JP6911368B2 - 鉄鋼材料中の微粒子の分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼材料中の微粒子の分析方法に関する。
近年、金属材料の高品質化への要求が高まっている。鉄鋼の脱酸過程等で生成する比較的大きな介在物は、鋼材の品質を著しく劣化させる原因である。例えば、アルミナ系酸化物は、自動車用薄板鋼板での表面疵、飲料缶の製缶時の割れ、線材製品の伸線時の断線原因等、多くの弊害を引き起こす。そこで、このような介在物の量及びサイズを低減する多くの努力がなされている。
その一方で、人為的に微細析出物の量及びサイズを増減させて、鋼材の品質を更に向上させる多くの努力もなされている。例えば、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、歪取り焼鈍、溶接等の多くの熱処理過程において、鋼中に有意な微細析出物を多く析出させたり、鋼材の結晶粒径を微細化させて強度及び溶接部靭性を向上させたりしている。また、微細な析出物を少なくし、結晶粒径を粗大化させて、鉄損を向上させたりもしている。
従って、これらの高品質の鋼を再現性よく産業的に大量生産するためには、従来の成分の分析値だけでは、正確な把握が不足しており、鋼材に含まれる微粒子の量及び大きさを正確かつ再現性よく評価できる微粒子粒度分布測定方法の開発が重要である。
鋼中微粒子の従来の検査方法としては、ASTM法、JIS法、MICHELIN社が開発したMICHELIN法等の顕微鏡試験法が知られている。例えば、非特許文献1に定められている顕微鏡試験法は、金属試料を研磨した後、顕微鏡の倍率を原則400倍として少なくとも視野数60以上を観察し、介在物等の微粒子が占める面積率より鋼の清浄度を判定するものである。これらの従来の方法では、いずれも光学顕微鏡による目視検査を行うため、検査速度が遅い。また、介在物等と、塵埃、研磨疵、錆等の誤認要因とを分別するための一定尺度が明確でないために誤差が大きく、高い精度で測定を行いにくいという問題もある。
特許文献1では、このような顕微鏡観察における個数密度が低いことを補うことを目的とした方法が記載されている。この従来の方法では、先ず、鋼を電解して、抽出した残渣を支持膜上に滴下乾燥させて、極めて多数の残渣粒子を有する試料を作成している。次いで、この試料を光学顕微鏡分析、走査型電子顕微鏡(SEM)分析、透過型電子顕微鏡(TEM)分析等に供することとしている。また、特許文献1には、このような方法の効果として、多数の粒子を含む代表性の高い粒度分布データが得られると記載されている。
しかしながら、この方法では、顕微鏡分析時に各写真から全サイズの粒度分布を測定するために、数多くの写真撮影及び画像処理が必要とされ、また、人間による個数カウントも必要とされる。このため、検査速度を向上させることができず、また、個人差が出易く高い再現性を得にくい。
そこで最近では、特許文献2に記載されているように、フィールドフローフラクショネーション装置を用いて、金属材料中の微粒子を所定のサイズ毎に分離し、サイズ毎に分かれた各微粒子の個数密度を計測し、更にICP質量分析法によって各微粒子の組成分析を行う方法が開示されている。
特開2004−317203号公報 特許第4572001号公報
JIS G 0555(2003),JISハンドブック(鉄鋼I),日本規格協会
特許文献2では、フィールドフローフラクショネーション用(以下、FFFという。)の分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSという。)を用いており、SDSを含む展開溶液を、FFFによってサイズ毎に分離した微粒子とともにICP質量分析装置に導入している。SDSは、ICP質量分析において321634161といった多原子分子イオンを生成する。3216は質量スペクトルにおいてm/z=48のイオンピークを示し、34161はm/z=51のイオンピークを示す。つまり、特許文献2の分析方法では、m/z=48、51のイオンピークがバックグラウンドとして常に検出されることになる。
ところで、TiやVを含有する鉄鋼材料中の微粒子には、TiやVの炭化物・窒化物等が存在することがある。Tiは質量分析において主にm/z=48のイオンピークを示し、Vは主にm/z=51のイオンピークを示すが、これらTi、Vのm/z=48、51のイオンピークは、バックグラウンドとしてのSDS起因の多原子分子イオンのイオンピークに重なり、質量スペクトル干渉を引き起こす。このように、特許文献2の方法では、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を分散剤として添加した展開溶液を用いるため、硫黄の多原子分子イオンによる質量スペクトル干渉が起こり、微量のTiやVの検出が困難になっていた。
また、電解抽出法などの手法によって鉄鋼材料から分別した微粒子を、そのままICP質量分析などの各種の分析装置に導入して分析を行う場合があり、この場合にも微粒子を分散させ、かつ質量スペクトル干渉を起こさない分散液を必要としていた。
本発明は、鉄鋼材料中のTiやVを含む微粒子を分散させることが可能な、鉄鋼材料中の微粒子の分析方法の提供を課題とする。
フィールドフローフラクショネーションは、展開溶液中における微粒子の拡散現象を利用した微粒子のサイズ毎の分別方法であり、そこで用いられる展開溶液には、微粒子同士の凝集を抑制するための分散剤が添加されている。硫黄を含む従来の分散剤(SDS)は、上述のようにTiやVを含む微粒子を同定する際に質量スペクトル干渉を起こすため、硫黄を含まない分散剤を探索した。その結果、胆汁酸の一種であるコール酸類が、鉄鋼材料中のTiやVを含む微粒子を分散させ、かつ、これら微粒子をフィールドフローフラクショネーションにおいて粒子サイズ毎に分別可能であり、更に分子中に硫黄を含まないため質量分析法においてTiやVとの間で質量スペクトル干渉を起こさないことを見出した。更に、コール酸類は電解抽出法においても微粒子の凝集を防止できることを見出した。
コール酸類を含む分散剤は、電解抽出法などの手法によって分別した微粒子をICP質量分析などの各種の分析装置に導入する場合にも適用可能である。
このような知見に基づく本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)TiまたはVを含む微粒子を含有する鉄鋼材料中の前記微粒子の分析方法であって、
コール酸塩、コール酸エステル、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸エステル、リトコール酸塩、デヒドロコール酸塩、オキソケノデオキシコール酸塩、グリココール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、グリコウルソデオキシコール酸塩またはグリコリトコール酸塩のうちの何れか一種または二種以上を含む分散剤を用いるものであり、
前記分散剤を含む電解液中にて前記鉄鋼材料に対して電解抽出を行い、次いで、前記分散剤を含む抽出液に前記電解抽出後の前記鉄鋼材料を浸漬させて前記抽出液中に前記鉄鋼材料に含まれていた前記微粒子を分散させる第1ステップと、
フィールドフローフラクショネーション法の展開溶液として前記分散剤が水に添加されてなる展開溶液を用い、前記第1ステップにて得られた前記微粒子を含む前記抽出液をサンプル液としてフィールドフローフラクショネーション法を行い、前記微粒子を粒子サイズ毎に分別する第2ステップと、
前記微粒子の成分をICP質量分析法により分析する第3ステップと、を行う鉄鋼材料中の微粒子の分析方法。
)前記第2ステップと前記第3ステップの間において、粒子サイズ毎に分別された前記微粒子にレーザ光を照射し、その反射強度の角度依存性から前記微粒子の粒子サイズの絶対値を計測すると共に、反射強度の強さから個数密度を計測する計測ステップを行う、請求項1に記載の鉄鋼材料中の微粒子の分析方法
本発明によれば、鉄鋼材料中のTiやVを含む微粒子を分散することが可能な、鉄鋼材料中の微粒子の分析方法を提供できる。また、本発明によれば、微粒子を分散させた後のフィールドフローフラクショネーションにおいて微粒子をサイズ毎に分別することが可能であり、更に、ICP質量分析において質量スペクトル干渉の発生を防止することができる。
図1は、本発明の実施形態である鉄鋼材料中の微粒子の分析方法の一例を説明するフローチャート。 図2は、本発明の実施形態である鉄鋼材料中の微粒子の分析方法の別の例を説明するフローチャート。 図3は、第1ステップにおける電解抽出法を説明する模式図。 図4は、第2ステップにおけるフィールドフローフラクショネーション法を説明する模式図。 図5は、各種の分散剤を用いたフィールドフローフラクショネーション法により金ナノコロイド粒子の分別を行った結果を示す図。 図6は、ドデシル硫酸ナトリウムを分散剤に用いたフィールドフローフラクショネーション法により鉄鋼材料中の微粒子の分別を行った結果を示す図。 図7は、コール酸ナトリウムを分散剤に用いたフィールドフローフラクショネーション法により鉄鋼材料中の微粒子の分別を行った結果を示す図。 図8は、コール酸ナトリウムを分散剤に用いたフィールドフローフラクショネーション法により熱処理前後の鉄鋼材料中の微粒子の分別を行った結果を示す図。
以下、本発明の実施形態である分散剤、フィールドフローフラクショネーション用の分散剤、鉄鋼材料中の微粒子の分別方法および鉄鋼材料中の微粒子の分析方法について説明する。
図1及び図2には、鉄鋼材料中の微粒子の分別方法および鉄鋼材料中の微粒子の分析方法をフローチャートで示している。鉄鋼材料中の微粒子の分別方法は、図1及び図2に示すように、鉄鋼材料から電解抽出された微粒子が含まれる抽出液をサンプル液とするフィールドフローフラクショネーション法により、微粒子を粒子サイズ毎に分別するステップ(図1及び図2に示す第2ステップ)を備えている。また、鉄鋼材料中の微粒子の分析方法は、鉄鋼材料に対して電解抽出を行った後、抽出液に鉄鋼材料を浸漬させて抽出液中に前記微粒子を分散させる第1ステップと、上述の第2ステップと、第2ステップにおいて分別された微粒子の成分をICP質量分析法により分析する第3ステップと、を備える。また、本実施形態の鉄鋼材料中の微粒子の分析方法は、図2に示すように、第2ステップと第3ステップの間で、微粒子の粒子サイズの絶対値と、微粒子の個数密度とを計測する計測ステップを行ってもよい。
本実施形態の鉄鋼材料中の微粒子の分析方法では、まず第1ステップにおいて、鉄鋼材料に対して電解抽出法を行うことにより鉄鋼材料中に含まれる微粒子を抽出分離する。本実施形態では、電解液及び抽出液にコール酸類を分散剤として添加することで微粒子の凝集を防止し、次の第2ステップのフィールドフローフラクショネーション法において微粒子の粒子サイズの分別を容易にする。鉄鋼材料中の微粒子の分別方法である第2ステップでは、コール酸類を展開溶液に添加することにより、フィールドフローフラクショネーション法においてチャネル内に設置された透過性膜への微粒子の付着を防止し、かつ、チャネル内での微粒子の分散を容易にすることで拡散係数の大きい粒子から順に微粒子を系外に流出させる。そして、流出した微粒子を第3ステップにおいて順次ICP質量分析装置に導入して微粒子の定性分析を行うとともに、第2ステップ開始時点からICP質量分析での当該微粒子の検出時点までの保持時間を計測して粒子サイズを推定する。コール酸類は硫黄を含まないため、従来のようにTiやVとの間での質量スペクトル干渉は起こらない。また、第2ステップと第3ステップの間において微粒子の粒子サイズと個数密度を別途計測してもよい。
本実施形態におけるコール酸類とは、コール酸エステル、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸エステル、リトコール酸塩、デヒドロコール酸塩、オキソケノデオキシコール酸塩、グリココール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、グリコウルソデオキシコール酸塩またはグリコリトコール酸塩のうちの何れか一種または二種以上をいう。
胆汁酸の一種であるコール酸類は、分子内にフェノール性の水酸基を3つ、カルボキシル基を1つ有しており、水溶液中で強い界面活性作用を示し、従来、膜タンパク質の変性等に利用されている。コール酸類は、鉄鋼中の微粒子を凝集させることなく抽出、分散させることが可能である。更に、コール酸類は、モデル鋼材から電解抽出により得られたTiおよびVを含むナノ炭化物をフィールドフローフラクショネーション法(FFF法)によってサイズ毎に分別し、ICP質量分析において従来検出できなかったTiおよびVのイオンピークを検出可能である。以上の知見を見出し、本発明に至った。一般にFFF法における展開溶液には、イオン性界面活性剤であるSDSやCTAB、非イオン性界面活性剤であるTriton X−100、Tween 20、電解質の塩であるNaCl、NaN、NHNOなどが用いられる。微粒子の種類やサイズにより適用可能な溶媒の種類は異なることが知られているが、測定試料の存在状態を損なわないものであれば、適用する事は可能である。その一方で、硫黄を含まないクエン酸や酢酸アンモニウムのような塩を用いた場合には、微粒子の分散性を損なわないにもかかわらず、分離検出が出来ないという課題があった。本発明では、分散剤としてコール酸類を用いることで、鋼材の熱処理による微粒子(ナノ析出物)の粗大化(2.1nm→3.8nm)を明確に把握することに成功した。この解析結果から、コール酸類は、FFF法における展開溶液の分散剤として好適に使用できることがわかった。
また、電解抽出法における電解液や、電解後に鋼材中の微粒子を鋼材から離脱させて分散させる抽出液に分散剤を添加してもよいこともわかった。
以下、各ステップの詳細について説明する。
(第1ステップ)
鉄鋼材料中に含まれる微粒子を抽出分離する方法には、酸分解方法、ハロゲン分解方法、電解抽出分離方法が知られているが、本実施形態では鉄鋼材料中の介在物や析出物をできるだけ溶解させずに抽出する必要があることから、電解抽出分離法を用いる。特に、電解抽出分離法のうち、より好ましくは非水溶媒系定電位電解法(SPEED法(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method))を適用するとよい。SPEED法は、溶媒中に微粒子が分散された際に、組成やサイズの変化が起こり難く、不安定な微粒子でも安定的に抽出できるため好適である。ただし、本発明における抽出分離法はSPEED法に限定されるものではない。
図3には、第1ステップで用いる電解抽出装置を示す。図3に示す電解抽出装置は、電解槽10と、電解槽10に配置された陰極6と、電解槽10に配置された陽極4と、陰極6と陽極4とが接続された電源8と、から構成されている。また、図3に示す電解抽出装置には、陽極4の電位を測定する参照極7が備えられている。参照極7は電源8に接続されている。
電解槽10には、後述する電解液9が収容されている。電解槽10は、電解された鉄の酸化を抑制するために、密閉できる構造または不活性ガス雰囲気とする構造を有するとよい。
また、陽極4は、電解対象物である鉄鋼材料4aと、鉄鋼材料4aを保持する保持手段4bとから構成されている。保持手段4bとしては、鉄鋼材料4aを保持しかつ通電を確保可能な金属製クリップ等を例示できる。鉄鋼材料4aは、電極面となる面をあらかじめ研磨して自然酸化膜を除去しておくとよい。鉄鋼材料4aは特に限定する必要はないが、微粒子としてTiまたはVを含む介在物や析出物を含む鉄鋼材料4aが好適である。
更に、陰極6としては白金電極を例示できる。
また、電源8としては、電圧及び電流を精密に制御できるものがよく、例えば、電気化学用のポテンショスタット等の定電圧電源を用いてもよく、ガルバノスタット等の定電流電源を用いてもよい。
次に、図3に示す電解抽出装置を用いて鉄鋼材料中の微粒子を抽出分離する方法を説明する。まず、電解槽10に電解溶液9を満たし、その中に鉄鋼材料4aを浸漬させ、参照極7を鉄鋼試料4aの近くに配置する。陰極6と陽極4を電源8に接続する。鉄鋼材料4aのマトリックスとなる鉄の電解電位に比べて、析出物等の鋼中微粒子の電解電位は高い電解電位を持つ。そこで、電源8を用いて鉄鋼材料4aのマトリックスを溶解し、かつ析出物等の微粒子を溶解しない電解電位の間に電圧を設定することで、マトリックスのみを選択的に溶解する。鉄鋼材料4a中の微粒子5は、鉄鋼材料4aの表層部に露出され、一部は電解液9中に分散する。
次に、鉄鋼材料4aを静かに取り出し、清浄な抽出液に浸漬させる。そして、これらに超音波照射等を行うことにより、鉄鋼材料4aの表層部分に付着していた微粒子5を鉄鋼材料4aから離脱させる。この結果、鉄鋼材料4aから抽出された微粒子5を含む抽出液が得られる。
超音波の照射時間は、出力と液量によっても変わるが、10分を超えて放置すると熱を帯びてしまい、分散剤を含む抽出液の内容が変化する可能性が高い。一方、1分未満では、分散が不十分になることがある。
このようにして微粒子5が分散した抽出液が得られるが、この抽出液に含まれる微粒子5のサイズは幅広く粗大な微粒子が含まれる可能性があり、次の第2ステップにおいてフィールドフローフラクショネーション装置(以下、FFF装置という場合がある)の内部で粗大な微粒子が詰まりを生じさせるおそれがある。このため、事前に粗大な微粒子5を取り除くことが好ましい。例えば、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過してもよい。また、遠心分離装置で数分以上かけて、1μm以上の粗大な粒子を下方に沈降させ、得られた液の、上方の上澄み液を採取して、第2ステップのFFF装置に導入してもよい。
次に、第1ステップにおいて使用する電解液及び抽出液について説明する。
電解液の基本組成は、例えば、10質量%アセチルアセトン(以降“AA”と称す)−1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド(以降“TMAC”と称す)−メタノール溶液、又は10質量%無水マレイン酸−2質量%TMAC−メタノール溶液を例示できる。また、サリチル酸メチル等の金属イオンとキレート錯体を形成するキレート試薬と、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)等の電流を流すための電解質を、非水溶媒であるメタノール溶媒に溶解させた電解液を用いてもよい。上記の基本組成では溶媒としてメタノールを例示したが、水でもよく、エタノール等の他のアルコール類でもよい。水は最も入手容易な溶媒だが、水に対して溶解性がある微粒子を分析対象とする場合は、メタノール等のアルコール類を溶媒に用いるとよい。
本実施形態に係る電解液には、上記基本組成に加えてコール酸類からなる分散剤を更に添加する。分散剤を添加した電解液9を用いることにより、介在物等の微粒子5を凝集させずに電解抽出させることができる。コール酸類からなる分散剤が添加されていると、金属マトリックスから分離して電解液9に放出された直後の微粒子5の周囲を、分散剤が安定的に保護して包み込むことで、微粒子同士が凝集しにくくなると推測される。そして、電解抽出した微粒子5を抽出液に分散させる際にも、速やかに単一粒子に分散しやすいという効果も得られる。なお、本実施形態に係るコール酸類からなる分散剤は、電解液のほか、電解抽出に用いる抽出液や、第2ステップのフィールドフローフラクショネーション法に用いる展開溶液にも添加される。分散剤の詳細な説明は後述する。
分散剤による微粒子の分散効果により、微粒子5が例えば薬剤及び/又は水分等に非常に不安定なものであっても、安定かつ効率的に抽出することが可能となる。添加する分散剤の濃度は、0.005質量%〜0.1質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.05質量%であることがより好ましい。濃度が0.005質量%未満であると薄すぎて微粒子の分散作用が弱くなる。また、濃度が濃すぎると、泡が生成しやすくなるため作業上好ましくない。
また、電解抽出後の鉄鋼材料から微粒子を抽出する抽出液には、コール酸類からなる分散剤を溶媒に溶解させたものを用いる。溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類または水を用いることができるが、微粒子の存在環境の変化による微粒子の変質を防止するためには、電解抽出法で用いた電解液の溶媒と同じものを用いることが好ましく、例えば上述した基本組成を有する電解液を用いた場合の抽出液は、メタノールを溶媒とするとよい。
抽出液中の分散剤の濃度は、電解液の場合と同様に、0.005質量%〜0.1質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.05質量%であることがより好ましい。濃度が0.005質量%未満であると薄すぎて微粒子を分散させる作用が弱くなる。また、濃度が濃すぎると、泡が生成しやすくなるため作業上好ましくない。
コール酸類からなる分散剤を抽出液に添加することにより、抽出液中での介在物等の微粒子5の凝集を防止し、微粒子5をそれぞれ単独で分散させることができる。コール酸類からなる分散剤が添加されていると、微粒子5の周囲を分散剤が安定的に保護して包み込み、微粒子同士が凝集しにくくなると推測される。
(第2ステップ)
次に第2ステップでは、微粒子が含まれる抽出液をサンプル液とし、フィールドフローフラクショネーション法により、微粒子を粒子サイズ毎に分別する。図4には、第2ステップに用いるフィールドフローフラクショネーション装置(FFF装置)の断面模式図を示す。図4に示すFFF装置は、展開溶液が流通する分離セル16と、分離セル16内に配置された透過性膜21と、クロスフロー14を分離セル16に導入する図示略のクロスフロー導入部と、サンプル液15を分離セル16に導入する図示略のサンプル導入部と、分離セル16内での展開溶液やクロスフロー14の流れを制御する図示略の制御手段と、が備えられている。
分離セル16は、上部筐体16aと下部筐体16bとが所定の間隔を空けて配置されて構成されている。上部筐体16a及び下部筐体16bの間の空間は、展開溶液が流通するチャネル部16cとなっている。
分離セル16を構成する下部筐体16bは、メッシュ状の部材から構成されている。また、下部筐体16bのチャネル部16c側の面には透過性膜21が積層されている。透過性膜21は、抽出液や展開溶液などの液体は透過させるが、サンプル液に含まれる微粒子は透過させないものとなっている。
更に、分離セル16の図中右側には、図示略のICP質量分析装置が接続されている。
図示略の制御手段は、分離セル16のチャネル部16cにおける展開溶液やクロスフロー14の流れを制御するものであり、配管、制御弁及び制御弁の動作を制御する制御部などからなる。制御手段は、図4に示す分離セル16の図中左右両側から展開溶液を導入したり、図中左側から右側に向けて展開溶液を流通できるようになっている。また、制御手段は、図4に示すようにチャネル部16cの上側からクロスフロー14を導入できるようになっている。クロスフロー14とは展開溶液による図4の上から下に向かう流れである。
次に、FFF装置の動作を説明する。FFF装置の展開溶液としては、コール酸類からなる分散剤が溶解した水溶液を用いる。まず、クロスフロー14と呼ばれる展開溶液の流れを分離セル16の上方から下方に向かって生じさせる。更に、分離セル16の左側と右側からも展開溶液を流す。これにより、左右両側から相対するように流れる展開液の流れが、クロスフロー14の流れに導かれて、透過性膜21に向かう流れを形成させる。
この流れが安定した後、微粒子を含むサンプル液15を添加する。すると、展開溶液の流れに乗って、微粒子は透過性膜21の近傍に局所的に濃縮される。展開溶液の流れを所定の時間に渡って保持すると、微粒子が次第にブラウン運動を伴い拡散する。下方の透過性膜21には大きなサイズの大粒子20がクロスフロー14の流れによって押し付けられるが、その一方で、比較的サイズが小さな中粒子19及び小粒子18は、クロスフロー14の流れに打ち勝つだけのブラウン運動を起こし、分離セル16の下側に位置する透過性膜21に押し付けられることなく、分離セル16中に浮遊した状態になる。小粒子18ほど上方に浮遊しやすくなる。この操作をフォーカシングと呼ぶ。この状態にすることで、分離セル16の中で微粒子がサイズ毎に並び替えられることとなる。フォーカシングの保持時間は、小粒子18の位置がチャネル部16cの厚さ方向中心位置を超えない程度の時間に設定するとよい。
その後、クロスフロー14を維持したまま、分離セル16の左右から押し付けていた展開溶液の流れを変えて、展開溶液からなるチャネルフロー17を形成させる。具体的には、図4に示すように、左側から右側に向けて、分離セル16内の微粒子を右側に押し流す流れを形成する。チャネルフロー17は層流であり、図4に示すような流速分布を有している。すなわち、チャネル部16cの厚さ方向中心での流速が最も早く、中心から離れるに従って流速が遅くなる。すなわち、小粒子18の存在領域では流速が早く、大粒子20の存在領域では流速が小さくなる。
このとき、透過性膜21近傍に微粒子を留める役割のクロスフロー14の圧力を徐々に低下させると、分離膜21近傍に留められていた微粒子が、チャネルフロー17の層流の流れに乗って、徐々に小さな粒子から大きな粒子の順で右側に排出される。
なお、ここでは、分離するためにクロスフロー液による押さえつけ力とブラウン運動とを組み合わせることにより、サイズ分離する例を示したが、FFFの分離原理としては、この他にも、重力、電場、磁場、温度勾配等をかけることにより、より精密に粒子を分離することができる。
サイズ毎に分離された微粒子は、チャネルフロー17によって、FFF装置の外部に設置されているICP質量分析装置に導かれる。ICP質量分析装置には、粒径の小さい順に微粒子が到達する。到達した微粒子は、プラズマの熱エネルギーにより原子レベルまで分解、その後イオン化されて、質量分析計に導入される。質量分析計によって、各微粒子に特有な質量スペクトルが得られる。また、各イオンの検出量を縦軸とし、検出時間を横軸とする各イオンの時間変化量のチャートも得られる。
また、FFF装置とICP質量分析装置の間に、レーザ光照射検出部を配置してもよい。レーザ光照射検出部において複数角度に設置された光検出器より、レーザ光散乱された光強度を得る。小さな粒子の場合は、角度依存性が非常に少なく全方位散乱現象を示す。一方、粗大な粒子になるにつれて、前方散乱現象が強くなるため、この角度依存性の傾きを取ることにより電解抽出粒子5のサイズを一義的に決定できる。
FFF法に用いられる展開溶液は、分散剤が溶解された水溶液からなる。溶媒は水であることが好ましい。水以外の溶媒を用いると、ICP質量分析装置においてプラズマを安定に維持できなくなる。分散剤は、先に説明した電解液や抽出液の場合と同様に、コール酸類からなることが好ましい。展開溶液中の分散剤の濃度は、電解液や抽出液の場合と同様に、0.005質量%〜0.1質量%であることが好ましい。濃度が0.005質量%未満であると薄すぎて微粒子を分散させる作用が弱くなり、分離セル16内において微粒子が凝集してブラウン運動が生じず、微粒子を粒子サイズ毎に分別できなくなる。また、濃度が濃すぎると、泡が生成しやすくなり、またICP質量分析において感度や精度を低下させる。
次に、本実施形態に係る分散剤について説明する。本実施形態の分散剤は、第1ステップにおいて使用する電解液及び抽出液と、第2ステップにおいて使用する展開溶液とにそれぞれ添加され、微粒子の凝集を防止して分散性を高め、粒子サイズ毎の分別を容易にする。分散剤は、コール酸塩、コール酸エステル、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸エステル、リトコール酸塩、デヒドロコール酸塩、オキソケノデオキシコール酸塩、グリココール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、グリコウルソデオキシコール酸塩またはグリコリトコール酸塩のうちの何れか一種または二種以上を含む。塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩など、アルカリ金属塩であることが好ましく、特にナトリウム塩がよい。また、エステル類は、メチル体またはエチル体がよい。
以下に、本実施形態に適用可能なコール酸類の具体的な化学構造式を示す。
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上記のコール酸類は、分子中に硫黄原子が含まれない。このため、これらコール酸類をICP質量分析装置に導入したとしても、3216(m/z=48)、34161(m/z=51)といった多原子分子イオンは生成されない。これにより、Ti(m/z=48)やV(m/z=51)との間で質量スペクトル干渉を引き起こすことがなく、TiやVを確実に検出することが可能になる。
また、上記のコール酸類は、分子中にカルボキシル基を有しており、展開溶液中では負の電荷を有するものになっている。コール酸類を含む展開溶液がFFF装置の分離セルに導入されると、透過性膜21の表面に集まり、透過性膜21の表面は負の電荷を帯びる。一方、FFF法のサンプル液である抽出液には、鉄鋼材料中から分離抽出された微粒子が分散剤とともに含まれており、液中の微粒子は分散剤であるコール酸類に取り囲まれていると推測され、このため微粒子は負の電荷を帯びている。
このため、FFF装置にサンプル液が導入されたとしても、負電荷を帯びた微粒子は、負電荷を帯びた透過性膜21には吸着されず、チャネル部16c内におけるブラウン運動が阻害されない。これにより、粒子サイズ毎の分別が円滑に行われる。
以上説明したように、本実施形態のフィールドフローフラクショネーション用の分散剤は、フィールドフローフラクショネーション法における展開溶液に添加することで、微粒子を凝集させずに分散させることが可能になり、鉄鋼材料から抽出分離した微粒子をサイズ毎に分別させることができる。また、本実施形態の分散剤は、分子中に硫黄を含まないため、ICP質量分析を行う際にTiやVとの間で質量スペクトル干渉を生じさせることがなく、微粒子の定性分析を支障なく行うことができる。
また、本実施形態の鉄鋼材料中の微粒子の分別方法によれば、コール酸類を展開溶液に添加することにより、フィールドフローフラクショネーション法においてチャネル内に設置された分離膜への微粒子の付着を防止し、かつ、チャネル内での微粒子の分散を容易にし、拡散係数の大きい粒子から順に微粒子を系外に流出させることができる。
更に、本実施形態の鉄鋼材料中の微粒子の分析方法によれば、電解液及び抽出液にコール酸類を分散剤として添加することで微粒子の凝集を防止し、次の第2ステップのフィールドフローフラクショネーション法において微粒子の粒子サイズの分別を容易に行うことができる。また、コール酸類は分子中に硫黄を含まないため、ICP質量分析を行う際にTiやVとの間で質量スペクトル干渉を生じさせることがなく、微粒子の定性分析を支障なく行うことができる。
なお、本実施形態では、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップを順次行う場合について説明したが、第2ステップを省略することもできる。すなわち、第1ステップにより鉄鋼材料中から微粒子を抽出した後、抽出した微粒子をICP質量分析によって分析してもよい。第1ステップでは、本実施形態の分散剤を電解液及び抽出液に添加すればよい。電解液及び抽出液にコール酸類を分散剤として添加することで微粒子の凝集を防止し、次の第3ステップにおいてICP質量分析を行う際にTiやVとの間で質量スペクトル干渉を生じさせることがなく、微粒子の定性分析を支障なく行うことができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実験例1)
平均粒径2nmの金のナノ粒子と平均粒径5nmの金のナノ粒子とを含むサンプル水溶液を用意した。各サンプル水溶液には分散剤として、SDS、クエン酸、NaCl、NHNO、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムをそれぞれ添加した。各分散剤の濃度は500質量ppmとした。
また、FFF法の展開溶液として、SDS、クエン酸、NaCl、CHCOONH、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムをそれぞれ含む水溶液を用意した。各分散剤の濃度は500質量ppmとした。
次に、図4に示すFFF装置を用いて、サンプル水溶液中に含まれる金のナノ粒子の分別を行った。検出装置は、ICP質量分析装置に替えて、紫外光分光光度計を用いた。
FFF装置の操作条件は、展開溶液及びクロスフローを1分間流し、次いでサンプル水溶液を0.2mL/分の速度で50μL導入し、1分間のフォーカシングを行った後、チャネルフローとして展開溶液を1.0mL/分の流速で流した、フォーカシング後、クロスフローの流速を徐々に低下させた。
FFF装置から流出したチャネルフローとして展開溶液を紫外光分光光度計に導入して、吸光度の時間変化を調べた。結果を図5に示す。
図5に示すように、分散剤としてSDS、コール酸ナトリウム及びデオキシコール酸ナトリウムを用いた場合は、チャネルフローの導入開始から約6.9分後に1つ目のピークが現れ、約10.9分後に2つ目のピークが現れた。1つ目のピークは平均粒径2nmの金のナノ粒子にピークであり、2つ目のピークは平均粒径5nmの金のナノ粒子のピークであった。
一方、分散剤として、クエン酸、NaCl、CHCOONHを用いた場合は、ピークが全く現れなかった。ピークが現れなかった原因は、金のナノ粒子がFFF装置の透過性膜に付着してしまい、チャネルフローによっても流出されなかったためと推測される。
また、サンプル水溶液に分散剤を添加せず、展開溶液も分散剤を含まない超純水を用いた場合は、図5に示すように、小さなピークは現れたものの、平均粒径2nm、5nmにそれぞれ対応するピークは認められなかった。
(実験例2)
質量%でC:0.093%、Si:0.06%、Mn:0.48%、P:0.001%、S:0.001%、V:0.26%、Ti:0.2%、sol−Al:0.027%、N:0.0012%を含み、残部が鉄及び不純物からなるモデル鋼材を用意した。モデル鋼材中には、微粒子として、Ti炭化物とV炭化物が含まれていた。Ti炭化物及びV炭化物の平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察(TEM観察)による画像解析結果では2.9nmであり、アトムプローブトモグラフィー(APT)による観察結果では1.75nmであった。
これらTi炭化物及びV炭化物のサイズ分布について、FFF法を適用して分析を実施した。
FFF法に用いるサンプル溶液の調製は、図3に示す電解抽出装置を用いて定電流電解抽出法により微粒子を抽出分離した。予備電解を15分行なった後に本電解を500mAで2時間行ない、鋼材1g相当を電解した。電解液には、10%AA−1%TMAC−MeOH溶液を基本組成とし、電解抽出操作時に抽出された微粒子が凝集するのを防ぐ目的で、コール酸ナトリウムをFFF分析用の展開溶媒(溶離液)と同一濃度である500ppm添加したものを用いた。鋼板試料表面に抽出された残渣は、ろ過せずに500ppmコール酸ナトリウム−MeOH溶液(抽出溶液)中に鋼板試料ごと浸漬し、超音波洗浄により微粒子を溶液中に回収した。このようにしてサンプル溶液を調整した。
FFF装置の操作条件は、実験例1の場合と同様にした。FFF法の展開溶液は、コール酸ナトリウムを500ppm含む水溶液とした。FFF装置によって分別した微粒子は、ICP質量分析装置で分析した。ICP質量分析はHot plasma(RF 1400W)での条件で実施した。また、感度を向上させるために脱溶媒試料導入法を用い、加熱140℃、冷却2℃の条件で試料を導入した。
また、比較例として、コール酸ナトリウムに代えてSDSを用いたこと以外は上記と同様にして、モデル鋼材中の微粒子の分析を行った。
熱処理なしのモデル鋼材を試料とした結果を図6及び図7に示す。図6に示すように、従来のSDSを分散剤として用いた場合は、FFFの展開溶液中に硫黄が500ppm含まれていたため、測定試料中のTiは質量スペクトル干渉を回避するために天然同位体のm/z=47で測定を実施したが、47TiはFFF展開溶液中の3216によるアバンダンス干渉を受け、同様に測定試料中の51VはFFF展開溶媒中の34161による質量スペクトル干渉を受け、微量の析出物のピークをICP質量分析で検出できなかった。48Tiは質量スペクトル干渉の影響が甚大のため未測定とした。
一方、分散剤としてコール酸ナトリウムを用いた場合には、図7に示すように、Ti、Vのいずれのピークも検出できる事が明らかとなり、そのサイズは平均約2.1nmであった。この値はTEM、APTで観察された粒子サイズともほぼ一致していた(TEM:2.9nm、APT:1.75nm)。
以上のことから、硫黄を含まない新規分散剤であるコール酸ナトリウムによるSDS代替の効果が実証された。
次に、上記モデル鋼材に780℃の追加熱処理を施した測定試料を上述と同様の方法で、分析した結果を、熱処理なしの結果と重ねて、図8に示す。図8より、熱処理によって炭化物のサイズ分布が全体的に粗大化していることが明らかとなった。このように硫黄フリーの分散剤を用いたFFF法は、鋼材中のTiおよびVの析出物のサイズ分布を定量的に評価する事が可能であると考えられる。
4…陽極、4a…鉄鋼材料、5…微粒子、6…陰極、9…電解液、14…クロスフロー(展開溶液)、15…サンプル液、16…分離セル、17…チャネルフロー(展開溶液)。

Claims (2)

  1. TiまたはVを含む微粒子を含有する鉄鋼材料中の前記微粒子の分析方法であって、
    コール酸塩、コール酸エステル、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸エステル、リトコール酸塩、デヒドロコール酸塩、オキソケノデオキシコール酸塩、グリココール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、グリコウルソデオキシコール酸塩またはグリコリトコール酸塩のうちの何れか一種または二種以上を含む分散剤を用いるものであり、
    前記分散剤を含む電解液中にて前記鉄鋼材料に対して電解抽出を行い、次いで、前記分散剤を含む抽出液に前記電解抽出後の前記鉄鋼材料を浸漬させて前記抽出液中に前記鉄鋼材料に含まれていた前記微粒子を分散させる第1ステップと、
    フィールドフローフラクショネーション法の展開溶液として前記分散剤が水に添加されてなる展開溶液を用い、前記第1ステップにて得られた前記微粒子を含む前記抽出液をサンプル液としてフィールドフローフラクショネーション法を行い、前記微粒子を粒子サイズ毎に分別する第2ステップと、
    前記微粒子の成分をICP質量分析法により分析する第3ステップと、を行う鉄鋼材料中の微粒子の分析方法。
  2. 前記第2ステップと前記第3ステップの間において、粒子サイズ毎に分別された前記微粒子にレーザ光を照射し、その反射強度の角度依存性から前記微粒子の粒子サイズの絶対値を計測すると共に、反射強度の強さから個数密度を計測する計測ステップを行う、請求項に記載の鉄鋼材料中の微粒子の分析方法。
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