JP2020157650A - 塗装金属板およびその製造方法 - Google Patents

塗装金属板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020157650A
JP2020157650A JP2019060792A JP2019060792A JP2020157650A JP 2020157650 A JP2020157650 A JP 2020157650A JP 2019060792 A JP2019060792 A JP 2019060792A JP 2019060792 A JP2019060792 A JP 2019060792A JP 2020157650 A JP2020157650 A JP 2020157650A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating film
metal plate
resin
less
undercoat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019060792A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7211202B2 (ja
Inventor
高岡 真司
Shinji Takaoka
真司 高岡
泰載 藤本
Yasunori Fujimoto
泰載 藤本
裕樹 山口
Hiroki Yamaguchi
裕樹 山口
尾和 克美
Katsumi Owa
尾和  克美
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Nisshin Co Ltd filed Critical Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority to JP2019060792A priority Critical patent/JP7211202B2/ja
Publication of JP2020157650A publication Critical patent/JP2020157650A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7211202B2 publication Critical patent/JP7211202B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

【課題】自己修復性を有し、ブロッキングの生じにくい塗装金属板の提供。【解決手段】金属板と、樹脂および10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗膜と、数平均分子量が3000〜8000である樹脂を含む上塗り塗膜がこの順に積層された、塗装金属板。【選択図】なし

Description

本発明は、塗装金属板およびその製造方法に関する。
塗装金属板の塗膜の耐傷付き性を向上させる手段として、塗膜の硬度を高めることがよく知られている(いわゆるハードコート)。しかしながら、ハードコートの塗膜は、傷が付きにくいものの、一度傷が付いてしまうと修復することができない。また、ハードコートの塗膜は、加工性に劣るため、プレコート金属板に適用することが困難である。
このような問題を解決する手段として、塗膜に自己修復性を付与することが提案されている。たとえば、 特許文献1には、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリイソシアネートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを用いて、自己修復性を有する塗膜を金属板の表面に形成することが記載されている。
特開2004−35599号公報
特許文献1には、表面に自己修復性を有する塗膜を形成した塗装金属板が記載されている。
しかし、本発明者らの知見によると、特許文献1に記載の塗膜は反発弾性が高く、コイル状に巻き付けたときなどに、隣り合う塗膜同士がくっついてしまう、いわゆるブロッキングが生じやすい。
上記の事情に鑑み、本発明は、自己修復性を有する塗装金属板であって、ブロッキングを生じにくくすることができる塗装金属板、およびその製造方法を提供することをその目的とする。
上記課題を解決するための、本発明の一の実施形態は、金属板と、樹脂および10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗膜と、数平均分子量が3000以上8000以下である樹脂を含む上塗り塗膜と、がこの順に積層された、塗装金属板に関する。
また、上記課題を解決するための、本発明の他の実施形態は、金属板を用意する工程と、前記金属板の表面に、水分散性樹脂の水分散体および10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗料を塗布および感想させて、下塗り塗膜を形成する工程と、前記下塗り塗膜の表面に接して、数平均分子量が3000以上8000以下である樹脂を含む上塗り塗膜を形成する工程と、を有する、塗装金属板の製造方法に関する。
本発明によれば、自己修復性を有する塗装金属板であって、ブロッキングを生じにくくすることができる塗装金属板、およびその製造方法が提供される。
1.塗装金属板
本発明の第一の実施形態は、金属板の表面に下塗り塗膜および上塗り塗膜が形成された塗装金属板に関する。
1−1.金属板
上記金属板は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、公知の金属板から選ぶことができる。上記金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板および銅板が含まれる。
上記金属板が鋼板であるとき、上記鋼板は、低炭素鋼、中炭素鋼および高炭素鋼などを含む炭素鋼でもよいし、Mn、Cr、Si、Niなどを含有する合金鋼でもよい。また、上記鋼板は、Alキルド鋼などを含むキルド鋼でもよいし、リムド鋼でもよい。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼および低炭素Nb添加鋼などを含む深絞り用鋼板が好ましい。また、P、Si、Mnなどの量を特定の値に調整した高強度鋼板を用いてもよい。上記鋼板の板厚は、特に限定されないが、0.2〜2.0mmの範囲内が好ましい。
上記金属板は、その表面にめっき層を有していてもよい。上記めっき層は、上記金属板を基材金属板として、公知のめっき処理により形成されためっき層であればよい。上記めっきは、溶融めっきでも蒸着めっきでもよい。めっきの種類は、特に限定されず、Zn系めっき(Znめっき、Zn−Alめっき、およびZn−Al−Mgめっきなど)、Al系めっき、ならびにNi系めっきなどを使用することができる。これらのうち、Zn系めっきおよびAl系めっきが好ましく、Zn系めっきがより好ましい。めっきの付着量は、特に限定されないが、90〜190g/mの範囲内が好ましい。
上記金属板は、化成処理層を有してもよい。上記化成処理層は、下塗り塗膜の密着性および塗装金属板の耐食性を向上させるために、上記金属板と下塗り層との間に配置される。化成処理層は、金属板の表面に接して形成された層であり、塗装前処理によって金属板の表面に付着した組成物で構成される。化成処理層の例には、非クロメート系皮膜およびクロメート系皮膜が含まれる。いずれも、防錆処理による皮膜である。
上記非クロメート系皮膜は、耐食性を高める観点および塗装金属板の製造および使用における環境への負荷を軽減する観点から好ましく、上記クロメート系皮膜は、耐食性を高める観点から好ましい。
上記非クロメート系皮膜の例には、Ti−Mo複合皮膜、フルオロアシッド系皮膜、リン酸塩皮膜、樹脂系皮膜、樹脂およびシランカップリング剤系皮膜、シリカ系皮膜、シリカおよびシランカップリング剤系皮膜、ジルコニウム系皮膜、ならびに、ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜などが含まれる。
上記非クロメート系皮膜の付着量は、その種類に応じて適宜に決めることができる。たとえば、上記Ti−Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算で10mg/m以上500mg/m以下であることが好ましく、上記フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算または総金属元素換算で3mg/m以上100mg/m以下であることが好ましく、上記リン酸塩皮膜の付着量は、リン元素換算で0.1mg/m以上5g/m以下であることが好ましく、上記樹脂系皮膜の付着量は、樹脂換算で1mg/m以上500mg/m以下であることが好ましく、上記樹脂およびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1mg/m以上50mg/m以下であることが好ましく、上記シリカ系皮膜の付着量は、Si換算で0.1mg/m以上200mg/m以下であることが好ましく、上記シリカおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1mg/m以上200mg/m以下であることが好ましく、上記ジルコニウム系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1mg/m以上100mg/m以下であることが好ましく、上記ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1mg/m以上100mg/m以下であることが好ましい。
上記クロメート系皮膜の例には、塗布型クロメート処理皮膜、およびリン酸−クロム酸系処理クロメート防錆処理皮膜などが含まれる。これらのクロメート系皮膜の付着量は、いずれも、クロム元素換算で20mg/m以上80mg/m以下であることが好ましい。
1−2.下塗り塗膜
上記下塗り塗膜は、上記金属板の表面に配置された、樹脂および骨材を含む塗膜である。上記下塗り塗膜は、上記金属板の表面に接して配置されてもよいし、上記金属板が有するめっき層の表面に接して配置されてもよいし、上記金属板が有する化成処理層の表面に接して配置されてもよい。
本実施形態において、上記下塗り塗膜は、10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む。
上記骨材は、弾性が高いという特性を有する。そのため、上記骨材は、金型や工具などが塗装金属板に当たったときに凹むことで、塗装金属板の表面に印加された応力を吸収して緩和する、緩衝材としても作用する。さらには、上記骨材は凹んだ後に経時で形状を回復ことにより、塗装金属板の表面に形成された傷(凹み)を経時で回復させ、塗装金属板の自己修復性をより高めることもできる。上記作用により、上記骨材は、上塗り塗膜の反発弾性をさほど高めずに自己修復性を高めることができるため、塗装金属板の耐ブロッキング性を低下させずに自己修復性を高めることができる。
上記観点から、上記骨材の10%圧縮後の復元率は、5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。なお、上記骨材の10%圧縮後の復元率の上限値は特に規定されないものの、上塗り塗膜との密着性をより高める観点からは、8%以下であることが好ましい。
上記10%圧縮後の復元率は、公知の圧縮試験機を用いて測定された値とすることができる。たとえば、上記試験機が有する加圧板の上に試料(骨材)を散布し、1粒子ずつ、所定の負荷をかけた初期状態から負荷を大きくしていって、当該粒子を圧縮していく。その後、粒子径に対して10%変位したところで0.1mNまで負荷を除去(減少)させ、以下の式により、復元率(%)を算出することができる。
復元率(%)=(10%変位時の変位量(μm)−0.1mNでの変位量(μm))
/粒子径(μm)×100
上記骨材の例には、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリアミドなどの樹脂、ならびに、ガラス、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、およびアルミナ・シリカなどの無機化合物からなる粒子が含まれる。これらの粒子は10%変位時の強度が10Mpa以上であることが好ましく、また、有機骨材は架橋されていることが好ましい。10%変位時の強度が10Mpa未満の場合、復元する力も弱いため、表面疵を復元しにくい。これらの粒子の10%変位時の強度の上限は特に限定されないものの、500MPa以下であることが好ましい。
これらの粒子の形状は、略球形であることが好ましいが、円柱形状や円板形状などの他の形状であってもよい。なお、上記骨材は、微粒子の凝集体や多孔質構造の粒子ではなく、単一の粒子からなる一次粒子であることが好ましい。
上記骨材の平均粒径は、2μm以上10μm以下であることが好ましい。上記平均粒径が2μm以上であると、塗装金属板の自己修復性および下塗り塗膜と上塗り塗膜との密着性が高まりやすい。上記平均粒径が10μm以下であると、金属板への下塗り塗膜の密着性が低下しにくい。上記観点から、上記骨材の平均粒径は、3μm以上9μm以下であることがより好ましく、4μm以上7μm以下であることがさらに好ましい。
上記骨材の平均粒径は、塗装金属板を切断して切断面を研摩し、当該切断面を電子顕微鏡で観察して得られた下塗り塗膜の断面像に含まれる10個の骨材の平均粒子サイズ(長径と短径との平均値)を加算平均して得られる値とすることができる。
また、上記下塗り塗膜は、その全体積に対して、1体積%以上10体積%以下の量の上記骨材を含むことが好ましい。上記骨材の量が1体積%以上であると、塗装金属板の自己修復性および下塗り塗膜と上塗り塗膜との密着性が高まりやすい。上記骨材の量が10体積%以下であると、金属板への下塗り塗膜の密着性が低下しにくい。上記観点から、上記骨材の量は、2体積%以上8体積%以下であることがより好ましく、3体積%以上7体積%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態において、上記下塗り塗膜は、100%モジュラスが5N/mm以下である材料からなることが好ましい。100%モジュラスが5N/mm以下である材料は、下塗り塗膜の材料として従来用いられていた材料に比べて柔軟性が高い。そのため、このような材料からなる下塗り塗膜そのものも、金型や工具などが塗装金属板に当たったときに凹むことで、塗装金属板の表面に印加された応力を吸収して緩和する、緩衝材としても作用する。上記作用により、100%モジュラスが5N/mm以下である材料からなる下塗り塗膜は、上塗り塗膜の反発弾性をさほど高めずに塗装金属板の自己修復性を高めることができる。
上記材料の100%モジュラスの値の下限値は特に限定されないものの、下塗り塗膜の密着性を十分に高める観点からは、上記100%モジュラスは1N/mm以上であることが好ましい。上記観点から、上記下塗り塗膜は、100%モジュラスが1N/mm以上5N/mm以下である材料からなることが好ましく、2N/mm以上5N/mm以下である材料からなることがより好ましい。
なお、上記100%モジュラスは、20mm×100mm×200μmのサイズとした上記下塗り塗膜の材料を、公知のオートグラフを用い、引張試験時のチャック間距離を30mm、引張速度を5mm/min.として測定した、100%変位時の抗張力とすることができる。
上記下塗り塗膜を構成する材料の100%モジュラスは、上記下塗り塗膜中の骨材および樹脂の種類および含有量や、他の添加物の種類およびその含有量などによって変化する。
上記下塗り塗膜は、ベース樹脂としての樹脂を含む。上記樹脂の種類は、特に限定されず、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂などとすることができる。上記下塗り塗膜の弾性をより高めて塗装金属板の自己修復性をより高め、かつ上記下塗り塗膜の加工性をもより高める観点からは、上記樹脂は、水分散性樹脂であることが好ましい。
さらに下塗り塗膜の密着性をより高める観点からは、上記樹脂は、ウレタン系樹脂であることがより好ましく、密着性、自己修復性および加工性をいずれも高める観点からは、上記樹脂は水分散性のウレタン系樹脂であることが好ましい。上記水分散性のウレタン系樹脂は、親水性基としてアニオン性基を有するウレタン系樹脂、親水性基としてカチオン性基を有するウレタン系樹脂、または非イオン性の親水性基を有するウレタン樹脂であることがより好ましい。これらのウレタン系樹脂は、水性媒体中で、粒子状態で分散してエマルションを形成し得る樹脂である。
なお、上記アニオン性基を有するウレタン系樹脂は、アニオン性基よりも少ない量のカチオン性基をさらに有してもよく、上記カチオン性基を有するウレタン系樹脂は、カチオン性基よりも少ない量のアニオン性基をさらに有してもよい。ただし、アニオン性基とカチオン性基の両方を有するウレタン系樹脂は安定性が低い傾向があるため、アニオン性基を有するウレタン系樹脂はカチオン性基を有しないことが好ましく、カチオン性基を有するウレタン系樹脂はアニオン性基を有しないことが好ましい。
上記アニオン性基の例には、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基、およびリン酸基などが含まれる。上記カチオン性基の例には、3級アミノ基、3級アミノ基の一部または全部を酸性化合物(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸、およびリン酸など)で中和したもの、3級アミノ基の一部または全部を4級化剤(ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、およびエチルクロライドなど)で4級化したもの、ならびに第4級アンモニウム塩基などが含まれる。上記非イオン性の親水基の例には、水酸基などが含まれる。
上記アニオン性基またはカチオン性基を有するウレタン樹脂は、たとえばポリイソシアネート成分と、親水性基としてアニオン性基またはカチオン性基を有するポリオールを含むポリオ−ル成分と、を反応させて得られる重合体であり得る。
上記ポリイソシアネート成分の例には、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族環式構造を有するポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ならびに、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートが含まれる。これらのポリイソシアネート成分は、一種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アニオン性基を有するポリオールの例には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、および2,2−ジメチロール吉草酸などのカルボキシル基を有するポリオール、ならびに、5−スルホイソフタル酸およびスルホテレフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコーおよび、プロピレングリコールなどの低分子ポリオールと、を反応させて得られるスルホン酸基を有するポリエステルポリオールなどが含まれる。上記カチオン性基を有するポリオールの例には、3級アミノ基を有するポリオール、具体的には、N−メチル−ジエタノールアミン、およびエポキシを2つ有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどが含まれる。上記ポリオ−ル成分は、上記アニオン性基を有するポリオールおよび上記カチオン性基を有するポリオール以外の他のポリオールをさらに含んでもよい。
アニオン性基を有するウレタン系樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g以上であると、親水性基としてのアニオン性基が一定以上含まれることから、水性塗料においてウレタン系樹脂の分散性を高めやすいだけでなく、金属板の表面との電気的な作用を生じやすい。酸価が50mgKOH/g以下であると、塗膜の耐水性が損なわれにくい。酸価は、JIS K 0070またはISO 3961に準じて測定することができる。具体的には、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数として測定することができる。
カチオン性基を有するウレタン系樹脂のアミン価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることが好ましい。アミン価が10mgKOH/g以上であると、親水性基としてのカチオン性基が一定以上含まれることから、水性塗料においてウレタン系樹脂の分散性を高めやすいだけでなく、金属板の表面との電気的な作用を生じやすい。アミン価が40mgKOH/g以下であると、塗膜の耐水性が損なわれにくい。アミン価は、ASTM D2074に準じて測定することができる。具体的には、試料1gを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のmg数として測定することができる。
上記樹脂の含有量は、より高いほど、下塗り塗膜の100%モジュラスをより低くすることができる。上記観点からは、下塗り塗膜中の上記樹脂の含有量は、固形分の合計100質量部に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
上記下塗り塗膜は、リン酸変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。リン酸変性エポキシ樹脂は、下塗り塗膜の密着性をより高めることができる。リン酸変性エポキシ樹脂は、原料としてのエポキシ樹脂を、リン酸基含有化合物で変性して得られる変性エポキシ樹脂であり得る。原料としてのエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、およびビスフェノールAD型エポキシ樹脂などが含まれる。変性するためのリン酸化合物の例には、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸(二リン酸)、三リン酸および四リン酸などが含まれる。
下塗り塗膜の密着性をより高めつつ、樹脂の含有量が相対的に低くなることによる100%モジュラスの上昇を抑制する観点からは、下塗り塗膜中の上記リン酸変性エポキシ樹脂の含有量は、ウレタン樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂、およびメラミン化合物の合計100質量部に対して、2質量%以上45質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
また、上記下塗り塗膜は、メラミン化合物を含むことが好ましい。メラミン化合物は、下塗り塗膜の耐湿性をより高めることができる。メラミン化合物の例には、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂が含まれる。なかでも、メチルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
下塗り塗膜の耐湿性をより高めつつ、樹脂の含有量が相対的に低くなることによる100%モジュラスの上昇を抑制する観点からは、下塗り塗膜中の上記メラミン化合物の含有量は、ウレタン樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂、およびメラミン化合物の合計100質量部に対して、1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
また、上記下塗り塗膜は、防錆顔料粒子をさらに含有していてもよい。
上記防錆顔料粒子の例には、変性シリカ、バナジン酸塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、およびポリリン酸アルミニウムなどを含む非クロム系の防錆顔料の粒子、ならびに、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどを含むクロム系防錆顔料の粒子などが含まれる。
下塗り塗膜の耐食性および耐湿性をより高めつつ、樹脂の含有量が相対的に低くなることによる100%モジュラスの上昇を抑制する観点からは、下塗り塗膜中の上記防錆顔料の含有量は、下塗り塗膜の全質量に対して7.5質量%以上65質量%以下であることが好ましく、17質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
また、上記下塗り塗膜は、着色顔料粒子、体質顔料粒子、および光沢調整剤粒子などの添加剤をさらに含有していてもよい。
上記防錆顔料粒子の例には、変性シリカ、バナジン酸塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、およびポリリン酸アルミニウムなどを含む非クロム系の防錆顔料の粒子、ならびに、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどを含むクロム系防錆顔料の粒子などが含まれる。
上記着色顔料粒子は、塗料用の着色顔料として一般に入手できる有機系着色顔料および無機系着色顔料の粒子のいずれであってもよい。着色顔料粒子は、非透明であり、フッ素樹脂層に色調を与えて着色塗膜とする。
上記無機系着色顔料の例には、酸化チタン、酸化クロム、カーボンブラック、鉄黒、酸化鉄イエロー、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、およびモリブデン赤などが含まれる。
上記有機系着色顔料の例には、キナクリドンレッド、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、およびアニリンブラックなどが含まれる。
上記着色顔料粒子は、金属成分を含む複合酸化物焼成顔料の粒子であってもよい。上記焼成顔料の例には、CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、FeZn、CoCr、MnCo、およびSnZnTiなどが含まれる。
また、上記着色顔料粒子は、メタリック顔料の粒子であってもよい。上記メタリック顔料粒子の例には、Alフレーク、樹脂被覆Alフレーク、金属酸化物被覆Alフレーク、Niフレーク、Cuフレーク、およびステンレス鋼フレークなどが含まれる。
また、上記着色顔料粒子は、パール顔料の粒子であってもよい。上記パール顔料粒子の例には、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、および酸化チタン−酸化鉄被覆雲母などが含まれる。
上記着色顔料粒子の個数平均粒径は、本実施の形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることができるが、通常は3μm以下であり、0.01μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
上記体質顔料粒子の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカおよび炭酸カルシウムなどの粒子が含まれる。
上記体質顔料粒子の個数平均粒径は、本実施の形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることができるが、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
上記光沢調整剤粒子の例には、シリカおよび炭酸カルシウムなどの無機材料、ならびに、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾクアナミン樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびフッ素樹脂などの樹脂材料などが含まれる。
上記光沢調整剤粒子の個数平均粒径は、本実施の形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることができるが、3μm以下であることが好ましい。
下塗り塗膜中の上記顔料の含有量は特に限定されないが、上記下塗り塗膜を構成する材料の100%モジュラスを上述した範囲内に調整する観点からは、ウレタン樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂、およびメラミン化合物の合計100質量部に対して、2質量%以上45質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
また、上記下塗り塗膜は、シランカップリング剤をさらに含有していてもよい。
上記シランカップリング剤は、分子内に、加水分解でシラノール基(Si−OH)を与えるアルコキシ基などと、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、メルカプト基またはアルキル基などの有機基とを有する化合物をいう。
シランカップリング剤の例には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの、分子内にエポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシランなどの、分子内にビニル基を有するビニル系シランカップリング剤;アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノメチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリフェノキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの、分子内にアミノ基を有するアミン系シランカップリング剤;メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリプロポキシシラン、メルカプトメチルトリブトキシシラン、メルカプトメチルトリフェノキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどの、分子内にメルカプト基を有するメルカプト系シランカップリング剤などが含まれる。
シランカップリング剤の含有量は、ウレタン樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂、およびメラミン化合物の合計100質量部に対して、0.3質量%以上5質量%以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.3質量%以上であると、塗膜の金属板との密着性や耐湿性、耐食性を高めやすく、5質量%以下であると、塗料組成物の保存安定性が損なわれにくい。シランカップリング剤の含有量は、同様の観点から、ウレタン樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂、およびメラミン化合物の合計100質量部に対して、1質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
上記下塗り塗膜の膜厚は、1μm以上10μm以下とすることができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。上記膜厚が3μm以上であると、上記緩衝作用が十分に発揮され、塗装金属板の自己修復性をより高めることができる。上記膜厚が7μm以下であると、ワキの発生などの塗装不良が生じにくく、かつ低コストで塗装金属板を作製することができる。
1−3.上塗り塗膜
上記上塗り塗膜は、上記下塗り塗膜の表面に配置された、樹脂を含む塗膜である。上記下塗り塗膜は、上記下塗り塗膜の表面に接して配置されてもよいし、上記下塗り塗膜との間に配置された中塗り塗膜の表面に接して配置されてもよい。
上記上塗り塗膜は、GPCで測定される数平均分子量(ポリスチレン換算)が3000以上8000以下である樹脂を含む。上記数平均分子量が3000以上であると、上塗り塗膜に十分な延性が付与され、加工時の塗膜ワレを生じにくくすることができる。上記数平均分子量が8000以下であると、上記樹脂の架橋度を十分に高めて、金型や工具などが塗装金属板に当たったときの上塗り塗膜の破壊を抑制して、塗装金属板の自己回復率をより高めることができる。また、上記数平均分子量が8000以下であると、上塗り塗膜を形成する際の塗料の高粘度化などによる製造性の低下などを生じにくくすることができる。上記観点からは、上記樹脂の数平均分子量は、4000以上8000以下であることが好ましく、4000以上6000以下であることがより好ましい。
上記上塗り塗膜は、塗装金属板としての意匠性を高める観点から、60°鏡面光沢度が20以上とすることができる。上記60°鏡面光沢度は、JIS K 5600−4−7(1999)に準拠して測定することができる。
上記上塗り塗膜は、たとえば、ベースとなるポリエステル樹脂と、光沢を調整するための光沢調整剤と、を含む。
上記ポリエステル樹脂は、上塗り塗膜のベースとなる樹脂である。上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合させた公知のポリエステル樹脂とすることができる。上記多価カルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸などを含む芳香族ジカルボン酸類およびこれらの無水物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などを含む脂肪族ジカルボン酸類およびこれらの無水物、γ−ブチロラクトン、およびε−カプロラクトンなどを含むラクトン類、トリメリット酸、トリメジン酸、およびピロメリット酸などを含む3価以上の多価カルボン酸類などが含まれる。上記ポリエステル樹脂は、上記多価カルボン酸由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
上記多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、およびビスフェノールSアルキレンオキシド付加物等のグリコール類、ならびに、トリメチロールプロパン、グリセリン、およびペンタエリスリトールなどを含む3価以上の多価アルコール類などが含まれる。上記ポリエステル樹脂は、上記多価アルコール由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
上記光沢調整剤は、上塗り塗膜の表面を適度に粗面化して、光沢を伴う所期の外観を塗装金属板にもたらす。これにより、上記光沢調整剤は、上塗り塗膜の光沢を高めて、上塗り塗膜の60°鏡面光沢度を20以上とすることができる。
上塗り塗膜の60°鏡面光沢度を20以上としやすくする観点からは、上記光沢調整剤の個数平均粒径は、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましく、1μm以上6μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上4μm以下であることがさらに好ましい。
上塗り塗膜の60°鏡面光沢度をより高めつつ、上塗り塗膜の加工部密着性も同時に高める観点からは、上塗り塗膜中の上記光沢調整剤の含有量は、上塗り塗膜の全質量に対して0.01体積質量%以上15体積%以下であることが好ましく、0.05体積%以上13体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上10体積%以下であることがさらに好ましい。
上記上塗り塗膜は、上記下塗り塗膜と同様の、防錆顔料粒子着色顔料粒子、メタリック顔料粒子、パール顔料粒子、体質顔料粒子、および光沢調整剤粒子などをさらに含有してもよい。
ただし、上塗り塗膜の表面からこれらの粒子が露出することによる、意匠性の低下を抑制する観点からは、これらの粒子の個数平均粒径は、上塗り塗膜の膜厚より小さいことが好ましい。これらの粒子が、個数平均粒径が異なる複数種の粒子を含むときは、すべての種類の粒子の個数平均粒径が、上塗り塗膜の膜厚より小さいことが好ましい。
上記上塗り塗膜の膜厚は、10μm以上25μm以下であることが好ましい。上記膜厚が10μm以上であると、上塗り塗膜による塗装金属板の長期耐久性を十分に高めることができる。上記膜厚が25μm以下であると、ワキの発生などの塗装不良が生じにくく、かつ低コストで塗装金属板を作製することができる。
2.塗装金属板の製造方法
上記塗装金属板は、公知の方法に基づいて作製することが可能である。たとえば、上記塗装金属板は、上記金属板を用意する工程と、上記金属板上に上記下塗り塗膜を作製する工程と、上記下塗り塗膜上に上記上塗り塗膜を作製する工程と、を含む方法によって作製することができる。
上記下塗り塗膜および上記上塗り塗膜は、いずれも公知の方法で上述した成分を含む塗料を調製し、塗布して硬化させる方法で、作製することができる。
上記塗料は、たとえば、上述したそれぞれの塗膜の材料を溶剤中に分散することによって調製される。上記溶剤は、水または水と水溶性有機溶剤との混合物である。上記水溶性有機溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、アルキルエーテル類、ならびにN−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類などが含まれる。
なお、下塗り塗料中で、上記水分散性の樹脂はエマルションとなっている。
上記塗料の塗布は、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコート、浸漬コートなどの公知の方法によって行うことができる。上記塗料の塗布量は、上述した各塗膜の所望の厚さに応じて適宜に調整される。なお、直接重なる二つの塗膜のうちの少なくとも上の塗膜の塗料の塗布を、カーテンフローコートやスプレーコートなどの非接触な塗装方法(被塗装物への接触がない、いわゆるウェットオンウェット塗装が可能な塗装方法)で行う場合には、下の塗料の膜の硬化を上の塗料の膜の硬化と一度に同時に行うことが可能であるので、上の層のための塗料を塗布する前に下の塗料の膜を硬化させる工程を省略することが可能である。
上記塗料の硬化は、上記塗料を加熱によって焼き付ける公知の方法によって行うことが可能である。たとえば、上記塗料が塗布された金属板は、その到達温度が200〜260℃となるように加熱される。
焼き付け後の塗膜の冷却は、空冷、水冷、放冷、冷却部材へ接触およびこれらの組み合わせなどの公知の方法によって行うことが可能である。
上記塗装金属板の製造方法は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上述した工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、化成処理皮膜を形成する化成処理工程、および中塗り塗膜を形成する工程が含まれる。
上記化成処理工程は、化成処理皮膜を形成するための水性の化成処理液を、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの公知の方法で上記金属板の表面に塗布し、塗布後に上記金属板を水洗せずに乾燥させることによって行うことが可能である。当該金属板の乾燥温度および乾燥時間は、生産性の観点から、例えば、金属板の到達温度で60〜150℃、2〜10秒間であることが好ましい。
上記中塗り塗膜を形成する工程も、下塗り塗膜および上塗り塗膜を形成する工程と同様に、中塗り塗膜用の塗料(中塗り塗料)の塗布およびそれによる膜の硬化によって行うことができる。当該中塗り塗料も、中塗り塗膜の材料以外に、必要に応じて上記溶剤および各種添加剤を含んでいてもよい。中塗り塗料は、例えば上記の公知の方法で3〜20μm(好ましくは5〜15μm)となる塗布量で塗布され、金属板の到達温度が180〜260℃の温度となるように金属板を加熱することにより焼き付けられ、作製される。
1.塗装金属板の作製
1−1.塗装原板の作製
両面めっき付着量150g/mのアルミ亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(「ガルバリウム鋼板」は登録商標))を用意し、アルカリ脱脂した。
上記アルカリ脱脂しためっき鋼板の表面に、日本パーカライジング株式会社製、パルコートCT−E200クロムフリー化成処理液用いて、化成処理した。
1−2.下塗り塗膜の形成
1−2−1.下塗り塗料の調製
水分散体樹脂として、ウレタン樹脂である樹脂A(株式会社ADEKA製、HUX−841、固形分54%)、ポリエステル樹脂である樹脂B(東洋紡株式会社製、バイロナール MD−1335、固形分30%)、アクリル樹脂である樹脂C(楠本化成株式会社製 DXA-4081、固形分50%)、またはポリエステル樹脂である樹脂D(東洋紡株式会社製、バイロナール MD−1930、固形分31%)を用いた。
160gのオルトリン酸、および280gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを仕込んだ反応容器に、850gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER 1055)を徐々に添加し、その後、80℃で2時間反応させた。反応終了後、120gのトリエチルアミンおよび1950mlの水を加え、固形分量が30質量%であるリン酸変性エポキシ樹脂の水分散体を得た。
メラミン化合物として、ヘキサメチル化メチロールメラミン(三井サイテック株式会社製、サイメル303)を用いた。
骨材として、アクリルビーズである骨材A(東洋紡株式会社製、FH−S005、平均粒径:5μm、10%圧縮後の復元率:4%)、ガラスビーズである骨材B(ポッターズバロティーニ社製、EMB−10、平均粒径:5μm、10%圧縮後の復元率:7%)、またはウレタン樹脂である骨材C(根上工業株式会社製、C−800、平均粒径:5μm、10%圧縮後の復元率:1%)を用いた。
上記樹脂の水分散体、リン酸変性エポキシ樹脂の水分散体、メラミン化合物および骨材を、表1に示す配合比で混合して、下塗り塗料1〜下塗り塗料12を得た。
1−2−2.10%圧縮後の復元率の測定
なお、各骨材の10%圧縮後の復元率は、株式会社島津製作所製、微小圧縮試験機MCT−510を用いての圧縮試験により、下塗り塗料の調製前(混合前)に測定した。具体的には、試験機が有する加圧板の上に試料(骨材)を散布し、1粒子ずつ、所定の負荷をかけた初期状態から負荷を大きくしていって、当該粒子を圧縮していった。粒子径に対して10%変位したところで0.1mNまで負荷を除去(減少)させ、以下の式により、復元率(%)を算出した。
復元率(%)=(10%変位時の変位量(μm)−0.1mNでの変位量(μm))
/粒子径(μm)×100
1−2−3.100%モジュラスの測定
ETFEラミネート板に、下塗り塗料1〜下塗り塗料12のそれぞれを、乾燥膜厚が200μmとなるようにブレードコーターで塗布し、室温で24時間の乾燥、その後、150℃で2分の乾燥を行い、遊離塗膜を作成した。作製した遊離塗膜を20mm×100mmサイズに切り取り、オートグラフにセットした。引張試験時のチャック間距離は30mm、引張速度は5mm/min.に設定して、100%変位時の抗張力を測定した。
上記水分散性樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂の水分散体、メラミン化合物および骨材の配合量(骨材の配合量は、固形分の合計体積を100体積%としたときの骨材の体積が占める割合である。)、当該骨材の10%圧縮後の復元率、およびそれぞれの下塗り塗料により得られる塗膜の100%モジュラスを、表1に示す。
Figure 2020157650
1−2−4.下塗り塗膜の形成
塗装原板の片側の面に、下塗り塗料1〜下塗り塗料12のそれぞれを、乾燥時の膜厚が5μmとなるようにバーコーターで塗布し、到達板温200℃、乾燥時間20秒で乾燥して、下塗り塗膜を形成した。
1−3.上塗り塗膜の形成
1−3−1.上塗り塗料の調製
ポリエステル樹脂として、数平均分子量が3000のポリエステル樹脂(日本合成化学工業株式会社製、TP−219)、数平均分子量が8000のポリエステル樹脂(東洋紡株式会社、バイロン885)または数平均分子量が13000のポリエステル樹脂(東洋紡株式会社、バイロンGK140)を用意した。
100質量部の上記いずれかのポリエステル樹脂に、溶媒としての75質量部のキシレン、光沢調整剤としての8質量部のシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア456、平均粒径:5.5μm)、顔料としての39質量部の酸化チタン(テイカ株式会社製 JR−603)、および18質量部の硫酸バリウム(堺化学工業株式会社、BF−20)を添加して、予備混合を行って顔料分散ペーストを得た。
100質量部の上記得られた顔料分散ペーストに、硬化剤としての0.1質量部のヘキサメチル化メチロールメラミン(三井サイテック株式会社製、サイメル303)および触媒(三井サイテック株式会社製、キャタリスト6000)を添加して、上塗り塗料1を得た。
45質量部のポリエステルポリオール(東ソー株式会社製、ニッポラン131)と、55質量部のヒドロキシ基含有メタアクリレート(東レ・ファインケミカル株式会社製、LH613)と、を混合したものを180質量部のメチルイソブチルケトンに溶解し、固形分28%の主剤を調整した。また、86.3質量部のヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成株式会社、デュラネート24A−100)を38.7質量部の酢酸エチルに溶解し、固形分が69%の硬化剤を調整した。250質量部の主剤と125質量部の硬化剤を混合し、ウレタンメタアクリレート系の上塗り塗料2を得た。
1−3−2.上塗り塗膜の形成
上記下塗り塗膜を形成した塗装原板に、上記調製した上塗り塗料のいずれかを、乾燥時の膜厚が15μmとなるようにバーコーターで塗布し、到達板温220℃、乾燥時間30秒で乾燥して、上塗り塗膜を形成し、60°鏡面光沢度が20の塗装鋼板1〜塗装鋼板24を得た。
1−4.裏面塗膜
1−4−1.裏面塗料の調製
ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社、バイロンGK130)100質量部に、溶媒としてキシレン75質量部、顔料として酸化チタン(テイカ株式会社製 JR−603)20質量部、硫酸バリウム(堺化学工業株式会社、BF−20)18質量部およびカーボンブラック(MA−100;三菱化学株式会社)1質量部を加え予備混合を行った。その後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間混合分散し、不揮発分60質量%の顔料分散ペーストを得た。
上記顔料分散ペースト100質量部に、硬化剤としてメチルメラミン樹脂(サイメル303、三井サイテック株式会社)、滑剤としてポリエチレンワックス(リオフラットW−7768;融点104℃;東洋インキ株式会社)および触媒(キャタリスト6000;三井サイテック株式会社)を添加して、裏面塗料を得た。
1−4−2.裏面塗膜の形成
上記調製した裏面塗料を、乾燥時の膜厚が5μmとなるように、鋼板のうち上記上塗り塗膜を形成した面とは反対側の面にバーコーターで塗布し、到達板温220℃、乾燥時間30秒で乾燥して、裏面塗膜を形成した。
2.評価
2−1.自己修復性
JIS K 5600−5−4(1999年)に準じて、硬度がFまたはHBの鉛筆を用いて塗装鋼板1〜塗装鋼板24のそれぞれの表面に引っかき傷を付けた。その後、室温で24時間静置した後に塗膜の状態を目視で観察し、以下の基準で自己修復性を評価した。
◎ 硬度F、硬度Hのいずれの鉛筆を用いて付けた引っかき傷も修復していた
○ 硬度Fの鉛筆を用いて付けた引っかき傷は修復していなかったが、
硬度HBの鉛筆を用いて付けた引っかき傷は修復していた
× 硬度F、硬度Hのいずれの鉛筆を用いて付けた引っかき傷も修復していなかった
2−2.加工性
塗装鋼板1〜塗装鋼板24のそれぞれを、試験板と同一厚さの板をはさんで、23℃で180°に折り曲げた。このとき、塗膜にクラックが生じない最少の板はさみ枚数Tを記録して、以下の基準で評価した。
◎ 4T以下
○ 5T以上8T以下
× 9T以上
2−3.ブロッキング性
塗装鋼板1〜塗装鋼板24のそれぞれを、5×5cmに切断し、塗装板の塗装面と塗装面を合わせ加熱圧着プレス機を用い、50℃の温度で2Mpaの圧力を24時間掛けた後、荷重をとりさり、塗装面と塗装面のブロッキング程度を塗装板端面から垂直に剥がしブロッキング程度を評価した。
○:ブロッキングしない
×:ブロッキングする
塗装鋼板1〜塗装鋼板24の作製に用いた下塗り塗料の種類、当該下塗り塗料に含まれる骨材の10%圧縮後の復元率、および当該下塗り塗料から得られる膜の100%モジュラス、上塗り塗膜に含まれる樹脂の数平均分子量、ならびに上記評価結果を、表2および表3に示す。
Figure 2020157650
Figure 2020157650
表2から明らかなように、10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗膜と、数平均分子量が3000以上8000以下である樹脂を含む上塗り塗膜と、がこの順に積層された、塗装鋼板1〜塗装鋼板18は、自己修復性および加工性に優れていた。
これに対し、10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含まない下塗り塗膜からなる、塗装鋼板19〜塗装鋼板22は、自己修復性がさほど高まっていなかった。
本発明の塗装鋼板は、保管時や他の塗装鋼板と重ねて設置したときなどの擦動によって疵付きが生じにくい。そのため、本発明の塗装鋼板は、外装建材などを含む各種用途に用いることができる。

Claims (7)

  1. 金属板と、
    樹脂および10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗膜と、
    数平均分子量が3000以上8000以下である樹脂を含む上塗り塗膜と、がこの順に積層された、
    塗装金属板。
  2. 前記下塗り塗膜は、リン酸変性エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の塗装金属板。
  3. 前記下塗り塗膜は、メラミン化合物を含む、請求項1または2に記載の塗装金属板。
  4. 前記下塗り塗膜は、100%モジュラスが5N/mm以下である材料からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装金属板。
  5. 前記下塗り塗膜は、前記下塗り塗膜の全体積に対して1体積%以上10体積%以下の量の前記骨材を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装金属板。
  6. 前記上塗り塗膜は、ポリエステル樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装金属板。
  7. 金属板を用意する工程と、
    前記金属板の表面に、水分散性樹脂の水分散体および10%圧縮後の復元率が4%以上である骨材を含む下塗り塗料を塗布および感想させて、下塗り塗膜を形成する工程と、
    前記下塗り塗膜の表面に接して、数平均分子量が3000以上8000以下である樹脂を含む上塗り塗膜を形成する工程と、
    を有する、塗装金属板の製造方法。
JP2019060792A 2019-03-27 2019-03-27 塗装金属板およびその製造方法 Active JP7211202B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019060792A JP7211202B2 (ja) 2019-03-27 2019-03-27 塗装金属板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019060792A JP7211202B2 (ja) 2019-03-27 2019-03-27 塗装金属板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020157650A true JP2020157650A (ja) 2020-10-01
JP7211202B2 JP7211202B2 (ja) 2023-01-24

Family

ID=72641234

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019060792A Active JP7211202B2 (ja) 2019-03-27 2019-03-27 塗装金属板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7211202B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0671807A (ja) * 1992-08-26 1994-03-15 Kawasaki Steel Corp 耐食性に優れたプレコート鋼板
JPH1119585A (ja) * 1997-06-30 1999-01-26 Kansai Paint Co Ltd 金属板の塗装方法及びこの方法による塗装金属板
JP2015199293A (ja) * 2014-04-09 2015-11-12 新日鐵住金ステンレス株式会社 クリヤ塗装ステンレス鋼板

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0671807A (ja) * 1992-08-26 1994-03-15 Kawasaki Steel Corp 耐食性に優れたプレコート鋼板
JPH1119585A (ja) * 1997-06-30 1999-01-26 Kansai Paint Co Ltd 金属板の塗装方法及びこの方法による塗装金属板
JP2015199293A (ja) * 2014-04-09 2015-11-12 新日鐵住金ステンレス株式会社 クリヤ塗装ステンレス鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP7211202B2 (ja) 2023-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4865090B2 (ja) クロメートフリー黒色塗装金属板
JP5383932B2 (ja) メタリック調外観を有するクロメートフリープレコート金属板およびその製造に用いる水系塗料組成物
JP5108820B2 (ja) プレコート金属材料用水系表面処理剤、表面処理金属材料及びプレコート金属材料
TWI509105B (zh) 複層表面處理鋼板所用之黏著層形成用組成物
JP5086040B2 (ja) 金属表面処理組成物
JP5497170B2 (ja) クロメートフリー着色塗装金属板および水性着色組成物
JP5418479B2 (ja) 塗装亜鉛系めっき鋼板
JP7143786B2 (ja) 塗装金属板およびその製造方法
CN103547446A (zh) 面板
JP6255160B2 (ja) クロメートフリー塗装金属板および水性塗料組成物
JP2011219832A (ja) 塗装鋼板およびその製造方法、並びに化成処理液
JP5115939B2 (ja) 耐きず付き性に優れるプレコート金属板およびその製造方法
JP7211202B2 (ja) 塗装金属板およびその製造方法
JP5418478B2 (ja) 塗装亜鉛系めっき鋼板
JP6123868B2 (ja) クロメートフリー着色塗装金属板の製造方法
JP5949656B2 (ja) 黒色塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネル
JP2004209791A (ja) 環境調和性及び耐食性に優れたプレコート鋼板
JP5845126B2 (ja) 塗装金属板およびその製造方法
JP2007230099A (ja) 加工性と耐傷付き性に優れた塗装金属板
JP2012116057A (ja) クロメートフリー着色塗装金属板

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190617

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20191030

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20200901

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211104

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220815

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220823

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221014

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221213

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221226

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7211202

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151