JP2020149955A - 層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質、並びに、その製造方法 - Google Patents

層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質、並びに、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新たな正極活物質及びその製造方法を提供する。【解決手段】ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、前記前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質、並びに、その製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池の正極活物質には種々の材料が用いられることが知られている。そのうち、LiNiOで表されるリチウムニッケル酸化物は、特許文献1に記載されているとおり、リチウムイオン二次電池の開発当初、正極活物質として汎用されていた。
また、LiNiOのニッケルの一部を他の金属で置換したリチウムニッケル金属酸化物が開発され、当該リチウムニッケル金属酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池についての研究が精力的に為されてきた。特に近年、LiNiOのニッケルの一部をコバルト及びアルミニウムで置換した層状岩塩構造のリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を、正極活物質として採用したリチウムイオン二次電池が、多数報告されている。
特許文献2には、正極活物質としてLiNi0.81Co0.15Al0.04を採用したリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
特許文献3には、正極活物質としてLiNi0.8Co0.16Al0.04やLiNi0.8Co0.15Al0.041.90.1を採用したリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
特許文献4には、正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05を採用したリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
特許文献5には、正極活物質としてLi1.013Ni0.831Co0.119Al0.050、Li1.013Ni0.858Co0.123Al0.020又はLi1.013Ni0.867Co0.098Al0.035を採用したリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
特開昭63−121260号公報 特開2006−128119号公報 特開2006−278341号公報 特開2014−139926号公報 特開2017−195020号公報
しかしながら、リチウムイオン二次電池の正極活物質に対する要求は増加しており、新たな正極活物質及びその製造方法の提供が熱望されている。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、新たな正極活物質及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、LiNiOのニッケルの一部をコバルト及びタングステンで置換した層状岩塩構造のリチウムニッケルコバルトタングステン酸化物が、好適な正極活物質であることを知見した。さらに、本発明者は、LiNiOのニッケルの一部をコバルト、タングステン及びジルコニウムで置換した層状岩塩構造のリチウム複合金属酸化物が、好適な正極活物質であることを知見した。
本発明者が、上記の正極活物質の製造方法について鋭意検討した結果、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを溶解した金属水溶液に、キレート化合物を添加して、水に対する金属の溶解性を向上させた上で、金属水溶液のpHを制御して、これらの金属を共沈させるとの技術を開発した。そして、かかる技術を用いて、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを正極活物質の粒子中に均一に分布させることに成功した。
また、正極活物質の前駆体を金属化合物でコートすることで、正極活物質の性能が向上することも知見した。
本発明はかかる知見に基づき完成されたものである。
本発明の第1の製造方法は、
ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、
前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、
前記前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、
を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法である。
本発明の第2の製造方法は、
ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、
前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、
前記前駆体を金属化合物でコートするコート工程、
前記金属化合物でコートした前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、
を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法である。
本発明により、新たな正極活物質及びその製造方法を提供できる。
実施例1の正極活物質のSEM像である。 実施例2の正極活物質のSEM像である。 評価例3の結果を示すグラフである。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明の第1の製造方法は、
ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、
前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、
前記前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、
を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法である。
本発明の第2の製造方法は、本発明の第1の製造方法における前駆体を金属化合物でコートするコート工程を有している点で、本発明の第1の製造方法と異なる。
以下、本発明の第1の製造方法及び本発明の第2の製造方法を総称して、本発明の製造方法という。本発明の製造方法にて製造された正極活物質を本発明の正極活物質という。
本発明の製造方法においては、析出工程にて、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを共沈させることが技術的な鍵となる。
析出工程について説明する。なお、特段の言及がない限り、本明細書で規定するpHは25℃で測定した場合の値をいう。
ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液(以下、遷移金属含有水溶液ということがある。)を準備するには、析出させようとする遷移金属水酸化物における金属組成比となるように、ニッケル化合物、コバルト化合物、タングステン化合物、ジルコニウム化合物を適切な比率で水に加え、さらに、キレート化合物を加えて、これらの化合物を水に溶解すればよい。
ニッケル化合物としては、例えば、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルを挙げることができる。コバルト化合物としては、例えば、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトを挙げることができる。タングステン化合物としては、例えば、タングステン酸ジルコニウム、LiWO、NaWO、KWO、(NHWOなどのタングステン酸塩を挙げることができる。ジルコニウム化合物としては、例えば、タングステン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ヨウ化ジルコニウムを挙げることができる。
キレート化合物とは、金属イオンに配位可能なアミノ基、アミド基、イミド基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸基、ホスフィン酸エステル基、ホスフェン酸基、ホスフェン酸エステル基、亜ホスフェン酸基、亜ホスフェン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、スルホン酸基、チオカルボキシル基、チオエステル基若しくはチオカルボニル基を複数有し、かつ、複数の当該基で金属イオンに配位可能な構造の化合物である。
キレート化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン化合物、グリシン、アラニン、システイン、グルタミン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、エチレンジアミン四酢酸などのアミノ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸などのジカルボン酸、及び、ヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
キレート化合物としては、ヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。分子内に水酸基とカルボン酸基を有するヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸を例示できる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、サリチル酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸などのo−ヒドロキシ安息香酸誘導体、マンデル酸、ベンジル酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸を例示できる。
上記具体的なヒドロキシカルボン酸は、いずれも、同一の金属イオンにOH基とCOH基が配位可能なコンホメーションを形成できる。
一般に、金属水溶液のpHを塩基性にすると、金属水酸化物が析出されることが知られている。そして、金属の種類に因り、金属水酸化物が析出されるpHは異なる。そのため、複数種類の金属イオンが溶解した金属水溶液に対して、塩基性物質を添加して、金属水溶液のpHを塩基性にする場合には、pH毎に析出する金属水酸化物の種類が異なることになる。その結果、金属水酸化物の組成にバラツキが生じることが想定される。
しかし、本発明の製造方法においては、遷移金属含有水溶液にキレート化合物が溶解されている。ここで、キレート化合物は金属イオンに配位して安定な錯体を形成するため、金属イオンの水に対する溶解性が向上する。そのため、キレート化合物が存在しない条件下では比較的低いpHで析出していた金属であっても、キレート化合物が溶解されている遷移金属含有水溶液においては、析出pHが高くなる。その結果、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムは、同様のpH範囲にて水酸化物又はその誘導体として、共に析出する。
ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムの塩基性の水に対する溶解性を比較すると、ジルコニウムは溶解性に劣る。そのため、キレート化合物は、ジルコニウムの溶解性を向上させるために、遷移金属含有水溶液に添加されているといえる。
遷移金属含有水溶液におけるジルコニウムのモルに対する、キレート化合物のモル比としては、1以上が好ましく、1〜10の範囲内が好ましく、1.5〜8の範囲内がより好ましく、2〜6の範囲内がさらに好ましい。
遷移金属含有水溶液を調製するには、撹拌装置を備えた反応槽を用いるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽を用いるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽を用いるのがより好ましい。
遷移金属含有水溶液は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは40〜80℃の範囲内に加温しておくのがよい。
pHを好適に制御しつつ、遷移金属含有水溶液と塩基性物質を混合するには、塩基性物質として塩基性水溶液を用いるのが合理的である。
塩基性水溶液を調製するには、塩基性化合物を水に溶解すればよい。
塩基性水溶液を調製するには、撹拌装置を備えた反応槽を用いるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽を用いるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽を用いるのがより好ましい。
塩基性水溶液のpHは11〜14の範囲が好ましく、11〜13の範囲がより好ましく、11〜12の範囲がさらに好ましい。使用し得る塩基性化合物としては水に溶解して塩基性を示すものであれば良く、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウムなどのアルカリ金属リン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどのアルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。塩基性化合物は単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。
析出工程において、反応溶液のpHは好適な範囲に保たれることが好ましいため、塩基性水溶液には、少なくとも緩衝能を有する塩基性化合物が含まれるのが好ましい。緩衝能を有する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。
塩基性水溶液は、好ましくは40〜90℃、より好ましくは40〜80℃の範囲内に加温しておくのがよい。
析出工程においては、遷移金属含有水溶液と塩基性物質を混合することにより、金属イオンと水酸化物イオンが反応して、水に対して溶解度の低いニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物が生成し、これが析出する。なお、タングステン酸塩を使用した場合には、タングステンはタングステン酸であるOW(OH)又はその塩として、他の金属と共に析出すると考えられるが、本明細書では、析出工程における析出物を総称して、遷移金属水酸化物という。析出した遷移金属水酸化物の粒子が本発明の正極活物質の一次粒子の基礎となる。そのため、析出工程を遷移金属水酸化物の析出速度が著しく速い条件下、すなわち遷移金属水酸化物の核がいたるところで発生する条件下とすると、無秩序な遷移金属水酸化物の粒子が形成されることになり、その結果、本発明の正極活物質の一次粒子の好ましくない晶癖を生じるおそれがある。従って、析出工程においては、できるだけ緩和な条件下で、遷移金属水酸化物の粒子を析出させることが好ましい。
析出工程においては、遷移金属含有水溶液と塩基性物質を混合した反応溶液を一定のpHに保つことが好ましい。なお、ここでのpH値は、反応溶液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。当該pHとしては、10〜14の範囲が好ましく、10.5〜12の範囲がより好ましく、10.6〜11の範囲が特に好ましい。
析出工程は、撹拌装置を備えた反応槽で行われるのが好ましく、さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入できる装置を備えた反応槽で行われるのが好ましい。また、恒温条件となる装置を備えた反応槽がより好ましい。
析出工程においては、反応系内に存在する溶存酸素の量が少ない方が好ましい。反応系内に存在する溶存酸素の量が多いと、不都合な酸化反応が生じるおそれや、遷移金属水酸化物の析出に伴う遷移金属水酸化物の好適な結晶化が阻害されるおそれがある。
反応系内に存在する溶存酸素の量を低下させるために、析出工程を、加温下で行うこと、不活性ガスを反応系内に導入しながら行うこと、脱酸素剤、還元剤、酸化防止剤などの存在下で行うことが好ましい。
加温下としては、40〜90℃、60〜80℃の範囲を例示できる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムを例示できる。
脱酸素剤、還元剤、酸化防止剤としては、アスコルビン酸及びその塩、グリオキシル酸及びその塩、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、ジメチルアミンボラン、NaBH、NaBHCN、KBH、亜硫酸及びその塩、チオ硫酸及びその塩、ピロ亜硫酸及びその塩、亜リン酸及びその塩、次亜リン酸及びその塩を例示できる。
析出工程後に、遷移金属水酸化物を濾過などで分離する。以上の方法で、遷移金属水酸化物を得ることができる。
なお、析出工程における遷移金属含有水溶液には、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウム以外のドープ元素を含有する化合物が添加されて、ドープ元素を含有する遷移金属水酸化物が製造されてもよい。
次に、前駆体形成工程について説明する。前駆体形成工程は、遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した遷移金属水酸化物を形成するか、又は、遷移金属水酸化物を加熱して遷移金属酸化物を形成する工程である。付着水を除去した遷移金属水酸化物、又は、遷移金属酸化物は、いずれも正極活物質の前駆体である。
加熱温度としては、100〜800℃の範囲内が好ましく、200〜700℃の範囲内がより好ましく、300〜600℃の範囲内が特に好ましい。前駆体形成工程は常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
本発明の第1の製造方法においては、前駆体形成工程に続いて焼成工程が行われる。
本発明の第2の製造方法においては、前駆体形成工程に続いて、前駆体を金属化合物でコートするコート工程が行われた後に、焼成工程が行われる。
コート工程について説明する。コート工程は、前駆体である「付着水を除去した遷移金属水酸化物」又は「遷移金属酸化物」を金属化合物でコートしてコート体とする工程である。
以下、「遷移金属酸化物」を金属化合物でコートする場合について説明を行う。「付着水を除去した遷移金属水酸化物」を金属化合物でコートする場合については、以下の説明において、「遷移金属酸化物」を「付着水を除去した遷移金属水酸化物」に、適宜適切に、読み替えればよい。
金属化合物の具体例としては、ZrO、CaVO、MnO、LaCuO、LaNiO、SnO、TlMn、EuO、Fe、CaMnO、SrMnO、(Sr,La)TiO、LaTiO、SrFeO、BaMoO、CaMoO、LnOs(LnはY及び希土類元素から選択される元素である。)、TlIr、CdRe、LuIr、BiRh、BiIr、Ti、WO、VO、V、LaMnO、CaCrO、LaCoO、(ZnO)、SrCrO、In0.970.03、ZnAlO(x+y=1)、LiV、Na1−xCoO(0<x<1)、LiTi、SrMoO、BaPbO、TlOs、PbOs、PbIr、LuRu、BiRu、SrRuO、CaRuO、CrO、MoO、ReO、TiO、LaO、SmO、LaNiO、SrVO、ReO、IrO、RuO、RhO、OsO、NdO、NbO、La、NiO、LaSrCo(x+y=1)、NaCoO、NaNiO、LiCoO、LiNiOから選択される金属酸化物又はこれらの前駆体の金属水酸化物を例示できる。
金属化合物のうち、金属酸化物は、ペロブスカイト型などの結晶構造を示すものが好ましい。
遷移金属酸化物を金属化合物でコートするには、各金属化合物の前駆体や各金属が溶解した水溶液を遷移金属酸化物に対して噴霧し、次いで/又は同時に、乾燥する方法を採用すればよい。また、各金属化合物の前駆体や各金属が溶解した水溶液に、遷移金属酸化物を浸漬させて、遷移金属酸化物の表面に各金属化合物の前駆体や各金属の水酸化物などを付着させた上で、加熱乾燥する方法を採用してもよい。特に、遷移金属酸化物の分散液と、各金属化合物の前駆体や各金属が溶解した水溶液を混合して、遷移金属酸化物の表面に各金属の水酸化物を析出させた上で、乾燥する方法(以下、析出法ということがある。)を採用するのが好ましい。
以下、金属化合物の金属がZrの場合の好適な析出法について、詳細に説明する。当該析出法は、以下のcoat−1)工程、coat−2)工程及びcoat−3)工程を有する。金属化合物の金属がZr以外の金属の場合には、coat−1)工程、coat−2)工程及びcoat−3)工程におけるジルコニウムを当該金属に読み替えればよい。また、金属化合物の金属が複数の金属の場合には、coat−2)工程にて複数の金属を含有する水溶液を用いてもよいし、金属水溶液の金属種を変更しつつ、coat−1)工程、coat−2)工程及びcoat−3)工程を繰り返して実施してもよい。
coat−1)遷移金属酸化物を水に分散させる分散液調製工程、
coat−2)キレート化合物を含有するジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、遷移金属酸化物の表面に水酸化ジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
coat−3)表面に水酸化ジルコニウムを析出させた遷移金属酸化物を乾燥してコート体とする工程
coat−1)工程の前に、遷移金属酸化物を粉砕しておくのが好ましい。また、分散液のpHが9〜12程度の範囲内となるようにpH調整を行うことが好ましい。
次に、coat−2)工程について説明する。
キレート化合物を含有するジルコニウム水溶液は、ジルコニウム塩とキレート化合物を水に溶解して製造される。キレート化合物を含有するジルコニウム水溶液は、通常、酸性の溶液である。ジルコニウム水溶液におけるジルコニウムに対するキレート化合物のモル比としては、1以上が好ましく、1〜10の範囲内が好ましく、1.5〜8の範囲内がより好ましく、2〜6の範囲内がさらに好ましい。
ジルコニウム塩としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニウムを挙げることができる。
キレート化合物の説明については、析出工程での説明を援用する。
coat−2)工程においては、効率的にジルコニウムを析出させるために、coat−2)工程の混合液のpHをコントロールするのが好ましい。ここでは、混合液のpHをアルカリ側にすることで、溶解度の低い水酸化ジルコニウムが、遷移金属酸化物の表面に析出することを想定している。例えば、coat−2)工程の溶液のpHが9〜13、11〜13、12〜13の範囲内となるように、塩基性水溶液を添加するのが好ましい。塩基性水溶液としては、析出工程で説明したものを採用すればよい。
coat−2)工程を経た遷移金属酸化物は、濾過などの方法で分離されて、coat−3)工程に供される。
coat−3)工程での乾燥は、加熱下及び/又は減圧下で行われるのが好ましい。加熱温度としては、100〜500℃、200〜400℃の範囲内を例示できる。
coat−3)工程での乾燥は、表面に水酸化ジルコニウムを析出させた遷移金属酸化物に付着した水分を除去することが主な目的である。ただし、加熱温度を高くすることで、遷移金属酸化物の表面に存在する水酸化ジルコニウムを脱水させて、酸化ジルコニウムに変化させてもよい。すなわち、コート体は、水酸化ジルコニウムでコートされた遷移金属酸化物でもよいし、酸化ジルコニウムでコートされた遷移金属酸化物でもよい。
次に、焼成工程について説明する。焼成工程は、前駆体とリチウム塩を混合して焼成する工程、又は、金属化合物でコートした前駆体とリチウム塩を混合して焼成する工程である。
リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、ハロゲン化リチウムを例示することができる。リチウム塩の配合量は、所望のリチウム組成の正極活物質となるように適宜決定すればよい。
混合装置としては、乳鉢及び乳棒、撹拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、ドラムミキサー、ボールミルを例示できる。
焼成工程においては、リチウム塩以外の化合物が混合されてもよい。特に、Na化合物、F化合物及びP化合物から選択される化合物が混合されるのが好ましい。Na、F、Pの存在に因り、本発明の正極活物質を具備するリチウムイオン二次電池のレート特性及び/又は容量維持率の改善が期待できる。
Na化合物としては、NaF、NaCl、NaBr、NaI、NaPO、NaHPO、NaHPO、NaSO、NaHSO、NaNO、CHCONaなどのナトリウム塩を例示できる。
F化合物としては、LiF、NaF、KF、MgF、CaF、BaF、AlFなどの金属フッ化物を例示できる。
P化合物としては、HPO、LiHPO、LiHPO、LiPO、NaHPO、NaHPO、NaPO、KHPO、KHPO、KPOなどのリン酸及びリン酸塩を例示できる。
焼成は、大気雰囲気下や酸素ガス雰囲気下で行ってもよいし、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス存在下で行ってもよい。焼成工程の加熱温度は400〜1100℃、500〜1000℃、600〜800℃の範囲を例示できる。焼成工程の加熱時間は1〜50時間を例示できる。
焼成は、単一の温度条件で実施してもよいし、温度条件が異なる複数の焼成工程を組み合わせて実施してもよく、また、特定の昇温プログラムを設定して実施してもよい。
温度条件が異なる複数の焼成工程を組み合わせる方法としては、400〜800℃で加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、及び、前記第1焼成体を550〜1000℃で加熱する第2焼成工程を挙げることができる。複数の焼成工程を組み合わせることで、好適な正極活物質を製造することができる。
第1焼成工程の温度としては、400〜800℃、650〜750℃の範囲を例示できる。第1焼成工程の加熱時間としては、3〜30時間、5〜20時間、5〜15時間の範囲を例示できる。
第2焼成工程は、前記第1焼成体を550〜1000℃で加熱する工程である。
ここで、正極活物質の結晶生成の点から言及すると、なるべく低温で加熱した方が、均一な組成であって均一な形状の結晶が生成しやすい。そのため、第2焼成工程の温度としては、550〜950℃、550〜900℃、550〜850℃、550〜800℃の範囲を例示できる。
第2焼成工程の加熱時間としては、3〜30時間、5〜20時間、5〜15時間の範囲を例示できる。
本発明の第2の製造方法では、コート工程にて、遷移金属酸化物の粒子を金属化合物でコートしているため、第1焼成工程及び第2焼成工程において、コートした金属化合物が障壁となり、ニッケルが層状岩塩構造のリチウムサイトに移動することを抑制していると考えられる。
焼成工程で得られた焼成体は、粉砕工程、分級工程を経て、一定の粒度分布の正極活物質とするのが好ましい。粒度分布の範囲としては、一般的なレーザー散乱回折式粒度分布計での測定において、平均粒子径(D50)は50μm以下が好ましく、1μm以上30μm以下がより好ましく、1μm以上20μm以下がさらに好ましく、2μm以上10μm以下が特に好ましい。
本発明の正極活物質には、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子が存在する。
本発明の正極活物質の一次粒子の大きさは、顕微鏡観察にて50nm〜1000nmの範囲内のものが好ましく、100nm〜500nmの範囲内のものがより好ましく、150nm〜500nmの範囲内のものがさらに好ましい。なお、一次粒子とは、SEM観察の際に1粒と認識される粒子のことを意味する。
本発明の正極活物質の一次粒子は、層状岩塩構造を示し、かつ、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を内部に含有する。
また、本発明の正極活物質の好適な一態様においては、Zr濃度が、一次粒子の内部よりも、一次粒子が凝集した二次粒子の表層で高い。又は、本発明の正極活物質の好適な一態様においては、コート工程での金属化合物に由来する金属濃度が、一次粒子の内部よりも、一次粒子が凝集した二次粒子の表層で高い。
本発明の正極活物質は層状岩塩構造を示す。層状岩塩構造はX線回折測定にて確認できる。
本発明の正極活物質において、リチウムは電荷担体である。リチウムは、充電時に層状岩塩構造のリチウムサイトから離脱し、放電時に層状岩塩構造のリチウムサイトに挿入される。
ニッケルは充放電時の酸化還元反応に優先的に寄与すると考えられ、コバルト、タングステン及びジルコニウムは、層状岩塩構造の維持に寄与すると考えられる。
本発明の正極活物質の好適な一態様として、下記一般式で表わされる化合物を例示できる。下記一般式で表わされる化合物は、ニッケルの比率が高いため、容量に優れる正極活物質である。
一般式 LiNiCoZr
一般式において、a、b、c、d、e、f、g、hは、0.5≦a≦2、0.85≦b<1、0<c<0.15、0<d<0.15、0<e<0.15、0≦f<0.15、b+c+d+e+f=1、1.8≦g≦2.2、0≦h≦0.2を満足する。Dはドープ元素である。
一般式におけるbの値は、正極活物質の容量に大きく影響する値である。
一般式におけるbは、0.85≦b≦0.99を満足するのが好ましく、0.9≦b≦0.98を満足するのがより好ましく、0.93≦b≦0.97を満足するのがさらに好ましい。
一般式におけるcは、0.001≦c≦0.1を満足するのが好ましく、0.005≦c≦0.08を満足するのがより好ましく、0.01≦c≦0.07を満足するのがさらに好ましく、0.03≦c≦0.06を満足するのが特に好ましい。
一般式において、dは、0.001≦d≦0.1を満足するのが好ましく、0.002≦d≦0.05を満足するのがより好ましく、0.003≦d≦0.03を満足するのがさらに好ましく、0.004≦d≦0.01を満足するのが特に好ましい。
一般式において、eは、0.001≦e≦0.1を満足するのが好ましく、0.001≦e≦0.05を満足するのがより好ましく、0.001≦e≦0.01を満足するのがさらに好ましく、0.002≦e≦0.008を満足するのが特に好ましい。
a、f、g、hについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦f≦0.1、1.8≦g≦2.1、0<h≦0.15、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0<f≦0.01、1.9≦g≦2.1、0<h≦0.1を例示することができる。
一般式におけるDはドープ元素であり、正極活物質の特性を向上可能な元素である。一般式におけるFも、正極活物質の特性を向上可能な元素である。
Dとしては、Na、Ca、V、Cu、Sn、Tl、Fe、Sr、Ti、Ba、Y、希土類元素、Os、Ir、Cd、Re、Bi、Rh、Cr、Zn、Al、In、Pb、Ru、Nb、P、Sを例示できる。
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用される。本発明の正極活物質を備えるリチウムイオン二次電池(以下、本発明のリチウムイオン二次電池ということがある。)について、以下、説明する。具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極活物質を備える正極、負極、固体電解質又は電解液及びセパレータを具備する。
正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
正極活物質としては、本発明の正極活物質のみを採用してもよいし、本発明の正極活物質と公知の正極活物質を併用してもよい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースを例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、公知のものを採用すればよく、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する化合物を例示することができる。
炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が例示できる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適切な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素としては、具体的にNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが例示でき、特に、Si又はSnが好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、具体的にZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、 CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiO あるいはLiSnOを例示でき、特に、SiO(0.3≦x≦1.6、又は0.5≦x≦1.5)が好ましい。
負極活物質としては、Siを有するSi系材料を含むものがよい。Si系材料は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な珪素又は/及び珪素化合物からなるとよく、例えば、SiO(0.5≦x≦1.5)がよい。珪素は理論充放電容量が大きいものの、珪素は充放電時の体積変化が大きい。そこで、負極活物質を珪素を含むSiOとすることで珪素の体積変化を緩和することができる。
負極活物質として、CaSiを塩酸やフッ化水素酸などの酸で処理して得られる層状ポリシランを、300〜1000℃で加熱して得られるSi材料を採用しても良い。さらに、上記Si材料を炭素源とともに加熱して、カーボンコートしたものを負極活物質として採用してもよい。
負極活物質としては、以上のものの一種以上を使用することができる。
負極に用いる導電助剤及び結着剤については、正極で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の固体電解質として使用可能なものを適宜採用すればよい。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示でき、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒にリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法の一例について説明する。
正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から、外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例および比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下のとおり、実施例1の正極活物質を製造した。
94g(357.6mmol)の硫酸ニッケル6水和物、4.2g(14.94mmol)の硫酸コバルト7水和物、0.6g(1.82mmol)のタングステン酸ナトリウム2水和物、0.26g(0.73mmol)の硫酸ジルコニウム4水和物、及び、キレート化合物として0.21g(3.42mmol)のグリコール酸を、400mLの純水に溶解させて、遷移金属含有水溶液を調製した。
遷移金属含有水溶液におけるニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウムのモル比は、95.5:4:0.5:0.2である。
水酸化ナトリウム、アンモニア水及び純水を混合して、塩基性水溶液を調製した。
・析出工程
60℃に維持した恒温槽中で、窒素ガス導入及び撹拌条件下の遷移金属含有水溶液に対して、塩基性水溶液を供給して反応溶液とした。反応溶液のpHを10.8〜10.85の範囲内に維持して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを遷移金属水酸化物として析出させた。なお、ここでのpH値は、反応溶液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
遷移金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、遷移金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により遷移金属水酸化物を単離した。
・前駆体形成工程
大気下、遷移金属水酸化物を300℃で5時間加熱して、前駆体である遷移金属酸化物とした。
・焼成工程
10gの前駆体、3.0g(125mmol)の水酸化リチウム無水物、0.475g(1.25mmol)のNaPO12水和物、0.032g(1.25mmol)のLiFを乳鉢で混合し、混合物とした。そして、前記混合物を、大気雰囲気下、600℃で10時間加熱し、第1焼成体とした。
第1焼成体を乳鉢で解砕し、粉末状とした。粉末状の第1焼成体を、酸素ガス雰囲気下、725℃で15時間加熱し、第2焼成体を得た。第2焼成体を乳鉢で解砕し、実施例1の正極活物質とした。
実施例1の正極活物質の理論上の組成は、LiNi0.955Co0.040.005Zr0.002Na0.030.010.01である。
以下のとおり、実施例1の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
正極用集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。正極活物質として実施例1の正極活物質を94質量部、導電助剤として3質量部のアセチレンブラック、および結着剤として3質量部のポリフッ化ビニリデンを混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造した。上記アルミニウム箔の表面に上記スラリーをのせ、ドクターブレードを用いてスラリーが膜状になるように塗布した。スラリーを塗布したアルミニウム箔を加熱乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去し、アルミニウム箔表面に正極活物質層を形成させた。表面に正極活物質層を形成させたアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させて接合物とした。真空乾燥機を用いて、接合物を加熱し、所定の形状に切り取り、正極とした。
負極を以下のように製造した。
グラファイト98.3質量部と、結着剤としてスチレン−ブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース0.7質量部とを混合し、この混合物を適量のイオン交換水に分散させてスラリーを製造した。このスラリーを負極用集電体である厚み20μmの銅箔にドクターブレードを用いて膜状になるように塗布し、スラリーを塗布した集電体を乾燥後にプレスして接合物とした。真空乾燥機を用いて、接合物を加熱し、所定の形状に切り取り、負極とした。
上記の正極および負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製造した。詳しくは、正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の樹脂膜からなる厚さ25μmの矩形状シートを挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としては、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートを体積比3:3:4で混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lとなるよう溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉された実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。
(実施例2)
前駆体形成工程と焼成工程の間に以下のコート工程を実施し、焼成工程における前駆体として、コート工程後のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の正極活物質、正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
実施例2の正極活物質の理論上の組成は、LiNi0.955Co0.040.005Zr0.004Na0.030.010.01 である。
・コート工程
純水400mLに30gの遷移金属酸化物を加えて、遷移金属酸化物の分散液を調製した。
0.3g(0.84mmol)の硫酸ジルコニウム4水和物、及び、キレート化合物として0.25g(3.29mmol)のグリコール酸を、水に溶解して、コート用溶液を調製した。
上記遷移金属酸化物の分散液と、コート用溶液を混合し混合液とした。次いで、該混合液のpHが12.5になるまで、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、遷移金属酸化物の表面に水酸化ジルコニウムを析出させたコート体を得た。コート体を濾過で分離した後に、乾燥し、焼成工程に供した。
(参考例1)
硫酸ニッケル6水和物、硫酸コバルト7水和物、及び、タングステン酸ナトリウム2水和物を、ニッケル、コバルト、タングステンのモル比が95.5:4:0.5となる量で、純水に溶解させて、400mLの遷移金属含有水溶液を調製した。
30gの25%アンモニア水を純水と混合して、400mLの第1塩基性水溶液を調製した。
水酸化ナトリウム、アンモニア水及び純水を混合して、pH10.75の第2塩基性水溶液を調製した。
・析出工程
60℃に維持した恒温槽中で、窒素ガス導入及び撹拌条件下の第2塩基性水溶液に対して、遷移金属含有水溶液を供給し、ニッケル、コバルト及びタングステンを遷移金属水酸化物として析出させた。この際に、反応溶液のpHを10.75〜10.80の範囲内に維持させるために、第1塩基性水溶液と48wt%水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下した。なお、ここでのpH値は、反応溶液をpHメーターで測定した数値そのものを意味する。
遷移金属水酸化物を濾過により分離した。超音波洗浄機を用いて、遷移金属水酸化物を純水で洗浄し、その後、濾過により遷移金属水酸化物を単離した。
以下、実施例2と同様の方法で、前駆体形成工程、コート工程、及び、焼成工程を実施して、参考例1の正極活物質を製造した。参考例1の正極活物質を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、参考例1の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
参考例1の正極活物質の理論上の組成は、LiNi0.955Co0.040.005Zr0.002Na0.030.010.01 である。
(比較例1)
正極活物質として、層状岩塩構造のLiNi0.85Co0.11Al0.04を採用した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
実施例1及び実施例2の正極活物質につき、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、表面観察を行った。図1に実施例1の正極活物質のSEM像を示し、図2に実施例2の正極活物質のSEM像を示す。
両SEM像から、実施例1及び実施例2の正極活物質は、いずれも、一次粒子が凝集した二次粒子を含有していることがわかる。
また、走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分光法を組み合わせたSEM−EDXにて、実施例1及び実施例2の正極活物質の二次粒子を分析したところ、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素が均一に分布していることが確認できた。
実施例2の正極活物質の一次粒子及び二次粒子の表面には、実施例1の正極活物質の一次粒子及び二次粒子の表面よりも高濃度のZrが観測された。この現象からみて、コート工程で用いた金属が、正極活物質の表面に高濃度で存在していると推定される。
(評価例2)
実施例1、実施例2及び参考例1の正極活物質につき、Cu−καを用いた粉末X線回折装置にて、結晶構造の分析を行った。
いずれの正極活物質も、層状岩塩構造の回折パターンを示すことが確認できた。
(評価例3)
実施例1、実施例2、参考例1及び比較例1のリチウムイオン二次電池につき、0.1Cレートで、4.4Vまで充電してから2.5Vまで放電するとの充放電サイクルを繰り返し行った。
初回充放電サイクルでの放電容量、及び、充放電サイクルを20回繰り返した時点での放電容量を、各正極活物質の製造における析出工程での金属組成比と共に表1に示す。また、各リチウムイオン二次電池の充放電サイクルの回数と放電容量との関係をグラフにして図3に示す。
表1及び図3の結果から、タングステンを含有する正極活物質を備える実施例1、実施例2及び参考例1のリチウムイオン二次電池は、タングステンを含有しない正極活物質を備える比較例1のリチウムイオン二次電池よりも、放電容量が大きいことがわかる。
また、タングステン及びジルコニウムを含有する正極活物質を備える実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池は、放電容量の維持に著しく優れていることがわかる。特に、実施例2のリチウムイオン二次電池は、より放電容量の維持に優れていることがわかる。コート工程の有無が、正極活物質の容量維持に影響したといえる。

Claims (10)

  1. ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、
    前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、
    前記前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、
    を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法。
  2. ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及びキレート化合物を溶解した水溶液と、塩基性物質を混合して、ニッケル、コバルト、タングステン及びジルコニウムを含有する遷移金属水酸化物を析出させる析出工程、
    前記遷移金属水酸化物を加熱して、付着水を除去した又は遷移金属酸化物とした前駆体を形成する前駆体形成工程、
    前記前駆体を金属化合物でコートするコート工程、
    前記金属化合物でコートした前駆体とリチウム塩を混合して焼成する焼成工程、
    を有することを特徴とする、層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を含有する正極活物質の製造方法。
  3. 前記コート工程における前記金属化合物が、ZrO、CaVO、MnO、LaCuO、LaNiO、SnO、TlMn、EuO、Fe、CaMnO、SrMnO、(Sr,La)TiO、LaTiO、SrFeO、BaMoO、CaMoO、LnOs(LnはY及び希土類元素から選択される元素である。)、TlIr、CdRe、LuIr、BiRh、BiIr、Ti、WO、VO、V、LaMnO、CaCrO、LaCoO、(ZnO)、SrCrO、In0.970.03、ZnAlO(x+y=1)、LiV、Na1−xCoO(0<x<1)、LiTi、SrMoO、BaPbO、TlOs、PbOs、PbIr、LuRu、BiRu、SrRuO、CaRuO、CrO、MoO、ReO、TiO、LaO、SmO、LaNiO、SrVO、ReO、IrO、RuO、RhO、OsO、NdO、NbO、La、NiO、LaSrCo(x+y=1)、NaCoO、NaNiO、LiCoO、LiNiOから選択される金属酸化物又はこれらの前駆体の金属水酸化物である請求項2に記載の正極活物質の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極活物質の製造方法で正極活物質を製造する工程、
    前記正極活物質を用いて正極を製造する工程、
    を有する、正極の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法で、正極を製造する工程、
    前記正極を用いてリチウムイオン二次電池を製造する工程、
    を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
  6. 層状岩塩構造を示し、下記一般式で表されることを特徴とする正極活物質。
    一般式 LiNiCoZr
    一般式において、a、b、c、d、e、f、g、hは、0.5≦a≦2、0.85≦b<1、0<c<0.15、0<d<0.15、0<e<0.15、0≦f<0.15、b+c+d+e+f=1、1.8≦g≦2.2、0≦h≦0.2を満足する。Dはドープ元素である。
  7. 層状岩塩構造を示し、リチウム、ニッケル、コバルト、タングステン、ジルコニウム及び酸素を内部に含有する一次粒子を備える請求項6に記載の正極活物質。
  8. Zr濃度が、前記一次粒子の内部よりも、前記一次粒子が凝集した二次粒子の表層で高い、請求項7に記載の正極活物質。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の正極活物質を備える正極。
  10. 請求項9に記載の正極を備えるリチウムイオン二次電池。
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