JP6560495B2 - 植物を用いた一過性発現によるタンパク質の製造方法 - Google Patents

植物を用いた一過性発現によるタンパク質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、医療用途等に有用なタンパク質を、植物を用いた一過性発現により効率よく製造する方法に関する。
近年、植物を用いたタンパク質の製造方法は、複雑なタンパク質の発現が可能で、低コストでの大量生産ができ、分離精製が容易であり、かつ安全性が保障されている等の理由により注目されている。植物を用いたタンパク質の製造方法としては、以下に記載の方法が知られている。
例えば、特許文献1には形質転換アグロバクテリウムを感染させたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)を温室で栽培することによってH1タンパク質などのインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法が記載されている。また、特許文献2には植物に形質転換アグロバクテリウムを特定の圧力条件の下で感染させてペプチドまたはタンパク質を生産する方法が開示され、実施例1には、真空浸潤法及び過剰圧力により植物を処理する手順が具体的に記載されている。
特許文献3には、植物の組織を、感染性形質転換ベクター(アグロバクテリウム等)を含む培地中に浸す工程と、該組織に対する圧力を−10から−100kPaゲージへ低下させる工程と、該圧力を10〜60分間保持した後、大気圧以上に上昇させて、該形質転換ベクター由来の配列により選抜することで該植物細胞又は組織のゲノム中へ該形質転換ベクター由来の配列が組み込まれた形質転換体を得る工程とを含む植物の形質転換方法が記載されている。
特表2010−533001号公報 特表2013−534430号公報 国際公開第99/48355号パンフレット
上記のように、植物を用いてタンパク質を生産する技術は知られているが、その生産効率を向上させるための条件検討は未だ十分になされてはいない。
すなわち、特許文献1では、アグロバクテリウム浸透による植物におけるインフルエンザウイルスヘマグルチニンの一過性発現が検出されているものの、その詳細な発現効率については検討がなされていない。
特許文献2では、そのままの手を加えていない植物を、アグロバクテリウムを含む感染液と接触させているが、固形培地を用いて植物を栽培していることから、当該植物を処理する際に、地上部(葉、茎など)と地下部(根など)とに分けてチャンバーに収容することができ、水耕栽培時における根の取り扱いに関しては検討がなされていない。
特許文献3では、アグロバクテリウムを含む感染液に浸潤させる工程において、植物組織の過度の水潤化を避けるために、減圧度及び減圧時間を調整することが記載されているものの、植物での一過性発現における組織ごとの詳細な取り扱いについては検討されていない。
本発明は、植物を用いて目的タンパク質を製造する際に、植物をアグロバクテリウムに感染させる工程で、アグロバクテリウムを含む感染液に浸漬させる根や葉の部分の取り扱いについて検討し、目的タンパク質の製造効率を向上させることを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、宿主となる植物の栽培方法及びアグロバクテリウムによる感染工程における植物の処理方法を改善することにより、従来法による植物を用いたタンパク質の一過性発現効率を著しく向上させる方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]アグロバクテリウムに感染し得る植物を水耕栽培法で栽培する工程、
前記水耕栽培にて生育した根及び葉を含む植物を、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを含む感染液に接触させることにより感染させる工程、及び
前記感染後の植物をさらに栽培して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程を含む、植物によるタンパク質の製造方法であって、
前記感染工程は、
前記アグロバクテリウムを含む感染液に、前記植物の少なくとも一部を浸漬した状態で圧力を調節することにより行われ、当該工程において感染液に浸漬される根の割合が根全体の50質量%以下であり、かつ前記圧力調節段階の少なくとも一部において、一つの葉全体を当該感染液の液面下に浸漬する工程を含むことを特徴とする、植物によるタンパク質の製造方法。
[2]前記感染工程が、真空浸潤法にて行われる[1]に記載のタンパク質の製造方法。
[3]前記真空浸潤法が、減圧された状態から復圧する段階において、前記一つの葉全体が当該感染液の液面下に浸漬された状態で行われる[2]に記載のタンパク質の製造方法。
[4]前記発現工程の後に、前記植物から目的タンパク質を精製し、及び/又は回収する工程を含む[1]から[3]の何れかに記載のタンパク質の製造方法。
[5]前記目的タンパク質が、医療用タンパク質である[1]から[4]の何れかに記載のタンパク質の製造方法。
[6]前記植物が、ベンサミアナタバコである[1]から[5]の何れかに記載のタンパク質の製造方法。
本発明の植物によるタンパク質の製造方法によれば、水耕栽培を行うことで、土耕栽培に比べて雑菌等の混入が抑制されることにより安全性が高く、かつ栽培速度が加速されるためタンパク質の発現量が向上する。また、感染工程において、根が感染液に浸漬する程度を制御することで、感染後の発現工程において植物が枯れて生産性が低下することを抑制できる。さらに、感染工程における葉の浸漬状態を制御することでアグロバクテリウムの感染効率を向上させてタンパク質の発現量を増加させることができる。
プラスミドpGFP/MM444の構造を示す図である。 プラスミドp19/MM444の構造を示す図である。 感染工程における葉の浸漬状態と感染液の浸潤状態の関係を調べた結果である。 感染工程において、全体が浸漬された葉の割合とGFP発現量との関係を示したグラフである。
本発明の、植物を用いて目的タンパク質を製造する方法は、植物を水耕栽培法で栽培する工程(栽培工程)、次いで、該植物に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させる工程(感染工程)、及び、感染工程後の植物を栽培して前記目的タンパク質を発現させる工程(発現工程)を含む。
本発明で用いることのできる植物としては、アグロバクテリウムに感染し得る植物であり、目的タンパク質を発現する植物であればよく、特に限定されない。例えば、双子葉植物と単子葉植物が挙げられる。具体的には、双子葉植物ではナス科植物として、タバコ、ジャガイモ、トマト等が、アブラナ科植物として、ルッコラ、コマツナ、ミズナ、カラシナ、シロイズナズナ等が、キク科植物として、チコリ、エンダイブ、アーティチョーク等が、マメ科植物として、アルファルファ、リョクトウ、ダイズ等が、アカザ科植物としてホウレンソウ、テンサイ等が、シソ科植物としてシソ、バジル等が、セリ科植物としてミツバ等が例示される。単子葉植物としてはイネ科植物として、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等が、アオイ科植物としてはワタ等が例示される。中でも、ナス科植物が好ましく、タバコがより好ましい。
タバコとしては、タバコ(Nicotiana tabacum)、ベンサミアナアタバコ(N. benthamiana)、ハナタバコ(N. alata)、キダチタバコ(N. glauca)、ナガバナタバコ(N. longiflora)、ニコチアナ・ペルシア(N. persica)、ニコチアナ・ルスチカ(N. rustica)、ニコチアナ・シルベストシス(N. sylvestris)などが挙げられる。
本発明において、目的タンパク質とは、医療用や産業用に用いられるタンパク質であれば特に限定はされない。
医療用タンパク質としては、治療用タンパク質と診断タンパク質に分類され、治療用タンパク質としては、ペプチド、ワクチン、抗体、酵素、ホルモン(好ましくはペプチドホルモン)などが例示され、より具体的には、ワクチンとして使用されるウイルスタンパク質、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン等の造血因子、インターフェロン、インターロイキン(IL)−1やIL−6等のサイトカイン、モノクローナル抗体またはその断片、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、インシュリン、幹細胞成長因子(SCF)などが例示される。また、診断タンパク質としては、抗体、酵素、ホルモン等が例示される。
ワクチンとして使用されるウイルスタンパク質として好ましくは、ウイルス様粒子(VLP)の構成タンパク質が挙げられる。VLPの構成タンパク質は単一のタンパク質でもよいし、1つ以上のタンパク質を含んでもよい。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)などが挙げられ、インフルエンザウイルスのVLPの構成タンパク質としてはインフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質などが例示される。
産業用タンパク質とは、食品、飼料、化粧品、繊維、洗剤、化学品などに用いられるタンパク質であり、ペプチド、酵素、機能性タンパク質が例示される。具体的には、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペプチダーゼ、ルシフェラーゼ、ラクタマーゼ、コラーゲン、ゼラチン、ラクトフェリン、クラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP)などが例示される。
以下、本発明の製造方法の各工程について説明する。
<栽培工程>
本発明は、前記植物を水耕栽培法で栽培する工程を有することを特徴とする。
水耕栽培とは、養液栽培のことをいい、養液(液体肥料)が根域を流動する流動法と養液の動きが毛管現象に依存した静置法がある。流動法には緩傾斜の平面上に養液を薄く流下させる薄膜水耕法(NFT:Nutrient Film Technique)と、溜めた養液中で栽培する湛液型水耕法(DFT:Deep Flow Technique)等がある。湛液型水耕法(DFT)は、液肥の流動により十分な酸素を根部に供給して養分吸収を促進し、さらに液肥の温度及び濃度を含む根圏環境も安定化し、栽培環境を一定に整えるという利点がある。
水耕栽培法は、栽培棚の多段化や、養液のリサイクル、肥料成分およびpHの管理が容易であることから好ましく、これらの中でも、根が養液中でむき出しの状態となるbare-root法が好ましい。bare-root法とは、根の全体またはその一部がそのまま養液に浸された状態で栽培する方法をいう。尚、根元はウレタン等の支持体で支えられていてもよい。根は水の中を自由に伸び、養液との接触面積が増大することで、十分な量の水分と養分を吸収できるため、一般に土壌栽培に比べ生育が旺盛になるからである。
また、栽培工程における栽培日数は、通常5日以上、好ましくは7日以上、より好ましくは10日以上であり、また、通常35日以下、好ましくは28日以下、より好ましくは21日以下である。
栽培工程においては、必要に応じて、移植を行なってもよい。移植の時期としては、栽培後6日〜15日の間に行なうことが好ましい。
なお、本発明の製造方法においては、栽培工程の前に育苗工程を行うことが好ましい。育苗工程とは、植物の苗を一定期間人工的な環境下で発芽・育成させ、その後栽培工程に移植するまでの工程をいう。該育苗工程における温度、湿度等の条件は上記栽培工程における条件と同様の条件とすることができる。また、光照射の条件も太陽光、蛍光灯、LED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL、HEFL)、無機・有機EL等を用いた通常の条件を採用することができるが、育苗工程においては、光照射の時間が一日当たり12時間以上24時間以下であるサイクル下で植物を育苗することが好ましい。なお、「光の照射時間が1日あたり12時間以上24時間以下」とは、必ずしも連続照射でなくてもよく、例えば、照射時間が1日あたり20時間の場合、10時間以上の連続照射を1日に2回行なってもよい。
栽培工程では植物を、上記条件下で栽培することができれば、いずれの植物生産システムを用いてもよく、特に限定されない。栽培時の光の波長や強度の調整のしやすさから、半閉鎖型、または閉鎖型の植物工場が好ましく、閉鎖型植物工場がより好ましい。半閉鎖型としては、園芸施設、太陽光型植物工場などが例示される。
ここで、閉鎖型植物工場は、太陽光が当たらない植物工場を意味し、温度、湿度、二酸化炭素濃度、人工光の波長および照射時間などが制御された空間で植物を栽培するシステムである。閉鎖型植物工場を用いることにより、環境の制御が可能なので、植物およびそれが生産する物質の品質が安定するという効果や、外気に含まれる病原菌の感染を防ぐことができるという効果がある。
閉鎖型植物工場としては、環境制御された部屋と、該環境制御された部屋内に設置され植物栽培容器を載置する植物栽培容器棚と、該植物栽培容器棚の近接部に配され植物に光を近接照射する照明を含むシステムが例示される。植物栽培容器棚は複数段に配置可能である。
栽培工程で栽培される植物は、その草丈(cm)が2cm以上であることが好ましく、3cm以上であることがより好ましく、また、25cm以下であることが好ましく、15cm以下であることがより好ましい。草丈が、上述の範囲内であると、栽培棚の多段化により閉鎖型植物工場のSTY(space time yield)向上に有利である。さらに、温度、湿度、気流などの栽培環境条件の精密制御が可能となり、栽培工程における植物の生長速度、及び発現工程における目的タンパク質の発現が向上するという効果が得られるので好ましい。なお、ここでいう「草丈」とは、地上部の下端から生長点までの長さを意味し、収穫直後の植物の地下部を切除した後、草丈の長さを測定することにより求めることができる。
栽培工程で栽培される植物は、その地上部新鮮重量(g)が3g以上であることが好ましく、10g以上であることがより好ましく、また、100g以下であることが好ましく、70g以下であることがより好ましい。地上部新鮮重量が、上述の範囲内である植物は生長速度が速く、このような生長速度の速い時期にある植物を用いると、目的タンパク質の生産効率が向上するので好ましい。
栽培工程で栽培される植物は、その葉重量(g)が2.5g以上であることが好ましく、7.5g以上であることがより好ましく、また、80g以下であることが好ましく、60g以下であることがより好ましい。葉重量が、上述の範囲内である植物は、生長速度が速く、このような生長速度の速い時期にある植物を用いると、目的タンパク質の生産効率が向上するので好ましい。
栽培条件は、植物の生育および目的タンパク質の生産に適した条件であれば特に制限されないが、例えば、以下の条件で栽培することができる。
植物工場内の温度は、通常10℃以上、好ましくは15℃以上であり、また、通常40℃以下、好ましくは37℃以下である。
植物工場内の湿度は、通常40%以上、好ましくは50%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下である。
植物工場内の二酸化炭素濃度は、通常300ppm以上、好ましくは500ppm以上であり、また、通常5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下である。
栽培工程において使用される光源としては、特に制限されないが、太陽光、蛍光灯、LED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL、HEFL)、無機・有機EL等を例示することができる。好ましくは、蛍光灯、LED、冷陰極蛍光ランプが挙げられ、さらに好ましくはLEDが挙げられる。LEDは、白熱電球、HIDランプと比較して、光変換効率が高く省電力であるので好ましい。また、植物に葉焼け障害を引き起こす熱線の放出量が小さい点でも好ましい。
栽培工程における光強度としては、光合成有効光量子束密度(PPFD)等を測定することで評価できる。PPFDとは、光合成に有効な可視領域400〜700nmの光の単位時間、単面積当たりの光量子数で表され、単位は、μmol・m−2・s−1である。PPFDは、通常30μmol・m−2・s−1以上から600μmol・m−2・s−1以下、好ましくは、50μmol・m−2・s−1以上から500μmol・m−2・s−1以下、さらに好ましくは、70μmol・m−2・s−1以上400μmol・m−2・s−1以下で栽培される。ここで、PPFDは、光量子計などを用いて測定することができる。
なお、栽培工程の全期間にわたって、光強度の条件を上記の条件とする必要はなく、例えば、栽培工程を前半と後半に分けて後半のみ強度の条件を上記の条件とするなど、栽培工程のうちの一定期間のみ上記の条件下で植物を栽培してもよい。この場合、上記の条件下とする期間としては、全栽培期間の1%以上の期間が好ましく、20%以上の期間がより好ましい。
栽培工程の全期間のうち、光強度の条件を上記の条件としない期間の光強度の条件については特に制限はなく、この期間は開放型植物工場で太陽光のもと、栽培してもよい。
また、栽培工程において、植物は、光照射の時間が一日当たり10時間以上24時間未満であるサイクル下で栽培されるか、または、連続光下により栽培されることが好ましい。中でも、連続光下により栽培されることがより好ましい。上述の範囲にすると、植物生速度が加速され、収穫までの栽培期間が短縮されるので好ましい。なお、「光の照射時間が1日あたり10時間以上24時間未満」とは、必ずしも連続照射でなくてもよく、例えば、照射時間が1日あたり20時間の場合、10時間以上の連続照射を1日に2回行なってもよい。
なお、ここで照射する光は、パルス光であってもよい。パルス光は、1マイクロ秒〜1秒間の短い間隔でLED等を点滅させることにより得られるものであり、このようなパルス光を用いることにより、生理学上植物が光を必要としない時間には光を当てず、光を必要とする時間だけ光を当てることができるので光合成速度を上昇させ、電力コストを抑えることができる。この場合の照射時間は、LEDが点灯していない時間も照射時間に含むこととし、1日当たりのパルス光照射した時間の合計とする。
<感染工程>
感染工程では、前記栽培工程で得られた植物に、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させる。
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとは、前述した目的とする医療用又は産業用タンパク質をコードするポリヌクレオチドのことである。ポリヌクレオチドとしては、天然型の配列に、目的とする目的タンパク質が得られる範囲内で、適宜、変異や改変を加えたものを用いてもよい。
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを植物内で過剰発現させるには、該ポリヌクレオチドを適当なプロモーターの下流に機能的に連結し、得られたポリヌクレオチド構築物をアグロバクテリウム法によって植物細胞に導入すればよい。上記プロモーターは、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネのアクチンプロモーターやElongation factor 1βプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
アグロバクテリウム法を行う際は、アグロバクテリウムのTiプラスミドやRiプラスミド由来のT−DNA(transfer DNA)を含むバイナリーベクターまたは中間ベクターを用いることができる(Nucl. Acids Res. 12(22):8711-8721 (1984), Plasmid, 7, 15-29 (1982))。バイナリーベクターの具体例として、pBI系ベクター(例えば、pRiceFOX)、pPZP系ベクター(Plant Molecular Biology 25(6): 989-94. (1994))、pCAMBIA系ベクター(ベクター骨格:pPZPベクター)、pSMA系ベクター(Plant Cell Reports 19: 448-453. (2000))を挙げることができるが、これらに限定されない。
具体的な感染工程としては、前記アグロバクテリウムを含む感染液に、前記植物の少なくとも一部を浸漬した状態で圧力を調節することによって行う。アグロバクテリウムを含む感染液は、上記ベクターにて形質転換されたアグロバクテリウムを培養して得られた菌体を、植物組織への浸潤に適した緩衝液に懸濁したものを用いることができ、好ましくは感染液の濁度がOD600で0.05〜5、より好ましくは0.1〜2、さらに好ましくは0.2〜1程度のものを用いることができる。
植物を浸漬した状態とは、植物全体が感染液に浸漬している必要はなく、例えば、茎、根等の一部が感染液から露出していてもよい。
感染液に植物を浸漬した状態で圧力を調節するとは、当該植物の一部を前記アグロバクテリウム含む感染液に浸漬した状態で、加圧又は減圧処理を含む圧力サイクル処理によってアグロバクテリウムを植物細胞に感染させることをいう。大気圧(通常は、1気圧=101.325kPa=約0.1MPa)よりも高い圧力で処理する加圧処理を行なう場合、少なくとも1.1気圧(112kPa)、1.5気圧(152kPa)、2気圧(203kPa)、2.5気圧(253kPa)、3気圧(304kPa)、4気圧(405kPa)若しくは5気圧(507kPa)又は任意の中間値又はこれを超える任意の値で処理する。好ましくは1.7気圧(172kPa)〜10気圧(1013kPa)の範囲であり、より好ましくは4気圧(405kPa)〜8気圧の範囲である。大気圧よりも低い圧力で処理する減圧処理を行なう場合、0.005気圧(0.5kPa)〜0.3気圧(30kPa)の範囲が好ましく、0.01気圧(1.0kPa)〜0.1気圧(10.1kPa)の範囲がより好ましく、0.02気圧(2.0kPa)〜0.06気圧(6.1kPa)の範囲がさらに好ましい。減圧の圧力が高すぎる場合は、感染液の浸潤が不十分になるため好ましくない。逆に圧力が低すぎる場合は、液体が沸点に達し著しく蒸発して液体が減少し浸潤が不十分になることや、製造プロセスや設備が大がかりになるためやはり好ましくない。したがって、これらの加圧処理又は減圧処理する時間は、植物の種類や処理する組織に応じて適宜設定することができるが、10秒〜10分であり、好ましくは20秒〜5分であり、さらに好ましくは30秒〜3分程度である。
感染液に植物を浸漬した状態で圧力を調節する際、装置が比較的簡素である等、利便性の点で優れていることから、加圧処理よりも減圧処理が好ましい。減圧処理の一形態として、真空浸潤法(vacuum infiltration)が挙げられ、この真空浸潤法によりアグロバクテリウムを植物に感染させることが好ましく、中でも、Plant Science, 122, 1: 101-108 (1997)によって記載された真空に基づく一過性発現方法を使用することがより好ましい。真空浸潤法(vacuum infiltration)とは、植物の細胞間または間質腔の中へアグロバクテリウムの浸透を可能にする方法であり、物理的に、真空は、植物の組織における細胞の間の空気空間を減少させる陰性の大気圧を生成する。継続期間が長いほどおよび真空の圧力が低いほど、植物の組織内の空気空間は少ない。増加した圧力により、感染液(形質転換ベクターを有するアグロバクテリウムを含む)が植物の組織の中へ移動することが可能になる。植物の感染のために、アグロバクテリウムの存在下において植物部分に一定の期間で真空を適用することができる。真空状態とするために減圧にした後、通常の圧力に復帰(復圧)することで、植物の感染が可能となる。感染により、ポリヌクレオチド構築物を含むアグロバクテリウムは、組織、例えば、葉、植物の地上構造の一部(茎、葉および花を含む)、植物の他の一部(茎、根、花)、または全草の細胞間の空間に入り込む。表皮の通過後に、アグロバクテリウムは感染し、細胞へとポリヌクレオチドを移行させる。ポリヌクレオチドはエピソームとして転写され、mRNAは翻訳され、感染した細胞中で対象となるタンパク質の産生をもたらすが、核の内部でのポリヌクレオチドの継代は一過性である。
本発明の方法において、上記感染工程において感染液に浸漬される根の割合が根全体の新鮮質量の50質量%以下であることを特徴とする。ここで、根の新鮮質量の50質量%を超える割合で感染液に浸漬された状態で上記圧力調節を行うと、その後の発現工程において植物の生育が阻害されるため好ましくない。後述する比較例でも例示されるように、根の新鮮質量の50質量%を超える割合で感染液に浸漬されたまま真空浸潤処理を行うと、その後の発現工程において植物が枯れてしまうことにより植物自体の重量が減少し、その結果、目的とするタンパク質量も著しく低下するからである。
前述のとおり、本発明の好ましい実施形態ではbare-root法による水耕栽培を行うが、bare-root法で栽培された植物は根の全体または一部がむき出しの状態となっているため、上記感染工程において感染液に根が浸漬されやすい傾向がある。そのため、感染工程において根を保護する手段を適用することが好ましい。根を保護する手段としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
(1)植物の地上部と地下部の間に仕切り板を設けることにより、根が感染液中に落下しないようにする。
(2)根の一部をクリップなどで植物を保持する容器の外側等に固定し、根が感染液中に落下しないようにする。
(3)根の少なくとも一部をプラスチック袋に納めることにより感染液の浸漬を防ぐ。
一方で、水耕栽培、特にbare-root法で栽培された植物を用いる場合には、根の周辺に土壌などの汚染物質を伴う可能性が少ないことから、上記感染工程において取り扱いが容易となるメリットがある。特に、感染液に浸漬して圧力調整を行う場合、圧力装置内に根を含む植物全体を配置したとしてもコンタミネーションなどの問題が発生しにくく好ましい。
したがって、好ましい実施形態では、感染工程における根の浸漬割合は、根全体の新鮮質量に対して40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、実質的に根を感染液に浸漬しないことが望まれる。この原因は必ずしも明らかではないが、水耕栽培された根は物理的な刺激に弱く、感染液に浸漬した状態で圧力変化を受けると根の有する吸収機能が阻害されるからではないかと考えられる。
一方、葉については前記の圧力を調節する段階において、葉全体が当該感染液の液面下に浸漬された状態で圧力を調節されることが好ましい。ここで、一つの葉全体が感染液の液面下に浸漬されていることが必要な理由は必ずしも明らかではないが、葉の一部でも感染液の液面より露出していると、そのような葉においては、一つの葉全体の感染液の浸潤がほとんど見られないという本発明者らの知見に基づくものである。したがって、葉の新鮮質量を基準として、感染させる植物に存在する葉において、葉の全体が感染液の液面下に浸漬している割合が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく65質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましい。最も好ましくは、ほとんど全ての葉が感染液の液面下に浸漬した状態で、上記圧力調節を受けることが望まれる。ここで、圧力調節方法のうち、真空浸潤法が適用される場合には、減圧下におかれた葉が、通常の圧力に復帰する復圧段階において、上記所定の割合で1つの葉全体が感染液の液面下にあることが好ましい。すなわち、復圧段階における葉の浸漬状態を管理することによって、安定的かつ効率的に感染液を浸潤させて目的タンパク質の発現を促進することができる。なお、本発明の方法おいて用いる植物は特に限定されるものではないが、「1つの葉」を識別するために、根、茎、および葉の区別が可能である植物を用いることが好ましい。
<発現工程>
発現工程では感染工程後の植物を栽培して該目的タンパク質を発現させる。発現工程での栽培条件は目的タンパク質が効率よく発現できる条件であれば特に制限されないが、該発現工程における温度、湿度等の条件は上記栽培工程における条件と同様の条件とすることができる。また、光照射の条件も太陽光、蛍光灯、LED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL、HEFL)、無機・有機EL等を用いた通常の条件を採用することができる。発現工程における栽培日数は、好ましくは3日以上、より好ましくは4日以上であり、また、好ましくは14日以下、より好ましくは10日以下である。
<目的タンパク質回収工程>
発現工程において、植物内に蓄積した目的タンパク質は植物から回収されることが好ましい。植物から目的タンパク質を含む画分を取得し、目的タンパク質を適当な方法により精製することが好ましい。なお、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは精製のためのタグ配列を含んでもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
1.植物バイオマスの調製
(1)播種
播種用液体肥料(大塚ハウスS1号(大塚アグリテクノ株式会社)0.78g/L、大塚ハウス2号(大塚アグリテクノ株式会社)0.25g/L、pH5.0)を、水耕栽培用ウレタンマット(江松化成 W587.5mm×D282mm×H28mm:12×2マス 穴径φ9mm)にしみこませ、育苗トレー(W600mm×D300mm×H300mm)に収め、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)種子を播種した。
(2)育苗
播種後の植物を人工気象器(NC−410HC)(日本医化器械製作所)にて室温28℃、16時間昼/8時間夜の光サイクルにて12日間生育させた。
(3)栽培(水耕、前期)
(2)で育苗に用いたウレタンマットを1マスずつ分離し、栽培(前期)用パネル(W600mm×D300mm、30穴)に移植した。移植後の栽培(前期)用パネルを栽培装置にセットし、湛液方式(deep flow technique、DFT方式)にて9日間栽培した。
環境条件および液体肥料条件は以下のとおりに制御した。
《環境条件》
−温度:28℃
−相対湿度:60〜80%
−CO濃度:400ppm
−照明:平均光合成光量子束密度(PPFD):140μmol/m・秒、24h連続照射、三波長蛍光灯「ルピカライン」(三菱電機株式会社)
《液体肥料条件》
液体肥料は、肥料A液(大塚ハウスS1号150g/L、大塚ハウス5号(大塚アグリテクノ株式会社)2.5g/L)、肥料B液(大塚ハウス2号100g/L)をそれぞれ脱塩素水に溶解し、等量に混合して使用した。pH調整にはpH調整剤ダウン(大塚アグリテクノ株式会社)および4%KOH水溶液を用いた。液体肥料の電気伝導度(electrical conductivity、EC)およびpHは「らくらく肥料管理機3」(株式会社セムコーポレーション)を用いてEC:2.3mS/cm、pH6.0になるように調整した。
(4)栽培(水耕、後期)
栽培(前期)用パネルより植物を取り出し、栽培(後期)用パネル(W600mm×D300mm、6穴)に定植した。移植後の栽培(後期)用パネルを栽培装置にセットし、DFT方式にて7日間(播種後28日間)栽培した。液体肥料条件は、液体肥料条件のうち電気伝導度(EC)を4.0mS/cmに変更したこと以外は、栽培(前期)と同様の条件に制御した。
《環境条件》
−温度:28℃
−相対湿度:60〜80%
−CO濃度:400ppm
−照明:平均光合成光量子束密度(PPFD):140μmol/m・秒、24h連続照射、三波長蛍光灯「ルピカライン」(三菱電機株式会社)
(5)栽培(固形培地耕)
市販の泥炭ゴケ基質(ピートモスBM1)と水を1:3の割合で混ぜ合わせた。その水を含んだ泥炭ゴケ基質170gを底に穴の開いたポリポットに入れた。1(2)で育苗に用いたウレタンマットから1マス分を分離し、ポリポットに移植した。上記1(3)の栽培装置の栽培槽にポリポットを置いて、9日間栽培した。環境条件および液体肥料条件は1(3)と同様に制御した。
2.形質転換アグロバクテリウムの調製
(1)発現プラスミド
GFP(クラゲ緑色蛍光タンパク質)発現の検討には、以下の2種類の発現プラスミドを用いた。植物バイナリーベクターpMM444(特開平9−313059号公報)のノパリンシンターゼ遺伝子を、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーター、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第一イントロン、及びノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーターからなる発現カセット(pIG221:Plant Cell Physiol.,p19/MM444 31, 805(1990))にEGFP遺伝子(pEGFP−N3:クローンテック社製)を組み込んだEGFP発現カセットに置換し、EGFP遺伝子発現プラスミドを作製した(以下、このプラスミドを「pGFP/MM444」と称する。その構造を図1に示す)。
また、pGFP/MM444におけるEGFP発現カセットを、35Sプロモーター及びβ−グルクロニダーゼ遺伝子のターミネーターからなる発現カセット(pBI221:Plant Mol. Biol. Rep. 5:387-405(1987))にP19遺伝子を組み込んだP19遺伝子発現カセットに置換し、プラスミドを作製した(以下、このプラスミドを「p19/MM444」と称する。その構造を図2に示す)。なお、P19遺伝子はEGFP遺伝子の発現を強化する働きがあり、このp19/MM444は、pGFP/MM444との共発現に供した。
(2)アグロバクテリウムの形質転換と形質転換アグロバクテリウムグリセロールストックの調製
上述のプラスミド(pGFP/MM444、p19/MM444)をそれぞれ、エレクトロポレーション法(Mattanovich et al.1989)によってアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens AGL1: Rhizobium radiobacter ATCC BAA-101; American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VA20108,USA)株に導入した(得られた形質転換アグロバクテリウムを、以下、それぞれ、GFP−アグロバクテリウム、P19−アグロバクテリウムと称する)。
形質転換アグロバクテリム(GFP−アグロバクテリウム、P19−アグロバクテリウム)を、カルベニシリン25μg/mlとスペクチノマイシン50μg/mlを含有するLB培地(SIGMA−ALDRICH社製)にて培養後、グリセロールを加えて最終的にグリセロール濃度を30%となるよう調整し、−80℃で保存することで各形質転換アグロバクテリウムグリセロールストックとした。
(3)感染工程用形質転換アグロバクテリウムの調製
上記(2)で作成した形質転換アグロバクテリウム(GFP−アグロバクテリウム、P19−アグロバクテリウム)のグリセロールストックをLB培地に植菌して、培養を行った。
培養後、遠心することで集菌し、得られた菌体をインフィルトレーションbuffer[5mMのMES、10mMのMgCl、pH5.6]に懸濁して濃縮菌液を得た。得られた濃縮菌体をGFP−アグロバクテリウムとP19−アグロバクテリウムの1:1混合菌液のOD600が0.8となるように4Lのインフィルトレーションbufferに加えて、pH5.6に調整し、感染工程用アグロバクテリウム菌液とした。
[実施例1、比較例1]
3.Vacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染(感染工程)
上記1(3)と(5)で得られた播種後21日目のベンサミアナタバコを逆さにして、全ての葉について、一つ一つの葉全体が浸潤するように、ビーカー中のアグロバクテリウム菌液(上述の2.(1)で調製したもの)中に浸るように沈めた。尚、(5)については、植物を逆さにした際に泥炭ゴケ基質が落ちないようするため、ビニールシートで泥炭ゴケ基質の箇所を覆った。
その後、該ビーカーを真空デシケーター(FV−3P)(東京硝子器械株式会社)に入れ、19Torr(2.5kPa)〜40Torr(5.3kPa)に1分間静置し、減圧した。その後、バルブを一気に開放して復圧をおこなった。
4.感染葉の栽培(発現工程)
感染後の栽培は人工気象器(日本医化器械製作所) を用いて行った。光源として、三波長蛍光灯「ルピカライン」(三菱電機株式会社)を用い、16時間昼/8時間夜の光サイクルで、平均PPFD150μmol/m・秒にて栽培した。液体肥料は、EC:2.1〜2.2mS/cm、pH5.5とした。温度は、25℃昼/20℃夜のサイクルとした。また、相対湿度は60〜85%とした。
5.栽培された感染葉の採集
6日間かけて上述の栽培工程を行ったアグロバクテリウム感染ベンサミアナタバコは、葉柄を含めずに全ての葉を収穫した。1株当たりの葉の総重量を測定し、その後、−80℃にて保管した。尚、葉の総重量については、3株の測定結果を平均し、固形培地耕栽培した植物の場合を100%として表1に示した。
表1に示したように、水耕栽培した葉の総質量は、固形培地で栽培した葉の総質量の約3倍であり、有意に成長速度が速いことが分る。
6.GFP発現量の測定
(1)粗抽出液の調製
5.で凍結保存したGFPおよびP19発現用アグロバクテリウム感染葉を乳鉢に移し、液体窒素中で磨砕した。その後、サンプル新鮮重量の6倍量のGFPアッセイ用抽出バッファー(50mMのTris−HCl、150mMのNaCl、2mMのEDTA、0.1%Triton−X100(pH7.25))を加え、激しく懸濁することでタンパク質粗抽出を行った。粗抽出液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに移し、4℃、20,400×g、10分間遠心後、上清を回収し、後述のGFP定量に用いた。
(2)GFP定量
GFP蛍光の検出にはWallac ARVO SX 1420 Multilabel counter (Perkin-Elmer Life Sciences) を用いて485nmの励起光によって生じる507nmの発光を検出した。定量には段階希釈したGFPスタンダード(rAcGFP1 Protein:タカラバイオ社製)を用いた。測定サンプルはGFP用抽出バッファーで5倍希釈し、100μLずつ、96−wellマイクロプレート(Nuncフルオロヌンクプレート:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に分注し、3株の測定結果を平均し、新鮮重当たりのGFP発現量(mg/kg−FW)を算出した。固形培地耕栽培した植物の場合の総GFP量(mg)を100%として表1に示した。
表1より、GFP発現量についても、水耕栽培した葉の方が、固形培地栽培した葉に比べて約4倍と高いことが分った。
[実施例2〜3]
7.Vacuum Infiltration(真空浸潤法)による葉への浸潤
上記1(4)で得られた播種後28日目のベンサミアナタバコの茎から葉と葉柄の部分を1枚ずつ切り出した。次に、ビーカー中の水を入れ、3通りの方法で浸漬させた。1つ目は、葉と葉柄のすべてが浸漬する場合(実施例2)、2つ目は、葉柄が水面から出ている場合(実施例3)、3つ目は、葉の一部が水面から出ている場合(比較例1)である。その後、該ビーカーを真空デシケーター(FV−3P)(東京硝子器械株式会社)に入れ、19Torr(2.5kPa)〜40Torr(5.3kPa)に1分間静置し、減圧した。その後、バルブを一気に開放して復圧をおこなった。その結果を図3に示す。
図3に示したように、葉の一部でも液面から出ている場合は、感染液が全く浸潤せず、葉の全体が液面下にあることが重要であることが分かった。
[実施例4]
8.Vacuum Infiltration(真空浸潤法)による感染(感染工程)
上記1(4)で得られた播種後28日目のベンサミアナタバコを逆さにして、全ての葉について、一つ一つの葉全体が浸潤するように、ビーカー中のアグロバクテリウム菌液(上述の2.(1)で調製したもの)中に浸るように沈めた。
その後、該ビーカーを真空デシケーター(FV−3P)(東京硝子器械株式会社)に入れ、19Torr(2.5kPa)〜40Torr(5.3kPa)に1分間静置し、減圧した。その後、バルブを一気に開放して復圧をおこなった。
復圧終了後、植物を正立に戻し、液体肥料(EC:2.1〜2.2mS/cm、pH5.5)の入った丸型容器(丸型V式容器V−6)(アズワン)に植えた。
9.感染葉の栽培(発現工程)
感染後の栽培は人工気象器(LH−410SP)(日本医化器械製作所)を用いて行った。光源として、LED照明ユニット(3LH−256)(日本医化器械製作所)を用い、16時間昼/8時間夜の光サイクルで、平均PPFD150μmol/m・秒にて栽培した。温度は、25℃昼/20℃夜のサイクルとした。また、相対湿度は60〜85%とした
10.栽培された感染葉の採集
6日間かけて上述の栽培工程を行ったアグロバクテリウム感染ベンサミアナタバコは、葉柄を含めずに全ての葉を収穫し,−80℃にて保管した。
11.GFP発現量の測定
(1)粗抽出液の調製
10.で凍結保存したGFPおよびP19発現用アグロバクテリウム感染葉を乳鉢に移し、液体窒素中で磨砕した。その後、サンプル新鮮重量の6倍量のGFPアッセイ用抽出バッファー(50mMのTris−HCl、150mMのNaCl、2mMのEDTA、0.1%Triton−X100(pH7.25))を加え、激しく懸濁することでタンパク質粗抽出を行った。粗抽出液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに移し、4℃、20,400×g、10分間遠心後、上清を回収し、後述のGFP定量に用いた。
(2)GFP定量
GFP蛍光の検出にはWallac ARVO SX 1420 Multilabel counter(Perkin-Elmer Life Sciences)を用いて485nmの励起光によって生じる507nmの発光を検出した。定量には段階希釈したGFPスタンダード(rAcGFP1 Protein:タカラバイオ社製)を用いた。測定サンプルはGFP用抽出バッファーで5倍希釈し、100μLずつ、96−wellマイクロプレート(Nuncフルオロヌンクプレート:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に分注し、測定を行い、新鮮重当たりのGFP発現量(mg/kg−FW)を算出した。2株の測定結果を平均し、葉の質量の浸漬割合100質量%、根の質量の浸漬割合0質量%のGFP発現量(mg/kgFW)を100%として表2に示した。
[実施例5〜7]
実施例4で、8.感染工程において、液面下の葉の質量の浸漬割合が、96質量%(実施例5)、80質量%(実施例6)、63質量%(実施例7)になるように設定し、それ以外は実施例4と同様に実験を行った。それぞれ2株の測定結果を平均し、葉の質量の浸漬割合100質量%のGFP発現量(mg/kgFW)を100%として表2に示した。また、その結果を図4にグラフとして表した。図中の各点は、夫々の実施例の結果を示す。
[実施例8〜9]
9.液面下への根の浸潤
8.感染工程において、液面下の根の質量の浸漬割合が、0質量%(実施例8)、37質量%(実施例9)になるように設定し、また、葉の質量の浸漬割合は、100質量%に設定して、それ以外は実施例4と同様に実験を行った。それぞれ2株の測定結果を平均し、根の質量の浸漬割合0質量%の総GFP量(mg)を100%として表3に示した。
[比較例2〜3]
4.感染工程において、液面下の根の質量の浸漬割合が、60質量%(比較例2)、100質量%(比較例3)であること、また、葉の質量の浸漬割合は、100質量%に設定して、それ以外は実施例4と同様に実験を行った。2株の測定結果を平均し、根の質量の浸漬割合0質量%の総GFP量(mg)を100%として表3に示した。
表3に示すように、根の浸漬割合が50質量%を超えると、GFPの発現量も有意に低下する。

Claims (6)

  1. アグロバクテリウムに感染し得る植物を水耕栽培法で栽培する工程、
    前記水耕栽培にて生育した根及び葉を含む植物を、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを含む感染液に接触させることにより感染させる工程、及び
    前記感染後の植物をさらに栽培して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程を含む、植物によるタンパク質の製造方法であって、
    前記感染工程は、
    前記アグロバクテリウムを含む感染液に、前記植物の少なくとも一部を浸漬した状態で圧力を調節することにより行われ、当該工程において感染液に浸漬される根の割合が根全体の50質量%以下であり、かつ前記圧力調節段階の少なくとも一部において、一つの葉全体を当該感染液の液面下に浸漬する工程を含むことを特徴とする、植物によるタンパク質の製造方法。
  2. 前記感染工程が、真空浸潤法にて行われる請求項1に記載のタンパク質の製造方法。
  3. 前記真空浸潤法が、減圧された状態から復圧する段階において、前記一つの葉全体が当該感染液の液面下に浸漬された状態で行われる請求項2に記載のタンパク質の製造方法。
  4. 前記発現工程の後に、前記植物から目的タンパク質を精製し、及び/又は回収する工程を含む請求項1〜3何れか一項に記載のタンパク質の製造方法。
  5. 前記目的タンパク質が、医療用タンパク質である請求項1〜4何れか一項に記載のタンパク質の製造方法。
  6. 前記植物が、ベンサミアナタバコである請求項1〜5何れか一項に記載のタンパク質の製造方法。
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