JP2020153264A - 自動車用内燃機関のオイルパン - Google Patents

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【課題】横置き前排気方式の自動車用内燃機関に使用するオイルパンにおいて、オイルパンを含むパワープラントの剛性を向上させる。【解決手段】抉り部11を形成したことにより、オイルパン1の底部8は、抉り部11の箇所に位置した浅底部8aと、その手前に位置した深底部8bとが構成されている。後ろ壁7には後ろ向きに開口した凹所18が左右に広がるように形成されており、凹所18の前面を構成する前板20の下半部は後傾姿勢の傾斜部20bになっている。底部8の浅底部8aに、バッフルプレート21を載置固定するためのリアボス体22が、前板20の傾斜部20bと一体化した状態で形成されている。浅底部8aと前板20との一体性が高まることにより、オイルパン1全体としての剛性が向上し、結果として、シリンダブロック2及びミッションケース6を含むパワープラントの剛性も向上する。【選択図】図3

Description

本願発明は、自動車用内燃機関のオイルパンに関するものである。
内燃機関において、シリンダブロックの下面にはオイルパンがボルトで固定されていると共に、シリンダブロックの後面とオイルパンの後面とに跨がった状態でミッションケースが固定されており、全体としてパワープラントが構成されている。また、タイミングチェーンを覆うフロントカバーの下部がオイルパンの前面に固定されていることも多く、この場合は、フロントカバーもパワープラントの一環を成している。
パワープラントにおいて重要なことは、全体の剛性を高めることである。この点について、特許文献1には、オイルパンの剛性向上手段として、オイルパンの後面に、囲い枠で構成された左右一対の凹所と、囲い枠に繋がったリブとを形成することが開示されている。
特開昭62−247158号公報
さて、自動車用内燃機関を車体のエンジンルームに搭載する場合、クランク軸心を車幅方向に向けた横置きタイプと、クランク軸心を車体前後方向に向けた縦置きタイプとに大別され、更に、横置きタイプでは、排気側面を車体前方に向けた前排気方式と、排気側面を車体後方に向けた後ろ排気方式とがあり、前排気方式では、走行風を利用して機関本体や排気系部材を冷却できる等の点がある。
そして、排気管の終端は車体の後部に位置しているため、横置き前排気方式の内燃機関では、排気管はオイルパンの下方を潜らせて後ろに引き出している。そこで、特許文献1にも開示されているように、オイルパンの下面に抉り部を形成して、この抉り部の箇所に排気管を通している。
しかして、オイルパンに抉り部を形成すると、オイルパンの底部は、抉り部の箇所では浅底部になって他の部分は深底部になるが、浅底部の端部にミッションケースが固定されるため、オイルパンの剛性(特に、上下方向から作用する曲げ力に対する剛性)が低下し、結果としてパワープラントの剛性が低下するという問題があった。
そして、特許文献1について検討すると、後ろ壁に凹所やリブを形成すると剛性のアップに貢献はできるが、後ろ壁自体の強度の向上に過ぎないため、剛性アップの程度には限度があると云える。
本願発明はこのように現状を契機として成されたものであり、パワープラントの剛性アップに貢献できるオイルパンを、簡単な構造で実現しようとするものである。
本願発明は、車両前部に設けたエンジンルームに、クランク軸心を車幅方向に長い姿勢と成して排気側面を車両前進方向に向けた姿勢で配置される内燃機関に使用されるオイルパンに関するもので、このオイルパンは、
「上面にシリンダブロックが固定される左右の側壁と、タイミングチェーンを覆うフロントカバーの側に位置した前壁と、ミッションケースが固定される後ろ壁とを有していて、底部のうち前記後ろ壁と連続した部位には排気管が通る抉り部を形成しており、このため、前記底部は、前記後ろ壁と連続した抉り部の箇所では浅底部になってそれより前側の部位は深底部になっている」
という基本構成になっている。
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記後ろ壁には、後ろ向きに開口した凹所が、前記左右の側壁の側に広がるように形成されており、前記凹所の前部を構成する前板の前側に、バッフルプレートを固定するためのボス体が、前記浅底部から立ち上がると共に前記前板と一体に繋がった状態に形成されている」
という特徴を有している。
この場合、凹所は、全体に亙って同じ深さに設定してもよいが、凹所の前面を構成する前板の全体を後ろ倒れに傾斜させるか、又は、前板の下部を後ろ倒れに傾斜させて、傾斜した部分にボス体を一体化すると、ボス体の上端と前板との間に間隔が空くため、バッフルプレートは余裕を持たせた状態でボス体に載せて固定できる。
本願発明は、請求項2の構成も含んでいる。この請求項2の発明は、請求項1において、
「前記側壁に、クランク軸心方向に長い段状又はリブ状の補強が、その後端が前記ボス体と連続する状態で形成されている」
という構成になっている。
本願発明では、後ろ壁の凹所を構成する前板と底部の浅底部とがボス体を介して繋がっているため、底部と後ろ壁との一体性が高まって、オイルパンの剛性を大きく向上できる。換言すると、バッフルプレートを固定するためのボス体を利用して、オイルパンの強度を大きく向上できる。
そして、バッフルプレートを固定するために必要なボス体をいわば補強リブとして利用するものであるため、全体の重量が増大するようなことはないし、製造に当たっての問題も発生しない。
さて、ミッションケースは片持ち梁の状態でシリンダブロック及びオイルパンの後面に固定されているため、ミッションケースの重量は、オイルパンには、これを上向きに押しに曲げるような外力として作用する。また、ピストンの動きも、シリンダブロック及びオイルパンを上下方向に曲げるような外力として作用する。
そして、横置き前排気方式の内燃機関のオイルパンは抉り部が存在するため、特に上下方向(正確にはシリンダボア軸線方向)の外力に対する剛性が低くなるが、請求項2のように、左右側壁に段状やリブ状の補強部を形成すると、上下方向の曲げや捩じりに対する剛性が格段に向上する。
しかも、段状又はリブ状の補強部とボス体とが繋がっているため、側壁と後ろ壁との一体性が格段に向上して、オイルパン全体の剛性も大きく向上できる。その結果、パワープラントの剛性向上を更に助長できる。
実施形態の平面図である。 背面図(後面図)である。 図1,2のIII-III 視断面図である。 図1の IV-IV視断面図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願では、方向を特定するため前後・左右のも文言を使用しているが、前後方向はクランク軸心方向であり、左右方向はクランク軸心及びシリンダボア軸心と直交した方向である。前と後ろについては、タイミングチェーンが配置される側を前、ミッションケースが配置される側を後ろとしている。図1等に方向を明示している。
(1).基本構造
本実施形態が適用されている内燃機関は3気筒であり、図3に示すように、オイルパン1は、クランク軸心O(図2も参照)の方向に長くて上面にシリンダブロック2が固定される左右の側壁3と、タイミングチェーン(図示せず)を覆うフロントカバー4が固定される前壁5と、ミッションケース6が固定される後ろ壁7と、これらに前後壁5,7と側壁3とに連続した底部8とを有している。なお、クランク軸心Oは、オイルパン1の上面よりも少し上に位置している。
図1において、側壁3の上端面の範囲を平行斜線で示している。側壁3の上面には、シリンダブロック2を固定するためのアッパタップ穴9が周方向に沿って形成されている。
底部8の後部には、排気管10が通る抉り部11を形成している。このため、底部8は、深さが低い浅底部8aと、その手前に位置して深さが深くなった深底部8bと、両者を繋ぐ段壁8cとで構成されている。敢えて述べるまでもないが、ストレーナは深底部8bに配置される。図1,3から理解できるように、前壁5には、フロントクランクキャップ(図示せず)を逃がす前凹所12が上向きに開口している。
図2,3に示すように、後ろ壁7に、ミッションケース6密着するリア重合面13が形成されており、リア重合面13に、ミッションケース6を固定するための複数のリアタップ穴14が形成されている。また、後ろ壁7には、クランク軸の軸受を逃がす溝穴15が、クランク軸心Oと同心の状態で上向きに開口している。
(2).後ろ壁・補強部
図2,3に示すように、後ろ壁7には、後ろ向きに開口した凹所18が左右両側に広がるように形成されており、凹所18には、クランク軸心Oの略放射方向に延びる複数本のリブ19が形成されている。そして、凹所18の前面を構成する前板20のうち略上半部はリア重合面13と平行な鉛直部20aになって、それよりも下方の部位は、下に行くに従って前にずれた(後傾した)傾斜部20bになっている。図1では、傾斜部20bを網掛けで表示している。
そして、浅底部8aの後端部に、バッフルプレート21をボルトで固定するための左右一対のリアボス体22が、凹所18における前板20の傾斜部20bと一体化した状態に形成されている。
他方、左右側壁3には、上段正面視でクランク状に曲がった段状補強部23が全長に亙って形成されている。図1では、段状補強部23の範囲を平行斜線で表示している。側壁3は浅底部8aの箇所では内側に大きく寄っているため、段状補強部23も浅底部8aの箇所では内側に寄っており、その後端はリアボス体22に繋がっている。
図4から理解できるように、段状補強部23は、底部8の浅底部8aよりもやや高い位置に形成されている。また、図1に示すように、段状補強部23の前端には、前壁5の内面に回り込む前延長部23aが形成されている。図1,3のとおり、段状補強部23には、前壁5の内面に回り込んだ前延長部23aが形成されている。図3に示すように、段状補強部23は、フロントカバー4の下端部と略同じ高さになって、ミッションケース6の下端よりはかなり高い高さになっている。
図1に示すように、オイルパン1の内周部には、リアボス体22と共同してバッフルプレート21を載置し固定するために、フロントボス体24とサイドボス体25とセンターボス体26が形成されている。フロントボス体24とサイドボス体25とは、段状補強部23と一体化している。
また、図1(図3も参照)に示すように、底部8の浅底部8aには左右の補強リブ27が前後方向に延びるように形成されており、両補強リブ27は、底部8の段壁8cを経由して深底部8bに至っている。左右中間部に位置した補強リブ27は、前板20の傾斜部20bと繋がっていると共に、センターボス体26が立ち上がっている。排気側に位置した補強リブ27は、段状補強部23と一体化している。
オイルパン1は、例えば図3を基準にすると、上下方向(シリンダボア軸線方向)に密着・離反する基本金型を使用して、ダイキャストによって製造できるが、凹所18は、外型にスライド型28を装着することにより、容易に成型できる。ボス体22,24〜26にはタップ穴の下穴や軽量化等のための逃がし穴が空いているが、これらの穴は、基本金型に設けたピンを使用して形成できる。
(3).まとめ
ミッションケース6は片持ち梁の状態でシリンダブロック2及びオイルパン1に固定されているため、オイルパン1には、下向きに曲げるような外力が作用する。特に、後ろ壁7と側壁3及び浅底部8aとの連接部に大きな応力が作用する(後ろ壁7を手前に押すような外力が作用する。)。
しかるに、本実施形態では、底部8の浅底部8aから立ち上がった左右のリアボス体22が凹所18の前板20と一体化しているため、リアボス体22が補強リブの役割を果たして、後ろ壁7と浅底部8aと側壁3との一体性が格段に向上する。このため、オイルパン1の剛性(下向きに押し曲げようとする外力に対する剛性や、クランク軸心O回りの捩じりに対する剛性)を向上できる。
他方、側壁3は、段状補強部23を挟んで上側の部分が下側の部分よりも左右外側に位置するように、クランク状に曲がっているため、上下方向の外力に曲げるような外力や左右方向に曲げるような外力、或いは、クランク軸心Oの方向の軸心回りに捩じるような外力に対して、高い抵抗を発揮する。
しかも、本実施形態では、左右段状補強部23の後端がそれぞれリアボス体22と一体化しているため、段状補強部23で補強された側壁3とリアボス体22で補強された後ろ壁7及び浅底部8aとの一体性が大きくなって、全体として非常に高い剛性を発揮する。その結果、オイルパン1に抉り部11が形成されていても、シリンダブロック2とミッションケース6とオイルパン1とからなるパワープラントは、高い剛性を保持することができる。
本実施形態では、段状補強部23に前延長部23aを形成しているため、捩じりに対する剛性も大幅にアップしているが、前延長部23aとフロントボス体24とが一体化していると共に、サイドボス体25と排気側の段状補強部23とが一体化しているため、更に、オイルパン1の剛性を向上できる。しかも、段状補強部23は、オイルパン1の周壁の形状を変更することで形成されており、加工コストが嵩んだり重量が増大したりすることはないため、コストアップや燃費悪化は生じない。
本実施形態のように、凹所18の前板20の下部を傾斜部20bに形成すると、後ろ壁7に対して下向き荷重として作用したミッションケース6の重量(下向きモーメント)が、図3に符号30の黒抜き矢印で示すように、傾斜部20bに対しては、当該傾斜部20bを下向きに圧縮させるような力として作用するため、更に、オイルパン1の剛性を向上できる。
また、前板20の傾斜部20bとリアボス体22とを一体化すると、リアボス体22の上端と前板20との間に隙間29ができるため、バッフルプレート21の縁に余裕を取ることができてバッフルプレート21の支持強度を向上できる。また、隙間29からオイルを落とすこともできる。
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態では、補強部としてクランク状に曲がった段状補強部23を採用したが、補強部としては、内向き又は外向き若しくは内外両方に突出したリブを採用することも可能である。但し、実施形態のように内側にずれた段状補強部23を採用すると、オイルパン1がダイキャスト品であっても、容易に製造できる利点がある。
本願発明は、自動車用内燃機関のオイルパンに具体化できる。従って、産業上利用できる。
O クランク軸心
1 オイルパン
2 シリンダブロック
3 側壁
4 フロントカバー
5 前壁
6 ミッションケース
7 後ろ壁
8 底部
8a 浅底部
8b 深底部
10 排気管
11 抉り部
18 凹所
21 バッフルプレート
22 リアボス体
23 段状補強部

Claims (2)

  1. 車両前部に設けたエンジンルームに、クランク軸心を車幅方向に長い姿勢と成して排気側面を車両前進方向に向けた姿勢で配置される内燃機関に使用されるオイルパンであって、
    上面にシリンダブロックが固定される左右の側壁と、タイミングチェーンを覆うフロントカバーの側に位置した前壁と、ミッションケースが固定される後ろ壁とを有していて、底部のうち前記後ろ壁と連続した部位には排気管が通る抉り部を形成しており、このため、前記底部は、前記後ろ壁と連続した抉り部の箇所では浅底部になってそれより前側の部位は深底部になっている構成において、
    前記後ろ壁には、後ろ向きに開口した凹所が、前記左右の側壁の側に広がるように形成されており、前記凹所の前部を構成する前板の前側に、バッフルプレートを固定するためのボス体が、前記浅底部から立ち上がると共に前記前板と一体に繋がった状態に形成されている、
    自動車用内燃機関のオイルパン。
  2. 前記側壁に、クランク軸心方向に長い段状又はリブ状の補強が、その後端が前記ボス体と連続する状態で形成されている、
    請求項1に記載した自動車用内燃機関のオイルパン。
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