以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、本明細書において、「所定」とは、「予め定められた」という意味で使用されている。
図1は、一実施例による車両用駆動装置1の構成を示す概略図である。図1では、車両用駆動装置1の一部の構成がスケルトン図で示されている。
車両用駆動装置1は、電気自動車用の駆動装置であり、モータ10と、遊星歯車機構20と、係合装置30(クラッチの一例)と、第1ギア列41と、第2ギア列42とを備える。
モータ10は、車両駆動用の回転トルクを発生する。なお、モータ10のタイプや構造等は任意である。モータ10は、ジェネレータ(発電機)としても機能できるモータ・ジェネレータであってもよい。
遊星歯車機構20は、モータ10と出力軸60との間に設けられる。本実施例では、一例として、遊星歯車機構20は、シングルピニオンタイプである。遊星歯車機構20は、サンギア21と、リングギア22と、ピニオン23と、キャリア24とを含む。
係合装置30は、機械的な噛み合い状態と非噛み合い状態を選択的に形成可能なクラッチである。係合装置30は、ドッグクラッチ301、302を備える。ドッグクラッチ301、302は、それぞれ、軸方向に近接すると噛み合い状態となりかつ軸方向に離間すると非噛み合い状態となる2つの要素を備える。なお、近接とは、互いの一部が軸方向で重なる状態を含む概念である。
本実施例では、図1に示すように、係合装置30は、スリーブの形態の第1要素31と、クラッチリングの形態の第2要素32A、32Bと、クラッチハブ304とを含む。この場合、係合装置30は、第1要素31と第2要素32Aとが一のドッグクラッチ301を形成し、第1要素31と第2要素32Bとが別の一のドッグクラッチ302を形成する。なお、この場合、第1要素31は、2つのドッグクラッチ301、302を形成する共通の要素である。
第1要素31は、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有する。第1要素31は、内周側に周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部311を有する。歯状部311は、例えば軸方向の端部(歯先)がチャンファの形態であってよい。各歯状部311は、径方向内側に突出する態様で軸Isに対する径方向に延在し、複数の歯状部311は、軸Isに沿った方向に視て放射状に延在する。
第1要素31は、外周面に径方向内側に凹む凹溝312を有する。凹溝312は、周方向で全周にわたり延在する。凹溝312は、後述するようにシフトフォーク70と協動する。
第1要素31は、クラッチハブ304に対して、軸Isに沿って並進可能であり、かつ、軸Isまわりに回転不能な態様で、設けられる。例えば、第1要素31は、クラッチハブ304とスプライン結合されてよい。クラッチハブ304は、サンギア21の軸Isと一体回転する。従って、第1要素31は、クラッチハブ304とともにサンギア21の軸Isと一体回転するが、サンギア21の軸Isに沿って並進可能である。
このようにして、第1要素31は、回転状態で又は非回転状態で、図1に示す中立位置と、第2要素32Aと噛み合う位置(図1の位置P100参照)と、第2要素32Bと噛み合う位置(図1の位置P200参照)との間で、軸Isに沿って並進可能である。
第2要素32Aは、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有する。第2要素32Aの外周面は、第1要素31の内周面よりも径が小さく、その径方向の差に応じた径方向の長さで第1要素31の歯状部311及び第2要素32Aの歯状部321A(後述)が形成される。第2要素32Aは、第1要素31の歯状部311と同様、周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部321Aを有する。歯状部321Aは、第2要素32Aの外周面に周方向に沿って形成される。各歯状部321Aは、径方向外側に突出する態様で軸Isに対する径方向に延在し、複数の歯状部321Aは、軸Isに沿った方向に視て放射状に延在する。なお、複数の歯状部321Aは、一部の歯状部321Aが他の歯状部321Aに比べて、軸Isに沿った方向で第1要素31側に長くなる態様で形成されてもよい。
第2要素32Aの歯状部321A及び第1要素31の歯状部311は、第2要素32Aと第1要素31とが軸方向に近接すると噛み合い状態を形成する。噛み合い状態が形成されると、第1要素31と第2要素32Aの間で軸Isまわりの回転トルクの伝達が可能となる。
第2要素32Aは、第2要素32Bとは異なり、固定要素であり、例えばモータハウジング(図示せず)に固定される。
第2要素32Bは、第2要素32Aと同様、軸Isに関して実質的に回転対称な形態を有し、周方向に沿って所定角度ごとに噛み合い用の歯状部321Bを有する。
第2要素32Bの歯状部321B及び第1要素31の歯状部311は、第2要素32Bと第1要素31とが軸方向に近接すると噛み合い状態を形成する。噛み合い状態が形成されると、第1要素31と第2要素32Bの間で軸Isまわりの回転トルクの伝達が可能となる。
第2要素32Bは、回転要素であり、後述のように、キャリア24の回転軸Icと一体回転する。
第1ギア列41は、径方向で噛み合うギアG1とギアG2とからなる。ギアG1は、回転軸Icに設けられ、回転軸Icと一体回転し、ギアG2は、カウンタ軸50に設けられ、カウンタ軸50と一体回転する。
第2ギア列42は、径方向で噛み合うギアG3とギアG4とからなる。ギアG3は、カウンタ軸50に設けられ、カウンタ軸50と一体回転する。ギアG4は、出力軸60に設けられ、出力軸60と一体回転する。
車両用駆動装置1は、更に、シフトフォーク70と、ボールねじ機構72と、アクチュエータ74とを含む。
シフトフォーク70は、第1要素31の凹溝312に摺動可能に嵌合する。すなわち、シフトフォーク70は、第1要素31の軸Isまわりの回転を可能とする一方、第1要素31の軸Isに沿った方向の相対的な移動を拘束する。
シフトフォーク70は、ボールねじ機構72のナット721に結合される。なお、ナット721は、シフトフォーク70と一体的に形成されてよい。
ボールねじ機構72は、ナット721と、ねじ軸722と、ボール(図示せず)等を含む。
アクチュエータ74は、例えば正逆回転可能な電気モータであり、ねじ軸722に連結される。アクチュエータ74は、ねじ軸722を正回転させると、ナット721及びそれに伴いシフトフォーク70が、ねじ軸722に沿って一方側に移動され、ねじ軸722を逆回転させると、ナット721及びそれに伴いシフトフォーク70が、ねじ軸722に沿って他方側に移動される。
このようにして、アクチュエータ74が駆動されると、シフトフォーク70及びそれに伴い第1要素31は、ボールねじ機構72を介して、軸Isに沿って並進駆動される。
また、車両用駆動装置1は、更に、シフトディテント機構90を備える。
シフトディテント機構90は、シフトフォーク70の位置を規定することで、第1要素31の軸Isに沿った方向の位置を、複数の安定化位置で規定(安定化)する機能を有する。本実施例では、複数の安定化位置は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う位置と、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う位置と、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない中立位置とに対応する。
シフトディテント機構90は、フォークシャフト92(弾性部材の一例)と、コイルばね94(弾性部材の一例)と、ロックボール96(係合体の一例)とを含む。
フォークシャフト92は、シフトフォーク70と一体の部材であり、例えば、図1に模式的に示すように、ナット721に結合される。フォークシャフト92は、上述した3つの安定化位置に対応して、3つの凹部(ディテント)920、921、922を有する。凹部920、921、922は、フォークシャフト92の移動方向に沿って並ぶ態様で設けられる。
コイルばね94は、ロックボール96をフォークシャフト92に向けて付勢する。コイルばね94は、一端が例えばモータハウジング(図示せず)に支持され、他端にロックボール96が設けられる。
ロックボール96は、コイルばね94によりフォークシャフト92に向けて付勢されることで、フォークシャフト92に設けられる凹部920、921、922のいずれかに嵌まることができる。ロックボール96が凹部920、921、922のいずれかに嵌まると、その位置からのフォークシャフト92の安易な移動が困難となり、その位置でフォークシャフト92を安定化させる機能を有する。なお、ロックボール96が凹部920、921、922のいずれかに嵌まるときのフォークシャフト92の位置は、上述した3つの安定化位置に対応する。具体的には、ロックボール96が凹部922に嵌まる状態は、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う状態(後述の第2噛み合い状態)に対応し、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態は、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない状態(後述の非噛み合い状態)に対応し、ロックボール96が凹部921に嵌まる状態は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う状態(後述の第1噛み合い状態)に対応する。
次に、図1を依然として参照しつつ、モータ10、遊星歯車機構20、係合装置30等の接続関係(車両駆動に関連した接続関係)について説明する。
モータ10には、遊星歯車機構20を介して出力軸(ディファレンシャル軸)60が接続される。具体的には、モータ10の出力軸は、遊星歯車機構20のリングギア22に連結され、リングギア22と一体回転する。遊星歯車機構20は、キャリア24が、出力軸60に接続される。すなわち、キャリア24の回転軸Icは、第1ギア列41を介してカウンタ軸50に接続され、カウンタ軸50が第2ギア列42を介して出力軸60に接続される。このようにして、モータ10は、遊星歯車機構20のリングギア22、キャリア24、第1ギア列41、及び第2ギア列42を介して、出力軸60に接続される。
また、モータ10には、遊星歯車機構20を介して係合装置30が接続される。具体的には、遊星歯車機構20のキャリア24の回転軸Icには、ドッグクラッチ302の第2要素32Bが連結される。第2要素32Bは、回転軸Icまわりに、回転軸Icと一体回転する。また、遊星歯車機構20のサンギア21の回転軸である軸Isには、ドッグクラッチ301、302を形成する第1要素31が連結される。第1要素31は、軸Isと一体回転する。なお、第1要素31は、上述のように、軸Isに対して、軸方向に並進可能かつ軸まわりに回転不能に設けられる。すなわち、第1要素31は、サンギア21と一体回転するが、軸方向に移動可能である。
次に、図2を参照して、車両用駆動装置1の変速について概説する。図2は、車両用駆動装置1における遊星歯車機構20の速度線図である。
本実施例では、係合装置30は、第1要素31と第2要素32Aとが噛み合う状態(以下、「第1噛み合い状態」と称する)と、第1要素31と第2要素32Bとが噛み合う状態(以下、「第2噛み合い状態」と称する)と、第1要素31が第2要素32A、32Bのいずれとも噛み合わない状態(以下、「非噛み合い状態」と称する)との間で、遷移可能である。なお、第1噛み合い状態は、ドッグクラッチ301の係合状態に対応し、第2噛み合い状態は、ドッグクラッチ302の係合状態に対応し、非噛み合い状態は、ドッグクラッチ301、302の非係合状態に対応する。
係合装置30の第1噛み合い状態が実現されると、低速ギア段が実現される。具体的には、第1噛み合い状態では、第2要素32Aによってサンギア21が固定される。従って、モータ10の回転速度は、遊星歯車機構20で減速されて回転軸Icに出力され(図2の“Low”のライン参照)、回転軸Icの回転速度は、更に、第1ギア列41(ギアG1及びギアG2)及び第2ギア列42(ギアG3及びギアG4)により減速されて出力軸60に出力される。
係合装置30の第2噛み合い状態が実現されると、高速ギア段が実現される。具体的には、第2噛み合い状態では、第2要素32Bによってサンギア21とキャリア24の回転軸Icとが一体化される。従って、モータ10の回転速度は、遊星歯車機構20で減速されることなくそのまま回転軸Icに出力され(図2の“High”のライン参照)、回転軸Icの回転速度は、第1ギア列41(ギアG1及びギアG2)及び第2ギア列42(ギアG3及びギアG4)により減速されて出力軸60に出力される。
係合装置30の非噛み合い状態が実現されると、ニュートラルが実現される。具体的には、回転軸Icが出力軸60から反力を受けた状態で、サンギア21がフリーとなる。
次に、図3A〜図4を参照して、シフトディテント機構90の詳細を説明する。
ここでは、まず、図3A〜図3Eを参照して、シフトディテント機構90における各状態について説明する。
図3A〜図3Eは、シフトディテント機構90における各状態(フォークシャフト92上のロックボール96の各位置)の説明図である。図3A〜図3Eには、非常に模式的に各要素が示され、また、ストッパ部ST1、ST2が同様に模式的に示される。また、図3A〜図3Eには、軸Isに平行な方向としてX方向(第2方向の一例)と、X方向に垂直なY方向(第1方向の一例)とが示され、それぞれの方向に、X1側(第1側の一例)とX2側(第2側の一例)、Y1側とY2側とが示される。また、図3A〜図3Eには、説明用に、シフトフォーク70及び第1要素31の位置に対して、対応する変速段「High」、「Low」、及び「ニュートラル(N)」を表す点線Lo、Hi、Nが対応付けられている。なお、図3A〜図3Eでは、ストッパ部ST1、ST2と第1要素31との関係を示すために、第2要素32A、32Bの図示は省略されている。
図3Aは、ロックボール96が凹部920に嵌まるときのフォークシャフト92の位置(N位置)を示す模式図であり、図3Bは、ロックボール96が凹部921に嵌まるときのフォークシャフト92の位置(以下、「Lo位置」と称する)を示す模式図であり、図3Cは、ロックボール96が凹部922に嵌まるときのフォークシャフト92の位置(以下、「Hi位置」と称する)を示す模式図である。図3Dは、ストッパ部ST1(第1規制部の一例)が機能するときのフォークシャフト92の位置(以下、「第1ストッパ機能位置」と称する)を示す模式図であり、図3Eは、ストッパ部ST2(第2規制部の一例)が機能するときのフォークシャフト92の位置(以下、「第2ストッパ機能位置」と称する)を示す模式図である。
ストッパ部ST1は、機械的なストッパであり、例えば、図3Dに示すように、第1要素31に対して軸Isに沿った方向(すなわちX方向)に当接する壁の形態である。ストッパ部ST1は、第1要素31に対してX方向X1側に設けられる。これにより、ストッパ部ST1は、第1要素31に当接することで、第1要素31のX方向X1側への更なる移動を規制し、それに伴い、ロックボール96に対するフォークシャフト92のX方向X1側への更なる移動を規制する。ただし、ストッパ部ST1は、シフトフォーク70やフォークシャフト92等のような、第1要素31と一体に移動する他の部材に対して機能してもよい。
ストッパ部ST2は、機械的なストッパであり、例えば、図3Eに示すように、第1要素31に対して軸Isに沿った方向に当接する壁の形態である。ストッパ部ST2は、第1要素31に対してX方向X2側に設けられる。これにより、ストッパ部ST2は、第1要素31に当接することで、第1要素31のX方向X2側への更なる移動を規制し、それに伴い、ロックボール96に対するフォークシャフト92のX方向X2側への更なる移動を規制する。ただし、ストッパ部ST2は、シフトフォーク70やフォークシャフト92等のような、第1要素31と一体に移動する他の部材に対して機能してもよい。
図4は、ロックボール96に対するフォークシャフト92の移動距離と、シフトディテント機構90における各状態との関係の説明図である。図4では、横軸に、X方向での位置を取る。なお、以下では、ロックボール96に対するフォークシャフト92の移動距離(X方向に沿った移動距離)は、単に「フォークシャフト92の移動距離」や「フォークシャフト92のストローク量」とも称する。
図4において、位置PNは、N位置に対応し、位置PLowは、Lo位置に対応し、位置PHighは、Hi位置に対応し、いずれも、フォークシャフト92上の位置を表すものとする。
ここで、フォークシャフト92の凹部920、921、922のそれぞれは、図3A等に示すように、位置安定性機能を高めるために、傾斜面により“山”(Y方向Y1側に凸)と“谷”(Y方向Y2側に凸)を形成する形態である。なお、“山”の頂点や“谷”の底点は鋭角で図示されているが、フォークシャフト92の凹部920、921、922のそれぞれの角部には角Rが付けられてよい。
ロックボール96は、フォークシャフト92のX方向で“山”を乗り越えなければ、その先の“谷”に移動できない。換言すると、ロックボール96が“山”の斜面に位置するときは、ロックボール96が当該斜面を下って“谷”に向かう方向にフォークシャフト92を移動させる力が、フォークシャフト92にコイルばね94からロックボール96を介して発生される。このとき、アクチュエータ74の駆動力が“0”になると、ロックボール96は当該“谷”へと移動する。
位置PHighは、凹部922の“谷”の位置に対応し、区間SC2は、凹部922の“谷”を中心としてその両側の“斜面”(隣の“山”までの斜面)の区間に対応する。同様に、位置PLowは、凹部921の“谷”の位置に対応し、区間SC1は、凹部921の“谷”を中心としてその両側の“斜面”の区間に対応する。同様に、位置PNは、凹部920の“谷”の位置に対応し、区間SC0は、凹部920の“谷”を中心としてその両側の“斜面”の区間に対応する。
この場合、ロックボール96が区間SC0内に位置するときにアクチュエータ74の駆動力が“0”になると、ロックボール96は、フォークシャフト92がN位置に至るように、凹部920の“谷”(位置PN)へと引き込まれ、凹部920に嵌まる。同様に、ロックボール96が区間SC1内に位置するときにアクチュエータ74の駆動力が“0”になると、ロックボール96は、フォークシャフト92がLo位置に至るように、凹部921の“谷”(位置PLow)へと引き込まれ、凹部921に嵌まる。同様に、ロックボール96が区間SC2内に位置するときにアクチュエータ74の駆動力が“0”になると、ロックボール96は、フォークシャフト92がHi位置に至るように、凹部922の“谷”(位置PHigh)へと引き込まれ、凹部922に嵌まる。
本実施例では、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PLowから第1ストッパ機能位置Pst1に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLL1は、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PNから区間SC1内に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLN1よりも有意に短く、かつ、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PHighから区間SC0内に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLH1よりも有意に短い。
従って、移動距離ΔLL1よりも長く、移動距離ΔLN1よりも短くかつ移動距離ΔLH1よりも短いある距離を、距離β1とすると、ロックボール96が凹部920に嵌った状態から、ロックボール96が凹部921に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離がX1側で距離ΔLL1を超えても距離β1を超えない場合は、不能である。そして、ロックボール96が凹部920に嵌った状態から、ロックボール96が凹部921に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離が距離β1を超えてから(更には、距離β1よりも長い移動距離ΔLN1(第1上限距離の一例)を超えると)可能となる。
同様に、ロックボール96が凹部922に嵌った状態から、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離がX1側で距離ΔLL1を超えても距離β1を超えない場合は、不能である。そして、ロックボール96が凹部922に嵌った状態から、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離が距離β1を超えてから(更には、距離β1よりも長い移動距離ΔLH1(第1上限距離の一例)を超えると)可能となる。
また、本実施例では、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PHighから第2ストッパ機能位置Pst2に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLH2は、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PNから区間SC2内に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLN2よりも有意に短く、かつ、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PLowから区間SC0内に至るまでのフォークシャフト92の移動距離ΔLL2よりも有意に短い。
従って、移動距離ΔLH2よりも長く、移動距離ΔLN2よりも短くかつ移動距離ΔLL2よりも短いある距離を、距離β2とすると、ロックボール96が凹部920に嵌った状態から、ロックボール96が凹部922に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離がX2側で距離ΔLH2を超えても距離β2を超えない場合は、不能である。そして、ロックボール96が凹部920に嵌った状態から、ロックボール96が凹部922に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離が距離β2を超えてから(更には、距離β2よりも長い移動距離ΔLN2(第2上限距離の一例)を超えると)可能となる。
同様に、ロックボール96が凹部921に嵌った状態から、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離がX2側で距離ΔLH2を超えても距離β2を超えない場合は、不能である。そして、ロックボール96が凹部921に嵌った状態から、ロックボール96が凹部920に嵌まる状態への遷移は、フォークシャフト92の移動距離が距離β2を超えてから(更には、距離β2よりも長い移動距離ΔLL2(第2上限距離の一例)を超えると)可能となる。
次に、図5及び図6等を参照して、車両用駆動装置1の制御系について説明する。車両用駆動装置1の制御系は、車両用駆動装置1を制御するための制御装置100を含む。
図5は、制御装置100のハードウェア構成の一例を示す概略図である。図5には、制御装置100のハードウェア構成に関連付けて、他の車載電子機器130が模式的に図示されている。
他の車載電子機器130は、モータ10や、アクチュエータ74に加えて、シフトポジションセンサ131や、車輪速センサ132、モータ回転数センサ134、アクチュエータ回転角センサ135等を含む。
シフトポジションセンサ131は、ユーザ(運転者)により操作されるシフトレバーの位置を検出し、シフトレバーの位置に応じた信号を生成する。車輪速センサ132は、車速に応じた信号を生成する。モータ回転数センサ134は、モータ10の回転数に応じた信号を生成する。なお、モータ回転数センサ134は、レゾルバであってよい。アクチュエータ回転角センサ135は、アクチュエータ74の回転角に応じた信号を生成する。アクチュエータ回転角センサ135は、例えばホールIC(Integrated Circuit)やレゾルバ等であってよい。
制御装置100は、バス119で接続されたCPU(Central Processing Unit)111、RAM(Random Access Memory)112、ROM(Read Only Memory)113、補助記憶装置114、ドライブ装置115、及び通信インターフェース117、並びに、通信インターフェース117に接続された有線送受信部125及び無線送受信部126を含む。
補助記憶装置114は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
有線送受信部125は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などのプロトコルに基づく有線ネットワーク128を利用して通信可能な送受信部を含む。有線送受信部125には、他の車載電子機器130が接続される。ただし、他の車載電子機器130の一部又は全部は、バス119に接続されてもよいし、無線送受信部126に接続されてもよい。
無線送受信部126は、無線ネットワークを利用して通信可能な送受信部である。無線ネットワークは、携帯電話の無線通信網、インターネット、VPN(Virtual Private Network)、WAN(Wide Area Network)等を含んでよい。また、無線送受信部126は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)部、ブルートゥース(Bluetooth、登録商標)通信部、Wi−Fi(Wireless−Fidelity)送受信部、赤外線送受信部などを含んでもよい。
なお、制御装置100は、記録媒体116と接続可能であってもよい。記録媒体116は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体116に格納されたプログラムは、ドライブ装置115を介して制御装置100の補助記憶装置114等にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、制御装置100のCPU111により実行可能となる。例えば、記録媒体116は、CD(Compact Disc)−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。
図6は、制御装置100の機能構成の一例を示す概略図である。
制御装置100は、図6に示すように、センサ情報取得部150と、要求ギア段検出部151と、モータ制御部152と、アクチュエータ制御部153(制御部の一例)と、アクチュエータ情報生成部154と、位置情報生成部156とを含む。センサ情報取得部150、要求ギア段検出部151、モータ制御部152、アクチュエータ制御部153、アクチュエータ情報生成部154、及び位置情報生成部156は、CPU111が記憶装置(例えばROM113)内の1つ以上のプログラムを実行することで実現できる。
センサ情報取得部150は、シフトポジションセンサ131や、車輪速センサ132、アクチュエータ回転角センサ135等から各種センサ情報を取得する。
要求ギア段検出部151は、シフトポジションセンサ131からのセンサ情報に基づいて、変速段の変更要求(以下、「変速要求」とも称する)があるか否かを判定する。要求ギア段検出部151は、変速要求がある場合は、実現すべき変速段(以下、「要求ギア段」)を判定(検出)する。本実施例では、一例として、変速段は、「High」と「Low」の2段と、「ニュートラル」とを含む。マニュアルモードの場合は、要求ギア段検出部151は、シフトポジションセンサ131からのセンサ情報に基づいて、変速要求及び要求ギア段を検出できる。
また、要求ギア段検出部151は、例えばシフトポジションセンサ131が「D」レンジにあるときは、例えば車速とアクセル開度との関係に基づいて、要求ギア段を検出する。なお、変速要求及び要求ギア段は、外部(上位)のECU(Electronic Control Unit)から取得されてもよい。
モータ制御部152は、モータ10を制御する。モータ制御部152は、運転者からの要求トルク(例えばアクセル開度から導出)に基づいて、モータ10の出力トルクの目標値である目標トルクを決定し、当該目標トルクが実現されるようにモータ10を制御する。また、いわゆる自動運転モードがある車両においては、目標トルクは、周辺監視センサ(ミリ波レーダやLiDAR:Light Detection and Ranging、画像センサ等)からの周辺情報やインフラ情報等に基づいて決定されてもよい。
アクチュエータ制御部153は、アクチュエータ74を制御する。アクチュエータ制御部153は、要求ギア段検出部151が変速要求を検出すると、当該変速要求に係る要求ギア段が実現されるように、アクチュエータ74を制御する。すなわち、アクチュエータ制御部153は、係合装置30の状態を、非噛み合い状態、第1噛み合い状態、及び第2噛み合い状態間で遷移させる遷移処理を行う。
アクチュエータ情報生成部154は、アクチュエータ74の状態に関するアクチュエータ情報を生成する。例えば、アクチュエータ情報生成部154は、アクチュエータ回転角センサ135からのセンサ情報に基づいて、アクチュエータ回転数を表すアクチュエータ情報を生成してもよい。あるいは、アクチュエータ情報生成部154は、アクチュエータ制御部153からの情報に基づいて、アクチュエータ74に印加される駆動電流を表すアクチュエータ情報を生成してもよい。あるいは、アクチュエータ74が、アクチュエータ74を流れる電流(アクチュエータ電流値)を検出する電流センサを備える場合、アクチュエータ情報生成部154は、当該電流センサからアクチュエータ電流値を表すアクチュエータ情報を生成してもよい。なお、アクチュエータ情報は、上述したような各種情報のうちの任意の1つ又は2つ以上の組み合わせを表してよい。
本実施例では、一例として、アクチュエータ情報は、アクチュエータ74に印加される駆動電流と、フォークシャフト92のストローク量と、アクチュエータ回転数とを表すものとする。
また、本実施例では、アクチュエータ74により駆動される物体(例えばフォークシャフト92)のストローク量を(直接的に)検出するストロークセンサは設けられないものとする。この場合、アクチュエータ情報が表すストローク量は、アクチュエータ回転数のような、ストローク量に相関するパラメータから導出されることになる。具体的には、例えばアクチュエータ回転角センサ135がホールICである場合、ホールICは、アクチュエータ74の出力軸の回転に応じたパルス(例えば3相のそれぞれごとのパルス)を出力する。この場合、アクチュエータ情報生成部154は、ホールICからのパルスの変化態様に基づいて、ねじ軸722の回転方向(すなわちフォークシャフト92の移動方向がX1側かX2側か)や、ねじ軸722の回転角度(すなわちフォークシャフト92のストローク量)を導出できる。
位置情報生成部156は、アクチュエータ情報生成部154により取得されるアクチュエータ情報に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を生成する。なお、位置情報生成部156は、上述したシフトディテント機構90と協動して、「シフトディテント装置」の一例を形成する。
フォークシャフト92の位置情報は、軸Is(X方向)に沿ったフォークシャフト92の位置であって、ロックボール96に対するフォークシャフト92の位置を表す情報である。本実施例では、一例として、フォークシャフト92の位置情報は、シフト基準位置からの距離で表される。例えば、フォークシャフト92の位置情報は、例えばシフト基準位置を“0点”とし、X1側を“負(−)”としX2側を“正(+)”として、フォークシャフト92の位置を、シフト基準位置からの距離で表してよい。また、本実施例では、一例として、シフト基準位置は、後述するように、位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれかに設定される。
フォークシャフト92の位置情報の分解能は、任意であるが、フォークシャフト92の凹部920、921、922の間の距離よりも有意に小さい。ただし、変形例では、フォークシャフト92の位置情報とは、フォークシャフト92の凹部920、921、922のうちの、どの凹部にロックボール96が嵌まっているかを表す情報であってもよい。
位置情報生成部156は、図6に示すように、Low側駆動処理部1561と、High側駆動処理部1562と、Low側ストッパ判定部1563と、High側ストッパ判定部1564と、基準位置判定部1565と、位置更新部1566とを含む。
Low側駆動処理部1561は、アクチュエータ制御部153を介して、シフト基準位置からX1側にフォークシャフト92が距離β1だけストロークするように、アクチュエータ74を駆動する駆動処理(以下、「Low側駆動処理(第1駆動処理の一例)」とも称する)を行う。なお、距離β1は、上述のとおり、移動距離ΔLL1よりも長く、移動距離ΔLN1よりも短くかつ移動距離ΔLH1よりも短い距離である。本実施例では、一例として、Low側駆動処理が後述するHigh側駆動処理よりも先に実行されるので、シフト基準位置は、Low側駆動処理の開始時のフォークシャフト92の位置に対応するものとする。なお、シフト基準位置は、アクチュエータ74の駆動電流が“0”である状態における位置に対応し、従って、シフト基準位置は、位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれかである蓋然性は高い。本実施例では、位置情報生成部156は、シフト基準位置が位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれかであることを前提として、シフト基準位置を設定し(シフト基準位置に位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれかを対応付け)、設定したシフト基準位置に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を生成する。
High側駆動処理部1562は、アクチュエータ制御部153を介して、シフト基準位置からX2側にフォークシャフト92が距離β2だけストロークするように、アクチュエータ74を駆動する駆動処理(以下、「High側駆動処理(第2駆動処理の一例)」とも称する)を行う。シフト基準位置は、上述したとおりであり、Low側駆動処理と同じ位置である。距離β2は、上述のとおり、移動距離ΔLH2よりも長く、移動距離ΔLN2よりも短くかつ移動距離ΔLL2よりも短い。
Low側ストッパ判定部1563は、アクチュエータ情報に基づいて、Low側駆動処理部1561によるLow側駆動処理において、ストッパ部ST1が機能したか否かを判定する。ストッパ部ST1が機能すると、フォークシャフト92のX1側への更なる移動が不能となり、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX1側への更なる駆動が不能となる。
例えば、Low側ストッパ判定部1563は、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX1側への更なる駆動が不能となる状態に基づいて、ストッパ部ST1が機能したと判定してよい。なお、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX1側への更なる駆動が不能となる状態は、フォークシャフト92のX1側への移動に対応する回転方向でアクチュエータ74を回転させる駆動電流の印加にもかかわらずアクチュエータ74が回転できない状態に対応する。かかる状態は、アクチュエータ情報に基づいて検出できる。例えば、フォークシャフト92のX1側への移動に対応する回転方向でアクチュエータ74を回転させる駆動電流が有意に大きい値(例えば最大値)であるにもかかわらずアクチュエータ74の回転数が“0”である場合、ストッパ部ST1が機能したと判定してよい。あるいは、アクチュエータ74が、負荷が高いほど大きい駆動電流が印加される態様で制御される仕様である場合、駆動電流の上昇に基づいて、ストッパ部ST1が機能した状態が検出されてもよい。
High側ストッパ判定部1564は、High側駆動処理部1562によるHigh側駆動処理において、ストッパ部ST2が機能したか否かを判定する。ストッパ部ST2が機能すると、フォークシャフト92のX2側への更なる移動が不能となり、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX2側への更なる駆動が不能となる。
例えば、High側ストッパ判定部1564は、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX2側への更なる駆動が不能となる状態に基づいて、ストッパ部ST2が機能したと判定してよい。なお、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX2側への更なる駆動が不能となる状態は、フォークシャフト92のX2側への移動に対応する回転方向でアクチュエータ74を回転させる駆動電流の印加にもかかわらずアクチュエータ74が回転できない状態に対応する。かかる状態は、アクチュエータ情報に基づいて検出できる。例えば、フォークシャフト92のX2側への移動に対応する回転方向でアクチュエータ74を回転させる駆動電流が有意に大きい値(例えば最大値)であるにもかかわらずアクチュエータ74の回転数が“0”である場合、ストッパ部ST2が機能したと判定してよい。あるいは、アクチュエータ74が、負荷が高いほど大きい駆動電流が印加される態様で制御される仕様である場合、駆動電流の上昇に基づいて、ストッパ部ST2が機能した状態が検出されてもよい。
基準位置判定部1565は、Low側駆動処理におけるLow側ストッパ判定部1563の判定結果と、High側駆動処理におけるHigh側ストッパ判定部1564の判定結果とに基づいて、シフト基準位置が位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれであるかを判定する。そして、位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちの、判定した位置を、シフト基準位置に対応付けることで、シフト基準位置を“設定”する。
具体的には、基準位置判定部1565は、まず、Low側駆動処理におけるLow側ストッパ判定部1563の判定結果に基づいて、シフト基準位置が位置PLowであるか否かを判定する。より具体的には、基準位置判定部1565は、Low側駆動処理においてストッパ部ST1が機能した場合、シフト基準位置が位置PLowであると判定する。これは、シフト基準位置が位置PLowである場合、図4に示した距離関係から分かるように、Low側駆動処理においてストッパ部ST1が機能するためである。
他方、基準位置判定部1565は、Low側駆動処理においてストッパ部ST1が機能しない場合、シフト基準位置が位置PLow以外であると判定する。すなわち、基準位置判定部1565は、ストッパ部ST1が機能することなく、X1側にフォークシャフト92が距離β1だけストロークした場合は、シフト基準位置が位置PLow以外であると判定する。
基準位置判定部1565は、シフト基準位置が位置PLow以外であると判定した場合、High側駆動処理におけるHigh側ストッパ判定部1564の判定結果に基づいて、シフト基準位置が位置PHighであるか否かを判定する。具体的には、基準位置判定部1565は、High側駆動処理においてストッパ部ST2が機能した場合、シフト基準位置が位置PHighであると判定する。これは、シフト基準位置が位置PHighである場合、図4に示した距離関係から分かるように、High側駆動処理においてストッパ部ST2が機能するためである。
他方、基準位置判定部1565は、High側駆動処理においてストッパ部ST2が機能しない場合、シフト基準位置が位置PHigh以外であると判定する。すなわち、基準位置判定部1565は、ストッパ部ST2が機能することなく、X2側にフォークシャフト92が距離β2だけストロークした場合は、シフト基準位置が位置PHigh以外であると判定する。そして、この場合、シフト基準位置が位置PLow以外でありかつ位置PHigh以外であることになるので、基準位置判定部1565は、シフト基準位置が位置PNであると判定する。
なお、Low側駆動処理におけるLow側ストッパ判定部1563の判定結果に基づいて、シフト基準位置が位置PLowであると判定できる場合は、High側駆動処理(及びそれに伴うHigh側ストッパ判定部1564による判定処理)は不要となる。
なお、ここでの説明は、Low側駆動処理におけるLow側ストッパ判定部1563の判定結果を踏まえて、High側駆動処理におけるHigh側ストッパ判定部1564の判定結果を利用しているが、逆であってもよい。すなわち、まず、High側駆動処理におけるHigh側ストッパ判定部1564の判定結果に基づいて、シフト基準位置が位置PHighであるか否かを判定し、位置PHigh以外である場合に、Low側駆動処理におけるLow側ストッパ判定部1563の判定結果に基づいて、シフト基準位置がPLowであるか位置PNであるかを判定してもよい。
位置更新部1566は、基準位置判定部1565による判定結果に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を生成する。具体的には、位置更新部1566は、シフト基準位置に、基準位置判定部1565による判定結果に応じた位置(位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれか)を対応付ける。そして、位置更新部1566は、その後のアクチュエータ情報(例えばシフト基準位置からのストローク量)に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を更新する。
例えば、アクチュエータ回転角センサ135がホールICである場合、位置更新部1566は、シフト基準位置でのパルス(例えば3相のホールICからのパルスのパターン)を基準パルスとし、基準パルスから変化するパルス数とパルスの変化方向に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を更新できる。このようにして更新されるフォークシャフト92の位置情報は、制御装置100における各種制御に用いることができる。例えば、フォークシャフト92の位置情報は、上述した遷移処理等に利用できる。例えば、アクチュエータ制御部153は、フォークシャフト92の位置情報に基づいて、遷移処理におけるフォークシャフト92のストローク量をフィードバック制御してもよい。
ところで、アクチュエータ74により駆動される物体(例えばフォークシャフト92)のストローク量を(直接的に)検出するストロークセンサを備える構成では、かかるストロークセンサの検出値を用いて、フォークシャフト92の位置情報を精度良く生成できるので、上述したような方法によるシフト基準位置自体の必要性は低い。
これに対して、本実施例のように、ストロークセンサを備えない構成の場合、フォークシャフト92の位置情報の生成のための基準(0点)としてシフト基準位置が有用となる。
ここで、フォークシャフト92の位置情報は、上述のように、シフト基準位置が正確に設定されると、その後のアクチュエータ情報に基づいて精度良く生成できる。例えば、車両工場出荷の際にシフト基準位置を正確に初期設定しておくことは可能であるので、制御装置100が、シフト基準位置の初期設定状態をその後も維持しつつ、フォークシャフト92の位置情報を生成することも可能である。
しかしながら、実際の車両環境では、電源瞬断やリセット時等において、精度の高いアクチュエータ情報が得られない期間等がありえ、かかる場合、フォークシャフト92の位置情報の精度が悪化するおそれがある。
従って、実際の車両環境では、定期的に又は不定期的に、フォークシャフト92の位置情報をリセット(初期設定後のシフト基準位置の設定)することが有用となり、また、シフト基準位置を設定する場合は、シフト基準位置を精度の高い態様で設定することが有用である。なお、シフト基準位置を精度の高い態様で設定するとは、例えば、実際に凹部920にロックボール96が嵌まっている状態においては、シフト基準位置に位置PNを対応付ける場合に対応する。逆に、実際には凹部920にロックボール96が嵌まっているにもかかわらず、シフト基準位置に位置PHighや位置PLowが対応付けられる場合は、シフト基準位置を精度の高い態様で設定できていないことになる。シフト基準位置を精度の高い態様で設定できない場合は、それに基づくフォークシャフト92の位置情報の精度も良好でなくなる。
この点、本実施例によれば、上述のように、Low側駆動処理及びHigh側駆動処理を行うことで、シフト基準位置を精度の高い態様で設定することが可能となる。すなわち、Low側駆動処理を行うことで、シフト基準位置が位置PLowであるか否かを判定できる。同様に、High側駆動処理を行うことで、シフト基準位置が位置PHighであるか否かを判定できる。そして、Low側駆動処理及びHigh側駆動処理を行うことで、シフト基準位置が位置PN、位置PLow、及び位置PHighのいずれであるかを精度良く判定できる。このようにして、本実施例によれば、シフト基準位置を精度の高い態様で設定することが可能となる。その結果、本実施例によれば、電源瞬断やリセット時等によりフォークシャフト92の位置情報の精度が良好でなくなった場合でも、Low側駆動処理及びHigh側駆動処理に基づいてシフト基準位置を設定することで、精度の高いフォークシャフト92の位置情報を生成できる状態に復帰できる。
次に、図7及び図8を参照して、一例として制御装置100の動作例について説明する。以降の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
図7は、位置情報生成部156により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。
ステップS700では、位置情報生成部156は、アクチュエータ情報生成部154から最新のアクチュエータ情報を取得する。
ステップS702では、位置情報生成部156は、シフト基準設定済フラグF0が“0”であるか否かを判定する。シフト基準設定済フラグF0が“0”であることは、シフト基準位置の設定(新たな設定)が必要な状態を表し、シフト基準設定済フラグF0が“1”であることは、シフト基準位置の設定が不要な状態を表す。ここでは、一例として、シフト基準設定済フラグF0の初期値(車両起動時の値)は、“0”である。判定結果が“YES”の場合、ステップS704に進み、それ以外の場合は、ステップS706に進む。
ステップS704では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を設定するためのシフト基準位置設定処理を実行する。シフト基準位置とは、上述のように、フォークシャフト92の位置情報を更新する位置更新処理(後出のステップS706〜ステップS710)において基準(“0点”)となる位置情報であり、位置PN、位置PLow、及び位置PHighのいずれかに対応付けられる。シフト基準位置設定処理の一例は、図8を参照して詳説する。
ステップS706では、位置情報生成部156は、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、フォークシャフト92が移動中か否かを判定する。例えば、位置情報生成部156は、アクチュエータ情報の表すストローク量が0よりも大きい場合や、アクチュエータ情報の表すアクチュエータ回転数が0よりも大きい場合、フォークシャフト92の移動中であると判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS708に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理は終了する。
ステップS708では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を“0点”とし、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、X1側を“負(−)”としX2側を“正(+)”として、フォークシャフト92の位置を、シフト基準位置からの距離で算出する。
ステップS710では、位置情報生成部156は、ステップS708で得た算出結果に基づいて、フォークシャフト92の位置情報を更新する。
なお、図7に示す位置更新処理(後出のステップS706〜ステップS710)は、あくまで一例であり、シフト基準位置が位置更新処理に利用される態様である限り、任意の態様であってよい。
図8は、シフト基準位置設定処理(図7のステップS704)の一例を示す概略フローチャートである。
ステップS800では、位置情報生成部156は、モード(ステータス)が“Lo側壁当て”モードであるか否かを判定する。モードの初期値(車両起動時の値)は、“Lo側壁当て”モードである。“Lo側壁当て”モードは、後述から分かるように、アクチュエータ74によりX1側に距離β1だけフォークシャフト92を移動させる際にX1側のストッパ部ST1が機能するか否かを判定するモードである。判定結果が“YES”の場合、ステップS802に進み、それ以外の場合は、ステップS816に進む。
ステップS802では、位置情報生成部156は、アクチュエータ制御部153を介して、フォークシャフト92を、シフト基準位置からX1側に距離β1だけ離れた位置に向けてストロークさせる(上述のLow側駆動処理に対応)。ここで、シフト基準位置とは、上述したように、ステップS802の駆動処理の開始時(初回の処理周期)の位置とする。距離β1は、上述したとおりであり、図4に示した関係に基づいて、移動距離ΔLL1よりも長く、移動距離ΔLN1よりも短くかつ移動距離ΔLH1よりも短くなるように、設定される。
ステップS804では、位置情報生成部156は、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、シフト基準位置からX1側へのストローク量が、距離β1に達したか否かを判定する。
ここで、シフト基準位置が位置PHigh又は位置PNである場合は、図4を参照して上述したように、シフト基準位置から距離β1だけX1側にフォークシャフト92を移動させることは可能である。また、シフト基準位置が位置PHigh又は位置PNである場合は、図4を参照して上述したように、シフト基準位置から距離β1だけX1側にフォークシャフト92を移動させても、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PHigh又は位置PNから位置PN又は位置PLowに遷移することはない。
他方、シフト基準位置が位置PLowである場合は、図4を参照して上述したように、ストッパ部ST1に起因して、シフト基準位置から距離β1だけX1側にフォークシャフト92を移動させることができない。すなわち、ステップS802の駆動処理の開始時からのフォークシャフト92の移動距離(すなわちストローク量)が距離β1よりも短い移動距離ΔLL1になった時点で、フォークシャフト92のX1側への更なる移動は不能となる(図3D参照)。従って、シフト基準位置が位置PLowである場合は、ステップS804での判定結果が“YES”となる可能性は実質的にない。
本ステップS804において、判定結果が“YES”の場合、ステップS812に進み、それ以外の場合は、ステップS806に進む。
ステップS806では、位置情報生成部156は、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、アクチュエータ74の回転数が“0”であるか否かを判定する。例えば、アクチュエータ回転角センサ135がホールICである場合、ホールICからのパルスが変化しないことに基づいて、アクチュエータ74の回転数が“0”であると判定されてよい。
ここで、ステップS802の駆動処理によるストローク量が距離β1に達する前に、アクチュエータ74の回転数が“0”になる、すなわちアクチュエータ74が駆動できない状態になることは、ストッパ部ST1が機能したことを意味する。すなわち、ストッパ部ST1が機能すると、フォークシャフト92のX1側への更なる移動が不能となり、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX1側への更なる駆動が不能となる。
本ステップS806において、判定結果が“YES”の場合、ステップS808に進み、それ以外の場合は、ステップS802の駆動処理を継続すべく、今回周期の処理は終了する。
ステップS808では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を“位置PLow”に設定する。
ステップS810では、位置情報生成部156は、ステップS802の駆動処理(Low側駆動処理)を終了させて、シフト基準設定済フラグF0を“1”にセットする。なお、ステップS802の駆動処理を終了する際には、アクチュエータ制御部153は、アクチュエータ74の駆動電流を“0”にしてコイルばね94及びロックボール96の作用によりフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置(この場合、位置PLow)へと復帰させてもよいし、アクチュエータ74を駆動してフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置に復帰させてもよい。
ステップS812では、位置情報生成部156は、モードを“Lo側壁当て”モードから“Hi側壁当て”モードに変更する。“Hi側壁当て”モードは、後述から分かるように、アクチュエータ74によりX2側に距離β2だけフォークシャフト92を移動させる際にX2側のストッパ部ST2が機能するか否かを判定するモードである。
ステップS816では、位置情報生成部156は、アクチュエータ制御部153を介して、フォークシャフト92を、シフト基準位置からX2側に距離β2だけ離れた位置に向けてストロークさせる(上述のHigh側駆動処理に対応)。シフト基準位置は、上述のとおり、ステップS802の駆動処理の開始時(初回の処理周期)のフォークシャフト92の位置である。距離β2は、上述したとおりであり、図4に示した関係に基づいて、移動距離ΔLH2よりも長く、移動距離ΔLN2よりも短くかつ移動距離ΔLL2よりも短くなるように、設定される。
ステップS818では、位置情報生成部156は、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、シフト基準位置からX2側へのストローク量が、距離β2に達したか否かを判定する。
ここで、シフト基準位置が位置PLow又は位置PNである場合は、図4を参照して上述したように、シフト基準位置から距離β2だけX2側にフォークシャフト92を移動させることは可能である。また、シフト基準位置が位置PLow又は位置PNである場合は、図4を参照して上述したように、シフト基準位置から距離β2だけX2側にフォークシャフト92を移動させても、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PLow又は位置PNから位置PN又は位置PHighに遷移することはない。
他方、シフト基準位置が位置PHighである場合は、図4を参照して上述したように、ストッパ部ST2に起因して、シフト基準位置から距離β2だけX2側にフォークシャフト92を移動させることができない。すなわち、ステップS802の駆動処理の開始時からのフォークシャフト92の移動距離(すなわちストローク量)が距離β2よりも短い移動距離ΔLH2になった時点で、フォークシャフト92のX2側への更なる移動は不能となる(図3E参照)。従って、シフト基準位置が位置PHighである場合は、ステップS818での判定結果が“YES”となる可能性は実質的にない。
本ステップS818において、判定結果が“YES”の場合、ステップS826に進み、それ以外の場合は、ステップS820に進む。
ステップS820では、位置情報生成部156は、ステップS700で得たアクチュエータ情報に基づいて、アクチュエータ74の回転数が“0”であるか否かを判定する。
ここで、ステップS816の駆動処理によるストローク量が距離β2に達する前に、アクチュエータ74の回転数が“0”になる、すなわちアクチュエータ74が駆動できない状態になることは、ストッパ部ST2が機能したことを意味する。すなわち、ストッパ部ST2が機能すると、フォークシャフト92のX2側への更なる移動が不能となり、アクチュエータ74によるフォークシャフト92のX2側への更なる駆動が不能となる。
本ステップS820において、判定結果が“YES”の場合、ステップS822に進み、それ以外の場合は、ステップS816の駆動処理を継続すべく、今回周期の処理は終了する。
ステップS822では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を“位置PHigh”に設定する。
ステップS824では、位置情報生成部156は、ステップS816の駆動処理(High側駆動処理)を終了させて、シフト基準設定済フラグF0を“1”にセットする。なお、ステップS816の駆動処理を終了する際には、アクチュエータ制御部153は、アクチュエータ74の駆動電流を“0”にしてコイルばね94及びロックボール96の作用によりフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置(この場合、位置PHigh)へと復帰させてもよいし、アクチュエータ74を駆動してフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置に復帰させてもよい。
ステップS826では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を“位置PN”に設定する。
ステップS828では、位置情報生成部156は、ステップS816の駆動処理(High側駆動処理)を終了させて、シフト基準設定済フラグF0を“1”にセットする。なお、ステップS816の駆動処理を終了する際には、アクチュエータ制御部153は、アクチュエータ74の駆動電流を“0”にしてコイルばね94及びロックボール96の作用によりフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置(この場合、位置PN)へと復帰させてもよいし、アクチュエータ74を駆動してフォークシャフト92上のロックボール96の位置をシフト基準位置に復帰させてもよい。
このようにして、図8に示す処理によれば、係合装置30の状態を非噛み合い状態、第1噛み合い状態、及び第2噛み合い状態間で変更することなく(すなわち変速段を変更することなく)、フォークシャフト92の位置情報の生成が可能となる。具体的には、ステップS802の駆動処理では、X1側にフォークシャフト92を距離β1だけストロークさせるので、ロックボール96が嵌まる凹部(凹部920、921、922のいずれか)を変更させることなく、フォークシャフト92の位置が位置PLowであるか否かを判定できる。また、ステップS816の駆動処理では、X2側にフォークシャフト92を距離β2だけストロークさせるので、ロックボール96が嵌まる凹部(凹部920、921、922のいずれか)を変更させることなく、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PHighであるか否かを判定できる。そして、これらの2つの駆動処理の判定結果を介して、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PNであるか否かを判定できる。フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PLowでなく、かつ、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PHighでないと判定された場合に、フォークシャフト92上のロックボール96の位置が位置PNであると判定できる。
なお、図7及び図8に示す処理によれば、シフト基準設定済フラグF0は、車両起動時に“0”であるので、車両の初期化処理等に付随した態様で、シフト基準位置を設定できる。これにより、駐車状態を経由したことからフォークシャフト92上のロックボール96の位置が不確かになった状況下において、シフト基準位置を設定できる。ただし、変形例では、シフト基準設定済フラグF0は、車両起動時に加えて又は代えて、車両起動後に、所定のリセット条件が満たされた場合に“0”にリセットされてもよい。所定のリセット条件は、制御装置100のリセット時や電源の瞬断等が発生した場合に満たされてよい。この場合、制御装置100のリセット時や電源の瞬断等が発生した場合に速やかにシフト基準位置を設定できる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、シフトディテント機構90は、3つの凹部920、921、922を有しているが、2つの凹部だけしかないシフトディテント機構に対しても適用可能である。この場合、上述したLow側駆動処理及びHigh側駆動処理のうちの、一方だけに基づいて、シフト基準位置を設定できる。また、4つ以上の凹部を有するシフトディテント機構に対しても適用可能である。この場合、上述したLow側駆動処理及びHigh側駆動処理に基づいて、ロックボール96が一方側の端部の凹部に位置する場合と、ロックボール96が他方側の端部の凹部に位置する場合とを検出できる。
また、上述した実施例では、3つの凹部920、921、922はフォークシャフト92側に形成されているが、モータハウジング側に形成されてもよい。この場合、フォークシャフト92側に、コイルばね94及びロックボール96が設けられる。
また、上述した実施例では、位置情報生成部156は、シフト基準位置を位置PN、位置PLow、及び位置PHighのうちのいずれかに対応付けることで、シフト基準位置を設定するが、等価的に、シフト基準位置に対して所定位置関係の位置を、“シフト基準位置”として再設定してもよい。例えば、シフト基準位置が“位置PHigh”であると基準位置判定部1565により判定された場合、当該シフト基準位置に対して、位置PHighから位置PNまでの距離に相当する長さΔLN2+ΔLH1だけX2側にオフセットした位置を、シフト基準位置とし、かつ、当該シフト基準位置に位置PNを対応付けることで、シフト基準位置を再設定してもよい。なお、この場合、シフト基準位置は、常に位置PNに対応付けられることになる。
また、上述した実施例は、上述したLow側駆動処理及びHigh側駆動処理のいずれにおいてもアップロックが生じないことを前提としている。ここで、アップロックとは、係合装置30において第1要素31と第2要素32A、32Bとが噛み合わない事象をいう。ドッグクラッチ301におけるアップロックは、主に、第1要素31の歯状部311と第2要素32Aの歯状部321Aとの間の周方向の位相が同期していないことに起因して生じる。同様に、ドッグクラッチ302におけるアップロックは、主に、第1要素31の歯状部311と第2要素32Bの歯状部321Bとの間の周方向の位相が同期していないことに起因して生じる。Low側駆動処理においてアップロックが生じないようにするためには、第1要素31の歯状部311の歯先(軸方向の歯先、以下同様)と、第2要素32Aの歯状部321Aの歯先とが軸方向で重なり始めるタイミングが、シフト基準位置からのフォークシャフト92の移動距離(X1側)が距離β1を超えるタイミングよりも遅れるように各種の関係が設計されていればよい。同様に、High側駆動処理においてアップロックが生じないようにするためには、第1要素31の歯状部311の歯先と、第2要素32Bの歯状部321Bの歯先とが軸方向で重なり始めるタイミングが、シフト基準位置からのフォークシャフト92の移動距離(X2側)が距離β2を超えるタイミングよりも遅れるように各種の関係が設計されていればよい。
ただし、変形例では、第1要素31の歯状部311の歯先と、第2要素32Aの歯状部321Aの歯先とが軸方向で重なり始めるタイミングが、シフト基準位置からのフォークシャフト92の移動距離(X1側)が距離β1を超えるタイミングよりも早くなるように各種の関係が設計されてもよい。同様に、第1要素31の歯状部311の歯先と、第2要素32Bの歯状部321Bの歯先とが軸方向で重なり始めるタイミングが、シフト基準位置からのフォークシャフト92の移動距離(X2側)が距離β2を超えるタイミングよりも早くなるように各種の関係が設計されてもよい。この場合でも、モータ10により第1要素31を回転させてから又は回転させながらLow側駆動処理及びHigh側駆動処理を行うことで、アップロックの可能性を低減できるので、ストッパ部ST1、ST2が機能したか否かを精度良く判定できる。
また、上述した実施例は、図1に示す特定の車両用駆動装置1への適用例が説明されているが、シフトディテント機構が設けられる構成であれば、変速段数や各種の接続態様等がどのような車両用駆動装置に対しても適用可能である。従って、適用可能な駆動装置は、電気自動車用に限られず、ハイブリッド車用であってよいし、モータ10を駆動源としない(すなわち内燃機関だけを駆動源とする)車両用であってよい。
また、上述した実施例では、アクチュエータ74により駆動される物体(例えばフォークシャフト92)のストローク量を検出するストロークセンサは設けられないが、設けられてもよい。この場合、上述のようにして生成されるフォークシャフト92の位置情報は、ストロークセンサの異常の有無等を判定するために利用されてもよい。
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
(1)一の形態は、第1方向(Y)に可動な係合体(96)と、
前記第1方向に交差する第2方向(X)で前記係合体に対して相対的に移動可能であり、前記係合体が嵌まることが可能な凹部(920、921、922)を、前記第2方向に沿って複数備える凹部形成部材(92)と、
複数の前記凹部のうちの、第1凹部(921)に対応して設けられ、該第1凹部に前記係合体が嵌った状態からの前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動であって前記第2方向の第1側(X1側)への第1距離(ΔLL1)以上の移動を規制する第1規制部(ST1)と、
前記第1方向に前記凹部形成部材に向けて前記係合体を付勢する弾性部材(94)と、
前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動のための駆動力を発生するアクチュエータ(74)と、
基準位置に基づいて、前記第2方向に沿った前記凹部形成部材と前記係合体との間の位置関係を表す位置情報を生成する位置情報生成部(100;156)とを含み、
前記位置情報生成部は、前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離が前記第1側で前記第1距離以上かつ第1上限距離(ΔLH1、ΔLN1)以下となるように前記アクチュエータを駆動する第1駆動処理(1561)を行い、
ここで前記第1上限距離とは、前記第1凹部以外の前記凹部が、前記係合体が嵌った状態から、隣の前記凹部に前記係合体が嵌まる状態への遷移が不能である上限の距離であり、
前記位置情報生成部は、前記第1駆動処理に基づいて、前記基準位置を設定する、シフトディテント装置(90、50)である。
本形態によれば、係合体が第1凹部に嵌った状態で第1駆動処理を行う場合には、第1規制部が機能するので、第1駆動処理において第1規制部が機能するか否かに基づいて、係合体が第1凹部に嵌った状態であるか否かを判定できる。そして、第1駆動処理において第1規制部が機能した場合、係合体が第1凹部に嵌った状態に基づく基準位置を設定できるので、係合体が嵌まる凹部の変更(係合体が嵌まる凹部の一の凹部から他の凹部への遷移)を必要とすることなく、精度の高い係合体の位置情報の生成が可能となる。
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記第1駆動処理において、前記第1規制部が機能したか否かを判定し、前記第1規制部が機能したか否かの判定結果に基づいて、前記基準位置を設定する。
この場合、係合体が第1凹部に嵌った状態で第1駆動処理を行う場合には第1規制部が機能することを利用して、第1規制部が機能したか否かに応じて基準位置を設定できる。
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記第1規制部が機能したと判定した場合、前記第1凹部に応じた前記基準位置を設定する。
この場合、係合体が第1凹部に嵌った状態で第1駆動処理を行う場合には第1規制部が機能することを利用して、第1凹部に応じた基準位置を設定できる。
(4)また、本形態においては、好ましくは、複数の前記凹部のうちの、前記第1凹部とは異なる第2凹部(922)に対応して設けられ、該第2凹部に前記係合体が嵌った状態からの前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動であって前記第2方向の前記第2側への第2距離(ΔLH2)以上の移動を規制する第2規制部(ST2)を更に含み、
前記位置情報生成部は、更に、前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離が前記第2側で前記第2距離以上かつ第2上限距離(ΔLL2、ΔLN2)以下となるように前記アクチュエータを駆動する第2駆動処理(1562)を行い
ここで前記第2上限距離とは、前記第2凹部以外の前記凹部が、前記係合体が嵌った状態から、隣の前記凹部に前記係合体が嵌まる状態への遷移が不能である上限の距離であり、
前記位置情報生成部は、前記第2駆動処理に更に基づいて、前記基準位置を設定する。
この場合、係合体が第2凹部に嵌った状態で第2駆動処理を行う場合は、第2規制部が機能するので、第2駆動処理において第2規制部が機能するか否かに基づいて、係合体が第2凹部に嵌った状態であるか否かを判定できる。そして、第2駆動処理において第2規制部が機能した場合、係合体が第2凹部に嵌った状態に基づく基準位置を設定できるので、係合体が嵌まる凹部の変更を必要とすることなく、係合体の位置情報の生成が可能となる。また、上述した第1駆動処理において第1規制部が機能したか否かの判定結果と、第2駆動処理において第2規制部が機能したか否かの判定結果との組み合わせに基づいて、係合体が第1凹部と第2凹部のいずれにも嵌まっていない状態を検出できる。
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記第2駆動処理において、前記第2規制部が機能したか否かを判定し、前記第2規制部が機能したか否かの判定結果に基づいて、前記基準位置を設定する。
この場合、係合体が第2凹部に嵌った状態で第2駆動処理を行う場合には第2規制部が機能することを利用して、第2規制部が機能したか否かに応じて基準位置を設定できる。
(6)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記第2規制部が機能したと判定した場合、前記第2凹部に応じた前記基準位置を設定する。
この場合、係合体が第2凹部に嵌った状態で第2駆動処理を行う場合には第2規制部が機能することを利用して、第2凹部に応じた基準位置を設定できる。
(7)また、本形態においては、好ましくは、複数の前記凹部は、前記第1凹部と、前記第2凹部と、前記第2方向で前記第1凹部と前記第2凹部の間に位置する第3凹部(920)とからなり、
前記第3凹部に前記係合体が嵌った状態から前記第1凹部に前記係合体が嵌まる状態への遷移は、前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離が前記第1側で前記第1上限距離を超えると可能となり、
前記第3凹部に前記係合体が嵌った状態から前記第2凹部に前記係合体が嵌まる状態への遷移は、前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動距離が前記第2側で前記第2上限距離を超えると可能となる。
この場合、3つの凹部が設けられる構成において、第1駆動処理及び第2駆動処理に基づいて、3つの凹部のうちのどの凹部に係合体が嵌った状態であるかを検出できる。
(8)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、
前記第1駆動処理において、前記第1規制部が機能したか否かを判定し、前記第1規制部が機能したと判定した場合は、前記第1凹部に応じた前記基準位置を設定し、前記第1規制部が機能しないと判定した場合は、前記第2駆動処理を行い、
前記第2駆動処理において、前記第2規制部が機能したか否かを判定し、前記第2規制部が機能したと判定した場合は、前記第2凹部に応じた前記基準位置を設定し、前記第2規制部が機能しないと判定した場合は、前記第3凹部に応じた前記基準位置を設定する。
この場合、3つの凹部が設けられる構成において、第1駆動処理及び第2駆動処理のそれぞれの判定結果に基づいて、3つの凹部のうちのどの凹部に係合体が嵌った状態であっても、当該状態に応じた基準位置を設定できる。
(9)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記アクチュエータの駆動電流に基づいて、前記第1規制部が機能したか否かを判定する。
この場合、アクチュエータの駆動電流を利用して、第1規制部が機能したか否かを判定できる。
(10)また、本形態においては、好ましくは、前記位置情報生成部は、前記アクチュエータの駆動電流に基づいて、前記第2規制部が機能したか否かを判定する。
この場合、アクチュエータの駆動電流を利用して、第2規制部が機能したか否かを判定できる。
(11)他の一の形態は、上記のような態様のシフトディテント装置と、
前記係合体に対する前記凹部形成部材の移動に連動して、前記第2方向に移動するシフトフォーク(70)と、
前記シフトフォークに接続され、前記第2方向に近接すると噛み合い状態となりかつ前記第2方向に離間すると非噛み合い状態となる第1要素及び第2要素を備えるクラッチ(30)と、
前記位置情報に基づいて、前記クラッチを制御する制御部(153)とを含む、車両用駆動装置である。
この場合、上記のような態様のシフトディテント装置を車両用駆動装置において好適に利用できる。