JP2020156413A - 植物における組換えタンパク質の発現量増加方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タバコ属植物の上部において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法の提供。【解決手段】タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法であって、(a)タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、(b)養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、(c)工程(b)で得られた前記植物にアグロバクテリウムを感染させる工程であって、前記アグロバクテリウムは前記組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するものであり、前記感染はアグロバクテリウムの菌液に前記植物を浸漬することにより行うものである、工程、(d)工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び(e)工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程を含む、方法。【選択図】なし
Description
本発明は、タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法に関する。
タバコ属(Nicotiana)植物は、組換えタンパク質の発現に利用される植物として知られており、その栽培方法として水耕栽培方法が知られている(特許文献1:特表2015-519071号公報)。
しかしながら、タバコ属植物の循環式水耕栽培において、養液の循環を一旦止めることにより、当該植物における組換えタンパク質の発現量を増加させる方法は知られていない。
しかしながら、タバコ属植物の循環式水耕栽培において、養液の循環を一旦止めることにより、当該植物における組換えタンパク質の発現量を増加させる方法は知られていない。
本発明において、組換えタンパク質は、タバコ属植物に組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させることにより作製することができる。タバコ属植物のアグロバクテリウムへの感染は、タバコ属植物の上部を下に向けて、上部から順にアグロバクテリウムの菌液に浸漬させることにより行うことができる。しかしながら、通常、これにより得られたタバコ属植物の上部の葉における組換えタンパク質の発現量は、中部の葉よりも低い。
ここで、当該植物の上部の葉において、組換えタンパク質の発現量を増加させることができれば、感染工程における中部及び下部の葉の菌液への浸漬の状態にかかわらず、発現量の多い上部の葉を回収できるため、従来と比較して組換えタンパク質の収量を向上させることができる。また、これにより、中部から下部の葉を浸漬させるための浸漬作業負担を軽減することも可能になる。
したがって、タバコ属植物の上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させることが求められている。
ここで、当該植物の上部の葉において、組換えタンパク質の発現量を増加させることができれば、感染工程における中部及び下部の葉の菌液への浸漬の状態にかかわらず、発現量の多い上部の葉を回収できるため、従来と比較して組換えタンパク質の収量を向上させることができる。また、これにより、中部から下部の葉を浸漬させるための浸漬作業負担を軽減することも可能になる。
したがって、タバコ属植物の上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させることが求められている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、タバコ属植物の水耕栽培において、養液の循環を一旦止めることにより、当該植物の上部における組換えタンパク質の発現量を増加させることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法であって、
(a) タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、
(b) 養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、
(c) 工程(b)で得られた前記植物にアグロバクテリウムを感染させる工程であって、前記アグロバクテリウムは前記組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するものであり、前記感染はアグロバクテリウムの菌液に前記植物を浸漬することにより行うものである、工程、
(d) 工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び
(e) 工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程
を含む、方法。
(2)前記植物の上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させる方法である、上記(1)に記載の方法。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法であって、
(a) タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、
(b) 養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、
(c) 工程(b)で得られた前記植物にアグロバクテリウムを感染させる工程であって、前記アグロバクテリウムは前記組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するものであり、前記感染はアグロバクテリウムの菌液に前記植物を浸漬することにより行うものである、工程、
(d) 工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び
(e) 工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程
を含む、方法。
(2)前記植物の上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させる方法である、上記(1)に記載の方法。
本発明により、タバコ属植物の上部において、組換えタンパク質の発現量を増加させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
1.概要
本発明は、タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法に関するものである。
タバコ属(Nicotiana)植物は、アグロバクテリウム法を用いて組換えタンパク質を発現させる植物として利用されている。また、その培養方法として、養液を循環させながら栽培を行う水耕栽培方法が知られている。このような循環式水耕栽培においては、養液の循環を栽培の途中で一旦止めると、植物の酸素不足や栄養不足を導くことになるため、栽培を終了する前の期間を除いて、通常は循環を停止することはない。
しかしながら、本発明者らは、タバコ属植物の循環式水耕栽培において、あえて栽培の途中で養液の循環を止めた状態にすることにより、当該植物において組換えタンパク質の発現量を増加させることに成功した。この結果は全く予測できない驚くべき結果であった。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法に関するものである。
タバコ属(Nicotiana)植物は、アグロバクテリウム法を用いて組換えタンパク質を発現させる植物として利用されている。また、その培養方法として、養液を循環させながら栽培を行う水耕栽培方法が知られている。このような循環式水耕栽培においては、養液の循環を栽培の途中で一旦止めると、植物の酸素不足や栄養不足を導くことになるため、栽培を終了する前の期間を除いて、通常は循環を停止することはない。
しかしながら、本発明者らは、タバコ属植物の循環式水耕栽培において、あえて栽培の途中で養液の循環を止めた状態にすることにより、当該植物において組換えタンパク質の発現量を増加させることに成功した。この結果は全く予測できない驚くべき結果であった。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
2.タバコ属植物
本発明において、タバコ属(Nicotiana)植物は、アグロバクテリウムを感染させることができ、組換えタンパク質を発現可能であり、かつ水耕栽培が可能なものであれば、特に限定されない。そのようなタバコ属植物としては、例えば、ベンサミアナタバコ(N. benthamiana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ハナタバコ(N. alata)、キダチタバコ(N. glauca)、ナガバナタバコ(N. longiflora)、ニコチアナ・ペルシア(N. persica)、ニコチアナ・ルスチカ(N. rustica)、ニコチアナ・シルベストシス(N. sylvestris)、ニコチアナ・フォーゲッティアナ(N. forgetiana)などが挙げられ、好ましくは、ベンサミアナタバコである。
本発明において、タバコ属(Nicotiana)植物は、アグロバクテリウムを感染させることができ、組換えタンパク質を発現可能であり、かつ水耕栽培が可能なものであれば、特に限定されない。そのようなタバコ属植物としては、例えば、ベンサミアナタバコ(N. benthamiana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ハナタバコ(N. alata)、キダチタバコ(N. glauca)、ナガバナタバコ(N. longiflora)、ニコチアナ・ペルシア(N. persica)、ニコチアナ・ルスチカ(N. rustica)、ニコチアナ・シルベストシス(N. sylvestris)、ニコチアナ・フォーゲッティアナ(N. forgetiana)などが挙げられ、好ましくは、ベンサミアナタバコである。
3.組換えタンパク質
本発明において、組換えタンパク質は、植物において発現可能なものであれば限定されないが、分子量10kDa〜100kDのタンパク質であることが好ましい。このような組換えタンパク質としては、例えば、ワクチン(例えばウイルス由来タンパク質(特表2010-533001号公報、Jour. Agri. Sci., Tokyo Univ. of Agric., 50 (3), 76-82 (2005)など))、抗体(例えば組換えモノクローナル抗体(Gene Garrard Olinger Jr., et al., PNAS October 30, 2012 109 (44) 18030-18035))、ヒトインターフェロン(Applied Biochemistry and Microbiology (2016), Vol. 52, pp705-713)、細胞接着分子(例えばヒトビトロネクチン(Plant Biotech Journal (2018) pp394-403))、成長因子等(例えばヒト上皮細胞増殖因子(特許第6302415号))等が挙げられる。
本発明において、組換えタンパク質は、植物において発現可能なものであれば限定されないが、分子量10kDa〜100kDのタンパク質であることが好ましい。このような組換えタンパク質としては、例えば、ワクチン(例えばウイルス由来タンパク質(特表2010-533001号公報、Jour. Agri. Sci., Tokyo Univ. of Agric., 50 (3), 76-82 (2005)など))、抗体(例えば組換えモノクローナル抗体(Gene Garrard Olinger Jr., et al., PNAS October 30, 2012 109 (44) 18030-18035))、ヒトインターフェロン(Applied Biochemistry and Microbiology (2016), Vol. 52, pp705-713)、細胞接着分子(例えばヒトビトロネクチン(Plant Biotech Journal (2018) pp394-403))、成長因子等(例えばヒト上皮細胞増殖因子(特許第6302415号))等が挙げられる。
4.本発明の方法
本発明の方法は、下記の(a)〜(e)の工程を含む、タバコ属植物、特にその上部の葉における組換えタンパク質の発現量を増加させる方法である。
(a) タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、
(b) 養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、
(c) 工程(b)で得られた植物をアグロバクテリウムに感染させる工程、
(d) 工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び
(e) 工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程
ここで、上記工程(a)及び(b)は、タバコ属植物の栽培工程であり、工程(c)は感染工程、工程(d)は発現工程、工程(e)は組換えタンパク質の抽出工程である。
各工程について以下説明する。
本発明の方法は、下記の(a)〜(e)の工程を含む、タバコ属植物、特にその上部の葉における組換えタンパク質の発現量を増加させる方法である。
(a) タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、
(b) 養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、
(c) 工程(b)で得られた植物をアグロバクテリウムに感染させる工程、
(d) 工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び
(e) 工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程
ここで、上記工程(a)及び(b)は、タバコ属植物の栽培工程であり、工程(c)は感染工程、工程(d)は発現工程、工程(e)は組換えタンパク質の抽出工程である。
各工程について以下説明する。
(1)工程(a)
本発明の方法は、上記の通り、タバコ属植物を水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程(工程(a))を含む(図1)。
本工程において、水耕栽培の方法は、養液を循環させることができるものであれば限定されるものではない。水耕栽培の方法としては、例えば、NFT(Nutrient Film Technique、薄膜型水耕法)、DFT(Deep Flow Technique、湛液型水耕法)などが挙げられる。
本発明の方法は、上記の通り、タバコ属植物を水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程(工程(a))を含む(図1)。
本工程において、水耕栽培の方法は、養液を循環させることができるものであれば限定されるものではない。水耕栽培の方法としては、例えば、NFT(Nutrient Film Technique、薄膜型水耕法)、DFT(Deep Flow Technique、湛液型水耕法)などが挙げられる。
また、水耕栽培においては、タバコ属植物を水耕栽培装置の栽培槽(プランター)で栽培することができ、養液を栽培槽内で循環又は栽培槽内と栽培槽外との間で循環させながら栽培することができる。当該栽培槽には、水耕栽培用ウレタンマットやパネルなどの支持体を設置することができる。また、水耕栽培装置は、栽培棚に設置されていてもよい。水耕栽培の環境及び装置は、公知文献(例えば特開2016-167990号公報)に記載された情報などに基づいて適宜設計し、使用することができる。
本発明において、養液(液体肥料)は、市販のものを適宜組合せて使用することができ、タバコ属植物を成長させる栄養分が含まれる養液であれば限定されるものではない。養液は、脱塩素水に溶解することができる。また、養液は、電気伝導度及びpHを調整して用いることができ、当業者であれば公知の肥料(例えば、「養液栽培用肥料 OATハウス肥料」(OATアグリオ株式会社)など)に基づいて適宜調製することができる。
本工程の栽培日数としては、例えば、5日〜12日間、好ましくは7日〜10日間、より好ましくは8日〜9日間であるが、これらに限定されず、当業者であれば植物の生育状況等に応じて適宜調整することができる。
また、本工程の前に、植物の種を播種し、育苗する工程を含むことができる。この工程においては、肥料を入れた育苗トレイに種子を播種し、播種後の植物を人工気象器にて光サイクルを調節して数日間生育させる。肥料として液体肥料を用いる場合は、水耕栽培用ウレタンマットに液体肥料を染み込ませて育苗トレイに収めることができる。
本工程の栽培日数としては、例えば、5日〜12日間、好ましくは7日〜10日間、より好ましくは8日〜9日間であるが、これらに限定されず、当業者であれば植物の生育状況等に応じて適宜調整することができる。
また、本工程の前に、植物の種を播種し、育苗する工程を含むことができる。この工程においては、肥料を入れた育苗トレイに種子を播種し、播種後の植物を人工気象器にて光サイクルを調節して数日間生育させる。肥料として液体肥料を用いる場合は、水耕栽培用ウレタンマットに液体肥料を染み込ませて育苗トレイに収めることができる。
(2)工程(b)
本発明の方法は、養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程(工程(b))を含む(図1)。
本工程において、「養液の循環を止めた状態」とは、基本的には養液の循環を完全に止めた状態を意味するが、循環を完全に止めた状態で栽培すると、その栽培期間に養液が自然に蒸発して液量が減少するため、当該自然蒸発分に相当する量を上限として養液を循環させてもよい。ここで、当該自然蒸発分に相当する量は、栽培密度や湿度などの栽培条件によって異なるが、例えば、養液の循環を完全に止めた場合の栽培槽(プランター)内の養液(植物体の根に接する養液)の液量の約20%である。したがって、本発明においては、養液の循環を完全に止めた場合の栽培槽(プランター)内の養液の液量の20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下の養液が循環している状態も、「養液の循環を止めた状態」に含まれる。
本発明の方法は、養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程(工程(b))を含む(図1)。
本工程において、「養液の循環を止めた状態」とは、基本的には養液の循環を完全に止めた状態を意味するが、循環を完全に止めた状態で栽培すると、その栽培期間に養液が自然に蒸発して液量が減少するため、当該自然蒸発分に相当する量を上限として養液を循環させてもよい。ここで、当該自然蒸発分に相当する量は、栽培密度や湿度などの栽培条件によって異なるが、例えば、養液の循環を完全に止めた場合の栽培槽(プランター)内の養液(植物体の根に接する養液)の液量の約20%である。したがって、本発明においては、養液の循環を完全に止めた場合の栽培槽(プランター)内の養液の液量の20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下の養液が循環している状態も、「養液の循環を止めた状態」に含まれる。
本発明において、栽培工程は前期と後期に分けることができ、前期は上記工程(a)に相当する。一方、栽培工程の後期は、前期とは異なる環境条件で栽培する。そして、栽培工程の後期7日間のうち、前半の4日間は、前期と同じ養液条件で栽培し、後半の例えば3日間、2日間又は1日の期間は、養液の循環を止めた状態で栽培することができる。すなわち、工程(b)は、この栽培工程後期の後半の工程に相当する。
栽培工程の前期及び後期のそれぞれの環境条件及び養液条件は、公知文献(例えば特開2016-167990号公報)に記載された内容に基づいて適宜設定することができる。より具体的には、環境条件としては、例えば、温度が10〜40℃(例えば20℃、28℃など)、相対湿度が60〜80%、CO2濃度が300〜5000 ppm(例えば400 ppm、500 ppm、1000 ppmなど)になるように設定することができるが、これらに限定されず、当業者であれば植物の生育状況等に応じてこれらの条件を適宜調整することができる。また、照明の条件については、平均光合成光量子束密度(PPFD)が150-200μmol/m2・秒、18〜24h連続光照射・0〜6h消灯の明暗サイクルで設定することができるが、これらに限定されない。
また、養液条件としては、例えば、養液の電気伝導度(electrical conductivity, EC) が0.5〜5mS/cm(例えば2.3mS/cm)、pHが5.0〜7.0(例えばpH6.0)、養液の温度が15〜28℃(例えば25℃)になるように設定することができるが、これらに限定されない。
また、養液条件としては、例えば、養液の電気伝導度(electrical conductivity, EC) が0.5〜5mS/cm(例えば2.3mS/cm)、pHが5.0〜7.0(例えばpH6.0)、養液の温度が15〜28℃(例えば25℃)になるように設定することができるが、これらに限定されない。
(3)工程(c)
本発明の方法は、工程(b)で得られたタバコ属植物にアグロバクテリウムを感染させる工程を含む(工程(c))。
本発明に用いることができるアグロバクテリウムとしては、限定されるものではないが、例えば、GV3101株、LBA4404株、EHA101株、EHA105株、AGL1株等が挙げられる。
本工程において、アグロバクテリウムは組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有する。当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドベクターとしては、例えば、植物バイナリーベクターpMM444、大麦またはイネαアミラーゼのシグナルペプチドを含むベクター、PhiC31インテグラーゼ発現ベクターなどを用いることができるが、これに限定されない。また、アグロバクテリウムを植物に感染させる際には、別のベクターをそれぞれ含む複数種のアグロバクテリウムを同時に感染させてもよい。
アグロバクテリウムを用いて組換えタンパク質をコードする遺伝子をタバコ属植物に導入する方法(アグロバクテリウム法)としては、公知の方法(例えば、Journal of Virological Methods, 105:343-348 (2002)、Plant Science, 122, 1: 101-108 (1997))に準じた方法を用いることができる。ここで、組換えタンパク質の発現は、一過性発現であることが好ましい。
本発明の方法は、工程(b)で得られたタバコ属植物にアグロバクテリウムを感染させる工程を含む(工程(c))。
本発明に用いることができるアグロバクテリウムとしては、限定されるものではないが、例えば、GV3101株、LBA4404株、EHA101株、EHA105株、AGL1株等が挙げられる。
本工程において、アグロバクテリウムは組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有する。当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドベクターとしては、例えば、植物バイナリーベクターpMM444、大麦またはイネαアミラーゼのシグナルペプチドを含むベクター、PhiC31インテグラーゼ発現ベクターなどを用いることができるが、これに限定されない。また、アグロバクテリウムを植物に感染させる際には、別のベクターをそれぞれ含む複数種のアグロバクテリウムを同時に感染させてもよい。
アグロバクテリウムを用いて組換えタンパク質をコードする遺伝子をタバコ属植物に導入する方法(アグロバクテリウム法)としては、公知の方法(例えば、Journal of Virological Methods, 105:343-348 (2002)、Plant Science, 122, 1: 101-108 (1997))に準じた方法を用いることができる。ここで、組換えタンパク質の発現は、一過性発現であることが好ましい。
本工程において、タバコ属植物へのアグロバクテリウムの感染は、アグロバクテリウムの菌液に当該植物を浸漬することにより行うことができる。当該植物のアグロバクテリウムの菌液(感染養液)への浸漬は、通常、当該植物の上部を下に向けて、上部から下部の順に菌液に浸漬することで行うことができる(図2の真ん中の図)。
この際、全ての葉が菌液に完全に浸漬されることが望ましいが、必ずしも完全に浸漬されなくてもよい。特に、本発明の方法においては、上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させることができるため、中部から下部の葉の菌液への浸漬の成否が植物全体からの組換えタンパク質の収量に与える影響を低減することができる。
また、この感染工程において、浸漬した植物を入れた容器を真空デシケーターに入れて減圧し、その後、バルブを一気に開放して復圧を行うことができる(Vacuum Infiltration(真空浸潤法))。そして、復圧終了後、植物を正立に戻して栽培用パネルにはめ込んだ後、栽培装置にセットすることができる。
この際、全ての葉が菌液に完全に浸漬されることが望ましいが、必ずしも完全に浸漬されなくてもよい。特に、本発明の方法においては、上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させることができるため、中部から下部の葉の菌液への浸漬の成否が植物全体からの組換えタンパク質の収量に与える影響を低減することができる。
また、この感染工程において、浸漬した植物を入れた容器を真空デシケーターに入れて減圧し、その後、バルブを一気に開放して復圧を行うことができる(Vacuum Infiltration(真空浸潤法))。そして、復圧終了後、植物を正立に戻して栽培用パネルにはめ込んだ後、栽培装置にセットすることができる。
(4)工程(d)
本発明は、上記工程(c)で得られたアグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程を含む。本工程においては、上記工程(c)で得られた植物を、再度養液を循環させながら栽培することにより、組換えタンパク質を当該植物の葉において発現させることができる(発現工程)。
本工程における環境条件及び養液条件は、上記と同様、公知文献(特開2016-167990号公報)の内容に準じて適宜設定することができる。
また、本工程の期間としては、例えば1〜14日間、好ましくは6-8日間であるが、これらに限定されない。また、この工程においては、人工気象器を用いることができる。
本発明は、上記工程(c)で得られたアグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程を含む。本工程においては、上記工程(c)で得られた植物を、再度養液を循環させながら栽培することにより、組換えタンパク質を当該植物の葉において発現させることができる(発現工程)。
本工程における環境条件及び養液条件は、上記と同様、公知文献(特開2016-167990号公報)の内容に準じて適宜設定することができる。
また、本工程の期間としては、例えば1〜14日間、好ましくは6-8日間であるが、これらに限定されない。また、この工程においては、人工気象器を用いることができる。
(5)工程(e)
本発明は、上記工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程を含む。本工程においては、工程(d)で得られた植物から、枝葉、及び葉柄を含めずに全ての葉を収穫する。
本発明においては、葉の位置をLeaf positionともいい、葉の位置が最も下(根側)の葉から順に数えて1枚目から5枚目の部分(Leaf position 1〜5)を下部、6枚目から8枚目の部分(Leaf position 6〜8)を中部、9枚目以上の部分(Leaf position 9以上)を上部という(図2の右側)。一株当たりの上部の葉の枚数は、栽培の条件によって異なるが、1〜9枚である。
本工程において葉を収穫する際には、下の葉から下部、中部、上部と3つの部分に分けることができる。これらの葉は、−80℃にて冷凍保存することができる。
本発明は、上記工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程を含む。本工程においては、工程(d)で得られた植物から、枝葉、及び葉柄を含めずに全ての葉を収穫する。
本発明においては、葉の位置をLeaf positionともいい、葉の位置が最も下(根側)の葉から順に数えて1枚目から5枚目の部分(Leaf position 1〜5)を下部、6枚目から8枚目の部分(Leaf position 6〜8)を中部、9枚目以上の部分(Leaf position 9以上)を上部という(図2の右側)。一株当たりの上部の葉の枚数は、栽培の条件によって異なるが、1〜9枚である。
本工程において葉を収穫する際には、下の葉から下部、中部、上部と3つの部分に分けることができる。これらの葉は、−80℃にて冷凍保存することができる。
本発明においては、本工程の後にタンパク質の精製を行ってもよい。タンパク質の精製方法は公知(例えば、細胞工学別冊 「植物のタンパク質実験プロトコール」、1998年、秀潤社)であり、当業者はこれらの方法に基づいて植物由来のタンパク質を精製することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.形質転換アグロバクテリウムの調製
1.1 発現プラスミド
GFP(クラゲ緑色蛍光タンパク質)発現の検討には、以下の2種類の発現プラスミドを用いた。
植物バイナリーベクターpMM444(特開平9-313059号公報)のカナマイシン耐性発現カセット(ノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーターからなる)を、pIZI(特開平7-274752)由来のハイグロマイシン耐性発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第一イントロン、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーター)に置換した。このようにして得られたプラスミドに、さらに、pIG221(Plant Cell Physiol., 31, 805(1990))由来のGUS発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第一イントロン、β-グルクロニダーゼ遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーターからなる)のβ-グルクロニダーゼ遺伝子をEGFP遺伝子(pEGFP-N3:クローンテック社製)に置換したEGFP発現カセットを導入し、EGFP遺伝子発現プラスミドを作製した(以下、このプラスミドを「pGFP/MM444」と称する。その構造を図3に示す)。
1.形質転換アグロバクテリウムの調製
1.1 発現プラスミド
GFP(クラゲ緑色蛍光タンパク質)発現の検討には、以下の2種類の発現プラスミドを用いた。
植物バイナリーベクターpMM444(特開平9-313059号公報)のカナマイシン耐性発現カセット(ノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーターからなる)を、pIZI(特開平7-274752)由来のハイグロマイシン耐性発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第一イントロン、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーター)に置換した。このようにして得られたプラスミドに、さらに、pIG221(Plant Cell Physiol., 31, 805(1990))由来のGUS発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第一イントロン、β-グルクロニダーゼ遺伝子、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーターからなる)のβ-グルクロニダーゼ遺伝子をEGFP遺伝子(pEGFP-N3:クローンテック社製)に置換したEGFP発現カセットを導入し、EGFP遺伝子発現プラスミドを作製した(以下、このプラスミドを「pGFP/MM444」と称する。その構造を図3に示す)。
なお、図3、4において、遺伝子やその制御領域を示す記号の意味は、以下のとおりである。
35SP:カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター
int:ヒマカタラーゼ遺伝子 第一イントロン
Nost:ノパリンシンターゼ ターミネーター
SpecR:スペクチノマイシン耐性遺伝子
TcR:テトラサイクリン耐性遺伝子
HmR:ハイグロマイシン耐性遺伝子
OripBR322:pBR322 ori
OripRK2:pRK2 ori
BL:T-DNA left border
BR:T-DNA right border
35SP:カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター
int:ヒマカタラーゼ遺伝子 第一イントロン
Nost:ノパリンシンターゼ ターミネーター
SpecR:スペクチノマイシン耐性遺伝子
TcR:テトラサイクリン耐性遺伝子
HmR:ハイグロマイシン耐性遺伝子
OripBR322:pBR322 ori
OripRK2:pRK2 ori
BL:T-DNA left border
BR:T-DNA right border
また、pGFP/MM444におけるハイグロマイシン耐性発現カセットを削除し、ついで、EGFP発現カセットのEGFP遺伝子をP19遺伝子(tomato bushy stunt virus由来)に置換することでP19遺伝子発現プラスミドを作製した(以下、このプラスミドを「p19/MM444」と称する。その構造を図4に示す)。なお、P19遺伝子はEGFP遺伝子の発現を強化する働きがあり、このp19/MM444は、pGFP/MM444との共発現に供した。
1.2 アグロバクテリウムの形質転換と形質転換アグロバクテリウムグリセロールストックの調製
上述のプラスミド(pGFP/MM444、p19/MM444)をそれぞれ、エレクトロポレーション法(Mattanovich et al. 1989)によってアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens AGL1: Rhizobium radiobacter ATCC BAA-101; American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VA20108, USA)株に導入した(得られた形質転換アグロバクテリウムを、以下、それぞれ、GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウムと称する)。
形質転換アグロバクテリム(GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウム)を、カルベニシリン25μg/mlとスペクチノマイシン50μg/mlを含有するLB培地(SIGMA-ALDRICH社製)にて培養後、グリセロール を加えて最終的にグリセロール濃度を30%となるよう調整し、-80℃で保存することで各形質転換アグロバクテリウムグリセロールストックとした。
上述のプラスミド(pGFP/MM444、p19/MM444)をそれぞれ、エレクトロポレーション法(Mattanovich et al. 1989)によってアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens AGL1: Rhizobium radiobacter ATCC BAA-101; American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VA20108, USA)株に導入した(得られた形質転換アグロバクテリウムを、以下、それぞれ、GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウムと称する)。
形質転換アグロバクテリム(GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウム)を、カルベニシリン25μg/mlとスペクチノマイシン50μg/mlを含有するLB培地(SIGMA-ALDRICH社製)にて培養後、グリセロール を加えて最終的にグリセロール濃度を30%となるよう調整し、-80℃で保存することで各形質転換アグロバクテリウムグリセロールストックとした。
1.3 感染工程用形質転換アグロバクテリウムの調製
上記1.2で作製した形質転換アグロバクテリウム(GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウム)のグリセロールストックをLB培地に植菌して、培養を行った。
培養後、遠心することで集菌し、得られた菌体をインフィルトレーションbuffer(5mM MES、10mM MgSO4、pH5.6)に懸濁して濃縮菌液を得た。得られた濃縮菌体をGFP-アグロバクテリウムとP19-アグロバクテリウムの1:1混合菌液のOD600が0.8となるように4Lのインフィルトレーションbufferに加えて、pH5.6に調整し、感染工程用アグロバクテリウム菌液(GFP・P19共発現用)とした。
上記1.2で作製した形質転換アグロバクテリウム(GFP-アグロバクテリウム、P19-アグロバクテリウム)のグリセロールストックをLB培地に植菌して、培養を行った。
培養後、遠心することで集菌し、得られた菌体をインフィルトレーションbuffer(5mM MES、10mM MgSO4、pH5.6)に懸濁して濃縮菌液を得た。得られた濃縮菌体をGFP-アグロバクテリウムとP19-アグロバクテリウムの1:1混合菌液のOD600が0.8となるように4Lのインフィルトレーションbufferに加えて、pH5.6に調整し、感染工程用アグロバクテリウム菌液(GFP・P19共発現用)とした。
2.植物バイオマスの調製
2.1 播種
播種用液体肥料(大塚ハウスS1号(大塚アグリテクノ株式会社)0.78g/L、大塚ハウス2号(大塚アグリテクノ株式会社)0.25g/L、pH5.0)を水耕栽培用ウレタンマット(江松化成W587.5mm×D282mm×H28mm:12×2マス、穴径φ9mm)にしみこませ、育苗トレー(W600mm×D300mm×H300mm)に収め、ウレタンマットを1マスずつ分離した後、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)種子を1粒/1マスとなるよう播種した。
2.1 播種
播種用液体肥料(大塚ハウスS1号(大塚アグリテクノ株式会社)0.78g/L、大塚ハウス2号(大塚アグリテクノ株式会社)0.25g/L、pH5.0)を水耕栽培用ウレタンマット(江松化成W587.5mm×D282mm×H28mm:12×2マス、穴径φ9mm)にしみこませ、育苗トレー(W600mm×D300mm×H300mm)に収め、ウレタンマットを1マスずつ分離した後、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)種子を1粒/1マスとなるよう播種した。
2.2 育苗
播種後の植物を人工気象器(NC-410HC)(日本医化器械製作所)にて気温28℃、16時間昼/8時間夜の光サイクルにて12日間生育させた。ここで、人工気象器内の空間は一定の気温が保たれていた。
播種後の植物を人工気象器(NC-410HC)(日本医化器械製作所)にて気温28℃、16時間昼/8時間夜の光サイクルにて12日間生育させた。ここで、人工気象器内の空間は一定の気温が保たれていた。
2.3 栽培(前期)
2.2で育苗に用いたウレタンマットを1マスずつ分離し、栽培(前期)用パネル(W600mm×D300mm、30穴)に移植した。移植後の栽培(前期)用パネルを栽培装置にセットし、湛液方式(deep flow technique, DFT方式)にて9日間栽培した。環境条件および養液条件は以下のとおりに制御した。なお、気温を測定するための温度計は、半径5cm以内に複数の植物が存在する位置であって、植物栽培容器棚の棚面から6cm〜12cmの高さに温度センサーがくるように設置した。
2.2で育苗に用いたウレタンマットを1マスずつ分離し、栽培(前期)用パネル(W600mm×D300mm、30穴)に移植した。移植後の栽培(前期)用パネルを栽培装置にセットし、湛液方式(deep flow technique, DFT方式)にて9日間栽培した。環境条件および養液条件は以下のとおりに制御した。なお、気温を測定するための温度計は、半径5cm以内に複数の植物が存在する位置であって、植物栽培容器棚の棚面から6cm〜12cmの高さに温度センサーがくるように設置した。
《環境条件》
−気温:28℃
−相対湿度:60〜80%
−CO2濃度:500ppm
−照明:平均光合成光量子束密度(PPFD):160μmol/m2・秒、24h連続照射、三波長蛍光灯「ルピカライン」(三菱電機株式会社)
−気温:28℃
−相対湿度:60〜80%
−CO2濃度:500ppm
−照明:平均光合成光量子束密度(PPFD):160μmol/m2・秒、24h連続照射、三波長蛍光灯「ルピカライン」(三菱電機株式会社)
《養液条件》
液体肥料として、肥料A液(大塚ハウスS1号150g/L、大塚ハウス5号(大塚アグリテクノ株式会社)2.5g/L)、肥料B液(大塚ハウス2号100g/L)をそれぞれ脱塩素水に溶解し、等量に混合して使用した。pH調整にはpH調整剤ダウン(大塚アグリテクノ株式会社)および4%KOH水溶液を用いた。養液の電気伝導度(electrical conductivity, EC)およびpHは「らくらく肥料管理機3」(株式会社セムコーポレーション)を用いてEC:2.3mS/cm、pH6.0になるように調整した。また、養液の温度は25℃に制御した。なお、養液温度は、キャリークール(オリオン機械株式会社)を用いて冷却することで、25℃に制御した。EC、pHおよび温度を上記の通り一定とした養液を循環させて、植物の栽培を行った。
液体肥料として、肥料A液(大塚ハウスS1号150g/L、大塚ハウス5号(大塚アグリテクノ株式会社)2.5g/L)、肥料B液(大塚ハウス2号100g/L)をそれぞれ脱塩素水に溶解し、等量に混合して使用した。pH調整にはpH調整剤ダウン(大塚アグリテクノ株式会社)および4%KOH水溶液を用いた。養液の電気伝導度(electrical conductivity, EC)およびpHは「らくらく肥料管理機3」(株式会社セムコーポレーション)を用いてEC:2.3mS/cm、pH6.0になるように調整した。また、養液の温度は25℃に制御した。なお、養液温度は、キャリークール(オリオン機械株式会社)を用いて冷却することで、25℃に制御した。EC、pHおよび温度を上記の通り一定とした養液を循環させて、植物の栽培を行った。
2.4 栽培(後期)
栽培(前期)用パネルより植物体を取り出し、栽培(後期)用パネル(W600mm×D300mm、6穴)に定植した。移植後の栽培(後期)用パネルを栽培装置にセットし、DFT方式にて7日間(播種後28日間)以下の環境条件で栽培した。養液条件については以下の通り制御した。なお、温度は栽培(前期)と同様の方法で測定した。
栽培(前期)用パネルより植物体を取り出し、栽培(後期)用パネル(W600mm×D300mm、6穴)に定植した。移植後の栽培(後期)用パネルを栽培装置にセットし、DFT方式にて7日間(播種後28日間)以下の環境条件で栽培した。養液条件については以下の通り制御した。なお、温度は栽培(前期)と同様の方法で測定した。
《環境条件》
−温度:28℃(昼時間)/20℃(夜時間)
−相対湿度:60〜80%
−CO2濃度:1000ppm(昼時間)/500ppm(夜時間)
−照明:平均PPFD:180μmol/m2・秒、20h連続光照射・4h消灯の明暗サイクル、三波長蛍光灯「ルピカライン(登録商標)」(三菱電機株式会社)
−温度:28℃(昼時間)/20℃(夜時間)
−相対湿度:60〜80%
−CO2濃度:1000ppm(昼時間)/500ppm(夜時間)
−照明:平均PPFD:180μmol/m2・秒、20h連続光照射・4h消灯の明暗サイクル、三波長蛍光灯「ルピカライン(登録商標)」(三菱電機株式会社)
《養液条件》
栽培(後期)1〜4日目:上述の「2.3 栽培(前期)」と同様の養液条件
栽培(後期)5〜7日目:前述の1〜4日目の養液条件で循環していた養液を止め、初期値の液深を2cmとし循環させない条件
栽培(後期)1〜4日目:上述の「2.3 栽培(前期)」と同様の養液条件
栽培(後期)5〜7日目:前述の1〜4日目の養液条件で循環していた養液を止め、初期値の液深を2cmとし循環させない条件
栽培(後期)終了後の植物の総重量は、30.7g/株であった。この結果を、後述する4.2の表2において、感染前の植物の総重量(g/株)として示した。
3.植物へのアグロバクテリウム感染及び植物の採集
3.1 Vacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染
上記2.4で得られた播種後28日目のベンサミアナタバコを逆さにしてビーカー中のアグロバクテリウム菌液(上述の1.3で調製したもの)に全ての葉が完全に液中に浸るように沈めた。
その後、該ビーカーを真空デシケーター(FV-3P)(東京硝子器械株式会社)に入れ、19〜40Torrに1分間静置し、減圧した。その後、バルブを一気に開放して復圧をおこなった。
復圧終了後、植物を正立に戻して栽培(後期)用パネルにはめ込んだ後、栽培装置にセットした。
3.1 Vacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染
上記2.4で得られた播種後28日目のベンサミアナタバコを逆さにしてビーカー中のアグロバクテリウム菌液(上述の1.3で調製したもの)に全ての葉が完全に液中に浸るように沈めた。
その後、該ビーカーを真空デシケーター(FV-3P)(東京硝子器械株式会社)に入れ、19〜40Torrに1分間静置し、減圧した。その後、バルブを一気に開放して復圧をおこなった。
復圧終了後、植物を正立に戻して栽培(後期)用パネルにはめ込んだ後、栽培装置にセットした。
3.2 感染後の植物の栽培(発現工程)
感染後の栽培は人工気象器(日本医化器械製作所製)内の栽培装置を用いて行った。光源として、三波長蛍光灯「ルピカライン(登録商標)」(三菱電機株式会社)を用い、16時間昼/8時間夜の光サイクルで、平均PPFD180μmol/m2・秒にて栽培した。湛液方式(deep flow technique, DFT方式)にて、養液は、EC:2.1〜2.4mS/cm、pH5.6として栽培した。温度は20℃とした。また、相対湿度は60〜80%とした。養液の温度は20℃に制御した。なお、液体肥料は栽培(前期)と同様にして、EC、pHおよび温度を上記の通り一定とし、養液を循環させて、植物の栽培を行った。
感染後6日目の植物の総重量は55.3(g/株)であった。この結果を、後述する4.2の表2において、感染後6日目の総重量(g/株)として示した。
感染後の栽培は人工気象器(日本医化器械製作所製)内の栽培装置を用いて行った。光源として、三波長蛍光灯「ルピカライン(登録商標)」(三菱電機株式会社)を用い、16時間昼/8時間夜の光サイクルで、平均PPFD180μmol/m2・秒にて栽培した。湛液方式(deep flow technique, DFT方式)にて、養液は、EC:2.1〜2.4mS/cm、pH5.6として栽培した。温度は20℃とした。また、相対湿度は60〜80%とした。養液の温度は20℃に制御した。なお、液体肥料は栽培(前期)と同様にして、EC、pHおよび温度を上記の通り一定とし、養液を循環させて、植物の栽培を行った。
感染後6日目の植物の総重量は55.3(g/株)であった。この結果を、後述する4.2の表2において、感染後6日目の総重量(g/株)として示した。
3.3 栽培された感染葉の採集
上述の発現工程(6日間)を行ったアグロバクテリウム感染ベンサミアナタバコは、枝葉、及び葉柄を含めずに全ての葉を収穫し、植物全体におけるGFP発現量の割合を調べるため、下の葉から下部(Leaf position 1〜5)、中部(Leaf position 6〜8)、上部(Leaf position 9以上)と3つの部分に分けて回収し、−80℃にて保管した。なお、収穫した植物の一株当たりの上部(Leaf position 9以上)の葉の枚数は、14.7枚(3株平均)であった。
収穫した葉重量は、下部の葉(Leaf position 1〜5)が4.4 g-FW/株、中部の葉(Leaf position 6〜8)が8.6 g-FW/株、上部の葉(Leaf position 9以上)が9.1 g-FW/株であった。この結果を、後述する4.2の表2において、感染後6日目の葉重量(g-FW/株)として示した。また、この結果を図5にも示した。
上述の発現工程(6日間)を行ったアグロバクテリウム感染ベンサミアナタバコは、枝葉、及び葉柄を含めずに全ての葉を収穫し、植物全体におけるGFP発現量の割合を調べるため、下の葉から下部(Leaf position 1〜5)、中部(Leaf position 6〜8)、上部(Leaf position 9以上)と3つの部分に分けて回収し、−80℃にて保管した。なお、収穫した植物の一株当たりの上部(Leaf position 9以上)の葉の枚数は、14.7枚(3株平均)であった。
収穫した葉重量は、下部の葉(Leaf position 1〜5)が4.4 g-FW/株、中部の葉(Leaf position 6〜8)が8.6 g-FW/株、上部の葉(Leaf position 9以上)が9.1 g-FW/株であった。この結果を、後述する4.2の表2において、感染後6日目の葉重量(g-FW/株)として示した。また、この結果を図5にも示した。
4.GFP発現量の測定
4.1 粗抽出液の調製
3.3で凍結保存したGFP・P19共発現アグロバクテリウム感染葉をポリエチレン製のビニール容器(旭化成:Ziplocフリーザーバッグ)に入れ、ドライアイス上で破砕した。その後、サンプル新鮮重量5gに対し2倍量となるGFPアッセイ用抽出バッファー10mL(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、2mM EDTA、0.1%Triton−X100(pH7.25))を加え、ホモジナイザーで破砕懸濁することでタンパク質粗抽出を行った。粗抽出液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに移し、4℃、20,400×g、10分間遠心後、上清を回収し後述のGFP定量に用いた。
4.1 粗抽出液の調製
3.3で凍結保存したGFP・P19共発現アグロバクテリウム感染葉をポリエチレン製のビニール容器(旭化成:Ziplocフリーザーバッグ)に入れ、ドライアイス上で破砕した。その後、サンプル新鮮重量5gに対し2倍量となるGFPアッセイ用抽出バッファー10mL(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、2mM EDTA、0.1%Triton−X100(pH7.25))を加え、ホモジナイザーで破砕懸濁することでタンパク質粗抽出を行った。粗抽出液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに移し、4℃、20,400×g、10分間遠心後、上清を回収し後述のGFP定量に用いた。
4.2 GFP定量
GFP蛍光の検出には、Wallac ARVO SX 1420 Multilabel counter (Perkin-Elmer Life Sciences) を用いて485nmの励起光によって生じる507nmの発光を検出した。定量には段階希釈したGFPスタンダード (rAcGFP1 Protein:タカラバイオ社製) を用いた。測定サンプルはGFP用抽出バッファーで15倍希釈し、100μLずつ、96-ウェルマイクロプレート(Nuncフルオロヌンクプレート:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に分注し、測定を行い、新鮮重当たりのGFP発現量(GFP収率)(mg/kg-FW)、及び部位当たりのGFP発現量(GFP収量)(μg/Leaf position)を算出した。
その結果、GFP収率は、下部の葉(Leaf position 1〜5)が6.1 mg/kg-FW、中部の葉(Leaf position 6〜8)が11.0 mg/kg-FW、上部の葉(Leaf position 9以上)が17.3 mg/kg-FWであった。また、GFP収量は、下部の葉が27μg/Leaf position、中部の葉が95μg/Leaf position、上部の葉が157μg/Leaf positionであった。
これらの結果を表1及び図5に示した。
GFP蛍光の検出には、Wallac ARVO SX 1420 Multilabel counter (Perkin-Elmer Life Sciences) を用いて485nmの励起光によって生じる507nmの発光を検出した。定量には段階希釈したGFPスタンダード (rAcGFP1 Protein:タカラバイオ社製) を用いた。測定サンプルはGFP用抽出バッファーで15倍希釈し、100μLずつ、96-ウェルマイクロプレート(Nuncフルオロヌンクプレート:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に分注し、測定を行い、新鮮重当たりのGFP発現量(GFP収率)(mg/kg-FW)、及び部位当たりのGFP発現量(GFP収量)(μg/Leaf position)を算出した。
その結果、GFP収率は、下部の葉(Leaf position 1〜5)が6.1 mg/kg-FW、中部の葉(Leaf position 6〜8)が11.0 mg/kg-FW、上部の葉(Leaf position 9以上)が17.3 mg/kg-FWであった。また、GFP収量は、下部の葉が27μg/Leaf position、中部の葉が95μg/Leaf position、上部の葉が157μg/Leaf positionであった。
これらの結果を表1及び図5に示した。
[比較例1]
植物バイオマスの調製において、播種、育苗、栽培(前期)は実施例1と同様の条件で行い、「2.4 栽培(後期)」においては、養液の循環を止めず栽培を行い、上記3.1と同様にVacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染に供した。その後、実施例1と同様に発現工程を行い収穫した。なお、収穫した植物の一株当たりの上部(9以上)の葉の枚数は、14枚(3株平均)であった。
植物バイオマスの調製において、播種、育苗、栽培(前期)は実施例1と同様の条件で行い、「2.4 栽培(後期)」においては、養液の循環を止めず栽培を行い、上記3.1と同様にVacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染に供した。その後、実施例1と同様に発現工程を行い収穫した。なお、収穫した植物の一株当たりの上部(9以上)の葉の枚数は、14枚(3株平均)であった。
GFP定量について、新鮮重当たりのGFP発現量(GFP収率)(mg/kg-FW)、及び部位当たりのGFP発現量(GFP収量)(μg/Leaf position)を算出した。これらの結果を表1及び図5に示した。また、実施例1と同様に測定した植物の総重量および収穫した葉重量を、表2及び図5に示した。
すなわち、本発明の方法により、タバコ属植物の上部において、組換えタンパク質の発現量を増加させることができることが示された。
本発明の方法により、タバコ属植物の上部において、組換えタンパク質の発現量を増加させることができる。
Claims (2)
- タバコ属植物において、組換えタンパク質の発現量を増加させる方法であって、
(a) タバコ属植物を、水耕栽培において養液を循環させながら栽培する工程、
(b) 養液の循環を止めた状態で前記植物を栽培する工程、
(c) 工程(b)で得られた前記植物にアグロバクテリウムを感染させる工程であって、前記アグロバクテリウムは前記組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するものであり、前記感染はアグロバクテリウムの菌液に前記植物を浸漬することにより行うものである、工程、
(d) 工程(c)で得られた前記アグロバクテリウムに感染した植物を、養液を循環させながら栽培する工程、及び
(e) 工程(d)で得られた植物の葉から組換えタンパク質を抽出する工程
を含む、方法。 - 前記植物の上部の葉において組換えタンパク質の発現量を増加させる方法である、請求項1に記載の方法。
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KR102217467B1 (ko) * | 2020-11-05 | 2021-02-19 | (주)지플러스생명과학 | 식물기반 바이오약품 제조를 위한 식물형질전환이 이루어진 기주식물의 재배방법 |
-
2019
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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