JP2020149940A - 蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制する。【解決手段】蓄電デバイス用電極は、2以上の芳香環が縮合した縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層とカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を電極活物質として含み、電極活物質と導電材と結着材との全体のうち前記結着材としてのポリビニルアルコールを3質量%以上10質量%以下の範囲で含む。この電極は、[011]面ピーク強度に対するピーク強度が特定の範囲に含まれる。【選択図】図2

Description

本明細書は、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを開示する。
従来、蓄電デバイスとしては、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。負極活物質としての層状構造体は、導電性を有さないが、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことにより充放電サイクル特性の安定性をより高めることができる。また、蓄電デバイスとしては、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む負極活物質を用いたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この層状構造体は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを含む溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥法で製造される。噴霧乾燥法では、従来とは異なる性状(形状など)の層状構造体を得ることができる。
特開2012−221754号公報 特開2018−166060号公報
ところで、上述の特許文献2の蓄電デバイスでは、従来とは異なる性状の層状構造体を得ることができるが、例えば、層状構造体を含む電極合材の結着性に影響を及ぼすことがあった。このように、層状構造体を電極活物質に用いた電極合材の結着性を検討することが求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制することができる蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、噴霧乾燥法によって、2以上の芳香環が縮合した縮合芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を作製すると、良好な特性を得られる一方電極合材が剥離しやすくなる現象を確認し、これに対して、特定の水溶性ポリマーを利用するとこの電極合材の剥離をより抑制することができることを見いだし、本開示の発明を完成するに至った。
即ち、本開示の蓄電デバイス用電極は、
2以上の芳香環が縮合した縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を電極活物質として含み、前記電極活物質と導電材と結着材との全体のうち前記結着材としてのポリビニルアルコールを3質量%以上10質量%以下の範囲で含み、下記(1)〜(5)のうち1以上を満たすものである。
(1)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下を示す。
(2)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上を示す。
(3)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上を示す。
(4)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上を示す。
(5)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上を示す。
本開示の蓄電デバイスは、
上述した蓄電デバイス用電極である負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示する蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスでは、層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。噴霧乾燥法で得られた縮合芳香族ジカルボン酸塩の層状構造体は、溶液混合法で得られたものに比して、結晶性がより高く、より小さい粒径で得られることがある。これを電極活物質として含む電極合材を集電体へ形成すると、その結着力に影響が及ぼされ、剥離しやすくなることがある。本開示では、結着材として水酸基がより多く含まれるポリビニルアルコールを用いることによって、層状構造体とポリビニルアルコールの水酸基とが反応する一方、集電体とポリビニルアルコールの水酸基とが反応し、これらが強固に結着するものと推察される。この効果によって、層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制することができるものと推察される。
ナフタレン骨格を有する層状構造体の構造の一例を示す説明図。 蓄電デバイス20の一例を示す説明図。 実験例1、2、8の電極のXRD測定結果。
(蓄電デバイス用電極)
本開示の蓄電デバイス用電極は、2以上の芳香環が縮合した縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を電極活物質として含む。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。この層状構造体は、式(1)で表される構造を有するものとしてもよい。但し、この式(1)において、aは0以上3以下の整数であり、この芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、この層状構造体は、式(2)に示す芳香族化合物としてもよい。なお、式(1)〜(2)において、Aはアルカリ金属である。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(3)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(3)において、Rは2以上の芳香環が縮合した縮合芳香環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
この層状構造体において、有機骨格層は、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香環が縮合した縮合多環化合物を含むものとしてもよく、このうちナフタレン骨格を有する縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含むことがより好ましい。この芳香環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、芳香環に1又は2以上のカルボキシアニオンが結合した構造を有するものとしてもよい。有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えばナフタレンであれば2,6位が挙げられる。
アルカリ金属元素層は、例えば図1に示すように、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成している。図1は、2、6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムを具体例とする、ナフタレン骨格を有する層状構造体の構造の一例を示す説明図である。アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により層状構造体に吸蔵・放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。このように構成された層状構造体は、図1に示すように、構造においては、有機骨格層とこの有機骨格層の間に存在するLi層(アルカリ金属元素層)とにより形成されている。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。この層状構造体は、例えば、2、6−ナフタレンジカルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。
この層状構造体は、縮合芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを含む溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥法により作製されるものとしてもよい。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する電極活物質の量によって適宜調整すればよい。噴霧乾燥する調製溶液は、縮合芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上、より好ましくは、0.2mol/L以上であることが好ましい。また、調製溶液は、縮合芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.2以上であることが好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを過剰とすることにより、蓄電デバイス用電極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは、2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよい。乾燥温度は、例えば、100℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、250℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、120℃以上や150℃以上がより好ましく、220℃以下がより好ましい。また、供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。
この層状構造体を含む電極は、X線回折測定結果が下記(1)〜(5)のうち1以上を満たす。更に、この蓄電デバイス用電極は、下記(6)〜(10)のうち1以上を満たすことが好ましい。ナフタレン骨格を有する層状構造体において、[110]面、[11−1]面、[10−2]面、[102]面及び[112]面の面間隔は、有機骨格層における、ナフタレン骨格とナフタレン骨格との層状構造に基づく間隔である。また、[200]面の面間隔は、アルカリ金属元素層とアルカリ金属元素層との間における有機骨格層に基づく間隔である。[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxのピーク強度比Px/P011が下記範囲内にあると、結晶性が良好な層状構造体であるといえ、また、噴霧乾燥法で作製されたものであるともいえる。
(1)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下を示す。
(2)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上を示す。
(3)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上を示す。
(4)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上を示す。
(5)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上を示す。
(6)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.2以上0.4以下の範囲内である。
(7)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
(8)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
(9)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.6以上を示す。
(10)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.5以上を示す。
この蓄電デバイス用電極は、電極活物質としての上述した層状構造体と、結着材と、導電材とを含む電極合材が集電体に形成されているものとしてもよい。電極合材は、結着材として水溶性ポリマーを含むものとしてもよい。水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)を少なくとも含み、カルボキシメチルセルロース(CMC)やスチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリエチレンオキシド(PEO)のうちいずれか1以上を更に含むものとしてもよい。PVAは、式(4)の構造を有するものとし、式(5)の構造を有するものとしてもよい。式中のl、m、nは任意の整数である。PVAは、分子量が5万以上であることが好ましく、50万以下の範囲が好ましい。PVAは、この分子量の範囲では、より良好な機能を奏する。この電極は、電極活物質と導電材と結着材との全体のうち結着材としてのPVAを3質量%以上10質量%以下の範囲で含む。この配合量が3質量%以上では結着性をより高めることができ、10質量%以下では、電極活物質や導電材が相対的に少なくなることを抑えることができ、電極の充放電特性を確保することができ好ましい。この電極は、結着材としてのPVAを4質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むものとしてもよい。また、この電極は、結着材としてのPVAを8質量%以下含むことがより好ましく、7.5質量%以下含むものとしてもよい。また、CMCやPEO、SBRなどは、電極活物質と導電材と結着材との全体のうち、それぞれ0質量%以上7.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下の範囲で含むものとしてもよい。
また、蓄電デバイス用電極は、上述した水溶性ポリマーに加えて、又はこれに代えて他の結着材を含むものとしてもよい。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等としてもよい。これらは、単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維などの炭素材料、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。蓄電デバイス用電極は、電極合材全体のうち導電材を5質量%以上25質量%以下の範囲で含むことが好ましく、10質量%以上としてもよいし、15質量%以上としてもよい。5質量%以上であれば、電極に十分な導電性を持たせることができ、充放電特性の劣化を抑制できる。また、25質量%以下であれば、活物質や結着材が少なくなり過ぎないため、活物質や結着材の機能を十分に発揮できる。
蓄電デバイス用電極は、電極活物質をより多く含むことが好ましく、電極合材全体のうち電極活物質が65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上としてもよい。また、電極活物質は、85質量%以下や75質量%以下の範囲としてもよい。電極活物質を85質量%以下の範囲で含むものでは、導電材や結着材の量が少なくなり過ぎないため、導電材や結着材の機能を十分に発揮できる。
蓄電デバイス用電極において、電極合材は、溶剤を用いてペースト状又は坏土状にして集電体に形成されることが好ましい。この溶剤としては、水を用いてもよいし、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いてもよい。結着材として水溶性ポリマーを用いる場合は、溶媒は水が好適である。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。このうち、蓄電デバイス用電極の集電体は、銅やアルミニウム金属とすることがより好ましい。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、正極と、負極と、イオン伝導媒体とを備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池などとしてもよい。この負極は、縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層とアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を電極活物質として含む、上述した蓄電デバイス用電極である。この電極活物質は、キャリアイオンとして、Liイオン、Naイオン及びKイオンのうち1以上を吸蔵放出する。キャリアイオンはLiイオンであることが好ましい。以下、Liイオンをキャリアとする蓄電デバイスを主として説明する。
正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着・脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)やLi(1-x)NiaCobMnc4(a+b+c=2)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、蓄電デバイス用電極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、例えば、支持塩(支持電解質)と有機溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。支持塩は、公知のリチウム塩としてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6,Li(CF3SO22N,LiN(C25SO22などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。また、イオン伝導媒体は、固体電解質としてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図2は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。また、この負極23は、上述した芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を負極活物質として有し、結着材としてポリビニルアルコールを含む。
以上詳述した蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスでは、層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。噴霧乾燥法で得られた縮合芳香族ジカルボン酸塩の層状構造体は、溶液混合法で得られたものに比して、結晶性がより高く、より小さい粒径で得られることがある。これを電極活物質として含む電極合材を集電体へ形成すると、その結着力に影響が及ぼされ、剥離しやすくなることがある。この蓄電デバイス用電極では、結着材として水酸基がより多く含まれるポリビニルアルコールを用いることによって、層状構造体とポリビニルアルコールの水酸基とが反応する一方、集電体とポリビニルアルコールの水酸基とが反応し、これらが強固に結着するものと推察される。この効果によって、層状構造体を用いた電極合材の剥離をより抑制することができるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、電極及び蓄電デバイスを具体的に実施した例を実験例として説明する。なお、実験例1、2が実施例に相当し、実験例3〜11が参考例に相当する。
(噴霧乾燥法での2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
スプレードライ法により層状構造体を作製した。2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。2,6−ナフタレンジカルボン酸が0.2mol/L、水酸化リチウムが0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、調製溶液(水溶液)を調製した。この調製溶液をスプレードライヤー(マイクロミストスプレードライヤーMDL−050、藤崎電機製)を用いて噴霧乾燥させ、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(SD−Naph)の粉末を析出させた。調製溶液の噴霧量(供給量)は0.04L/分、乾燥温度は200℃とした。
(溶液混合法での2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物を用い、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に2,6−ナフタレンジカルボン酸を1.0g加え、1時間撹拌した。撹拌したのち溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph)を得た。
(噴霧乾燥法での4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
スプレードライ法により層状構造体を作製した。4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。次に、4,4’−ビフェニルジカルボン酸を0.20mol/Lとなるようにこの水溶液に添加した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させ、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は150℃で行い、4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム(SD−Bph)を合成した。
(溶液混合法での4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いて、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に4,4’−ビフェニルジカルボン酸1.0gを加え、1時間撹拌した。その後、撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム(Bph)を得た。
[実験例1]
上記手法で作製した噴霧乾燥法での2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムを74.1質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を18.5質量%、結着材としてのポリビニルアルコール(PVA:ゴウセネックス,T−330,日本合成化学)を7.4質量%を混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を作製し、これを実験例1の電極とした。
[実験例2〜5]
噴霧乾燥法により作製したSD−Naphを活物質とし、結着材としてカルボキシメチルセルロース(CMC:ダイセルファインケム、CMCダイセル1120)、ポリエチレンオキシド(PEO:分子量:200万)、スチレンブタジエンラバー(SBR:日本ゼオン、BM−400B)及びPVAのうち1以上を用い、表3に示した電極配合比で作製したものを実験例2〜5の電極とした。
[実験例6〜7]
噴霧乾燥法により作製したBphを活物質とし、結着材としてCMC、PEO及びSBRを用いて、表3に示した電極配合比で作製したものを実験例6〜7の電極とした。
[実験例8、9]
溶液混合法により作製したNaphを活物質とし、結着材としてCMC及びSBRを用いるか、結着材としてSBR及びPVAを用い、表3に示した電極配合比で作製したものをそれぞれ実験例8、9の電極とした。
[実験例10〜11]
溶液混合法により作製したBphを活物質とし、結着材としてCMC及びSBRを用いるか、結着材としてSBR及びPVAを用い、表3に示した電極配合比で作製したものをそれぞれ実験例10、11の電極とした。
(X線回折測定)
実験例1〜8の電極のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流40mAに設定し、5°/分の走査速度で、2θ=5°〜60°の角度範囲で行った。
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記の手法にて作製した実験例1〜11の電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで作製したものを実験例1〜11の二極式評価セルとした。
(剥離評価試験)
上述した二極式評価セルを用いて、25℃の温度環境下、電圧範囲0.5〜1.5V(vs.Li/Li+)、電流値0.5mA(C/10相当)で1サイクルの充放電を行うことにより、電極の容量確認を行った。その結果をふまえて、電極にSOC75%に相当するリチウムを吸蔵させるプレドープ処理を行った。プレドープ処理後の二極式評価セルを解体し、電極の剥離状態を目視により確認した。剥離評価は、電極合材の剥離が見られなかったものを「無」、電極合材が剥離したものを「有」とした。
(結果と考察)
表1に実験例1,2,8の面指数、ピーク強度比Px/P011をまとめた。ピーク強度比は、[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxの比とした。表2に実験例2,8の面指数、2θ値、ピーク強度(カウント値)、ピーク強度比Px/P011及び強度比Pm/Psをまとめた。強度比Pm/Psは、実験例2のピーク強度比Psに対する実験例8のピーク強度Pmの比である。また、表3に、実験例1〜11の活物質種別、電極配合比(質量部)、Liのプレドープ処理後の電極合材の剥離の有無をまとめた。図3は、実験例1、2、8の電極のXRD測定結果である。
表1、2、図3に示すように、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む実験例1、2の電極においては、従来の溶液混合法により作製した電極活物質を含む実験例8の電極と同じ2θ位置にピークが出現した。また、溶液混合法で合成した実験例8のXRDパターンに対して、実験例1、2のXRDパターンでは、[110]面、[11−1]面、[10−2]面、[102]面及び[112]面のピークが相違していた。具体的には、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む実験例1、2の電極では、[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下、特に0.2以上0.4以下の範囲内であった。これに対し、実験例8では、強度比P110/P011は1.0以上を示した。また、実験例1、2では、[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上、特に0.2以上0.5以下の範囲内であった。これに対し、実験例8では、強度比P11-1/P011は.0.15以下を示した。また、実験例1、2では、[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上、特に0.2以上0.5以下の範囲内であった。これに対し、実験例8では、強度比P10-2/P011は0.15以下を示した。また、実験例1、2では、[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上、特に0.6以上を示した。これに対し、実験例8では、強度比P102/P011は0.2以下を示した。また、実験例1、2では、[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上、特に0.5以上を示した。これに対し、実験例8では、強度比P112/P011は0.2以下を示した。このように、このピーク強度比のいずれか1以上を満たせば、ナフタレン構造を含む層状構造体がスプレードライ法で作成されたものであると特定できることがわかった。
また、噴霧乾燥法によるナフタレン構造を含む層状構造体の[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxの比を強度比Psとし、溶液混合法によるナフタレン構造を含む層状構造体の[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxの比を強度比Pmとし、Pm/Psを検討した。この場合、表2に示すように、面指数が[200]面、[011]面、[011]面、[111]面、[211]面については、1≦Pm/Ps≦2の範囲であった。また、面指数が[110]面、[210]面、[120]面については、2<Pm/Psの範囲であった。また、面指数が[11−1]面、[10−2]面、[102]面、[012]面、[112]面については、Pm/Ps<1の範囲であった。この強度比Pm/Psによれば、噴霧乾燥法により作製された電極のピーク強度の傾向を明らかにすることができる。
次に、電極合材の剥離について検討した。表3に示すように、Bphの電極(実験例6、7、10、11)では、電極活物質の作製法や結着材の種類にかかわらず、Liプレドープ後の剥離は見られなかった。また、溶液混合法で作製したNaphの電極(実験例8、9)においてもLiプレドープ後の剥離は見られなかった。一方、噴霧乾燥法によるSD−Naphの電極(実験例3〜5)では、Liプレドープ後に電極合材の剥離が生じた。このように、SD−Naphの電極では、例えば、結晶性や粒径など層状構造体の特異的な性状により、CMC、PEO、SBRなどの水溶性ポリマーの結着性に多大な影響を及ぼしていると推察された。これに対して、噴霧乾燥法によるSD−Naphの電極にPVAを含む実験例1、2では、CMCなどの有無にかかわらずLiプレドープ後の剥離は見られなかった。これは、例えば、ナフタレンに結合したカルボン酸Li(−COOLi)とPVAの水酸基(−OH)とが反応する一方、集電体のCuとPVAの水酸基(−OH)とが反応することによって、これらが強固に結着するためと推察された。例えば、CMC、PEO、SBRに比べて、SD−Naphは、より強固にPVAと相互作用することで、強い結着力をもたらすものと推察された。このPVAの添加量は、電極活物質と導電材と結着材との全体のうちPVAが3質量%以上10質量%以下の範囲、より好ましくは4質量%以上8質量%以下の範囲で含むことが好ましいと推察された。
本開示は、上記の実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本開示は、電池産業の分野に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (7)

  1. 2以上の芳香環が縮合した縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を電極活物質として含み、前記電極活物質と導電材と結着材との全体のうち前記結着材としてのポリビニルアルコールを3質量%以上10質量%以下の範囲で含み、下記(1)〜(5)のうち1以上を満たす、
    蓄電デバイス用電極。
    (1)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下を示す。
    (2)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上を示す。
    (3)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上を示す。
    (4)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上を示す。
    (5)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上を示す。
  2. 前記層状構造体が下記(6)〜(10)のうち1以上を満たす、請求項1に記載の蓄電デバイス用電極。
    (6)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.2以上0.4以下の範囲内である。
    (7)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
    (8)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
    (9)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.6以上を示す。
    (10)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.5以上を示す。
  3. 前記蓄電デバイス用電極は、前記結着材としての前記ポリビニルアルコールを4質量%以上8質量%以下の範囲で含む、請求項1に記載の蓄電デバイス用電極。
  4. 前記蓄電デバイス用電極は、前記結着材としてのカルボキシメチルセルロースを前記ポリビニルアルコールに加えて含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用電極。
  5. 前記層状構造体は、ナフタレン骨格を有する前記縮合芳香族ジカルボン酸アニオンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用電極。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用電極である負極と、
    正極活物質を含む正極と、
    正極と負極との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  7. 前記正極は、リチウムを含有する遷移金属複合酸化物及び比表面積が1000m2/g以上の活性炭とのうち1以上を前記正極活物質として含む、請求項6に記載の蓄電デバイス。
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