以下、本発明によるシフトレンジ制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態を図1~図6に示す。図1および図2に示すように、シフトバイワイヤシステム1は、モータ10、シフトレンジ切替機構20、パーキングロック機構30、および、シフトレンジ制御装置40等を備える。
シフトバイワイヤアクチュエータ(図2中、「SBW-ACT」と記載)であるモータ10は、図示しない車両に搭載されるバッテリから電力が供給されることで回転し、シフトレンジ切替機構20の駆動源として機能する。本実施形態のモータ10は、スイッチトリラクタンスモータであるが、DCモータ等、どのような種類のものを用いてもよい。
図2に示すように、モータ回転角センサであるエンコーダ13は、モータ10の図示しないロータの回転位置を検出する。エンコーダ13は、例えば磁気式のロータリーエンコーダであって、ロータと一体に回転する磁石と、磁気検出用のホールIC等により構成される。エンコーダ13は、ロータの回転に同期して、所定角度ごとにA相およびB相のパルス信号であるエンコーダ信号を出力する。減速機14は、モータ10のモータ軸105(図3参照)と出力軸15との間に設けられ、モータ10の回転を減速して出力軸15に出力する。これにより、モータ10の回転がシフトレンジ切替機構20に伝達される。出力軸15には、出力軸15の角度を検出する図示しない出力軸センサが設けられる。出力軸センサは、例えばポテンショメータである。
図1に示すように、シフトレンジ切替機構20は、ディテントプレート21、および、付勢部材であるディテントスプリング25等を有し、減速機14から出力された回転駆動力を、マニュアルバルブ28、および、パーキングロック機構30へ伝達する。ディテントプレート21は、出力軸15に固定され、モータ10により駆動される。
ディテントプレート21には、出力軸15と平行に突出するピン24が設けられる。ピン24は、マニュアルバルブ28と接続される。ディテントプレート21がモータ10によって駆動されることで、マニュアルバルブ28は軸方向に往復移動する。すなわち、シフトレンジ切替機構20は、モータ10の回転運動を直線運動に変換してマニュアルバルブ28に伝達する。マニュアルバルブ28は、バルブボディ281に設けられる。マニュアルバルブ28が軸方向に往復移動することで、油圧クラッチ29(図2参照)への油圧供給路が切り替えられ、油圧クラッチ29の係合状態が切り替わることでシフトレンジが変更される。
ディテントスプリング25は、弾性変形可能な板状部材であり、先端にディテントローラ26が設けられる。ディテントローラ26は、凹部22のいずれかに嵌まり込む。ディテントスプリング25は、ディテントローラ26をディテントプレート21の回動中心側に付勢する。ディテントプレート21に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング25が弾性変形し、ディテントローラ26が凹部22を移動する。ディテントローラ26が凹部22のいずれかに嵌まり込むことで、ディテントプレート21の揺動が規制され、マニュアルバルブ28の軸方向位置、および、パーキングロック機構30の状態が決定され、自動変速機5のシフトレンジが固定される。自動変速機5は、車速やエンジン90の回転数に応じて変速比を切り替える。
図3に模式的に示すように、ディテントプレート21のディテントスプリング25側には、4つの谷部221~224が設けられる。第1谷部221がPレンジ、第2谷部222がRレンジ、第3谷部223がNレンジ、第4谷部224がDレンジに対応する。また、第1谷部221と第2谷部222との間には第1山部226が設けられ、第2谷部222と第3谷部223との間には第2山部227が設けられ、第3谷部223と第4谷部224との間には第3山部228が設けられる。
配列される複数の谷部221~224の両側には、壁部231、232が形成される。詳細には、第1谷部221の第1山部226と反対側に壁部231が形成され、第4谷部224の第3山部228と反対側に壁部232が形成される。壁部231、232は、高さが山部226~228よりも高く形成されている。ディテントローラ26が第1谷部221にある状態にてディテントプレート21を壁部231の方向に回転させようとすると、壁部231によりディテントローラ26の移動が規制され、ディテントローラ26が壁部231を乗り越えるのを防ぐことができる。また、ディテントローラ26が第4谷部224にある状態にてディテントプレート21を壁部232の方向に回転させようとすると、壁部232によりディテントローラ26の移動が規制され、ディテントローラ26が壁部232を乗り越えるのを防ぐことができる。すなわち壁部231、232がディテントローラ26の移動を規制する規制部として機能している。以下適宜、Pレンジ側の壁部231を「P壁部」、Dレンジ側の壁部232を「D壁部」とする。
モータ軸105と出力軸15との間には、遊びが形成されている。図3では、減速機14と出力軸15とが一体となっており、モータ軸105と減速機14との間に「遊び」が形成されているが、モータ軸105と減速機14とが一体となっており、減速機14と出力軸15との間に「遊び」が形成されていてもよい。「遊び」とはモータ軸105と出力軸15との間に存在する遊びやガタ等の合計と捉えることができ、以下適宜、「ガタ」という。
図1に示すように、パーキングロック機構30は、パーキングロッド31、円錐体32、パーキングロックポール33、軸部34、および、パーキングギア35を有する。パーキングロッド31は、略L字形状に形成され、一端311側がディテントプレート21に固定される。パーキングロッド31の他端312側には、円錐体32が設けられる。円錐体32は、他端312側にいくほど縮径するように形成される。ディテントローラ26がPレンジに対応する凹部に嵌まり込む方向にディテントプレート21が回転すると、円錐体32が矢印Pの方向に移動する。
パーキングロックポール33は、円錐体32の円錐面と当接し、軸部34を中心に揺動可能に設けられる。パーキングロックポール33のパーキングギア35側には、パーキングギア35と噛み合い可能な凸部331が設けられる。ディテントプレート21の回転により、円錐体32が矢印P方向に移動すると、パーキングロックポール33が押し上げられ、凸部331とパーキングギア35とが噛み合う。一方、円錐体32が矢印NotP方向に移動すると、凸部331とパーキングギア35との噛み合いが解除される。
パーキングギア35は図示しない車軸に設けられ、パーキングロックポール33の凸部331と噛み合い可能に設けられる。パーキングギア35と凸部331とが噛み合うと、車軸の回転が規制される。シフトレンジがP以外のレンジであるNotPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングロックポール33によりロックされず、車軸の回転は、パーキングロック機構30により妨げられない。また、シフトレンジがPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングロックポール33によってロックされ、車軸の回転が規制される。
図2に示すように、シフトレンジ制御装置40は、制御部としてのSBWECU50、および、図示しない駆動回路等を備える。SBWECU50および外部制御部としてのATCU60は、いずれもマイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。SBWECU50およびATCU60における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。図中、SBWECU50を「SCU」とも記載する。
SBWECU50は、要求レンジや車速等に基づいてモータ10の駆動を制御することで、シフトレンジの切り替えを制御する。また、ATCU60は、車速、アクセル開度、および、要求レンジ等に基づき、図示しない変速用油圧制御ソレノイドの駆動を制御する。変速用油圧制御ソレノイドを制御することで、変速段が制御される。変速用油圧制御ソレノイドは、変速段数等に応じた本数が設けられる。SBWECU50およびATCU60は、CAN(Controller Area Network)等である車両通信網80と接続されており、相互に情報を授受可能である。
SBWECU50は、シフター判定部51、駆動制御部55、乗車判定部56、および、異常監視部59等を有し、シフトインジケータ78にシフトポジション情報を出力する。シフトインジケータ78は、シフトポジション情報に応じたシフトポジションを表示する。
シフター判定部51は、シフター71から取得されるシフト信号に基づいてシフトレバー位置を判定する。図4に示すように、シフター71は、シフトレバー72、Pポジションスイッチ74、および、シフト位置検出センサ75を有する。シフトレバー72は、ドライバがスリット73を移動させることで、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジを指示する。詳細には、シフトレバー72をDレンジ指示位置731へ移動させることでDレンジが指示され、シフトレバー72をRレンジ指示位置732へ移動させることでRレンジが指示される。また、シフトレバー72をNレンジ指示位置733にてNレンジ指示保持時間に亘って停止させることで、各指示位置間の移動とは区別され、Nレンジが指示される。
ドライバがシフトレバー72から手を離すと、シフトレバー72はホーム位置734に戻る。Pレンジから他のレンジへは、ブレーキペダルが踏み込まれているときに切替可能であって、ブレーキペダルが踏み込まれていないときには切替不能である。
Pポジションスイッチ74は、モメンタリ式のボタンであって、ドライバがPポジションスイッチ74を押すとPレンジが指示される。シフト位置検出センサ75は、スリット73に沿って配置される複数のセンサ素子を有し、シフト信号をSBWECU50に出力する。センサ素子は、シフトレバー72が通過することでHi、Loが切り替わる。
図2に示すように、シフター判定部51は、シフト位置検出センサ75の信号パターンに応じてシフトレバー位置を判定する。また、シフター判定部51は、シフトレバー72がホーム位置から変化してから所定のシフター判定時間Tw経過後のシフトレバー位置に基づいてシフター情報を生成し、ATCU60に出力する。
駆動制御部55は、エンコーダ信号に基づき、エンコーダカウント値が要求レンジに応じて設定される目標カウント値となるように、フィードバック制御等により、モータ10の駆動を制御する。本実施形態では、エンコーダカウント値は、エンコーダ信号のエッジ検出に応じ、シフトレンジをDレンジ側に切り替えるときにカウントアップされ、Pレンジに切り替えるときにカウントダウンされるが、カウント方向は逆でもよい。モータ10の駆動制御の詳細は、どのようであってもよい。乗車判定部56は、ドライバの乗車状態を判定する。異常監視部59は、シフトバイワイヤシステム1の異常を監視する。
ATCU60は、変速制御部61、要求レンジ判定部62、実レンジ判定部63、および、異常監視部65等を備える。変速制御部61は、変速用油圧制御ソレノイドの駆動を制御する。要求レンジ判定部62は、SBWECU50からのシフター情報等に基づき、要求レンジを判定し、要求レンジ情報をSBWECU50に出力する。実レンジ判定部63は、ポジションセンサの検出値等に基づいて実レンジを判定する。異常監視部65は、変速制御システム2の異常を監視する。
本実施形態では、エンコーダ13のカウント値であるエンコーダカウント値は、SBWECU50の電源がオフされると、リセットされる。そのため、電源投入時に初期学習制御を行う。初期学習制御には、初期駆動制御および基準位置学習制御が含まれる。初期学習制御は、システム起動時に行われるものであって、学習完了後、電源がオフされるまでの間は、学習された値を用いて制御を行う。以下、SBWECU50は、車両のイグニッションスイッチ等である始動スイッチのオンオフに応じてオンオフされるものとして説明する。以下適宜、始動スイッチを「IG」とする。
本実施形態の初期学習制御を図5に基づいて説明する。図5では、上段から、IG、ブレーキ信号、ポジションセンサ、シフトレバー位置、シフター情報、要求レンジ、目標レンジ、通電許可フラグおよびモータ10の駆動状態(図中、「ACT状態」とする。)である。また、各信号等を持っている構成を括弧書きで記載した。図7~図12も同様である。本実施形態では、要求レンジはATCU60にて生成されてSBWECU50に送信される情報であり、目標レンジはATCU60から取得した要求レンジに応じたSBWECU50にて生成される。
IGがオンされると、一時的に通電が許可され、初期駆動制御を行う。初期駆動制御では、通電相を一巡させることで、モータ10の回転位置と通電相とを対応させる。初期駆動制御は、ドライバの乗車判定を待たず、システム起動後、速やかに実施され、終了後、スタンバイ状態となる。
基準位置学習制御では、ディテントローラ26が壁部231または壁部232に当接するところまでモータ10を回転させ、ディテントローラ26が壁部231または壁部232に当接したときのエンコーダカウント値を基準位置として学習する。以下適宜、P壁位置を基準位置として学習する制御を「P壁当て」、D壁位置を基準位置として学習する制御を「D壁当て」とする。本実施形態では、初期駆動制御を除き、ドライバ不在時の通電を許可しないため、ドライバが乗車している状態が担保されているときに基準位置学習制御を行う。
図2にて説明したように、本実施形態では、SBWECU50とATCU60とが別のECUとして構成されており、SBWECU50は、シフトレバー位置が変化してからシフター判定時間Tw経過後のシフトレバー位置に基づいてシフター情報を生成してATCU60に出力し、ATCU60から要求レンジを取得する。
例えば図11に示す参考例では、IGオンまたはドライバがブレーキペダルを操作することで入力されるブレーキ信号をトリガとして通電を許可し、IGオン直後に初期駆動およびP壁当てを行っている。ここで、IGオン信号が信頼性の面からドライバ乗車判定に使えない場合、あるいは、ブレーキ信号がSBWECUに入力されておらずドライバ乗車判定に使えない場合、初期駆動制御から連続してのP壁当てを実施できない。また、図12に示す例のように、要求レンジが切り替わってからP壁当てを実施すると、P壁当てに要する時間の分、レンジ切替開始が遅れるため、ドライバに違和感を与える虞がある。
そこで本実施形態では、図5に示すように、要求レンジが切り替わる前に、ドライバの乗車判定を行い、基準位置学習制御を開始する。換言すると、要求レンジが切り替わるより前に変化する信号をトリガとして、基準位置学習制御を開始する。図5等では、トリガとなる信号変化を一点鎖線の丸印で示し、トリガに応じた制御や信号等の切り替えを一点鎖線の矢印で示す。
具体的には、SBWECU50は、シフト位置検出センサ75からのシフト信号に基づき、シフトレバー位置の変化が検出された場合、ドライバが乗車したと判定し、通電許可フラグをオンにし、基準位置学習を行う。例えば、シフトレバー位置がホーム(H)に位置しているときの信号パターンから変化した場合、ドライバが乗車していると判定する。
また例えば、シフト信号がNレンジを示す信号パターンになったとき、ドライバが乗車していると判定してもよい。ここで、ノイズ等による誤判定を防ぐべく、複数回に亘って継続して該当の信号パターンとなったときに、ドライバ乗車判定をすることが望ましい。なお、シフト信号に応じてドライバが乗車していると判定するのに要する時間は、シフター判定時間Twよりも短くなるように設定される。
時刻x11にて、IGがオンされ、ポジションセンサのPレンジに応じ、目標シフトレンジが不定からPに切り替わると、通電許可フラグを一時的にオンにし、初期駆動制御が実施される。初期駆動制御終了後、モータ10の駆動状態をスタンバイに戻し、その後、通電許可フラグをオフにする。
時刻x12にて、シフトレバー位置がNレンジになると、SBWECU50は、ドライバ乗車状態であると判定して通電許可フラグをオンにし、基準位置学習制御を行う。基準位置学習制御が完了すると、スタンバイに戻る。時刻x13にて、要求レンジがDレンジになると、目標レンジをDレンジとし、ディテントローラ26が谷部224に移動するように、モータ10を駆動する。
図5の例では、シフトレバー位置が変化してから、シフター情報を確定してATCU60に送信するまでの時間であるシフター判定時間Tw中にP壁当てが完了する。そのため、時刻x14にて、SBWECU50が要求レンジを受信したときには、基準位置学習が完了しているので、ドライバに違和感を与えることなく、速やかにレンジ切替制御を行うことができる。
本実施形態の初期学習制御を図6のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、IGがオンになったときに、SBWECU50にて実行される処理である。S101では、SBWECU50は、目標レンジを不定からPレンジ、通電許可フラグをオンに切り替え、初期駆動制御を行う。初期駆動制御が完了すると、モータ10の駆動状態をスタンバイに戻した後、通電許可フラグをオフにする。
S102では、SBWECU50は、ドライバが乗車しているか否か判定する。本実施形態では、シフトレバー位置が変化した場合、ドライバが乗車していると判定し、シフトレバー位置が変化していない場合、ドライバ乗車未確定と判定する。ドライバ乗車未確定であると判断された場合(S102:NO)、すなわち、シフトレバー位置が変化していない場合、この判断処理を繰り返す。ドライバが乗車していると判断された場合(S102:YES)、すなわちシフトレバー位置が変化した場合、S103へ移行する。SBWECU50は、S103にて通電許可フラグをオンにし、S104にてディテントローラ26が壁部231へ向かう方向にモータ10を駆動する。
S105では、SBWECU50は、エンコーダカウント値の最小値が更新されない未更新状態の継続時間Tcが判定時間Tthより大きいか否かを判断する。判定時間は、ディテントローラ26が壁部231に到達したことを判定可能な程度の時間に設定される。エンコーダカウント値の最小値未更新状態の継続時間Tcが判定時間Tth以下であると判断された場合(S105:NO)、S104へ戻り、モータ10の駆動制御を継続する。エンコーダカウント値の最小値未更新状態の継続時間Tcが判定時間Tthより大きいと判断された場合(S105:YES)、S106へ移行する。
S106では、SBWECU50は、エンコーダカウント値の最小値を、ディテントローラ26が壁部231に当接したときの値であるとみなし、基準位置を確定する。確定された基準位置となるエンコーダカウント値は、例えば図示しないRAM等に記憶させる。
S107では、SBWECU50は、ディテントローラ26が壁部231から離間する方向にモータ10を駆動する。このとき、目標カウント値は要求レンジ等に応じ、適宜変更可能である。
S108では、SBWECU50は、モータ10の回転位置が目標に到達したか否か判断する。ここでは、エンコーダカウント値が目標カウント値を含む所定範囲内(例えば±2カウント)となった場合、目標に到達したと判定する。モータ10の回転位置が目標に到達していないと判断された場合(S108:NO)、S107へ移行する。モータ10の回転位置が目標に到達したと判断された場合(S108:YES)、S109へ移行し、停止制御にてモータ10を停止させる。停止制御では、例えばエンコーダカウント値に応じた2相への固定相通電を所定時間行う。そして、停止制御終了後、モータ10の駆動状態をスタンバイとする。
基準位置学習制御において、ディテントローラ26を壁部231側から戻すとき、要求レンジがPレンジであれば、ディテントローラ26が谷部221の底部に嵌まり合うようにモータ10を駆動する。そしてスタンバイ後、要求レンジに応じてモータ10の駆動を制御する。一方、ディテントローラ26を壁部231から戻すときに、要求レンジがすでにPレンジからPレンジ以外に切り替わっている場合、要求レンジに応じて目標カウント値を設定し、ディテントローラ26を谷部221にて停止させることなく、要求レンジに応じた谷部まで移動するよう、モータ10を駆動させてもよい。これにより、速やかにレンジ切り替えを行うことができる。
以上説明したように、シフトレンジ制御装置40は、モータ10と、エンコーダ13と、シフトレンジ切替機構20と、を備えるシフトバイワイヤシステム1において、モータ10の駆動を制御することで、シフトレンジを切り替える。シフトレンジ切替機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントローラ26を有する。ディテントプレート21は、複数の谷部221~224および谷部221~224の両側に形成される壁部231、232が設けられ、モータ10の回転が伝達される出力軸15と一体に回転する。ディテントローラ26は、要求レンジに応じた谷部221~224に係合する。
SBWECU50は、シフター判定部51、駆動制御部55および乗車判定部56を有する。駆動制御部55は、モータ10の駆動を制御する。乗車判定部56は、ドライバの乗車状態を判定する。SBWECU50は、ドライバが乗車している状態であると判定されたとき、ディテントローラ26が壁部231に当接する位置までモータ10を駆動し、ディテントローラ26が壁部231に当接したときのエンコーダカウント値を基準位置として学習する。これにより、ドライバが乗車状態であることが担保された状態にて、適切に基準位置学習制御を行うことができる。
SBWECU50は、ドライバがシフトレバー72を操作することで変化するシフト信号を取得してシフター状態を判定するシフター判定部51を有しており、シフター状態に係るシフター情報をATCU60に送信し、ATCU60から要求レンジを取得する。乗車判定部56は、シフトレバー72の位置変化が検出された場合、ドライバが乗車している状態であると判定する。また、シフトレバー72のNレンジ通過が検出された場合、ドライバが乗車している状態であると判定してもよい。
本実施形態では、SBWECU50では、要求レンジをATCU60から取得しているので、要求レンジの確定前に、シフトレバー72の位置変化が検出された段階で基準位置学習制御を行うことで、起動後初回のレンジ切り替えの遅れを抑制することができる。特に、ブレーキ信号やIG信号を取得できない、或いは、信頼性の点でトリガとして使用できない場合であっても、要求レンジの切り替えに先立って、基準位置学習制御を適切に実施することができる。
SBWECU50は、基準位置学習制御に先立ち、エンコーダ信号と通電相とを対応させる初期駆動制御を、ドライバ乗車判定前に行う。これにより、ドライバ乗車判定後に初期駆動制御を行う場合と比較し、起動後初回のレンジ切り替えの遅れを抑制することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態を図7および図8に示す。本実施形態では、図6中のS102において、要求レンジが不定から変化した場合、ドライバが乗車していると判定し、要求レンジが不定の場合、ドライバ乗車未確定とする。ここで、図7に示すように、不定から最初に切り替わった要求レンジがRレンジまたはNレンジの場合、P壁当て後にレンジ切り替えを行うため、壁当て時間分、レンジ切り替えが遅れる。図7では、初回の要求レンジがRレンジの場合を示している。
図8に示すように、不定から最初に切り替わった要求レンジがDレンジの場合、P壁当てに替えて、D壁当てを行う。詳細には、図6中のS104にて、ディテントローラ26が谷部224に嵌まり合うように、谷部221、224間の設計値に応じて目標カウント値を設定してモータ10を駆動し、シフトレンジをDレンジに切り替えるとともに、D壁当てにより、ディテントローラ26が壁部232に当接したときのエンコーダカウント値を基準位置として学習する。なお、D壁当てを行う場合、S105では、エンコーダカウント値の最大値が更新されない未更新状態の継続時間に基づいて判断する。これにより、Dレンジ切り替え時において、基準位置学習による遅れがなく、速やかにレンジ切り替えを行うことができる。
本実施形態では、SBWECU50は、基準位置学習制御において、通常時、P壁当てにより、ディテントローラ26が壁部231に当接したときのエンコーダカウント値を基準位置として学習する。一方、壁部231の学習開始前に、壁部232に隣接する谷部224に対応するレンジが要求シフトレンジとして取得された場合、ディテントローラ26が谷部224に移動するようにモータ10を駆動し、D壁当てにより、ディテントローラ26が壁部232に当接したときのエンコーダカウント値を基準位置として学習する。これにより、起動後初回の要求レンジがDレンジのときの切り替え遅れをなくすことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態)
第3実施形態を図9および図10に示す。例えば第1実施形態では、SBWECU50にて使用可能な情報として、シフトレバー位置を用いて乗車判定を行う。ここで、ドライバのフットブレーキ操作でオンになるブレーキ信号でも乗車判定可能である。しかしながら、本実施形態では、ブレーキ信号は、ATCU60に入力されており、SBWECU50は、ブレーキ信号を直接的に取得することができない。
そこで本実施形態では、図9に示すように、ブレーキ信号がオンになると、ATCU60にて、要求レンジを不定からPレンジに切り替えてSBWECU60に出力する。SBWECU60では、要求レンジがPレンジに切り替わったことにより、乗車判定を行い、これをトリガとして通電許可フラグをオンにし、初期駆動制御、および、P壁当てによる基準位置学習制御を行う。すなわち本実施形態では、ATCU60側でブレーキ信号がオンされたときに要求レンジをPレンジに切り替えることを前提とし、ATCU60から取得される要求レンジに基づいて、間接的にブレーキペダルの操作状態を取得し、ドライバ乗車状態を判定している、と捉えることができる。
また、図10に示すように、例えば車両牽引時等、ブレーキペダルを踏まない状態にてIGがオンされることがある。このような場合であっても、シフター71において、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態でのPレンジから他のレンジへの切り替えが不能であるので、レンジ切り替え前にはブレーキペダルが操作されるため、適切に乗車判定を行うことができる。この場合、初期駆動制御および基準位置学習制御に要する時間と、シフター判定時間Twとの兼ね合いで、レンジ切替開始が多少遅れる虞はあるものの、影響は限定的である。
本実施形態では、SBWECU50は、ドライバのブレーキ操作に応じたブレーキ信号を取得不能であり、ATCU60がブレーキ信号を取得可能であって、システム起動時において、ブレーキ信号が取得された場合、要求レンジを不定からPレンジに切り替える。乗車判定部56は、ATCU60から取得される要求レンジが不定からPレンジに切り替わった場合、ドライバが乗車している状態であると判定する。これにより、SBWECU50がブレーキ信号を直接的に取得できない場合であっても、基準位置学習制御を適切に行うことができ、起動後初回のレンジ切り替え時の遅れを抑制することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
上記実施形態では、シフトバイワイヤシステム1が「シフトレンジ切替システム」、エンコーダ13が「回転角センサ」、ディテントプレート21が「回転部材」、ディテントローラ26が「係合部材」、SBWECU50が「制御部」、ATCU60が「外部制御部」に対応する。また、壁部231が「P壁部」、壁部232が「反P壁部」谷部224が「反P谷部」に対応する。また、ディテントローラ26が壁部231、232に当接したときのエンコーダカウント値を学習することが「係合部材が壁部に当接したときの回転位置を基準位置として学習する」ことに対応する。
(他の実施形態)
上記実施形態では、モータの回転角を検出する回転角センサは、エンコーダである。他の実施形態では、回転角センサは、エンコーダに限らず、レゾルバ等、どのようなものを用いてもよい。上記実施形態では、出力軸センサとしてポテンショメータを例示した。他の実施形態では、出力軸センサは、どのようなものであってもよい。また、出力軸センサを省略してもよい。
上記実施形態では、ディテントプレートには4つの谷部が設けられる。他の実施形態では、谷部の数は4つに限らず、いくつであってもよい。例えば、ディテントプレートの凹部を2つとし、PレンジとnotPレンジとを切り替えるものとしてもよい。この場合、notPレンジ側の壁部が「反P壁部」、notPレンジに対応する谷部が「反P谷部」に対応する。また、シフトレンジ切替機構やパーキングロック機構等は、上記実施形態と異なっていてもよい。
上記実施形態では、モータの回転角を検出する回転角センサは、エンコーダである。他の実施形態では、回転角センサは、エンコーダに限らず、レゾルバ等、どのようなものを用いてもよい。上記実施形態では、出力軸センサとしてポテンショメータを例示した。他の実施形態では、出力軸センサは、どのようなものであってもよい。また、出力軸センサを省略してもよい。
上記実施形態では、シフターは、ホーム位置が横に形成されるT型のものである。他の実施形態では、ホーム位置が他のレンジと直線上にあるI型のもの等、シフターの形状はどのようなものであってもよい。また、上記実施形態では、シフト位置検出センサは、スリットに沿って配置される複数のセンサ素子から構成される。他の実施形態では、シフト位置検出センサは、例えばホーム位置からの距離を検出するもの等、シフトレバー位置を検出可能であれば、どのように構成してもよい。
上記実施形態では、シフトバイワイヤシステムのアクチュエータであるモータ10の駆動を制御するSBWECUと、自動変速機を制御するATCUが別々のECUとして構成される。他の実施形態では、SBWECUとATCUとが1つのECUにて構成されていてもよい。また、上記実施形態では、外部制御部がATCUである。他の実施形態では、外部制御部は、ATCU以外のECU等であってもよい。
上記実施形態では、初期駆動制御は、ドライバ乗車乗車判定前に行う。他の実施形態では、初期駆動制御をドライバ乗車判定後とし、初期駆動制御と基準位置学習制御とを連続的に行うようにしてもよい。これにより、初期学習制御を簡素化することができる。
上記実施形態では、モータ軸と出力軸との間に減速機が設けられる。減速機の詳細について、上記実施形態では言及していないが、例えば、サイクロイド歯車、遊星歯車、モータ軸と略同軸の減速機構から駆動軸へトルクを伝達する平歯歯車を用いたものや、これらを組み合わせて用いたもの等、どのような構成であってもよい。また、他の実施形態では、モータ軸と出力軸との間の減速機を省略してもよいし、減速機以外の機構を設けてもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。