JP2022036365A - 植物を用いたタンパク質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物を用いてタンパク質を生産する際、アグロバクテリウムを植物に感染させる方法が簡易であり、水耕栽培の問題点を克服できる、タンパク質の製造方法の提供。【解決手段】目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウム6を、養液3上に配置された無孔性親水性フィルム1上で栽培されている植物4の根5に接触させることにより、養液と隔離した簡便な方法で目的タンパク質を植物の根に生産させる、製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は医療用途等に有用なタンパク質を、遺伝子導入植物を用いて製造する方法に関する。
更に詳しくは、抗体、ワクチン、融合蛋白等の生物学的製剤に代表される医薬品等の生理活性タンパク質を、遺伝子導入植物を用いて生産する植物栽培方法に関する。
近年、遺伝子導入(あるいは組換えとも言う)植物を用いた抗体、ワクチン、融合蛋白等の生物学的製剤に代表される有用物質生産が注目されている(特許文献1)。この方法による有用物質生産のメリットは、動物細胞を利用する場合に比べて低コストで二酸化炭素を排出せず、しかも動物由来の感染性物質等(プリオンなど)に汚染される心配がないことである。
特開2006-288210号公報
目的タンパク質を産生する遺伝子は様々な方法で植物細胞に導入することができる。例えば、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウムを用いた形質転換法、ポリカチオン法、ポリエチレングリコール法などの方法が挙げられるが、遺伝子導入の効率が高いアグロバクテリウムを用いた形質転換法が広く利用されている(特許文献2)。
特表2010-533001号公報
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを植物に感染させる方法として、特許文献3には真空浸潤法及び過剰圧力により植物を処理する手順が記載されている。また、特許文献4では真空浸潤法において、アグロバクテリウムを含む感染液に浸漬させる根や葉の部分の取り扱いについて検討し、感染液に浸漬される根の割合が根全体の50質量%以下であること、一つの葉全体を感染液の液面下に浸漬されていることが感染効率を向上させるとしている。
特表2013-533001号公報 特開2015-154769号公報
特許文献4にも記載されるように、遺伝子導入植物によって生産される有用物質を医薬品等として利用するためには、遺伝子導入植物を無菌的な環境下で栽培する必要がある。そのため、様々な雑菌が共存する通常の土壌を利用した土耕栽培で生産することはできず、専ら水耕栽培システムで遺伝子導入植物の無菌的栽培が行われている。
しかしながら、水耕栽培では根が直接養液中に浸漬されているため、植物の根が酸素欠乏に陥り易い。根への酸素供給が不足すると「根づまり」あるいは腐敗による「根腐れ」と称される現象が生じ、その結果、根が枯死して植物の生長が阻害される。この問題を回避するため、水耕栽培では養液中の溶存酸素濃度を高める装置も必要であり、また養液の殺菌も不可欠で、コストアップの要因となっている。また、養液は殺菌されるため、菌体であるアグロバクテリウムを水耕栽培で根に感染させることは困難である。
一方、本発明者らは、養液上に配置された無孔性親水性フィルム上側面で植物を栽培すると、植物の根が該フィルムを介して、該フィルム下側面に接触した養液中の肥料成分および水を植物の生長に必要な程度、吸収し生長し得ることをすでに見出している(特許文献5、6)。
WO 2004-064499号公報 特開2008-295350号公報
本発明が解決しようとする課題は、上記のように植物を用いてタンパク質を生産する技術は知られているものの、アグロバクテリウムを植物に感染させる方法が圧力の厳密な調整や手間のかかる工程を必要とし、さらに水耕栽培の問題点を克服できていない点である。
本発明者らは鋭意研究の結果、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを、養液上に配置された無孔性親水性フィルム上側面で栽培されている植物の根に接触させることによって、本発明が解決しようとする課題が解決できることを見出した。
本発明の植物を用いて目的タンパク質を製造する方法は上記知見に基づくものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)アグロバクテリウムに感染し得る植物を栽培する工程(栽培工程)、前記栽培した植物に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを接触させることにより感染させる工程(感染工程)、及び前記感染後の植物をさらに培養して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程(発現工程)を含むタンパク質の製造方法であって、該アグロバクテリウムの植物への接触が、少なくとも無孔性親水性フィルム上に接する植物の根に対して行われることを特徴とするタンパク質の製造方法。
(2)前記無孔性親水性フィルムが植物の根と実質的に一体化するものであることを特徴とする(1)に記載のタンパク質の製造方法。
(3)前記感染工程に引き続き、前記感染後の植物を連続してさらに無孔性親水性フィルム上で栽培して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程(発現工程)を行うことを特徴とする(1)または(2)に記載のタンパク質の製造方法。
(4)前記発現工程の後に、前記植物から目的タンパク質を精製し、及び/ 又は回収する工程を含む(1)~(3)に記載のタンパク質の製造方法。
(5)前記目的タンパク質が、抗体、ワクチン、融合蛋白等の生物学的製剤であることを特徴とする(1)~(4)に記載のタンパク質の製造方法。
アグロバクテリウムは、元来土壌中に存在し植物の根に感染する性質を有するので、本発明の方法によりアグロバクテリウムを植物の根に接触させることにより、手間がかかる上に植物にもダメージを与える圧力調節を必要とせず、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを植物に感染させることができる。
本発明の方法によれば、養液上に配置された無孔性親水性フィルム上側面で栽培されている植物の根は養液中に浸漬された水耕栽培の根と異なり、空気中に露出した状態で生長するので、酸素を空気中から十分に取り込むことが出来、酸素欠乏による根腐れをおこすことが無い。
本発明の方法によれば、目的タンパク質は無孔性親水性フィルム上に2次元的に広がる細い根の中に生産され、その抽出作業も簡便で高効率になる。さらに根の生長は葉の生長に先だって進むので、目的タンパク質を葉で産生させるより短期間で得ることが出来る。
さらに本発明の方法によれば、植物は無孔性親水性フィルムによって養液と隔離された状態で栽培工程、感染工程、発現工程を経ることとなるので、養液からのコンタミネーションを回避でき、医薬品等としてのタンパク質を安全に製造することができる。
は、本発明の基本的な態様の例を示す摸式断面図である。
1.無孔性親水性フィルム2.水槽 3.養液4.植物5.根6.アグロバクテリウム懸濁液7.光源
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。
本発明の、植物を用いて目的タンパク質を製造する方法は、植物を栽培する工程(栽培工程)、次いで、該植物に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させる工程(感染工程)、及び、感染工程後の植物を栽培して前記目的タンパク質を発現させる工程(発現工程)を含む。
(植物)
本発明で用いられる植物は、完全な植物体のみならず、種子、球根、葉、茎、根、花、花粉、果実およびその一部、さらに植物全能性を有する限り、植物細胞、プロトプラスト、カルスなどをも含む。ただし、感染工程においては分化した根の組織が必要である。
本発明で用いることのできる植物としては、アグロバクテリウムに感染し得る植物であり、目的タンパク質を発現する植物であればよく、特に限定されない。例えば、双子葉植物と単子葉植物が挙げられる。具体的には、双子葉植物ではナス科植物として、タバコ、ジャガイモ、トマト等が、アブラナ科植物として、ルッコラ、コマツナ、ミズナ、カラシナ、シロイズナズナ等が、キク科植物として、チコリ、エンダイブ、アーティチョーク等が、マメ科植物として、アルファルファ、リョクトウ、ダイズ等が、アカザ科植物としてホウレンソウ、テンサイ等が、シソ科植物としてシソ、バジル等が、セリ科植物としてミツバ等が例示される。単子葉植物としてはイネ科植物として、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等が、アオイ科植物としてはワタ等が例示される。
(目的タンパク質)
本発明において、目的タンパク質とは、医療用や産業用に用いられるタンパク質であれば特に限定はされない。
医療用タンパク質としては、治療用タンパク質と診断タンパク質に分類され、治療用タンパク質としては、ペプチド、ワクチン、抗体、酵素、ホルモン(好ましくはペプチドホルモン) などが例示され、より具体的には、ワクチンとして使用されるウイルスタンパク質、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) 、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン等の造血因子、インターフェロン、インターロイキン(IL)-1やIL-6等のサイトカイン、モノクローナル抗体またはその断片、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、インシュリン、幹細胞成長因子(SCF) などが例示される。また、診断タンパク質としては、抗体、酵素、ホルモン等が例示される。
ワクチンとして使用されるウイルスタンパク質として好ましくは、ウイルス様粒子(VLP) の構成タンパク質が挙げられる。VLPの構成タンパク質は単一のタンパク質でもよいし、1 つ以上のタンパク質を含んでもよい。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトC 型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV) などが挙げられ、インフルエンザウイルスのVLPの構成タンパク質としてはインフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質などが例示される。
産業用タンパク質とは、食品、飼料、化粧品、繊維、洗剤、化学品などに用いられるタンパク質であり、ペプチド、酵素、機能性タンパク質が例示される。具体的には、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペプチダーゼ、ルシフェラーゼ、ラクタマーゼ、コラーゲン、ゼラチン、ラクトフェリン、クラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP)などが例示される。
(栽培環境)
本発明の方法において栽培工程、感染工程、発現工程の環境は、クリーンルーム(クラス100,000~クラス1,000)内あるいは、そのクリーンルーム内に設置されたクリーンブース(クラス1,000~クラス100)内の無菌操作が可能な環境が望ましい。
クリーンルーム内の温度は、対象となる植物の生長に適した温度を適宜選択するが、通常10 ℃ 以上、好ましくは15℃ 以上であり、また、通常40℃ 以下、好ましくは35℃以下である。
クリーンルーム内の湿度は、通常40%以上、好ましくは50%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下である。
クリーンルーム内の二酸化炭素濃度は、通常300ppm以上、好ましくは500ppm以上であり、また、通常5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下である。
(光源)
植物を栽培するための光源としては、天然の太陽光、蛍光灯、白熱灯、ナトリウムランプ、発光ダイオード(LED)、有機ELなど各種光源を適宜選択して、あるいは組み合わせて用いても良い。
栽培工程、感染工程、発現工程における光強度としては、光合成有効光量子束密度(PPFD)等を測定することで評価できる。PPFDとは、光合成に有効な可視領域400nm~700nmの光の単位時間、単面積当たりの光量子数で表され、単位は、μmol・m-2・s-1である。
PPFDは光量子計などを用いて測定することが出来、通常30~600μmol・m-2・s-1、好ましくは50~400μmol・m-2・s-1、より好ましくは70~300μmol・m-2・s-1である。
なお、栽培工程、感染工程、発現工程の全期間にわたって、光強度の条件を上記の条件とする必要はなく、例えば、栽培工程を前半と後半に分けて後半のみ強度の条件を上記の条件とするなど、一定期間のみ上記の条件下で植物を栽培してもよい。この場合、上記の条件下とする期間としては、全栽培期間の1 % 以上の期間が好ましく、2 0 % 以上の期間がより好ましい。
また、植物は、光照射の時間が一日当たり1 0 時間以上2 4 時間未満であるサイクル下で栽培されるか、または、連続光下により栽培されることが好ましい。中でも、連続光下により栽培されることがより好ましい。上述の範囲にすると、植物生速度が加速され、収穫までの栽培期間が短縮されるので好ましい。なお、「光の照射時間が1 日あたり1 0 時間以上2 4 時間未満」とは、必ずしも連続照射でなくてもよく、例えば、照射時間が1 日あたり2 0 時間の場合、1 0 時間以上の連続照射を1 日に2 回行なってもよい。
なお、ここで照射する光は、パルス光であってもよい。パルス光は、1マイクロ秒~1秒間の短い間隔でLED等を点滅させることにより得られるものであり、このようなパルス光を用いることにより、生理学上植物が光を必要としない時間には光を当てず、光を必要とする時間だけ光を当てることができるので光合成速度を上昇させ、電力コストを抑えることができる。この場合の照射時間は、LEDが点灯していない時間も照射時間に含むこととし、1日当たりのパルス光照射した時間の合計とする。
(養液)
本発明において使用可能な養液(ないし肥料溶液)は特に制限されない。例えば、従来の土耕栽培ないし養液土耕栽培において使用されてきた養液は、本発明においていずれも使用可能である。
一般には、水または養液として植物の生育にとって必要不可欠な無機成分としては、主要な成分として:窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、微量成分として:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)が挙げられる。
さらにこの他に、副成分として、珪素(Si)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)等がある。必要に応じて、本発明の効果を実質的に阻害しない限り、その他の生理活性物質も加えることができる。更に、グルコース(ブドウ糖)などの糖質、アミノ酸等を添加することも可能である。
(無孔性親水性フィルム)
本発明において特に好ましく用いられる無孔性親水性フィルムは、「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムであることが特徴である。本発明において「植物体の根と実質的に一体化」できるか否かは、例えば、後述する「一体化試験」によって判断できる。
本発明者らの知見によれば、「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムとしては、以下のような水分透過性/イオン透過性のバランスを有する無孔性親水性フィルムが好ましいことが見出されている。
本発明者らの知見によれば、このような水分/イオン透過性のバランスを有するフィルムにおいては、栽培すべき植物の生長(特に、根の生長)に好適な水分/養分透過性のバランスが容易に実現できるため、根と実質的に一体化が可能となると推定される。
本発明において、植物は無孔性親水性フィルムを通して肥料をイオンとして吸収するが、このように使用するフィルムの塩類(イオン)透過性が、植物に与えられる肥料成分の量に影響すると推定される。該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、下記に示す測定開始4日後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のイオン透過性を有する無孔性親水性フィルムを好適に用いることができる。このようなフィルムを用いた際には、根に対する好適な水あるいは肥料溶液を供給し、該フィルムと根との一体化を促進することが容易となる。
この無孔性親水性フィルムは、耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このようなフィルムを用いた際には、根とフイルムの一体化を促進することができる。又、根に対する好適な酸素供給および該フィルムを介しての病原菌汚染を防止することが容易となる。
(耐水圧)
耐水圧はJISL1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明のフィルムの耐水圧としては10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。
(水分/イオン透過性)
本発明においては、上記無孔性親水性フィルムは、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始4日後の水/塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、更には3.5dS/m以下であることが好ましい。特に、2.0dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、以下のようにして測定することが好ましい。
(電気伝導度の測定方法)
肥料は、通常イオンの形で吸収されるため、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量を把握することが望ましい。このイオン濃度を測定する手段として電気伝導度(EC、イーシー)を用いる。ECは比導電率ともいい、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用する。単位はシーメンス(S)が使われ、S/cmとなるが肥料養液のECは小さいので、1/1000のmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。実際の測定においては、上記した電気伝導度の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(例えば溶液)を少量乗せ、導電率を測定する。
(フィルムの塩/水の透過試験)
市販の食塩(例えば、後述する「伯方の塩」)10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。
「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200~260×200~260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、塩水側のECを測定する。
本発明においては、フィルムを介する植物の根の養分(有機物)吸収を容易とする点からは、上記フィルムは、所定のグルコース透過性を示すことが好ましい。このグルコース透過性は、下記の水/グルコース溶液の透過試験により好適に評価できる。本発明においては、上記フィルムは、該フィルムを介して水とグルコース溶液とを対向して接触させた際に、測定開始後3日目(72時間)の水/グルコース溶液の栽培温度において測定した濃度(Brix%)の差が4以下であることが好ましい。この濃度(Brix%)の差は、更には、3以下、より好ましくは2以下(特に1.5以下)であることが好ましい。
(フィルムの水/グルコース溶液透過試験)
市販のグルコース(ブドウ糖)を用いて5%グルコース溶液を作製する。上記塩水試験と同様の「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200~260×200~260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記のグルコース溶液150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、グルコース溶液側の糖度(Brix%)を糖度計で測定する。
(根とフィルムの一体化)
特許文献5の実施例1を参照して、サニーレタス(本葉1枚強)を2本用いて、35日間、植物の生育試験を行う。得られた植物-フィルムの系において、植物苗の根元で茎葉を切断する。根の密着したフィルムの茎がほぼ中心になるように、該フィルムを巾5cm(長さ:約20cm)に切断して試験片とする。
ばね式手秤に市販のクリップを付け、上記で得た試験片の一方をクリップで固定して、ばね式手秤の示す重量(試験片の自重に対応=Aグラム)を記録する。次いで試験片の中心にある茎を手で持ち、下方に緩やかに引き下げて、根とフィルムが離れる(または切断される)際の重量(荷重=Bグラム)をばね式手秤の目盛りから読み取る。この値から初期の重量を差し引き、得られた(B-A)グラムを巾5cmの引き剥がし荷重とする。
本発明においては、このようにして測定された剥離強度において、前記植物体の根に対して10g以上の剥離強度を示すフィルムが好適に使用可能である。この剥離強度は、更には30g以上、特に100g以上であることが好ましい。
(フィルム材料)
上述した「根と実質的に一体化し得る」性質を満足する限り、本発明において、使用可能な無孔性親水性フィルム材料は、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる。
より具体的には、このようなフィルム材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が使用可能である。
上記フィルムの厚さも特に制限されないが、通常は、300μm以下程度、更には200~5μm程度、特に100~20μm程度であることが好ましい。
尚、上記の本発明において特に好ましく用いられる無孔性親水性フィルムに関しては、必要に応じて、本発明者らによる特許文献5,6の「発明の詳細な説明」、「実施例」等を参照することができる。
以下、本発明の製造方法の各工程について説明する。
(栽培工程)
栽培工程の栽培方法は特に制限されず、従来既知の水耕栽培や様々な培地を用いることができるが、好ましくは感染工程と同じく、養液上に配置された無孔性親水性フィルム上側面で植物を栽培する方法を採用する。栽培工程の望ましい期間は播種後1日間から21日間、より好ましくは2日間から14日間、より好ましくは3日間から10日間である。
栽培工程の栽培方法として、養液上に配置された無孔性親水性フィルム上側面で植物を栽培する方法を採用する場合は、栽培工程と感染工程を必ずしも分離する必要はなく、同時に行うことも可能である。すなわち、他の方法での栽培工程を行った後に幼苗を無孔性親水性フィルム上に移植する操作を省くことができる。
(感染工程)
感染工程では、前記栽培工程で得られた植物に、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させる。
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとは、前述した目的とする医療用又は産業用タンパク質をコードするポリヌクレオチドのことである。ポリヌクレオチドとしては、天然型の配列に、目的とする目的タンパク質が得られる範囲内で、適宜、変異や改変を加えたものを用いてもよく、当業者にとっての常套手段を適宜選択することができる。
例えば、植物に産生させたい蛋白等のアミノ酸配列に対応する塩基配列情報から適当なプライマー対を設計して、ヒトや動物から調製したmRNAを鋳型にPCRを行い、得られる増幅DNA断片をプローブとして用いてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、目的のcDNAを調製することができる。さらに、市販のDNA合成機を用いて、目的のDNAを合成により調製することも可能である。
前記目的のcDNAは、構造的に類似した蛋白をコードするDNA(例えば、変異体、誘導体、アレル、バリアント及びホモログ)を用いることもできる。すなわち、目的蛋白のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなる蛋白をコードするDNAをも含む。改変されるアミノ酸の数は、改変後の蛋白が目的の機能を有している限り、特に制限はないが、一般的には50アミノ酸以内、好ましくは30アミノ酸以内、より好ましくは10アミノ酸以内である。
前記目的のcDNAは、植物の細胞に導入するためのベクターに組み込まれる。本発明で用いられるベクターは、植物体の細胞で外来遺伝子の発現を可能にするプロモーター領域を含む。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーターの例は、以下を含む:
カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター(例えば、Odelら, Nature,313:810, 1985;Dekeyserら, Plant Cell, 2:591, 1990;Terada and Shimamoto, Mol. GeN. Genet., 220:389, 1990;及びBenfey and Chua, Science, 250:959-966, 1990を参照)、ノパリン合成酵素プロモーター(Anら, Plant Physiol., 88:547, 1988)、オクトピン合成酵素プロモーター(Frommら, Plant Cell, 1:977,1989)、及び、翻訳エンハンサー配列をもつ2x CaMV/35Sプロモーター(Kayら, Science, 236:1299-1302, 1987)。
また、外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターも、例えば、植物細胞における外来遺伝子の発現に使用することができる。このようなプロモーターの例は、以下を含む:
(a)熱により誘導されるプロモーター(Callisら, Plant Physiol., 88:965,1988;Ainleyら, Plant Mol. Biol., 22:13-23, 1993;及びGilmartinら,The Plant Cell, 4:839-949, 1992)、(b)光により誘導されるプロモーター(例えば、エンドウのrbcS-3Aプロモーター;Kuhlemeierら、Plant Cell、1:471, 1989、及びトウモロコシのrbcSプロモーター;Schaffher & SheeN, Plant Cell、3:997、1991)、(c)ホルモンにより誘導されるプロモーター(例えば、アブシジン酸により誘導されるプロモーター;Marcotteら, Plant Cell. 1: 471, 1989)、(d)傷により誘導されるプロモーター(例えば、ジャガイモのPinIIプロモーター;Keilら, Nucl. Acids. Res. 14: 5641-5650, 1986、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のmasプロモーター;Langridgeら,Bio/Technology 10:305-308, 1989、及びブドウのvst1プロモーター;Weiseら, Plant Mol. Biol., 26:667-677,1994)、及び(e)ジャスモン酸メチル又はサリチル酸など化学物質により誘導されるプロモーター(Gatzら, Plant Mol. Biol., 48:89-108, 1997)。
また、ユビキチンプロモーター、大豆緑斑紋ウィルスプロモーター、レトロトランスポゾンプロモーター、LHCPIIプロモーターなどを利用することもできる。
本発明で用いられるベクターには、例えば、目的蛋白のコード領域の上流又は下流に位置するイントロンなどのRNAプロセシングシグナルも含めることができる。また、mRNAの安定性を高めるための3’端ターミネーター領域などの植物遺伝子の3’端の非翻訳領域に由来する付加的な調節配列も含めることができる。例として、ジャガイモのPI-IIターミネーター領域、又はオクトピン合成酵素もしくはノパリン合成酵素(NOS)の3’端ターミネーター領域などがある。
更に、本発明で用いられるベクターには、形質転換体の速やかな選択を可能とするための優性選択マーカー遺伝子を含めることもできる。優性・選択マーカー遺伝子には、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン又はスペクチノマイシンに対する耐性)をコードする遺伝子、及び、除草剤耐性遺伝子(例えば、ホスフィノスリシンアセチル基転移酵素)が含まれる。
アグロバクテリウム法を行う際は、アグロバクテリウムのTiプラスミドやRiプラスミド由来のT-DNA(transfer DNA)を含むバイナリーベクターまたは中間ベクターを用いることができる( Nucl. Acids Res. 12(22):8711-8721 (1984), Plasmid, 7, 15-29(1982))。バイナリーベクターの具体例として、pBI系ベクター(例えば、pRiceFOX)、pPZP系ベクター( Plant Molecular Biology 25(6): 989-94. (1994))、pCAMBIA系ベクター(ベクター骨格:pPZPベクター)、pSMA系ベクター(Plant Cell Reports 19: 448-453. (2000)) を挙げることができるが、これらに限定されない。
具体的な感染工程としては、前記アグロバクテリウムを含む感染液を、無孔性親水性フィルム上側面で栽培されている植物の根に接触させる。アグロバクテリウムを含む感染液は、上記ベクターにて形質転換されたアグロバクテリウムを培養して得られた菌体を、植物組織への浸潤に適した緩衝液に懸濁したものを用いることができ、好ましくは感染液の濁度がOD600で0.5 ~ 5、より好ましくは1 ~ 4、さらに好ましくは2 ~3程度のものを用いることができる。
図1に例示される感染工程の態様において、水槽(2)に貯留された養液(3)の上に無孔性親水性フィルム(1)を設置する。栽培工程を経た植物(4)は無孔性親水性フィルム(1)上に根(5)を密着させて配置される。アグロバクテリウム懸濁液(6)はこの親水性フィルム(1)上に密着している根に適用する。
栽培工程と感染工程が分かれている場合には、無孔性親水性フィルム(1)と根(5)が実質的に一体化するまで時間を要する。すなわち、栽培工程が他所あるいは他の方法で行われた幼苗を無孔性親水性フィルム上に定植して感染工程を実施する場合は、無孔性親水性フィルム(1)と根(5)が実質的に一体化するまで1時間~3日間、好ましくは10時間~2日間、より好ましくは16時間~24時間の栽培を行う。このような追加的栽培工程を行う必要がないので、栽培工程と感染工程が連続してまたは同時に無孔性親水性フィルム(1)上で行われることが好ましい。
アグロバクテリウム懸濁液(6)の適用は、無孔性親水性フィルム(1)上に密着している根の50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは100%に対して行う。これは特許文献4ではアグロバクテリウム懸濁液に浸漬される根の割合が50質量%以下とされていることと対照的である。これは、特許文献4では根が酸素不足となる水耕栽培が採用され、圧力変化が適用されることにより根がダメージを受けて植物が枯れてしまうため、感染液に浸漬される根の割合を大きくできないのに対して、本発明ではアグロバクテリウム懸濁液の適用が無孔性親水性フィルム上に露出した根に対して行われ、酸素供給が十分に行われるためと思われる。
アグロバクテリウム懸濁液(6)の適用量は、無孔性親水性フィルム(1)上に2次元的に存在する根(5)の100%に適用するとして、その根の領域面積1cm2あたり0.001mLから0.1mL、好ましくは0.005mLから0.06mL、より好ましくは0.01mLから0.03mLである。
アグロバクテリウム懸濁液(6)の適用量は少な過ぎれば、遺伝子導入の効率が低下するので好ましくない。一方、アグロバクテリウム懸濁液(6)の適用量が多すぎると、無孔性親水性フィルム(1)と根(5)との一体化が阻害され、養液(3)から親水性フィルム(1)中に移行した肥料成分が吸収し難くなり、植物の生長が阻害されるので好ましくない。
アグロバクテリウム懸濁液(6)の根(5)への適用は、スポイトなどで滴下しても良いし、霧吹きなどで噴霧しても良い。
( 発現工程)
発現工程では感染工程後の植物を栽培して該目的タンパク質を発現させる。発現工程での栽培条件は目的タンパク質が効率よく発現できる条件であれば特に制限されないが、該発現工程における温度、湿度等の条件は前記栽培工程における条件と同様の条件とすることができる。また、光照射の条件も前記栽培工程と同様であり、天然の太陽光、蛍光灯、白熱灯、ナトリウムランプ、発光ダイオード(LED)、有機ELなど各種光源を適宜選択して、あるいは組み合わせて用いても良い。発現工程における栽培日数は、好ましくは3日以上、より好ましくは4日以上であり、また、好ましくは14日以下、より好ましくは10日以下である。
(収穫)
発現工程の後、目的タンパク質は主として植物の根に蓄積する。本発明の方法では植物の根が無孔性親水性フィルム上に一体化して張り付いている。この根を収穫するには過剰の水をフィルム上に付与することで容易に無孔性親水性フィルムから剥離させることができる。
( 目的タンパク質回収工程)
発現工程において、植物内に蓄積した目的タンパク質は植物から回収されることが好ましい。植物から目的タンパク質を含む画分を取得し、目的タンパク質を適当な方法により精製することが好ましい。なお、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは精製のためのタグ配列を含んでもよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
(ヒトモノクローナル抗体(CL4MAb)植物発現ベクター(p30)の構築)
B型肝炎ウイルスに対し中和活性を示すヒトモノクローナル抗体(CL4MAb)植物発現ベクター(p30)の構築は、下記文献(非特許文献1)を参考に、文献に記載された方法で行った。
Akira Yano ら、Journal of Medical Virology, 73: 208-215 (2004)
CL4MAbオリジナルの読み取り配列(LS)を、蛋白質を分泌させるNicotiana plumbaginfolia のcalrecticulin 分泌配列を合成したDNAに置換した。免疫グロブリン蛋白鎖(H鎖およびL鎖それぞれ)のクローン塩基配列は、オメガ翻訳エンハンサー配列を結合したカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターと、ノパリンシンターゼのターミネーター(NosT)の間に挿入され、制御される構造とした。H鎖およびL鎖それぞれの蛋白フラグメント発現カセットを縦列に配置して抗体蛋白発現カセット(Abカセット)を構築した。バイナリーベクターであるpBI101のβ-グルクロニダーゼ-NosTをAbカセットで置換した。Abカセットは、バイナリーベクターであるpBI101から分離されたT-DNA領域に、right border (RB)配列および left border(LB)配列 によって挿入された。リコンビナントのバイナリーベクターp30は、エレクトロポレーション法によって、Agrobacterium tumefaciens LBA4404 細胞(ElectroMAX、Invitrogen Corp., )に導入(transform)された。また、形質転換体の選択マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる。
p30を持ったAgrobacterium tumefacience LBA4404株をLB培地(SIGMA-ALDRICH社製)にて培養後、遠心することで集菌し、得られた菌体を緩衝液(5mMのMES,10mMのMgCl2、pH5.6)に懸濁して濃縮菌液を得た。これを緩衝液で希釈してOD600が2となるように菌体濃度を調整し、感染用アグロバクテリウム懸濁液とした。
(栽培工程)
クリーンルーム(クラス10,000)内に設置されたクリーンベンチ(クラス100)内で、内寸縦8cmx横13cmx深さ4cmのポリプロピレン製トレーに養液(大塚A処方、EC=2、pH6)200mLを入れ、縦14cmx横19cm厚さ60μmの無孔性親水性フィルム(アイメック(登録商標)フィルム、メビオール(株)製)を養液上面に接するように設置した。フィルムが下面から養液を吸収した後、フィルムの余剰分をトレー周囲にクリップで固定した。
1%(有効塩素濃度)次亜塩素酸ナトリウムで5分間殺菌後水洗したミズナの種子72粒を上記の無孔性親水性フィルム上に均等に播種した。トレー全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で覆い、クリーンベンチからクリーンルーム内の暗所に移動して(室温22℃、湿度60%)で2日間静置した。
種子の発根を確認後、食品用ラップの覆いを徐々に外し、根の無孔性親水性フィルムへの活着を促した。食品用ラップの外し具合は3日後10%、4日後20%、5日後30%、6日後50%とした。
光源には三波長蛍光灯「ルピカライン」( 三菱電機株式会社)を使用、平均光合成光量子束密度(PPFD)140μmol/m2 ・秒、光源の点灯は播種後3日目から開始し植物を収穫するまで、16時間点灯と8時間消灯を繰り返した。クリーンルーム内の室温22℃、湿度60%、CO2濃度400ppmの環境も播種後から植物を収穫するまで継続した。
(感染工程)
ミズナの種子を播種してから6日後、縦8cmx横13cm(104cm2)の無孔性親水性フィルム上全面を根が覆う状態で、p30を持ったAgrobacterium tumefacience LBA4404株の感染用アグロバクテリウム懸濁液2mLを根の上全体に噴霧した。食品用ラップの覆いは種子播種後7日後に70%外し、8日後に完全に取り除いた。
(発現工程)
ミズナの種子を播種してから13日後まで、クリーンルーム内での室温22℃、湿度60%、CO2濃度400ppm、PPFD140μmol/m2 ・秒で16時間/日照射のまま栽培を続けた。
(収穫)ミズナの種子を播種してから13日後(アグロバクテリウム懸濁液適用後7日後)、無孔性親水性フィルム上に滅菌水20mLを加え、無孔性親水性フィルムと一体化したミズナの根を無孔性親水性フィルムから剥離させた。
(目的タンパクの回収と活性確認)
p30導入ミズナの根から、文献(非特許文献1)を参考に、ヒトモノクローナル抗体を抽出、精製した。成長した遺伝子導入ミズナの根から得られたヒトモノクローナル抗体(B30MAb)の補体依存性細胞毒性を文献(非特許文献1)と同様に、Alexander細胞との反応性をウサギ補体共存下で調べた。その結果、遺伝子導入ミズナの根から得られたヒトモノクローナル抗体(B30MAb)は、高い抗HBs(adr サブタイプ)抗体価を示す健康なボランティアの末梢血から誘導された株化B細胞をEpstein-Barrウイルス(EBV)によって遺伝子改変したヒト細胞株TAPC301-CL4により産生されるモノクローナル抗体CL4MAb(IgG1/kappa)と同等の活性を有することが示された。
以上詳述したように、本発明は、無孔性親水性フィルム上の植物の根に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを感染させ、植物に目的タンパク質である抗体やワクチンを生産させる製造方法であり、医療分野で疾患の治療、予防、診断に利用される。
遺伝子組換え植物などを利用して生理活性タンパク質を生産する場合、植物を隔離栽培する必要があるが、従来の水耕栽培では、その生産コストが高かった。例えば実施例に示したように、これまで産業上有用であるにもかかわらずコスト及び安全性の問題により生産が困難であったヒト抗体を、本発明では、動物由来感染症の危険が無い安全な状態で、大量かつ安価に生産することが可能となる。

Claims (5)

  1. アグロバクテリウムに感染し得る植物を栽培する工程(栽培工程)、前記栽培した植物に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するアグロバクテリウムを接触させることにより感染させる工程(感染工程)、及び前記感染後の植物をさらに培養して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程(発現工程)を含むタンパク質の製造方法であって、該アグロバクテリウムの植物への接触が、少なくとも無孔性親水性フィルム上に接する植物の根に対して行われることを特徴とするタンパク質の製造方法。
  2. 前記無孔性親水性フィルムが植物の根と実質的に一体化するものであることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の製造方法。
  3. 前記感染工程に引き続き、前記感染後の植物を連続してさらに無孔性親水性フィルム上で栽培して、目的タンパク質を前記植物で発現させる工程(発現工程)を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質の製造方法。
  4. 前記発現工程の後に、前記植物から目的タンパク質を精製し、及び/ 又は回収する工程を含む請求項1 ~ 3何れか一項に記載のタンパク質の製造方法。
  5. 前記目的タンパク質が、抗体、ワクチン、融合蛋白等の生物学的製剤であることを特徴とする請求項1~4に記載のタンパク質の製造方法。
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