JP2020160009A - 金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法、および、金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法 - Google Patents

金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法、および、金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法 Download PDF

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【課題】化学的に不安定で、電解液中に化学溶解する介在物および/または析出物を、精度よく捕集し、分析するための方法を提供することを目的とする。【解決手段】金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、電解工程後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、洗浄工程後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、捕集した介在物および/または析出物を定量する定量工程と、前記電解工程から前記定量工程までの工程を、異なる電解条件で2回以上実施し、2つ以上の定量値を得る工程と、得られた前記2つ以上の定量値と前記電解条件との関係から、前記金属試料の介在物および/または析出物の分析結果を得る分析工程とを含む金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属材料、とくに鉄鋼材料中に存在する介在物および/または析出物を分析する方法もしくは捕集する方法に関する。特に、電解抽出操作では安定に抽出することの難しい介在物および/または析出物を捕集し、捕集した介在物および/または析出物を分析する方法に関する。
金属材料中に存在する介在物および/または析出物(炭化物、窒化物、硫化物、酸化物等)は、その存在形態、化学組成、粒径や量により、金属材料の品質特性に多大な影響をおよぼす。そのため、介在物および/または析出物の量を把握することは製品の出荷管理や品質特性評価または製造プロセスの改善を行う上できわめて重要である。
介在物および/または析出物の定量を行うためには、金属材料中の母相組織(マトリックス)から介在物および/または析出物を正確に抽出分離する必要がある。そのため、介在物および/または析出物の抽出分離方法には、多様な化学組成の析出物や介在物を、分解や溶解させることなく金属材料中に存在したままの状態を保って抽出分離することが求められている。
金属材料中、とりわけ鉄鋼材料中の介在物および/または析出物を抽出する標準的な方法として、非水溶媒系電解液中で電解を行う方法が一般的である。非水溶媒系電解液として、塩化リチウムやテトラメチルアンモニウムクロライドなどの支持電解質を含むアルコールを溶媒に、アセチルアセトン、サリチル酸メチル、無水マレイン酸などの錯生成試薬を配合した電解液が用いられる。その代表的な電解液としては、例えば10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール(以下、AA系電解液)、4%サリチル酸メチル−1%サリチル酸−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール(以下、MS系電解液)、10%無水マレイン酸−2%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール(以下、MA系電解液)などが非特許文献1に記載されており、汎用的に広く用いられている。
鉄と鋼、1990、76、483
しかしながら、上記の汎用的に利用されている電解抽出法が確立したのは半世紀程度前のことであるのに対し、最近の鉄鋼製造プロセスは高度化が進み、それに伴って析出物等は微細化、微量化、多様化しており、鋼種によっては化学的に不安定で、上記の電解液へ溶解するものが顕在化してきている。化学的に不安定な介在物および/または析出物は、抽出操作中に電解液中へ化学溶解してしまうために捕集できず、正確な分析値が得られないという問題がある。
本発明は、以上の様な問題を解決するためになされたものであり、化学的に不安定で、電解液中に化学溶解する介在物および/または析出物を、精度よく捕集し、分析するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(I)化学的に不安定で電解液中に溶解する介在物および/または析出物を定量的に分析するために、電解後の介在物および/または析出物が付着した金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分離・回収する際、分散溶液に浸漬する前に金属試料表面に付着した電解液を洗浄してから捕集を行う。
(II)電解液を構成する錯生成試薬の濃度、あるいは電解時間を段階的に変化させた分析を複数水準行い、電解条件(錯生成試薬濃度や電解時間等)と、各水準で得た介在物および/または析出物の定量値との関係線を求め、電解条件(錯生成試薬濃度や電解時間等)をゼロに外挿して求められる定量値を、溶解の影響のない介在物および/または析出物の定量値とみなす。
本発明は、以上の知見にさらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、
電解工程後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、
洗浄工程後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、
前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、
捕集した介在物および/または析出物を定量する定量工程と、
前記電解工程から前記定量工程までの工程を、異なる電解条件で2回以上実施し、2つ以上の定量値を得る工程と、
得られた前記2つ以上の定量値と前記電解条件との関係から、前記金属試料の介在物および/または析出物の分析結果を得る分析工程と
を含む金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
[2]前記分析工程において、前記2つ以上の定量値と前記電解条件から得られる関係は線形関数であり、電解量が0の時の外挿値を分析結果とすることを特徴とする[1]に記載の金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
[3]前記電解条件は、非水溶媒系電解液に含まれる錯生成試薬の濃度、金属試料の表面積、電解時間、電流密度のいずれか1つである[1]または[2]に記載の金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
[4]金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、
電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、
洗浄後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、
前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、
を含む金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。
本発明によれば、化学的に不安定で、電解液中に化学溶解する介在物および/または析出物を、精度よく定量することができる。したがって、機械的性質と介在物および/または析出物の関係を把握することで、金属材料の機械的性質の評価や管理、より性能を向上させた新規材料開発スピードのアップが期待できる。
図1は、実施例における電解時間と析出P量との関係を示す線形関数である。
鉄鋼材料中の介在物および/または析出物について、電解操作による抽出分離分析法を例にとり、本発明に想到した経緯および本発明を実施するための手順について、以下に詳述する。
本発明者らは、介在物および/または析出物の値が、熱力学平衡計算によると約200ppmであるのに対して、電解法では15ppm程度となる、化学的に不安定なリン化物を含む鉄鋼サンプルを用いて、種々の条件で繰り返し電解抽出することにより、化学溶解の要因とその対策について検討した。
その結果、介在物および/または析出物の溶解は、電解液、とりわけその構成要素である錯生成試薬によって生じていることが推定された。すなわち、介在物および/または析出物は、電解液と接触している間、化学溶解していると考えられる。介在物および/または析出物が電解液に接触する主たる工程は、(1)電解抽出中(電解液中に浸漬中のため)と、(2)電解残渣の分離・捕集工程(金属試料表面に付着した電解液が分散液へ混入するため)である。ここで、電解残渣とは、電解によって金属試料から抽出された介在物および/または析出物のことをいう。
上記工程(1)、(2)における析出物等の化学溶解の影響を把握するため、以下の2条件の場合で電解液(10%AA系電解液)中に溶解したPをそれぞれICP発光分光分析法により定量し、化学溶解した鋼中の析出P量として比較した。
(1−1)電解抽出後の介在物および/または析出物を、金属試料表面に付着した状態で、電解抽出に用いた電解液とは別の清浄な電解液中に電解せず5分浸漬する。
(2−1)電解抽出後の介在物および/または析出物を、金属試料表面に付着した状態で、電解抽出に用いた電解液とは別の清浄な電解液中に浸漬し、超音波を印加して介在物および/または析出物を金属試料から分離し、電解はせず5分浸漬する。
電解液に溶解した析出P量は、(1−1)では112ppm、(2−1)では188ppmであった。以上の結果から、(i)介在物および/または析出物は、電解液に化学溶解すること(上記(1)の検証結果)、(ii)介在物および/または析出物は金属試料表面に付着したままよりも、分離した状態であるほうがより電解液中に化学溶解しやすいこと(上記(2)の検証結果)が明らかとなった。金属試料表面に付着している状態のほうが化学溶解しにくい理由は、試料母相が犠牲防食的に優先して溶解するために、析出物等の溶解を軽減しているものと考えられる。
次に、より溶解量の多い、(2)電解残渣の分離・捕集工程における介在物および/または析出物の溶解を抑えるための検討を行った。(2)の工程で、介在物および/または析出物の化学溶解が生じるのは、分散液中への電解液の混入が原因と考えられたため、電解後、介在物および/または析出物が表面に付着した金属試料を分散液に移す前に、清浄なメタノール中に浸すことにより、すすぎ操作(洗浄操作)を施してから、分散液中で金属試料表面の介在物および/または析出物の分離を行った。すすぎ操作を行った後の分散液中の残渣をフィルターに捕集して分析を行ったところ、析出P量として193ppmが得られた。なお、分散液中のP量を分析したが、結果は5ppm以下であった。つまり、分散液中への電解液の混入を回避することで、介在物および/または析出物の溶解は大幅に軽減され、熱力学平衡計算による析出量に近い結果が得られた。
一方で、上記のすすぎ操作を施しても、(1)の工程である電解抽出中は、常に電解液中に浸漬されているため、電解作業中に生じる溶解は避けることは不可能である。つまり電解抽出法によって得られる分析値は、電解作業中に化学溶解した析出物の量だけ低く求めていることになる。ただし、すすぎ操作を加えたうえで、電解時間の短縮や、電解液中の錯生成試薬の濃度を下げることにより、介在物および/または析出物が化学溶解する量を減らすことは可能である。具体的には、例えば特定の電解量で電解を行う場合、金属試料の表面積を、通常実施する試料面積に対して大きくすることにより電解時間を短縮することができる。実際に、電解量が一定の条件において、金属試料の表面積を大きくした結果、通常の試料面積の場合における介在物および/または析出物の定量値に比べて高い値となった。電解時間で整理すると、電解時間が短いほど、介在物および/または析出物の定量値は高い値を示した。これは、電解時間を短縮したことで、電解中に溶解する介在物および/または析出物の量が減ったためと捉えることができる。
以上のことから、電解時間がゼロにおける介在物および/または析出物の定量値を求めることができれば、この値が化学溶解による影響を受けない真の介在物および/または析出物の定量値であると考えられる。
すなわち、本発明者らは、電解条件(電解時間あるいは電解液中の錯生成試薬濃度)を横軸、析出物定量値を縦軸としてプロットし、電解条件(電解時間あるいは電解液中の錯生成試薬濃度)をゼロ(切片)に外挿したときの介在物および/または析出物の定量値が真の金属材料中の析出物定量値であるとの考えに想到した。そこで、上記の鉄鋼試料について、電解条件として試料面積を変えて電解操作を2回以上行い、各電解条件における析出物の定量値(析出P量)を求めてプロットし、最小二乗法により電解時間がゼロにあたる析出物の定量値を求めたところ、209ppmであった。これは熱力学平衡計算の結果とほぼ一致する結果である。
本発明者らは以上の知見に基づき、本発明に到った。次に、本発明について具体的に説明する。
本発明は、金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、洗浄後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、捕集した介在物および/または析出物を定量する定量工程と、電解工程から定量工程までの工程を、異なる電解条件で2回以上実施し、2つ以上の定量値を得る工程と、得られた2つ以上の定量値と電解工程における電解条件との関係から、金属試料の介在物および/または析出物を求める分析工程とを含む。
(電解工程)
まず、金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する。なお、金属試料としては鉄鋼材料が好ましく、鉄鋼材料の場合、電解法により、マトリックスである鉄のみを溶解し、介在物および/または析出物は溶解せずにマトリックスから分離する。電解液には、非水溶媒系電解液を用いる。非水溶媒系電解液は、鉄イオンと錯体を生成する錯生成試薬と支持電解質、および非水溶媒からなるものであり、含有する錯生成試薬によってAA(アセチルアセトン)系、MS(サリチル酸)系、MA(マレイン酸)系など呼称される種々の電解液が利用されている。本発明を実施するにあたってはいずれの電解液でも制約は無い。試薬により若干異なるが、錯生成試薬濃度はおおむね0.5〜20%程度で使用するのが一般的である。
具体的には、金属試料(被検試料)を切断し研削し、洗浄を行った後、試料重量を測定する。電解条件として被検試料の表面積を変化させる場合は、10〜50cm程度の範囲で被検試料サイズを適宜調整することができる。次いで、この被検試料を上記のいずれかの電解液中に浸漬し、陽極として定電位電解、または定電流電解を行う。電解量は特に制限はないが、通常、約0.1〜1.0g程度溶解させる。ここで、電解条件として被検試料の表面積および電流密度を変化させる場合は、電解量が上記の範囲内でほぼ一定となるように電解する。この理由は、分析精度の確保と電解時間を変化させる必要性があるためである。
(洗浄工程)
所定量の金属試料を電解させた後、金属試料を電解液から引き上げ、電解後の金属試料に付着している電解液を除去する。上述したように、介在物および/または析出物の化学溶解が生じるのは、分散液中への電解液の混入が原因と考えられる。このため、電解後介在物および/または析出物が付着した状態の金属試料を分散液に移す前に、電解後の金属試料に対してすすぎ操作(洗浄操作)を施すことにより、電解後の金属試料に付着している電解液を除去する。すすぎ操作としては、例えば、電解後の金属試料が十分浸る量の清浄なメタノール中に浸せばよい。
(分離工程)
次に、洗浄工程後の金属試料を十分浸る程度の量のメタノール中(分散溶液)に浸漬させる。その後、直ちに金属試料表面が鏡面になるまで超音波を印加し、金属試料表面から介在物および/または析出物を剥離させ、分散溶液中に分離させる。
(捕集工程)
分離した介在物および/または析出物は、サブミクロン程度の孔径を有するメンブレンフィルタを用い、ろ過操作を用いて捕集する。本発明では、電解後の金属試料に対して、洗浄工程を行い、次いで分離工程および捕集工程を行うことにより、精度よく介在物および/または析出物を捕集することができる。
(定量工程)
捕集した介在物および/または析出物を、酸分解もしくはアルカリ溶融分解などの方法により分解、溶液化した後、元素分析を行なう。分析手法は、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、原子吸光法などの手法を用いることができる。これらの分析手法により求めた溶液中の目的元素の濃度から、残渣として捕集した目的元素の量を求め、電解量から金属試料中に存在する介在物/および析出物としての量を定量する。
(2つ以上の定量値を得る工程)
本発明では、上記の電解工程、洗浄工程、分離工程、捕集工程、定量工程を、異なる電解条件で2回以上繰り返し、2つ以上の定量値を得る。電解工程〜捕集工程までは、一連の工程として連続して行うことが好ましい。定量工程では、複数試料をまとめて行ってもよい。異なる電解条件としては、非水溶媒系電解液に含まれる錯生成試薬の濃度、金属試料の表面積、電解時間、電流密度のいずれか1つであることが好ましい。
(分析工程)
本発明では、得られた2つ以上の定量値と電解条件との関係を求め、分析結果を得る。ここで定量値と電解条件との関係を求めるにあたり、電解条件として試料表面積、電流密度を変化させる場合は、電解時間を横軸にとり定量値をプロットする。電解条件として錯生成試薬の濃度を変化させる場合は、錯生成試薬の濃度を横軸にとり定量値をプロットすればよい。
以上のようにして求めた電解条件(電解時間または錯生成試薬濃度)−定量値プロットに対して、最小二乗法等を用いて線形関数を作成することができる。この線形関数を用いて、電解条件をゼロ(切片)に外挿したときの介在物および/または析出物の外挿値を、真の金属試料中の介在物および/または析出物の定量値とすることが好ましい。
以下に、実施例として、鉄鋼材料中の析出物の含有率を分析する例を具体的に示すが、本発明の条件を何ら制限するものではない。
質量%で、C:0.002%、Si:0.20%、Mn:0.1%、P:0.06%、S:0.002%である鉄鋼試料を供試材とした。当該鉄鋼試料は、析出物としてリン化物(リン化鉄)を多量に析出するが、化学的に不安定であり、析出物が電解液中に溶解する。そこで、本発明の分析方法を用いて以下の手順で析出物量を求めた。なお、熱力学データベースとしてTCFE7を用いたThermo−calcによる熱力学平衡計算結果では、析出P量として450ppmであった。
20mm×50mm×0.1mmの短冊状に切り出し、約300mlの10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン−1質量%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中にて、被検試料を陽極、白金を陰極として0.5gを定電流電解し、鋼中析出物量を求めた。その際、電流密度を10mA/cm、20mA/cm、30mA/cmおよび40mA/cmの4条件で電解した。このとき電解時間はそれぞれ、144分、72分、48分および36分であった。
なお、所定量を電解した後、電解液から引き揚げた被検試料は、付着した電解液を除去するために、直ちに清浄なメタノール溶液に浸し、すぐに引き上げるすすぎ操作を行った後、析出物分散用のメタノール液中に入れ、超音波を印加して析出物を被検試料から分離し、メタノール液中に分散させた。次いで被検試料を取り出したのち、分散液中に分散させた析出物を、公称0.2μm孔径のPTFE製メンブレンフィルタに濾過捕集した。
捕集した析出物は、硝酸と塩酸の混合溶液で分解し(なお、分解後PTFEフィルタは取り出した。)、ICP発光分光分析法によりリンの定量を行った。得られた溶液濃度と、電解量から、各電流密度条件における当該鉄鋼試料中の析出物量(析出P量)を求めた。その結果を図1に示す。
電流密度が上がるにつれて(なお、図1では電解時間が短くなることに相当する。)、析出P量(定量値)は上昇した。これは、電解液に化学溶解しやすいリン化物(リン化鉄)が、電流密度の上昇に伴って電解時間が減少することで溶解量が減り、見かけの析出物量が増加していることを示していると考えられる。なお、これは一次直線的に上昇していることから、電解時間がゼロ分相当の析出P量が、化学溶解の影響を受けない真の析出リン量となる事を示している。
図1の結果から、化学溶解が無い場合に得られる真の析出P量は、電解時間をゼロに外挿した(切片)439ppmであると見積もることができた。
以上より、本発明によれば、化学的に不安定で、電解液に溶解してしまうような析出物の定量値を、精度よく求めることが可能である。

Claims (4)

  1. 金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、
    電解工程後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、
    洗浄工程後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、
    前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、
    捕集した介在物および/または析出物を定量する定量工程と、
    前記電解工程から前記定量工程までの工程を、異なる電解条件で2回以上実施し、2つ以上の定量値を得る工程と、
    得られた前記2つ以上の定量値と前記電解条件との関係から、前記金属試料の介在物および/または析出物の分析結果を得る分析工程と
    を含む金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
  2. 前記分析工程において、前記2つ以上の定量値と前記電解条件から得られる関係は線形関数であり、電解量が0の時の外挿値を分析結果とすることを特徴とする請求項1に記載の金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
  3. 前記電解条件は、非水溶媒系電解液に含まれる錯生成試薬の濃度、金属試料の表面積、電解時間、電流密度のいずれか1つである請求項1または2に記載の金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法。
  4. 金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、
    電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、
    洗浄後の金属試料を分散溶液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、
    前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、
    を含む金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。
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