(B)成分が分散することができ、(b)200℃以下である場合、(A)成分および(B)成分が熱劣化する虞がない。
(粘度のせん断速度依存性)
本硬化性樹脂組成物の粘度のせん断速度依存性は、せん断速度5s−1のときの粘度とせん断速度50s−1のときの粘度との比によって評価され得る。「せん断速度5s−1のときの粘度とせん断速度50s−1のときの粘度との比」は、単に「粘度比(5s−1/50s−1)」と称される場合もある。粘度比(5s−1/50s−1)が大きいほど作業性に優れることを意味する。
本硬化性樹脂組成物の粘度比(5s−1/50s−1)は、1.6以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、1.8以上がより好ましく、1.9以上がさらに好ましく、2.0以上がよりさらに好ましく、2.1以上が特に好ましく、2.2以上が最も好ましい。
〔一液型硬化性樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に記載の一液型硬化性樹脂組成物は、〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む。一液型硬化性樹脂組成物とは、硬化性樹脂組成物を塗布後、加熱および/または光照射により硬化する硬化性樹脂組成物を意図する。換言すれば、一液型硬化性樹脂組成物とは、硬化性樹脂組成物に含まれるすべての配合成分を予め配合した後、硬化させることなく密封保存することができる、硬化性樹脂組成物を意図する。本硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れる為に、一液型硬化性樹脂組成物として使用した場合に、特に有益である。
なお、本硬化性樹脂組成物は、二液型または多液型の硬化性樹脂組成物として使用することもできる。すなわち、(A)成分を主成分とし、さらに(B)成分および必要に応じて(C)成分を含有するA液と、(D)成分および/または(E)成分を含有し、更に必要に応じて(B)成分および/または(C)成分を含有する、A液と別途調製された少なくとも1種のB液と、を調製しておき、該A液と該B液とを使用前に混合して、使用することもできる。ここで、(B)成分および(C)成分は、それぞれA液、B液のどちらか少なくとも一方に含まれていればよく、例えば、A液にのみまたはB液にのみ含まれていてもよく、A液とB液との両方に含まれていてもよい。
本硬化性樹脂組成物は、取扱い性の点から、一液型の硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
〔硬化物〕
本発明の一実施形態に係る硬化物は、〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。本発明の一実施形態に係る硬化物を、単に本硬化物ともいう。本硬化物は、前記構成を有するため、(a)表面美麗であり、(b)高剛性および高弾性率を有し、かつ(c)靱性および接着性(特に耐衝撃剥離接着性)に優れるものである。
本硬化性樹脂組成物では、ポリマー微粒子(B)が一次粒子の状態で均一に分散している。そのため、本硬化性樹脂組成物を硬化することによって、ポリマー微粒子(B)が均一に分散した硬化物を容易に得ることができる。また、本硬化性樹脂組成物では、ポリマー微粒子(B)が膨潤し難く、硬化性樹脂組成物の粘性が低いことから、硬化物を作業性よく得ることができる。
本硬化物は、本硬化性樹脂組成物を用いて、本硬化性樹脂組成物から製造することができる。本硬化物の製造方法、換言すれば本硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(硬化温度)
本硬化性樹脂組成物の硬化温度は、特に限定はない。本硬化性樹脂組成物を一液型硬化性樹脂組成物として使用する場合、硬化温度は、50℃〜250℃が好ましく、80℃〜220℃がより好ましく、100℃〜200℃が更に好ましく、130℃〜180℃が特に好ましい。本硬化性樹脂組成物を二液型硬化性樹脂組成物として使用する場合、硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、10℃〜100℃がより好ましく、15℃〜80℃が更に好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。
(動的割裂抵抗力)
本硬化物の耐衝撃剥離接着性は、23℃および−40℃における動的割裂抵抗力(kN/m)の値により評価され得る。動的割裂抵抗力(kN/m)の値が大きいほど、耐衝撃剥離接着性に優れることを意図する。
本硬化物の23℃における動的割裂抵抗力(kN/m)は、35kN/m以上が好ましく、36kN/m以上がより好ましく、37kN/m以上がさらに好ましく、38kN/m以上がよりさらに好ましく、39kN/m以上が特に好ましく、40kN/m以上が最も好ましい。
本硬化物の−40℃における動的割裂抵抗力(kN/m)は、25kN/m以上が好ましく、26kN/m以上がより好ましく、27kN/m以上がさらに好ましく、28kN/m以上がよりさらに好ましく、29kN/m以上が特に好ましく、30kN/m以上が最も好ましい。
〔構造用接着剤〕
本発明の一実施形態に係る構造用接着剤は、〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む。本発明の一実施形態に係る構造用接着剤を、単に本構造用接着剤ともいう。本構造用接着剤は、前記構成を有するため、接着性に優れるものである。以下〔構造用接着剤〕の項の説明では、「硬化性樹脂組成物」と「構造用接着剤」とを置き換えることができ、硬化性樹脂組成物に関する態様は、構造用接着剤に関する態様ともいえる。
本硬化性樹脂組成物は低温(−20℃程度)から常温のみならず、高温(80℃程度)においても接着性能および柔軟性に優れる。よって本硬化性樹脂組成物は構造用接着剤としてより好適に用いることができる。
本硬化性樹脂組成物は、例えば、自動車および車両(新幹線、電車など)、土木、建築、建材、木工、電気、風力発電、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野などの構造部材の接着剤として使用することができる。本接着剤は、特に、車両用構造接着剤として有用である。自動車関連の用途としては、天井、ドア、シートなどの内装材の接着、および、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモールなどの外装材の接着などを挙げることができる。
本硬化性樹脂組成物は、靭性に優れる為に、線膨張係数の異なる異種基材間の接合に適している。
また、本硬化性樹脂組成物は、航空宇宙用の構成材、特に、外装金属構成材の接合にも好適に使用できる。
本硬化性樹脂組成物を構造用接着剤として利用する方法について、本硬化性樹脂組成物を用いて任意の2つの基板(被接着対象物ともいえる)を接合する方法を挙げて説明する。すなわち、本硬化性樹脂組成物を、一方または両方の基板へ塗布し、接合しようとする基板間に硬化性樹脂組成物が配置されるよう基板同士を接触させた後、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより基板を接合することができる。
(塗布方法)
本硬化性樹脂組成物の被接着対象物への塗布方法は、特に限定されない。本硬化性樹脂組成物は、任意の方法によって塗布可能である。本硬化性樹脂組成物は、室温程度の低温で塗布可能であり、必要に応じて硬化性樹脂組成物を加温した後塗布することも可能である。本硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れる為に、加温して塗布する工法に特に有用である。
本硬化性樹脂組成物は、塗布ロボットを使用してビード状、モノフィラメント状またはスワール(swirl)状に基板上へ押出して塗布することもでき、コーキングガンなどの機械的な塗布方法および他の手動塗布手段を用いることもできる。また、ジェットスプレー法またはストリーミング法を用いて本硬化性樹脂組成物を基板へ塗布することもできる。
なお、本硬化性樹脂組成物の粘度は、特に限定は無く、押出しビード法では、45℃で150〜600Pa・s程度が好ましく、渦巻き(swirl)塗布法では、45℃で100Pa・s程度が好ましく、高速度流動装置を用いた高体積塗布法では、45℃で20〜400Pa・s程度が好ましい。
上述したように、従来の硬化性樹脂組成物では、水洗シャワー工程中に、シャワー水圧により、未硬化状態の硬化性樹脂組成物の一部が溶解したり、硬化性樹脂組成物の一部が飛散したりして洗い落されたり、また硬化性樹脂組成物が変形したりするなどの問題がある。
硬化性樹脂組成物を車両用接着剤として使用する場合、上述したような「水洗シャワー工程での硬化性樹脂組成物の洗い落されにくさ」(以下、「洗い落とされにくさ」と称する)を向上させるには、硬化性樹脂組成物の粘度を高くすることが有効である。本硬化性樹脂組成物は、粘度のせん断速度依存性が高く高粘度になり易い為、優れた「洗い落とされにくさ」を有する。故に、本硬化性樹脂組成物は、構造用接着剤として好適に利用できる。硬化性樹脂組成物が高粘度である場合、硬化性樹脂組成物を加温することにより、硬化性樹脂組成物の粘度を塗布可能な粘度に調整可能である。
また、本硬化性樹脂組成物は、「洗い落とされにくさ」を向上させる為に、WO2005−118734号公報に記載のように、硬化性樹脂組成物の塗布温度付近に結晶融点を有する高分子化合物を、さらに含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の塗布温度付近に結晶融点を有する高分子化合物をさらに含む硬化性樹脂組成物は、(a)塗布温度では粘度は低いため塗布し易く、(b)水洗シャワー工程での温度(例えば塗布温度よりも低い温度)では高粘度となって「洗い落とされにくさ」が向上する。なお一般的に、塗布温度は水洗シャワー温度よりも高い温度である。硬化性樹脂組成物の塗布温度付近に結晶融点を有する前記高分子化合物としては、結晶性または半結晶性ポリエステルポリオールなどの各種のポリエステル樹脂が挙げられる。
更に、「洗い落とされにくさ」を向上させる別の方法としては、WO2006−093949号公報に記載のように、硬化性樹脂組成物を二液型硬化性樹脂組成物とした上で、用いる硬化剤として、アミノ基またはイミノ基を有するアミン系硬化剤などの室温硬化し得る硬化剤(室温硬化性硬化剤)を少量使用し、さらに高温時に活性を示すジシアンジアミドなどの潜在性硬化剤を室温硬化性硬化剤と併用する方法が挙げられる。硬化温度の大きく異なる2種類以上の硬化剤を併用することにより、硬化性樹脂組成物の塗布直後から部分硬化が進行し、水洗シャワー工程の時点では高粘度となるため、硬化性樹脂組成物の「洗い落とされにくさ」が向上する。
本硬化性樹脂組成物を構造接着剤、例えば自動車用接着剤として使用する場合、構造接着剤を自動車部材へ塗布(施工)した後、次いでコーティングを自動車部材へ塗布し、当該コーティングを焼付け・硬化するのと同時に構造接着剤を硬化させるのが工程短縮および簡便化の観点から好ましい。
本構造接着剤の硬化温度は、前記〔硬化物〕の項にて説明した硬化温度が挙げられる。
本構造接着剤は、本硬化性樹脂組成物を用いて、本硬化性樹脂組成物から製造することができる。本構造接着剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
〔積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む。本発明の一実施形態に係る積層体を、単に本積層体ともいう。本積層体は、前記構成を有するため、高い接着強度を示す。
本積層体は、少なくとも2つの部材と本硬化性樹脂組成物とを含んでいてもよい。前記部材は、上述した基板または被接着対象物を意図する。
部材としては、(i)冷間圧延鋼および溶融亜鉛メッキ鋼などの鋼材、(ii)アルミニウムおよび被覆アルミニウムなどのアルミニウム材、並びに(iii)汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、並びに、CFRPおよびGFRPなどの複合材料などの各種のプラスチック系基板、などが挙げられる。
本硬化性樹脂組成物は、接着性に優れる。その為、アルミニウム基材を含む複数の部材の間に、本硬化性樹脂組成物を挟んで張り合わせた後に、前記硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる、前記部材を接合させてなる積層体は、高い接着強度を示す為に好ましい。
本積層体の製造方法は特に限定されない。本積層体は、例えば、複数の部材の一方あるいは、両方に本硬化性樹脂組成物を塗布した後、当該部材間に硬化性樹脂組成物を挟んで張り合わせた後に、硬化性樹脂組成物を硬化することにより、該部材を接合させて得る事ができる。
硬化条件としては、特に制限は無い。例えば、一成分型の硬化性樹脂組成物を使用する場合、80℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上の温度まで硬化性樹脂組成物を加熱することにより、硬化性樹脂組成物を好ましくは30分以内、より好ましくは20分以内に硬化させ、複数の部材を接合させた積層体を得る事ができる。
本積層体の接着層の厚さは、積層体の接着強度の観点から、0.001〜5mmが好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.1〜0.3mmが特に好ましい。なお、積層体の接着層とは、本硬化性樹脂組成物の硬化物の厚さともいえる。
〔用途〕
本硬化性樹脂組成物および当該硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、上述した以外にも、様々な用途に使用することができ、それらの用途は特に限定されない。本硬化性樹脂組成物および当該硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、接着剤、インキバインダー、木材チップバインダー、ゴムチップ用バインダー、フォームチップバインダー、鋳物用バインダー、床材用およびセラミック用の岩盤固結材、塗料、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、ガラス繊維との積層用材料およびプリント配線基板用材料、電子基板、ソルダーレジスト、層間絶縁膜、ビルドアップ材料、FPC用接着剤、ダイボンド材料、アンダーフィル、ACF、ACP、NCF、NCPなどの半導体実装材料、封止材などの用途に好ましく用いられる。
(接着剤)
本硬化性樹脂組成物および当該硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、構造用接着剤に限定されず、単に接着剤としても好適に使用され得る。〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む接着剤は、本発明の一実施形態に係る接着剤ともいえる。本発明の一実施形態に係る接着剤を、単に本接着剤ともいう。本接着剤は、前記構成を有するため、接着性に優れるものである。
本接着剤は、自動車内装材用、一般木工用、家具用、内装用、壁材用および食品包装用などの種々の用途に好適に用いられ得る。
本接着剤は、木材、金属、プラスチック、ガラスなどを接合することができる。本接着剤は、冷間圧延鋼、アルミニウム、ファイバーグラスで強化されたポリエステル(FRP)、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物のパネル、炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂シートのパネル、シートモウルディングコンパウンド(SMC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、TPO、木材およびガラス、など、種々の被着体へ良好な接着性を示す。
本接着剤は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本接着剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(コーティング材)
〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含むコーティング材は、本発明の一実施形態に係るコーティング材ともいえる。本発明の一実施形態に係るコーティング材を、単に本コーティング材ともいう。本コーティング材は、前記構成を有するため、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜を提供できる。
本コーティング材を、例えば床または廊下に施工する場合には、一般に実施されている施工法を適用することができる。たとえば、素地調整した下地にプライマーを塗布後、施工条件に応じて、コテ、ローラー、レーキ、スプレーガンなどを用いて本コーティング材を均一に塗工する。本コーティング材を塗工後、硬化が進み、性能の良い舗装膜が得られる。本コーティング材を硬化して得た塗膜は、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜となり得る。
本コーティング材の施工方法に依存して、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度を調整してもよい。例えば、本コーティング材の施工にコテまたはレーキを使用する場合、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度は、一般的には500〜9,000cps/25℃程度に調整され得る。本コーティング材の施工にローラーまたはスプレーを使用する場合、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度は、一般的には100〜3,000cps/25℃程度に調整され得る。
本コーティング材が塗付される下地(換言すれば、床または廊下の材質)としては特に限定は無い。前記下地としては、具体的には、(a)コンクリート壁、コンクリート板、コンクリートブロック、CMU(Concrete Masonry Unit)、モルタル板、ALC(Autoclaved Light−weight Concrete)板、石膏板(Dens Glass Gold:Georgia Pacific社製など)、スレート板などの無機系下地、(b)木質系下地(木材、合板、OSB(Oriented Strand Board)など)、アスファルト、変性ビチューメンの防水シート、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)の防水シート、TPOの防水シート、プラスチック、FRP、ウレタンフォーム断熱材などの有機系下地、および(c)金属パネルなどの金属系下地、などが挙げられる。
本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する場合について説明する。前記塗布の後、コーティング材を硬化して得られる積層体は、前記下地への防食性に優れるものである。また、前記塗布の後、コーティング材が硬化されて得られる塗膜は、下地に対して、優れた耐クラック性および耐荷重性を付与し得る。そのため、本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する態様は特に好ましい態様である。
本コーティング材の塗付方法としては特に限定は無いが、コテ、レーキ、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの公知の塗布方法により行うことができる。
本コーティング材の用途としては、特に限定されないが、自動車用、電気機器用、事務機用、建材用、木材用、塗り床用、舗装用、重防食用、コンクリート防食用、屋上および屋根の防水用、屋上および屋根の耐食用、地下防水用の塗膜防水材用、自動車補修用、缶塗装用、上塗り用、中塗り用、下塗り用、プライマー用、電着塗料用、高耐候塗料用、無黄変塗料用、などが挙げられる。塗り床用コーティング材、および舗装用コーティング材などに使用する場合、工場、実験室、倉庫、およびクリーンルームなどに使用することができる。
本コーティング材は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本コーティング材の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(複合材料)
〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む複合材料は、本発明の一実施形態に係る複合材料ともいえる。本発明の一実施形態に係る複合材料を、単に本複合材料ともいう。本複合材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本複合材料は、強化繊維を含み得る。前記強化繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、ガラス長繊維、炭素繊維、天然繊維、金属繊維、熱可塑性樹脂繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン強化繊維などが挙げられる。これら強化繊維の中でも、特に、ガラス繊維および炭素繊維が好ましい。
本複合材料の製造方法(成形方法)としては、特に限定されないが、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、引き抜き成形法、射出成型法、シートワインディング成形法、スプレーアップ法、BMC(Bulk Molding Compound)法、SMC(Sheet MoldingCompound)法、などが挙げられる。
特に、強化繊維として炭素繊維を用いた場合、本複合材料の製造方法としては、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、などを使用することが好ましい。
本複合材料の用途としては、特に限定されないが、航空機、宇宙機、自動車、自転車、船舶、兵器、風車、スポーツ用品、容器、建築材料、防水材、プリント基板、電気絶縁材料、などが挙げられる。
本複合材料は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本複合材料に関する、強化繊維、製造方法(成形方法)、製造条件(成形条件)、配合剤、用途、などのより詳細内容については、米国公開特許2006/0173128号公報、米国公開特許2012/0245286号公報、特表2002−530445号公報(国際公開WO2000/029459号公報)、特開昭55−157620号公報(米国特許第4251428号公報)、特表2013−504007号公報(国際公開WO2011/028271号公報)、特開2007−125889号公報(米国公開特許2007/0098997号公報)、特開2003−220661号公報(米国公開特許2003/0134085号公報)に記載された内容を挙げることができる。
(3Dプリンターの造形材料)
〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む3Dプリンターの造形材料は、本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料ともいえる。本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料を、単に本造形材料ともいう。本造形材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本造形材料の用途としては、特に限定されないが、実際に製品を作る前のデザインの検証および機能検証などを目的とした試作品、航空機の部品、建築部材および医療機器の部品などが挙げられる。
本造形材料は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本造形材料の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(封止材)
〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む封止材は、本発明の一実施形態に係る封止材ともいえる。本発明の一実施形態に係る封止材を、単に本封止材ともいう。本封止材は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本封止材の用途としては、特に限定されないが、液晶パネル、OLED照明、OLEDディスプレイなどの表示機器用封止材、および照明機器用封止材などが挙げられる。また本封止材は、半導体およびLEDなどの各種電気機器用、電子分品用およびパワ−デバイス用などの封止などが挙げられる。なお、これら電気機器用、電子分品用およびパワ−デバイス用などの封止に用いられる場合、封止材は電気絶縁材料ともいえる。
本封止材は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本封止材の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(電子基板)
〔硬化性樹脂組成物〕の項で説明した硬化性樹脂組成物を含む電子基板は、本発明の一実施形態に係る電子基板ともいえる。本発明の一実施形態に係る電子基板を、単に本電子基板ともいう。本電子基板は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本電子基板の用途としては、特に限定されないが、プリント回路、プリント配線、プリント回路板、プリント回路実装品、プリント配線板およびプリント板などが挙げられる。
本電子基板は、本樹脂組成物を用いて、本樹脂組成物から製造することができる。本電子基板の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で、下記実施例を適宜変更して実施することが可能である。下記実施例を適宜変更して実施される実施形態は、いずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例、比較例および表において「部」および「%」とあるのは、質量部または質量%を意味する。
(評価方法)
先ず、実施例および比較例によって製造された硬化性樹脂組成物の評価方法について、以下に説明する。
[1]体積平均粒子径の測定
水性ラテックスに分散しているポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径(Mv)は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定した。脱イオン水で水性ラテックスを希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水の屈折率、およびそれぞれの製造例で得られたポリマー微粒子(B)の屈折率を入力し、計測時間600秒、Signal Levelが0.6〜0.8の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
[2]粘度の測定
レオメーターを使用し、実施例および比較例で得られた各硬化性樹脂組成物の50℃での粘度を、せん断速度5s−1と50s−1とで測定した。本明細書では、5s−1の粘度と50s−1の粘度との比の値(粘度比(5s−1/50s−1))が、1.8以上である場合○(良好)とし、1.8未満である場合×(不良)と評価した。
[3]動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)の測定
実施例および比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、2枚のSPCC鋼板に塗布し、接着層厚み0.25mmとなるように重ね合せた後、170℃×30分の条件で硬化性樹脂組成物を硬化させ、積層体を得た。得られた積層体を用いて、ISO 11343に従って、23℃および−40℃での動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)を測定した。本明細書では、23℃における動的割裂抵抗力(kN/m)が、38以上である場合○(良好)とし、38未満である場合×(不良)と評価した。また、本明細書では、−40℃における動的割裂抵抗力(kN/m)が、28以上である場合○(良好)とし、28未満である場合×(不良)と評価した。
(1.弾性体の重合)
(製造例1−1;ポリブタジエンゴムラテックス(R−1)の調製)
容積100Lの耐圧重合機中に、脱イオン水200質量部、リン酸三カリウム0.03質量部、リン酸二水素カリウム0.25質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002質量部、硫酸第一鉄・7水和塩(FE)0.001質量部および乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDS)1.5質量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、ブタジエン(BD)100質量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.015質量部を耐圧重合器内に投入し、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.04質量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から10時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存したモノマーを脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよびFEのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体(ポリブタジエンゴム粒子)を含むラテックス(R−1)を得た。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の体積平均粒子径は0.10μmであった。
(製造例1−2;ポリブタジエンゴムラテックス(R−2)の調製)
容積100Lの耐圧重合機中に、製造例1−1で得たポリブタジエンゴムラテックス(R−1)を固形分で7質量部、脱イオン水200質量部、リン酸三カリウム0.03質量部、EDTA0.002質量部、およびFE0.001質量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、BD93質量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.02質量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10質量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から30時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存したモノマーを脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよびFEのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体(ポリブタジエンゴム粒子)を含むラテックス(R−2)を得た。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の体積平均粒子径は0.20μmであった。
(2.ポリマー微粒子(B)の調製(グラフト部の重合))
(製造例2−1;ポリマー微粒子ラテックス(L−1)の調製)
温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、及びモノマーの添加装置を有するガラス製反応器に、製造例1−2で調製したポリブタジエンゴムラテックス(R−2)256質量部(ポリブタジエンゴム粒子85質量部を含む)、および、脱イオン水61質量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、およびモノマーの添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換し、窒素置換を行いつつ、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、EDTA0.004質量部、FE0.001質量部、およびSFS0.2質量部をガラス製反応器内に加えた。その後、グラフト部を重合するためのモノマー(スチレン(ST)7質量部、メチルメタクリレート(MMA)1.5質量部、アクリロニトリル(AN)2.5質量部およびグリシジルメタクリレート(GMA)4質量部)と、クメンヒドロパーオキサイド(CHP)0.04質量部との混合物をガラス製反応器内に、80分間かけて連続的に添加した。添加終了後、CHP0.04質量部をガラス製反応器内に添加し、さらに2時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックス(L−1)を得た。モノマー成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は0.21μmであった。
(製造例2−2;ポリマー微粒子ラテックス(L−2)の調製)
製造例2−1において、グラフト部を重合するためのモノマーとして<ST7質量部、MMA1.5質量部、AN2.5質量部およびGMA4質量部>の代わりに<ST7質量部、MMA4.5質量部、AN2.5質量部およびGMA1質量部>を用いたこと以外は、製造例2−1と同じ方法にて、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックス(L−2)を得た。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は0.21μmであった。
(製造例2−3;ポリマー微粒子ラテックス(L−3)の調製)
製造例2−1において、グラフト部を重合するためのモノマーとして<ST7質量部、MMA1.5質量部、AN2.5質量部およびGMA4質量部>の代わりに<ST7質量部、MMA3.5質量部、AN2.5質量部およびGMA2質量部>を用いたこと以外は、製造例2−1と同じ方法にて、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックス(L−3)を得た。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は0.21μmであった。
(製造例2−4;ポリマー微粒子ラテックス(L−4)の調製)
製造例2−1において、グラフト部を重合するためのモノマーとして<ST7質量部、MMA1.5質量部、AN2.5質量部およびGMA4質量部>の代わりに<ST6質量部、MMA0質量部、AN7質量部およびGMA2質量部>を用いたこと以外は、製造例2−1と同じ方法にて、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックス(L−4)を得た。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は0.21μmであった。
(3.硬化性樹脂組成物中にポリマー微粒子(B)が分散した分散物(M)の調製)
(製造例3−1;分散物(M−1)の調製)
25℃の1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)132gを導入した。次に、MEKを撹拌しながら、前記製造例2−1で得られたポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックス(L−1)132g(ポリマー微粒子(B)40g相当)を混合槽内に投入した。混合槽内の原料を均一に混合後、混合槽内の原料を攪拌しながら、水200gを80g/分の供給速度で混合槽内に投入した。水の供給終了後、速やかに前記撹拌を停止し、ポリマー微粒子(B)を含む凝集体と少量の有機溶媒とを含む水相からなるスラリー液を得た。前記凝集体は、浮上性であった。次に、一部の水相を含む凝集体を混合槽内に残すように、水相360gを混合槽下部の払い出し口より排出した。得られた凝集体にMEK90gを追加して、これらを均一に混合し、MEK中にポリマー微粒子(B)が均一に分散している分散体を得た。得られた分散体に、(A)成分であるエポキシ樹脂(A−1)60gを添加し、これらを均一に混合した。エポキシ樹脂(A−1)については、下記に詳述する。得られた混合物から、回転式の蒸発装置を用いて、MEKを除去した。このようにして、エポキシ樹脂(A)にポリマー微粒子(B)が分散している分散物(M−1)を得た。
(製造例3−2;分散物(M−2)の調製)
製造例3−1において、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックスとして(L−1)132gの代わりに(L−2)132g(ポリマー微粒子(B)40g相当)を用いたこと以外は製造例3−1と同じ方法にて、エポキシ樹脂(A)にポリマー微粒子(B)が分散している分散物(M−2)を得た。
(製造例3−3;分散物(M−3)の調製)
製造例3−1において、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックスとして(L−1)132gの代わりに(L−3)132g(ポリマー微粒子(B)40g相当)を用いたこと以外は製造例3−1と同じ方法にて、エポキシ樹脂(A)にポリマー微粒子(B)が分散している分散物(M−3)を得た。
(製造例3−4;分散物(M−4)の調製)
製造例3−1において、ポリマー微粒子(B)を含む水性ラテックスとして(L−1)132gの代わりに(L−4)132g(ポリマー微粒子(B)40g相当)を用いたこと以外は製造例3−1と同じ方法にて、エポキシ樹脂(A)にポリマー微粒子(B)が分散している分散物(M−4)を得た。
なお、分散物(M−1)〜(M−4)において、分散物100質量部中、(A)成分は60質量部である。
(実施例1〜6、比較例1〜18)
表1〜3に示す処方(配合)にしたがって、各成分をそれぞれ計量し、十分に混合して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物の粘度および動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)の試験結果を表1〜3に示す。
なお、表1〜3中の各種成分は、以下に示すものを使用した。
≪エポキシ樹脂(A)≫
エポキシ樹脂(A−1):JER828(三菱化学製、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184〜194)
反応性希釈剤(A−2):Cardula E10P(Momentive製、バーサチック酸グリシジルエステル)
≪エポキシ樹脂(A)中にポリマー微粒子(B)が分散した分散物(M)≫
M−1〜4:前記製造例3−1〜4で得られた分散物
≪シランカップリング剤で表面処理された膠質炭酸カルシウム(C)≫
RK−100BR(白石工業製、シランカップリング剤で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
≪表面無処理重質炭酸カルシウム≫
ホワイトンSB(白石カルシウム製、表面無処理重質炭酸カルシウム、平均粒子径:1.8μm)
≪表面処理重質炭酸カルシウム≫
ライトンA(白石カルシウム製、変成脂肪酸で表面処理した重質炭酸カルシウム、平均粒子径:1.8μm)
≪脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム≫
白艶華CCR(白石工業製、飽和脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
白艶華CCR−S(白石工業製、不飽和脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
Vigot−10(白石工業製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
Vigot−15(白石工業製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
カルファイン200M(丸尾カルシウム製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
カルファイン200(丸尾カルシウム製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
MSK−PO(丸尾カルシウム製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
カルフォシール15B(丸尾カルシウム製、脂肪酸で表面処理された膠質炭酸カルシウム)
≪ブロックドウレタン≫
QR−9466(ADEKA製、ブロックドウレタン)
≪ヒュームドシリカ≫
CAB−O−SIL TS−720(CABOT製、ポリジメチルシロキサンで表面処理されたヒュームドシリカ)、
≪酸化カルシウム≫
CML#31(近江化学工業製、脂肪酸で表面処理した酸化カルシウム)
≪エポキシ硬化剤(D)≫
Dyhard 100S(AlzChem製、ジシアンジアミド)
≪硬化促進剤(E)≫
Dyhard UR300(AlzChem製、1,1−ジメチル−3−フェニルウレア)
Dyhard UR200(AlzChem製、1,1−ジメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)ウレア)
なお、表1〜3の硬化性樹脂組成物中に含まれる(A)成分の量(質量部)は、(A)成分の欄に記載の量、すなわちエポキシ樹脂として添加した(A)成分の量と、(A)成分+(B)成分の欄に記載の量、すなわちポリマー微粒子(B)の分散物(M)に含まれる(A)成分の量と、を合算した量である。
表1〜3から、本発明の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する実施例1〜6の硬化性樹脂組成物は、粘度比(5s−1/50s−1)、23℃における動的割裂抵抗力および−40℃における動的割裂抵抗力が、いずれも、良好の水準以上であった。その故に、本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、粘度のせん断速度依存性が大きいことから作業性に優れ、かつ耐衝撃剥離接着性に優れることが判る。実施例1〜6の硬化性樹脂組成物は、特に、低温(−40℃)での耐衝撃剥離接着性に優れる。