JP2020162215A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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佐藤 靖之
Yasuyuki Sato
靖之 佐藤
英毅 柿迫
Hideki Kakisako
英毅 柿迫
翔太郎 近藤
Shotaro Kondo
翔太郎 近藤
純一朗 大坪
Junichiro Otsubo
純一朗 大坪
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Abstract

【課題】制御状態が切り替わる際に生じうる回転電機の回転トルクの変動を低減する。【解決手段】軸(Is)まわりに噛み合い用の歯状部(311、321A、321B)をそれぞれ有する第1要素(31)及び第2要素(32A、32B)を備えるクラッチ(30)と、第1要素の軸まわりの回転を可能とする車両駆動用の回転電機(10)と、回転電機を制御する回転電機制御部(50;152、157)とを含み、回転電機制御部は、非噛み合い状態から噛み合い状態に遷移させる場合に、目標速度で回転するように回転電機を制御する第1制御状態と、目標トルクが出力されるように回転電機を制御する第2制御状態とを順に形成し、第2制御状態において、回転電機に対する制御パラメータの値を、第1制御状態で用いた第1の値から、遷移後に設定される目標トルクに応じた第2の値に向けて徐々に変更する、車両用駆動装置(1)が開示される。【選択図】図4

Description

本開示は、車両用駆動装置に関する。
トランスミッションのギア段が切り替わる際に、モータにトルクを出力させるトルク制御と、モータの出力軸の回転数を制御する回転数制御との間でモータの制御を切り替える技術が知られている。
特開2018−46648号公報
しかしながら、上記のような従来技術では、回転数制御状態からトルク制御状態へ切り替わる際にモータトルクに比較的大きな変動が生じるおそれがある。
そこで、1つの側面では、本発明は、制御状態が切り替わる際に生じうる回転電機の回転トルクの変動を低減することを目的とする。
1つの側面では、軸まわりに噛み合い用の歯状部をそれぞれ有する第1要素及び第2要素を備え、前記第1要素と前記第2要素の間での軸方向の相対移動によって噛み合い状態と非噛み合い状態との間で遷移可能であり、前記噛み合い状態において前記第1要素と前記第2要素の間で軸まわりの回転トルクの伝達が可能なクラッチと、
前記第1要素の軸まわりの回転を可能とする車両駆動用の回転電機と、
前記回転電機を制御する回転電機制御部とを含み、
前記回転電機制御部は、前記非噛み合い状態から前記噛み合い状態に遷移させる場合に、目標速度で回転するように前記回転電機を制御する第1制御状態と、目標トルクが出力されるように前記回転電機を制御する第2制御状態とを順に形成し、前記第2制御状態において、前記回転電機に対する制御パラメータの値を、前記第1制御状態で用いた第1の値から、遷移後に設定される目標トルクに応じた第2の値に向けて徐々に変更する、車両用駆動装置が提供される。
1つの側面では、本発明によれば、制御状態が切り替わる際に生じうる回転電機の回転トルクの変動を低減することが可能となる。
一実施例による車両用駆動装置の構成を示す概略図である。 車両用駆動装置における遊星歯車機構の速度線図である。 制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。 制御装置の機能構成の一例を示す概略図である。 所定の切替条件(回転数制御状態からトルク制御状態への切り替わりのタイミング)の説明図である。 変速制御部により実現される変速制御の一例を概略的に示すタイミングチャートである。 変形例による変速制御の一例を概略的に示すタイミングチャートである。 変速制御に関連して制御装置により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。 “ドグ係合”モードにおける処理(ステップS134)の一例を示す概略フローチャートである。 “トルク復帰”モードにおける処理(ステップS136)の一例を示す概略フローチャートである。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、本明細書において、「所定」とは、「予め定められた」という意味で使用されている。
図1は、一実施例による車両用駆動装置1の構成を示す概略図である。図1では、車両用駆動装置の一部の構成がスケルトン図で示されている。
車両用駆動装置1は、電気自動車用の駆動装置であり、モータ10(回転電機の一例)と、遊星歯車機構20と、係合装置30(クラッチの一例)と、第1ギア列41と、第2ギア列42とを備える。
モータ10は、車両駆動用の回転トルクを発生する。なお、モータ10のタイプや構造等は任意である。モータ10は、ジェネレータ(発電機)としても機能できるモータ・ジェネレータであってもよい。
遊星歯車機構20は、モータ10と出力軸60との間に設けられる。本実施例では、一例として、遊星歯車機構20は、シングルピニオンタイプである。遊星歯車機構20は、サンギア21と、リングギア22と、ピニオン23と、キャリア24とを含む。
係合装置30は、機械的な噛み合い状態と非噛み合い状態を選択的に形成可能なクラッチである。係合装置30は、ドッグクラッチ301、302を備える。ドッグクラッチ301、302は、それぞれ、軸方向に近接すると噛み合い状態となりかつ軸方向に離間すると非噛み合い状態となる2つの要素を備える。なお、近接とは、互いの一部が軸方向で重なる状態を含む概念である。
本実施例では、図1に示すように、係合装置30は、スリーブの形態の第1要素31と、クラッチリングの形態の第2要素32A、32Bと、クラッチハブ304とを含む。この場合、係合装置30は、第1要素31と第2要素32Aとが一のドッグクラッチ301を形成し、第1要素31と第2要素32Bとが別の一のドッグクラッチ302を形成する。なお、この場合、第1要素31は、2つのドッグクラッチ301、302を形成する共通の要素である。
第1要素31は、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有する。第1要素31は、内周側に周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部311を有する。歯状部311は、例えば軸方向の端部(歯先)がチャンファの形態であってよい。各歯状部311は、径方向内側に突出する態様で軸Isに対する径方向に延在し、複数の歯状部311は、軸Isに沿った方向に視て放射状に延在する。
第1要素31は、外周面に径方向内側に凹む凹溝312を有する。凹溝312は、周方向で全周にわたり延在する。凹溝312は、後述するようにシフトフォーク70と協動する。
第1要素31は、クラッチハブ304に対して、軸Isに沿って並進可能であり、かつ、軸Isまわりに回転不能な態様で、設けられる。例えば、第1要素31は、クラッチハブ304とスプライン結合されてよい。クラッチハブ304は、サンギア21の軸Isと一体回転する。従って、第1要素31は、クラッチハブ304とともにサンギア21の軸Isと一体回転するが、サンギア21の軸Isに沿って並進可能である。
このようにして、第1要素31は、回転状態で又は非回転状態で、図1に示す中立位置と、第2要素32Aと噛み合う位置(図1の位置P100参照)と、第2要素32Bと噛み合う位置(図1の位置P200参照)との間で、軸Isに沿って並進可能である。
第2要素32Aは、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有する。第2要素32Aの外周面は、第1要素31の内周面よりも径が小さく、その径方向の差に応じた径方向の長さで第1要素31の歯状部311及び第2要素32Aの歯状部321A(後述)が形成される。第2要素32Aは、第1要素31の歯状部311と同様、周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部321Aを有する。歯状部321Aは、第2要素32Aの外周面に周方向に沿って形成される。各歯状部321Aは、径方向外側に突出する態様で軸Isに対する径方向に延在し、複数の歯状部321Aは、軸Isに沿った方向に視て放射状に延在する。なお、複数の歯状部321Aは、一部の歯状部321Aが他の歯状部321Aに比べて、軸Isに沿った方向で第1要素31側に長くなる態様で形成されてもよい。
第2要素32Aの歯状部321A及び第1要素31の歯状部311は、第2要素32Aと第1要素31とが軸方向に近接すると噛み合い状態を形成する。噛み合い状態が形成されると、第1要素31と第2要素32Aの間で軸Isまわりの回転トルクの伝達が可能となる。
第2要素32Aは、第2要素32Bとは異なり、固定要素であり、例えばモータハウジング(図示せず)に固定される。
第2要素32Bは、第2要素32Aと同様、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有し、周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部321Bを有する。
第2要素32Bの歯状部321B及び第1要素31の歯状部311は、第2要素32Bと第1要素31とが軸方向に近接すると噛み合い状態を形成する。噛み合い状態が形成されると、第1要素31と第2要素32Bの間で軸Isまわりの回転トルクの伝達が可能となる。
第2要素32Bは、回転要素であり、後述のように、キャリア24の回転軸Icと一体回転する。
第1ギア列41は、径方向で噛み合うギアG1とギアG2とからなる。ギアG1は、回転軸Icに設けられ、回転軸Icと一体回転し、ギアG2は、カウンタ軸50に設けられ、カウンタ軸50と一体回転する。
第2ギア列42は、径方向で噛み合うギアG3とギアG4とからなる。ギアG3は、カウンタ軸50に設けられ、カウンタ軸50と一体回転する。ギアG4は、出力軸60に設けられ、出力軸60と一体回転する。
車両用駆動装置1は、更に、シフトフォーク70と、ボールねじ機構72と、アクチュエータ74とを含む。
シフトフォーク70は、第1要素31の凹溝312に摺動可能に嵌合する。すなわち、シフトフォーク70は、第1要素31の軸Isまわりの回転を可能とする一方、第1要素31の軸Isに沿った方向の相対的な移動を拘束する。
シフトフォーク70は、ボールねじ機構72のナット721に結合される。なお、ナット721は、シフトフォーク70と一体的に形成されてよい。
ボールねじ機構72は、ナット721と、ねじ軸722と、ボール(図示せず)等を含む。
アクチュエータ74は、例えば正逆回転可能な電気モータであり、ねじ軸722に連結される。アクチュエータ74は、ねじ軸722を正回転させると、ナット721及びそれに伴いシフトフォーク70が、ねじ軸722に沿って一方側に移動され、ねじ軸722を逆回転させると、ナット721及びそれに伴いシフトフォーク70が、ねじ軸722に沿って他方側に移動される。
このようにして、アクチュエータ74が駆動されると、シフトフォーク70及びそれに伴い第1要素31は、ボールねじ機構72を介して、軸Isに沿って並進駆動される。なお、シフトフォーク70及びボールねじ機構72は、上述のように、アクチュエータ74の駆動力を係合装置30(第1要素31)に伝達する動力伝達部7を形成する。
また、車両用駆動装置1は、更に、シフトディテント機構90を備える。
シフトディテント機構90は、シフトフォーク70の位置を規定することで、第1要素31の軸Isに沿った方向の位置を、複数の安定化位置で規定(安定化)する機能を有する。本実施例では、複数の安定化位置は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う位置と、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う位置と、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない中立位置とに対応する。
シフトディテント機構90は、フォークシャフト92(凹部形成部材の一例)と、コイルばね94(弾性部材の一例)と、ロックボール96(係合体の一例)とを含む。
フォークシャフト92は、シフトフォーク70と一体の部材であり、例えば、図1に模式的に示すように、ナット721に結合される。フォークシャフト92は、上述した3つの安定化位置に対応して、3つの凹部(ディテント)920、921、922を有する。凹部920、921、922は、フォークシャフト92の移動方向に沿って並ぶ態様で設けられる。
コイルばね94は、ロックボール96をフォークシャフト92に向けて付勢する。コイルばね94は、一端が例えばモータハウジング(図示せず)に支持され、他端にロックボール96が設けられる。
ロックボール96は、コイルばね94によりフォークシャフト92に向けて付勢されることで、フォークシャフト92に設けられる凹部920、921、922のいずれかに嵌まることができる。ロックボール96が凹部920、921、922のいずれかに嵌まると、その位置からのフォークシャフト92の安易な移動が困難となり、その位置でフォークシャフト92を安定化させる機能を有する。なお、ロックボール96が凹部920、921、922のいずれかに嵌まるときのフォークシャフト92の位置は、上述した3つの安定化位置に対応する。具体的には、ロックボール96が凹部922に嵌まる状態は、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う状態(後述の第2噛み合い状態)に対応し、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態は、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない状態(後述の非噛み合い状態)に対応し、ロックボール96が凹部921に嵌まる状態は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う状態(後述の第1噛み合い状態)に対応する。
次に、図1を依然として参照しつつ、モータ10、遊星歯車機構20、係合装置30等の接続関係(車両駆動に関連した接続関係)について説明する。
モータ10には、遊星歯車機構20を介して出力軸(ディファレンシャル軸)60が接続される。具体的には、モータ10の出力軸は、遊星歯車機構20のリングギア22に連結され、リングギア22と一体回転する。遊星歯車機構20は、キャリア24が、出力軸60に接続される。すなわち、キャリア24の回転軸Icは、第1ギア列41を介してカウンタ軸50に接続され、カウンタ軸50が第2ギア列42を介して出力軸60に接続される。このようにして、モータ10は、遊星歯車機構20のリングギア22、キャリア24、第1ギア列41、及び第2ギア列42を介して、出力軸60に接続される。
また、モータ10には、遊星歯車機構20を介して係合装置30が接続される。具体的には、遊星歯車機構20のキャリア24の回転軸Icには、ドッグクラッチ302の第2要素32Bが連結される。第2要素32Bは、回転軸Icまわりに、回転軸Icと一体回転する。また、遊星歯車機構20のサンギア21の回転軸である軸Isには、ドッグクラッチ301、302を形成する第1要素31が連結される。第1要素31は、軸Isと一体回転する。なお、第1要素31は、上述のように、軸Isに対して、軸方向に並進可能かつ軸まわりに回転不能に設けられる。すなわち、第1要素31は、サンギア21と一体回転するが、軸方向に移動可能である。
次に、図2を参照して、車両用駆動装置1の変速について概説する。図2は、車両用駆動装置1における遊星歯車機構20の速度線図である。
本実施例では、係合装置30は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う状態(以下、「第1噛み合い状態」と称する)と、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う状態(以下、「第2噛み合い状態」と称する)と、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない状態(以下、「非噛み合い状態」と称する)との間で、遷移可能である。なお、第1噛み合い状態は、ドッグクラッチ301の係合状態に対応し、第2噛み合い状態は、ドッグクラッチ302の係合状態に対応し、非噛み合い状態は、ドッグクラッチ301、302の非係合状態に対応する。
係合装置30の第1噛み合い状態が実現されると、低速ギア段が実現される。具体的には、第1噛み合い状態では、第2要素32Aによってサンギア21が固定される。従って、モータ10の回転速度は、遊星歯車機構20で減速されて回転軸Icに出力され(図2の“Low”のライン参照)、回転軸Icの回転速度は、更に、第1ギア列41(ギアG1及びギアG2)及び第2ギア列42(ギアG3及びギアG4)により減速されて出力軸60に出力される。
係合装置30の第2噛み合い状態が実現されると、高速ギア段が実現される。具体的には、第2噛み合い状態では、第2要素32Bによってサンギア21とキャリア24の回転軸Icとが一体化される。従って、モータ10の回転速度は、遊星歯車機構20で減速されることなくそのまま回転軸Icに出力され(図2の“High”のライン参照)、回転軸Icの回転速度は、第1ギア列41(ギアG1及びギアG2)及び第2ギア列42(ギアG3及びギアG4)により減速されて出力軸60に出力される。
係合装置30の非噛み合い状態が実現されると、ニュートラルが実現される。具体的には、回転軸Icが出力軸60から反力を受けた状態で、サンギア21がフリーとなる。
次に、図3及び図4を参照して、車両用駆動装置1の制御系について説明する。車両用駆動装置1の制御系は、車両用駆動装置1を制御するための制御装置100を含む。
図3は、制御装置100のハードウェア構成の一例を示す概略図である。図3には、制御装置100のハードウェア構成に関連付けて、他の車載電子機器130が模式的に図示されている。
他の車載電子機器130は、モータ10や、アクチュエータ74に加えて、シフトポジションセンサ131や、車輪速センサ132、モータ回転数センサ134、アクチュエータ回転角センサ135等を含む。
シフトポジションセンサ131は、ユーザ(運転者)により操作されるシフトレバーの位置を検出し、シフトレバーの位置に応じた信号を生成する。車輪速センサ132は、車速に応じた信号を生成する。モータ回転数センサ134は、モータ10の回転数に応じた信号を生成する。なお、モータ回転数センサ134は、レゾルバであってよい。アクチュエータ回転角センサ135は、アクチュエータ74の回転角に応じた信号を生成する。アクチュエータ回転角センサ135は、例えばホールIC(Integrated Circuit)やレゾルバ等であってよい。
制御装置100は、バス119で接続されたCPU(Central Processing Unit)111、RAM(Random Access Memory)112、ROM(Read Only Memory)113、補助記憶装置114、ドライブ装置115、及び通信インターフェース117、並びに、通信インターフェース117に接続された有線送受信部125及び無線送受信部126を含む。
補助記憶装置114は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
有線送受信部125は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などのプロトコルに基づく有線ネットワーク128を利用して通信可能な送受信部を含む。有線送受信部125には、他の車載電子機器130が接続される。ただし、他の車載電子機器130の一部又は全部は、バス119に接続されてもよいし、無線送受信部126に接続されてもよい。
無線送受信部126は、無線ネットワークを利用して通信可能な送受信部である。無線ネットワークは、携帯電話の無線通信網、インターネット、VPN(Virtual Private Network)、WAN(Wide Area Network)等を含んでよい。また、無線送受信部126は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)部、ブルートゥース(Bluetooth、登録商標)通信部、Wi−Fi(Wireless−Fidelity)送受信部、赤外線送受信部などを含んでもよい。
なお、制御装置100は、記録媒体116と接続可能であってもよい。記録媒体116は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体116に格納されたプログラムは、ドライブ装置115を介して制御装置100の補助記憶装置114等にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、制御装置100のCPU111により実行可能となる。例えば、記録媒体116は、CD(Compact Disc)−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。
図4は、制御装置100の機能構成の一例を示す概略図である。なお、図4に示す機能構成は、車両用駆動装置1のすべての機能を実現するためのすべての機能構成を必ずしも表すものでなく、特定の機能にのみ関連した構成を表す。
制御装置100は、図4に示すように、センサ情報取得部150と、要求ギア段検出部151と、モータ制御部152(回転電機制御部の一例)と、アクチュエータ制御部153と、アクチュエータ情報生成部154と、位置情報生成部156と、変速制御部157とを含む。センサ情報取得部150、要求ギア段検出部151、モータ制御部152、アクチュエータ制御部153、アクチュエータ情報生成部154、位置情報生成部156、及び変速制御部157は、CPU111が記憶装置(例えばROM113)内の1つ以上のプログラムを実行することで実現できる。
センサ情報取得部150は、シフトポジションセンサ131や、車輪速センサ132、アクチュエータ回転角センサ135等から各種センサ情報を取得する。
要求ギア段検出部151は、シフトポジションセンサ131からのセンサ情報に基づいて、変速段の変更要求(以下、「変速要求」とも称する)があるか否かを判定する。要求ギア段検出部151は、変速要求がある場合は、実現すべき変速段(以下、「要求ギア段」)を判定(検出)する。本実施例では、一例として、変速段は、「High」と「Low」の2段と、「ニュートラル」とを含む。マニュアルモードの場合は、要求ギア段検出部151は、シフトポジションセンサ131からのセンサ情報に基づいて、変速要求及び要求ギア段を検出できる。
また、要求ギア段検出部151は、例えばシフトポジションセンサ131が「D」レンジにあるときは、例えば車速とアクセル開度との関係に基づいて、要求ギア段を検出する。なお、変速要求及び要求ギア段は、外部(上位)のECU(Electronic Control Unit)から取得されてもよい。
モータ制御部152は、モータ10を制御する。モータ制御部152は、運転者からの要求トルク(例えばアクセル開度から導出)に基づいて、モータ10の出力トルクの制御目標値である目標トルクを決定し、当該目標トルクが実現されるようにモータ10を制御する。また、いわゆる自動運転モードがある車両においては、目標トルクは、周辺監視センサ(ミリ波レーダやLiDAR:Light Detection and Ranging、画像センサ等)からの周辺情報やインフラ情報等に基づいて決定されてもよい。以下では、運転者からの要求トルクや周辺環境等から決まる目標トルクを、後述する変速制御中の他の因子から定まる目標トルクと区別するために、「運転者要求トルク」と称する場合がある。
モータ制御部152は、変速制御部157と協動して、変速制御を行う際、目標トルクが出力されるようにモータ10を制御するトルク制御状態(第2制御状態の一例)と、モータ回転数が目標回転数となるようにモータ10を制御する回転数制御状態(第1制御状態の一例)とを選択的に形成する。なお、変速制御中におけるトルク制御状態では、目標トルクは、上述した態様とは異なる態様で決定される(図6等を参照して後述)。
アクチュエータ制御部153は、アクチュエータ74を制御する。すなわち、アクチュエータ制御部153は、変速制御部157と協動して、係合装置30の状態を、非噛み合い状態、第1噛み合い状態、及び第2噛み合い状態間で遷移させる遷移処理を行う。
アクチュエータ情報生成部154は、アクチュエータ回転角センサ135からのセンサ情報に基づいて、フォークシャフト92のストローク量を表すストローク情報を生成する。なお、本実施例では、アクチュエータ74により駆動される物体(例えばフォークシャフト92)のストローク量を(直接的に)検出するストロークセンサが設けられてもよいが、設けられなくてもよい。ストロークセンサが設けられない場合、ストローク情報が表すストローク量は、アクチュエータ回転数のような、ストローク量に相関するパラメータから導出されることになる。具体的には、例えばアクチュエータ回転角センサ135がホールICである場合、ホールICは、アクチュエータ74の出力軸の回転に応じたパルス(例えば3相のそれぞれごとのパルス)を出力する。この場合、アクチュエータ情報生成部154は、ホールICからのパルスの変化態様に基づいて、ねじ軸722の回転方向(すなわちフォークシャフト92の移動方向がX1側かX2側か)や、ねじ軸722の回転角度(すなわちフォークシャフト92のストローク量)を導出できる。
位置情報生成部156は、アクチュエータ情報生成部154により取得されるストローク情報に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を生成する。なお、フォークシャフト92の位置情報は、シフト基準位置からの距離で表されてよい。例えば、フォークシャフト92の位置情報は、例えばシフト基準位置を“0点”とし、X1側を“負(−)”としX2側を“正(+)”として、フォークシャフト92の位置を、シフト基準位置からの距離で表してよい。
位置情報生成部156により生成されるフォークシャフト92の位置情報は、制御装置100における各種制御に用いることができる。例えば、フォークシャフト92の位置情報は、上述した遷移処理等に利用できる。例えば、アクチュエータ制御部153は、フォークシャフト92の位置情報に基づいて、遷移処理におけるフォークシャフト92のストローク量をフィードバック制御してもよい。
変速制御部157は、要求ギア段検出部151が変速要求を検出すると、変速制御を行う。具体的には、変速制御部157は、モータ制御部152及びアクチュエータ制御部153と協動して、当該変速要求に係る要求ギア段が実現されるように、モータ10及びアクチュエータ74を制御する。
変速制御部157は、制御モード設定部1571と、モータ制御モード設定部1572と、制御パラメータ算出部1573とを含む。
制御モード設定部1571は、制御モードを、“ギア保持”モード、“トルク抜き”モード、“ドグ抜き”モード、“回転同期”モード、“ドグ係合”モード、及び“トルク復帰”モード間で、切り替える。“ギア保持”モードは、定常モードであり、係合装置30は第1噛み合い状態又は第2噛み合い状態で保持される。“トルク抜き”モード、“ドグ抜き”モード、“回転同期”モード、“ドグ係合”モード、及び“トルク復帰”モードは、変速要求に応じた要求ギア段の変更の際に順に形成される。
変速制御は、“ギア保持”モードにおいて変速要求の検出に応じて“トルク抜き”モードが形成されることで開始され、当該変速要求に係る要求ギア段の実現に応じて“ギア保持”モードが復帰するまで、実行される。
制御モード設定部1571は、“ギア保持”モードにおいて、変速要求が検出されると、制御モードを“ギア保持”モードから“トルク抜き”モードに切り替える。
“トルク抜き”モードは、第1要素31まわりの回転トルク(第1要素31の軸Isまわりの回転トルク)を“0”まで低下させるために形成される。
制御モード設定部1571は、“トルク抜き”モードにおいて、第1要素31まわりの回転トルクが“0”まで低下したと判定すると、制御モードを“トルク抜き”モードから“ドグ抜き”モードに切り替える。
“ドグ抜き”モードは、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、現在の噛み合い状態から非噛み合い状態へと係合装置30を遷移させるために形成される。“ドグ抜き”モードでは、アクチュエータ制御部153による遷移処理の一部(非噛み合い状態となるまでのフォークシャフト92の移動)が実行される。
制御モード設定部1571は、“ドグ抜き”モードにおいて、非噛み合い状態への遷移が完了したと判定すると、制御モードを“ドグ抜き”モードから“回転同期”モードに切り替える。なお、非噛み合い状態への遷移が完了したか否かは、位置情報生成部156により生成されるフォークシャフト92の位置情報に基づいて判定されてよい。
“回転同期”モードは、第1要素31の回転数を、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素の回転数に同期させるために形成される。“回転同期”モードにより、非噛み合い状態から、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、遷移先の噛み合い状態への遷移が円滑に実現される。なお、例えば「Low」から「High」への要求ギア段の変更に係る変速要求の場合、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素は、第2要素32Bであり、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、遷移先の噛み合い状態は、第2噛み合い状態である。
制御モード設定部1571は、“回転同期”モードにおいて、第1要素31の回転数が噛み合い対象の第2要素の回転数に同期したと判定すると、制御モードを“回転同期”モードから“ドグ係合”モードに切り替える。
“ドグ係合”モードは、非噛み合い状態から、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、遷移先の噛み合い状態へと係合装置30を遷移させるために形成される。“ドグ係合”モードでは、アクチュエータ制御部153による遷移処理の残りの一部(非噛み合い状態からのフォークシャフト92の移動)が実行される。
制御モード設定部1571は、“ドグ係合”モードにおいて、非噛み合い状態から遷移先の噛み合い状態への遷移が完了したと判定すると、制御モードを“ドグ係合”モードから“トルク復帰”モードに切り替える。なお、非噛み合い状態から遷移先の噛み合い状態への遷移が完了したか否かは、位置情報生成部156により生成されるフォークシャフト92の位置情報に基づいて判定されてよい。
“トルク復帰”モードは、モータトルクを運転者要求トルクに復帰させるために形成される。
モータ制御モード設定部1572は、変速制御中、モータ制御部152によるモータ10の制御状態を、回転数制御状態と、トルク制御状態との間で切り替える。モータ制御モード設定部1572は、“回転同期”モードと、“ドグ係合”モードの前半部とにおいて、モータ10の制御状態を、回転数制御状態に設定し、それ以外(すなわち、“ギア保持”モード、“トルク抜き”モード、“ドグ抜き”モード、“ドグ係合”モードの後半部、及び“トルク復帰”モード)において、モータ10の制御状態を、トルク制御状態に設定する。
モータ制御モード設定部1572は、制御モード設定部1571により設定される制御モードに応じて、モータ制御部152によるモータ10の制御状態を、回転数制御状態と、トルク制御状態との間で切り替える。
モータ制御モード設定部1572は、“ドグ係合”モードを除いて、一の制御モード中において、回転数制御状態とトルク制御状態との間の切り替えを行うことはない。
本実施例では、モータ制御モード設定部1572は、“ドグ係合”モードにおいて、所定の切替条件が成立すると、モータ10の制御状態を、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替える。
所定の切替条件は、非噛み合い状態から、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、遷移先の噛み合い状態への遷移過程において、第1要素31と、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素との間で、回転トルクが伝達可能となった場合に満たされてよい。
図5は、所定の切替条件の一例の説明図である。図5には、ドッグクラッチ301の第1要素31と第2要素32Aのそれぞれの一部が、周方向に展開した状態の断面視で概略的に示される。図5において、“軸方向”とは、軸Isに沿った方向に対応する。
図5には、第1要素31における周方向に沿って複数設けられる歯状部311のうちの、隣接する2つの歯状部311が示される。同様に、第2要素32Aにおける周方向に沿って複数設けられる歯状部321Aのうちの、1つの歯状部321Aが示される。
第1要素31の歯状部311は、図5に示すビューで、周方向の中心を通る軸方向のラインに関して線対称な形態である。歯状部311は、歯先部3110と、側面部3112とを含む。歯先部3110は、図5に示すビューで、周方向の中心の先端(軸方向で第2要素32A側)に向かって尖る形態であり、側面部3112は、根本から先端側に向けて幅が広がる態様のテーパー状の形態である。第2要素32Aの歯状部321Aも同様であり、歯先部3210と、側面部3212とを含む。なお、図示しないが、第2要素32Bについても同様であってよい。以下では、歯状部311における幅(図5に示すビューで周方向の幅)が最も広くなる箇所を、第1境界点3111と称し、歯状部321Aにおける幅が最も広くなる箇所を、第2境界点3211と称する。
図5は、第1境界点3111と第2境界点3211との軸方向の位置が一致した状態を示す。この状態が、第1要素31と第2要素32Aとの間で回転トルクが伝達可能となるかどうかの境界状態に対応する。すなわち、第1要素31と第2要素32Aとが、図5に示す位置関係(軸方向の位置関係)に対して、軸方向に僅かに離れると、第1要素31と第2要素32Aとの間で回転トルクの伝達が不能となる。図5に示す位置関係に対して軸方向に僅かに離れた状態では、第1要素31の歯状部311の歯先部3110と第2要素32Aの歯状部321Aの歯先部3210とが周方向で当接し合う関係となるためである。なお、第1要素31と第2要素32Aとが、図5に示す位置関係(軸方向の位置関係)に対して、軸方向に更に離れ、歯状部311と歯状部321Aとが軸方向に重ならなくなると、上述した非噛み合い状態が実現される(第1要素31と第2要素32Aとは互いに対して干渉することなく相対回転可能な状態となる)。他方、第1要素31と第2要素32Aとが、図5に示す位置関係(軸方向の位置関係)に対して、軸方向に僅かに近接すると、第1要素31と第2要素32Aとの間で回転トルクの伝達が可能となる。この状態では、第1要素31の歯状部311の側面部3112と第2要素32Aの歯状部321Aの側面部3212とが周方向で当接し合う関係となるためである。なお、第1要素31と第2要素32Aとが、図5に示す位置関係(軸方向の位置関係)に対して、軸方向に更に近接すると、上述した第1噛み合い状態が実現される。
なお、ここでは、図5を参照して、第1要素31と第2要素32Aとの間で回転トルクが伝達可能となるときの、第1要素31と第2要素32Aとの軸方向の位置関係を示したが、第1要素31と第2要素32Bとの間で回転トルクが伝達可能となるときの、第1要素31と第2要素32Bとの軸方向の位置関係も同様である。
本実施例では、所定の切替条件は、一例として、図5に示す軸方向の位置関係が実現された際に満たされるものとする。以下では、第1要素31と第2要素32Aとが、図5に示す軸方向の位置関係となるときのフォークシャフト92の位置を、「Low側噛合境界位置」と称し、第1要素31と第2要素32Bとが、図5に示すような軸方向の位置関係となるときのフォークシャフト92の位置を、「High側噛合境界位置」と称する。この場合、非噛み合い状態から第1噛み合い状態への遷移に関しては、所定の切替条件は、フォークシャフト92の位置がLow側噛合境界位置に一致した場合又は僅かに超えた場合(第1要素31が第2要素32Aに近接する側に超えた場合)に満たされてよい。同様に、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移に関しては、所定の切替条件は、フォークシャフト92の位置がHigh側噛合境界位置に一致した場合又は僅かに超えた場合(第1要素31が第2要素32Bに近接する側に超えた場合)に満たされてよい。
フォークシャフト92の位置がLow側噛合境界位置に一致したか否か(フォークシャフト92の位置がHigh側噛合境界位置に一致したか否かについても同様)は、フォークシャフト92の位置情報に基づいて判定できる。なお、フォークシャフト92の位置がLow側噛合境界位置に一致するタイミング(フォークシャフト92の位置がHigh側噛合境界位置に一致するタイミングも同様)は、非噛み合い状態からのフォークシャフト92の移動距離が、予め規定された距離を超えるタイミングに対応する。この場合、予め規定された距離は、Low側噛合境界位置と非噛み合い状態でのフォークシャフト92の位置との間の距離(軸方向の距離)に対応する。従って、等価的に、所定の切替条件の成否は、アクチュエータ情報生成部154によるストローク情報に基づいて判定されてもよい。
制御パラメータ算出部1573は、変速制御中におけるモータ10の制御パラメータの値を算出する。本実施例では、一例として、モータ10の制御パラメータは、トルクの次元であり、モータトルクの指令値であるとする。ただし、変形例では、モータ10の制御パラメータは、モータトルクと相関する他の次元のパラメータ(例えばデューティ、q軸電流指令値等)であってもよい。モータ制御部152は、変速制御中、制御パラメータ算出部1573により算出される制御パラメータの値に基づいて、モータ10を制御する。
制御パラメータ算出部1573は、回転数制御状態においては、遷移先の変速段に応じた同期回転数に目標回転数を設定し、モータ回転数が目標回転数となるように制御パラメータの値を算出する。例えば、「Low」から「High」への要求ギア段の変更に係る変速要求の場合、遷移先の「High」に応じた同期回転数(図6のHigh同期回転数L62)に目標回転数を設定し、モータ回転数が目標回転数となるように制御パラメータの値を算出する。
また、制御パラメータ算出部1573は、“トルク抜き”モード(当該モードでは、上述のように、トルク制御状態が設定される)においては、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に徐々に低下するように目標トルクを設定し、当該目標トルクが実現されるような制御パラメータの値を算出する。この際、制御パラメータ算出部1573は、第1要素31まわりの回転トルクが現在値から一定の時間(“トルク抜き”モードが形成される期間に対応)をかけて徐々に“0”に近づくように、当該時間にわたる制御パラメータの値を算出する。すなわち、“トルク抜き”モードでは、制御パラメータ算出部1573は、“ギア保持”モードでは運転者要求トルクに対応していた目標トルクが、第1要素31まわりの回転トルクが“0”になるような目標トルクまで徐々に低下していく態様で、制御パラメータの値を変化させる。
また、制御パラメータ算出部1573は、“ドグ抜き”モード(当該モードでは、上述のように、トルク制御状態が設定される)においては、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に維持されるように目標トルクを設定し、当該目標トルクが実現されるような制御パラメータの値を算出する。
また、制御パラメータ算出部1573は、“ドグ係合”モードの後半部(当該モードの後半部では、上述のように、トルク制御状態が設定される)においては、“ドグ抜き”モードの場合と同様、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に維持されるように目標トルクを設定し、当該目標トルクが実現されるような制御パラメータの値を算出する。
また、制御パラメータ算出部1573は、“トルク復帰”モード(当該モードでは、上述のように、トルク制御状態が設定される)においては、モータトルクが運転者要求トルクに向けて徐々に増加するように目標トルクを設定し、当該目標トルクが実現されるような制御パラメータの値を算出する。
図6は、変速制御部157により実現される変速制御の一例を概略的に示すタイミングチャートである。図6では、上から順に、要求ギア段、変速制御モード、モータ回転数、モータ制御モード、モータトルク、及びストロークの各時系列が示される。なお、図6に示す各パラメータについて、要求ギア段は、要求ギア段検出部151による検出結果に対応し、モータ回転数は、モータ回転数センサ134からのセンサ情報に対応し、ストロークは、ストローク情報のストローク量(フォークシャフト92の移動量)に対応する。ストロークにおける「Hi」は、上述した第2噛み合い状態に対応し、「Lo」は、上述した第1噛み合い状態に対応し、ストロークにおける「N」は、上述した非噛み合い状態に対応する。また、ストロークに関連付けて、Low側噛合境界位置のライン610と、High側噛合境界位置のライン620とが併せて示される。
図6に示す例では、変速制御部157は、制御モードを、“ギア保持(定常)”モード、“トルク抜き”モード、“ドグ抜き”モード、“回転同期”モード、“ドグ係合”モード、及び“トルク復帰”モード間で、切り替えながら、変速制御を実行する。
具体的には、図6に示す例では、時点t60では、要求ギア段が“Low”であり、当該要求ギア段が形成されている状態(“ギア保持”モード)である。時点t61で変速要求が発生し、要求ギア段が“Low”から“High”に変更される。変速要求が発生すると、“トルク抜き”モードが形成され、モータトルクが徐々に低下される。モータトルクが所定値まで低下すると、時点t62で“ドグ抜き”モードが形成され、モータ回転数がLow同期回転数L61に同期された状態で、第1噛み合い状態から非噛み合い状態への遷移処理が実行される。第1噛み合い状態から非噛み合い状態への遷移処理が完了すると、時点t63で“回転同期モード”が形成され、モータ回転数がHigh同期回転数L62へと同期される。なお、この間は、モータ制御部152によりモータ10の回転数制御状態が形成され、モータトルクは、回転数制御で決まる。モータ回転数がHigh同期回転数L62に同期すると、時点t64で“ドグ係合”モードが形成され、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が実行される。非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理の途中で、フォークシャフト92の位置がHigh側噛合境界位置(ライン620参照)に達することで、上述した所定の切替条件が満たされる。これにより、“ドグ係合”モード中の時点t65(第1タイミングの一例)で、モータ10の制御状態が回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる。その後、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了すると、時点t67(第2タイミングの一例)で“トルク復帰”モードが形成され、モータトルクが、運転者要求トルクに向けて徐々に増加される。モータトルクが運転者要求トルクに復帰すると、時点t68で“ギア保持”モードが形成される。すなわち、変速制御が完了して“ギア保持”モードに復帰する。なお、“ギア保持”モードでは、モータ10は、上述のように運転者要求トルクが実現されるように制御(トルク制御)される。
このように本実施例では、制御パラメータ算出部1573は、変速制御中、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際、制御パラメータの値を、回転数制御状態で用いた値、すなわち回転数制御状態で実現されるモータトルク(図6のT0参照)に応じた(第1の値の一例)から、変速制御後に設定される目標トルク、すなわち運転者要求トルクに応じた目標トルク(図6のT4参照)が出力されるような値(第2の値の一例)に向けて徐々に変更する。この際、制御パラメータ算出部1573は、運転者要求トルクに応じた目標トルク(図6のT4参照)が出力されるような値に至るように、制御パラメータの値を、周期ごとに前回値に一定値ずつ増加させてよい。すなわち、制御パラメータ算出部1573は、運転者要求トルクに応じた目標トルクに向けて徐々にモータトルクが増加するように(図6のT3参照)、制御パラメータの値を徐々に増加させてよい。
また、本実施例では、制御パラメータ算出部1573は、変速制御中、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際、制御パラメータの値を、回転数制御状態で用いた値から、直ぐに(直接的に)、運転者要求トルクに応じた目標トルクが出力されるような値に向けて徐々に変更するのではなく、第1要素31まわりの回転トルクが“0”になるような目標トルク(図6のT2参照)に応じた値(中間値の一例)に徐々に切り替えてから(図6のT1参照)、運転者要求トルクに応じた目標トルクが出力されるような値に向けて変更する。
ところで、変速制御においては、上述のように、モータ10の制御状態が、回転数制御状態とトルク制御状態との間で切り替わる。
ここで、回転数制御状態は、上述のように、非噛み合い状態においてと、非噛み合い状態から第1噛み合い状態又は第2噛み合い状態への遷移途中の所定の切替条件が成立するまでの間においてだけ、形成される。従って、回転数制御状態で実現されるモータトルクは、車輪に伝達されない。すなわち、運転者要求トルクとは無関係にモータトルクが出力されても、車輪に伝達される回転トルクに有意な変動を生むことはない。このため、本実施例では、回転数制御状態では、係合装置30の状態の遷移が円滑に実現されるべく、運転者要求トルクとは無関係に制御パラメータの値が算出される。
しかしながら、変速制御において回転数制御状態を形成する場合、変速制御の終了の際に(すなわち回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際に)モータトルクに比較的大きな変動が生じるおそれがある。これは、上述のように、回転数制御状態では、運転者要求トルクとは無関係に制御パラメータの値が算出されるに対して、変速制御の終了後のトルク制御状態(すなわち“ギア保持”モード)では、運転者要求トルクに応じて制御パラメータの値が算出されるためである。
この点、本実施例では、上述のように、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際に、制御パラメータ算出部1573は、“トルク復帰”モードにおいて、モータトルクが運転者要求トルクに向けて徐々に増加するように目標トルクを設定する。これにより、モータトルクは、図6に示すように、“トルク復帰”モードにおいて、変速制御の終了時の目標トルク(運転者要求トルクに応じた目標トルク)へと徐々に増加していく。従って、本実施例によれば、変速制御に関連してモータ10の制御状態が切り替わる際に生じうるモータトルクの変動を低減できる。
なお、図6に示す例では、“トルク復帰”モードの開始タイミングは、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点に合わせられているが、これに限られない。すなわち、“トルク復帰”モードの開始タイミングは、所定の切替条件の成立時点よりも後であって、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点よりも前の任意のタイミングであってよい。例えば、図7に示す変形例では、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点までの間の中間時点付近の時点t65Aで、“トルク復帰”モードが開始されている。なお、図7に示す変形例では、図6に示す例に比べて、“トルク復帰”モードにおけるモータトルクの増加勾配が緩やかであるが、同じであってもよい。また、他の変形例では、“トルク復帰”モードは、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点(時点t67参照)よりも僅かに遅れて開始されてもよい。この場合、図6に示す例に比べて、変速制御の終了タイミングが遅れるものの、図6に示す例と同様、変速制御に関連してモータ10の制御状態が切り替わる際に生じうるモータトルクの変動を低減できる。また、更なる他の変形例では、“トルク復帰”モードの開始タイミングは、所定の切替条件の成立時点に開始されてもよい。この場合、図6に示す例に比べて、係合装置30にかかる負荷が増大しうるものの(完全な噛み合い状態になる前に回転トルクが発生されるため)、図6に示す例と同様、変速制御に関連してモータ10の制御状態が切り替わる際に生じうるモータトルクの変動を低減できる。
ところで、回転数制御状態により第1要素31の回転数が噛み合い対象の第2要素(第2要素32A又は第2要素32B)の回転数に同期した状態においても、実際には、第1要素31の回転数と噛み合い対象の第2要素の回転数との間に僅かなズレがある場合がある。このようなズレが発生した状態で、フォークシャフト92の位置が、上述したLow側噛合境界位置及びHigh側噛合境界位置を噛み合い状態に遷移する側に超えると、噛み合い状態に至る前に、第1要素31の歯状部311の側面部3112と第2要素32Aの歯状部321Aの側面部3212とが周方向で当接してしまう。この際に、第1要素31の軸まわりの回転トルクが0よりも有意に大きい場合、第1要素31の歯状部311と第2要素32Aの歯状部321Aに、該回転トルクに応じた負荷がかかる。
この点、本実施例によれば、上述のように、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際に、制御パラメータ算出部1573は、“ドグ係合”モードの後半部(すなわち所定の切替条件の成立後)において、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に維持されるように目標トルクを設定する。これにより、回転数制御状態の終了の際に第1要素31の回転数と噛み合い対象の第2要素の回転数との間に僅かなズレがある場合でも、第1要素31の歯状部311と第2要素32Aの歯状部321Aにかかりうる負荷を低減できる。ただし、変形例では、回転数制御状態の終了タイミングは、所定の切替条件の成立時点よりも後であって、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点よりも前の任意のタイミングであってよいし、非噛み合い状態から第2噛み合い状態への遷移処理が完了する時点であってもよい。
また、本実施例によれば、上述のように、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際に、制御パラメータ算出部1573は、“ドグ係合”モードの後半部(すなわち所定の切替条件の成立後)において、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に徐々に切り替わるように目標トルクを設定する。これは、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる時点(すなわち回転数制御状態の終了時)では、第1要素31まわりの回転トルクの大きさが“0”よりも有意に大きい場合があるためである。これにより、回転数制御状態からトルク制御状態に切り替わる際に、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に急峻に変化する場合に生じうる違和感(運転者に与えうるイワン間)を低減できる。
次に、図8以降を参照して、変速制御に関連した制御装置100の動作例について説明する。以降の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
図8は、変速制御に関連して制御装置100により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。図8に示す処理ルーチンは、所定周期ごとに実行されてよい。
ステップS100では、制御装置100は、各種情報の取得/生成処理を実行する。具体的には、制御装置100は、センサ情報取得部150により各種センサ情報を取得し、要求ギア段検出部151により要求ギア段を検出し、アクチュエータ情報生成部154によりストローク情報を生成し、位置情報生成部156によりフォークシャフト92の位置情報を生成する。
ステップS101では、制御装置100は、制御モードが“ギア保持”モードであるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS102に進み、それ以外の場合は、ステップS108に進む。
ステップS102では、制御装置100は、ステップS100での検出結果に基づいて、変速要求が発生したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS106に進み、それ以外の場合は、ステップS104に進む。
ステップS104では、制御装置100は、モータ10の制御状態をトルク制御状態に設定(又は維持)し、運転者要求トルクに基づいて、モータ制御部152によりモータ10のトルク制御を行う。具体的には、制御装置100は、運転者要求トルクに応じた目標トルクに基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS106では、制御装置100は、制御モードを“トルク抜き”モードに設定する。
ステップS108では、制御装置100は、制御モードが“トルク抜き”モードであるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS110に進み、それ以外の場合は、ステップS116に進む。
ステップS110では、制御装置100は、モータ制御部152により“トルク抜き”モードにおけるモータ10のトルク制御を行う。具体的には、制御装置100は、第1要素31まわりの回転トルクが“0”まで徐々に低下するような目標トルクを設定し、設定した目標トルクに基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS112では、制御装置100は、“トルク抜き”モードの終了条件が満たされたか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、第1要素31まわりの回転トルクが“0”まで低下したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS114に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
ステップS114では、制御装置100は、制御モードを“ドグ抜き”モードに設定する。
ステップS116では、制御装置100は、制御モードが“ドグ抜き”モードであるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS118に進み、それ以外の場合は、ステップS124に進む。
ステップS118では、制御装置100は、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に維持される目標トルクを設定し、設定した目標トルクに基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS119では、制御装置100は、アクチュエータ制御部153により係合装置30の状態を非噛み合い状態へ遷移させる遷移処理を実行する。
ステップS120では、制御装置100は、非噛み合い状態への遷移が完了したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS122に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
ステップS122では、制御装置100は、ステップS119の遷移処理を終了し、制御モードを“回転同期”モードに設定する。
ステップS124では、制御装置100は、制御モードが“回転同期”モードであるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS126に進み、それ以外の場合は、ステップS132に進む。
ステップS126では、制御装置100は、モータ10の制御状態を回転数制御状態に設定(又は維持)し、モータ制御部152によりモータ10の回転数制御を行う。具体的には、制御装置100は、第1要素31の回転数が、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素の回転数に同期するようにモータ10を制御する。
ステップS128では、制御装置100は、第1要素31の回転数が、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素の回転数に同期したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS130に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
ステップS130では、制御装置100は、制御モードを“ドグ係合”モードに設定する。
ステップS132では、制御装置100は、制御モードが“ドグ係合”モードであるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS134に進み、それ以外の場合(すなわち制御モードが“トルク復帰”モードである場合)は、ステップS136に進む。
ステップS134では、制御装置100は、“ドグ係合”モードにおける処理を行う。“ドグ係合”モードにおける処理の一例は、図9を参照して後述する。
ステップS136では、制御装置100は、“トルク復帰”モードにおける処理を行う。“トルク復帰”モードにおける処理の一例は、図10を参照して後述する。
図9は、“ドグ係合”モードにおける処理(ステップS134)の一例を示す概略フローチャートである。
ステップS200では、制御装置100は、ステップS100で得たフォークシャフト92の位置情報に基づいて、フォークシャフト92の位置が、Low側噛合境界位置及びHigh側噛合境界位置のうちの、遷移側の噛合境界位置に到達したか否かを判定する。なお、例えば「Low」から「High」への要求ギア段の変更に係る変速要求の場合、遷移側の噛合境界位置は、High側噛合境界位置である。判定結果が“YES”の場合、ステップS204に進み、それ以外の場合(フォークシャフト92の位置が遷移側の噛合境界位置に未だ到達してない場合)は、ステップS202に進む。
ステップS202では、制御装置100は、モータ10の制御状態を回転数制御状態に維持し、モータ制御部152によりモータ10の回転数制御を行う。具体的には、制御装置100は、第1要素31の回転数が、第2要素32A及び第2要素32Bのうちの、噛み合い対象の第2要素の回転数に同期した状態を維持するような制御パラメータの値を算出し、算出した制御パラメータの値に基づいて、モータ10を制御する。
ステップS204では、制御装置100は、ステップS100で得たフォークシャフト92の位置情報に基づいて、第1噛み合い状態及び第2噛み合い状態のうちの、遷移先の噛み合い状態が実現されたか否かを判定する。なお、例えば「Low」から「High」への要求ギア段の変更に係る変速要求の場合、遷移先の噛み合い状態は、第2噛み合い状態である。判定結果が“YES”の場合、ステップS206に進み、それ以外の場合(遷移先の噛み合い状態への遷移途中である場合)は、ステップS208に進む。
ステップS206では、制御装置100は、アクチュエータ制御部153によりフォークシャフト92の移動を停止させる(すなわち、後出のステップS214の遷移処理を終了する)。
ステップS207では、制御装置100は、制御モードを“トルク復帰”モードに設定する。
ステップS208では、制御装置100は、制御パラメータの前回値と、第1要素31まわりの回転トルクが“0”になる目標トルクに応じた制御パラメータの値(図9では、「中間値」と表記)との差の大きさが所定閾値以下であるか否かを判定する。所定閾値は、運転者に違和感を与えないようなモータトルクの変動幅に対応する値であり、試験等により適合されてよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS209に進み、それ以外の場合は、ステップS210に進む。
ステップS209では、制御装置100は、モータ10の制御状態をトルク制御状態に設定(又は維持)し、モータ制御部152により“ドグ係合”モードにおけるモータ10のトルク制御を行う。具体的には、制御装置100は、制御パラメータ算出部1573により、第1要素31まわりの回転トルクが“0”に維持される目標トルクに応じた制御パラメータの値を算出し、算出した制御パラメータの値に基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS210では、制御装置100は、制御パラメータ算出部1573により制御パラメータの今回値を算出する。制御パラメータの今回値は、第1要素31まわりの回転トルクが“0”になる目標トルクに応じた制御パラメータの値に近づく態様で、制御パラメータの前回値に所定変動量(一定値)だけ加算又は減算することで算出される。
ステップS212では、ステップS210で得た制御パラメータの今回値に基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS214では、制御装置100は、アクチュエータ制御部153により係合装置30の状態を非噛み合い状態から、遷移先の噛み合い状態へ遷移させる遷移処理を実行する。
図10は、“トルク復帰”モードにおける処理(ステップS136)の一例を示す概略フローチャートである。
ステップS302では、制御装置100は、制御パラメータ算出部1573により運転者要求トルクに応じた制御パラメータの値を算出する。ステップS302で算出される制御パラメータの値は、後述より明らかになるが、モータ制御部152により使用されない可能性がある値である。以下では、ステップS302で算出される制御パラメータの値を、「運転者要求値」と称する。なお、運転者要求値は、今回の変速要求に係る噛み合い状態(第1又は第2噛み合い状態)への遷移後に設定される目標トルクに応じた制御パラメータの値に対応するが、運転者要求トルクは時々刻々と変化しうるため、周期ごとに算出(更新)される。
ステップS304では、制御装置100は、制御パラメータの前回値とステップS302で得た運転者要求値との差の大きさが所定閾値以下であるか否かを判定する。所定閾値は、運転者に違和感を与えないようなモータトルクの変動幅に対応する値であり、試験等により適合されてよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS306に進み、それ以外の場合は、ステップS308に進む。
ステップS306では、制御装置100は、ステップS302で得た運転者要求値に基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
ステップS307では、制御装置100は、制御モードを“ギア保持”モードに設定する。
ステップS308では、制御装置100は、制御パラメータ算出部1573により制御パラメータの今回値を算出する。制御パラメータの今回値は、制御パラメータの前回値に所定変動量(一定値)だけ加算することで算出される。所定変動量は、運転者に違和感を与えないようなモータトルクの変動幅に対応する値であり、ステップS304で用いられる所定閾値と同じであってもよい。
ステップS310では、ステップS308で得た制御パラメータの今回値に基づいて、モータ10のトルク制御を行う。
図8から図10に示す処理によれば、図10に示す“トルク復帰”モードにおける処理により、制御パラメータの値が、運転者要求値に向けて所定変動量ずつ変化(増加)されるので、モータトルクの比較的急激な復帰に起因した不都合(例えば違和感を運転者等に与える等)を低減できる。また、図9に示す“ドグ係合”モードにおける処理により、回転数制御状態からトルク制御状態へと切り替えつつ係合装置30を非噛み合い状態から第1噛み合い状態又は第2噛み合い状態へと遷移させることができる。この結果、変速制御中の回転数制御状態からトルク制御状態へと切り替えに起因して生じうるモータトルクの比較的急激な変動を低減できる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例は、図1に示す特定の車両用駆動装置1への適用例が説明されているが、変速段数や各種の接続態様等がどのような車両用駆動装置に対しても適用可能である。従って、適用可能な駆動装置は、電気自動車用に限られず、ハイブリッド車用であってよいし、モータ10を駆動源としない(すなわち内燃機関だけを駆動源とする)車両用であってよい。
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
(1)一の形態は、軸(Is)まわりに噛み合い用の歯状部(311、321A、321B)をそれぞれ有する第1要素(31)及び第2要素(32A、32B)を備え、前記第1要素と前記第2要素の間での軸方向の相対移動によって噛み合い状態と非噛み合い状態との間で遷移可能であり、前記噛み合い状態において前記第1要素と前記第2要素の間で軸まわりの回転トルクの伝達が可能なクラッチ(30)と、
前記第1要素の軸まわりの回転を可能とする車両駆動用の回転電機(10)と、
前記回転電機を制御する回転電機制御部(50;152、157)とを含み、
前記回転電機制御部は、前記非噛み合い状態から前記噛み合い状態に遷移させる場合に、目標速度で回転するように前記回転電機を制御する第1制御状態と、目標トルクが出力されるように前記回転電機を制御する第2制御状態とを順に形成し、前記第2制御状態において、前記回転電機に対する制御パラメータの値を、前記第1制御状態で用いた第1の値から、遷移後に設定される目標トルクに応じた第2の値に向けて徐々に変更する、車両用駆動装置(1)である。
本形態によれば、クラッチが非噛み合い状態から噛み合い状態に遷移させる場合に、回転電機に対する制御パラメータの値が、第1制御状態での第1の値から、遷移後に設定される目標トルクに応じた第2の値に向けて徐々に変更されるので、制御状態が第1制御状態から第2制御状態に切り替わる際に生じうる回転電機の回転トルクの変動を低減できる。
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記回転電機制御部は、前記第2制御状態において、前記制御パラメータの値が前記第2の値に至るように、周期ごとに前回値に一定値ずつ変化させる。
この場合、制御状態が第1制御状態から第2制御状態に切り替わる際に、周期ごとに一定値ずつ制御パラメータの値が変化する期間が形成されるので、当該期間にわたり回転電機の回転トルクの変動を低減できる。
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記回転電機制御部は、前記第2制御状態において、前記制御パラメータの値を、前記第1要素の軸まわりの回転トルクが0となるような中間値に徐々に切り替えてから、前記第2の値に向けて変更する。
この場合、第1要素と第2要素との間に回転数の僅かなズレがあるまま第1制御状態が終了した場合でも、第1要素と第2要素との間に比較的大きい負荷をかけることなく、噛み合い状態に遷移させることができる。
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記回転電機制御部は、前記噛み合い状態が実現されるタイミングから、前記制御パラメータの値を、前記中間値から前記第2の値に向けて、徐々に変更する。
この場合、噛み合い状態が実現されるタイミングよりも前に第2の値に向けて変更し始める場合に生じうる不都合(噛み合い状態に至る前に第1要素と第2要素との間に回転方向の負荷がかかる不都合)を防止できる。
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記回転電機制御部は、前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部が軸方向で重なり始めるタイミングより後であって、前記噛み合い状態が実現される第2タイミングよりも前の第1タイミングに合わせて、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
この場合、第1要素と第2要素との間にかかりうる負荷を低減できかつ第1要素と第2要素との間の回転数が同期されるような適切なタイミングで、第1制御状態から第2制御状態に切り替えることができる。
(6)また、本形態においては、好ましくは、前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部は、軸まわりの周方向で最も幅が広くなる箇所(3111、3211)を有し、
前記第1タイミングは、前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部の前記箇所が軸方向で重なるタイミングに対応する。
この場合、歯状部の形状に応じた適切なタイミングで、第1制御状態から第2制御状態に切り替えることができる。
(7)また、本形態においては、好ましくは、前記軸方向(X)に交差する方向(Y)に可動な係合体(96)と、
前記軸方向で前記係合体に対して相対的に移動可能であり、前記係合体が嵌まることが可能な凹部(920、921、922)を、前記軸方向に沿って複数備える凹部形成部材(92)と、
前記軸方向に交差する方向に前記凹部形成部材に向けて前記係合体を付勢する弾性部材(94)と、
前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動のための駆動力を発生するアクチュエータ(74)と、
前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動に連動して前記噛み合い状態及び前記非噛み合い状態の間が遷移するように、前記アクチュエータの駆動力を前記クラッチに伝達する動力伝達部(7)と、
前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部(153)とを含み、
前記係合体が一の凹部(920)に嵌まった状態は、前記非噛み合い状態に対応し、前記係合体が他の一の凹部(921、922)に嵌まった状態は、前記噛み合い状態に対応し、
前記第1タイミングは、前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離であって前記係合体が前記一の凹部に嵌まった状態から前記他の一の凹部に嵌まる状態に遷移する際の移動距離が、予め規定された距離を超えるタイミングに対応する。
この場合、係合体に対する凹部形成部材の移動量や位置情報等を利用して、第1制御状態から第2制御状態に切り替える適切なタイミングを容易に検出できる。
1 車両用駆動装置
7 動力伝達部
10 モータ
20 遊星歯車機構
21 サンギア
22 リングギア
23 ピニオン
24 キャリア
30 係合装置
31 第1要素
32A 第2要素
32B 第2要素
41 第1ギア列
42 第2ギア列
50 カウンタ軸
60 出力軸(ディファレンシャル軸)
70 シフトフォーク
72 ボールねじ機構
74 アクチュエータ
90 シフトディテント機構
92 フォークシャフト
94 コイルばね
96 ロックボール
100 制御装置
130 車載電子機器
131 シフトポジションセンサ
132 車輪速センサ
134 モータ回転数センサ
135 アクチュエータ回転角センサ
150 センサ情報取得部
151 要求ギア段検出部
152 モータ制御部
153 アクチュエータ制御部
154 アクチュエータ情報生成部
156 位置情報生成部
157 変速制御部
1571 制御モード設定部
1572 モータ制御モード設定部
1573 制御パラメータ算出部
301 ドッグクラッチ
302 ドッグクラッチ
304 クラッチハブ
311 歯状部
312 凹溝
321A 歯状部
321B 歯状部
920 凹部(ディテント)
921 凹部(ディテント)
922 凹部(ディテント)
3110 歯先部
3111 第1境界点
3112 側面部
3210 歯先部
3211 第2境界点
3212 側面部

Claims (7)

  1. 軸まわりに噛み合い用の歯状部をそれぞれ有する第1要素及び第2要素を備え、前記第1要素と前記第2要素の間での軸方向の相対移動によって噛み合い状態と非噛み合い状態との間で遷移可能であり、前記噛み合い状態において前記第1要素と前記第2要素の間で軸まわりの回転トルクの伝達が可能なクラッチと、
    前記第1要素の軸まわりの回転を可能とする車両駆動用の回転電機と、
    前記回転電機を制御する回転電機制御部とを含み、
    前記回転電機制御部は、前記非噛み合い状態から前記噛み合い状態に遷移させる場合に、目標速度で回転するように前記回転電機を制御する第1制御状態と、目標トルクが出力されるように前記回転電機を制御する第2制御状態とを順に形成し、前記第2制御状態において、前記回転電機に対する制御パラメータの値を、前記第1制御状態で用いた第1の値から、遷移後に設定される目標トルクに応じた第2の値に向けて徐々に変更する、車両用駆動装置。
  2. 前記回転電機制御部は、前記第2制御状態において、前記制御パラメータの値が前記第2の値に至るように、周期ごとに前回値に一定値ずつ変化させる、請求項1に記載の車両用駆動装置。
  3. 前記回転電機制御部は、前記第2制御状態において、前記制御パラメータの値を、前記第1要素の軸まわりの回転トルクが0となるような中間値に徐々に切り替えてから、前記第2の値に向けて変更する、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
  4. 前記回転電機制御部は、前記噛み合い状態が実現されるタイミングから、前記制御パラメータの値を、前記中間値から前記第2の値に向けて、徐々に変更する、請求項3に記載の車両用駆動装置。
  5. 前記回転電機制御部は、前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部が軸方向で重なり始めるタイミングより後であって、前記噛み合い状態が実現される第2タイミングよりも前の第1タイミングに合わせて、前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
  6. 前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部は、軸まわりの周方向で最も幅が広くなる箇所を有し、
    前記第1タイミングは、前記第1要素と前記第2要素のそれぞれの前記歯状部の前記箇所が軸方向で重なるタイミングに対応する、請求項5に記載の車両用駆動装置。
  7. 前記軸方向に交差する方向に可動な係合体と、
    前記軸方向で前記係合体に対して相対的に移動可能であり、前記係合体が嵌まることが可能な凹部を、前記軸方向に沿って複数備える凹部形成部材と、
    前記軸方向に交差する方向に前記凹部形成部材に向けて前記係合体を付勢する弾性部材と、
    前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動のための駆動力を発生するアクチュエータと、
    前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動に連動して前記噛み合い状態及び前記非噛み合い状態の間が遷移するように、前記アクチュエータの駆動力を前記クラッチに伝達する動力伝達部と、
    前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを含み、
    前記係合体が一の凹部に嵌まった状態は、前記非噛み合い状態に対応し、前記係合体が他の一の凹部に嵌まった状態は、前記噛み合い状態に対応し、
    前記第1タイミングは、前記軸方向に沿った前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離であって前記係合体が前記一の凹部に嵌まった状態から前記他の一の凹部に嵌まる状態に遷移する際の移動距離が、予め規定された距離を超えるタイミングに対応する、請求項5又は6に記載の車両用駆動装置。
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