JP2020163321A - 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及び濾過膜 - Google Patents

膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及び濾過膜 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、濾過膜とフレーム材との接着性が良好な膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を提供することである。【解決手段】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなり、半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下であり、半透膜用支持体の密度が0.40g/cm3以上0.70g/cm3以下である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。【選択図】なし

Description

本発明は、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及び濾過膜に関する。
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜の分離機能層としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である濾過膜が使用されている。半透膜用支持体において、半透膜が設けられる面を「塗布面」と称し、塗布面と反対の面を「非塗布面」と称す。
これら半透膜や濾過膜の使用形態の一つに、膜分離活性汚泥処理法(Membrane Bioreactor、MBR)が挙げられる。膜分離活性汚泥処理法は、有機性汚水の処理に際し、処理水質が安定していることや、維持管理が容易なことから、広く普及している。膜分離活性汚泥処理法では、汚水中の夾雑物を除去した後、生物処理槽(曝気槽)で活性汚泥により汚水中の有機物質を分解除去し、生物処理槽に浸漬設置した浸漬型膜分離装置で混合液を固液分離し、透過した濾過液を処理水として放流する。こうした膜分離装置中の膜分離部は、使用中に砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が膜面に激しく衝突したりするので、そのような衝撃にも十分に耐える強度を備えていることが要求される。
加えて、濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、平膜型モジュールとスパイラル型モジュールである。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、中空糸型モジュールや管型/チューブラー型モジュールである。平膜型モジュールでは、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
一般的な半透膜用支持体として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン繊維を含有する半透膜用支持体が挙げられる。例えば、ポリプロピレンを芯材、ポリエチレンを鞘材とした複合繊維を熱処理した半透膜用支持体(例えば、特許文献1参照)や、該オレフィン複合繊維とビニルアルコール等の湿熱接着性繊維から形成された半透膜用支持体(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。これら、オレフィン繊維を含有する半透膜用支持体上に半透膜を設けた濾過膜をフレーム材に超音波融着処理によって接着すると、接着はするものの、濾過膜とフレーム材との接着性は十分でなかった。
また、管型/チューブラー型モジュールでは、管状基体やマンドレルを使用して、側縁部を相互に一部重ね合わせて、テープ状半透膜用支持体を螺旋状に巻き、重ね合わせた部分を加熱融着処理、超音波融着処理等によって融着して、管状半透膜用支持体を製造し、この管状半透膜用支持体の外部又は内部に半透膜が設けられた濾過膜を、複数本束ねてモジュール化している。テープ状半透膜用支持体を螺旋状に巻くため、重ね合わせた部分では、半透膜用支持体の塗布面と、塗布面の反対面である非塗布面とが融着されている。オレフィン繊維を含有する半透膜用支持体は融着しやすいため、半透膜用支持体の塗布面と非塗布面との接着強度に優れ、管状半透膜用支持体を製造しやすい。しかし、半透膜用支持体が重ね合って融着された部分が皮膜化するため、皮膜化された部分へ半透膜が食い込みにくくなり、半透膜と半透膜用支持体との接着性が不十分となって、半透膜が剥離する場合があった。
別の一般的な半透膜用支持体として、延伸ポリエステル繊維とバインダーポリエステル繊維を含有する半透膜用支持体が挙げられる。例えば、延伸ポリエステル繊維と未延伸ポリエステル繊維と鞘部の融点が125℃以上160℃以下である芯鞘型ポリエステル複合繊維とを含有する半透膜用支持体(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。しかし、本発明の発明者が検討したところ、延伸ポリエステル繊維と未延伸ポリエステル繊維と鞘部の融点が125℃以上160℃以下である芯鞘型ポリエステル複合繊維とを含有する半透膜用支持体において、濾過膜とフレーム材との接着性が不十分になる場合があった。
また、延伸ポリエステル繊維と未延伸ポリエステル繊維とガラス転移点が40〜80℃の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維とを含有することにより、フレーム材との接着強度及び半透膜用支持体の塗布面と非塗布面との接着強度に優れ、半透膜との接着性にも優れる膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体が開示されている(例えば、特許文献4及び5)。しかしながら、特許文献4及び5の半透膜用支持体では、加工温度が上げられず、半透膜用支持体の強度が低下する場合があった。
特許文献6では、半透膜用支持体の抄紙流れ方向と幅方向の引張強度比を2:1〜1:1とすることによって、半透膜形成工程において、半透膜用支持体に半透膜液を塗布した際に、幅方向に湾曲し、その後ロール搬送により凝固・洗浄槽で処理する際に不均一な半透膜が製造される問題を解決している。特許文献7では、繊維配向性の異なる第1層と第2層とが少なくとも積層されて成り、第1層面の抄紙流れ方向に対する繊維配向比は、6.0以下であり、第2層面の抄紙流れ方向に対する繊維配向比は、12.0以下とすることにより、高圧環境下においてもへこみが発生しない高い巾方向の引張弾性率を有し、かつ、高い巾方向の引裂強度を有し、連続的な半透膜の製造に耐えうる半透膜用支持体が開示されている。特許文献8では、半透膜用支持体の半透膜が設けられる面の繊維配向度が10〜30°であり、かつ、半透膜用支持体を構成する主体繊維の平均単繊維強度が5.0cN/dtex以下とすることによって、半透膜が設けられる面の毛羽立ちが少なく、半透膜液を塗工する際、主体繊維の毛羽立ちによる欠陥が少ない半透膜用支持体が提案されている。しかしながら、特許文献6〜8の半透膜用支持体では、濾過膜とフレーム材との接着性については、何ら検討されていなかった。
特開2001−17842号公報 特開2012−250223号公報 特開2013−220382号公報 特許第6038369号公報 特許第6038370号公報 特許第5291274号公報 特開2012−161725号公報 特開2017−170293号公報
本発明の課題は、濾過膜とフレーム材との接着性が良好な膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を提供することである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
(1)主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布からなる膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下であり、半透膜用支持体の密度が0.40g/cm以上0.70g/cm以下であることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
(2)上記(1)記載の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に、半透膜が設けられてなる膜分離活性汚泥処理用濾過膜。
本発明により濾過膜とフレーム材との接着性が良好な膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を提供することが可能となる。
非塗布面の繊維配向強度が1.37であった、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の表面を倍率50倍撮影したSEM写真である。 非塗布面の繊維配向強度が1.07であった、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の表面を倍率50倍撮影したSEM写真である。 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の評価において、濾過膜とABS樹脂板を接着させる方法を示した概略図である。 膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の評価において、濾過膜とABS樹脂板の接着強度を測定する方法を示した概略図である。
本発明において、濾過膜とは、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の片面である塗布面に、分離機能層の原料となる塗布液(半透膜液)が塗布され、水処理用の半透膜が形成され、半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態を有する。分離機能層の原料としては、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)系、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系等の種々の高分子材料が用いられる。特に、膜分離活性汚泥処理用半透膜では、PVC系が利用される。半透膜用支持体上に、原料となる高分子材料を溶かした溶液である塗布液を塗布し、ゲル化させて微多孔膜を形成させる。このように半透膜用支持体上に分離機能層を塗布形成する処理は「製膜」と称される。
濾過膜はモジュール化されて使用される。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、管型/チューブラー型モジュールである。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、平膜型モジュールとスパイラル型モジュールである。
平膜型モジュールでは、半透膜用支持体における塗布面と反対の非塗布面をフレーム材接着面として、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
濾過膜は、半透膜が設けられている塗布面と反対の非塗布面がフレーム材と接するように接着・固定される。接着部は、濾過膜を構成する半透膜用支持体の繊維が、熱や超音波等で溶融したフレーム材の樹脂へ深く食い込むほど、また、深さ5μm以上の食い込み箇所が多いほど、接着性が高くなる。本発明では、食い込みの程度は、半透膜用支持体のフレーム材と接する非塗布面の表面に存在する繊維の異方性の度合いと相関が見られることを見出した。本発明において、「繊維配向強度」は、繊維の異方性の度合いを表し、以下に説明する方法によって、測定することができる。
(1)半透膜用支持体表面のSEM画像撮影
半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面を、日本電子社製Scanning Electron microscope JSM−6610LV(製品名)を用いて、倍率50倍で、反射電子、加速電圧20kV、スポットサイズ30で撮影する。撮影の際、上下はMD方向(流れ方向)、左右はCD方向とする。1つの半透膜用支持体につき測定点数10箇所の撮影を行う。
(2)繊維配向強度計測の前準備
SEM写真は、撮影時にJPEG形式の画像になっており、これを2000ピクセル×1500ピクセルのbmp形式に変換する。
(3)「繊維配向強度」の測定
筑波大学江前敏晴教授が開発し、公開しているプログラム「Fiber Orientation Analysis Ver.8.13 single(FiberOri8s03)」(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm)を使用する。本プログラムの中で、元画像から1024ピクセル×1024ピクセルの画像を抽出→移動平均による2値化→FFT変換→two axes modeにて配向角・配高度計算を行い、異方性の度合い「Orientation intensity」を測定する。各半透膜用支持体について、測定点数10箇所で測定し、平均値を本発明における「繊維配向強度」とする。
図1は、非塗布面の繊維配向強度が1.37であった、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の表面を倍率50倍撮影したSEM写真である。繊維が綺麗に配列しており、繊維と繊維の間に隙間が少ない様子が観察できる。隙間が少ないと、溶融したフレーム材の樹脂に濾過膜が食い込む際に、結束した複数の繊維による平面で押し込むことになり、樹脂と繊維の結着面積が少なくなってしまう。
図2は、非塗布面の繊維配向強度が1.07であった、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の表面を倍率50倍撮影したSEM写真である。ランダムな方向を向いた3本以上の複数の繊維によって囲まれた空隙が多い様子が観察できる。繊維の周りに空隙が多く存在することにより、溶融したフレーム材の樹脂に濾過膜が食い込む際に、半透膜用支持体の繊維1本1本がフレーム材の樹脂を押し込み、樹脂と繊維の結着面積が広くなる。
フレーム材に濾過膜を加熱融着処理、超音波融着処理等で接着・固定した際の接着性を高めるためには、フレーム材と半透膜用支持体の結着面積が広い方が良く、半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下である半透膜用支持体を用いることが良い。より好ましくは、繊維配向強度が1.00以上1.25以下であり、更に好ましくは1.00以上1.20以下である。繊維配向強度が1.00〜1.10の場合、繊維が無配向に近い状態であることを意味する。半透膜用支持体の繊維配向強度が1.30を超える場合、フレーム材と接する非塗布面の表面の繊維と繊維の間に隙間が非常に少なく、接着部の樹脂と繊維の結着面積が少なくなって、接着性が低下する。
半透膜用支持体の繊維配向を確認する手法にMD方向とCD方向の引張強度比を計測する方法がある。引張強度比で表される繊維配向は、計測した半透膜用支持体全体の繊維配向を測定している。本発明における「繊維配向強度」は、半透膜用支持体全体ではなく、表層に存在する繊維のみの繊維配向(異方性)を重視する点で、引張強度比で表される繊維配向と大きく異なる。また、半透膜用支持体の表層に存在する繊維配向を確認する手法として、MD方向を0°として、表層に存在する繊維1本1本の配向角を測定する手法がある。本発明における「繊維配向強度」は、異方性の度合いを計測しており、配向角とも大きく異なる。
半透膜用支持体の非塗布面の繊維配向強度を1.00以上1.30以下にする方法として、
(I)主体合成繊維の繊維径及び繊維長の選定
(II)半透膜用支持体原紙の抄紙条件の最適化
(III)熱圧加工処理における張力バランス
等が挙げられる。(II)として、より具体的には、
(II−1)湿式抄造時の濃度(抄水量)の調整
(II−2)抄紙速度の調整
(II−3)スラリー流速とワイヤーの相対速度(J/W比)の調整
(II−4)ワイヤーパートでの脱水圧力の調整
(II−5)ドライヤーパートにおける張力バランス
を単独又は組み合わせて行うことで、制御することができる。
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の密度は0.40g/cm以上0.70g/cm以下である。より好ましくは、密度が0.40g/cm以上0.60g/cm以下であり、更に好ましくは0.45g/cm以上0.60g/cm以下である。半透膜用支持体の密度が0.40g/cm未満の場合には、製膜工程の際に、半透膜液の半透膜用支持体への染み込みが大きくなり過ぎてしまい、半透膜の均一性が損なわれる。また、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、濾過膜が材破してしまう。半透膜用支持体の密度が0.70g/cmよりも大きい場合には、濾過膜とフレーム材を接着させる際に、熱や超音波などで溶融したフレーム材に、半透膜用支持体が食い込みにくくなり、濾過膜とフレーム材の間の接着強度が弱くなってしまう。その結果、MBR法で使用した場合に、濾過膜とフレーム材との接着面が緩んでしまい、分離性能が低下してしまう。
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の坪量は、30〜250g/mが好ましく、40〜230g/mがより好ましく、50〜200g/mが更に好ましい。30g/m未満の場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、濾過膜が材破してしまう場合がある。また、250g/mを超えた場合には、通液抵抗が高くなる場合や、半透膜用支持体の厚みが増して、規定量の半透膜を収納するには、モジュールを大型化する必要が発生する。
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の厚みは、60〜300μmであることが好ましく、70〜270μmであることがより好ましく、80〜250μmであることが更に好ましい。厚みが300μmを超えると、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜のライフが短くなってしまうことがある。一方、厚みが60μm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、膜が材破してしまう場合がある。
本発明において、主体合成繊維は、半透膜用支持体の骨格を形成する繊維である。主体合成繊維としては、例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ベンゾエート系、ポリクラール(polychlal)系、フェノール系等の繊維が挙げられるが、耐熱性の高いポリエステル系の繊維がより好ましい。また、半合成繊維のアセテートやトリアセテートなどのセルロース誘導体、又はプロミックスや、再生繊維のレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維、天然物由来のポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリ琥珀酸繊維等は性能を阻害しない範囲で含有しても良い。
本発明において、主体合成繊維の繊維径は、2〜30μmが好ましく、5〜27μmがより好ましく、7〜25μmが更に好ましい。繊維径が2μm未満の繊維を使用した場合には、半透膜用支持体の密度が高くなりやすく、半透膜とフレーム材を接着させる際に、熱や超音波などで溶融したフレーム材が、半透膜用支持体に食い込みにくくなり、濾過膜とフレーム材の間の接着強度が弱くなってしまう場合がある。一方、繊維径が30μmを超える繊維を使用した場合には、抄紙の際の繊維分散が悪くなり、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、繊維配向強度が1.30を超えてしまう場合や、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
本発明において、繊維径とは、半透膜用支持体断面の走査型電子顕微鏡観察により、半透膜用支持体を形成する繊維断面の面積を計測し、真円に換算した繊維の直径である。なお、繊維断面とは繊維の長さ方向に対して垂直に切断した際の断面とする。平均繊維径は無作為に選んだ20本の繊維における繊維径の平均値である。
本発明において、主体合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1〜15mmであり、より好ましくは3〜12mmであり、更に好ましくは3〜10mmである。繊維長が1mm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、膜が材破してしまう場合がある。繊維長が15mmを超える場合には、繊維分散性が低下しやすく、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、繊維配向強度が1.30を超えてしまう場合や、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
本発明において、主体合成繊維の断面形状は円形が好ましく、湿式抄造工程における水への分散前の繊維における断面アスペクト比(繊維断面長径/繊維断面短径)は、1.0〜1.2未満であることが好ましい。繊維断面アスペクト比が1.2以上になると、繊維分散性が低下する場合や、繊維の絡まりやもつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
本発明において、主体合成繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、200〜2000であることが好ましく、より好ましくは200〜1500であり、更に好ましくは280〜1000である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する場合や、抄紙ワイヤーに繊維が刺さって抄紙ワイヤーからの剥離性が悪化する場合がある。一方、2000を超えた場合、繊維の三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維の絡まりやもつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、バインダー合成繊維を含有している。バインダー合成繊維の軟化点又は溶融温度(融点)以上まで温度を上げる工程を、半透膜用支持体の製造方法に組み入れることで、バインダー合成繊維が半透膜用支持体の強度を向上させることができる。この温度を上げる工程において、主体合成繊維は軟化又は溶融しにくく、断面形状が変化することはあるものの、繊維としての形状が損なわれることがなく、主体繊維として、半透膜用支持体の骨格を形成する。例えば、不織布を湿式抄造法で製造した後の乾燥工程や熱カレンダーの際に、バインダー合成繊維を軟化又は溶融させることができる。
本発明において、バインダー合成繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維等の複合繊維、未延伸繊維等が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、半透膜用支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。より具体的には、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステル等の未延伸繊維が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、半透膜用支持体の乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。本発明においては、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステルの未延伸繊維を好ましく用いることができる。
本発明において、バインダー合成繊維として用いられる未延伸ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれを主体とした共重合体などのポリエステルを紡糸速度800〜1,200m/分で紡糸した未延伸繊維が挙げられる。これらの未延伸ポリエステル繊維が熱カレンダー処理によって熱圧融着されることにより、強度の高い半透膜用支持体を得ることができる。
本発明において、バインダー合成繊維の繊維径は特に限定されないが、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは5〜17μmであり、更に好ましくは7〜15μmである。バインダー合成繊維の繊維径が2μm未満のバインダー繊維を使用した場合には、半透膜用支持体の密度が高くなりやすく、半透膜とフレーム材を接着させる際に、熱や超音波などで溶融したフレーム材が、半透膜用支持体に食い込みにくくなり、濾過膜とフレーム材の間の接着強度が弱くなってしまう場合がある。一方、繊維径が20μmを超えるバインダー繊維を使用した場合には、抄紙の際の繊維分散が悪くなり、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、半透膜の製膜性を損なう場合がある。バインダー合成繊維は半透膜用支持体の機械的強度を向上させる役割の他に、主体合成繊維と共に均一な三次元ネットワークを形成する役割も果たす。更に、バインダー合成繊維の軟化温度又は溶融温度以上まで温度を上げる工程では、半透膜用支持体表面の平滑性をも向上させることができ、該工程では加圧が伴っているとより効果的である。
本発明において、バインダー合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1〜12mmであり、より好ましくは3〜10mmであり、更に好ましくは4〜7mmである。繊維長が1mm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、膜が材破してしまう場合があり、12mmを超える場合には、繊維分散性が低下しやすく、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、半透膜の製膜性を損なう場合がある。バインダー合成繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、塗布面の平滑性、非塗布面同士の接着性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
本発明において、バインダー合成繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、200〜2000であることが好ましく、より好ましくは200〜1500であり、更に好ましくは300〜1000である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する恐れや、抄紙ワイヤーに繊維が刺さってワイヤーからの剥離性が悪化する恐れがある。一方、2000を超えた場合、バインダー合成繊維は三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維が絡まる恐れや、もつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす恐れがある。
本発明において、主体合成繊維とバインダー合成繊維の含有比率は、質量基準で、60:40〜80:20であることが好ましく、65:35〜80:20であることがより好ましく、65:35〜75:25であることが更に好ましい。主体合成繊維の含有比率が60質量%を下回る場合、バインダー合成繊維の溶融により、半透膜用支持体表面の繊維と繊維の間の空隙が少なくなり、濾過膜がフレーム材へ深く食い込めず、濾過膜とフレーム材の接着性が低下する場合がある。主体合成繊維の含有比率が80質量%を超えると、繊維同士の結着力が弱くなり、半透膜用支持体の強度が不十分となり、濾過膜とフレーム材との接着点以外の部分で、膜が材破してしまう場合がある。
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に係わる不織布は、乾式法、又は湿式抄造法により製造することができる。本発明では、湿式抄造法により形成された湿式不織布であることが好ましい。
湿式抄造法では、まず、少なくとも主体合成繊維とバインダー合成繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01〜0.50質量%に調整されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙ワイヤーが単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙ワイヤーがオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、本発明の半透膜用支持体が2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする方法のいずれでも良い。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の層を熱融着させて、多層構造の不織布とすることもできる。
半透膜用支持体の非塗布面の繊維配向強度を1.00以上1.30以下にするためには、いずれの抄紙機においても、スラリーがヘッドボックスから抄紙ワイヤーに着地する際の流速とワイヤー速度の差が小さくなるように調整するのが良い。更に、スラリーが抄紙ワイヤーに接してから、早いうちに水を引いて脱水を行って、繊維を不動化させることが重要である。そのために、湿式抄紙時の濃度(抄水量)、抄紙速度、スラリー流速と抄紙ワイヤーの相対速度(J/W比)、ワイヤーパートでの脱水圧力及びドライヤーパートにおける張力バランスの調整を単独又は組み合わせて行うことで、制御することができる。
抄紙ワイヤーで製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、半透膜用支持体原紙を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、100〜180℃が好ましく、105〜170℃がより好ましく、110〜160℃が更に好ましい。湿紙の熱ロールへの押しつけ圧力は、好ましくは300〜1000N/cmが好ましい。
本発明において半透膜用支持体原紙には、熱カレンダー処理(熱圧加工処理)が更に施されていることが好ましい。熱カレンダー処理においては、金属ロール−金属ロール、金属ロール−弾性(樹脂)ロール、金属ロール−コットンロール、金属ロール−シリコンロールなどのロール構成のカレンダーユニットを単独、又は組み合わせて用いることができる。カレンダーユニットの少なくとも一方の金属ロールが加熱される。本発明においては、不織布に充分な熱量を付与させることができて、強度の高い半透膜用支持体を得ることができるため、金属ロール−弾性ロールのカレンダーユニットを用いることが好ましい。
熱カレンダー処理時の金属ロール温度は、好ましくは未延伸ポリエステル繊維の融点又は軟化温度に対して−40〜−10℃であることが好ましく、−30〜−20℃であることがより好ましい。金属ロールの温度が未延伸ポリエステル繊維の融点又は軟化温度に対して−40℃より低い場合では、未延伸ポリエステルの熱圧融着が不十分となりやすく、半透膜用支持体の強度が低下する場合がある。一方、金属ロールの温度が未延伸ポリエステル繊維の融点又は軟化温度に対して−10℃より高い場合には、半透膜用支持体が金属ロールに貼り付きやすくなり、半透膜用支持体の表面が不均一となる場合がある。
熱カレンダー処理時のニップのニップ圧力は、好ましくは500〜1200N/cmであり、より好ましくは600〜1100N/cmである。500N/cm未満の場合、半透膜用支持体の強度が低下する場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。1200N/cmを超えた場合、半透膜用支持体表面の繊維と繊維の間の空隙が少なくなり、濾過膜がフレーム材へ深く食い込めず、濾過膜とフレーム材の接着性が低下する場合がある。加工速度は、好ましくは10〜150m/minであり、より好ましくは20〜130m/minである。10m/min未満の場合、半透膜用支持体表面の繊維と繊維の間の空隙が少なくなり、濾過膜がフレーム材へ深く食い込めず、濾過膜とフレーム材の接着性が低下する場合がある。150m/minを超えた場合、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。
<延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる、繊維径3μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維1とした。
<延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径12μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維2とした。
<延伸PET繊維3>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径25μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維3とした。
<未延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径4μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維1とした。
<未延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径12μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維2とした。
<未延伸PET繊維3>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維3とした。
実施例1〜8、比較例1〜3の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を、以下の条件で製造した。
(原紙の製造)
2mの分散タンクに水を投入後、表1に示す原料配合比率(%)で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、表2に示す抄紙条件で、湿式抄造法を用いて抄造し、130℃に設定されたヤンキードライヤーにて熱圧乾燥し、坪量73g/m、幅1000mmの実施例1〜8、比較例1〜3の半透膜用支持体原紙を得た。
(熱カレンダー処理1)
得られた実施例1〜7及び比較例1〜3の半透膜用支持体原紙を、第1ステージの加熱金属ロール(JR)と樹脂ロール(弾)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、表2に示すニップ圧力の条件で、加工速度30m/min、加熱金属ロール表面温度(JR温度)230℃で熱圧加工し、連続して、半透膜用支持体原紙の第1ステージの加熱金属ロールに接した面が第2ステージの樹脂ロールに接するように、第2ステージの樹脂ロールと加熱金属ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、表2に示すニップ圧力の条件で、加工速度30m/min、加熱金属ロール表面温度(JR温度)230℃で熱圧加工を行い、実施例1〜7及び比較例1〜3の半透膜用支持体を得た。なお、第1ステージの処理で加熱金属ロールに当たった面を塗布面とし、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とし、非塗布面が湿式抄造時のワイヤー面/フェルト面のどちらに相当しているかを表2に示した。
(熱カレンダー処理2)
第1ステージ及び第2ステージの樹脂ロール(弾)をコットンロール(コットン)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で実施例8の半透膜用支持体を得た。なお、第1ステージの処理で加熱金属ロールに当たった面を塗布面とし、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とし、非塗布面が湿式抄造時のワイヤー面/フェルト面のどちらに相当しているかを表2に示した。
実施例及び比較例で得られた半透膜用支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表3に示した。
測定1(密度)
JIS P8118:2014「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準じて測定を行った。結果を表3に示した。
測定2(繊維配向強度)
(1)半透膜用支持体表面のSEM画像撮影
半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面を、日本電子社製Scanning Electron microscope JSM−6610LV(製品名)を用いて、倍率50倍で反射電子、加速電圧20kV、スポットサイズ30で撮影した。撮影の際、上下はMD方向(流れ方向)、左右はCD方向とした。1つの半透膜用支持体につき測定点数10箇所の撮影を行った。
(2)繊維配向強度計測の前準備
SEM写真は、撮影時にJPEG形式の画像になっており、これを2000ピクセル×1500ピクセルのbmp形式に変換した。
(3)「繊維配向強度」の計測
プログラム「Fiber Orientation Analysis Ver.8.13 single(FiberOri8s03)」を使用した。本プログラムの中で、元画像から1024ピクセル×1024ピクセルの画像を抽出→移動平均による2値化→FFT変換→two axes modeにて配向角・配高度計算を行い、異方性の度合い「Orientation intensity」を測定した。各半透膜用支持体について、測定点数10箇所で測定し、平均値を本発明における「繊維配向強度」とし、以下の指標で評価した。結果を表3に示した。
A:繊維配向強度が1.00以上1.20以下。
B:繊維配向強度が1.20を超え、1.25以下。
C:繊維配向強度が1.25を超え、1.30以下。
D:繊維配向強度が1.30を超える。
測定3(引張強度比)
JIS P8113:2006「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準じて引張強度を測定し、引張強度の縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)を求めて、縦方向/横方向により算出し、以下の指標で評価した。結果を表3に示した。
引張強度比の指標
A:引張強度比が1.0未満。
B:引張強度比が1.0以上2.0以下。
C:引張強度比が2.0を超える。
評価1(濾過膜とフレーム材の接着強度)
(1)半透膜液の調製
ポリビニリデンフルオライド(商品名:SOLEF(登録商標) 6010/0001、ソルベイ社製)をN−メチル−2−ピロリドン(純正化学社製、特級)に、80℃で加温しながら濃度16%になるように溶解後、温度設定25℃にて半日撹拌して、半透膜液を調製した。
(2)濾過膜の作製
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜用支持体を、塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK−24N)で留めた。半透膜液5〜6gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)28±3g/mとなるように、塗布速度250mm/secにて塗布し、塗布開始後15秒後に20℃の水道水に浸漬して凝固した。3時間水洗した後、乾燥して濾過膜を作製した。
(3)濾過膜とABS樹脂板の接着強度
幅30mm、長さ50mmのABS樹脂板上に、幅25mm、長さ65mmの濾過膜を、半透膜面を上にして重ね合わせ、ヒートシーラー(富士インパルス株式会社製、製品名:FT−230、接着部温度230℃)を使って、ダイヤル10にて、接着時間5秒で加圧し、ABS樹脂板と濾過膜の非塗布面とを接着させた。更に、図3の点線で示した折り返し部分で半透膜用支持体を折り返し、図4に示したように、濾過膜とABS樹脂板をシングルコラム型引張圧縮試験機(装置名:STB−1225S、株式会社エー・アンド・ディ製)のチャックに、チャック間隔20mmで固定し、100mm/minの一定速度で、濾過膜とABS樹脂板が剥離するまで、上チャックを引き上げた時の最大荷重を「濾過膜とフレーム材の接着強度」とし、以下の指標で評価した。実用上、使用可能なレベルは、「C」以上である。
濾過膜とフレーム材の接着強度の指標
A:比較例1の接着強度を1.00とし、比較例1に対する強度比が3.0以上。
B:比較例1に対する強度比が、2.0以上、3.0未満。
C:比較例1に対する強度比が、1.5以上、2.0未満。
D:比較例1に対する強度比が、0.7以上、1.5未満。
E:比較例1に対する強度比が、0.7未満。
評価2(膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の材破の程度)
評価1で、ABS樹脂板から濾過膜を剥離する際の剥がれ方について、5段階評価を行った。実用上、使用可能なレベルは、「B」以上である。
膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の材破の程度の評価基準
A:ABS樹脂板から濾過膜を剥離する際に、濾過膜もちぎれず、濾過膜表面からの繊維剥がれもない。
B:ABS樹脂板から濾過膜を剥離する際に、濾過膜はちぎれないが、一部、濾過膜表面から繊維が剥がれてABS樹脂に付着していた。
C:ABS樹脂板から濾過膜を剥離する際に、濾過膜が破れた。
表3に示す通り、実施例1〜実施例8の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有し、半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下であり、半透膜用支持体の密度が0.40g/cm以上0.70g/cm以下であることから、濾過膜とフレーム材との接着性が良好であった。
実施例1〜3、比較例1の比較から、非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下である実施例1〜3の半透膜用支持体は、繊維配向強度が1.30を超える比較例1の半透膜用支持体よりも、濾過膜とフレーム材の接着強度が高かった。
実施例1〜8と比較例1〜3において、繊維配向強度と引張強度比との間に相関関係は見られなかった。そして、実施例1〜3は、半透膜用支持体の引張強度比が2.0を超えるが、半透膜用支持体の繊維配向強度は1.00以上1.30以下であり、濾過膜とフレーム材の接着性が良好であったことから、引張強度比の値が2.0を超え、半透膜用支持体全体としては縦方向への配向が強くても、非塗布面の表層の繊維配向強度が1.00以上1.30以下の範囲であれば、濾過膜とフレーム材の接着性に優れることが分かる。
実施例1、実施例4、実施例5、比較例2及び比較例3の比較から、半透膜用支持体の密度が0.40g/cm以上0.70g/cm以下である実施例1、実施例4及び実施例5の半透膜用支持体は、密度が0.40g/cm未満の比較例2及び密度が0.70g/cmを超える比較例3の半透膜用支持体よりも、濾過膜とフレーム材の接着強度が高かった。
実施例1及び実施例6〜8の比較から、半透膜用支持体の非塗布面の繊維配向強度は、半透膜用支持体の湿式抄造時の表裏面、抄紙条件及び熱カレンダー処理時のロール組み合わせといった製造条件が変わっても、調整可能であることが分かる。

Claims (2)

  1. 主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布からなる膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、半透膜用支持体の半透膜が設けられる塗布面と反対の非塗布面の繊維配向強度が1.00以上1.30以下であり、半透膜用支持体の密度が0.40g/cm以上0.70g/cm以下であることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
  2. 請求項1記載の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に、半透膜が設けられてなる膜分離活性汚泥処理用濾過膜。
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