JP2020152748A - 導電性ポリマー及びその製造方法と、導電性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成できる導電性ポリマー及びその製造方法と、導電性組成物の提供。【解決手段】酸性基を有する導電性ポリマーであって、重量分子量が60万以上の高分子量体の割合が、前記導電性ポリマーの総質量に対して1質量%以下である、導電性ポリマー。酸性基を有する導電性ポリマーの製造方法であって、前記導電性ポリマーの原料モノマーを重合して得られる反応生成物を含む水溶液を孔径が20μm以下のフィルタを用いて精密濾過するか、前記反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する、導電性ポリマーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性ポリマー及びその製造方法と、導電性組成物に関する。
電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたパターン形成技術は、光リソグラフィーの次世代技術として期待されている。荷電粒子線を用いる場合、生産性向上にはレジスト層の感度向上が重要である。
従って、露光部分又は荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理により架橋反応又は分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
また、近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理も要求されるようになってきている。
ところで、荷電粒子線を用いるパターン形成方法においては、特に基板が絶縁性の場合、基板の帯電(チャージアップ)によって発生する電界が原因で、荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくいという課題がある。
この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成し、前記導電膜でレジスト層の表面を被覆する技術が有効であることが既に知られている。
導電性ポリマーとして、酸性基を有する導電性ポリマーが知られている。
例えば、特許文献1には、電解酸化重合により酸性基置換芳香族化合物を重合する導電性ポリマーの製造方法が開示されている。
特開2014−152202号公報
化学増幅型のパターン形成においては、通常、レジスト層に対して露光し、PEB処理を行った後、露光されたレジスト層を現像液を用いて現像してレジストパターンを形成する。レジスト層上に導電膜を形成して露光する場合は、現像工程の前に導電膜を水で洗い流して除去する。
しかしながら、特許文献1に記載の方法で得られた導電性ポリマーをレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成し、荷電粒子線を用いたパターン形成すると、パターニング不良が起こることがある。
本発明は、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成できる導電性ポリマー及びその製造方法と、導電性組成物を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究を行なった結果、露光前に水で導電膜を洗い流して除去する際に、導電膜が溶け残ることがあり、この導電膜の溶け残りがパターニング不良の原因となること、導電膜の溶け残りは主に導電性ポリマー中の高分子量体であることを突き止めた。そこで、導電性ポリマー中の高分子量体を低減することで、パターニング不良を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 酸性基を有する導電性ポリマーであって、
重量分子量が60万以上の高分子量体の割合が、前記導電性ポリマーの総質量に対して1質量%以下である、導電性ポリマー。
[2] 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、[1]の導電性ポリマー。
[3] 酸性基を有する導電性ポリマーの製造方法であって、
前記導電性ポリマーの原料モノマーを重合して得られる反応生成物を含む水溶液を孔径が20μm以下のフィルタを用いて精密濾過する、導電性ポリマーの製造方法。
[4] 酸性基を有する導電性ポリマーの製造方法であって、
前記導電性ポリマーの原料モノマーを重合して得られる反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する、導電性ポリマーの製造方法。
[5] [1]又は[2]の導電性ポリマーと、溶剤とを含む、導電性組成物。
本発明によれば、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成できる導電性ポリマー及びその製造方法と、導電性組成物を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
なお、本発明において「導電性」とは、1×1011Ω/□以下の表面抵抗値を有することである。表面抵抗値は、一定の電流を流した場合の電極間の電位差より求められる。
また、本明細書において「溶解性」とは、単なる水、塩基及び塩基性塩の少なくとも一方を含む水、酸を含む水、水と水溶性有機溶媒との混合物のうち、10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。また、「水溶性」とは、上記溶解性に関して、水に対する溶解性のことを意味する。
また、本明細書において、「末端疎水性基」の「末端」とは、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位を意味する。
また、本明細書において「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。「重量分子量」とは、GPCによって測定される重量分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)であり、本発明においては「質量分子量」ともいう。
[導電性ポリマー]
本発明の導電性ポリマー(A)は、酸性基を有する。導電性ポリマー(A)が酸性基を有していれば、水溶性が高まる。その結果、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物の塗布性が高まり、均一な厚さの塗膜が得られやすくなる。
導電性ポリマー(A)としては、分子内にスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有していれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、公知の導電性ポリマーを用いることができる。例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平1−301714号公報、特開平5−504153号公報、特開平5−503953号公報、特開平4−32848号公報、特開平4−328181号公報、特開平6−145386号公報、特開平6−56987号公報、特開平5−226238号公報、特開平5−178989号公報、特開平6−293828号公報、特開平7−118524号公報、特開平6−32845号公報、特開平6−87949号公報、特開平6−256516号公報、特開平7−41756号公報、特開平7−48436号公報、特開平4−268331号公報、特開2014−65898号公報等に示された導電性ポリマーなどが、溶解性の観点から好ましい。
導電性ポリマー(A)としては、具体的には、α位若しくはβ位が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたフェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を繰り返し単位として含む、π共役系導電性ポリマーが挙げられる。
また、前記π共役系導電性ポリマーがイミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合は、前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する、又はスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を前記窒素原子上に有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選ばれた少なくとも1種をモノマーユニット(単位)として有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。
導電性ポリマー(A)は、高い導電性や溶解性を発現できる観点から、下記一般式(1)〜(4)で表される単位からなる群より選ばれた1種以上のモノマーユニットを、導電性ポリマーを構成する全単位(100mol%)中に20〜100mol%含有する導電性ポリマーが好ましい。
Figure 2020152748
Figure 2020152748
Figure 2020152748
Figure 2020152748
式(1)〜(4)中、Xは硫黄原子、又は窒素原子を表し、R〜R15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)、−N(R16、−NHCOR16、−SR16、−OCOR16、−COOR16、−COR16、−CHO、又は−CNを表す。R16は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基、又は炭素数1〜24のアラルキル基を表す。
ただし、一般式(1)のR、Rのうちの少なくとも1つ、一般式(2)のR〜Rのうちの少なくとも1つ、一般式(3)のR〜R10のうちの少なくとも1つ、一般式(4)のR11〜R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。
ここで、「酸性基」とは、スルホン酸基(スルホ基)又はカルボン酸基(カルボキシ基)を意味する。
スルホン酸基は、酸の状態(−SOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO )で含まれていてもよい。さらに、スルホン酸基には、スルホン酸基を有する置換基(−R17SOH)も含まれる。
一方、カルボン酸基は、酸の状態(−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−COO)で含まれていてもよい。さらに、カルボン酸基には、カルボン酸基を有する置換基(−R17COOH)も含まれる。
前記R17は炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアリーレン基、又は炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキレン基を表す。
酸性基の塩としては、スルホン酸基又はカルボン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は置換アンモニウム塩などが挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
脂肪族アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、テトラsec−ブチルアンモニウム、テトラt−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
導電性ポリマー(A)としては、高い導電性を発現できる観点から、上記一般式(4)で表される単位を有することが好ましく、その中でも特に、溶解性にも優れる観点から、下記一般式(5)で表されるモノマーユニットを有することがより好ましい。
Figure 2020152748
式(5)中、R18〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)を表す。また、R18〜R21のうちの少なくとも1つは酸性基又はその塩である。
前記一般式(5)で表される単位としては、製造が容易な点で、R18〜R21のうち、いずれか1つが炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基であり、他のいずれか1つがスルホン酸基であり、残りが水素であるものが好ましい。
導電性ポリマー(A)は、pHに関係なく水及び有機溶媒への溶解性に優れる観点から、該導電性ポリマー(A)を構成する全単位(100mol%)のうち、前記一般式(5)で表される単位を10〜100mol%含有することが好ましく、50〜100mol%含有することがより好ましく、100mol%含有することが特に好ましい。
また、導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、前記一般式(5)で表される単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
また、導電性ポリマー(A)において、溶解性がより向上する観点から、ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、導電性ポリマー(A)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値のことを指す。
また、導電性ポリマー(A)において、モノマーユニットの芳香環上の酸性基以外の置換基は、モノマーへの反応性付与の観点から電子供与性基が好ましく、具体的には、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、ハロゲン基(−F、−Cl、−Br又はI)等が好ましく、このうち、電子供与性の観点から、炭素数1〜24のアルコキシ基であることが最も好ましい。
さらに、導電性ポリマー(A)は、前記一般式(5)で表される単位以外の構成単位として、溶解性、導電性及び性状に影響を及ぼさない限り、置換又は無置換のアニリン、チオフェン、ピロール、フェニレン、ビニレン、二価の不飽和基、二価の飽和基からなる群より選ばれる1種以上の単位を含んでいてもよい。
導電性ポリマー(A)としては、高い導電性と溶解性を発現できる観点から、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物の中でも、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が特に好ましい。
Figure 2020152748
式(6)中、R22〜R37は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)を表す。また、R22〜R37のうち少なくとも1つは酸性基又はその塩である。また、nは重合度を示す。本発明においては、nは5〜2500の整数であることが好ましい。
導電性ポリマー(A)に含有される酸性基は、導電性向上の観点から少なくともその一部が遊離酸型であることが望ましい。
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、GPCのポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、導電性、溶解性及び成膜性の観点から、1000〜60万が好ましく、1500〜40万がより好ましく、2000〜30万がさらに好ましく、2000〜10万が特に好ましい。導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が1000未満の場合、溶解性には優れるものの、導電性及び成膜性が不足する場合がある。一方、質量平均分子量が60万を超える場合、導電性には優れるものの、溶解性が不充分な場合がある。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合(含有量)は、導電性ポリマー(A)の総質量に対して1質量%以下である。ここで、「高分子量体」とは、GPCのポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算による重量(質量)分子量が60万以上であることを意味する。
重量分子量が高くなるほど、水溶性が低くなる傾向にあり、高分子量体は水溶性に劣る。そのため、高分子量体の割合が多くなるほど、導電膜を水で洗い流したときの溶け残りが多くなる。
導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合が1質量%以下であれば、導電性ポリマー(A)を用いて形成される導電膜を水で洗い流したときに溶け残りにくく、すなわち、導電膜が充分に除去されるので、パターニング不良を抑制できる。高分子量体の割合は、導電性ポリマー(A)の総質量に対して0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、高分子量体の割合が、導電性ポリマー(A)の総質量に対して0.01質量%以下であることを意味する。
導電性ポリマー中の高分子量体の割合は、以下の工程(i)〜(vi)により求めることができる。
工程(i):pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性ポリマー(A)を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
工程(ii):試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
工程(iii):工程(ii)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の重量分子量(M)へと換算する工程。
工程(iv):ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した重量分子量(M)において、重量分子量(M)が60万以上の領域の面積(X)を求める工程。
工程(v):ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した重量分子量(M)において、導電性ポリマー(A)に由来する全領域の面積(Y)を求める工程。
工程(vi):面積(X)と面積(Y)とから、下記式より導電性ポリマー(A)に総質量に対する高分子量体の割合を求める。
高分子量体の割合(質量%)=(X)/(Y)×100
導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合を1質量%以下にするためには、例えば以下に示す方法により、導電性ポリマー(A)を製造すればよい。
以下に、導電性ポリマー(A)の製造方法の一例について説明する。
<導電性ポリマー(A)の製造方法>
<<第一の態様>>
本実施形態の導電性ポリマー(A)の製造方法は、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合して得られる反応生成物を含む水溶液を精密濾過する工程(濾過工程)を含む。
本実施形態の導電性ポリマー(A)の製造方法は、濾過工程の前に、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程(重合工程)を含んでいてもよい。
(重合工程)
重合工程は、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程である。
原料モノマーの具体例としては、上述したモノマーユニットの由来となる重合性単量体が挙げられ、具体的には酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
酸性基置換アニリンとしては、例えば酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリンが挙げられる。
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
アミノベンゼンスルホン酸類以外のスルホン基置換アニリンとしては、例えばメチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t−ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性ポリマー(A)が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、又はハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましく、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
重合方法としては特に制限されず、化学酸化重合、電解酸化重合などが挙げられる。これらの中でも化学酸化重合が好ましい。化学酸化重合は、電解酸化重合に比べて、得られる導電性ポリマー(A)の分子量が高くなりすぎるのを抑制でき、高分子量体の生成を低減できる。
化学酸化重合では、重合溶媒及び酸化剤の存在下、原料モノマーを重合する。
重合溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類などが挙げられる。
重合溶媒としては、水、又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素などが挙げられる。
これらの酸化剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
化学酸化重合では、重合溶媒及び酸化剤に加えて、塩基性反応助剤の存在下で原料モノマーを重合してもよい。
塩基性反応助剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機塩基;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等の脂式アミン類;環式飽和アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン等の環式不飽和アミン類などが挙げられる。
これらの中では、無機塩基、脂式アミン類、環式不飽和アミン類が好ましく、環式不飽和アミン類がより好ましい。その中でも特に、得られる導電性ポリマー(A)の分子量が高くなりすぎるのを抑制でき、高分子量体の生成を低減できる観点から、25℃における酸解離定数(pKa)が5〜10の塩基性反応助剤を用いることが好ましい。このような塩基性反応助剤としては、α−ピコリン(pKa=6.2)、β−ピコリン(pKa=5.5)、γ−ピコリン(pKa=6.0)、ピリジン(pKa=5.2)が挙げられる。pKaは、「化学便覧 基礎編II」(日本化学会編、丸善、昭和41年9月25日発行)に記載されている数値を利用できる。
これらの塩基性反応助剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
化学酸化重合の方法としては、例えば、酸化剤溶液中に原料モノマー溶液を滴下する方法、原料モノマー溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等に原料モノマー溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法などが挙げられる。原料モノマー溶液には、必要に応じて塩基性反応助剤が含まれていてもよい。
酸化剤溶液及び原料モノマー溶液の溶媒としては、上述した重合溶媒を用いることができる。
化学酸化重合の反応温度は、50℃以下が好ましく、−15〜30℃がより好ましく、−10〜20℃がさらに好ましい。重合反応の反応温度が50℃以下、特に30℃以下であれば、副反応の進行や、生成する導電性ポリマー(A)の主鎖の酸化還元構造の変化による導電性の低下を抑止できる。重合反応の反応温度が−15℃以上であれば、十分な反応速度を維持し、反応時間を短縮できる。
化学酸化重合により、反応生成物である導電性ポリマー(A)が重合溶媒に溶解または沈殿した状態で得られる。
反応生成物が重合溶媒に溶解している場合は、重合溶媒を留去して反応生成物を得る。
反応生成物が重合溶媒に沈殿している場合は、遠心分離器等の濾過器により重合溶媒を濾別して反応生成物を得る。
電解酸化重合では、例えば原料モノマー及び塩基性反応助剤と、必要に応じて電解質とを含む電解酸化重合溶液を調製し、この電解酸化重合溶液中に電極として作用極、対極、参照極を浸漬させる。この状態で、作用極と対極との間に電圧を印加して、作用極上に反応生成物からなるフィルムを形成し、このフィルムを作用極から剥がして反応生成物を得る。
電解質としては、テトラフルオロホウ酸(HBF)、過塩素酸(HClO)、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)等の塩などが挙げられる。
なお、原料モノマー自身及び導電性ポリマー自身が電解質として働くため、これら電解質なしでも重合することができる。
電極材料としては、金、銀、白金、ニッケル、水銀、ステンレス鋼や、銅、亜鉛、スズ、鉛、鉄、アルミニウム、チタン、ルテニウム、イリジウム、又はこれらの酸化物等の金属板や網電極、グラッシーカーボン等の炭素電極、ITO、スズ−インジウム酸化物、酸化錫等の金属酸化物を付与したガラス電極等を用いることができる。
これらの中でも銀、白金、チタン、グラッシーカーボン、ITOガラスが好ましい。
電解酸化重合の方法としては、定電流電解法、定電位電解法、繰り返し電位掃引法のいずれの方法を用いることができる。
定電流電気化学的重合時の電流密度は、反応効率、副反応及び分解反応抑制の観点から、5〜200mA/cmが好ましく、10〜200mA/cmがより好ましく、15〜150mA/cmがさらに好ましい。
また、定電位電気化学的重合時の電位は、反応効率、副反応及び分解反応抑制の観点から、標準電極に対して好ましくは0.5V以上、より好ましくは0.5〜5V、さらに好ましくは1〜3Vの電位を作用極に対してかけることが望ましい。
また、サイクリックボルタメトリーを用いる場合は、反応効率の観点から、好ましくは−1〜10V、より好ましくは0.5〜5V、さらに好ましくは0.5〜3Vの掃引範囲であり、反応効率(収率等)の観点から、前記範囲内で、好ましくは繰り返し回数50〜1000回、より好ましくは100回〜800回、さらに好ましくは200回〜500回の掃引回数で電位をかけることが望ましい。
電解酸化重合の反応温度は、−15〜70℃が好ましく、−5〜60℃がより好ましい。
重合工程により得られた反応生成物には、未反応の原料モノマー、副反応の併発に伴うオリゴマー、酸性物質(導電性ポリマー(A)から脱離した遊離の酸性基や、酸化剤の分解物である硫酸イオンなど)、塩基性物質(塩基性反応助剤や、酸化剤の分解物であるアンモニウムイオンなど)等の低分子量体が含まれている場合がある。これら低分子量体は不純物であり、導電性を阻害する要因となる。
よって、洗浄溶媒を用いて反応生成物を洗浄して、低分子量体を除去することが好ましい。
洗浄溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン;アセトニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルが効果的である。
なお、洗浄溶媒は、水を実質的に含まない。
ここで、「実質的に含まない」とは、水の含有量が、洗浄溶媒の総質量に対して0.01質量%以下であることを意味する。
(濾過工程)
濾過工程は、反応生成物を含む水溶液(ポリマー水溶液)を精密濾過する工程である。
ポリマー水溶液中の反応生成物の濃度(含有量)は、ポリマー水溶液の総質量に対して、0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。
精密濾過では、孔径が20μm以下のフィルタを用いてポリマー水溶液を濾過する。
上述したように、重量分子量が60万以上の高分子量体は水溶性に劣る。そのため、反応生成物と水とを混合してポリマー水溶液とし、孔径が20μm以下のフィルタを用いてポリマー水溶液を精密濾過すると、水に溶けにくい高分子量体が残差としてフィルタ上に残る。
フィルタの孔径が20μm以下であれば、高分子量体がフィルタを通過しにくく、高分子量体を充分に除去できる。
フィルタの孔径は、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。また、通液性の観点から、フィルタの孔径は、0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましい。
フィルタの材質としては、セルロース、セルロースアセテート、ポリサルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
精密濾過の方法としては、クロスフロー方式、減圧濾過方式、加圧濾過方式などの濾過方式が挙げられる。
膜濾過法としてクロスフロー方式を採用する場合、濾過圧力は0.01〜0.50MPaが好ましい。また、濾過時間については特に制限されないが、長くなるほど精製度は高くなる傾向にある。
一方、膜濾過法として加圧濾過方式を採用する場合、充分な濾過効率が得られ、膜の破損を防げることから、濾過圧力は0.01〜0.35MPaが好ましい。
フィルタを通過した濾液には、高分子量体が充分に除去された、具体的には高分子量体の割合が1質量%以下の導電性ポリマー(A)が含まれる。
エバポレータなどを用いて濾液から水を除去すれば、固体状の導電性ポリマー(A)が得られるが、導電性ポリマー(A)は濾液の状態のまま導電性組成物の製造に用いてもよい。
なお、濾液に含まれる導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合が1質量%を超える場合は、濾液から水を除去して導電性ポリマー(A)を回収した後、再度、回収した導電性ポリマー(A)に水を加えてポリマー水溶液とした後に、精密濾過を行えばよい。
濾過工程の回数は特に制限されず、導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合が1質量%以下になるまで行う。
また、濾過工程で得られた導電性ポリマー(A)を必要に応じてイオン交換処理してもよい。
イオン交換処理の方法としては、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を用いたカラム式、バッチ式の処理;電気透析法などが挙げられる。
イオン交換処理では、濾液をそのまま用いてもよいし、濾液を水等で希釈して用いてもよい。
イオン交換処理する濾液又はその希釈液中の導電性ポリマー(A)の濃度としては、工業性や精製効率の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば固形分濃度5質量%のポリマー溶液の場合、イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。陽イオン交換樹脂としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIR−120B」などが挙げられる。陰イオン交換樹脂としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIRA410」などが挙げられる。
<<第二の態様>>
本実施形態の導電性ポリマー(A)の製造方法は、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合して得られる反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する工程(洗浄工程)を含む。
本実施形態の導電性ポリマー(A)の製造方法は、濾過工程の前に、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程(重合工程)を含んでいてもよい。
(重合工程)
重合工程は、第一の態様の重合工程と同じである。
なお、洗浄溶媒を用いて重合工程により得られた反応生成物を洗浄して、低分子量体を除去する場合、この工程を「第一の洗浄工程」ともいい、反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する工程を「第二の洗浄工程」ともいう。
(洗浄工程)
洗浄工程(第二の洗浄工程)は、反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する工程である。
洗浄方法としては特に制限されないが、反応生成物と混合溶媒とを混合し、得られた混合液を濾過する方法など挙げられる。
反応生成物と混合溶媒とを混合すると、高分子量体が混合溶媒に溶解する。よって、混合液を濾過すると、混合溶媒に溶けやすい高分子量体が濾液としてフィルタを通過する。
有機溶媒としては、例えば第一の態様の導電性ポリマー(A)の製造方法の説明において、先に例示した洗浄溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、高分子量体の溶解性に優れる観点から、有機溶媒としてはアセトニトリル、メタノールが好ましい。
混合溶媒中の水の含有量は、混合溶媒の総質量に対して、1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましい。水の含有量が上記下限値以上であれば、高分子量体を充分に溶解できる。水の含有量が上記上限値以下であれば、混合溶媒に導電性ポリマー(A)が溶解するのを抑制でき、高収率で導電性ポリマー(A)を製造できる。
濾過方法としては、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過などが挙げられる。
濾過に用いるフィルタの孔径は、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましい。
フィルタ上の残差は、高分子量体が充分に除去された、具体的には高分子量体の割合が1質量%以下の導電性ポリマー(A)である。
なお、残差中の高分子量体の割合が1質量%を超える場合は、残差をさらに混合溶媒で洗浄する。
洗浄工程(第二の洗浄工程)の回数は特に制限されず、導電性ポリマー(A)中の高分子量体の割合が1質量%以下になるまで行う。
また、洗浄工程で得られた導電性ポリマー(A)を必要に応じてイオン交換処理してもよい。
洗浄工程で得られた導電性ポリマー(A)をイオン交換処理する場合は、残差を所望の固形分濃度になるように水等に溶解させ、ポリマー溶液としてからイオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
イオン交換処理の方法としては、第一の態様と同様である。
<作用効果>
上述したように、導電性ポリマーに高分子量体が多く含まれていると、導電膜を水で洗い流したときの溶け残りが多くなる。
しかし、本発明の導電性ポリマー(A)であれば、高分子量体の含有量が充分に低減されているので、水溶性に優れる導電膜を形成できる。よって、本発明の導電性ポリマー(A)を用いて形成される導電膜を水で洗い流したときに溶け残りにくく、すなわち、導電膜が充分に除去されるので、パターニング不良が起こりにくい。
このように、本発明の導電性ポリマー(A)は、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成でき、荷電粒子線描画時の帯電防止用として特に好適である。
[導電性組成物]
導電性組成物は、上述した本発明の導電性ポリマー(A)と、溶剤(B)とを含む。導電性組成物は、必要に応じて塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)などを含んでいてもよい。
<導電性ポリマー(A)>
導電性ポリマー(A)は、上述した本発明の導電性ポリマー(A)であり、その説明を省略する。
導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
また、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の固形分の総質量に対して、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。なお、導電性組成物の固形分は、導電性組成物から溶剤(B)を除いた残分である。
導電性ポリマー(A)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される塗膜の導電性のバランスにより優れる。
<溶剤(B)>
溶剤(B)としては、導電性ポリマー(A)と、後述の塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を溶解することができる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水などが挙げられる。
有機溶剤としては、導電性ポリマー(A)の製造方法の説明において先に例示した重合溶媒のうちの有機溶媒が挙げられる。
溶剤(B)として、水と有機溶剤との混合溶剤を用いる場合、これらの質量比(水/有機溶剤)は1/100〜100/1であることが好ましく、2/100〜100/2であることがより好ましい。
溶剤(B)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、1〜99.9質量%が好ましく、10〜98質量%がより好ましく、50〜98質量%がさらに好ましい。溶剤(B)の含有量が上記範囲内であれば、塗布性がより向上する。
なお、導電性ポリマー(A)を、上述した第一の態様の製造方法で製造した場合、濾液をそのまま導電性組成物に用いてもよい。濾液をそのまま用いる場合、濾液由来の水も導電性組成物中の溶剤(B)の含有量に含まれる。
<塩基性化合物(C)>
導電性組成物は、塩基性化合物(C)を含んでいてもよい。
導電性組成物が塩基性化合物(C)を含んでいれば、導電性ポリマー(A)の安定性を高めることが可能になると考えられる。
塩基性化合物(C)としては、塩基性を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記の4級アンモニウム塩(c−1)、塩基性化合物(c−2)、塩基性化合物(c−3)などが挙げられる。
第4級アンモニウム塩(c−1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数1以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(c−2):1つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物(ただし、第4級アンモニウム塩(c−1)及び塩基性化合物(c−3)を除く。)。
塩基性化合物(c−3):同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する塩基性化合物。
第4級アンモニウム化合物(c−1)において、4つの置換基が結合する窒素原子は、第4級アンモニウムイオンの窒素原子である。
第4級アンモニウム化合物(c−1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(c−1)としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
塩基性化合物(c−2)としては、例えば、アンモニア、ピリジン、ピコリン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノメチルピリジン、3,4−ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
塩基性化合物(c−3)において、塩基性基としては、例えば、アレニウス塩基、ブレンステッド塩基、ルイス塩基等で定義される塩基性基が挙げられる。具体的には、アンモニア等が挙げられる。ヒドロキシ基は、−OHの状態であってもよいし、保護基で保護された状態であってもよい。保護基としては、例えば、アセチル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のシリル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基等のアセタール型保護基;ベンゾイル基;アルコキシド基などが挙げられる。
塩基性化合物(c−3)としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
これらの塩基性化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
これらの中でも、導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成しやすい点から、第4級アンモニウム塩(c−1)及び塩基性化合物(c−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
塩基性化合物(C)の含有量は、導電性組成物の塗布性がより向上する観点から、導電性ポリマー(A)を構成する単位のうち、酸性基を有する単位1molに対して、0.1〜1mol当量が好ましく、0.1〜0.9mol当量がより好ましい。さらに、導電膜としての性能の保持性に優れ、導電性ポリマー(A)中の酸性基をより安定にできる観点から、0.25〜0.85mol当量が特に好ましい。
<界面活性剤(D)>
導電性組成物は、界面活性剤(D)を含んでいてもよい。
導電性組成物が界面活性剤(D)を含んでいれば、導電性組成物を基材やレジスト層の表面に塗布する際の塗布性が向上する。
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
陰イオン系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ペルフルオロノナン酸、N‐ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウムなどが挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル−β−アラニン、ラウリルジメチルアミン−N−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシドなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤として、上述した以外にも、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマーを用いてもよい。この水溶性ポリマーは従来の界面活性剤とは異なり、含窒素官能基を有する主鎖部分(親水性部分)と、末端の疎水性基部分とによって界面活性能を有し、塗布性の向上効果が高い。よって、他の界面活性剤を併用しなくても、優れた塗布性を導電性組成物に付与できる。しかも、この水溶性ポリマーは酸や塩基を含まないうえ、加水分解により副生成物が生じにくいことから、レジスト層等への悪影響が特に少ない。
含窒素官能基としては、溶解性の観点から、アミド基が好ましい。
末端疎水性基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級又は二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
末端疎水性基の炭素数は、3〜100が好ましく、5〜50がより好ましく、7〜30が特に好ましい。
水溶性ポリマー中の末端疎水性基の数は特に制限されない。また、同一分子内に末端疎水性基を2つ以上有する場合、末端疎水性基は同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
水溶性ポリマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーのホモポリマー、又は含窒素官能基を有するビニルモノマーと、含窒素官能基を有さないビニルモノマー(その他のビニルモノマー)とのコポリマーを主鎖構造とし、かつ、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位に疎水性基を有する化合物が好ましい。
含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマー等が挙げられ、その中でもアミド結合を持つものが好ましい。具体的には、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニル−N−メチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が特に好ましい。
その他のビニルモノマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーを共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、アクリル酸、酢酸ビニル、長鎖α−オレフィンなどが挙げられる。
水溶性ポリマーへの末端疎水性基の導入方法としては特に制限されないが、通常、ビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入するのが簡便で好ましい。この場合、連鎖移動剤としてはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等の疎水性基を含む基が、得られる重合体の末端に導入されるものであれば特に限定はされない。例えば、末端疎水性基としてアルキルチオ基、アラルキルチオ基、又はアリールチオ基を有する水溶性ポリマーを得る場合は、これらの末端疎水性基に対応する疎水性基を有する連鎖移動剤、具体的にはチオール、ジスルフィド、チオエーテルなどを用いてビニル重合することが好ましい。
水溶性ポリマーの主鎖部分は水溶性であり、含窒素官能基を有する。主鎖部分の単位数(重合度)は、1分子中に2〜1000が好ましく、2〜1000がより好ましく、2〜10が特に好ましい。含窒素官能基を有する主鎖部分の単位数が大きすぎる場合は、界面活性能が低下する傾向がある。
界面活性剤(D)としては、上述した中でもレジスト層への影響が少ない点で、非イオン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤(D)の含有量は、導電性ポリマー(A)と塩基性化合物(C)と界面活性剤(D)の合計を100質量部としたときに、5〜80質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましい。界面活性剤(D)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物のレジスト層への塗布性がより向上する。
<任意成分>
導電性組成物は、必要に応じて、導電性ポリマー(A)、溶剤(B)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば高分子化合物(導電性ポリマー(A)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を除く)、添加剤などが挙げられる。
高分子化合物としては、例えばポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール誘導体類及びその変性体、デンプン及びその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びこれらの塩等)、ポリアクリルアミド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアミド類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルスチレン共重合体樹脂、水溶性酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレンマレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂及びこれらの共重合体が挙げられる。
添加剤としては、例えば顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤などが挙げられる。
<導電性組成物の製造方法>
導電性組成物は、本発明の導電性ポリマー(A)と、溶剤(B)と、必要に応じて塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。
例えば、導電性ポリマー(A)として、上述した第一の態様の製造方法で得られた濾液を用いる場合、濾液をそのまま導電性組成物としてもよいし、必要に応じて濾液に塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び任意成分の1つ以上を添加して導電性組成物としてもよい。また、必要に応じて、濾液を溶剤(B)でさらに希釈してもよい。
導電性ポリマー(A)として、上述した第二の態様の製造方法で得られた残差を用いる場合、残渣と溶剤(B)とを混合して導電性ポリマー溶液を調製し、得られた導電性ポリマー溶液を導電性組成物として用いてもよい。また、必要に応じて、導電性ポリマー溶液に塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び任意成分の1つ以上を添加して、導電性組成物としてもよい。
<作用効果>
本発明の導電性組成物は、高分子量体の含有量が充分に低減されている導電性ポリマー(A)を含むので、水溶性に優れる導電膜を形成できる。
よって、本発明の導電性組成物より形成される導電膜を水で洗い流したときに溶け残りにくく、すなわち、導電膜が充分に除去されるので、パターニング不良が起こりにくい。
このように、本発明の導電性組成物は、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成でき、荷電粒子線描画時の帯電防止用として特に好適である。
<用途>
本発明の導電性組成物は、荷電粒子線描画時の帯電防止用として好適である。具体的には、本発明の導電性組成物を、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成する。こうして形成された導電膜がレジスト層の帯電防止膜となる。
また、上述した以外にも、本発明の導電性組成物は、例えばコンデンサ、透明電極、半導体等の材料として使用することもできる。
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
例2、3、5、6、8は実施例であり、例1、4、7は比較例である。
[測定・評価方法]
<高分子量体の含有量の測定>
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性ポリマー(A)を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(i))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(ii))。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の重量分子量(M)へと換算した(工程(iii))。具体的には、ピークトップ分子量が206、4300、6800、17000、32000、77000、15000、2600000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料のみは固形分濃度が0.0025質量%となるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(ii)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の重量分子量(M)へと換算した。
そして、重量分子量(M)が60万以上の領域の面積(X)と、導電性ポリマー(A)に由来する全領域の面積(Y)を求めた(工程(iv)、工程(v))。
これら面積(X)と面積(Y)とから、下記式より導電性ポリマー(A)に総質量に対する高分子量体の割合を求めた(工程(vi))。
高分子量体の割合(質量%)=(X)/(Y)×100
<導電性の評価>
基材としてガラス基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約30nmの導電膜を形成して導電体を得た。
ハイレスタUX−MCP−HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、導電膜の表面抵抗値[Ω/□]を測定した。
<水溶性の評価>
導電性の評価と同様にして導電膜を形成した。
得られた導電膜を50mLの超純水で洗い流し、溶け残りを光学顕微鏡にて確認し、以下の評価基準にて評価した。
〇:溶け残りが認められない。
△:僅かな溶け残りが認められる。
×:溶け残りが多く認められる。
[例1]
<導電性ポリマー(A)の製造>
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolに、ピリジン(pKa=5.2)100mmolと水100mLを添加して、モノマー溶液を得た。
得られたモノマー溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液(酸化剤溶液)を10℃で滴下した。滴下終了後、25℃で15時間さらに攪拌した後、35℃まで昇温してさらに2時間撹拌して、反応生成物が沈殿した反応液を得た(重合工程)。
得られた反応液を遠心濾過器にて濾過し、沈殿物(反応生成物)を回収して、1Lのメタノールにて反応生成物を洗浄した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A1)を得た(第一の洗浄工程)。
得られた導電性ポリマー(A1)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表1に示す。
<導電性組成物の調製>
導電性ポリマー(A1)2質量部と、水93.1質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4.9質量部とを混合し、導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物について、導電性及び水溶性を評価した。結果を表1に示す。
[例2]
例1と同様にして導電性ポリマー(A1)を得た。
次いで、導電性ポリマー(A1)5gに水100mLを加え、25℃で180分間撹拌し、ポリマー水溶液を得た。
フィルタ(日本ポール株式会社製、商品名「DFAフィルター」、孔径:0.1μm、材質:ナイロン)を用いてポリマー水溶液を加圧濾過方式にて、濾過圧力0.02MPaの条件で精密濾過した(濾過工程)。
エバポレータを用いて濾液から水を除去した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A2)を得た。
得られた導電性ポリマー(A2)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表1に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A2)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表1に示す。
[例3]
例1と同様にして導電性ポリマー(A1)を得た。
次いで、導電性ポリマー(A1)10gに、アセトニトリルと水との混合溶媒(アセトニトリル:水=95:5(質量比))50mLを加え、25℃で120分間撹拌し、混合液を得た。
フィルタ(アドバンテック社製、商品名「ディスクフィルター」、孔径:0.45μm、材質:ポリエチレン)を用いて混合液を加圧濾過方式にて、濾過圧力0.05MPaの条件で精密濾過した(第二の洗浄工程)。
フィルタ上の残差を回収して乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A3)を得た。
得られた導電性ポリマー(A3)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表1に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A3)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表1に示す。
[例4]
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1.5242gと、N,N−ジイソプロピルエチルアミン0.9694gと、水10mLとを混合し、電解酸化重合溶液を調製した。
電解酸化重合の作用極及び対極として、白金板(北斗電工株式会社製、1cm×2cm)を用いた。参照極として、銀/塩化銀電極(ビー・エー・エス株式会社製、3MのNaCl溶液)を用いた。
電解酸化重合溶液に作用極、対極及び参照極を浸漬させ、作用極と対極との間に2.5Vの定電位をかけながら3時間反応を行い、作用極上に反応生成物からなるフィルムを形成し、このフィルムを作用極から剥がして反応生成物を得た(重合工程)。
1Lのメタノールにて反応生成物を洗浄した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A4)を得た(第一の洗浄工程)。
得られた導電性ポリマー(A4)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表2に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A4)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表2に示す。
[例5]
例4と同様にして導電性ポリマー(A4)を得た。
導電性ポリマー(A4)について、例2と同様にして精密濾過し(濾過工程)、エバポレータを用いて濾液から水を除去した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A5)を得た。
得られた導電性ポリマー(A5)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表2に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A5)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表2に示す。
[例6]
例4と同様にして導電性ポリマー(A4)を得た。
導電性ポリマー(A4)について、例3と同様にして第二の洗浄工程を行い、フィルタ上の残差を回収して乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A6)を得た。
得られた導電性ポリマー(A6)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表2に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A6)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表2に示す。
[例7]
メタノールにて反応生成物を洗浄しなかった以外は、例4と同様にして導電性ポリマー(A7)を得た。
得られた導電性ポリマー(A7)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表2に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A7)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表2に示す。
[例8]
メタノールにて反応生成物を洗浄しなかった以外は、例4と同様にして導電性ポリマー(A7)を得た。
導電性ポリマー(A7)について、例2と同様にして精密濾過し(濾過工程)、エバポレータを用いて濾液から水を除去した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A8)を得た。
得られた導電性ポリマー(A8)について、高分子量体の割合を測定した。結果を表2に示す。
また、導電性ポリマー(A1)の代わりに導電性ポリマー(A8)を用いた以外は、例1と同様にして導電性組成物を調製し、導電性及び水溶性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2020152748
Figure 2020152748
表1、2から明らかなように、例2、3、5、6、8で得られた導電性ポリマー(A)からは、水溶性に優れる導電膜を形成できた。よって、導電膜を水で洗い流したときに溶け残りにくいため、レジスト層上に導電膜を形成して、荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい。
一方、1、4、7の場合、導電膜は水溶性に劣っていた。よって、導電膜を水で洗い流したときに溶け残りやすく、レジスト層上に導電膜を形成して、荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりやすい。
本発明の導電性ポリマー及び導電性組成物は、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、パターニング不良が起こりにくい導電膜を形成でき、荷電粒子線描画時の帯電防止用として有用である。

Claims (5)

  1. 酸性基を有する導電性ポリマーであって、
    重量分子量が60万以上の高分子量体の割合が、前記導電性ポリマーの総質量に対して1質量%以下である、導電性ポリマー。
  2. 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
  3. 酸性基を有する導電性ポリマーの製造方法であって、
    前記導電性ポリマーの原料モノマーを重合して得られる反応生成物を含む水溶液を孔径が20μm以下のフィルタを用いて精密濾過する、導電性ポリマーの製造方法。
  4. 酸性基を有する導電性ポリマーの製造方法であって、
    前記導電性ポリマーの原料モノマーを重合して得られる反応生成物を水と有機溶媒との混合溶媒を用いて洗浄する、導電性ポリマーの製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の導電性ポリマーと、溶剤とを含む、導電性組成物。
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