JP2009019956A - 金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法 - Google Patents

金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属試料中に存在する析出物等(特に、大きさ1μm以下)を損失並びに凝集させること無く抽出し、析出物等の大きさ別の、さらには、形態ごとの分析を精度良く行う分析方法を提供する。
【解決手段】まず、金属試料を電解する。次いで、前記電解後の金属試料の残部を、前記電解に用いた電解液とは異なりかつ分散性を有する溶液に浸漬し、前記金属試料中の析出物及び/又は介在物を抽出する。さらに、前記溶液と多孔質膜を隔壁として有する泳動槽とを用いた電気泳動法により、前記多孔質膜の孔径に応じて析出物及び/又は介在物を大きさ別に分別し、前記大きさ毎に分別された析出物及び/又は介在物を分析する。例えば、上記において、多孔質膜としてイオン交換膜を用いることで、さらに、形態別に分離して分析することも可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属試料中の析出物及び/又は介在物の、例えば、組成や粒径分布等を、正確に分析するための分析方法に関するものである。
金属試料中に存在する析出物及び/又は介在物(以下、析出物等と称する場合がある)は、その形態、大きさ、ならびに分布によっては材料の諸特性、例えば、疲労的性質、熱間及び冷間加工性、深絞り性、被削性、あるいは電磁気的性質などに著しい影響を及ぼす。鉄鋼を例に説明すると、特に近年は、微細な析出物等を利用して鉄鋼製品の特性を向上させる技術が著しく発展し、それに伴って製造工程における析出物等の制御が厳格化してきた。
析出物等の制御が重要視される鉄鋼製品の代表例としては、析出強化型高張力鋼があげられる。この析出強化型高張力鋼板に含有される析出物等としては、様々な大きさや組成のものがあるが、鋼板の特性を向上させるもの、反対に特性を低下させるもの、あるいは特性に寄与しないものに分類することができる。そのため、優れた鋼板を製造するためには、有益な析出物等を安定的に生成させ、有害あるいは無関係な析出物等の生成を抑制することが重要となる。
一般に、鋼板の特性に対して析出物等がもたらす利害は析出物等の大きさと密接に関係し、微細な析出物等ほど鋼板の高強度化に寄与する。最近では、ナノ・サブナノサイズの析出物等で高強度化された鋼板も開発されている。そのため、サブミクロンからナノサイズまでの領域で、大きさ毎の析出物等の量やその組成を把握することが、鋼板の成分設計や製造条件の最適化において重要といえる。
これに対して、鉄鋼材料中の析出物等を抽出して定量する技術は、古くから析出物等を総量評価することを基本として発展し開示されてきた。
非特許文献1には、酸分解法、ハロゲン法、電解法などを挙げ、特に析出物等を対象とする場合には電解法が優れていることが示されている。しかし、非特許文献1に示されている電解法は、液体中の析出物等を凝集させてろ過回収すること、つまり析出物等の総量を分析することを主眼としているため、析出物等の大きさについての結果を得ることはできない。さらに、非特許文献1の方法では、非常に小さな析出物等を含有する材料においては、凝集効果が十分に作用せず一部の析出物等がフィルタの細孔から漏れ落ちるために定量性にも問題がある。
特許文献1には、鉄鋼材料中の非金属介在物を化学的に抽出して、大きさ別に分析する方法として、電解液槽中の鉄鋼試料をポリテトラフルオロエチレン製の網に収納して特定の大きさ以上の析出物等を分離回収する方法が開示されている。
また、特許文献2には、液体中に抽出した析出物等に超音波を付与しながらろ過することで、析出物等の凝集を防止して分離する技術が開示されている。
基本的に粒径が小さくなるほど液体中で析出物等は凝集する傾向があるため、特許文献1に記載された方法では、析出物等の粒径によっては液中で凝集が起こり、フィルタの孔径より小さい析出物等も捕集されることになる。そのため、大きさ別の分析結果が不正確なものとなることは明らかである。そして、特許文献1が対象としている大きさ50μmから1000μmの介在物の場合は特に問題とならないが、本発明において最も注目したいサブミクロンからナノサイズの領域(特に、鋼の強度特性の制御の点からは大きさ1μm以下、より望ましくは大きさ200nm以下)での析出物等の場合は、液体中で容易に凝集してしまう場合がほとんどであり実用に適さない。
特許文献2においても、特許文献1と同様に、凝集乖離が容易な1μm以上の粗大析出物等を対象としており、一般に篩い分けの下限が0.5μmと示されている(非特許文献2参照)ように、サブミクロンからナノサイズの領域の析出物等に適用するのは困難である。
特許文献3には、孔径1μm以下の有機質フィルタで超音波振動によるろ過によって1μm以下の析出物等を分離する技術が開示されている。しかし、特許文献1や2と同様、超音波による1μm以下の微細析出物等の凝集乖離は不可能である。
非特許文献3には、銅合金中の析出物等を抽出して、孔径の異なるフィルタによって2回ろ過して、析出物等を大きさ別に分ける技術が開示されている。しかし、前記凝集に関する問題が解決されておらず、フィルタの孔径より小さい析出物等が捕集されて、大きさ別分析結果に誤差を与えている。
特開昭59-141035号公報 特開昭56-10083号公報 特開昭58-119383号公報 日本鉄鋼協会 「鉄鋼便覧第四版(CD-ROM)」第四巻 2編 3.5 アグネ 「最新の鉄鋼状態分析」58頁 1979 日本金属学会 「まてりあ」第45巻 第1号 52頁 2006
以上のように、従来技術においては、凝集等の問題があり、サブミクロンからナノサイズの領域(特に、大きさ1μm以下、より望ましくは大きさ200nm以下)での析出物等について、大きさ別の分析を実用的にかつ正確に行う技術はない。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、金属試料中に存在する析出物等(特に、大きさ1μm以下)を損失並びに凝集させること無く抽出し、析出物等の大きさ別の、さらには、形態ごとの分析を精度良く行う分析方法を提供する。
図6に示した非特許文献1に開示される電解抽出法は、鉄マトリクスを溶解することで、鋼中析出物等を安定的に抽出することができる方法であり、析出物等を抽出分析する標準的な方法(以下、標準法)とみなされている。そして、前述した特許文献1〜3と非特許文献2〜3は、この標準法に基づいている。しかし、標準法をはじめとする従来の方法では、上述したようにさまざまな問題がある。そこで、本発明者らは、従来の標準法にとらわれない方法を発明すべく、鋭意研究を行った。以下に、得られた知見を示す。
まず、上述の従来の方法の問題点を整理すると、析出物等の分散媒として析出物等の分散性の低いメタノールを用いるという根本的な問題点があげられる。そして、これにより、特に微細な析出物等の大きさ別分析を妨げていたものと推測される。つまり、特許文献1〜3と非特許文献1〜3は、析出物等に対し分散性の低いメタノールを分散媒としているため、超音波などの物理的作用を与えたとしても、大きさ1μm以下の析出物等は凝集してしまい、一度凝集してしまうとその凝集体を完全に乖離させることは不可能になると考えられる。
そこで、凝集の問題を解決するために、析出物等の分散に着目した。そうしたところ、水溶液系分散媒(以下、分散性溶液と称する場合もある)による化学的作用によって、大きさ1μm以下の析出物等も含めて析出物等に対して分散性を付与できることを見出した。
しかしながら、ここで、電解液の主成分は分散性の低いメタノールであるので、析出物等に分散性を付与するためには、析出物等を分散性溶液へ移す必要がある。そして、その為には、析出物等と電解液とを分離させる固液分離操作が必要となる。そこで、標準法で用いられている、電解液中に分散した析出物等と分散媒中に抽出した析出物等とを回収するために固液分離手段として行われている「ろ過」操作を行ったところ、ろ過によって析出物等の一部(特に、大きさ200nm以下のナノ・サブナノメートルの大きさの微細なもの)が失われる可能性があることがわかった。
この結果を踏まえて、従来から行われている上記標準法以外の別の固液分離手段を得るべく、さらに検討した。その結果、電解中及び/又は電解後は、ほぼ全ての析出物等が鉄鋼試料に付着したままの状態であることを知見した。これは従来にない全く新しい知見であり、この知見を基とすることで、電解中及び/又は電解後に鉄鋼試料の残部を電解液から取り出せば、容易に固液分離を実現できることになる。そして、凝集の問題解決のための上記知見を組み合わせることで、電解液とは全く異なる分散性溶液中に、析出物等を抽出することが可能となる。上記この付着現象は、詳細については不明であるが、電解時及び/又は電解後における鉄鋼試料と析出物等間の電気的作用によるものと推測している。
以上のような知見の結果、本発明では、電解中又は電解後に金属試料の残部を電解液から取り出し、その後、取り出した金属試料を分散性溶液に直接浸漬して、付着している析出物等を水溶液系分散媒中に剥離することで、高度に分散した析出物等を得ることが可能となった。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]金属試料を電解する電解ステップと、前記電解後の金属試料の残部を、前記電解に用いた電解液とは異なりかつ分散性を有する溶液に浸漬し、前記金属試料中の析出物及び/又は介在物を抽出する浸漬ステップと、前記溶液と多孔質膜を隔壁として有する泳動槽とを用いた電気泳動法により、前記溶液中に抽出した析出物及び/又は介在物を、前記多孔質膜の孔径に応じて大きさ別に分別し、前記大きさ毎に分別された析出物及び/又は介在物のうちの少なくとも1以上を分析する分析ステップとを有することを特徴とする金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法。
[2]前記[1]において、前記多孔質膜としてイオン交換膜を用いることを特徴とする金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法。
なお、本発明において、介在物等のサイズを表す「大きさ」とは、析出物等の断面が、略円状の場合は長径と短径のうちの短径を、矩形の場合は長辺と短辺のうちの短辺を指し、大きさ1μm以下の析出物等とは、この短径又は短辺が1μm以下の析出物等である。また、析出物及び/又は介在物を、まとめて析出物等と称する場合がある。
本発明によれば、金属試料中に存在する析出物等(特に、大きさ1μm以下、さらに望ましくは大きさ200nm以下)を損失並びに凝集させること無く抽出し、析出物等の大きさ別の分析を、さらには、形態別の分析を精度良く行うことができる。
そして、本発明の分析方法では、金属試料中の析出物等(特に、大きさ1μm以下、さらに望ましくは大きさ200nm以下)を、分散性を有する溶液中に抽出するので、抽出した溶液中での析出物等の凝集を防ぎ、析出物等を金属試料中そのままの状態で抽出することができる。
また、電解液とは異なる抽出用の分散性溶液を任意に選択することができるので、析出物等に適した分散性溶液を用いることができる。
これらにより、析出物等の大きさ別の分析を精度良く行う事が可能となり、従来不可能であった大きさ別の定量や正確な粒径分布が得られるなど、産業上有益な発明となりうる。
以下、本発明の金属試料中の析出物等分析方法について、詳細に説明する。
本発明の金属試料中の析出物等分析方法は、金属試料を電解する電解ステップと、前記電解後の金属試料の残部を、前記電解に用いた電解液とは異なりかつ分散性を有する溶液に浸漬し、前記金属試料中の析出物及び/又は介在物を抽出する浸漬ステップと、前記溶液と多孔質膜を隔壁として有する泳動槽とを用いた電気泳動法により、前記溶液中に抽出した析出物及び/又は介在物を、前記多孔質膜の孔径に応じて大きさ別に分別し、前記大きさ毎に分別された析出物及び/又は介在物のうちの少なくとも1以上を分析する分析ステップとを有する。
中でも、本発明は、電気泳動法を用いて、析出物等を大きさ別に分けた後に、それぞれの析出物等を分析する。すなわち、金属試料中の析出物等を分散性溶液中に抽出し、分散させ、この分散性溶液に含まれたまま隔膜として多孔質膜あるいはイオン交換膜を有する容器中で電気泳動させることによって、膜の孔径、あるいはイオン交換特性に応じて介在物等を大きさ別に分け、その後、各隔壁間に存在する析出物等を分析することを特徴とする。これらの特徴を有することで鋼中の析出物等を粒径別あるいは形態別に定量することを可能にする。
上記操作手順を、本発明の一実施形態として、分散性溶液を最適化するまでと、分散性溶液を用いて鉄鋼試料中の析出物等を大きさ別に分けて定量するまでに分けて説明する。分散性溶液を最適化する場合の操作フローを図1に、鉄鋼試料中の析出物等を大きさ別に分けて定量する場合の操作フローを図2に、それぞれ示す。
まず、図1において、分散性溶液条件を最適化する操作手順として(1)から(6)までが示される。図1によれば、
(1)初めに、鋼材を適当な大きさに加工して、電解用試料とする。
(2)一方、電解液とは異なりかつ分散性を有する分散性溶液を、析出物等の抽出用として当該電解液とは別に準備する。ここで、電解用試料の表面に付着した析出物等を分散性溶液中に分散させるには、電解液の半分以下の液量で充分である。分散性溶液の分散剤に付いては、後述する。
(3)試料を所定量だけ電解する。なお、所定量とは、適宜設定されるものであり、その一例として、図1においては、ゼータ電位装置(又は(9)にて後述する元素分析)に供する場合に測定可能な程度とする。
図3は、電解法にて用いられる電解装置の一例である。電解装置7は、電解用試料の固定用治具2、電極3、電解液6、電解液6を入れる為のビーカー4、及び電流を供給する定電流電解装置5を備えている。固定用治具2は定電流電解装置の陽極に、電極3は直流定電流源の陰極に接続されている。電解用試料1は、固定用治具2に接続されて電解液6中に保持される。電極3は、電解液6に浸漬されると共に、電解用試料の表面(主として電解液6に浸漬している部分)を覆うように配置される。固定用治具2には、永久磁石を用いるのが、最も簡便である。但し、そのままでは電解液6に接触して溶解してしまうので、電解液6と接触しやすい箇所、図3の場合は電解用試料1との間にある2a、に白金板を使用しても良い。電極3も同様に、電解液6による溶解を防ぐために、白金板を用いる。電解用試料1の電解は、定電流電解装置5より電極3へ電荷を供給することで行う。鋼の電解量はこの電荷量に比例するので、電流量を決めれば、電解量は時間で決定できる。
(4)電解(溶解)されずに残った電解用試料片を電解装置から取り外し、上記(2)で準備した分散性溶液中に浸漬して、析出物等を分散性溶液中に抽出する。ここで、分散性溶液中に浸漬したまま超音波を照射することが好ましい。超音波を照射することで試料表面に付着している析出物等を剥離して、より効率よく分散性溶液中に抽出することができる。次に、表面から析出物等を剥離した試料を分散性溶液から取り出す。なお、取り出しの際は、分散性溶液と同一の溶液で試料を洗浄することが好ましい。
(5)上記(4)で作製した、析出物等を含んだ分散性溶液のゼータ電位を計測する。
(6)上記(5)で計測したゼータ電位の絶対値が30mVに満たない場合には、分散剤の種類及び/又は濃度をかえて上記(2)から(6)までを繰り返す。一方、ゼータ電位が30mV以上に達した場合には、その時の分散剤と濃度を、対象析出物等に対する分散性溶液の最適条件と決定し、操作を終了する。なお、図1においては、ゼータ電位を測定し、ゼータ電位が30mV以上に達した場合に、その時の分散剤と濃度を、対象析出物等に対する分散性溶液の最適条件と決定したが、本発明においては、析出物及び/又は介在物が分散性溶液中に回収された際にほとんど凝集することなく十分に分散していればよく、分散性溶液を選択・決定するための手段として、ゼータ電位測定に限定されるものではない。なお、詳細は後述する。
次いで、図2において、分散性溶液を用いて鉄鋼試料中の析出物等を大きさ別に分けて定量する操作手順として(7)から(9)までが示される。図2によれば、
(7)新たに図1の上記(1)から(4)までと同様の操作を行い、図1の(1)から(6)で決定し最適化された分散性溶液に、実際に分析対象とする析出物等を抽出する。
(8)析出物等を含んだ分散性溶液を、多孔質膜を隔壁として有し泳動液が充填された泳動槽内に導入し電気泳動を行い、多孔質膜の孔径に応じて析出物等を大きさ別に分別する。大きさが1μm以下の微細な析出物等の表層には電気二重層に起因するゼータ電位が存在するため、電界の中に置かれるとその表面電荷によって移動する。この電気泳動現象を利用して、本発明では、多孔質膜を有した泳動槽内で、析出物等を種類ごとに一定方向に移動させることにより、多孔質膜の孔径に応じた分別を行う。
多孔質膜は特に限定しない。その材質としては、セラミック、高分子、金属などが挙げられる。中でも、多孔質膜としてイオン交換膜を用いることが好ましい。イオン交換膜などの機能性膜を用いることによりさらに表面電荷やイオン形態による詳細な分別が可能になり、析出物等を大きさ毎に区分するのに加えて、形態別に分離して分析することが可能となる。
また、泳動液(即ち、電気泳動用の溶液)の種類を変えることにより、析出物等の表層の電荷の正負及び大きさを変化させることが可能であることから、これらの選択により析出物等を形態(化合物組成)別に分別することも可能である。
なお、上記(7)の分散性溶液に実際に分析対象とする析出物等を抽出する操作は、(8)の操作が行われる電気泳動槽内で行うこともできる。例えば、分散性溶液を、電気泳動槽内に充填し、一方の電極があり泳動の起点となる室内に電解後の金属試料残部を浸漬して、析出物等を抽出し分散させる。次いで、電気泳動槽内に電流を流すことで、分散性溶液内で析出物等を電気泳動させる。
泳動液としては、通常用いられている種類の物で良く、例えば、誘導率の大きい水に、NaClやCH3COONa等の電解質、対象析出物等に合わせて適切なpHに調整するための酸やアルカリ(例えば、HClやNaOH等)、および表面電位を調整するための添加剤(分散剤)等が添加された物が挙げられる。また、水中で不安定な析出物等については、水の代わりに脱水アルコール等を用いても良い。さらに、分散性溶液と同組成の溶液を、泳動液としても良い。
本発明においては、以上のように、泳動槽内の泳動液中に析出物等を含んだ分散性溶液を混ぜても良いし、予め泳動槽内に分散性溶液を充填しておき、泳動槽内で析出物等の抽出を行なって、分散性溶液をそのまま泳動液として使用しても良い。電気泳動中における析出物等の凝集するのを防ぐ点からは、泳動液を分散性溶液と同組成とする、または分散性溶液をそのまま泳動液として使用するのが望ましい。異なる組成の泳動液との混合により分散性溶液中の分散剤の濃度が薄まると、析出物等が凝集しやすくなる傾向があるためである。
(9)以上の操作により得られ、大きさ毎に分別された析出物等を分析する。
一定時間、電気泳動を行った後、多孔質膜により隔てられた各泳動室内の溶液を取り出して、溶液中の析出物等を定量する。この時、試料溶液の調製方法には、溶液から析出物等をろ別後、分解して溶液化する方法、溶液に直接析出物等分解用試薬(酸等)を添加して溶液化する方法等が挙げられる。そして、これらの方法を目的に応じて選択することにより膜の孔径に応じた粒径別、形態別の析出物等の定量が可能になる。
図1および図2に示す以上の方法により、析出物等の大きさ別の組成に関する分析結果が得られる。そして、この得られた分析結果をもとに鋼材の諸性質に関する知見が得られ、不良品発生の原因解明や新材料の開発等に有益な情報が得られる。
本発明は、様々な種類の鋼中析出物等の分析に適用することができ、特に、大きさ1μm以下の析出物等を多く含んだ鉄鋼材料に対して好適であり、大きさ200nm以下の析出物等を多く含んだ鉄鋼材料に対してさらに好適である。
なお、ここで、上記(2)における分散性溶液について、補足する。大きさ1μm以下(特に200nm以下)のオーダーの微細な析出物等については、上述したように、現在、公知技術として、溶液中に凝集させずに抽出する明確な方法は無い。そのため、分散剤を水溶液化した物を順番に試すことで分散性溶液についての知見を得ようと試みた。その結果、分散剤の種類と濃度については、析出物等の組成や粒径、液中の析出物等の密度等との間に明確な相関は得られなかった。例えば、水溶液系の分散剤としては、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、正リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどが好適であるが、適切な濃度を超えた添加は析出物等の分散に逆効果であるという知見が得られた。
以上より、本発明において、分散性溶液は、析出物及び/又は介在物が当該溶液中にあるときに、凝集することなく分散していればよく、特に限定しない。そして、分散性溶液を決定するにあたっては、析出物等の性状や密度、あるいはその後の分析手法に応じて分散性溶液の種類や濃度を適宜最適化することとする。
図1および図2に示す(1)から(9)の手順に従って、電気泳動により析出物等の分析を行った。なお各操作の具体的な条件は、以下に示す通りであるが、本発明は下記の具体的な条件に制限されるものではない。
金属試料としてチタン添加鋼を使用し、その化学成分は、C:0.05mass%、Si:0.05mass%、Mn:1.3mass%、P:0.01mass%、S:0.002mass%、Ti:0.04mass%、Nb:0.01mass%、N:0.0035mass%である。
電解操作は、図3に示す装置構成にて行い、電解液としては約300mlの10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液を使用した。
電解後、電解液から取り出した金属試料の残部を、分散性溶液として0.05%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を充填した図4に示す電気泳動槽のC室中に浸漬して、超音波浸透により試料表層から析出物等を剥離、分散させた。
図4において、電気泳動槽中の8a、8bはそれぞれ異なる孔径を持つ高分子膜であり、各A室、B室、C室が隔てられるようになっている。なお、膜の孔径は8a<8b(8a:0.2μm、8b:1μmのポリカーボネート製膜をそれぞれ使用)となるように配置されている。A、C両室内に配置した電極に印加電圧を直流100V以下として図のように電流を流すとC槽内の負のゼータ電位を有する析出物等はC→B→Aのように泳動し、それぞれの粒径が通過できない膜の前の室内に留まる。
10時間時間泳動後、各室の溶液を取り出した。そして各溶液に、硝酸、塩酸を添加して析出物等を分解後、ICP発光分析あるいはICP質量分析法で、Ti、Nb、Mnを定量し、これらの定量した分析値と電解量から鋼中の析出物等の含有量に換算した。得られた結果を図5に示す。図5より、金属試料中に存在する析出物等(特に、大きさ1μm以下)の大きさ別の分析を精度良く行うことができているのがわかる。
本発明に係る一実施形態として分散性溶液最適化操作のフローを示す図である。 本発明に係る一実施形態として大きさ別の定量分析のフローを示す図である。 本発明の介在物等分析方法で用いる電解装置の構成を模式的に示す図である。(実施例1) 本発明の析出物等分析方法で用いる電気泳動装置の構成を模式的に示す図である。(実施例1) Ti、Nb、Mnにおける大きさ別の介在物含有量の分析結果を示す図である。(実施例1) 非特許文献1に開示されている標準法のフロー図。
符号の説明
1 電解用試料
2 電解用試料の固定用治具
3 電極
4 ビーカー
5 定電流電解装置
6 電解液
7 電解装置
8a、8b 高分子膜

Claims (2)

  1. 金属試料を電解する電解ステップと、前記電解後の金属試料の残部を、前記電解に用いた電解液とは異なりかつ分散性を有する溶液に浸漬し、前記金属試料中の析出物及び/又は介在物を抽出する浸漬ステップと、前記溶液と多孔質膜を隔壁として有する泳動槽とを用いた電気泳動法により、前記溶液中に抽出した析出物及び/又は介在物を、前記多孔質膜の孔径に応じて大きさ別に分別し、前記大きさ毎に分別された析出物及び/又は介在物のうちの少なくとも1以上を分析する分析ステップとを有することを特徴とする金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法。
  2. 前記多孔質膜としてイオン交換膜を用いることを特徴とする請求項1に記載の金属試料中の析出物及び/又は介在物の分析方法。
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