JP7293649B2 - 導電性組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
従って、露光部分又は荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理により架橋反応又は分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成し、前記導電膜でレジスト層の表面を被覆する技術が有効であることが既に知られている。
例えば、特許文献1には、酸性基を有する導電性ポリマーと、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマーを、室温で溶剤に溶解させた導電性組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の導電性組成物は、同じ条件で製造した導電性組成物を一定の条件でスピンコートしても、得られる導電膜の膜厚が一定にならない場合がある。
本発明は、膜厚の安定性に優れた導電膜を形成できる導電性組成物を提供することを目的とする。
[1] 酸性基を有する導電性ポリマー及び溶剤を含み、前記溶剤が水を含み、前記導電性ポリマーの含有量が0.1~3質量%であり、
25℃で1ヵ月保存したときの、保存開始時の粘度をX(単位:mPa・s)、保存終了時の粘度をY(単位:mPa・s)とするとき、下記式(1)で求められる粘度変化率が30%以下である、導電性組成物。
粘度変化率=(X-Y)/X×100 ・・・(1)
[2] 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、[1]の導電性組成物。
本明細書において、「末端疎水性基」の「末端」とは、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位を意味する。
本明細書において「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
本実施形態の導電性組成物を用いて形成した導電膜の表面抵抗値は、1×1011Ω/□以下であり、1×109Ω/□以下が好ましく、1×107Ω/□以下がより好ましい。
本実施形態の導電性ポリマー(A)は、酸性基を有する。導電性ポリマー(A)が酸性基を有していれば、水溶性が高まる。その結果、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物の塗布性が高まり、均一な厚さの塗膜が得られやすくなる。
導電性ポリマー(A)としては、分子内にスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有していれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、公知の導電性ポリマーを用いることができる。例えば、特開昭61-197633号公報、特開昭63-39916号公報、特開平1-301714号公報、特開平5-504153号公報、特開平5-503953号公報、特開平4-32848号公報、特開平4-328181号公報、特開平6-145386号公報、特開平6-56987号公報、特開平5-226238号公報、特開平5-178989号公報、特開平6-293828号公報、特開平7-118524号公報、特開平6-32845号公報、特開平6-87949号公報、特開平6-256516号公報、特開平7-41756号公報、特開平7-48436号公報、特開平4-268331号公報、特開2014-65898号公報等に示された導電性ポリマーなどが、溶解性の観点から好ましい。
また、前記π共役系導電性ポリマーがイミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合は、前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する、又はスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を前記窒素原子上に有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選ばれた少なくとも1種をモノマーユニット(単位)として有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。
ただし、一般式(1)のR1、R2のうちの少なくとも1つ、一般式(2)のR3~R6のうちの少なくとも1つ、一般式(3)のR7~R10のうちの少なくとも1つ、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。
スルホン酸基は、酸の状態(-SO3H)で含まれていてもよく、イオンの状態(-SO3 -)で含まれていてもよい。さらに、スルホン酸基には、スルホン酸基を有する置換基(-R17SO3H)も含まれる。
一方、カルボン酸基は、酸の状態(-COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(-COO-)で含まれていてもよい。さらに、カルボン酸基には、カルボン酸基を有する置換基(-R17COOH)も含まれる。
前記R17は炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアリーレン基、又は炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキレン基を表す。
アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
脂肪族アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn-ブチルアンモニウム、テトラsec-ブチルアンモニウム、テトラt-ブチルアンモニウムなどが挙げられる。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウム、α-ピコリニウム、β-ピコリニウム、γ-ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
また、導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、前記一般式(5)で表される単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、導電性ポリマー(A)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値のことを指す。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
以下に、導電性ポリマー(A)の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の導電性ポリマー(A)は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程(重合工程)を経て得られる。重合工程で得られた反応生成物を精製する工程(精製工程)を設けてもよい。
重合工程は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程である。
原料モノマーの具体例としては、上述したモノマーユニットの由来となる重合性単量体が挙げられ、具体的には酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
酸性基置換アニリンとしては、例えば酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリンが挙げられる。
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo-,m-,p-アミノベンゼンスルホン酸、アニリン-2,6-ジスルホン酸、アニリン-2,5-ジスルホン酸、アニリン-3,5-ジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アニリン-3,4-ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性ポリマー(A)が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、又はハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましく、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
重合溶媒としては、水、又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
これらの酸化剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
塩基性反応助剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機塩基;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン等の脂式アミン類;環式飽和アミン類;ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、キノリン等の環式不飽和アミン類などが挙げられる。
これらの中では、無機塩基、脂式アミン類、環式不飽和アミン類が好ましく、環式不飽和アミン類がより好ましい。
これらの塩基性反応助剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸化剤溶液及び原料モノマー溶液の溶媒としては、上述した重合溶媒を用いることができる。
反応生成物が重合溶媒に溶解している場合は、重合溶媒を留去して反応生成物を得る。
反応生成物が重合溶媒に沈殿している場合は、遠心分離器等の濾過器により重合溶媒を濾別して反応生成物を得る。
そのため、重合工程の後、反応生成物を精製して、導電性ポリマー(A)を得る。
精製工程は、重合工程で得られた反応生成物を精製する工程である。
反応生成物を精製する方法としては、洗浄溶媒を用いた洗浄法、膜濾過法、イオン交換法、加熱処理による不純物の除去、中和析出などあらゆる方法を用いることができる。これらの中でも、純度の高い導電性ポリマー(A)を容易に得ることができる観点から、洗浄法、イオン交換法が有効である。また、洗浄法とイオン交換法とを組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の導電性組成物は、上述した本実施形態の導電性ポリマー(A)と、溶剤(B)とを含む。導電性組成物は、必要に応じて塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)などを含んでいてもよい。
導電性ポリマー(A)は、上述した本実施形態の導電性ポリマー(A)であり、その説明を省略する。
導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.1~5質量%であり、0.2~5質量%が好ましく、0.2~4質量%がより好ましい。
また、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の固形分の総質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。なお、導電性組成物の固形分は、導電性組成物から溶剤(B)を除いた残分である。
導電性ポリマー(A)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される塗膜の導電性のバランスにより優れる。
溶剤(B)は、水を含む。水のほかに、有機溶剤を含んでもよい。
水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水などが挙げられる。
有機溶剤としては、導電性ポリマー(A)の製造方法の説明において先に例示した重合溶媒のうちの有機溶媒が挙げられる。
溶剤(B)として、水と有機溶剤との混合溶剤を用いる場合、これらの質量比(水/有機溶剤)は1/100~100/1であることが好ましく、2/100~100/2であることがより好ましい。
なお、導電性ポリマー(A)を、精製などして水性媒体に溶解した状態(以下、この状態の導電性ポリマー(A)を「導電性ポリマー溶液」ともいう。)で用いる場合、導電性ポリマー溶液由来の水性媒体も導電性組成物中の溶剤(B)の含有量に含まれる。
導電性組成物は、塩基性化合物(C)を含んでいてもよい。
導電性組成物が塩基性化合物(C)を含んでいれば、導電性ポリマー(A)の安定性を高めることが可能になると考えられる。
第4級アンモニウム塩(c-1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数3以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(c-2):1つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物(ただし、第4級アンモニウム塩(c-1)及び塩基性化合物(c-3)を除く。)。
塩基性化合物(c-3):同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する塩基性化合物。
第4級アンモニウム化合物(c-1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(c-1)としては、例えば、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
塩基性化合物(c-3)としては、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
これらの中でも、導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成しやすい点から、第4級アンモニウム塩(c-1)及び塩基性化合物(c-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
導電性組成物は、界面活性剤(D)を含んでいてもよい。
導電性組成物が界面活性剤(D)を含んでいれば、導電性組成物を基材やレジスト層の表面に塗布する際の塗布性が向上する。
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
末端疎水性基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級又は二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
末端疎水性基の炭素数は、3~100が好ましく、5~50がより好ましく、7~30が特に好ましい。
水溶性ポリマー中の末端疎水性基の数は特に制限されない。また、同一分子内に末端疎水性基を2つ以上有する場合、末端疎水性基は同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマー等が挙げられ、その中でもアミド結合を持つものが好ましい。具体的には、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が特に好ましい。
その他のビニルモノマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーを共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、アクリル酸、酢酸ビニル、長鎖α-オレフィンなどが挙げられる。
水溶性ポリマー中の主鎖部分と、末端疎水性基部分(例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基などの部分)との分子量比(主鎖部分の質量平均分子量/末端疎水性基部分の質量平均分子量)は、0.3~170であることが好ましい。
導電性組成物は、必要に応じて、導電性ポリマー(A)、溶剤(B)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば高分子化合物(導電性ポリマー(A)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を除く)、添加剤などが挙げられる。
添加剤としては、例えば顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤などが挙げられる。
本実施形態の導電性組成物は、25℃で1か月保存したときの、保存開始時の粘度をX(単位:mPa・s)、保存終了時の粘度をY(単位:mPa・s)とするとき、下記式(1)で求められる粘度変化率が30%以下である。
粘度変化率=(X-Y)/X×100 ・・・(1)
導電性組成物の粘度の値は、ウベローデ粘度計にて25℃の動粘度を測定し、密度を乗じて粘度を算出した値である。
導電性組成物の粘度変化率が30%以下であると、導電性組成物を用いて形成した導電膜の膜厚の安定性に優れる。前記粘度変化率は25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。ゼロが最も好ましい。
導電性組成物は、本実施形態の導電性ポリマー(A)と、少なくとも水を含む溶剤(B)と、必要に応じて塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び任意成分の1つ以上とを混合してこれらの成分を溶解して製造する。各成分を混合する順番は特に限定されない。
導電性組成物の粘度変化率を30%以下に低下させる方法として、少なくとも導電性ポリマー(A)と水を含む液(以下、被処理液ともいう。)に対して、下記の安定化処理(1)、(2)又は(3)を施す方法が挙げられる。安定化処理(1)~(3)の2以上を組み合わせてもよい。
安定化処理(1):被処理液を加熱した状態で撹拌する。
安定化処理(2):被処理液を長時間撹拌する。
安定化処理(3):被処理液に強い撹拌力を付与する。
被処理液は、導電性ポリマー(A)が溶剤(B)に溶解した液であってもよい。例えば、上述した導電性ポリマー(A)の製造方法において、導電性ポリマー(A)を精製などして得られる前記導電性ポリマー溶液を被処理液として用いてもよい。
撹拌時間は0.5~50時間が好ましく、0.5~40時間が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌動力は0.001~5kw/m3が好ましく、0.01~5kw/m3が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌手段の例としては撹拌翼による撹拌が挙げられる。
撹拌時間は1~240時間が好ましく、2~240時間が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌動力は0.001~5kw/m3が好ましく、0.01~5kw/m3が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌手段の例としては撹拌翼による撹拌が挙げられる。
撹拌時間は0.5~20時間が好ましく、0.5~18時間が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌動力は0.1~5kw/m3が好ましく、0.2~5kw/m3が好ましい。上記範囲の下限値以上であると粘度変化率が低下しやすい。上限値以下であると導電性が向上しやすい。
撹拌手段の例としては撹拌翼による撹拌が挙げられる。
本実施形態の導電性組成物は、粘度の経時変化が小さく抑えられているため、導電膜を形成したときに膜厚の変動が生じ難い。したがって、一定の条件で導電膜を形成するときの膜厚の安定性に優れ、膜厚の精度に優れた導電膜を効率良く形成できる。
例えば、上記の安定化処理を被処理液に施すと、導電性ポリマー(A)の溶液状態が安定し、その結果、粘度変化率が低下すると考えられる。
本実施形態の導電性組成物は、荷電粒子線描画時の帯電防止用として好適である。具体的には、本実施形態の導電性組成物を、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成する。こうして形成された導電膜がレジスト層の帯電防止膜となる。
また、上述した以外にも、本実施形態の導電性組成物は、例えばコンデンサ、透明電極、半導体等の材料として使用することもできる。
実施例及び比較例における測定方法、評価方法は以下の通りである。
<粘度の測定方法>
ウベローデ粘度計にて25℃の動粘度を測定し、密度から粘度を算出した。
導電性組成物を25℃で1ヵ月保存したときの、保存開始直前の導電性組成物と、保存終了直後の導電性組成物をそれぞれ用いて、下記の方法で導電膜を形成し、膜厚の平均値を求めた。保存開始直前の膜厚の平均値と、保存終了直後の膜厚の平均値との差(以下、「膜厚の差」ともいう。)に基づき、下記の評価基準で膜厚の安定性を評価した。
[導電膜の形成・膜厚の測定]
基材としてシリコンウエハを用いた。基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に導電膜を形成した。
基材上に形成された導電膜の一部を剥離し、基材面を基準位置として、触針式段差計(Stylus profiler P-16+, KLA-Tencor Corporation製)を用い、導電膜の膜厚[単位:nm]を測定した。
同じ条件で、導電膜の形成と膜厚の測定を3回繰り返し、平均値を算出した。
[評価基準]
◎:膜厚の差が0以上10nm以下。
〇:膜厚の差が10nm超、20nm以下。
△:膜厚の差が20nm超、30nm以下。
×:膜厚の差が30nm超。
基材としてガラス基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約30nmの導電膜を形成して導電体を得た。
ハイレスタUX-MCP-HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、導電膜の表面抵抗値[Ω/□]を測定した。
[製造例1]
2-アミノアニソール-4-スルホン酸100mmolに、ピリジン100mmolと水100mLを添加して、モノマー溶液を得た。
得られたモノマー溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液(酸化剤溶液)を10℃で滴下した。滴下終了後、25℃で15時間さらに攪拌した後、35℃まで昇温してさらに2時間撹拌して、反応生成物が沈殿した反応液を得た(重合工程)。
得られた反応液を遠心濾過器にて濾過し、沈殿物(反応生成物)を回収して、1Lのメタノールで反応生成物を洗浄した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A1)を得た(精製工程)。
[実施例1]
製造例1で得た導電性ポリマー(A1)1.5質量部と、水/IPA=95/5(質量比)の混合溶媒98.5質量部を表1に示す条件で撹拌混合して導電性組成物を得た。撹拌手段としては撹拌翼による撹拌用いた。
得られた導電性組成物を、25℃で1ヵ月保存した。保存開始時の粘度Xと保存終了時の粘度Yを上記の方法で測定し、前記式(1)で求められる粘度変化率を求めた。その結果を表1に示す(以下、同様)。
また、1ヵ月保存する直前の導電性組成物と、保存終了直後の導電性組成物を用い、上記の方法で導電膜を形成して膜厚の平均値を求め、膜厚の安定性を評価した。結果を表1に示す(以下、同様)。
また上記の方法で導電性を評価した。結果を表1に示す(以下、同様)。
混合条件を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして導電性組成物を製造し、評価した。
Claims (10)
- 酸性基を有する導電性ポリマー及び溶剤を含み、前記溶剤が水を含み、前記導電性ポリマーの含有量が0.1~3質量%であり、
25℃で1ヵ月保存したときの、保存開始時の粘度をX(単位:mPa・s)、保存終了時の粘度をY(単位:mPa・s)とするとき、下記式(1)で求められる粘度変化率が30%以下である、導電性組成物を製造する方法であって、
前記導電性ポリマーが、下記式(4)で表されるモノマーユニットを、前記導電性ポリマーを構成する全単位に対して20~100mol%含有し、
前記導電性ポリマー及び溶剤を、液温20~70℃で4時間以上攪拌して混合する撹拌工程を有する、導電性組成物の製造方法。
粘度変化率=(X-Y)/X×100 ・・・(1)
ただし、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、酸性基又はその塩である。) - 前記撹拌工程において、前記液温が40~70℃である、請求項1に記載の導電性組成物の製造方法。
- 前記撹拌工程において、6時間以上攪拌する、請求項1に記載の導電性組成物の製造方法。
- 前記撹拌工程において、12時間以上攪拌する、請求項1に記載の導電性組成物の製造方法。
- 前記導電性組成物を、25℃で1ヵ月保存したときの、保存開始直前の導電性組成物を用いて下記の方法(Z)で得られる導電膜の膜厚の平均値と、保存終了直後の導電性組成物を用いて下記の方法(Z)で得られる導電膜の膜厚の平均値との差が0以上20nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性組成物の製造方法。
方法(Z):基材としてシリコンウエハを用い、基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に導電膜を形成する。基材上に形成された導電膜の一部を剥離し、基材面を基準位置として、触針式段差計を用い、導電膜の膜厚[単位:nm]を測定する。同じ条件で、導電膜の形成と膜厚の測定を3回繰り返し、平均値を算出する。 - 酸性基を有する導電性ポリマー及び溶剤を含み、前記溶剤が水を含み、前記導電性ポリマーの含有量が0.1~3質量%であり、
25℃で1ヵ月保存したときの、保存開始時の粘度をX(単位:mPa・s)、保存終了時の粘度をY(単位:mPa・s)とするとき、下記式(1)で求められる粘度変化率が30%以下である、導電性組成物(但し、下記ポリマー(I)、下記ポリマー(II)、又は下記ポリマー(III)を含むものを除く)。
粘度変化率=(X-Y)/X×100 ・・・(1)
ポリマー(I):下記一般式(M1)で表される繰り返し単位を含む共重合体。
下記式(M1)中、Rは炭素数1~6の鎖状、分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。Mは水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。
下記式(1a)及び式(2a)中、mは1~6の整数を表す。R1は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。)
下記式(2b)中、R5~R6は、各々独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であるか、あるいは互いに結合して炭素数1~4のアルキレン基を形成していてもよい。
- 前記導電性ポリマーが、下記式(4)で表されるモノマーユニットを、前記導電性ポリマーを構成する全単位に対して20~100mol%含有する、請求項6に記載の導電性組成物。
ただし、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、酸性基又はその塩である。) - 前記粘度変化率が5.6%以下である、請求項6~8のいずれか一項に記載の導電性組成物。
- 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、請求項6~9のいずれか一項に記載の導電性組成物。
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