JP2006137783A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂と特定の炭酸カルシウムを配合してなる、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)100質量部に対して、炭酸カルシウム(B)がシリカ系またはチタン系カップリング剤(C)によって表面処理が施された、平均粒径が0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であるカップリング剤処理済炭酸カルシウム(D)0.01〜100質量部からなる樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂と、安価でかつ簡便な方法で製造されるカップリング処理炭酸カルシウムを配合した、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れた樹脂組成物に関する。
現在、炭酸カルシウムとして、天然の石灰石を粉砕、分級することによって得られる重質炭酸カルシウムや、消石灰の水溶液に炭酸ガスを吹き込んで得られる軽質炭酸カルシウムが存在している。これらは比較的安価であることから、脂肪酸や金属せっけん、樹脂酸によって表面処理を施し、分散性を向上させてゴムや塩ビ、塗料等に多量に配合され、増量剤、流動性改良剤、寸法安定化剤、中和剤、機械的特性の改良効果を示している。
近年、炭酸カルシウムはその多様な製品ラインナップ、たとえば、さまざまな粒径や粒度分布、脂肪酸、金属せっけん、樹脂酸等の表面処理の有無などを利用して、安価でありながら、高機能な樹脂補強用の無機フィラーとして活用するする動きがある。こうして得られる樹脂組成物は、従来のガラスやミネラルフィラー等の無機物配合品とは異なり、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れる樹脂組成物であることが望まれている。例えば、ポリオレフィン樹脂に対して炭酸カルシウムを配合することによって剛性や靭性を改良した報告がある(特許文献1、非特許文献1など)。さらに、熱可塑性樹脂に対して、高アスペクト比の炭酸カルシウムを配合し、靭性を落とすことなく剛性や外観を向上させた報告(特許文献2)や、ポリアミド樹脂と特定の粒径を有する炭酸カルシウムおよび飽和脂肪酸を配合し、剛性、靭性のバランスを改良する報告(特許文献3)がある。
しかしながら従来用いられている炭酸カルシウムは、分散性に優れ、比較的靭性を保持しやすいといった特徴があるものの、各種樹脂とのぬれ、なじみ、接着性が十分ではなく、樹脂の剛性、耐熱性、さらには強度を向上させるといった観点ではいまだ改良の余地があり、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスにより優れた樹脂組成物が望まれていた。
上記問題を解決すべく、炭酸カルシウム表面を各種有機処理剤で処理を施したり、特殊処理を施した炭酸カルシウム表面をシランカップリング剤で処理を施し、樹脂とのぬれ、なじみ、接着性を向上させ、樹脂の補強効果を向上させる試みがなされている(特許文献4から6など)。これらは剛性や強度などの機械的特性の改良に効果が見られるものの、製法に手間がかかり、コストが上昇するといった問題が生じている。また、得られる樹脂組成物の剛性や強度の改良の点においてもさらに向上させることが望まれている。
米国特許4795768号明細書 特開平9−87422号公報 特表2002−537431号公報 特許第27450033号公報 特開2003−112920号公報 特開2003−34760号公報 永田下員也、プラスチック/エラストマーにおける炭酸カルシウム充填による衝撃強度改善その2 PP/エラストマー/炭酸カルシウムの場合、日本接着学会誌、2004年、第40巻、第4号、p.166−171
本発明は、樹脂と、安価でかつ簡便な方法で製造されるカップリング処理炭酸カルシウムを配合した、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂と特定の炭酸カルシウムからなる樹脂組成物が樹脂の機械的特性のバランスに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)100質量部に対して、炭酸カルシウム(B)がシリカ系またはチタン系カップリング剤(C)によって表面処理が施された、平均粒径が0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であるカップリング剤処理済炭酸カルシウム(D)0.01〜100質量部からなる樹脂組成物、
(2)ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂のいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記(1)記載の樹脂組成物、
(3)炭酸カルシウム(B)が軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の樹脂組成物、
(4)炭酸カルシウム(B)が 平均粒径0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であることを特徴とする上記(1)から(3)いずれかに記載の樹脂組成物、
(5)炭酸カルシウム(B)が、BET比表面積において、6〜200m/gであることを特徴とする上記(1)から(4)いずれか記載の樹脂組成物、
(6)カップリング剤(C)がアミノシラン系カップリング剤であることを特徴とする上記(1)から(5)いずれかに記載の樹脂組成物、
(7)カップリング剤(C)が下記一般式であることを特徴とする上記(1)から(6)いずれかに記載の樹脂組成物、
(RO)SiR2mNHCNH
または (RO)SiR2mNH
およびこれらの重縮合体
ここで、l+m=3、l、m、は0から3から選ばれる数であり、R、Rは水素または、飽和、不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基には官能基が導入されていも良い。
(8)炭酸カルシウム(B)のBET吸着量より算出される比表面積をX(m/g)、その質量をX、カップリング剤(C)の最小被覆面積をY(m/g)、その質量をYとしたときに、表面被覆率%=Y/X*100が0より大きく200%以下であることを特徴とする上記(1)から(7)いずれかに記載の樹脂組成物、
である。
本発明の樹脂組成物は、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れる効果を有する。
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明で用いられるポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)としてはポリアセタール樹脂を除いた公知の樹脂であって、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂又はゴム、熱硬化性樹脂をあげることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴム、アラミド、ポリイミド等の縮合樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等のポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物樹脂、ゴム等を挙げることができる。
これらの他に、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化樹脂等も用いることができる。これら樹脂は、1種でもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら樹脂の中でも、剛性、靭性、耐熱性により優れるといった観点から、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂のいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、より好ましく用いられる。
本発明で用いられる炭酸カルシウム(B)は、公知の炭酸カルシウムであって、特に限定されるものではなく、例えば一般に知られている、炭酸カルシウムの結晶形態として、カルサイト、アラゴナイト、バテライトのいずれであってもよく、また製法においても、天然に存在する重質炭酸カルシウムや人工的な合成法によって得られる軽質炭酸カルシウム(またはコロイド状炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、活性炭酸カルシウム等で呼ばれることもある)であってもよい。一般に、軽質炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムと異なり、表面相の一部に若干の水酸基等の活性点を有することがフーリエ赤外分光法によって確認される場合もあるが、本発明においてはなんら制限されるものではない。
これらの炭酸カルシウムにおいて、その表面がカップリング剤によって有効に処理を施すことができ、さらに得られるカップリング処理済炭酸カルシウムを樹脂に添加した際にその補強効果が高いといった観点から、好ましい炭酸カルシウムとしては軽質炭酸カルシウムをあげることができ、同様に結晶形態としてはカルサイトであることが好ましい。
本発明で用いられる炭酸カルシウム(B)において、好ましい炭酸カルシウムの平均粒径は0.01〜1.0μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.6であり、最も好ましくは0.10〜0.40μmである。かつ、好ましい粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)は3未満であり、さらに好ましくは2以下であり、もっと好ましくは1.5以下である。上記範囲内であれば本発明で用いられるカップリング処理済炭酸カルシウムを得ることが容易である。
ここで、本発明では炭酸カルシウムの粒子のうち、最も長い軸の長さを長径、それと対応する最も短い軸の長さを短径と定義して用いる。また、平均粒径、平均長径、平均短径、平均アスペクト比とは、単位体積中に長径L、短径dの炭酸カルシウムがN個存在するとき、
平均粒径=平均長径=ΣL /ΣL
平均短径=Σd /Σd
平均アスペクト比L/d=(ΣL /ΣL)/(Σd /Σd
と定義して用いる。より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて検査する炭酸カルシウムのサンプリングを行い、これを用いて粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低100個の炭酸カルシウムの粒子からそれぞれ長さを測定し求める。
また、本発明で用いられる炭酸カルシウム(B)において、好ましい比表面積は、BET吸着法において、6〜200m/gであり、さらに好ましくは8〜100m/gであり、もっと好ましくは10〜20m/gである。上記範囲内であれば、カップリング剤による処理が容易であり、さらに樹脂と混練した際、適度な樹脂とのぬれ、なじに、接着性を有し、さらに分散性に優れ、補強効果に優れる。
本発明で用いられるカップリング剤(C)は、シリカ系、チタン系のカップリング剤であれば公知のカップリング剤であって特に限定されるものではない。
シリカ系カップリング剤としては下記一般式で表すことができる。
(RO)SiR2m3n およびこれらの重縮合体
(ここで、l+m+n=4、l、m、nは0から4から選ばれる数であり、R、R、Rは水素または、飽和、不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基には官能基が導入されていも良い。さらに、(RO)においては、Cl等のハロゲンであってもよい。)
前炭化水素基としは炭素数1〜10を有するものが好ましく、炭素数1〜6を有するものがより好ましい。特に好ましくは、例えば、R、Rとしては、メチル、エチル、フェニル基をあげることができ、Rは、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基を有するアルキル基をあげることができる。
より具体的には、アルキル系としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等、ビニル系としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等、エポキシ系としては、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等、スチリル系としては、p−スチリルトリメトキシシラン等、メタクリロキシ系としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシ系としては、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、アミノ系としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等、ウレイド系としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等、クロロプロピル系としては、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等、メルカプト系としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等、スルフィド系としては、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファン等、イソシアネート系としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等などをあげることができる。これらのシランカップリング剤としては、結合の一部が加水分解、脱水縮合して生じる2個以上の重縮合体であってもよい。また2種類以上のものを併用、重縮合させて用いても差し支えない。
チタン系カップリング剤としては、下記一般式で表されることができる。
(RO)TiR5m6n およびこれらの重縮合体
(ここで、l+m+n=4、l、m、nは0から4から選ばれる数であり、R、R、Rは水素または、飽和、不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基には官能基が導入されていも良い。)
前記炭化水素基としては、炭素数1〜10を有すものが好ましく、炭素数1〜6を有ものがより好ましい。特に好ましくは、例えば、Rとしては、イソプロポキシル、n−ブトキシ基をあげることができ、R、Rは、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基を有するアセトナト、アミナト基をあげることができる。
より具体的には、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、イソプロポキシチタントリイソステアレート、イソプロポキシチタンジメタクリレートイソステアレート、イソプロポキシチタントリドデシルベンゼンスルホネート、イソプロポキシチタントリスジオクチルフォスフェート、イソプロポキシチタントリN−エチルアミノエチルアミナト、チタニウムビスジオクチルピロフォスフェートオキシアセテート、ビスジオクチルフォスフェートエチレングリコラトチタン、テトライソプロポキシチタンビスジオクチルフォスファイト、ジn−ブトキシビストリエタノールアミナトチタン等をあげることができる。これらのシランカップリング剤は、結合の一部が加水分解、脱水縮合して生じる2個以上の重縮合体であってもよい。また2種類以上のものを併用、重縮合させて用いても差し支えない。
これらのうち、コスト的な観点から好ましいカップリング剤としては、シリカ系カップリング剤が好ましく、さらにカップリング剤自身の化学的安定性や表面処理を施す際のハンドリングのよさ、実際に表面処理済炭酸カルシウムを樹脂と混練して得られる組成物における補強効果に優れるといった観点から、カップリング剤が好ましく、さらに下記一般式で表されるアミノシラン系カップリング剤が最も好ましい。
(RO)SiR2mNHCNH
または (RO)SiR2mNH およびこれらの重縮合体
(ここで、l+m=3、l、mは0から3までの数であり、R1、R2は水素または、飽和、不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基には官能基が導入されていも良い。)
前記炭化水素基としては炭素数1〜10を有するものが好ましく、炭素数1〜6を有するものがより好ましい。
具体的な例としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
本発明で用いられる炭酸カルシウム(B)とカップリング剤(C)の量比は特に限定されるものではないが、好ましい量比として、下記式で定義される表面被覆率において、0より大きく200以下、さらに好ましくは30〜150、最も好ましくは50〜100である範囲を満たす量比をあげることができる。
表面被覆率%=Y/X*100
(ここで、炭酸カルシウム(B)のBET吸着量より算出される比表面積をX(m/g)、その質量をX(g)、カップリング剤(C)の最小被覆面積をY(m/g)、その質量をY(g)と定義する。)
上記範囲内であればカップリング処理された炭酸カルシウムを樹脂と混練した際、樹脂補強効果に優れる。
ここで、シランカップリング剤の最小被覆面積とは、Stuart−brieglebの分子モデルから計算されるもので、下記式により求めることができる。
最小被覆面積(m/g)=(78.3×1000)/シランカップリング剤の分子量
本発明で用いられるカップリング剤処理済炭酸カルシウム(D)は、上記炭酸カルシウム(B)をカップリング剤(C)で表面処理することによって得られる。該表面処理の方法としては特に限定されるものではなく、公知の粉末表面処理方法を取ることができる。例えば、(a)炭酸カルシウム(B)を水等の溶媒に分散させたスラリーに対して、カップリング剤(C)原液、または水やアルコールなどの溶解溶液を攪拌しながら接触させる湿式処理法や、(b)炭酸カルシウム(B)粉末に対して、カップリング剤(C)原液、または水やアルコールなどの溶解溶液を添加してヘンシェルミキサー等で混合、攪拌しながら接触させる乾式処理法などをあげることができる。また、(c)樹脂の補強に用いる際、樹脂ペレットまたは樹脂粉末に対して、カップリング剤(C)を先に添加、付着させておき、その後炭酸カルシウム(B)を加えて二軸押し出し機等の溶融押し出し機にて炭酸カルシウムの表面処理および樹脂への混合、分散を同時におこなうインテグラルブレンド法を用いてもよい。
本発明で用いられるカップリング剤処理済炭酸カルシウム(D)は上記方法によって得られる、平均粒径が0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であるカップリング剤処理済炭酸カルシウムである。ここで、平均粒径、平均長径、平均短径、平均アスペクト比は前記炭酸カルシウム(B)の項で記述した定義、測定方法によるものである。このうち、好ましいカップリング処理済炭酸カルシウムの平均粒径は0.03〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.6であり、最も好ましくは0.10〜0.40μmである。かつ、好ましい粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)は3未満であり、さらに好ましくは2以下であり、もっと好ましくは1.5以下である。上記範囲内であれば樹脂に配合した際、分散性に優れ、樹脂の補強効果に優れる。一般に炭酸カルシウムは樹脂等と混練した場合、カップリング剤による表面処理の効果はほとんどないといわれている。これは、炭酸カルシウム表面にはカップリング剤と反応する水酸基がほとんど存在せず、カップリング剤が炭酸カルシウムと結合、接着しないため、結果的に樹脂等と炭酸カルシウムのぬれ、なじみ、接着性が向上しないためと解釈されている。しかしながら本発明のように、炭酸カルシウムの粒径、形状や、カップリング剤の種類、量を制御することによって樹脂への補強効果は非常に高くなる。本理由についてはいまのところ明らかではないが、カップリング剤同士が重縮合して生成した網目状のかご状化合物中に炭酸カルシウムがとりこまれた2層構造をとることによって、樹脂、カップリング剤、炭酸カルシウムそれぞれのぬれ、なじみ、接着性が向上した結果であると推測している。
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)100質量部に対して、該カップリング処理済炭酸カルシウム(D)0.01〜100質量部、より好ましくは0.1〜50質量部、さらに好ましくは5〜35質量部からなる樹脂組成物である。上記範囲内であれば、剛性、強度に優れ、また適度な靭性をもつバランスのよい樹脂組成物であり、自動車部品、電気電子部品、その他工業部品等へ使用することが可能である。
本発明の樹脂組成物を得る方法としては特に限定されるものではなく、例えば、各種樹脂のモノマーとカップリング処理済炭酸カルシウムを混合し、モノマーの重合を行なう重合法や、各種樹脂とカップリング処理済炭酸カルシウムを一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等によって混練する溶融混錬法などをあげることができる。ここで、溶融混練法の条件は、特に制限されるものではないが、減圧度に関しては、0〜0.07Mpaが好ましい。混練の温度は、JISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点又は軟化点より1〜100℃高い温度が好ましい。
本発明の樹脂組成物には、さらに適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、耐侯(光)安定剤、離型(潤滑)剤、結晶核剤、無機充填材、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマー、顔料などをあげることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
炭酸カルシウム、カップリング剤処理済炭酸カルシウムの粒子の平均粒径、平均アスペクト比(平均長径および平均短径の測定)および形状の観察には以下の装置を用いて求めた。
ファインコーター:日本電子(株)製JFC−1600
コーティング条件は30mA、60秒間で行った。
走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製JSM−6700F
測定条件は加速電圧9.00kV、印加電流10.0μAで行った。
平均粒径は、得られた粒子像から無作為に選択した最低100個の粒子についてそれぞれの長径を計測し、平均粒径=平均長径=ΣLi2Ni/ΣLiNiの式に従って求めた。
平均アスペクト比は、得られた粒子像から無作為に選択した最低100個の粒子についてそれぞれの長径、短径を計測し、平均長径=ΣLi2Ni/ΣLiNi、平均短径=Σdi2Ni/ΣdiNi、平均アスペクト比L/d=(ΣLi2Ni/ΣLiNi)/(Σdi2Ni/ΣdiNi)の式に従って求めた。
(2)樹脂組成物の物性
射出成形機(住友重機械工業(株)製SH―75)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出15秒、冷却25秒の射出成形条件で評価用ダンベル片、短冊片を得た。
(2−1)曲げ弾性率(GPa)および曲げ強度(MPa)
ASTM D790に準じて行った。
(2−2)ノッチ付きIzod衝撃強度
ASTM D256に準じて行った。
また、実施例、比較例には下記成分を用いた。
<炭酸カルシウム>
(a−1)白石工業(株)製Brilliant−15
(a−2)丸尾カルシウム(株)製スーパーS
<処理剤>
シランカップリング剤
(b−1)信越シリコーン(株)KBM−603 N−2(アミノメチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(b−2)川研ファインケミカル(株)F−3 ステアリン酸
<樹脂>
旭化成ケミカルズ(株)ポリアミド樹脂 レオナ(登録商標)1300S
[製造例1〜3]
炭酸カルシウム(a−1、2)の粉末およびシランカップリング処理剤(b−1)原液、またはステアリン酸(b−2)を表1の組成で配合し、ヘンシェルミキサーにて、窒素雰囲気下、120℃、2000rpmにて攪拌、混合を15分行なった。得られた粉末を80℃のオーブンにて12時間乾燥処理し、カップリング剤処理済炭酸カルシウム、またはステアリン酸処理済炭酸カルシウムを得た。表1に原料である各種炭酸カルシウムの性質および、得られた処理済炭酸カルシウムの性質を示す。
[実施例1、2および比較例1〜5]
表2に示した割合で、各成分を計量、混合し、二軸押し出し機(池貝(株)製PCM−30)を用いて、押出機のトップから添加して溶融混練し、それぞれポリアミド樹脂組成物を得た。その際、溶融混錬条件は温度270度、回転数150rpmで行った。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように本発明のカップリング剤処理済炭酸カルシウムを用いて樹脂を補強すると、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れることがわかる。
本発明で得られる樹脂組成物は、剛性、強度、靭性などの機械的特性のバランスに優れるために、自動車、電気電子、その他工業などの分野で好適に利用できる。

Claims (8)

  1. ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)100質量部に対して、炭酸カルシウム(B)がシリカ系またはチタン系カップリング剤(C)によって表面処理が施された、平均粒径が0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であるカップリング剤処理済炭酸カルシウム(D)0.01〜100質量部からなる樹脂組成物。
  2. ポリアセタール樹脂を除く樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂のいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 炭酸カルシウム(B)が軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
  4. 炭酸カルシウム(B)が 平均粒径0.01μm〜1.0μmであり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(d)の比である平均アスペクト比(L/d)が3未満であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 炭酸カルシウム(B)が、BET比表面積において、6〜200m/gであることを特徴とする請求項1から4いずれか記載の樹脂組成物。
  6. カップリング剤(C)がアミノシラン系カップリング剤であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の樹脂組成物。
  7. カップリング剤(C)が下記一般式であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の樹脂組成物。
    (RO)SiR2mNHCNH
    または (RO)SiR2mNH
    およびこれらの重縮合体
    ここで、l+m=3、l、m、は0から3から選ばれる数であり、R、Rは水素または、飽和、不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基には官能基が導入されていも良い。
  8. 炭酸カルシウム(B)のBET吸着量より算出される比表面積をX(m/g)、その質量をX、カップリング剤(C)の最小被覆面積をY(m/g)、その質量をYとしたときに、表面被覆率%=Y/X*100が0より大きく200%以下であることを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の樹脂組成物。
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