JP2024064779A - 植物を処理する方法、微生物が感染した植物の生産方法、植物発酵物の製造方法及び植物処理装置 - Google Patents

植物を処理する方法、微生物が感染した植物の生産方法、植物発酵物の製造方法及び植物処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】植物に有用微生物を効率的に感染させる方法を提供すること。【解決手段】本開示は、植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、を含む、植物を処理する方法を提供する。【選択図】図1

Description

本開示は、植物を処理する方法及び装置に関する。より具体的には、本開示は、植物に微生物を感染させる方法、微生物に感染した植物の生産方法、植物発酵物の製造方法及び植物に微生物を感染させる装置に関する。
例えば外来遺伝子の導入のために、植物に、該外来遺伝子を有する感染性因子又は微生物を感染させる技術、例えばアグロバクテリウム法及び植物ウイルスベクター法が存在している。しかしながら、従来公知の方法では、微生物の植物への感染は、該植物の微生物感染抵抗性により制限されている。
植物に、有用微生物を、より簡便に及び/又はより効率的に感染させることのできる方法が望まれている。
本開示は、1つの観点から、植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程とを含む、植物を処理する方法(以下、「本開示の植物処理方法」ともいう)を提供する。
本開示は、別の1つの観点から、植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程とを含む、微生物が感染した植物の生産方法(以下、「本開示の微生物感染植物の生産方法」ともいう)を提供する。
本開示は、更に別の1つの観点から、植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、前記感染した植物を発酵させる工程とを含む、植物発酵物の製造方法(以下、「本開示の植物発酵物の製造方法」ともいう)を提供する。
本開示は、更に別の1つの観点から、植物を保持可能に構成された植物保持部と、前記植物保持部に保持された植物の少なくとも一部に向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を、290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射可能に構成された紫外光照射部と、微生物が含有された液体を、その内部空洞内に区画された液体収容領域に収容可能に構成された貯槽を備える植物浸漬部であって、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分が前記液体収容領域中に位置するように構成された植物浸漬部、又は、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分に向けて、微生物が含有された液体を噴射可能に構成された液体噴射部とを備える植物処理装置を提供する。
本開示の植物処理方法及び/又は植物処理装置によれば、植物に有用微生物をより簡便に及び/又はより効率的に感染させることが可能になる。
本開示の装置の1つの実施形態を示す模式図である。 本開示の装置の別の1つの実施形態を示す模式図である。 実施例で用いた3つのLEDの発光スペクトルを示す。 1株あたり2枚の葉において処理部としてLED光照射部及びLED光非照射部が設けられた照射前のベンサミアナタバコの写真である。 280nm-LED光を照射した直後(左)及び24時間後(右)のベンサミアナタバコの写真である。 照射量6750μmol/m2での310nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの葉の発光像を示す。枠で囲まれた領域が非照射部である。上段:発光部位を特定するために、ベンサミアナタバコの写真とホタルルシフェラーゼの発光像を重ね合わせた画像。下段:ホタルルシフェラーゼの発光像。 照射量6750μmol/m2での340nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの葉の発光像を示す。枠で囲まれた領域が非照射部である。上段:発光部位を特定するために、ベンサミアナタバコの写真とホタルルシフェラーゼの発光像を重ね合わせた画像。下段:ホタルルシフェラーゼの発光像。 310nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について非照射部及び照射部における発光量を示す。 340nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。 310nm-LED光を675μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。 310nm-LED光を13,500μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。 310nm-LED光を33,750μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。 310nm-LED光を54,000μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。 照射量13,500μmol/m2での310nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの葉の発光像を示す。枠で囲まれた領域が非照射部である。上段:発光部位を特定するために、ベンサミアナタバコの写真とホタルルシフェラーゼの発光像を重ね合わせた画像。下段:ホタルルシフェラーゼの発光像。 310nm-LED光を6750μmol/m2の照射量で照射直後に、アグロバクテリウムをニードルレスシリンジでインフィルトレーションしたベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。
本明細書において、数値範囲「a~b」(a、bは具体的数値)は、両端の値「a」及び「b」を含む範囲を意味する。換言すれば、「a~b」は「a以上b以下」と同義である。
本開示は、後述の実施例に示されるとおり、植物に300~325nmの波長域内の光を照射すること(「本開示による紫外光照射処理」ともいう)により、当該植物の微生物感染抵抗性を一過性に低下させることができるという新たな知見に基づく。
<植物処理方法・微生物感染植物の生産方法>
本開示の植物処理方法は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
を含む。
また、本開示の微生物感染植物の生産方法は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
を含む。
以下では、「本開示の植物処理方法」、「本開示の微生物感染植物の生産方法」及び「本開示の植物発酵物の製造方法」をまとめて「本開示の方法」と呼ぶこともある。
(植物)
本明細書において、植物は、用いる微生物又は感染性因子に感染し得る限り、特に限定されない。植物は、双子葉植物又は単子葉植物であり得る。双子葉植物としては、例えばナス科、特に、タバコ属、ナス属、アブラナ科、特に、アブラナ属、ダイコン属、シロイヌナズナ属、バラ科、特にオランダイチゴ属、キク科、特にアキノゲシ属、ウリ科、特に、キュウリ属、カボチャ属、マメ科、特に、ダイズ属、ササゲ属、インゲンマメ属、ソラマメ属、ラッカセイ属、ミカン科、特にミカン属、ブドウ科、特にブドウ属、シソ科、特にシソ属、ツバキ科、特にツバキ属の植物が挙げられる。単子葉植物としては、例えばイネ科、特に、イネ属、コムギ属、オオムギ属、ライムギ属、トウモロコシ属、サトウキビ属の植物が挙げられる。
本開示による紫外光照射処理によれば、植物の微生物抵抗性が一過性に低下する、換言すれば、植物の感染効率が一過性に向上するので、従来の微生物感染法、特にアグロバクテリウム法では感染効率が低い植物、例えばイネ科植物及びマメ科植物も、微生物に効率的に感染するようになる。したがって本開示の方法における植物として利用可能である。
植物は、好ましくは、ナス科植物、アブラナ科植物、キク科植物、バラ科植物、マメ科植物及びイネ科植物から選択され、より好ましくはナス科植物、バラ科植物、マメ科植物及びイネ科植物から選択され、より好ましくはナス科植物及びバラ科植物から選択され、より好ましくはナス科植物であり、中でもタバコ属植物が更に好ましい。
タバコ属植物の具体例は、タバコ(Nicotiana tabacum)、ベンサミアナアタバコ(N. benthamiana)、ハナタバコ(N. alata)、キダチタバコ(N. glauca)、ナガバナタバコ(N. longiflora)などであり、中でもベンサミアナアタバコが好ましい。
本開示の方法に用いることができるタバコ属植物以外の植物の具体例としては、ナス(Solanum melongena)、トマト(Solanum lycopersicum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、カリフラワー(Brassica oleracea var. botrytis)、キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、コマツナ(Brassica rapa var. perviridis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var. chinensis)、ミズナ(Brassica rapa var. nipposinica)、カブ(Brassica rapa var. rapa)、ハクサイ(Brassica rapa var. glabra)、アブラナ(Brassica campestris)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、ダイコン(Raphanus sativus)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キュウリ(Cucumis sativus)、カボチャ(Cucurbita moschata, Cucurbita mamima)、ズッキーニ(Cucurbita pepo)、イチゴ(Fragaria x ananassa Duchesne ex Rozier)、レタス(Lactuca sativa)、ダイズ(Saccharum officinarum)、アズキ(Vigna angularis)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ソラマメ(Vicia faba)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、シソ(Perilla frutescens var. crispa)、イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum)、デュラムコムギ(Triticum durum)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ライムギ(Secale cereale)、トウモロコシ(Zea mays)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ブドウ(Vitis spp.)、チャノキ(Camellia sinensis)などが挙げられる。
幾つかの実施形態において、植物は、アグロバクテリウムに感染し得る植物である。幾つかの別の実施形態において、植物は、植物ウイルスに感染し得る植物である。
本明細書において、植物は、植物体全体であり得、文脈からそうでないことが明白な場合を除き、植物の部分であっても、培養植物細胞、例えばカルスの形態の培養植物細胞であっても、植物全体若しくはその部分の破砕物であってもよい。植物の部分は、根、茎、葉、花、蕾、種子又はそれらの任意の組合せであり得る。
植物は、栽培中の植物であってもよいし、栽培を一時的に停止されている植物であってもよい。ここで、栽培は土耕栽培、より具体的には露地栽培又はハウス栽培であってもよいし、養液栽培、より具体的には水耕栽培、噴霧耕栽培又は固形培地耕栽培であってもよい。栽培を一時的に停止されている植物は、本開示の方法の適用中又は適用後に栽培を再開される。植物はまた、収穫後の植物であってもよい。
(照射工程)
照射工程において、植物に、300~325nmの波長域内の光を照射する。
300~325nmの波長域内の光の照射量の下限は、4,000μmol/m2以上であり、より具体的には4,500μmol/m2以上であり、より具体的には5,000μmol/m2以上であり、より具体的には5,500μmol/m2以上であり、より具体的には6,000μmol/m2以上であり、より具体的には6,500μmol/m2以上であり、より具体的には6,750μmol/m2であり得る。300~325nmの波長域内の光の照射量が4,000μmol/m2未満である場合、照射対象の植物の微生物感染抵抗性を低下させることができないことがある。
300~325nmの波長域内の光の照射量の上限は、50,000μmol/m2以下、より具体的には47,500μmol/m2以下、より具体的には45,000μmol/m2以下、より具体的には42,500μmol/m2以下、より具体的には40,000μmol/m2以下、より具体的には37,500μmol/m2以下、より具体的には35,000μmol/m2以下、より具体的には33,750μmol/m2であり得る。300~325nmの波長域内の光の照射量が50,000μmol/m2を超える場合、照射対象の植物が損傷する可能性が高くなる。
300~325nmの波長域内の光の照射量の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せであり得る。照射量の範囲の具体例として、4,000μmol/m2以上50,000μmol/m2以下、4,000μmol/m2以上47,500μmol/m2以下、4,500μmol/m2以上47,500μmol/m2以下、4,500μmol/m2以上45,000μmol/m2以下、5,000μmol/m2以上45,000μmol/m2以下、5,000μmol/m2以上42,500μmol/m2以下、5,500μmol/m2以上42,500μmol/m2以下、6,000μmol/m2以上42,500μmol/m2以下、6,000μmol/m2以上40,000μmol/m2以下、6,500μmol/m2以上40,000μmol/m2以下、6,500μmol/m2以上37,500μmol/m2以下、6,750μmol/m2以上37,500μmol/m2以下、6,750μmol/m2以上35,000μmol/m2以下、6,750μmol/m2以上33,750μmol/m2以下が挙げられるが、これらに限定されない。
一方、DNA及びRNAの吸収極大波長が260nm付近であるため、260nm付近の波長の光は植物への悪影響が大きいことが懸念される。また、280~290nmの波長域の光は、例えばトマト苗においてウイルス感染抑制効果を示すことがある。よって、少なくとも300~325nmの波長域内の光の照射中は、当該植物に、290nm以下の波長域の光は照射されないか、照射されても、その照射量を前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満とする。
加えて、330nm以上の波長域の光は、植物の微生物感染抵抗性の低下には寄与しない。よって、エネルギー効率の観点から、330nm以上の波長域の光の照射量は、前記300~325nmの波長域内の光の照射量の、例えば50%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満であり得る。
300~325nmの波長域内の光は、例えば、0.05~300μmol/m2/sで照射される。0.05μmol/m2/s未満の場合には、照射対象の植物の微生物感染抵抗性を低下させることができないことがある。300μmol/m2/sを超える場合には、照射対象の植物の損傷を誘導することがある。300~325nmの波長域内の光は、好ましくは0.1~300μmol/m2/s、より好ましくは0.2~200μmol/m2/s、より好ましくは0.5~100μmol/m2/s、より好ましくは0.5~50μmol/m2/s、より好ましくは1~20μmol/m2/s、より好ましくは1~15μmol/m2/s、より好ましくは2~15μmol/m2/s、より好ましくは2~10μmol/m2/sの光量子束密度で照射される。
本開示の方法に用いる光源としては、300~325nmの波長域内の光を照射できるものであれば特に制限されず、例えば、UVランプなどの一般に使用される紫外光光源を用いることができる。UVランプとしては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、キセノンランプ、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプや高圧水銀ランプを挙げることができる。また、紫外光として、太陽光から光学フィルタなどにより取り出したものを用いてもよい。
用いる光源が、300~325nmの波長域内の光とともに、290nm以下の波長域の光を、300~325nmの波長域内の光の光量子束密度の20%以上で発するものである場合には、300~325nmの波長域内の光に対する透過率が290nm以下の波長域の光に対する透過率より大きいフィルタを併せて用いることにより、植物に照射される290nm以下の波長域の光の光量子束密度が、300~325nmの波長域内の光の光量子束密度の20%未満としてもよく、より具体的には、15%未満、10%未満、5%未満又は1%未満としてもよい。
追加的に又は択一的に、用いる光源が、300~325nmの波長域内の光とともに、330nm以上の波長域の光を、300~325nmの波長域内の光の光量子束密度の50%以上で発するものである場合には、300~325nmの波長域内の光に対する透過率が330nm以上の波長域の光に対する透過率より大きいフィルタを併せて用いることにより、植物に照射される330nm以上の波長域の光の光量子束密度が、300~325nmの波長域内の光の光量子束密度の50%未満としてもよく、より具体的には、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満又は5%未満としてもよい。
エネルギー効率の観点から、300~325nmの波長域内の光は、主ピーク波長を、例えば310±7nm内に、好ましくは310±5nm内に、より好ましくは310±3nm内に有する光として照射される。300~325nmの波長域内には、第2ピークは存在しないか、存在してもその強度が主ピークの1/10以下であることが好ましい。本明細書において、「主ピーク波長」とは強度が最大となるピーク波長をいう。なお、例えばLED光のような、スペクトルがシングルピークを示す光については、「ピーク波長」は「主ピーク波長」と同義である。
303~317nm内、好ましくは305~315nm内、より好ましくは303~313nm内の主ピークの半値全幅は、例えば1~15nm、好ましくは5~15nm、より好ましくは5~10nmであることが好ましい。主ピークの半値全幅が15nm以下であることにより、植物の微生物感染抵抗性の低下に寄与しない波長域の光の照射を回避しつつ、植物の微生物感染抵抗性の低下に有効な波長域の光を選択的に照射することが可能となることに加え、エネルギー効率も更に向上する。主ピークの半値全幅が1nm未満の光も、本開示の方法に使用可能であるが、費用対効果の観点から、主ピークの半値全幅が1nm以上の光を用いることが現時点では好ましい。したがって、300~325nmの波長域内の光の具体例は、ピーク波長310±7nm及び半値全幅1~15nm、より具体的には半値全幅5~15nm、より具体的には半値全幅5~10nmの波長スペクトルを有する光、ピーク波長310±5nm及び半値全幅5~15nm、より具体的には半値全幅5~15nm、より具体的には半値全幅5~10nmの波長スペクトルを有する光、ピーク波長310±3nm及び半値全幅5~15nm、より具体的には半値全幅5~15nm、より具体的には半値全幅5~10nmの波長スペクトルを有する光であり得る。
300~325nmの波長域内の光の光源としては、発光スペクトルにおいてシングルピークを有する発光ダイオード(LED)又はレーザダイオード(LD)が特に好ましい。光源としてLED又はLDを用いる場合、植物の微生物感染抵抗性の低下に寄与しないばかりか、植物への悪影響を及ぼし得る波長域の光の照射を回避しつつ、植物の微生物感染抵抗性の低下に有効な波長域の光を選択的に照射することが容易に実現可能となる。また、LED又はLDの使用は、低発熱性、低消費電力や長寿命に起因して、エネルギー効率及び経済性の観点からも好ましい。加えて、照射量及び/又は光量子束密度の制御/管理が容易になる。
300~325nmの波長域内の光を発することができるLED又はLDは、例えばAlGaN系材料やInAlGaN系材料を用いたものであり得る。
300~325nmの波長域内の光の植物への照射量は、例えば、光源の点灯及び消灯の制御により(例えば、植物が静置されている場合)、又は、植物が照射領域を通過するのに要する時間の制御により(例えば、植物が搬送装置で搬送されている場合)、4,000~50,000μmol/m2に設定し得る。
300~325nmの波長域内の光は、植物に対して、連続光として若しくは間欠光として又はそれらの組合せとして照射されてもよい。300~325nmの波長域内の光は、間欠光として照射されることが好ましい。間欠光とすることにより、植物及び/又は光源の温度上昇を回避又は低減することができる。間欠光の具体例は、パルス幅が100ms以下、より具体的には50ms以下、より具体的には20ms以下、より具体的には10ms以下、より具体的には5ms以下で、デューティ比が50%以下、より具体的には40%以下、より具体的には30%以下、より具体的には20%以下、より具体的には10%以下、より具体的には5%以下である。
300~325nmの波長域内の光の照射の間、植物は、静止していてもよいし、動いていてもよい。植物は、植物体の部分又は植物体の全体若しくは部分の破砕物である場合、例えば回転、振動又は浮遊していてもよいし、撹拌されていてもよい。植物は、搬送中に光照射されてもよい。
照射は、一方向からであってもよいし、二又は三以上の方向からであってもよい。
300~325nmの波長域内の光は、植物保持部に保持された植物の全体に照射する必要はなく、必要な照射量で照射される限り、該植物の1又は2以上の部分又は領域に照射されてもよい。300~325nmの波長域内の光を、例えば、花芽、花及び/若しくは蕾、又は根などの植物の所望部分に限定して照射することにより、その他の部分の微生物感染抵抗性に影響を及ぼさない。よって当該植物における感染症リスクの不必要な増大を回避することが可能となる。所望部分に限定して照射することで、萎凋を低減させることもできる。
300~325nmの波長域内の光の照射は、好ましくは、暗所で行われる。本明細書において、「暗所」とは、光合成有効波長域、すなわち波長域400~700nm内の光量子束密度(以下「光合成有効光量子束密度」という)が当該植物中の細胞において光合成を起こさせないレベル、より具体的には、光合成有効光量子束密度≦10μmol/m2/sである場所をいう。
300~325nmの波長域内の光の照射中に植物を暗所に置くこと、すなわち、当該植物中の細胞において光合成を起こさせないことにより、当該植物の微生物感染抵抗性の低下を効率的に誘導することができる。
(感染工程)
感染工程において、300~325nmの波長域内の光を照射された植物に、微生物を感染させる。
微生物は、本開示の方法に用いる植物の細胞であって、300~325nmの波長域内の光を照射され、照射前より微生物感染抵抗性が低下している細胞に感染し得る限り、特に限定されない。当然のことながら、微生物は、300~325nmの波長域内の光を照射される前の、通常の微生物感染抵抗性を有する細胞に感染し得る微生物であってもよい。本明細書において、「微生物」には、細菌、例えば酵母や糸状菌のような真菌及びウイルス並びにウイルスベクターが含まれるものとする(これらは「感染性因子」と呼ぶこともできる)。本明細書において、植物への感染に関して、「微生物」と「感染性因子」とは互換可能に用いられる。
幾つかの実施形態において、微生物は、エンドファイト又は内部共生菌である。エンドファイトは、用いる植物と内部共生可能であれば特に限定されず、細菌エンドファイト又は真菌エンドファイトのいずれでもあり得る。
細菌エンドファイトは根粒菌であり得、例えば、リゾビウム(Rhizobium)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属又はメソリゾビウム(Mesorhizobium)属から選択される細菌であり得る。本明細書において、細菌エンドファイトにはRugamonas属細菌を含む。Rugamonas属細菌は、オオムギ(の根)の内在菌であり、感染した植物において生長促進効果を奏し得る。
真菌又は糸状菌エンドファイトは、菌根菌であり得る。菌根菌は、例えば、アーバスキュラー菌根菌(AM菌又はVA菌)又はエリコイド菌根菌であり得る。アーバスキュラー菌根菌は、例えば、ギガスポラ(Giga-spora)属、グロムス(Glomus)属及びリゾファガス(Rhizophagus)属から選択される菌であり得る。エリコイド菌根菌は、例えば、ネオティホディウム(Neotyphodium)属及びエピクロエ(Epichloe)属から選択される菌であり得る。
エンドファイトが感染した植物は、免疫力が高まり、生長が促進され、及び/又は例えば強光、高温及び/又は乾燥などの環境ストレスに対する耐性が高まり、結果として、その収量が増大し得る。
よって、微生物がエンドファイトである実施形態において、本開示の植物処理方法は、植物の収量を増大させる方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物、特に植物の根に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物、特に植物の根にエンドファイトを感染させる感染工程と、
を含む、植物の収量を増大させる方法を提供する。
また、微生物がエンドファイトである実施形態において、本開示の微生物感染植物の生産方法は、エンドファイト感染植物の生産方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物にエンドファイトを感染させる感染工程と、
を含む、エンドファイト感染植物の生産方法を提供する。
幾つかの実施形態において、微生物は微生物農薬である。これら微生物農薬は、殺虫剤、殺線虫剤又は殺菌剤として、植物の病害虫防除に用いられる。
細菌である微生物農薬としては、例えば、バチルス チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、パスツーリア ペネトランス(Pasteuria penetrans)、アグロバクテリウム ラジオバクター(Rhizobium radiobacter又はAgrobacterium tumefaciens)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス シンプレクス(Bacillus simplex)、バリオボラックス パラドクス(Variovorax paradoxus)、ラクトバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、非病原性エルビニア カロトボーラ(Erwinia carotovora subsp. carotovora)が挙げられる。糸状菌である微生物農薬としては、例えば、バーティシリウム レカニ(Verticillium lecanii)、ペキロマイセス テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)、ペキロマイセス フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)、ボーベリア バシアーナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、メタリジウム アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)、コニオチリウム ミニタンス(Coniothyrium minitans)、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、トリコデルマ アトロビリデ(Tricoderma atroviride)が挙げられる。ウイルスである微生物農薬としては、例えば、バキュロウイルス(Baculovirus)属の核多角体ウイルス(Nuclear Polyhedrosis virus;NVP)及び顆粒病ウイルス(Granulosis;GV)、並びにサイポウイルス(Cypovirus)属の細胞質多角体病ウイルスが挙げられ、具体的には、バキュロウイルスチャハマキ顆粒病ウイルス、リンゴコカクモンハマキ顆粒病ウイルス、ハスモンヨトウ核多角体ウイルスが挙げられる。
本発明の植物処理方法において微生物として微生物農薬を用いることにより、微生物農薬を植物に対して効率的に作用させることが可能となる。具体的には、微生物農薬の植物への定着までの時間を短縮し、及び/又は微生物農薬の使用量を削減することができる。また、農薬微生物が感染した植物は、有害生物に対する抵抗性が高まり、結果として、その収量が増大し得る。
よって、微生物が微生物農薬である実施形態において、本発明の植物処理方法は、植物の収量を増大させ、及び/又は植物において病害虫を防除する方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に、該植物において微生物農薬として作用する微生物を感染させる感染工程と、
を含む、植物の収量を増大させ及び/又は植物における病害虫を防除する方法を提供する。
また、微生物が微生物農薬である実施形態において、本開示の微生物感染植物の生産方法は、病害虫抵抗性が増大した植物の生産方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に、該植物において微生物農薬として作用する微生物を感染させる感染工程と、
を含む、病害虫抵抗性が増大した植物の生産方法を提供する。
病害虫は、例えば、ハマキ類、ハスモンヨトウ、ジラミ類、アザミウマ類、コナジラミ類、アブラムシ類、ハダニ類、コナガ、アオムシ、オオタバコガ、ダニ類、カイガラムシ類、カミキリムシ類、アワノメイガ、ヨトウムシ、ハイマダラノメイガ、ネギコガ、シロイチモジヨトウ、ネコブセンチュウ等が挙げられる。
病害虫が原因となる植物の病気として、うどんこ病、キュウリモザイク病、萎凋症、菌核病、黒腐菌核病、灰色かび病、葉かび病、すすかび病、炭疽病根、こぶ病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、褐条病、ばか苗病、いもち病、苗立枯病、紫紋羽病、白絹病、根頭がんしゅ病、花蕾腐敗病、軟腐病、黒腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、軟腐細菌病、茎えそ細菌病、せん孔細菌病、かいよう病、枝枯細菌病、白星病、葉枯病、白斑葉枯病、黒枯病、斑点病、灰星病、白さび病、黒星病、青枯病・根腐萎凋病が挙げられ、病害虫抵抗性が増大することで、これらの植物の病気の発生を低減することができる。
幾つかの実施形態において、細菌は、その内部のDNA、例えばプラスミドの少なくとも一部を、感染した植物、例えばその植物のゲノム中に移入する能力を有する。特定の実施形態において、微生物はアグロバクテリウムである。アグロバクテリウムは、腫瘍原性アグロバクテリウム(Rhizobium radiobacter又はAgrobacterium tumefaciens)又は発根性アグロバクテリウム(Rhizobium rhizogenes又はAgrobacterium rhizogenes)であることが好ましい。
幾つかの実施形態において、微生物又は感染性因子は植物ウイルスベクターである。
植物ウイルスベクターは植物ウイルスに基づくベクターである。ここで、植物ウイルスは、本開示の方法に用いる植物の細胞であって、300~325nmの波長域内の光を照射された細胞、したがって、照射前より微生物感染抵抗性が低下している細胞に感染し得る限り、特に限定されない。植物ウイルスは、例えば、トバモウイルス属、ポテックスウイルス属、ポティウイルス属、トブラウイルス属、トンブスウイルス属、ククモウイルス属、ブロモウイルス属、アルファモウイルス属、コモウイルス属、カルモウイルス属、チェラウイルス属、ワイカウイルス属、カリモウイルス属から選択されるウイルスであり得る。植物ウイルスは、植物一本鎖プラス鎖RNAウイルスであることが好ましい。
植物ウイルスベクターの具体例は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)ベクター、キュウリモザイクウイルス(CMV)ベクター、タバコモザイクウイルス(TMV)ベクター、ジャガイモXウイルス(PVX)ベクター、トマトモザイクウイルス(ToMV)ベクター、プラムポックスウイルス(PPV)ベクター、アルファルファモザイクウイルス(AIMV)ベクター、カウピーモザイクウイルス(CPMV)ベクター、ズッキーニイエローモザイクウイルス(ZYMV)ベクターである。
微生物は、野生型であってもよいし、遺伝子操作されていてもよい。
幾つかの実施形態において、微生物は、本開示の方法に用いる植物において発現させる、タンパク質を含む目的のポリペプチドをコードする遺伝子を有する。ここで、この遺伝子は、当該植物に関して外来である。感染工程において、植物に目的の外来遺伝子を含む微生物を感染させることにより、植物に外来遺伝子が導入され得る。この場合、「感染工程」は「外来遺伝子導入工程」と呼ぶこともできる。
外来遺伝子が導入された植物(遺伝子導入植物)は、目的のポリペプチドを一過性に発現してもよいし(一過性形質転換体又は一過性トランスフェクタント)、安定的に発現してもよい(狭義の「トランスジェニック植物」又は「遺伝子組換え植物」)。
よって、微生物が外来遺伝子を含む微生物である実施形態において、本開示の植物処理方法は、植物への外来遺伝子の導入方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に、外来遺伝子を含む微生物を感染させる感染工程と、
を含む、植物に外来遺伝子を導入する方法を提供する。
また、微生物が外来遺伝子を含む微生物である実施形態において、本開示の微生物感染植物の生産方法は、遺伝子導入植物の生産方法であるということができる。
したがって、本開示は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に、外来遺伝子を含む微生物を感染させる感染工程と、
を含む、遺伝子導入植物の生産方法を提供する。
植物において発現させる目的のポリペプチドは、用いる植物中で発現し得るものである限り、任意のポリペプチドであり、例えば、医療上又は産業上有用なポリペプチドであり得る。より具体的には、目的のポリペプチドは、例えば、ウイルスなどの病原体由来の免疫原性又は抗原性ポリペプチド、抗体又はその結合性フラグメント、サイトカイン、酵素、成長因子その他の生理活性タンパク質又はその機能的フラグメントであり得る。免疫原性又は抗原性ポリペプチドは中和抗体を惹起し得るもの、例えば、VLPワクチンを含むワクチンとして使用できるものあることが特に好ましい。
外来遺伝子は発現カセットに含まれていてもよい。発現カセットにおいて、外来遺伝子は、その上流に、用いる植物に適切なプロモーターが作動可能に連結されていてもよい。プロモーターは、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター及びトウモロコシのユビキチンプロモーターを挙げることができるが、これらに限定されない。発現カセットは、ターミネーターのような他の発現調節エレメントを含んでいてもよい。
植物への微生物の感染は、微生物の懸濁液(以後、「微生物懸濁液」ともいう)を植物に接触させることにより行うことができる。微生物を懸濁する液体は、当該微生物に適する培養液であり得、界面活性剤を含んでいてもよい。植物に接触した微生物懸濁液は、植物組織内に浸潤することで、微生物が植物細胞に感染する。微生物懸濁液と植物との接触は、より具体的には、植物への微生物懸濁液の塗布若しくは噴霧又は微生物懸濁液中への植物の浸漬により行うことができる。或いは、例えばシリンジを用いる注入により、微生物懸濁液を植物組織内に浸潤させてもよい。
或いは、感染は、微生物懸濁液を凍結乾燥又はスプレードライなどにより乾燥して得られる乾燥粉体、例えば、水和剤、ドリフトレス(DL)粉剤、フローダスト(FD)剤又は粉末を植物に接触させることにより行うことができる。この場合、接触は、例えば、粉体の散布、又は例えばハウス内に設置された送風機構を利用して粉体を飛散させることにより行うことができる。
微生物懸濁液への接触は、植物体全体に対するものである必要はなく、植物体の部分、例えば当該植物体の全ての葉若しくは一部の葉又は1枚の葉の全体若しくは部分、根全体又は根の一部分、地上部の全体又は部分のみ、花及び/又は蕾の全部又は一部への接触であり得る。本明細書において、「地上部」は葉及び/又は茎であり得、場合により花及び/又は蕾を含んでもよい。
感染を微生物懸濁液中への植物の浸漬により行う場合、微生物懸濁液の植物組織への浸潤を促進するため、浸漬中に減圧処理を行ってもよい。減圧時の標的圧力は、例えば0.005~0.5気圧、より具体的には0.005~0.3気圧、より具体的には0.01~0.3気圧、より具体的には0.01~0.2気圧、より具体的には0.01~0.1気圧、より具体的には0.02~0.1気圧であり得る。或いは、標的圧力は、例えば0.5~50kPa、より具体的には0.5~30kPa、より具体的には1~30kPa、より具体的には1~20kPa、より具体的には1~10kPa、より具体的には2~10kPaであり得る。減圧処理の期間は、例えば10秒間~10分間、より具体的には10秒間~5分間、より具体的には20秒間~5分間、より具体的には20秒間~3分間、より具体的には30秒間~3分間、より具体的には30秒間~2分間であり得る。
減圧処理後、圧力を、大気圧又は周囲圧力付近に復帰させる。復帰に要する時間は、特に限定されず、例えば10秒以下、より具体的には5秒以下、より具体的には3秒以下、より具体的には1秒以下であり得る。
植物への微生物の感染方法の具体例として、当該分野において公知のアグロバクテリウム法(アグロインフィルトレーション法とも呼ばれる;バキュームインフィルトレーション法を含む)、フローラルスプレー法、フローラルディップ法及び植物ウィルスベクター法が挙げられる。
感染工程は、好ましくは暗所で行われる。感染工程中に植物を暗所に置くこと、すなわち、当該植物中の細胞において光合成を起こさせないことにより、照射工程において誘導された微生物感染抵抗性の低下を感染工程にわたって持続させることができ、効率的な感染を達成し得る。より好ましくは、植物は、遅くとも照射工程の開始時から、早くとも感染工程の終了時まで暗所に置かれる。
感染工程の後、植物の表面に残る微生物を、水又は例えば70%エタノール水溶液などの滅菌/殺菌水を用いて除去してもよい。
(暗所保管工程)
感染工程で微生物に感染した植物は、その後、暗所に置かれてもよい。
感染工程後に植物を暗所に置くことにより、照射工程において誘導された微生物感染抵抗性の低下を持続させることができ、感染工程において植物組織内に侵入した微生物のより多くの割合を植物細胞に感染させることが可能になる。
微生物懸濁液又はその乾燥粉体への接触後に植物を暗所に置く期間の上限は、特に限定されず、例えば、48時間、36時間、24時間、18時間又は12時間であり得る。前記期間の下限は特に制限されず、例えば、5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間であり得る。暗所配置期間の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せであり得る。
暗所配置期間の具体例として、5分間~48時間、15分間~48時間、30分間~48時間、1時間~48時間、2時間~48時間、3時間~48時間、6~48時間、6~36時間、6~24時間、6~18時間又は6~12時間が挙げられるが、これらに限定されない。
植物は、好ましくは遅くとも感染工程の開始時から、より好ましくは遅くとも照射工程の開始時から、暗所に置かれる。
(植物生長工程又は栽培工程)
前記感染工程で微生物を感染させた植物は、その後、生長させてもよい。
植物の生長は、当該分野において公知のいずれの栽培方法でも行うことができ、したがって、植物生長工程は栽培工程と呼ぶこともできる。
栽培は、土耕栽培、より具体的には露地栽培又はハウス栽培であってもよいし、養液栽培、より具体的には水耕栽培、噴霧耕栽培又は固形培地耕栽培であってもよい。養液栽培は無菌下で行うことができる。
栽培、特に養液栽培は制御環境下で行われてもよい。制御される環境条件には、例えば、明暗周期、温度、湿度、自然光及び/又は人工光の照射量、二酸化炭素濃度が含まれる。これら条件は、用いる植物の栽培/生長に適するものであれば特に制限されない。
明暗周期は、栽培する植物及び生育段階に応じて適切に選択することができる。明暗周期は、例えば明期14~18時間の長日条件、又は、例えば明期6~10時間の短日条件であり得る。人工光の光源としては、用いる植物の栽培に使用可能である限り特に制限されず、例えば、白熱電灯、蛍光灯、白色灯、高輝度放電(HID)ランプ、例えば高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、LED、例えば白色LED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、有機ELランプなどを用いることができる。人工光は、栽培する植物及び成長段階などに応じて適宜設定される光合成有効光量子束密度で照射される。光合成有効光量子束密度は、例えば50~600μmol/m2/s、より具体的には100~500μmol/m2/sであり得る。
温度は例えば20~30℃であり得、湿度は例えば約40~100%、具体的には約50~95%であり、より具体的には約50~80%であり得る。
二酸化炭素濃度は例えば約300~5000ppm、具体的には約500~3000ppm、より具体的には約1000~1500ppmであり得る。
肥料/液肥は、栽培する植物に応じて適切に選択することができる。一般には、肥料/液肥は、窒素、リン、カリウムを含む。
栽培は、開放型植物工場又は(完全)閉鎖型植物工場内で行われてもよい。
植物が遺伝子導入植物である場合、約3~7日間の栽培後、植物の微生物感染部分、例えば、微生物に感染した葉から、目的のポリペプチドを抽出することができる。
<植物発酵物の製造方法>
本開示の植物発酵物の製造方法は、
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
前記感染した植物を発酵させる工程と、
を含む。
換言すれば、本開示の植物発酵物の製造方法は、本開示の植物処理方法により処理した植物を発酵させる工程を含む。
本開示の植物発酵物の製造方法における植物発酵物は、植物原料、好ましくは食用植物原料を微生物により発酵させたものであり、例えば、果実酒を含む醸造酒、醸造酢、ピクルスを含む漬物、味噌、醤油、発酵茶などであり得る。
醸造酒としては、ワイン(ブドウ酒)、シードル(リンゴ酒)などが挙げられる。
醸造酢としては、例えば、米酢、大麦酢、小麦酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢、トウモロコシ酢などの穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢、ワイン酢、バルサミコ酢、柿酢などの果実酢が挙げられる。
味噌としては、例えば、麦味噌、米味噌、豆味噌などが挙げられる。
本方法に用いることができる植物は、製造しようとする植物発酵物の原料となり得る植物であり、例えば穀類、豆類、野菜類、果実類である。
具体例として、米、大麦、小麦、トウモロコシ、大豆、小豆、えんどう豆、ハクサイ、ヒロシマナ、タカナ、ノザワナ、コマツナ、アブラナ、ミズナ、ダイコン、カブ、キュウリ、ナス、キャベツ、シソ、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、タケノコ、チャノキなどが挙げられる。
植物発酵物の製造方法における照射工程は、上記<植物処理方法・微生物感染植物の生産方法>の項において説明したとおりである。
植物発酵物の製造方法における感染工程は、微生物を除き、上記<植物処理方法・微生物感染植物の生産方法>の項において説明したとおりである。
植物発酵物の製造方法における微生物は、植物を原料とする飲料を含む発酵食品の生産に一般的に用いられる微生物であり得、細菌、酵母又は糸状菌であり得る。
細菌として、納豆菌(Bacillus subtilis subsp. natto);植物性乳酸菌:例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属(例えば、ラクトバチルス プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス パラカゼイ(L. paracasei))、ロイコノストック(Leuconostoc)属(例えば、ロイコノストック メセンテロイデス(L. mesenteroides))、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えば、エンテロコッカス フェカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス フェシウム(E. faecium))又はテトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属(例えば、テトラジェノコッカス ハロフィルス(T. halophilus))に属する乳酸菌;酢酸菌:例えば、アセトバクター(Acetobacter)属(例えば、アセトバクター アセチ(A. aceti))又はグルコナセトバクター(Gluconacetobacter)属(例えば、グルコナセトバクター キシリナス(A. xylinus))に属する酢酸菌などが挙げられる。
酵母の具体例として、サッカロマイセス(Saccharomyces)属又はジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属に属し、より具体的には、サッカロマイセス セレビシエ(S. cerevisiae)、サッカロマイセス エリプソイデウス(S. ellipsoideus)、サッカロマイセス バヤヌス(S. bayanus)、サッカロマイセス パストリアヌス(S. pastorianus)、ジゴサッカロマイセス(Z. rouxii)などであり得る。
糸状菌の具体例として、アスペルギルス(Aspergillus)属に属し、より具体的には、アスペルギルス オリゼ(A. oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(A. sojae)、アスペルギルス ルチエンシス(A. luchuensis)、アスペルギルス ニガー(A. niger)などであり得る。
植物への微生物の感染は、「スターター」とも呼ばれる微生物懸濁液又は微生物培養物を植物に接触させることにより行うことができる。
微生物に感染した植物を発酵させる工程(発酵工程)は、製造する発酵食品に応じた、当該分野において公知の方法により行うことができる。
本開示の植物発酵物の製造方法によれば、原料の植物に、より多くの微生物を感染させることができ、発酵が促進することによって必要な発酵時間を短縮できるため、植物発酵物の生産効率を向上させることができる。
<植物処理装置>
本開示の植物処理装置は、
植物を保持可能に構成された植物保持部と、
前記植物保持部に保持された植物の少なくとも一部に向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を、290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射可能に構成された紫外光照射部と、
微生物が含有された液体を、その内部空洞内に区画された液体収容領域に収容可能に構成された貯槽を備える植物浸漬部であって、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分が前記液体収容領域中に位置するように構成された植物浸漬部、又は、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分に向けて、微生物が含有された液体を噴射可能に構成された液体噴射部と、
を備える。
本開示の植物処理装置は、本開示の植物処理方法及び本開示の微生物感染植物の生産方法の実施に適切であり、特に感染工程をアグロインフィルトレーション法により行う本開示の植物処理方法及び本開示の微生物感染植物の生産方法の実施に好適である。
(植物保持部)
植物保持部は、植物を保持可能であり、保持した植物の被照射部分(300~325nmの波長域内の紫外光を照射すべき部分)を、紫外光照射部の照射領域内に、少なくとも一時的に、例えば該植物保持部が所定位置(「紫外光照射位置」)にあるときに配置できる任意の構成である。被照射部分は保持した植物の全部であってもよいし、1若しくは2以上の部分であってもよい。
植物保持部は、植物を直接保持してもよいし、例えば植物を直接保持する容器、例えば養液栽培用容器、より具体的にはポットを保持することにより、植物を間接的に保持してもよい。
植物保持部が植物を保持する態様は、特に限定されず、例えば、載置、収容、挟持、把持、嵌合であり得る。
植物浸漬部を備える本開示の植物処理装置においては、植物保持部は、好ましくは、植物を正立状態、すなわち、地上部が上方に、地下部が下方に位置する状態、及び/又は倒立状態で保持可能に構成される。植物保持部は、保持する植物を、正立状態と倒立状態との間で転位可能に、すなわち上下反転可能に構成されていてもよい。この構成により、例えば植物の地上部の全部又は一部を、植物浸漬部の貯槽に収容された微生物を含有する液体(「微生物懸濁液」)中に浸漬させることが容易となる。
植物保持部は、保持する植物の周囲に、紫外光照射部からの光を該植物に向けて反射するように構成された反射部材を備えていてもよい。この構成によれば、紫外光照射部からの直接光に関して影となる植物の部分への照射が可能により、結果としてより広範囲の領域への照射が可能になるため、エネルギー的及び/又は時間的に効率的な照射を実現できる。
特定の実施形態において、植物保持部は、300~325nmの波長域内の光を遮蔽する部材を備え、該植物保持部により保持される植物のうち、紫外光照射部からの直接光に関して該部材の背後に存在する部分には紫外光照射部からの光が照射されないように構成される。
(紫外光照射部)
紫外光照射部は、植物保持部により所定位置(紫外光照射位置;第1の位置)に保持された植物(以下、「被照射植物」ともいう)に向けて、300~325nmの波長域内の紫外光(以下、「所定紫外光」ともいう)を、290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量若しくは放射照度が前記300~325nmの波長域内の光の照射量若しくは放射照度の20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満となるように照射可能に構成される。
紫外光照射部は、300~325nmの波長域内の紫外光を出射することができる光源を備える。300~325nmの波長域内の紫外光は、主ピーク波長を、好ましくは310±7nm内に、より好ましくは310±5nm内に、より好ましくは310±3nm内に有する。
紫外光照射部は、エネルギー効率性の観点から、330nm以上の波長域の光を出射しないか、又は前記300~325nmの波長域内の光の照射量若しくは放射照度の例えば50%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満の照射量若しくは放射照度で出射することが好ましい。
紫外光照射部の光源の例として、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、並びに必要な光学フィルタを有するキセノンランプ、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ及び高圧水銀ランプを挙げることができる。光学フィルタは、300~325nmの波長域内の光に対する透過率が290nm以下の波長域の光に対する透過率より大きい光学フィルタ、又は、300~325nmの波長域内の光に対する透過率が290nm以下の波長域の光及び330nm以上の波長域の光に対する透過率より大きい光学フィルタであり得る。
上記光源としては、発光ダイオード(LED)又はレーザダイオード(LD)が特に好ましい。LED又はLDを用いる場合、被照射植物の微生物感染抵抗性の低下に有用でない又は有害であり得る波長の光の植物への照射を回避しつつ、該植物の微生物感染抵抗性の低下に有用な波長の光の照射が容易に実現可能となる。また、LED又はLDの使用は、エネルギー集約性、低発熱性、低消費電力や長寿命に起因して、エネルギー効率及び経済性の観点からも好ましい。加えて、照度又は照射量の制御又は管理が容易になる。
光源として好適なLED又はLDは、具体的にはピーク波長が310±7nmであり、半値全幅が1~15nm、より具体的には5~15nm、より具体的には5~10nmのスペクトルを有するLED又はLDであり、より具体的にはピーク波長が310±5nmnmであり、半値全幅が1~15nm、より具体的には5~15nm、より具体的には5~10nmのスペクトルを有するLED又はLDであり、より具体的にはピーク波長が310±3nmであり、半値全幅が1~15nm、より具体的には5~15nm、より具体的には5~10nmのスペクトルを有するLED又はLDである。
LD又はLEDはアレイ、マトリクス又はクラスタの形態で提供されてもよい。
紫外光照射部は、所定紫外光を、被照射植物に対して直接、該植物の周囲のいずれの方向から、例えば上方及び/又は側方の一方向又は2方向以上から照射してもよい。
紫外光照射部は、必ずしも、被照射植物の全体に所定紫外光を照射しなくてもよい。紫外光照射部は、それ自体で、又は植物保持部、より具体的には植物保持部が備え得る遮蔽部材と共に、所定紫外光を、被照射植物の特定箇所のみに照射可能に構成されていてもよい。紫外光照射部は、所定紫外光を指向性を有する光として照射可能に構成されていてもよい。
紫外光照射部の照射領域は、300~325nmの波長域内の紫外光の照射時には、光合成有効光量子束密度が10μmol/m2/s以下であることが好ましく、5μmol/m2/s以下であることがより好ましく、2μmol/m2/s以下であることがより好ましく、1μmol/m2/s以下であることがより好ましい。よって、特定の実施形態において、紫外光照射部は、外部からの光合成有効放射を遮蔽した照射室内に配置される。本明細書において、「外部からの光合成有効放射を遮蔽した」とは、内部に備わり得る照明の消灯時に、その内部の光合成有効光量子束密度が10μmol/m2/s以下、より具体的には5μmol/m2/s以下、より具体的には2μmol/m2/s以下、より具体的には1μmol/m2/s以下となり得ることをいう。この実施形態によれば、植物を暗所に保持できるため、当該植物における光合成を実質的に防止して、紫外光照射部による所定紫外光の照射に伴う該植物の微生物感染抵抗性の低下をより効率的に誘導することができる。
紫外光照射部は、レンズ、反射鏡、光学フィルタ、マスク、拡散板などの当該分野において公知の光学系部品の1つ以上からなる光学系を備えていてもよい。追加的に又は代替的に、紫外光照射部は、光源及び/又は光学系を制御する制御部を備えていてもよい。
制御部は、光源の調光並びに/又は点灯及び消灯のタイミングを制御してもよい。制御部は、紫外光照射部が、連続光若しくは間欠光又はそれらの組合せのいずれを出射するかを制御してもよい。紫外光照射部が間欠光を出射可能である場合、制御部は、間欠光のパルス幅及び/又はデューティ比を制御してもよい。このような制御部は、例えば、パルス幅変調回路、又はパルス幅変調回路及びタイマーであり得、例えばマイコン、リレー及び/又はスイッチング素子などで構成され得る。
制御部は、紫外光照射部に含まれる複数の光源のうちの発光すべきものを、センサからの情報に基づいて指定するように構成されてもよい。複数の光源は、例えば、アレイ、マトリクス又はクラスタの形態であり得る。
特定の実施形態において、紫外光照射部は、所定紫外光(好ましくは、指向性を有する所定紫外光)を、植物保持部に保持された植物の特定の部分を照射可能に構成される。この場合、植物の特定の部分は、予め、センサにより検知又は同定される。制御部が該センサからの情報に基づいて紫外光照射部を制御して、所定紫外光が該特定の部分に向けて照射されてもよい。センサは紫外光照射部の一部として構成されていてもよいし、紫外光照射部外のセンサ部に備わっていてもよい。
(植物浸漬部)
植物浸漬部は、液体を、その内部空洞内に区画された液体収容領域に収容可能に構成された貯槽を備え、所定位置で植物保持部に保持された植物の紫外光照射部分(紫外光照射部により所定紫外光を照射された部分)が該液体収容領域中に位置するように構成される。ここで、浸漬位置と呼ぶこともできる所定位置は、植物保持部により保持された植物が紫外光照射部により紫外光を照射された位置(紫外光照射位置;第1の位置)であってもよいし、紫外光照射位置とは異なる位置(第2の位置)であってもよい。前者の場合、植物は所定紫外光を照射された位置で微生物懸濁液に浸漬される。
液体収容領域に、液体が収容されたとき、浸漬位置で植物保持部に保持された植物の紫外光照射部分は、液体収容領域に収容された液体に浸漬される。
液体は、具体的には、微生物を含有する液体、すなわち微生物懸濁液である。
貯槽は、植物保持部に保持された植物をその内部空洞内外へ搬入出するための1つ又は2つの開口部を有し得る。開口部は、例えば、貯槽の上方に開口していてもよいし、又は側方に開口していてもよい。開口部はその外周に沿ってリムを有していてもよい。リムは、後述する蓋部材の部分と密着して貯槽の内部空洞を密封可能に構成される。
特定の実施形態において、植物浸漬部は、貯槽の開口部を閉鎖してその内部空洞を密封可能に構成された蓋部材を更に備える。この実施形態によれば、内部空洞内において植物を微生物懸濁液に浸漬中に、該内部空洞内の気圧を調節することにより、微生物懸濁液の植物組織内への浸潤を促進させることができる。内部空洞内の気圧は、圧力調節部により調節されてもよい。この実施形態において、貯槽は減圧チャンバとして機能し得るように構成されていてもよい。
蓋部材は、開口部の周縁部に、又は開口部が外周リムを有する場合には当該外周リムに、例えばシール材のような密着可能な部材又は機構を備えていてもよい。
(圧力調節部)
圧力調節部は、蓋部材で封止された貯槽の内部空洞を減圧可能に構成された減圧機構を備える。減圧機構は例えば真空ポンプであり得る。減圧機構は、貯槽の内部空洞とバルブを介して流体連通可能に接続している。
減圧機構は、貯槽の内部空洞の圧力を、例えば0.5~50kPa、より具体的には0.5~30kPa、より具体的には1~30kPa、より具体的には1~20kPa、より具体的には1~10kPa、より具体的には2~10kPaに減圧するように構成されてもよい。
圧力調節部は、内部空洞内の圧力を周囲圧力、例えば大気圧付近の圧力に復帰させるための、例えば圧力開放バルブのような機構を更に備えていてもよい。
(液体噴射部)
液体噴射部は、所定位置で植物保持部に保持された植物の紫外光照射部分に向けて、液体を噴射可能に構成される。ここで、噴射位置と呼ぶこともできる所定位置は、紫外光照射位置(第1の位置)であってもよいし、紫外光照射位置とは異なる位置(第2の位置)であってもよい。前者の場合、植物は所定紫外光を照射された位置で微生物懸濁液を噴射される。液体は、具体的には微生物懸濁液であり得る。

液体噴射部は、植物保持部に保持された植物に向けて液体を噴射することができる任意の構成を採用することができる。
液体噴射部による噴射は、植物保持部に保持された植物の周囲のいずれの方向からであってもよく、例えば上方及び/又は側方の一方向又は2方向以上からであってもよい。
噴射は、水圧及び/又は空気圧を利用するものであり得る。噴射パターン又はスプレーパターンは、任意の形状であり得、例えば直線的、扇形(フラット)又は充円錐形(フルコーン)であり得る。
液体噴射部は、例えば、植物保持部に保持された植物に向けて液体を噴射する1又は2以上の噴射口を有する。噴射口は液体又は液体と気体との混合物を噴射可能に構成される。噴射口は、例えば、1流体ノズル又は2流体ノズルである。
液体噴射部は、液体をミスト状態で噴射してもよい。
特定の実施形態において、液体噴射部は、液体を、植物保持部に保持された植物の特定の部分を指向する水流として噴射可能に構成される。この場合、植物の特定の部分は、予め、センサにより検知又は同定される。液体噴射部に備わる制御部が該センサからの情報に基づいて噴射口の向きを制御して、液体が該特定の部分に向けて噴射されてもよい。センサは紫外光照射部に備わっていてもよいし、紫外光照射部外のセンサ部に備わっていてもよい。
(センサ部)
特定の実施形態において、本開示の植物処理装置は、色及び/又は形状などに基づいて、植物保持部に保持された植物の特定の部位を同定してその位置情報を紫外光照射部に備わる制御部に送信可能に構成されたセンサ部を備える。これにより、微生物感染抵抗性を低下させるべき植物の部位の同定及び該部位への本開示の植物処理装置による所定紫外光の照射を効率的かつ確実に行うことができる。特定の部位は、例えば、特定の器官、例えば葉、花及び蕾、又は根であり得る。
センサ部は、位置情報を、液体噴出部に備わる制御部に送信可能に構成されていてもよい。これにより、微生物を感染させるべき部位への本開示の植物処理装置による微生物懸濁液の噴射を効率的かつ確実に行うことができる。
センサ部は、色及び/又は形状など判別可能な1又は2以上のセンサを備える。センサは、例えば二次元センサ、好ましくは二次元カラーセンサであり得る。センサの具体例は、モノクロタイプ又はカラータイプの画像判別センサであるがこれらに限定されず、CCDセンサ、CMOSセンサなどであり得る。センサは、そのセンシング領域が紫外光照射部の照射領域をカバーするように配備され得る。
(光合成有効放射照射部)
本開示の植物処理装置は、光合成有効放射照射部を更に備えていてもよい。
光合成有効放射照射部は、植物保持部により所定位置(光合成有効放射照射位置;第3の位置)に保持された植物(「被照射植物」)に向けて、光合成有効放射を照射可能に構成される。
光合成有効放射照射部は、400~700nmの波長域内の光を出射することができる光源を備える。光源としては、被照射植物の生長に適切な光を出射可能である限り特に制限されず、当該分野において入手可能ないずれの光源を使用でき、例えば、白熱電灯、蛍光灯、白色灯、高輝度放電(HID)ランプ、例えば高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、LED、例えば白色LED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、有機ELランプなどを用い得る。
前記光源のうち、エネルギー効率及び経済性並びに制御及び管理の容易性の観点から、LED又はLDが特に好ましい。LD又はLEDはアレイ、マトリクス又はクラスタの形態で提供されてもよい。
光合成有効放射照射部は、被照射植物の全体に光合成有効放射を照射することが好ましい。光合成有効光量子束密度は、例えば50~600μmol/m2/s、より具体的には100~500μmol/m2/sであり得る。光合成有効放射照射部は、被照射植物に対して、該植物の周囲のいずれの方向から照射してもよいが、上方から照射することが好ましい。
光合成有効放射照射部は、光合成有効放射の出射形態を制御する制御部を備えていてもよい。前記出射形態には明暗周期が含まれてもよい。
光合成有効放射照射部は、植物保持部を保持可能に構成された栽培ラック(例えば、多段ラック)に組み込まれていてもよい。この場合、栽培ラックには、該栽培ラックが保持する植物保持部により保持される植物に養液を供給する養液供給部として、養液供給システムが組み込まれていてもよい。
(植物搬送機構)
幾つかの実施形態において、本開示の植物処理装置は、少なくとも紫外光照射部から植物浸漬部又は液体噴射部まで、植物保持部を搬送可能に構成された第1の搬送機構を備える。より具体的には、第1の搬送機構は、少なくとも紫外光照射部内の紫外光照射位置(第1の位置)から植物浸漬部内の浸漬位置又は液体噴射部内の噴射位置(第2の位置)まで搬送可能に構成され得る。
植物浸漬部を備える特定の実施形態において、第1の搬送機構は、紫外光照射位置から浸漬位置までの間で、植物保持部を上下反転させる反転機構を備えて構成されてもよい。この構成により、例えば植物の地上部の全部又は一部を、植物浸漬部の貯槽に収容された微生物懸濁液中に浸漬させることが容易になる。
好ましくは、第1の搬送機構は、少なくとも第1の位置から第2の位置までの搬送路上の植物保持部、より具体的には該植物保持部に保持された植物に対する光合成有効放射を遮蔽可能に構成される。例えば、当該搬送路は、外部からの光合成有効放射を遮蔽した通路内に設けられ得る。
幾つかの実施形態において、本開示の植物処理装置は、追加的に又は代替的に、少なくとも植物浸漬部又は液体噴射部から光合成有効放射照射部まで、植物保持部を搬送可能に構成された第2の搬送機構を備える。より具体的には、第2の搬送機構は、少なくとも第2の位置から第3の位置まで搬送可能に構成され得る。
好ましくは、第2の搬送機構は、少なくとも第2の位置から第3の位置までの搬送路上の植物保持部、より具体的には該植物保持部に保持された植物に対する光合成有効放射を遮蔽可能に構成される。例えば、当該搬送路は、外部からの光合成有効放射を遮蔽した通路内に設けられ得る。
搬送機構は、例えば搬送ステージ、搬送ロボット又はロボットアームを備えて構成され得る。
第2の搬送機構は第1の搬送機構と一体的に構成されていてもよい。
第1及び/又は第2の搬送機構の一部が植物保持部を構成していてもよい。
以下、本開示の植物処理装置の実施形態の具体例を示す模式図である図1及び図2を参照しながら本開示の植物処理装置を説明する。
(実施形態1)
図1に模式的に示す本開示の植物処理装置100は、植物保持部110と、紫外光照射部120と、液体噴射部130と、紫外光照射部120及び液体噴射部130を制御する制御部140と、を備える。植物保持部110と紫外光照射部120と液体噴射部130とは筐体180の内部に含まれていてもよい。
植物保持部110は、植物Pを保持可能である。植物処理装置100は複数の植物保持部110を備えていてもよい。
紫外光照射部120は、300~325nmの波長域内の紫外光を出射することができる光源122と、前記光源122を制御する制御部124とを有し、植物Pに向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を照射することができる。光源122は、LDアレイ又はLEDアレイのような光源アレイの形態であってもよい。
液体噴射部130は、植物保持部110に保持された植物Pに向けて液体を噴射可能である。液体噴射部130は、紫外光照射部120により300~325nmの波長域内の紫外光を照射された後の植物Pに液体を噴出するように制御部140により制御される。ここで、液体は、より具体的には、微生物懸濁液であり得る。
筐体180は、全体が遮光性材料で構成されていてもよく、暗室であってもよい。
植物処理装置100はまた、300~325nmの波長域内の紫外光を反射することができる反射材112が設けられていてもよい。反射材112は、植物保持部110が備えていてもよいし、又は筐体180の内面の少なくとも一部に配置されていてもよい。反射材112は、紫外光照射部120から射出された300~325nmの波長域内の紫外光を、植物保持部110に保持された植物Pに向けて反射することができる。
(実施形態2)
図2に模式的に示す本開示の植物処理装置200は、植物保持部210と紫外光照射部220と植物浸漬部240とを備える。植物処理装置200は更に、任意の構成要素として、圧力調節部250を備える。
植物保持部210は、植物Pを保持可能である。植物処理装置200は複数の植物保持部210を備えていてもよい。植物保持部210は、300~325nmの波長域内の紫外光を、保持する植物Pに向けて反射することができる反射材を備えていてもよい。
植物保持部210は、搬送機構により、紫外光照射部220の照射領域内、より具体的には紫外光照射位置から液体浸漬部240の貯槽242の内部空洞内に区画された液体収容領域内、より具体的には浸漬位置まで搬送されてもよい。植物保持部210は、搬送中に又は浸漬位置で、浸漬を容易とするように、上下を反転されてもよい。
紫外光照射部220は、300~325nmの波長域内の紫外光を出射することができる光源222と、前記光源222を制御する制御部224とを有し、植物Pに向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を照射することができる。光源222は、LDアレイ又はLEDアレイのような光源アレイの形態であってもよい。紫外光照射部220は照射室280内に設けられていてもよい。図2において、紫外光照射部220は、植物Pの上方から照射可能なように設けられているが、追加的に又は代替的に植物Pの側方及び/又は下方から照射可能に配置されていてもよい。照射室280は、外部からの光合成有効放射を遮蔽することができることが好ましい。
液体浸漬部240は、その内部空洞内に液体収容領域244が区画されている貯槽242を備える。液体浸漬部240は更に、任意の構成要素として、開口部246と、該開口部を閉鎖する蓋部材248を備える。
液体収容領域244は、植物Pを浸漬する液体、より具体的には微生物懸濁液を収容可能である。開口部246は、植物保持部210に保持された植物Pを貯槽242の内部空洞内外へ搬入出するために設けられる。図2において、開口部246は上方に開口しているが、側方に開口していてもよい。蓋部材248は開口部246を閉鎖してその内部空洞を密封可能である。
圧力調節部250は、蓋部材248で封止された貯槽242の内部空洞を減圧可能な真空ポンプ252と、内部空洞内の圧力を大気圧付近の圧力に復帰させるための圧力開放バルブ254と、を備える。真空ポンプ252及び圧力開放バルブ254は、貯槽242の内部空洞とバルブを介して流体連通可能に接続している。
植物保持部210に保持された植物Pは、開口部246を通って、貯槽242の内部空洞内へ搬入される。紫外光照射部220により300~325nmの波長域内の紫外光を照射された後に内部空洞内の浸漬位置で植物保持部210に保持された植物Pは、液体収容領域244に収容された液体に浸漬される。搬入後、蓋部材248が開口部246を封止して貯槽242の内部空洞を密封する。密封後、真空ポンプ252により貯槽242の内部空洞が所定圧力まで減圧される。所定時間の経過後、圧力開放バルブ254が開放されて、貯槽242の内部空洞の圧力が大気圧付近の圧力まで復帰する。この際に、植物Pへの液体の浸潤が促進される。その後、植物保持部210に保持された植物Pは、開口部246を通って、貯槽242の内部空洞外へ搬出される。
(光源)
以下の実施例では、ピーク波長±半値全幅がそれぞれ280±10nm、310±10nm、340±10nmである光(以下、それぞれ、「280nm-LED光」、「310nm-LED光」及び「340nm-LED光」とも表記する)を発するLEDを使用した。用いたLEDの発光スペクトルを図3に示す。
310nm-LED光は、波長成分の大部分を300~325nmの範囲に有する。一方、280nm-LED光及び340nm-LED光は、300~325nmの波長成分をほとんど有しない。
実施例1:アグロインフィルトレーション試験1
(方法)
<ベンサミアナタバコの栽培>
ベンサミアナタバコを約4週間、土耕栽培した(「与作」果菜類専用培土;ジェイカムアグリ株式会社)。栽培条件は次のとおりであった:温度24℃、14時間明期、白色光照明(100μmol/m2/s)。
<アグロバクテリウム懸濁液の調製>
イントロン挿入型ホタルルシフェラーゼを導入したアグロバクテリウム(LBA4404株)を、LB培地において28℃にて200rpmで振盪培養し、OD600が0.5付近になった時点で、室温にて3,000rpm×15分間の遠心分離により集菌した。沈殿した菌体を浸潤培地(10mM MgCl2、10mM MES、150μM アセトシリンゴン、pH5.7)中にOD600が0.5になるように懸濁し、約24時間、室温暗所で静置した。
<紫外LED光照射>
約4週齢のベンサミアナタバコを鉢植えのままで用いた。試験部は、1株あたり1~3葉に対して、LED光照射及びLED光非照射の処理部を設けた。各葉の半分をアルミホイルで覆って遮光し、LED光非照射部(以下、単に「非照射部」とも表記する)とし、残りの半分をLED光照射部(以下、単に「照射部」とも表記する)とした(図4)。
試験部の葉に、上記3種類のLED光のいずれかを2.5μmol/m2/sで45分間照射した。照射量は6750μmol/m2であった。照射直後に、葉を覆っていたアルミホイルを取り外した。
その後、ベンサミアナタバコを暗所において24時間保管した。
<感染処理(アグロインフィルトレーション)及び感染検証>
24時間の暗所保管後、310nm-LED光又は340nm-LED光を照射したベンサミアナタバコの葉の照射部及び非照射部に、上記アグロバクテリウム懸濁液をニードルレスシリンジで塗布した。各葉において、照射部及び非照射部の各処理部で同数(2~6)の塗布を行った。
塗布直後に、0.2mM D-ルシフェリン溶液を葉全体に噴霧した。
噴霧後、暗所において24時間22℃にて静置した。
24時間の暗所保管後、非照射部及び照射部をCCDカラーカメラで撮像して、画像上で両処理部のホタルルシフェラーゼ発光量を比較した。葉におけるルシフェラーゼ発光量は、葉の細胞へのルシフェラーゼ導入アグロバクテリウムの感染量を反映する。
(結果)
280nm-LED光照射部では、照射24時間後に、顕著な萎凋が発生し、水分が減少し、葉の厚みが薄くなった(図5)。この傾向は、被照射部が設けられていない葉、すなわち280nm-LED光が全体に照射された葉で顕著であった。4週齢のベンサミアナタバコは、紫外光抵抗性が低いため、280nm-LED光照射に伴う紫外光ストレスにより顕著な萎凋が発生したと考えられる。
280nm-LED光照射部は、アグロインフィルトレーションを実施できる状態ではなかったため、以後の実施例では280nm-LED光を用いなかった。
図6及び図7に、それぞれ310nm-LED光又は340nm-LED光を照射したベンサミアナタバコの葉の発光像を示す。枠で囲まれた領域が非照射部である。上段に、ベンサミアナタバコの写真とホタルルシフェラーゼの発光像を重ね合わせた像を示し、下段にホタルルシフェラーゼの発光像を示す。上段の画像では、発光量の大きい領域が黒く示されている。
310nm-LED光照射部は、図において枠で囲まれた領域として示される非照射部と比較して、発光量が顕著に多い(図6)。よって、310nm-LED光照射により、アグロバクテリウムの感染効率が向上したと考えられ、その原因として、植物に備わる微生物感染抵抗性が低下したと推測される。
一方、340nm-LED光を照射した葉では、照射部と非照射部との間で発光量に差は認められなかった(図7)。これは、340nm-LED光が植物の微生物感染抵抗性に影響を及ぼさなかったためであると考えられる。
図8及び図9に、それぞれ310nm-LED光、340nm-LED光を照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。非照射部と照射部との間で対応のあるt検定(両側検定)を行った。その結果、310nm-LED光照射部は、非照射部と比較して、発光量が有意に増加していた(図8;p<0.05)。このことは、310nm-LED光照射部において、非照射部と比較して、より多くのアグロバクテリウムが植物細胞に感染することを示す。
一方、340nm-LED光照射部と非照射部との間で、発光量に有意差はなかった(図9;p≧0.05)。このことは、340nm-LED光照射は、植物細胞へのアグロバクテリウムの感染に影響しないことを示している。
以上の結果から、310nm-LED光は、植物細胞において、微生物感染抵抗性の低下を誘導する一方、340nm-LED光にはそのような作用はないと考えられる。
実施例2:アグロインフィルトレーション試験2
(方法)
ベンサミアナタバコ葉に、310nm-LED光を2.5μmol/m2/sで4.5分間、90分間、225分間又は360分間照射したこと以外は、実施例1と同様の試験を行った。照射量はそれぞれ、675、13,500、33,750又は54,000μmol/m2であった。
(結果)
図10~図13に、310nm-LED光をそれぞれ675、13,500、33,750又は54,000μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。非照射部と照射部との間で対応のあるt検定(両側検定)を行った結果、13,500及び33,750μmol/m2での光照射部では、非照射部と比較して、発光量が有意に増加していた(図11、p<0.01;図12、p<0.05)。一方、675μmol/m2での光照射部は非照射部との間で発光量に有意差はなかった(図10;p≧0.05)。また、54,000μmol/m2での光照射部では、非照射部と比較して発光量が増加する傾向を示したが、萎凋の傾向も見られた。
図14に、照射量13,500μmol/m2での310nm-LED光照射試験に用いたベンサミアナタバコの葉の発光像を示す。枠で囲まれた領域が非照射部である。上段に、ベンサミアナタバコの写真とホタルルシフェラーゼの発光像を重ね合わせた像を示し、下段にホタルルシフェラーゼの発光像を示す。上段の画像では、発光量の大きい領域が黒く示されている。図より、310nm-LED光照射部は、図において枠で囲まれた領域として示される非照射部と比較して、発光量が顕著に多いことが理解できる。
以上の結果を実施例1の結果と合わせると、310nm-LED光は、約1,000~4,000μmol/m2以上の照射量で、植物細胞において、微生物感染抵抗性の低下を誘導し得るが、54,000μmol/m2以上の照射量では植物細胞を損傷し得ると考えられる。
実施例3:アグロインフィルトレーション試験3
(方法)
310nm-LED光のみを用い、照射後の暗所保管を省略したこと以外は、実施例1と同様の試験を行った。

(結果)
図15に、310nm-LED光を6,750μmol/m2の照射量で照射したベンサミアナタバコの、試験部を設定した各葉について、非照射部及び照射部における発光量を示す。310nm-LED光照射部は、非照射部と比較して、発光量が有意に増加していた(対応のあるt検定(両側検定)、p<0.05)。このことから、310nm-LED光を照射された植物は、その直後から、微生物感染抵抗性が有意に低下することが理解できる。
実施例4:フローラルイノキュレーション試験
(方法)
M. Narusakaら(Plant Biotechnology 27, 349-351 (2010))の方法に従って、シロイヌナズナの花芽に、310nm-LED光を照射量6,750μmol/m2(=2.5μmol/m2/s×45分間)で照射した後、培養培地中にカナマイシン耐性遺伝子が導入されたアグロバクテリウムを含む懸濁液を、マイクロピペッターを用いて接種した(フローラルイノキュレーション)。
シロイヌナズナを、当該花芽が開花して種子を結実するまで常法に従って生育させた後、当該種子を乾燥種子として収穫した。
対照として、別のシロイヌナズナにおいて、310nm-LED光照射なしでフローラルイノキュレーションを行った花芽から得られた乾燥種子を収穫した。
310nm-LED光を照射した花芽から得られた乾燥種子264個及び非照射の花芽から得られた乾燥種子1000個を、カナマイシン含有寒天培地(MS培地)に播種して、カナマイシン選抜を行った。
(結果)
非照射の花芽から得られた種子はいずれも、カナマイシン含有寒天培地において生長しなかった。このことは、310nm-LED光照射なしでフローラルイノキュレーションを行った花芽においては、フローラルイノキュレーション法による遺伝子組換えが起こらなかったことを示唆する。
一方、310nm-LED光照射後にフローラルイノキュレーションを行った花芽から得られた264個の種子のうち、2つがカナマイシン含有寒天培地において生長した。このことは、310nm-LED光照射後にフローラルイノキュレーションを行った花芽においては、フローラルイノキュレーション法による遺伝子組換えの効率が高くなったことを示唆する。
これらの結果から、310nm-LED光照射により、フローラルイノキュレーション法による遺伝子組換えの効率が向上することが理解できる。これは、実施例1~3の結果を考慮すると、310nm-LED光照射により、花芽の微生物感染抵抗性が低下した結果であると考えられる。
実施例5:310nm-LED光を照射したシロイヌナズナの遺伝子発現解析
310nm-LED光を照射量6,750μmol/m2(=2.5μmol/m2/s×45分間)で照射した直後のシロイヌナズナの遺伝子発現解析を行った。

(結果)
310nm-LED光を照射したシロイヌナズナにおいては、細菌や糸状菌に対する防御に関する転写因子(WRKY60、MYB28、MYB29、MYB45)、サリチル酸応答の関連遺伝子(UGT1、PARN)が、顕著にダウンレギュレートしていた。
また、アグロバクテリウムによる植物への遺伝子導入を阻害することが知られているGABAの生合成の関連遺伝子(GAD1、ALDH2B7)のダウンレギュレーションも確認できた。
よって、310nm-LED光は、細菌や糸状菌に対する植物細胞の防御機構を弱め(換言すれば、微生物感染抵抗性を低下させ)、さらには細胞中のGABA生合成を抑制することにより、植物細胞への微生物の感染を促進させることが理解できる。
本開示は、以下の項に記載の方法および装置を含む。
項1:
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
を含む、植物を処理する方法。
項2:
前記感染工程において、目的の外来遺伝子を含む微生物を感染させることにより、該植物に該外来遺伝子を導入する、項1に記載の方法。
項3:
前記照射工程が暗所で行われる、項1又は2に記載の方法。
項4:
前記感染工程で微生物を感染させた植物を6~48時間暗所に置く工程を更に含む、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
項5:
前記感染工程で微生物を感染させた植物を生長させる工程を更に含む、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6:
前記照射工程において、前記300~325nmの波長域内の光が0.05~300μmol/m2/sの光量子束密度で照射される項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7:
前記照射工程において、330nm以上の波長域の光は照射されないか、又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の30%未満である、項1~6のいずれか1項に記載の方法。
項8:
前記感染工程における感染が微生物を含む液体中への該植物の浸漬又は該植物への前記液体の噴射若しくは注入による、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
項9:
前記感染工程における感染がアグロインフィルトレーション法又は植物ウイルスベクター法による、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
項10:
前記300~325nmの波長域内の光がピーク波長310±5nm及び半値全幅5~15nmの波長スペクトルを有する光である、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
項11:
植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
を含む、微生物が感染した植物の生産方法。
項12:
項11に記載の照射工程および感染工程と、
前記感染した植物を発酵させる工程と、
を含む植物発酵物の製造方法。
項13:
植物を保持可能に構成された植物保持部と、
前記植物保持部に保持された植物の少なくとも一部に向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を、290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射可能に構成された紫外光照射部と、
微生物が含有された液体を、その内部空洞内に区画された液体収容領域に収容可能に構成された貯槽を備える植物浸漬部であって、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分が前記液体収容領域中に位置するように構成された植物浸漬部、又は、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分に向けて、微生物が含有された液体を噴射可能に構成された液体噴射部と、
を備える植物処理装置。
項14:
前記紫外光照射部から、前記植物浸漬部または前記液体噴射部まで前記植物保持部を搬送可能に構成された第1の搬送機構をさらに備え、
前記第1の搬送機構は、搬送路上の前記植物に対する光合成有効放射を遮蔽可能に構成されている、項13に記載の植物処理装置。
項15:
圧力調節部を更に備える項13又は14に記載の植物処理装置であって、
前記貯槽は開口部を有し、
前記植物浸漬部は、前記開口部を閉鎖して前記貯槽の内部空洞を密封可能に構成された蓋部材を更に備え、
前記圧力調節部は、前記蓋部材で密封されたときに前記貯槽の内部空洞を減圧可能に構成された減圧機構を備える、植物処理装置。
項16:
前記紫外光照射部、又は前記紫外光照射部及び前記植物保持部は、前記紫外光を、前記植物保持部に保持された植物の特定箇所のみに照射可能に構成されている、項13~15のいずれか1項に記載の植物処理装置。
項17:
植物の特定の部分を検知可能に構成されたセンサ部を更に備える項13~16のいずれか1項に記載の植物処理装置であって、
前記紫外光照射部は、前記センサ部により検知された部分に向けて、前記紫外光を照射可能に構成され、
前記液体噴射部は、前記センサ部により検知された部分に向けて、液体を噴射可能に構成されている、植物処理装置。
項18:
前記紫外光照射部は、ピーク波長310±5nm及び半値全幅5~15nmの波長スペクトルを有する光を発出する光源を備える請求項13~17のいずれか1項に記載の植物処理装置。
本開示の方法は、幾つかの実施形態において、バイオ医薬(例えば、インターフェロン、ワクチン用免疫原、抗体、抗原、成長因子)、工業用酵素(例えば、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ)、食品及び飼料(例えば、タンパク質補助剤、栄養剤)などの原料となる組換えタンパク質の製造に利用可能である。
本開示の方法は、幾つかの実施形態において、トランスジェニック植物の生産に利用可能である。本開示の方法は、病害抵抗力が高いためや一度に得られる種の数が少ないために遺伝子導入効率が低い植物に特に有効である。
本開示の方法は、幾つかの実施形態において、植物発酵物の効率的な製造に利用可能である。
本開示の方法は、幾つかの実施形態において、様々な環境ストレスの下で生育可能な植物の生産に利用可能である。
100、200・・・植物処理装置、110、210・・・植物保持部、112・・・反射材、120、220・・・紫外光照射部、122、222・・・光源、124、224・・・制御部、130・・・液体噴射部、140・・・制御部、180・・・筐体、240・・・液体浸漬部、242・・・貯槽、244・・・液体収容領域、246・・・開口部、248・・・蓋部材、250・・・圧力調節部、252・・・真空ポンプ、254・・・圧力開放バルブ、280・・・照射室、P・・・植物

Claims (18)

  1. 植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
    前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
    を含む、植物を処理する方法。
  2. 前記感染工程において、目的の外来遺伝子を含む微生物を感染させることにより、該植物に該外来遺伝子を導入する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記照射工程が暗所で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記感染工程で微生物を感染させた植物を6~48時間暗所に置く工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記感染工程で微生物を感染させた植物を生長させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記照射工程において、前記300~325nmの波長域内の光が0.05~300μmol/m2/sの光量子束密度で照射される、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 前記照射工程において、330nm以上の波長域の光は照射されないか、又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の30%未満である、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 前記感染工程における感染が微生物を含む液体中への該植物の浸漬又は該植物への前記液体の噴射若しくは注入による、請求項1又は2に記載の方法。
  9. 前記感染工程における感染がアグロインフィルトレーション法又は植物ウイルスベクター法による、請求項1又は2に記載の方法。
  10. 前記300~325nmの波長域内の光がピーク波長310±5nm及び半値全幅5~15nmの波長スペクトルを有する光である、請求項1又は2に記載の方法。
  11. 植物に、300~325nmの波長域内の光を、その照射量が4000μmol/m2以上50000μmol/m2以下となり、且つ290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射する照射工程と、
    前記光が照射された植物に微生物を感染させる感染工程と、
    を含む、微生物が感染した植物の生産方法。
  12. 請求項11に記載の照射工程および感染工程と、
    前記感染した植物を発酵させる工程と、
    を含む植物発酵物の製造方法。
  13. 植物を保持可能に構成された植物保持部と、
    前記植物保持部に保持された植物の少なくとも一部に向けて、300~325nmの波長域内の紫外光を、290nm以下の波長域の光は照射されないか又はその照射量が前記300~325nmの波長域内の光の照射量の20%未満となるように照射可能に構成された紫外光照射部と、
    微生物が含有された液体を、その内部空洞内に区画された液体収容領域に収容可能に構成された貯槽を備える植物浸漬部であって、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分が前記液体収容領域中に位置するように構成された植物浸漬部、又は、前記植物の前記紫外光照射部で紫外光照射された部分に向けて、微生物が含有された液体を噴射可能に構成された液体噴射部と、
    を備える植物処理装置。
  14. 前記紫外光照射部から、前記植物浸漬部または前記液体噴射部まで前記植物保持部を搬送可能に構成された第1の搬送機構をさらに備え、
    前記第1の搬送機構は、搬送路上の前記植物に対する光合成有効放射を遮蔽可能に構成されている、請求項13に記載の植物処理装置。
  15. 圧力調節部を更に備える請求項13又は14に記載の植物処理装置であって、
    前記貯槽は開口部を有し、
    前記植物浸漬部は、前記開口部を閉鎖して前記貯槽の内部空洞を密封可能に構成された蓋部材を更に備え、
    前記圧力調節部は、前記蓋部材で密封されたときに前記貯槽の内部空洞を減圧可能に構成された減圧機構を備える、植物処理装置。
  16. 前記紫外光照射部、又は前記紫外光照射部及び前記植物保持部は、前記紫外光を、前記植物保持部に保持された植物の特定箇所のみに照射可能に構成されている、請求項13又は14に記載の植物処理装置。
  17. 植物の特定の部分を検知可能に構成されたセンサ部を更に備える請求項13又は14に記載の植物処理装置であって、
    前記紫外光照射部は、前記センサ部により検知された部分に向けて、前記紫外光を照射可能に構成され、
    前記液体噴射部は、前記センサ部により検知された部分に向けて、液体を噴射可能に構成されている、植物処理装置。
  18. 前記紫外光照射部は、ピーク波長310±5nm及び半値全幅5~15nmの波長スペクトルを有する光を発出する光源を備える請求項13又は14に記載の植物処理装置。
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