JP2020152858A - ポリアミド樹脂組成物および成形品 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性および耐熱性に優れ、成形品の変形等が生じ難いポリアミド樹脂組成物、およびこれを用いた成形品の提供を目的とする。【解決手段】芳香族ポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計で測定した融点が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)45〜99.8質量部と、示差走査熱量計で測定した、昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量が0J/g以上5J/g以下である半芳香族ポリアミド樹脂(B)0〜54.8質量部と、有機リン酸エステルの金属塩である結晶核剤(C)0〜1.5質量部と、充填材(D)0.2〜5質量部と、を含む。充填材(D)の最小幅を径Diとしたとき、下記式で求められる重量平均径は、15〜50μmである。重量平均径=(Σri×Di2)/(Σri×Di)(上記式において、riは、径がDiである充填材(D)の個数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、特定の組成を有するポリアミド樹脂組成物および成形品に関する。
一般的に、車両内に装備された各種電装品の配線はヒューズボックスに集められ、各種電装品毎に設けられたヒューズ素子等を介してバッテリーに接続されている。近年、電装系が複雑化されたり、回路が小型化されたりしている。そのため、ヒューズ溶断箇所を容易に特定可能であることが好ましく、ヒューズ素子用の樹脂カバーに透明性を付与することが望まれている。
従来、このようなヒューズ素子用カバーには、透明性に優れたポリエーテルスルホンなどが使用されていた。しかしながら、回路を小型化すると、ヒューズ可溶部とカバーとの距離が近くなる。そのため、ヒューズ可溶部が溶断した際に、その熱によってカバーが炭化してしまうことがある。そして、リーク電流を遮断できずにヒューズ素子を溶損してしまう、等の課題があった。また、樹脂のみからなるカバーでは、カバーの成形時、もしくは使用時の熱によって、変形しやすい、との課題があった。
このような課題に対し、樹脂カバーを構成する樹脂を、耐熱性の高いポリアミド樹脂とすること、さらに耐熱性を高めるため、樹脂と各種フィラーとを混合すること、等が考えられる。例えば、特許文献1には、ポリアミド66とポリアミド6Iとの共重合体やこれらの混合物に、モンモリナイト等の粒子を分散させた樹脂組成物が記載されている。
特開2015−159035号公報
しかしながら、特許文献1に記載のポリアミド樹脂は、ポリエーテルスルホン等と比較して、耐熱性が低く、ヒューズの溶損防止には不十分であった。また、樹脂に各種フィラーを加えると、成形品のヘイズが上昇しやすく、成形品の透明性が低下しやすい、という課題があった。
本発明は、透明性および耐熱性に優れ、成形品の変形等が生じ難いポリアミド樹脂組成物、およびこれを用いた成形品の提供を目的とする。
本発明は、以下のポリアミド樹脂組成物を提供する。
[1]示差走査熱量計で測定した融点が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)45〜99.8質量部と、示差走査熱量計で測定した、昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量が0J/g以上5J/g以下である半芳香族ポリアミド樹脂(B)0〜54.8質量部と、有機リン酸エステルの金属塩である結晶核剤(C)0〜1.5質量部と、充填材(D)0.2〜5質量部と、を含み(ただし、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)、前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)、前記結晶核剤(C)、および前記充填材(D)の合計は100質量部である)、前記充填材(D)の最小幅を径Diとしたとき、下記式で求められる重量平均径が、15〜50μmである、ポリアミド樹脂組成物。
重量平均径=(Σri×Di)/(Σri×Di)
(上記式において、riは、径がDiである充填材(D)の個数を表す。)
[2]前記充填材(D)が繊維状であり、下記式で求められる重量平均繊維長さが、1μm〜20mmである、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
重量平均繊維長さ=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
(上記式において、Liは前記充填剤(D)の繊維長さを表し、qiは、繊維長さがLiである充填材(D)の個数を表す。)
[3]前記充填材(D)がガラス繊維である、[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、ジカルボン酸成分単位(a1)およびジアミン成分単位(a2)を含み、前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、アジピン酸成分単位を20〜60モル%含む、[4]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、イソフタル酸成分単位を含む、[4]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[7]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を55〜80モル%、イソフタル酸成分単位を20〜45モル%含む、[6]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[8]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数4〜20の直鎖状アルキレンジアミン成分単位を含む、[4]〜[7]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[9]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位を80〜100モル%含む、[8]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[10]前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位および2−メチル−1,5−ジアミノペンタン成分単位を含む、[8]または[9]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[11]前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)が、ジカルボン酸成分単位(b1)およびジアミン成分単位(b2)を含み、前記ジカルボン酸成分単位(b1)がイソフタル酸成分単位を含み、前記ジアミン成分単位(b2)が炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を含む、[1]〜[10]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[12]前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)の前記ジカルボン酸成分単位(b1)が、イソフタル酸成分単位を55〜100モル%、テレフタル酸成分単位を0〜45モル%含む、[11]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[13]前記結晶核剤(C)が、環状リン酸エステルの金属塩である、[1]〜[12]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
本発明は、以下の成形品も提供する。
[14]上記[1]〜[13]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、透明性および耐熱性に優れ、変形が少ない、成形品が得られる。
以下、本発明のポリアミド樹脂組成物および成形品について説明する。
ヒューズ素子用カバー等に使用される樹脂組成物には、高い透明性と、耐熱性、さらには成形時や使用時に変形し難いこと、が求められている。しかしながら、樹脂組成物の透明性を高めるため、組成物を主に樹脂で構成した場合には、耐熱性や変形抑制性が不十分になりやすい。一方で、耐熱性向上や変形抑制性のために、充填材等を添加すると、得られる成形品の透明性(特にヘイズ)が低下しやすい、という課題があった。
これに対し、本発明のポリアミド樹脂組成物は、比較的高い融点を有する半芳香族ポリアミド樹脂(A)を含むため、耐熱性が高い。また、当該ポリアミド樹脂組成物は、充填材(D)を含むため、成形時に変形が生じ難く、また成形品となった後も、使用時にかかる熱によって変形し難い。また、当該充填材(D)の最小幅を径としたときの重量平均径が、15〜50μmである。そのため、充填材(D)の強度が高く、これを含む成形品の強度が非常に高まりやすい。さらに、各充填材(D)の径(最小幅)が比較的大きいことから、樹脂組成物の単位体積当たりに含む充填材(D)の量を少なくしても十分な効果が得られる。通常、半芳香族ポリアミド樹脂(A)等と充填材(D)との界面において、光が屈折することでヘイズが高くなる。これに対し、本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、ポリアミド樹脂組成物の体積当たりに存在する、樹脂成分(半芳香族ポリアミド樹脂(A)や半芳香族ポリアミド樹脂(B)等)と充填材(D)との界面の総面積を小さくでき、成形品のヘイズが小さくなる。
1.半芳香族ポリアミド樹脂組成物
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、充填材(D)とを少なくとも含んでいればよいが、半芳香族ポリアミド樹脂(B)や、有機リン酸エステルの金属塩である結晶核剤(C)をさらに含むことが好ましい。また、必要に応じて各種添加剤等を含んでいてもよい。
1−1.半芳香族ポリアミド樹脂(A)
半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、示差走査熱量計(DSC)により測定される、融点(Tm)が290℃以上340℃以下のポリアミド樹脂である。当該半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂組成物のバインダとして機能する。
本発明のポリアミド樹脂組成物における半芳香族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)の合計を100質量部としたとき、45〜99.8質量部であり、好ましくは48〜90質量部であり、さらに好ましくは60〜90質量部である。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の含有量が上記範囲であると、得られる成形品の耐熱性や剛性、耐衝撃性等が高くなる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)は、290℃以上340℃以下であり、好ましくは300℃以上340℃以下である。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が290℃以上であると、高い耐熱性と強度(剛性)を有する成形品が得られる。一方で、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が340℃以下であると、ポリアミド樹脂組成物の成形温度を過度に高くする必要がなく、成形時に半芳香族ポリアミド樹脂(A)以外の成分が熱分解し難い。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)は、示差走査熱量計(例えばDSC220C型、セイコーインスツル社製)にて測定される。具体的には、約5mgの半芳香族ポリアミド樹脂(A)を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から昇温速度10℃/分で340℃まで加熱する。そして、半芳香族ポリアミド樹脂(A)を完全融解させるため、340℃で5分間保持する。次いで、降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、30℃で5分間保持する。その後、10℃/分で340℃まで2度目の加熱を行う。2度目の加熱でのピーク温度(℃)を半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点は、例えばジカルボン酸成分単位やジアミン成分単位の組成によって調整される。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点を高めるためには、例えばテレフタル酸成分単位の含有比率を多くすればよい。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸成分単位(a1)およびジアミン成分単位(a2)を含み、芳香族由来の構造および脂肪族由来の構造を分子鎖中に含む。以下、ジカルボン酸成分単位(a1)およびジアミン成分単位(a2)について説明する。
(ジカルボン酸成分単位(a1))
ジカルボン酸成分単位(a1)は、少なくともテレフタル酸成分単位を含むことが好ましい。テレフタル酸成分単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、結晶性が高く、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性や剛性が高い。
ジカルボン酸成分単位(a1)は、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計(総モル数)を100モル%としたとき、テレフタル酸成分単位20〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜80モル%と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜60モル%と、を含むことがより好ましい。
なお、本明細書において、テレフタル酸成分単位には、テレフタル酸由来の成分単位だけでなく、テレフタル酸エステル(特にテレフタル酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)由来の成分単位も含まれるものとする。
また、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびこれらのエステル由来の成分単位が含まれる。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位は、好ましくはイソフタル酸由来の成分単位である。ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
さらに、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位の例には、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、およびこれらのエステル由来の成分単位が含まれる。脂肪族ジカルボン酸成分単位の炭素原子数は、6〜12がより好ましい。炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸成分単位の例には、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等が含まれ、好ましくはアジピン酸である。ジカルボン酸成分単位(a1)は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
ジカルボン酸成分単位(a1)中の、テレフタル酸成分単位およびテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(好ましくはイソフタル酸成分単位)の好ましい含有量は、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(好ましくはイソフタル酸成分単位)0〜80モル%である。より好ましくは、テレフタル酸成分単位55〜80モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(好ましくはイソフタル酸成分単位)20〜45モル%であり、さらに好ましくはテレフタル酸成分単位60〜85モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(好ましくはイソフタル酸成分単位)15〜40モル%である。上述のように、テレフタル酸成分単位の量が一定量以上であると、得られる成形品の耐熱性や剛性が高まりやすいが、一定量以上のテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を含めることで、成形品の耐衝撃性が高まる。
また、ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸とを含むことも好ましく、テレフタル酸成分単位と、アジピン酸成分単位とを含むことがより好ましい。これらの好ましい含有量は、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位40〜80モル%、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸成分単位)20〜60モル%である。
ジカルボン酸成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂環族ジカルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。脂環族ジカルボン酸の例には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれる。
(ジアミン成分単位(a2))
ジアミン成分単位(a2)は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を含むことが好ましい。炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位によって、成形品に疎水性を付与でき、成形品の吸湿性や吸水性を低減できる。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位は、炭素原子数4〜20の直鎖状アルキレンジアミン成分単位、および炭素原子数4〜20の分岐状アルキレンジアミン(側鎖を有するアルキレンジアミン)成分単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。
直鎖状アルキレンジアミン成分単位の炭素原子数は4〜15が好ましく、6〜12がより好ましい。直鎖状アルキレンジアミンの例には、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が含まれる。これらの中でも、1,6−ジアミノヘキサンおよび1,9−ノナンジアミンが好ましい。ジアミン成分単位(a2)は、直鎖状アルキレンジアミン成分単位を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
直鎖状アルキレンジアミン成分単位の含有量は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位の合計量100モル%に対して40〜100モル%が好ましい。直鎖状アルキレンジアミン成分単位の含有量が一定以上であると、得られる成形品の耐水性が高まりやすい。特に直鎖状アルキレンジアミン成分単位が1,6−ジアミノヘキサンである場合には、ジアミン成分単位(a2)の合計量100モル%に対して、1,6−ジアミノヘキサン成分単位を80〜100モル%含むことがより好ましい。
分岐状アルキレンジアミン成分単位の炭素原子数は、4〜15が好ましく、6〜12がより好ましい。分岐状アルキレンジアミンの例には、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,6ージアミノヘキサン、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,11−ジアミノウンデカン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が含まれる。これらの中でも、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、および2−メチル−1,8−ジアミノオクタンが好ましい。ジアミン成分単位(a2)は、分岐状アルキレンジアミン成分単位を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
分岐状アルキレンジアミン成分単位の含有量は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位の合計100モル%に対して60モル%以下が好ましい。分岐状アルキレンジアミン成分単位の含有量が60モル%以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶性が過剰に低下したりし難く、成形品の強度の低下や成形時の不良が生じ難い。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位が、直鎖状アルキレンジアミン成分単位と分岐状アルキレンジアミン成分単位の両方を含む場合、好ましい組み合わせの例には、1,6−ジアミノヘキサン成分単位と、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン成分単位との組み合わせが含まれる。炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位の合計100モル%に対して、1,6−ジアミノヘキサン成分単位の含有量は45モル%超55モル%未満が好ましく、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンの含有量は45モル%超55モル%未満が好ましい。
好ましい組み合わせの他の例には、1,9−ノナンジアミン成分単位と、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン成分単位との組み合わせが含まれる。炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位の合計100モル%に対して、1,9−ノナンジアミン成分単位の含有量は45モル%超85モル%未満が好ましく、かつ2−メチル−1,8−ジアミノオクタン成分単位の含有量は15モル%超55モル%未満が好ましい。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位の含有量(合計量)は、ジアミン成分単位(a2)の合計100モル%に対して50〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましい。
ジアミン成分単位(a2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位以外の他のジアミン成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミン成分単位の例には、脂環族ジアミン成分単位や芳香族ジアミン成分単位が含まれる。脂環族ジアミンの例には、1,4−ジアミノシクロヘキサンや1,3−ジアミノシクロヘキサン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン等が含まれる。芳香族ジアミンの例には、メタキシリレンジアミン等が含まれる。他のジアミン成分単位の含有量は、ジアミン成分単位(a2)の合計100モル%に対して50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下である。
(具体例)
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の具体例には、以下の樹脂が含まれる。
ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が1,6−ジアミノヘキサン成分単位および2−メチル−1,5−ジアミノペンタン成分単位であるポリアミド樹脂;
ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が1,9−ノナンジアミン成分単位および2−メチル−1,8−ジアミノペンタン成分単位であるポリアミド樹脂;
ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸成分単位およびイソフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が1,6−ジアミノヘキサン成分単位であるポリアミド樹脂;ならびに
ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸成分単位およびアジピン酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が1,6−ジアミノヘキサン成分単位であるポリアミド樹脂。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
(半芳香族ポリアミド樹脂(A)の物性および製造方法)
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.7〜1.6dl/gが好ましく、0.8〜1.2dl/gがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が一定以上であると、成形品の強度が十分に高まりやすい。一方で、極限粘度[η]が一定以下であると、樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。極限粘度[η]は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の分子量によって調整される。
極限粘度は、約0.5gの半芳香族ポリアミド樹脂(A)を96.5%濃硫酸50mlに溶解させ、得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、以下の式に基づき算出される。
[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t−t0)/t0
半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、公知のポリアミド樹脂と同様の方法で製造することができ、ジカルボン酸とジアミンとを溶媒中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することによって低次縮合物を得る。次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度を調整する場合、反応系に分子量調整剤(例えば末端封止剤)を配合することが好ましい。分子量調整剤の例には、モノカルボン酸またはモノアミンが含まれる。モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、および脂環族モノカルボン酸が含まれる。これらの分子量調整剤は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の分子量を調整すると共に、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基の量を調整することができる。分子量調整剤(芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸)は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノ−ル酸等が含まれる。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸等が含まれる。脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸等が含まれる。
分子量調整剤の添加量はジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。このような量で分子量調整剤を使用することにより、少なくともその一部がポリアミド中に取り込まれ、これによりポリアミドの分子量、即ち極限粘度[η]が所望の範囲内に調整される。
1−2.半芳香族ポリアミド樹脂(B)
半芳香族ポリアミド樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量(ΔH)が0J/g以上5J/g以下であるポリアミド樹脂である。当該半芳香族ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂組成物のバインダとして機能する。また、ポリアミド樹脂(B)は結晶性が低いため、半芳香族ポリアミド樹脂(B)を含むポリアミド樹脂組成物は、透明性(視認性)が良好になりやすい。なお、半芳香族ポリアミド樹脂(B)は非晶性の樹脂であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における半芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0〜54.8質量部であり、好ましくは5〜50質量部であり、さらに好ましくは5〜30質量部である。半芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量が上記範囲であると、得られる成形品の耐熱性や強度を損なわず、ヘイズが小さくなりやすい。
半芳香族ポリアミド樹脂(B)の、示差走査熱量測定(DSC)により得られる昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量(ΔH)は、0J/g以上5J/g以下であり、0J/gが好ましい。融解熱量は、樹脂の結晶性の指標であり、融解熱量が小さい程、結晶性が低いことを示す。半芳香族ポリアミド樹脂(B)の融解熱量(ΔH)が5J/g以下であると、成形品のヘイズが小さくなりやすい。
融解熱量(ΔH)とは、JIS K7122に準じて求められる値である、即ち、昇温速度10℃/分で走査した時に得られる示差走査熱量測定チャートにおいて、結晶化に伴う発熱ピークの面積から求められる値である。融解熱量(ΔH)は、履歴を消さない1回目の昇温における値である。
半芳香族ポリアミド樹脂(B)は、ジカルボン酸成分単位(b1)およびジアミン成分単位(b2)を含み、芳香族由来の構造および脂肪族由来の構造を分子鎖中に含む。以下、ジカルボン酸成分単位(b1)およびジアミン成分単位(b2)について詳しく説明する。
(ジカルボン酸成分単位(b1))
ジカルボン酸成分単位(b1)は、少なくともイソフタル酸成分単位を含むことが好ましい。イソフタル酸成分単位は、半芳香族ポリアミド樹脂(B)の結晶性を低くし、当該半芳香族ポリアミド樹脂(B)を含む成形品のヘイズを小さくし、さらには成形品の外観を良好にする。
イソフタル酸成分単位の含有量は、ジカルボン酸成分単位(b1)の合計100モル%に対して40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。イソフタル酸成分単位の含有量が40モル%以上であると、成形品のヘイズが低くなりやすい。
ジカルボン酸成分単位(b1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、イソフタル酸成分単位以外の他のジカルボン酸成分単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸の例には、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等のイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸;脂肪族ジカルボン酸;および脂環族ジカルボン酸が含まれる。なお、脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸成分単位(a1)が含む脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸と同様である。これらの中でも、(イソフタル酸以外の)芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
ジカルボン酸成分単位(b1)中の、イソフタル酸成分単位およびイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)成分単位の好ましい含有量は、ジカルボン酸成分単位(b1)の合計100モル%に対して、イソフタル酸成分単位55〜100モル%、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)成分単位0〜45モル%である。より好ましくは、イソフタル酸成分単位60〜90モル%、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)成分単位10〜40モル%である。イソフタル酸成分単位およびイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)成分単位の含有量がそれぞれ上記範囲内にあると、半芳香族ポリアミド樹脂(B)が非晶性となる。また、半芳香族ポリアミド樹脂(A)との相溶性もよいため、ポリアミド樹脂組成物の成形品のヘイズが低くなりやすく、またその強度(剛性)も高まりやすい。
(ジアミン成分単位(b2))
ジアミン成分単位(b2)は、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を含むことが好ましい。
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、より好ましくは4〜9である。炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミンは、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のジアミン成分単位(a2)が含む直鎖状アルキレンジアミンや分岐状アルキレンジアミン等と同様であり、好ましくは1,6−ジアミノヘキサンである。
炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位の含有量は、ジアミン成分単位(b2)の合計100モル%に対して50〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましい。
ジアミン成分単位(b2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位以外の他のジアミン成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミン成分の例には、脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンが含まれる。脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンは、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のジアミン成分単位(a2)が含む脂環族ジアミンや芳香族ジアミンとそれぞれ同様である。他のジアミン成分単位の含有量は、ジアミン成分単位(b2)の合計100モル%に対して50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。
(具体例)
半芳香族ポリアミド樹脂(B)の具体例には、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ジアミノヘキサン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体;イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体;イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ジアミノヘキサンの重縮合体;イソフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン/2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサンの重縮合体;イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン/2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサンの重縮合体;イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体;およびイソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の重縮合体;等が含まれる。中でも、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ジアミノヘキサンの重縮合体が好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(B)は、これらを一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
(半芳香族ポリアミド樹脂(B)の物性および製造方法)
半芳香族ポリアミド樹脂(B)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.55〜1.6dl/gが好ましく、0.6〜1.2dl/gがより好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂(B)は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)と同様の方法で製造できる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、半芳香族ポリアミド樹脂(A)と半芳香族ポリアミド樹脂(B)との含有質量比(A)/(B)は、45/55〜100/0が好ましい。当該範囲であると、ポリアミド樹脂組成物の成形品のヘイズが小さくなりやすく、さらに耐熱性が高まりやすい。
なお、半芳香族ポリアミド樹脂(A)と半芳香族ポリアミド樹脂(B)との含有質量比(A)/(B)の好ましい範囲は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の構造によって異なる。具体的には、半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、アジピン酸成分単位を20〜60モル%含む場合、上記含有質量比(A)/(B)は、50/50〜65/35が好ましい。一方、半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位を55〜80モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(好ましくはイソフタル酸成分単位)を20〜45モル%含む場合、上記含有質量比(A)/(B)は、80/20〜100/0が好ましい。
1−3.結晶核剤(C)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、有機リン酸エステルの金属塩である結晶核剤(C)を含んでもよい。当該結晶核剤(C)を含むと、半芳香族ポリアミド樹脂(A)が細かい結晶になりやすく、ポリアミド樹脂組成物のヘイズが低くなりやすい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における結晶核剤(C)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0〜1.5質量部であり、好ましくは0〜1.0質量部であり、さらに好ましくは0〜0.5質量部である。結晶核剤(D)の含有量が上記範囲であると、得られる成形品のヘイズが小さくなりやすい。
有機リン酸エステルの金属塩の例には、2−ヒドロキシ−2−オキソ−4,6,10,12−テトラ−tert−ブチル−1,3,2−ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのナトリウム塩、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニウム塩系化合物等が含まれるが、これらに限定されない。また、結晶核剤(C)は、環状リン酸エステルの金属塩が好ましい。
また、市販の有機リン酸エステルの金属塩の例には、アデカスタブNA−11(2−ヒドロキシ−2−オキソ−4,6,10,12−テトラ−tert−ブチル−1,3,2−ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのナトリウム塩)、アデカスタブNA−18、アデカスタブNA−27、アデカスタブNA−21、アデカスタブNA−71(いずれもADEKA社製)等が含まれる。ポリアミド樹脂組成物は、結晶核剤(C)を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
1−4.充填材(D)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特定の重量平均径を有する充填材(D)を含む。当該充填材(D)は、後述の重量平均径を満たせば、その形状は特に制限されず、例えば粒子状や扁平状等であってもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における充填材(D)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0.2〜5質量部であり、好ましくは0.3〜3.0質量部であり、さらに好ましくは0.3〜2.0質量部である。充填材(D)の含有量が上記範囲であると、得られる成形品が変形し難く、ヘイズも小さくなりやすい。
本明細書では、充填材(D)の最小幅を径と定義する。なお、異形断面を有する繊維状の充填材(D)等においても、幅が最小となる部分を繊維径とする。そして、当該充填材(D)の下記式で求められる重量平均径は、15〜50μmである。
重量平均径=(Σri×Di)/(Σri×Di)
上記式において、Diは充填材(D)の径を表し、riは、径がDiである充填材(D)の個数を表す。
充填材(D)の重量平均径は、好ましくは15〜40であり、より好ましくは15〜30である。充填材(D)の重量平均径が15μm以上であると、得られる成形品のヘイズが小さくなりやすい。一方で充填材(D)の重量平均径が50μmを超えると、成形品の耐熱性や強度が十分に得られず、また成形品において充填材(D)が視認されやすくなる可能性があり、重量平均径が50μm以下であれば、視認され難く、成形品の耐熱性や強度を維持しやすい。
また、充填材(D)は、上述のように繊維状であることが好ましく、この場合、以下の式で求められる重量平均繊維長さは、1μm〜20mmが好ましく、5μm〜10mmがより好ましく、7μm〜10mmがさらに好ましい。
重量平均繊維長さ=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
上記式において、Liは充填材(D)の繊維長さを表し、qiは繊維長さがLiである充填材(D)の個数を表す。
さらに、充填材(D)が繊維状である場合、そのアスペクト比(重量繊維長さ/重量平均径)は、5〜2000が好ましく、30〜1000がより好ましい。アスペクト比が当該範囲であると、ポリアミド樹脂組成物から得られる成形品の強度が高まりやすく、変形が抑制されやすい。
ポリアミド樹脂組成物中、もしくは成形品が含む充填材(D)の径および繊維長さは、以下のように特定できる。
1)ポリアミド樹脂組成物または成形品を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させる。その後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300本について、それぞれの繊維長(Li)と径(Di)を計測する。
3)測定された繊維長(Li)および径(Di)、ならびにこれらの分布から、上述の式に基づき、重量平均径および重量平均長さを特定する。
なお、ポリアミド樹脂組成物中、もしくは成形品中の充填材(D)の重量平均径や重量平均繊維長や平均繊維径は、通常、溶融混練前の充填材(D)の重量平均径や重量平均繊維径とほぼ同程度である。
繊維状の充填材(D)の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバー、カットファイバー、全芳香族ポリアミド繊維(例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維及びジアミノジフェニルエーテルとテレフタル酸又はイソフタル酸との縮合物から得られる繊維等)、ホウ素繊維及び液晶ポリエステル繊維、炭素繊維等が含まれる。これらの中でも、成形品の強度(剛性)や耐熱性を高めやすいことから、ガラス繊維、ワラストナイトや炭素繊維が好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、充填材(D)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
上記繊維状の充填材の他に、上述の重量平均径を満たす範囲ものであれば、粉末状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の形状を有する他の充填材も充填材(D)として使用できる。そのような他の充填材の例には、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、ワラストナイト、ケイソウ土、クレー、カオリン、球状ガラス、マイカ、セッコウ、ベンガラ、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛等の粉状或いは板状の無機化合物、チタン酸カリウム等の針状の無機化合物が含まれる。これらの充填材は、2種以上混合して使用することもできる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)や半芳香族ポリアミド樹脂(B)との相溶性が良好になり、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的特性が大幅に向上することから、充填材(D)に表面処理が施されていてもよい。表面処理を行うための表面処理剤の例には、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤及びアルミネート系カップリング剤等のカップリング剤や、集束剤が含まれる。
カップリング剤の例には、アミノシラン、エポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが含まれる。集束剤の例には、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物、カルボン酸系化合物、ウレタン/マレイン酸変性化合物およびウレタン/アミン変性系化合物等が含まれる。これらの表面処理剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。特に、カップリング剤と集束剤とを併用すると、充填材(D)とポリアミド樹脂との接着性が一層改善され、得られる樹脂組成物の機械的特性がより向上する。
1−5.任意の添加剤
本発明のポリアミド樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)、滑剤、蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の添加剤が含まれる。
また、ポリアミド樹脂組成物は、前述の半芳香族ポリアミド樹脂(A)および半芳香族ポリアミド樹脂(B)以外の重合体(例えば、ポリエチレン等のオレフィン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;プロピレン・1−ブテン共重合体等のプロピレン・α−オレフィン共重合体;ポリスチレン;ポリカーボネート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリサルフォン樹脂;ポリフェニレンオキシド樹脂;フッ素樹脂;シリコーン樹脂;液晶ポリマー(LCP)等)を含んでいてもよい。任意の添加剤や重合体の合計含有量は、特に制限されないが、ポリアミド樹脂組成物の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
さらにポリアミド樹脂組成物は、上述の結晶核剤(C)以外に、結晶核剤として機能する化合物(ソルビトール系化合物、ノニトール系化合物、ロジン系化合物、カルボン酸金属塩系化合物、アミド系化合物、芳香族スルホン酸系化合物、キナクリドン系化合物など)を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。有機リン酸エステル金属塩以外の結晶核剤(上記化合物)の量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)の合計を100質量部としたとき、1質量部以下が好ましい。
2.ポリアミド樹脂組成物の物性
ポリアミド樹脂組成物の結晶化度は、14%以上24%以下が好ましく、18%以上24%以下がより好ましく、18%以上22%以下がさらに好ましい。当該範囲であると、ポリアミド樹脂組成物のヘイズが小さくなりやすい。
なお、ポリアミド樹脂組成物の結晶化度は、以下の方法により測定できる。ポリアミド樹脂組成物を射出成型機で厚さ0.7mmの角板(30mm×30mm)に成形して試験片を作製する。そして、当該試験片に150℃で2時間のアニール処理を施し、その後、23℃でX線回折法により測定する。
また、ポリアミド樹脂組成物の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)は、290℃以上340℃以下が好ましく、300℃以上330℃以下がより好ましい。ポリアミド樹脂組成物の融点(Tm)が290℃以上であると、高い耐熱性と強度(剛性)を有する成形品が得られやすい。340℃以下であると、成形加工時に起こる分解等を低減しやすい。とりわけ300℃以上330℃以下であると、耐熱性と成形加工性とを両立しやすい。
なお、ポリアミド樹脂組成物の融点(Tm)は、上述した半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)と同様の方法で測定することができる。
3.ポリアミド樹脂組成物の製造方法
本発明のポリアミド樹脂組成物は、少なくとも上記の比率の半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)と、必要に応じて他の添加剤とを、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダーもしくはタンブラーブレンダー等で混合する方法、または混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー若しくはバンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒若しくは粉砕する方法により製造できる。各成分の混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練し、造粒あるいは粉砕を行ってもよい。
4.成形品
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、射出成形、押出成形等、公知の成形方法により成形することで、成形品を作製することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、前述のように、透明性(ヘイズ)および耐熱性が優れ、さらに変形等も少ない。そのため、各種ヒューズハウジングの材料として好適である。なお、本明細書において、「ヒューズハウジング」とは、ヒューズ関連の部材をいう。本発明のポリアミド樹脂組成物の成形品の一例となるヒューズハウジングとしては、バッテリーヒューズリンク、バッテリーヒューズターミナルの絶縁部や、ヒューズボックスの筐体等が挙げられる。
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
<半芳香族ポリアミド樹脂(A)>
[合成例1]半芳香族ポリアミド樹脂(A−1)の調製
テレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6−ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g及び蒸留水554gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。抜き出した低次縮合物を室温まで冷却し、その後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3600ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置に入れ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温させた。その後、低縮合物を1時間反応させて、室温まで降温させた。得られたポリアミド(高縮合物)の極限粘度[η]は0.48dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/時間の樹脂供給速度でさらにポリアミド(高縮合物)を溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A−1)を調製した。得られたポリアミド樹脂(A−1)の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点(Tm)は310℃、ガラス転移温度は85℃であった。
[合成例2]半芳香族ポリアミド樹脂(A−2)の調製
1,6−ジアミノヘキサン2800g(24.3モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、安息香酸36.6g(0.3モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。この状態で1時間反応させ、その後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、低縮合物を粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。得られた低縮合物の水分量は4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。
次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置に入れ、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分反応し、室温まで降温させた。得られた化合物の極限粘度[η]は0.20dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度を330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/時間の樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂(A−2)を調製した。得られたポリアミド樹脂(A−2)の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点(Tm)は330℃、ガラス転移温度は125℃であった。
[合成例3]半芳香族ポリアミド樹脂(A−3)の調製
1,6−ジアミノヘキサン1312g(11.3モル)、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン1312g(11.3モル)、テレフタル酸3655g(22.0モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム5.5g(5.2×10−2モル)、およびイオン交換水640mlを1リットルの反応器に仕込み、窒素置換後、250℃、35kg/cmの条件で1時間反応させた。1,6−ジアミノヘキサンと2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとのモル比は50:50とした。1時間経過後、この反応器内に生成した反応生成物を、この反応器と連結され、かつ圧力を約10kg/cm低く設定した受器に抜き出し、極限粘度[η]が0.15dl/gであるポリアミド前駆体を得た。
次いで、このポリアミド前駆体を乾燥し、二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A−3)を得た。この芳香族ポリアミド樹脂(A−3)の組成は次の通りであった。ジアミン成分単位中の1,6−ジアミノヘキサン成分単位含有率は50モル%、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン成分単位含有率は、50モル%であった。得られたポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点(Tm)は300℃、ガラス転移温度は140℃であった。
<半芳香族ポリアミド樹脂(B)>
[合成例4]半芳香族ポリアミド樹脂(B−1)の調製
テレフタル酸1390g(8.4モル)、1,6−ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、イソフタル酸2581g(15.5モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/時間の樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂(B−1)を調製した。得られたポリアミド樹脂の極限粘度[η]は0.68dl/g、融点(Tm)は観測されなかった。また、末端アミン量は270μ当量であった。当該ポリアミド樹脂(B−1)において、ジカルボン酸成分単位中のテレフタル酸成分単位の含有率は32.5%であり、イソフタル酸成分単位の含有率は67.5モル%であった。また、ポリアミド樹脂(B−1)の融解熱量(ΔH)をJIS K7122に準じて、結晶化の発熱ピークの面積より求めたところ、0J/gであった。
<結晶核剤>
結晶核剤(C)として、以下の化合物を使用した。
結晶核剤(C−1):ADEKA社製の有機リン酸エステル金属塩である「アデカスタブNA−11」(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−(ソジオオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン6−オキシド)
<充填材(D)>
充填材(D)として、以下のガラス繊維を使用した。
ガラス繊維(D−1):日本電気硝子社製の「ECS03T−249N」(重量平均径:17μm、重量平均繊維長:3mm)
ガラス繊維(d−2):日本電気硝子社製の「ECS03T−249」(重量平均径:13μm、重量平均繊維長:3mm)
ガラス繊維(d−3):日本電気硝子社製の「ECS03T−249H」(重量平均径:10μm、重量平均繊維長:3mm)
扁平ガラス繊維(d−4):日東紡社製の「CSG3PA810」(重量平均径(短径):7μm、長径28μm、重量平均繊維長3mm)
(重量平均径および重量平均繊維長の算出方法)
各重量平均径は、充填材(D)の最小幅を径と定義し、下記方法に基づいて求めた。
充填材(D)を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300個について、それぞれの径(Di)を計測した。径がDiである充填材(D)の個数をriとし、以下の式に基づいて重量平均径(Dw)を算出した。
重量平均径(Dw)=(Σri×Di)/(Σri×Di)
一方、重量平均繊維長は、上記充填材(D)を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300個について、それぞれの繊維長(Li)を計測した。繊維長がLiである充填材(D)の個数をqiとし、以下の式に基づいて重量平均繊維長を算出した。
重量平均繊維長=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
<実施例1>
表1に示される量の、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、半芳香族ポリアミド樹脂(B)、結晶核剤(C)、および充填材(D)を、タンブラーブレンダーを用いて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)にて、シリンダー温度をポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃に設定し、原料を溶融混錬した。溶融混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却した。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
<実施例2〜6、比較例1〜6>
組成を表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
<評価>
得られた樹脂組成物について、ヘイズ、変形評価を以下のように評価した。なお、各樹脂組成物中における充填材(D)の平均繊維長も以下の方法で確認した。
・ヘイズ
ヘイズは、村上色彩技術研究所社製のHaze meter HM−150を用い、JIS K7361に準拠して、厚さ0.7mmの試験片について測定した。なお、各ポリアミド樹脂組成物を以下の条件で射出成形し、得られた厚さ0.7mmの角板(30mm×30mm)を試験片とした。得られた試験片は、150℃で2hのアニール処理を施した後に、測定に供した。ヘイズは低い程、視認性が高く好ましい。
(射出成形条件)
射出成形機:住友重機械工業社製 SE50−DU
シリンダー温度:半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:120℃
冷却時間;10秒
・変形評価
ヘイズ測定用の試験片と同様の射出成形条件で、厚さ0.7mmの角板(30mm×30mm)を成形した。成形品の突き出し後、角板の1つの角を平面に固定し、その対角が最も浮き上がる時の高さを変形量として、下記の通り評価した。なお、△評価以上が実用上問題ないレベルである。
○:0.5mm未満
△:0.5mm以上1.0mm未満
×:1.0mm以上、または金型から離型不可
・充填材(D)の平均(繊維)長の測定
ポリアミド樹脂組成物中の充填材(D)の平均(繊維)長は、以下の方法で測定した。
1)ポリアミド樹脂組成物のペレットまたは成形品を、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた。その後、濾過して得られる濾過物を採取した。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300個について、それぞれの(繊維)長さ(Li)を計測した。(繊維)長さがLiである充填材(D)の個数をqiとし、以下の式に基づいて重量平均長さ(Lw)を算出した。
重量平均長さ(Lw)=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
Figure 2020152858
<結果>
上記表1に示されるように、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のみからなる比較例1では、ヘイズが低かったものの、変形が生じやすかった。また、半芳香族ポリアミド樹脂(A)とともに、半芳香族ポリアミド樹脂(B)を含んだとしても、充填材(D)を含まない場合には、いずれも変形しやすかった(比較例2および比較例3)。また、充填材(D)の重量平均径が15μm未満である場合には、樹脂組成物の成形品の変形は抑制できたが、ヘイズが高かった(比較例4〜6)。これらの比較例では、半芳香族ポリアミド樹脂(A)等と充填材(D)との界面の面積が大きく、ヘイズが高かったと推察される。
一方、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、および重量平均径が15μm以上である充填材(D)を少なくとも含む実施例1〜6では、いずれもヘイズが低く、変形評価も良好であった。
本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、透明性および耐熱性に優れ、変形が少ない成形品が得られる。したがって、当該ポリアミド樹脂組成物は、ヒューズ素子用カバー作製用の樹脂組成物として、非常に有用である。

Claims (14)

  1. 示差走査熱量計で測定した融点が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)45〜99.8質量部と、
    示差走査熱量計で測定した、昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量が0J/g以上5J/g以下である半芳香族ポリアミド樹脂(B)0〜54.8質量部と、
    有機リン酸エステルの金属塩である結晶核剤(C)0〜1.5質量部と、
    充填材(D)0.2〜5質量部と、
    を含み(ただし、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)、前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)、前記結晶核剤(C)、および前記充填材(D)の合計は100質量部である)、
    前記充填材(D)の最小幅を径Diとしたとき、下記式で求められる重量平均径が、15〜50μmである、
    ポリアミド樹脂組成物。
    重量平均径=(Σri×Di)/(Σri×Di)
    (上記式において、riは、径がDiである充填材(D)の個数を表す。)
  2. 前記充填材(D)が繊維状であり、下記式で求められる重量平均繊維長さが、1μm〜20mmである、
    請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
    重量平均繊維長さ=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
    (上記式において、Liは前記充填材(D)の繊維長さを表し、qiは、繊維長さがLiである充填材(D)の個数を表す。)
  3. 前記充填材(D)がガラス繊維である、
    請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、ジカルボン酸成分単位(a1)およびジアミン成分単位(a2)を含み、
    前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、
    前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を含む、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、アジピン酸成分単位を20〜60モル%含む、
    請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、イソフタル酸成分単位を含む、
    請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を55〜80モル%、イソフタル酸成分単位を20〜45モル%含む、
    請求項6に記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数4〜20の直鎖状アルキレンジアミン成分単位を含む、
    請求項4〜7のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  9. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位を80〜100モル%含む、
    請求項8に記載のポリアミド樹脂組成物。
  10. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位および2−メチル−1,5−ジアミノペンタン成分単位を含む、
    請求項8または9に記載のポリアミド樹脂組成物。
  11. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)が、ジカルボン酸成分単位(b1)およびジアミン成分単位(b2)を含み、
    前記ジカルボン酸成分単位(b1)がイソフタル酸成分単位を含み、
    前記ジアミン成分単位(b2)が炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を含む、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  12. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(B)の前記ジカルボン酸成分単位(b1)が、イソフタル酸成分単位を55〜100モル%、テレフタル酸成分単位を0〜45モル%含む、
    請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物。
  13. 前記結晶核剤(C)が、環状リン酸エステルの金属塩である、
    請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
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