JP2020158277A - フィルムロールの製造方法、及びフィルムロール。 - Google Patents

フィルムロールの製造方法、及びフィルムロール。 Download PDF

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Abstract

【課題】シワや帯電欠点の無い巻き姿品位の良好なフィルムロールの製造方法、およびフィルムロールを提供する。【解決手段】本発明のフィルムロールの製造方法は、下式(1)を充足する円筒状コア1を用い、かつ、フィルム2の巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるように巻くことを特徴とする。ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。【選択図】図2

Description

本発明はフィルムロールの製造方法、及びフィルムロールに関する。
ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性、電気特性、耐熱性および表面特性を利用して磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、包装用などの各種工業材料用途に用いられている。この中の内、特に磁気記録媒体用のベースフィルムでは、磁気記録媒体の高密度記録化の進行に伴い薄膜化、平滑化が進んでおり、フィルムの巻き取り難易度が上昇している。
このような問題に対し、特許文献1ではフィルムロールのフィルム巻回部の直径を幅方向で一定値以下に収めることで、経時で発生するシワやタルミなく、巻き姿の良好なフィルムロールを提供する技術が提案されている。
国際公開WO2001/048061号パンフレット
しかしながら、磁気記録媒体用ベースフィルムなどでは、近年ますますフィルムの薄膜化、平滑化が進行しており、さらにフィルムロールの長尺化の進行も相まることで、フィルムを巻き取る際にシワや、フィルムが帯電し放電することで局所的に塑性変形する帯電欠点や、フィルムロール端部が反り上がるヘリ高などの欠点の発生が顕在化しており、特許文献1に開示されている技術では巻き姿品位の良好なフィルムロールを得ることができなくなってきた。
そこで本発明の目的は、上記課題を解決し、シワや帯電欠点の無い巻き姿品位の良好なフィルムロールを得ることができるフィルムロールの製造方法、およびフィルムロールを提供することにある。
上記課題を解決する本発明のフィルムロールの製造方法は、下式(1)を充足する円筒状コアを用い、かつ、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるように巻くことを特徴とする。
Figure 2020158277
ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
また、本発明のフィルムロールの製造方法は、前記コアの周方向曲げ弾性率が50GPa以上であることが好ましい。
さらに、本発明のフィルムロールの製造方法は、前記コアの材質が繊維強化プラスチックであることが好ましい。
また、本発明のフィルムロールは、円筒状コアにフィルムが巻かれたフィルムロールであって、フィルムが巻回されていないコア部のコア外径の最大値と最小値との差が100μm以下であり、巻回されたフィルム部の硬度が90度以上である。
また、上記課題を解決する本発明のフィルムロールは、前記コアは下式(1)を満たすことが好ましい。
Figure 2020158277
ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
また、本発明のフィルムロールは、前記コアの周方向曲げ弾性率が50GPa以上であることが好ましい。
さらに、本発明のフィルムロールは、前記コアの材質が繊維強化プラスチックであることが好ましい。
また、本発明のフィルムロールは、前記フィルムの厚みが10μm以下であることが好ましい。
また、本発明のフィルムロールは、前記フィルムの長手方向の長さが8000m以上であることが好ましい。
また、本発明のフィルムロールは、前記フィルムの表面の最大高さ粗さRzが表裏両面において100nm以下であることが好ましい。
本発明によれば、シワや帯電欠点の無い巻き姿品位の良好なフィルムロールの製造方法、およびフィルムロールを得ることができる。
図1は、本発明の一実施形態であるフィルムロールの製造方法を使用したフィルムのスリット工程の概略側面図である。 図2は、接圧ローラとフィルムロールの接触状態を示した断面図である。 図3は、接圧ローラとフィルムロールの、図2とは異なる、接触状態を示した断面図である。 図4は、周方向曲げ弾性率の測定方法について説明するための斜視図である。
以下、本発明のフィルムロールの製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
まず、本発明における各用語はそれぞれ次のとおりの意味を有する。なお、平均とは特に断らない限り算術平均を意味する。
「コア内半径」とは、どちらか一方のコア端部から5mm内側の部位を測定開始位置とし、5μm以下の寸法を測定可能な寸法精度を有した測長器を用いて50mm毎に全幅にわたりコア内側の直径を測定し、全測定点を平均した値の2分の1の値とする。
「コア外径」とは、どちらか一方のコア端部から5mm内側の部位を測定開始位置とし、30μm以下の寸法精度を測定可能な寸法精度を有した測長器を用いて50mm毎に全幅にわたりコア外側の直径を測定し、全測定点を平均した値とする。
「コア外半径」とは、コア外径の2分の1の値とする。
「コア部のコア外径の最大値と最小値」とは、フィルムの巻かれていない箇所のコア部において、コア端部から5mm内側の部位を測定開始位置とし、30μm以下の寸法精度を測定可能な寸法精度を有した測長器を用いて20mm毎に全幅にわたりコア外側の直径を測定し、幅方向をX軸、コア外側の直径をY軸にプロットし、得られた曲線の最大値と最小値とする。なお、フィルムを巻き取ることによるコア外径の収縮量を測定することで、フィルムロール端部のヘリ高の高さを間接的に測定しており、変形に起因しないコア表面に存在する溝や段差、キズや凸部は含まない。
「周方向曲げ弾性率」とは、以下の式(3)で弾性率を求めた値とする。
Figure 2020158277
ここで、E[Pa]は周方向曲げ弾性率、P[N]は荷重、r[m]はテストピース中心半径、δ[m]はたわみ、I[m]は断面2次モーメント(B×t/12。なお、Bはテストピース長さ[m]、tはテストピースの肉厚[m])をあらわす(図4を参照)。
「フィルム部の硬度」とは、フィルムの巻き取り後、24時間以上を経過したフィルムロールに対して、JIS K7312に準じて、高分子計器(株)製のアスカーゴム硬度計C型を用い、フィルムロールの幅方向に10点(ロール端部の10mmずつを除いた全幅を10等分して、各等分の中央部を測定する)測定した平均とする。
「最大高さ粗さ」とは、触針法の高精細微細形状測定器を用いてJIS B0601(1994年)に準拠して、下記条件にてフィルムの最大粗さ(Rz)を測定した。
測定装置:3次元微細形状測定器(小坂研究所製 型式ET−4000A)
解析機器:3次元表面粗さ解析システム(小坂研究所製 型式TDA−31)
触針:先端半径0.5μmR、径2μm、ダイヤモンド製
針圧:100μN
測定方向・算出法:フィルム長手方向、フィルム幅方向を各々10回測定する。その20回の測定の平均値を表面粗さとする。
図1は、本発明のフィルムロールの製造方法を、フィルムの製造工程や加工工程の一部であるスリット工程に適用した一例を示す概略側面図である。ここで、スリット工程とは、フィルムを必要なサイズ幅に切断しロール状に巻き取る工程のことである。図1において、原反6からフィルム10が巻き出され、ガイドローラ7により搬送される。その後、フィルム10は、下刃ローラ8上で上刃9により幅方向に分割され、接圧ローラ5を押し当てながら、コア11上で巻き取られ、フィルムロール12となる。また、除電器13がフィルムロール12に向けて設置される。
各ローラは軸受により回転支持され、軸受は適宜フレームなどで支持される。接圧ローラ5、ガイドローラ7および下刃ローラ8はフィルム10との摩擦力で回転する従動ローラでもよいし、モーター等を用いた駆動ローラでもよい。モーター等により駆動する場合には、ローラとフィルム10が滑ってフィルム10に摩擦帯電を生じさせないように、ローラの回転速度をフィルム10の搬送速度とほぼ同じにするのが好ましい。コア11は軸受によって支持されたチャックによって把持され、モーター等により回転駆動されるのが好ましい。また、フィルムロール12に向けて設置される除電器13により、フィルムロール12の電位を低く抑えることができる。除電器13は、空気中でイオンを生成し、このイオンによってフィルム10の帯電電荷を中和する装置である。また、適宜、スリット工程内に、フィルム10を把持して、張力や速度を正確に制御するためのニップローラやサクションローラ、フィルム10を幅方向に拡幅するシワ伸ばしローラなどを配置してもよい。
本発明者らは、フィルムロールを製造する際に、フィルムロールの幅方向に対してランダムな位置にシワや帯電欠点が発生し巻姿が悪化する原因について探求を行い、巻き締りによりフィルム同士が擦れることによる摩擦帯電によることを見出した。巻き締りは、フィルムを巻き取る最中にフィルムロールのフィルムの層間に空気を含み、フィルムロールの巻き太りともに増加する圧縮応力の影響で、巻き取り最中や、フィルムロールの保管、輸送中に徐々にフィルム層間の空気が抜けることで発生する。したがって、フィルム層間の空気を排除しながらフィルムを巻き取ることで巻き締りの発生を抑制し、良好な巻き姿のフィルムロールを得ることが可能となる。
この知見をもとに鋭意検討した結果、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるようにフィルムを巻き取ることで、十分に空気が排除されており、高いレベルで巻き締りの抑制がされた良好な巻き姿のフィルムロールが得られることを見出した。フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度未満であった場合、空気の排除が十分ではないため更なる巻き締りによるシワや帯電欠点の抑制が困難となる。ここで、より好ましくは、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が95度以上であることである。この範囲とすることで、巻き締りの抑制効果を高めることができる。また、巻き取り終了時から30時間以内あるいは30時間経過時で巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるようにフィルムを巻き取ることが好ましい。なお、「フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間」の意味は、フィルムの硬度の測定時期を意味するものであり、フィルムの巻き取り終了時から24時間後の段階で既にフィルム部の硬度が90度以上となっているように巻くことは何ら差し支えが無い。
上記のようなフィルム部の硬度を得るフィルムロールの製造方法としては、巻き取り工程において高張力でフィルムを巻き取る方法、高面圧でフィルムを巻き取る方法、また、接圧ローラに対してフィルムロール接圧部と反対側から接圧ローラを押圧するバックアップローラを設け、面圧を高めつつ高面圧による接圧ローラのたわみを抑制し、幅方向に均一な面圧分布を得る方法などを好ましく用いることができる。なお、一般的なフィルムは巻き終わりから徐々に巻き締りが始まって一定時間後に巻き硬度が飽和することが知られている。従って、巻き取り終了時から24時間経過後の任意の時間において巻回されたフィルム部の巻き硬度を90度以上とするためには、対象とするフィルムの性状に応じて、巻き張力及び巻き上がり時のフィルムの硬度並びに巻き締りの挙動を実験的に求めて、以降に説明する内容を参照して、巻き取り条件を設定すれば良い。
高張力でフィルムを巻き取る方法としては、巻き取り張力の範囲を100N/m以上500N/m以下とすることが好適である。巻き取り張力が100N/m以上であると、巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上になる場合が多い。また、巻き取り張力が500N/m以下であれば張力の制御が容易であり、フィルムの幅方向に対する巻きズレが少なく、フィルム端面の揃った良好な巻き姿を得ることが可能になる場合が多い。ここで、より好ましくは巻き取り張力の範囲を150N/m以上400N/m以下とすることである。巻き取り張力が150N/m以上であると、巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が95度以上になる場合が多い。また、巻き取り張力が400N/m以下であれば、フィルムの搬送張力と巻き取り張力との分断が容易となり、フィルムと搬送ローラとの間に速度差が生じにくくなるためにキズや欠点無くフィルムを搬送することが可能になる場合が多い。
高い面圧でフィルムを巻き取る方法としては、巻き取り面圧が50N/m以上1000N/m以下の範囲を適用することが好適である。巻き取り面圧が50N/m以上であると、巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上になる場合が多い。また、巻き取り面圧が1000N/m以下であると、接圧ローラとフィルムロールとの接圧が高すぎることで生じる帯電欠点無くフィルムを巻き取ることが可能になる場合が多い。ここで、より好ましくは巻き取り面圧が100N/m以上800N/m以下を適用することである。巻き取り面圧が100N/m以上であると、巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が95度以上になる場合が多い。また、巻き取り面圧が800N/m以下であると、接圧ローラのたわみの制御が容易であるため、幅方向に対して均一な面圧分布が得られやすくなる場合が多い。
また、接圧ローラにバックアップローラを用いる方法としては、接圧ローラの外径を30mm以上60mm以下とし、接圧ローラの巻き取り面圧を100N/m以上1000N/m以下、バックアップローラの外径を40mm以上70mm以下とし、バックアップローラの面圧を200N/m以上800N/m以下とすることが好適である。接圧ローラの外径を30mm以上60mm以下とし、接圧ローラの巻き取り面圧を100N/m以上、バックアップローラの外径を40mm以上70mm以下とし、バックアップローラの面圧を200N/m以上とすることで、24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上になる場合が多い。また、接圧ローラの外径を30mm以上60mm以下とし、接圧ローラの巻き取り面圧を1000N/m以下、バックアップローラの外径を40mm以上70mm以下とし、バックアップローラの面圧を800N/m以下とすることで、接圧ローラとバックアップローラの磨耗を抑制しつつ幅方向に対して均一な面圧分布が得られやすくなる。
前述のとおり、フィルム層間の空気を排除しながらフィルムを巻き取ることで、フィルムロールの幅方向に対してランダムな位置にシワや欠点の無い良好な巻き姿を得ることが可能となる。一方で、本発明者らが前述した手段を用いてフィルム層間の空気を排除することを目的としてのフィルムの巻き取り試験を行ったところ、フィルムロール端部近傍で局所的にシワや帯電欠点が発生する課題が新たに浮上した。
そこで、本発明者らがフィルムロール端部近傍のシワや帯電欠点が発生する原因について鋭意検討した結果、これまでは全く検討されていなかった、フィルムの巻き取りに用いるコアの収縮変形が原因であることを見出した。
図2に、接圧ローラとフィルムロールの接触状態の一例を示した断面図を示す。フィルム層間の空気を排除しながらフィルムを巻き取ることで、巻き取られたフィルムがコアにもたらす半径方向の圧縮応力が増大し、コアが中心に向かって圧縮変形する。その結果、フィルム巻回部の中央と端部とでコア収縮量の差が発生し、巻回されたフィルムロール端部がコアの表面起伏に沿って反り上がり、フィルムロールがヘリ高形状となる。
フィルムロールがヘリ高形状となると、巻き取り工程にて用いられる接圧ローラとフィルムロールとの接触面積が小さくなるため、ヘリ高の発生したフィルムロール端部近傍では局所的に高い面圧を受けることとなる。その結果、高い面圧を受けた部位では接圧ローラとフィルムロールとの摩擦帯電量が増大し、フィルムロール端部近傍で帯電欠点や、帯電欠点を起点としてシワが発生するのだと考えられる。
そこで、この知見をもとに鋭意検討した結果、下式(1)を満たすコアを用いることで、コアの収縮量が低減してフィルムロールのヘリ高形状が緩和され、前記したフィルム層間の空気を排除するフィルムの巻き取りを行っても、フィルムロール端部にシワや帯電欠点の無い良好な巻姿のフィルムロールが得られることを見出した。
Figure 2020158277
ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
式(1)の左辺は、コアの断面形状と周方向曲げ弾性率の因子から表現されており、コアの厚みが大きいほど、また周方向曲げ弾性率が大きいほど式(1)の左辺は小さくなり、コアの収縮変形量が低減されることを意味する。式(1)を満たすことで、前述した手法を用いてフィルム層間の空気を排除し、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるよう巻き取った場合でも、ヘリ高量はフィルムロール端部にシワや帯電欠点の発生しないレベルである100μm以下まで抑制される。
図3に、前記(1)式を充足するコアを用いた際の接圧ローラとフィルムロールの接触状態の例を示した断面図を示す。式(1)を満たすことで図3のようにコアの収縮量が低減されているので、ヘリ高量が抑制される。その結果、フィルムロールの幅方向に対して部まで均一に押圧することで、全幅にわたって空気排除が可能となり、巻き姿の良好なフィルムロールが得られるようになる。
さらに好ましくは、式(2)を満たすコアを用いることで、より一層コアの収縮量の低減が可能となり、より長尺なフィルムをシワや欠点無く巻き取ることが可能となる。
Figure 2020158277
ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
コアの周方向曲げ弾性率は、50GPa以上であることが好ましい。コアの周方向曲げ弾性率が50GPa以上であると、一般的にフィルムの巻き取りに用いられる3、6、8、9インチコアを例にとると、3インチコアの場合は肉厚が1.2mm以上、6インチコアの場合は肉厚が4.8mm以上、8インチコアの場合は肉厚が8.8mm以上、9インチコアの場合は肉厚が11.2mm以上であれば、式(1)を満たし、各コアにおいて収縮量が100μm以下となる場合が多い。また、さらに好ましくはコアの周方向曲げ弾性率は70GPa以上である。コアの周方向曲げ弾性率は70GPa以上であると、さらにコアの肉厚を薄くすることが可能となるためコアの材料費を抑えることが可能となり、また軽量化することでハンドリング性能が向上する。
コア周方向の曲げ弾性率の測定方法は実施例の項において説明するとおりである。
コアの材質は特に限定されないが、一般的に紙、プラスチック、鋼、アルミニウム、繊維強化プラスチックといった材料が用いられている。このなかで、フィルムの巻き取りによる圧縮応力に耐え得る強度を有するために、鋼、アルミニウム、繊維強化プラスチック材料が好ましく、さらに、強度を有しつつも軽量でハンドリングを用意とすることができる繊維強化プラスチック材料を用いることが好ましい。
次に、本発明のフィルムロールについて具体的に例を挙げつつ説明する。しかし、本発明は、かかる例に限定して解釈されるものではない。
本発明のフィルムロールは、本発明のフィルムロールの製造方法によって製造することができる。前述のとおり、フィルム層間の空気を排除しながら巻き取り、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるよう巻き取ることで、フィルムロールの幅方向に対してランダムに発生するシワや帯電欠点が防止されたフィルムロールを得ることが可能となる。さらに、前記式(1)を満たすコアを用いることで、コアの収縮を抑制し、フィルムロール端部でのシワや帯電欠点も抑制し、巻き姿の良好なフィルムロールを得ることが可能となる。
本発明者らが実際に式(1)を満たすコアを用い、かつフィルム層間の空気を排除しながらフィルムを巻き取った結果、シワや帯電欠点の無い良好な巻き姿のフィルムロールを得ることができた。そこで、コアの収縮量とフィルムロールのヘリ高量の確認として、式(1)を満たすコアと、式(1)を満たさないコアを用意し、同じ条件でフィルムの巻き取りテストを実施した。その結果、式(1)を満たすコアは、式(1)を満たさないコアと比べてコアの収縮量は低減し、ヘリ高形状も緩和されていたが、コアの収縮量の抑制効果と比較してヘリ高の抑制効果が低いことが判明した。
そこで、上記結果をふまえて更なる調査を実施した。その結果、フィルムロールの原反形状には、ヘリ高の主要因であるコアの収縮量に加えて、フィルム端部の切断面の形状や、切断面からの吸湿膨張による厚みの変化や、フィルム製膜時の厚みムラや、コアの円筒度の影響なども含まれていることが判明した。つまり、原反形状を測定するだけでは正確なコアの収縮量は分からないことが新たに明らかとなった。
そこで、フィルムロールにおけるコア部の収縮量を調査した結果、フィルムが巻回されていないコア部のコア外径の最大値と最小値との差が100μm以下であると、シワや帯電欠点無く巻き姿良好なフィルムロールが得られる程度までヘリ高が抑制されることが判明した。一方で、コア部のコア外径の最大値と最小値との差が100μm以上であると、ヘリ高の抑制効果が低く、帯電欠点の防止効果は得られない。
また、本発明のフィルムロールにおいて、巻回されているフィルムの厚みは特に限定されないが、フィルム厚みが10μm以下であることが好ましい。通常、フィルムの厚みが薄いほどフィルムの巻き長が長く、フィルムの圧縮応力が大きくなるため本発明の効果は極めて大きなものとなる。すなわち、フィルムが薄膜であるほど、幅方向に対するによる均一な接圧分布を得ることが難しくなるため、空気排除効果が低下しやすくなるところ、本発明のフィルムの製造方法を用いると均一な接圧分布を実現可能であるため、本発明の効果は一層大きくなることとなる場合が多い。より好ましくは、フィルムの厚みは5.0μm以下であり、本発明は係る薄いフィルムであっても、幅方向に対して均一な接圧分布を得ることができるため、従来の技術と較べて本発明の効果はいっそう大きなものとなりうる。
また、本発明のフィルムロールに巻回されているフィルムの長手方向の長さも特に限定されないが、8000m以上であることが好ましい。フィルムの長手方向の長さが8000m以上であると、フィルムロールの内側方向に向かっての圧縮応力が大きくなるためコアの収縮量が増大し、ヘリ高が発生し易くなるために本発明の効果が得られる場合が多い。
また、長尺なフィルムロールであるほど巻回数(フィルムの積層数)が多くなり、フィルムロール中に含まれる空気量は増加することとなる。このため、長尺なフィルムほど巻き締りに伴ってのシワや帯電欠点が発生し易く、また、巻姿が悪化する場合が多い。より好ましくは、フィルムの巻き長が10000m以上であると、フィルムの圧縮応力がさらに増大するため、本発明の効果はいっそう大きなものとなる場合が多くなる。
また、本発明のフィルムロールに巻回されているフィルムの表面の最大高さ粗さRzは特に限定されないが、表裏両面において100nm以下であることが好ましい。フィルムの表面の最大高さ粗さRzが100nm以下であれば、フィルムロールに積層されたフィルム同士の接触面積が大きく、巻き締り発生時に摩擦帯電が発生しやすいため、本発明の効果が発揮されやすい場合が多い。ここで、フィルムの表面の最大高さ粗さRzが30nm以下であると、より本発明の効果が高まる場合が多く、より好ましい。
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、各種評価、測定方法を以下に示す。
[コア周方向曲げ弾性率の測定方法]
コアからサンプリングして測定する。また、式(3)から理解されるとおり、Eはコアの形状(内径、外径や長さ)に影響されないので、コアと同質の材料を用いてテストピースを作製して求めることができる。
測定は、万能試験機を用い、半径方向にテストピースの弾性変形領域内で荷重を負荷させたときのたわみを測定し、以下の式(3)で求められる。
なお、各実施例および比較例にては、コアと同質の材料を用いた測定用のリング状テストピース(外径167mm、内径150mm、幅50mm)を製作し、測定を行った。
Figure 2020158277
ここで、E[Pa]は周方向曲げ弾性率、P[N]は荷重、r[m]は測定試料(テストピース)の中心半径、δ[m]はたわみ、I[m]は断面2次モーメント(B×t/12。なお、Bはテストピース長さ[m]、tはテストピースの肉厚[m])をあらわす(図4を参照)。なお、中心半径は[外径+内径]/4で求められる。
「フィルム硬度の測定方法」
フィルムの巻き取り後、25〜28時間経過したフィルムロールに対して、JIS K7312に準じて、高分子計器(株)製のアスカーゴム硬度計C型を用い、フィルムロールの幅方向に10点(ロール端部の10mmずつを除いた全幅を10等分して、各等分の中央部を測定する)測定し、平均した。
[コア外径の測定方法]
(株)ファーステックのパイテープを用いて、フィルム巻回部両端部から20mmの位置のコア外径を測定し、平均した。
[コア外径の最大値の測定方法]
フィルムの巻かれていない箇所のコア外径を、(株)ファーステックのパイテープを用いてフィルム端部からコア端部まで20mmごとに測定した値の最大値を示す。
[コア外径の最小値の測定方法]
フィルムの巻かれていない箇所のコア外径を、(株)ファーステックのパイテープを用いてフィルム端部からコア端部まで20mmごとに測定した値の最小値を示す。
[最大高さ粗さRz]
触針法の高精細微細形状測定器を用いてJIS B0601(1994年)に準拠して、下記条件にてポリエステルフィルムの最大粗さ(Rz)を測定した。
測定装置:3次元微細形状測定器(小坂研究所製 型式ET−4000A)
解析機器:3次元表面粗さ解析システム(小坂研究所製 型式TDA−31)
触針:先端半径0.5μmR、径2μm、ダイヤモンド製
針圧:100μN
測定方向・算出法:フィルム長手方向、フィルム幅方向を各々10回測定する。その20回の測定の平均値を表面粗さとした。なお、表裏両面について測定し、表1には値が大きい方の値を示した。
[帯電欠点の評価方法]
フィルムロールを各実施例、比較例の条件で100本ずつ巻きとり、帯電欠点の発生状況を確認した。帯電欠点の有無は、帯電発生箇所にはトナーが付着する現象を利用し、フィルムにコピー用のトナーを振りかけて目視にて検査し、評価した。巻き上がったフィルムロールの帯電欠点が100本中3本以下確認された場合は「○」、帯電欠点が100本中4本以上9本以下確認された場合は「△」、帯電欠点が100本中10本以上確認された場合は「×」と判定した。なお、「△」または「○」が合格であり、「△」は良、「○」は優秀である。
[シワの評価方法]
フィルムロールを各実施例、比較例の条件で100本ずつ巻きとり、シワの発生状況を確認した。巻き上がったフィルムロールのシワが100本中3本以下確認された場合は「○」、シワが100本中4本以上9本以下確認された場合は「△」、シワが100本中10本以上確認された場合は「×」と判定した。なお、「△」または「○」が合格であり、「△」は良、「○」は優秀である。
[ヘリ高の測定方法]
フィルムロールのロール径の幅方向の変位(原反形状)を、原反形状測定器(キタノ企画社製)を用い、フィルムロールの幅方向最端部から100mmまでの範囲での最大高さと、幅方向最端部から200mm内側の部分の高さの差をフィルムロールのへり高量とした。ダイヤルゲージ((株)ミツトヨ製)をフィルムロール上に平衡におくことが出来かつ平行にスライド出来る台座に取り付け、まず最端部から200mm内側の部分にダイヤルゲージの触点を当て、目盛りを0に調整した。次に最端部から100mm内側の部分から触点をフィルムロールに接触させたまま最端部まで移動し、値が最大となる点の目盛りを読みとった。任意の位置で片側5ヶ所×両端部の計10カ所を測定し、10箇所の平均値をフィルムロールのへり高量とした。
フィルムロールを各実施例、比較例の条件で100本ずつ巻きとり、ヘリ高の発生状況を調査した。
巻き上がったフィルムロールのヘリ高量が100μm超であるものが100本中、3本以下で確認された場合は「○」、ヘリ高量が100μm超であるものが100本中4本以上9本以下確認された場合は「△」、ヘリ高量が100μm超であるものが100本中10本以上確認された場合は「×」と判定した。なお、「△」または「○」が合格であり、「△」は良、「○」は優秀である。
[実施例1]
平均厚み12μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きい方の側の面のRzが110nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、周方向曲げ弾性率30GPa、外半径83.5mm、内半径75mmの繊維強化樹脂製コアを用いて、巻き取り速度200m/min、張力100N/m、面圧150N/mとして、幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は49、コア外径の最大値と最小値の差は90μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は93度であった。
[実施例2]
周方向曲げ弾性率45GPa、外半径83.5mm、内半径75mmの繊維強化樹脂製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は60μm、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は92度であった。
[実施例3]
周方向曲げ弾性率55GPa、外半径83.5mm、内半径75mmの繊維強化樹脂製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は49μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は91度であった。
[実施例4]
周方向曲げ弾性率73GPa、外半径83.5mm、内半径75mmのアルミニウム製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は20、コア外径の最大値と最小値の差は37μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間経過した時のフィルム部の硬度は93度であった。
[実施例5]
周方向曲げ弾性率73GPa、外半径80.0mm、内半径75mmのアルミニウム製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は61μm、フィルムの巻き取り終了時から28時間経過した時のフィルム部の硬度は93度であった。
[実施例6]
平均厚み8.0μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きい方の側の面のRzが110nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、巻き取り速度200m/min、張力150N/m、面圧150N/mとして、幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は90μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は94度であった。
[実施例7]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例6で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例6と同じ巻き取り条件(同じ巻き取り条件とは、速度、張力、面圧が同じという意味である。以下同じ)で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は74μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は95度であった。
[実施例8]
平均厚み4.0μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きいの側の面のRzが110nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、巻き取り速度200m/min、張力200N/m、面圧150N/mとして、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は98μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度であった。
[実施例9]
実施例4で用いたコアと同じコアを用いて、実施例8で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例8と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は20、コア外径の最大値と最小値の差は74μm、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度であった。
[実施例10]
平均厚み12μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きい方の側の面のRzが90nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例6と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は90μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は96度であった。
[実施例11]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例10で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例6と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は74μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は94度であった。
[実施例12]
平均厚み12μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きい方の側の面のRzが30nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例8と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は97μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は98度であった。
[実施例13]
実施例4で用いたコアと同じコアを用いて、実施例12で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例8と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は20、コア外径の最大値と最小値の差は75μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度であった。
[実施例14]
実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを用い、実施例6と同じ巻き取り条件で長手方向の長さ10000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は98μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は96度であった。
[実施例15]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを用い、実施例6と同じ巻き取り条件で長手方向の長さ10000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は81μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は95度であった。
[実施例16]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを用い、実施例8と同じ巻き取り条件で長手方向の長さ15000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は98μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度であった。
[実施例17]
実施例4で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1と同じフィルムを、実施例8と同じ巻き取り条件で長手方向の長さ15000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は20、コア外径の最大値と最小値の差は85μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は98度であった。
[実施例18]
平均厚み4.0μm、フィルムの両表面の内、最大高さ粗さRzが大きい方の側の面のRzが30nmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、実施例4で用いたコアと同じコアを用いて、実施例8の条件と同じ巻き取り条件で長手方向の長さ15000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は20、コア外径の最大値と最小値の差は85μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は98度であった。
[比較例1]
周方向曲げ弾性率2.0GPa、外半径83.5mm、内半径75mmの紙製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は739、コア外径の最大値と最小値の差は1353μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は92度であった。
[比較例2]
周方向曲げ弾性率2.5GPa、外半径83.5mm、内半径75mmのPVC樹脂製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は591、コア外径の最大値と最小値の差は1082μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は93度であった。
[比較例3]
周方向曲げ弾性率8.0GPa、外半径83.5mm、内半径75mmのABS樹脂製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は185、コア外径の最大値と最小値の差は338μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は93度であった。
[比較例4]
周方向曲げ弾性率15GPa、外半径83.5mm、内半径75mmの繊維強化樹脂製コアを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。式(1)の左辺において求められた値は99、コア外径の最大値と最小値の差は180μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間経過した時のフィルム部の硬度は92度であった。
[比較例5]
実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを、巻き取り速度200m/min、張力90N/m、面圧150N/mとして、幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は44μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は85度であった。
[比較例6]
実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例6で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例1と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は60μm、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は87度であった。
[比較例7]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例8で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例6と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は74μm、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は86度であった。
[比較例8]
実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例10で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例1と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は60μm、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は88度であった。
[比較例9]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例12で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例6と同じ巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ7000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は73μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は87度であった。
[比較例10]
実施例2で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例1で用いた巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ10000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は33、コア外径の最大値と最小値の差は66μm、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は88度であった。
[比較例11]
実施例3で用いたコアと同じコアを用いて、実施例1で用いたフィルムと同じフィルムを、実施例6で用いた巻き取り条件で幅1000mm、長手方向の長さ15000mのフィルムロールに巻き上げた。式(1)の左辺において求められた値は27、コア外径の最大値と最小値の差は84μm、フィルムの巻き取り終了時から28時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は86度であった。
実施例、比較例の各結果を表1に示す。
比較例1〜4では、いずれも式(1)を満たさない紙、樹脂、繊維強化樹脂からなるコアを用いた。その結果、各比較例においてコア外径の最大値と最小値の差は100μm以上となり、100本全てのフィルムロールで巻き取り最中や巻取り終了後にシワが発生し、巻き姿は不良であった。
一方、実施例1では、比較例1〜4と同じフィルムを同じ条件で巻いたにも関わらず、帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは5本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本であった。シワの評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例2では、実施例1よりも周方向曲げ弾性率の高いコアを用いた。その結果、実施例1よりもコア外径の最大値と最小値の差は低下し、60μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本であり、巻き姿は良好であった。
実施例3では、実施例2よりも周方向曲げ弾性率の高いコアを用いた。その結果、実施例1よりもコア外径の最大値と最小値の差は低下し、49μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは1本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本であり、巻き姿は良好であった。
実施例4では、実施例3よりもさらに周方向曲げ弾性率の高いコアを用いた。その結果、実施例2よりもコア外径の最大値と最小値の差は低下し、37μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中0本、シワが発生したものは0本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本であり、巻き姿は非常に良好であった。
実施例5では、実施例4と同じ周方向曲げ弾性率を有し、肉厚が薄いコアを用いた。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本であり、巻き姿は良好であった。また、軽量化することで、ハンドリング性が向上した。
比較例5では、実施例1と比較して巻き取り張力を下げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は85度となった。フィルム層間の空気排除は不十分であり、帯電欠点が発生したものは100本中35本、シワが発生したものは12本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本となり、巻き姿は不良であった。
比較例6では、実施例2と比較して薄膜なフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は87度となった。フィルム層間の空気排除は不十分であり、帯電欠点が発生したものは100本中15本、シワが発生したものは25本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は不良であった。
実施例6では、比較例6においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は94度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で、張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は90μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中4本、シワが発生したものは3本、ヘリ高量が100μm超であるものが5本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例7では、実施例6においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、実施例6よりも周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コア外径の最大値と最小値の差は74μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は良好であった。
比較例7では、実施例7と比較してさらに薄膜なフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は86度となった。フィルム層間の空気排除は不十分であり、帯電欠点が発生したものは100本中13本、シワが発生したものは24本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は不良であった。
実施例8では、比較例7においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で、実施例6と同じく張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は98μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中8本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが9本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例9では、実施例8においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、実施例8よりも周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コアの収縮量は低減し、コア外径の最大値と最小値の差は74μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは0本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は良好であった。
比較例8では、実施例2と比較して平滑なフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルム層間の空気排除が不十分となり、フィルムの巻き取り終了時から26時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は88度となった。フィルム層間の空気排除は不十分であり、帯電欠点が発生したものは100本中26本、シワが発生したものは16本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本となり、巻き姿は不良であった。
実施例10では、比較例8においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、比較例8よりも巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は96度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で、実施例6や実施例8と同じく張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は90μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中7本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが7本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例11では、実施例10においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、さらに周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コア外径の最大値と最小値の差は74μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中3本、シワが発生したものは1本、ヘリ高量が100μm超であるものが3本となり、巻き姿は良好であった。
比較例9では、実施例11と比較してさらに最大高さ粗さの小さなフィルムを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は87度となった。フィルム層間の空気排除は不十分であり、帯電欠点が発生したものは100本中32本、シワが発生したものは27本、ヘリ高量が100μm超であるものが1本となり、巻き姿は不良であった。
実施例12は、比較例9においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は98度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で実施例6、実施例8、実施例10と同じく張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は97μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中8本、シワが発生したものは3本、ヘリ高量が100μm超であるものが8本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例13では、実施例12においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、さらに周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コアの収縮量は低減し、コア外径の最大値と最小値の差は75μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中0本、シワが発生したものは1本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本となり、巻き姿は非常に良好であった。
比較例10では、実施例2と比較して長尺なフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルム層間の空気排除が不十分となり、フィルムの巻き取り終了時から25時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は88度となった。帯電欠点が発生したものは100本中10本、シワが発生したものは13本、ヘリ高量が100μm超であるものが0本となり、巻き姿は不良であった。
実施例14では、比較例10においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は96度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で実施例6、実施例8、実施例10、実施例12と同じく張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は98μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中8本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが8本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例15では、実施例14においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、さらに周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コア外径の最大値と最小値の差は81μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中1本、シワが発生したものは1本、ヘリ高量が100μm超であるものが1本となり、巻き姿は良好であった。
比較例11では、実施例15と比較してさらに長尺なフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルム層間の空気排除が不十分となり、フィルムの巻き取り終了時から28時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は86度となった。帯電欠点が発生したものは100本中18本、シワが発生したものは29本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は不良であった。
実施例16は、実施例15においてフィルム層間の空気排除が不十分であったことをふまえ、巻き取り張力を上げてフィルムロールを巻き取った。その結果、フィルムの巻き取り終了時から27時間を経過した後の巻回されたフィルム部の硬度は97度となり、フィルム層間の空気排除は十分となった。一方で実施例6、実施例8、実施例10、実施例12と同じく張力を上げたことでコアの収縮量は増加し、コア外径の最大値と最小値の差は98μmとなった。帯電欠点が発生したものは100本中6本、シワが発生したものは1本、ヘリ高量が100μm超であるものが8本となり、帯電とヘリ高の評価結果については△となったが巻き姿は概ね良好であった。
実施例17では、実施例16においてコアの収縮量が増加したことをふまえ、さらに周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて巻き取った。その結果、コアの収縮量は低減し、コア外径の最大値と最小値の差は85μmまで低減された。帯電欠点が発生したものは100本中2本、シワが発生したものは0本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は良好であった。
実施例18では、周方向曲げ弾性率の高いコアを用いて、薄膜、平滑フィルムに対して高張力条件を適用し、長尺に巻き取った。高張力条件でフィルム層間の空気の空気を排除しつつ、周方向曲げ弾性率の高いコアを用いることでコアの収縮量が低減された。帯電欠点が発生したものは100本中3本、シワが発生したものは2本、ヘリ高量が100μm超であるものが2本となり、巻き姿は良好であった。
Figure 2020158277
本発明は、フィルムをロール状に巻き取るフィルムロールの製造方法および巻き取ったフィルムロールに限らず、シート状物のハンドリング技術にも応用できるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1、11:コア
2、10:フィルム
3:芯
4:ゴム層
5:接圧ローラ
6:原反
7:ガイドローラ
8:下刃ローラ
9:上刃
12:フィルムロール
13:除電器
14:巻き出し部
15:搬送部
16:スリット部
17:巻き取り部
18:テストピース
A:搬送方向

Claims (10)

  1. 下式(1)を充足する円筒状コアを用い、かつ、フィルムの巻き取り終了時から24時間を経過した後の任意の時間において巻回されたフィルム部の硬度が90度以上となるように巻くことを特徴とする、フィルムロールの製造方法。
    Figure 2020158277
    ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
  2. 前記コアの周方向曲げ弾性率が50GPa以上である、請求項1に記載のフィルムロールの製造方法。
  3. 前記コアの材質が繊維強化プラスチックである、請求項1または2に記載のフィルムロールの製造方法。
  4. 円筒状コアにフィルムが巻かれたフィルムロールであって、フィルムが巻回されていないコア部のコア外径の最大値と最小値との差が100μm以下であり、巻回されたフィルム部の硬度が90度以上である、フィルムロール。
  5. 前記コアは下記式(1)を満たす、請求項4に記載のフィルムロール。
    Figure 2020158277
    ここで、E[GPa]はコア周方向曲げ弾性率、a[mm]はコア内半径、b[mm]はコア外半径をあらわす。
  6. 前記コアの周方向曲げ弾性率が50GPa以上である、請求項4または5に記載のフィルムロール。
  7. 前記コアの材質が繊維強化プラスチックである、請求項4〜6の何れかに記載のフィルムロール。
  8. 前記フィルムの厚みが10μm以下である、請求項4〜7の何れかに記載のフィルムロール。
  9. 前記フィルムの長手方向の長さが8000m以上である、請求項4〜8の何れかに記載のフィルムロール。
  10. 前記フィルムの表面の最大高さ粗さRzが表裏両面において100nm以下である、請求項4〜9の何れかに記載のフィルムロール。
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