本発明の樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)および全芳香族液晶ポリマーを必須成分として含有する。
本発明の樹脂組成物に使用されるEVOHは、主としてエチレン単位とビニルアルコール単位とからなる共重合体であり、エチレン−ビニルエステル共重合体中のビニルエステル単位をけん化して得られるものである。本発明において使用されるEVOHは特に限定されず、溶融成形用途で使用され得る公知のものを用いることができる。EVOHは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
EVOHのエチレン単位の含有量の下限は、20モル%が好ましく、24モル%がより好ましい。上記の下限を下回る場合には、得られる樹脂組成物の溶融成形性が低下するおそれがある。一方、EVOHのエチレン単位の含有量の上限は、65モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、48モル%がさらに好ましい。上記の上限を超える場合には、得られる樹脂組成物のガスバリア性が低下するおそれがある。
EVOHのケン化度は、特に限定されないが、得られる樹脂組成物のガスバリア性を維持する観点から、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。
EVOHのメルトフローレート(温度190℃、荷重2160gの条件下で、ISO 1133に記載の方法で測定、以下、「メルトフローレート」を「MFR」と称することがある)は特に限定されないが、下限としては0.1g/10分であることが好ましく、0.5g/10分がより好ましく、1.0g/10分がさらに好ましい。一方、MFRの上限としては、60g/10分が好ましく、40g/10分がより好ましく、20g/10分がさらに好ましい。MFRが上記の範囲の場合には、得られる樹脂組成物の成形性や加工性が向上する。
EVOHは、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位に加えて、他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランなどのビニルシラン化合物から誘導される単位が挙げられる。これらのなかでも、ビニルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシランから誘導される単位が好ましい。さらに、EVOHは、本発明の目的が阻害されない範囲で、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステル;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンから誘導される単位を有していてもよい。エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単位の含有量は、全構成単位に対して10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
EVOHの製造方法としては、例えば、公知の方法に従って、エチレン−ビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造する方法が挙げられる。エチレン−ビニルエステル共重合体は、例えば、エチレンとビニルエステルとを、メタノール、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、加圧下に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによって得られる。原料のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを使用することができるが、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化には、酸触媒またはアルカリ触媒を使用することができる。
本発明の樹脂組成物に使用する全芳香族液晶ポリマーとは、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる、異方性溶融相を形成する全芳香族液晶ポリエステルまたは全芳香族液晶ポリエステルアミドである。
全芳香族液晶ポリマーの異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわち、ホットステージに載せた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位およびこれらの組合せなどが挙げられる。
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸である、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸など、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが、重合時の反応性、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは本発明の目的を損なわない範囲で、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位やチオエステル結合を含むものであってもよい。チオエステル結合を与える単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの単量体の使用量は、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体などの合計量を含む全体に対して10モル%以下であるのが好ましい。
これらの繰り返し単位を組み合わせた共重合体には、単量体の構成や組成比、共重合体中での各繰り返し単位のシークエンス分布によっては、異方性溶融相を形成するものとしないものが存在するが、本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは異方性溶融相を形成する共重合体に限られる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは、2種以上の全芳香族液晶ポリマーをブレンドしたものであってもよい。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの示差走査熱量計により測定される結晶融解温度は260℃以下であり、好ましくは255℃以下であり、より好ましくは250℃以下であり、さらに好ましくは240℃以下である。全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度は、通常210℃以上であり、ある場合には211℃以上であり、別の場合には212℃以上であり、さらに別の場合には213℃以上である。
全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度が上記温度範囲であることによって、マトリクスであるEVOHに全芳香族液晶ポリマーが均一に分散しやすくなり、成形する際に、本発明の目的である、優れた機械物性および耐熱性が得やすくなる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、全芳香族液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20〜50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000等を使用することができる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの溶融粘度(キャピラリーレオメーターで測定、結晶融解温度+40℃、1000s−1)は、1〜200Pa・sが好ましく、5〜100Pa・sがより好ましい。
溶融粘度が1Pa・s未満であると均一に分散しにくくなる傾向があり、200Pa・sを超えるとやはり均一に分散しにくくなる傾向がある。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーとしては全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用され、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルがより好適に使用される。
[式中、
Ar1およびAr2は、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、全芳香族液晶ポリエステル中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たすものである:
0.5≦p/q≦2.5
2≦r≦15、および
2≦s≦15。]
上記式(I)に係る組成比p(モル%)と式(II)に係る組成比q(モル%)のモル比(p/q)は、0.6〜1.8がより好ましく、0.8〜1.6がさらに好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、pとqの合計の組成比は、70〜96モル%が好ましく、76〜90モル%がより好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(I)に係る組成比pと式(II)に係る組成比qは、それぞれ、32〜54モル%が好ましく、36〜52モル%がより好ましい。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルは、式(I)および式(II)で表される繰り返し単位を、少なくとも上記のモル比(p/q)、および場合により上記のpとqの合計の組成比および/またはpとqのそれぞれの組成比(モル%)で含むことにより、260℃以下である結晶融解温度を示す。
また、本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(III)に係る組成比rと式(IV)に係る組成比sは、それぞれ、2〜15モル%が好ましく、5〜12モル%がより好ましい。rとsは、等モル量であるのが好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr1(またはAr2)が2種以上の2価の芳香族基を表すとは、式(III)(または(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(または式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(III)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルのなかでも、式(III)および式(IV)で表される繰返し単位に係るAr1およびAr2が、互いに独立して、式(1)〜(4)で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含む全芳香族液晶ポリエステルが、さらに好適に使用される。
これらの中でも、式(III)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(4)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体として、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸ならびにこれらのエステル形成性誘導体を用いることが、得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
また、式(IV)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(3)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体として、ハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルならびにこれらのエステル形成性誘導体を用いることが、重合時の反応性および得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr1(またはAr2)が2種以上の芳香族基を含むとは、式(III)(または(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(または式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルにおいて繰返し単位の組成比の合計[p+q+r+s]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲において、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルを構成する他の繰返し単位を与える単量体としては、他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール、芳香族メルカプトフェノールおよびこれらの組合せなどが挙げられる。
他の芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、例えば、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらの他の単量体成分から与えられる繰返し単位の組成比の合計は、繰返し単位全体において、10モル%以下であるのが好ましい。
以下、本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法について説明する。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、前記の単量体の組合せからなるエステル結合やアミド結合などを形成させる公知の重縮合方法、例えば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを使用することができる。
溶融アシドリシス法とは、本発明で使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法に使用するのに好ましい方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、続いて反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(例えば、酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法の何れの場合においても、全芳香族液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2〜5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体のアセチル化物を反応に使用する方法が挙げられる。
単量体のアシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、全芳香族液晶ポリマーの製造時に単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法の何れの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタンなどの金属酸化物;三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);ルイス酸(たとえば三フッ化硼素)、ハロゲン化水素(たとえば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
触媒の使用割合は、単量体全量に対して通常1〜1000ppm、好ましくは2〜100ppmである。
このようにして重縮合反応されて得られた全芳香族液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
本発明の樹脂組成物における、全芳香族液晶ポリマーの含有量は、EVOH100質量部に対し、0.1〜100質量部であり、好ましくは1〜90質量部、より好ましくは3〜80質量部、さらに好ましくは5〜70質量部である。
全芳香族液晶ポリマーの含有量が0.1質量部未満であると、吸水性、機械強度および耐熱性の改善効果が十分に得られず、100質量部を超えると柔軟性が低下する傾向がある。
本発明の樹脂組成物は、ブレンドする全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度が260℃以下であるという特徴により、マトリクス樹脂であるEVOHに全芳香族液晶ポリマーが均一に分散し、かつ低温での溶融混錬によるブレンドが可能であるため、EVOHの熱分解が抑制され、吸水性が改善されるとともに、耐熱性、機械強度およびガスバリア性に優れた樹脂組成物となり得る。
したがって、ブレンドに際して相溶化剤は特に必要ないが、EVOHおよび全芳香族液晶ポリマーの相溶性をより向上させる目的で、相溶化剤を添加してもよい。相溶化剤を添加する場合、その添加量は、EVOH100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
本発明の樹脂組成物は、任意の成分として、さらに無機および/または有機充填材を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物が含有してもよい、無機および/または有機充填材の具体例としては、例えば、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
これらの中では、タルクが、物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
また、無機および/または有機充填材は、表面処理をされたものであってもよい。表面処理の方法としては、例えば、充填材表面に表面処理剤を吸着させる方法、混練する際に表面処理剤を添加する方法などが挙げられる。
表面処理剤としては、反応性カップリング剤であるシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ボラン系カップリング剤など、潤滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などが挙げられる。
無機および/または有機充填材を配合する場合の含有量は、EVOHおよび全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。
無機および/または有機充填材の含有量が1質量部未満であると、樹脂組成物について無機および/または有機充填材による機械強度および耐熱性の向上効果が得られにくく、150質量部を超えると流動性が低下する傾向がある。
本発明の樹脂組成物には、EVOHと全芳香族液晶ポリマーの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の添加剤や樹脂成分が添加されてもよい。
他の添加剤の具体例としては、例えば、滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜25のものをいう)など、離型改良剤であるポリシロキサン、フッ素樹脂など、着色剤である染料、顔料、カーボンブラックなど、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、造核剤であるタルク、有機リン酸塩、ソルビトール類など、アンチブロッキング剤、酸化防止剤であるリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など、耐候剤、熱安定剤、中和剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上を併用することができる。
樹脂組成物における他の添加剤の合計量は、EVOHと全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
他の添加剤の合計量が0.01質量部未満であると、添加剤の機能を実現しにくく、5質量部を超えると、樹脂組成物の成形加工の熱安定性が悪くなる傾向がある。
また、上記他の添加剤のうち、滑剤、離型剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を使用する場合は、樹脂組成物を作製する際に添加してもよいし、成形する際に樹脂組成物のペレット表面に付着させてもよい。
他の樹脂成分の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどや、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂成分は単独でまたは2種以上を併用してもよい。
他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、EVOHと全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、0.1〜80質量部であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、EVOHおよび全芳香族液晶ポリマー、ならびに、相溶化剤、無機および/または有機充填材、他の添加剤、他の樹脂成分を混合し、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度近傍から結晶融解温度+40℃の温度条件で溶融混練して得ることができる。
他の樹脂成分および他の添加剤は、予めEVOHまたは全芳香族液晶ポリマーのいずれかに配合しておいてもよく、あるいはEVOHおよび全芳香族液晶ポリマーを溶融混練して得られた樹脂組成物を成形する際に配合してもよい。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO 75に準拠した荷重たわみ温度(荷重0.46MPa)が、好ましくは85℃以上、より好ましくは85〜250℃、さらに好ましくは90〜225℃、よりさらに好ましくは95〜200℃であって、耐熱性が優れるという利点を有する。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO 527−1に準拠した引張強度が、55MPa以上、好ましくは58〜160MPa、より好ましくは60〜130MPaである。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO 178に準拠した曲げ強度が、85MPa以上、好ましくは90〜190MPa、より好ましくは95〜170MPaである。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO 178に準拠した曲げ弾性率が、10.0GPa以下、好ましくは3.3〜9.0GPa、より好ましくは3.4〜8.0GPaである。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO 179に準拠したシャルピー衝撃強度(23℃)が1.0kJ/m2以上、好ましくは1.0〜100kJ/m2、より好ましくは1.1〜80kJ/m2、さらに好ましくは1.2〜60kJ/m2である。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてJIS K7129−Bに準拠した100μmのフィルムにおける水蒸気透過度が好ましくは20g/m2・24h以下、より好ましくは10g/m2・24h以下、さらに好ましくは8g/m2・24h以下、特に好ましくは7g/m2・24h以下であって、通常は0.01g/m2・24h以上を示し、水蒸気透過度が小さくガスバリア性に優れるという利点を有する。
本発明の樹脂組成物は、これから構成される成形品についてJIS K7126−2に準拠した100μmのフィルムにおける酸素ガス透過度が好ましくは5.0cm3/m2・24h・atm以下、より好ましくは3.0cm3/m2・24h・atm以下、特に好ましくは1.3cm3/m2・24h・atm以下であって、通常は0.01cm3/m2・24h・atm以上を示し、高湿度条件下での酸素ガス透過度が小さくガスバリア性に優れるという利点を有する。
本発明の樹脂組成物から構成される成形品を得る方法としては、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形または射出圧縮成形などの公知の成形方法を挙げることができる。
この中でも、成形の容易さ、量産性、コストなどの観点から、射出成形、押出成形またはブロー成形が好適である。
また、全芳香族液晶ポリマー(結晶融解温度260℃以下)の結晶融解温度から結晶融解温度+50℃の範囲内の温度条件で本発明の樹脂組成物を成形する成形方法が、より好適である。
本発明の樹脂組成物を、上記温度条件下で成形することによって、EVOH中に全芳香族液晶ポリマーが均一に分散され、機械強度(引張強度、曲げ強度、シャルピー衝撃強度)および耐熱性(荷重たわみ温度)に優れる成形品を得ることができる。
射出成形を採用する場合、射出成形に用いられる射出成形機は、特に制限されないが、例えば、直圧式(油圧式)、トグル式などの型締め機構方式のいずれであってもよく、スクリュー方式(スクリュープリプラ式、インラインスクリュー式など)、プランジャ方式(シングルプランジャ式、プランジャプリプラ式など)などの射出方式のいずれであってもよい。
シリンダーの方向についても、横形および縦形など、いずれの方式であってもよく、油圧式、電動式あるいは両者を組合せたタイプなどの駆動機構のいずれであってもよい。
射出条件は、射出成形機の大きさ、金型の形状、取り個数により、最適な条件を適宜選択することができる。ゲート位置やゲート数は、射出成形品の種類に応じて選択できる。
射出速度は、特に限定されないが、通常は300mm/sec以下である。
金型温度は、好ましくは25〜100℃、より好ましくは30〜85℃である。
金型温度が25℃未満であると、ショートショットになりやすく、100℃を超えると成形サイクルが長くなる。
なお、射出成形方法には、上記の通常の射出成形方法のほか、例えば、インサート成形、射出圧縮成形、2色成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形などを応用した射出成形方法も含まれる。
押出成形またはブロー成形を採用する場合、フィルム、シート、容器、パイプ、繊維等に加工することができ、単層の成形体としてもよく、機能向上やコストダウンの観点から他の樹脂組成物からなる層を有する多層の成形体としてもよい。フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。また、得られた成形体は、必要に応じて、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等の二次加工成形を行って、目的とする成形体にしてもよい。
本発明の樹脂組成物から構成される成形品としては、特に限定されないが、例えば、機械部品、電気・電子部品、建築・土木部材、家庭・事務用品、家具用部品および日用品などが挙げられるが、特に容器としての成形品が有用である。
電気・電子部品としては、例えば、コピー機、パソコン、プリンター、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや、内部部品(コネクタ、スイッチ、ICやLEDのハウジング、ソケット、リレー、抵抗器、コンデンサー、キャパシター、コイルボビンなど)が挙げられる。
建築部品としては、例えば、カーテン部品、ブラインド部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具などが挙げられる。
機械部品としては、例えば、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、カム、ラチェット、ローラーなどが挙げられる。
日用品としては、例えば、各種カトラリー、各種トイレタリー部品、プリペイドカード、家庭用ラップの鋸刃、食品トレイケース、食品用カップなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物から構成される容器は、米製品、加工食品、惣菜、漬物類、和菓子、洋菓子、ジュース、酒類、調味料などの飲食品、整髪料、ファンデーション、香水などの化粧品、手洗い用洗剤、洗顔用洗剤、台所用洗剤、洗濯用洗剤、シャンプー、リンスなどの各種洗剤など、様々な内容物を保存する容器として使用可能である。これらの中でも、特に飲食品を保存する容器として有用である。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中の結晶融解温度、荷重たわみ温度(DTUL)、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、水蒸気透過度、吸水率および酸素ガス透過度は、以下に記載の方法で測定した。
〈結晶融解温度〉
セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量計(DSC)Exstar6000を用いて測定を行った。全芳香族液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件下で測定し、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20〜50℃高い温度で10分間保持する。次いで20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度とする。
〈荷重たわみ温度(DTUL)〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、シリンダー設定温度を230℃、金型温度50℃で、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを用いてISO 75に準拠し、荷重0.46MPa、昇温速度2℃/分で測定した。
〈引張強度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、シリンダー設定温度を230℃、金型温度50℃で射出成形し、厚み4.0mmのタイプA1のダンベル試験片を作製した。INSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、標線間50mmの接触式の伸び計を使用し、試験速度5mm/分、チャック間距離115mmの条件で、ISO 527−1に準拠して測定した。
〈曲げ強度、曲げ弾性率〉
荷重たわみ温度の測定に用いた試験片と同じ試験片を用いて、ISO 178に準拠して測定した。
〈シャルピー衝撃強度〉
荷重たわみ温度の測定に用いた試験片と同じ試験片を用いて、ISO 179に準拠し、デジタル衝撃試験機として (株)東洋精機製作所製G−UBを用いて、ノッチのタイプはA(ノッチ加工後の残り幅は8.0mm)、ハンマーの秤量は4wJ、打撃方向はエッジワイズの条件において測定した。
〈水蒸気透過度〉
Tダイ法にて、100μm厚みのフィルムを作成し、これを用いてJIS K7129−Bに準拠し、温度40℃、湿度90%における水蒸気透過度試験を行った。
〈吸水率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、シリンダー設定温度を230℃で、直径50.0mm、厚さ3.0mmの円板状試験片を成形し、これを用いてISO 62に準拠し、23℃、50%の恒温恒湿度下に48時間置いた後、23℃の水中に24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化より吸水率を算出した。
〈酸素ガス透過度〉
Tダイ法にて、100μm厚みのフィルムを作成し、これを用いてJIS K7126−2に準拠し、温度20℃、湿度90%における酸素ガス透過度試験を行った。
実施例において、下記の略号は以下の化合物を表す。
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂
LCP:全芳香族液晶ポリマー
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
BP:4,4’−ジヒドロキシビフェニル
TPA:テレフタル酸
(EVOH)
EVOHとして以下のものを使用した。
(株)クラレ製エバール(登録商標)E105B(エチレン含有44モル%、MFR5.5g/10分)
(全芳香族液晶ポリマーの合成)
[合成例1(LCP−1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:276.2g(40モル%)、BON6:376.4g(40モル%)、HQ:55.1g(10モル%)およびTPA:83.1g(10モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間かけて昇温し、同温にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温にて30分間保持した。その後、3時間かけて335℃まで昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により全芳香族液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は218℃であった。
[合成例2(LCP−2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:323.2g(36モル%)、BON6:48.9g(4モル%)、TPA:323.9g(30モル%)、BP:169.4g(14モル%)およびHQ:114.5g(16モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間かけて昇温し、145℃で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により全芳香族液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は335℃であった。
[実施例1〜3および比較例1〜3]
EVOHおよびLCP−1〜2を、表1に示す含有量となるように配合して、2軸押出機(日本製鋼(株)製TEX−30)を用いて、シリンダー温度をLCPの結晶融解温度+10〜+30℃となるようにして溶融混練して、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用いて上記の方法により、荷重たわみ温度、引張強度、曲げ強度、シャルピー衝撃強度、水蒸気透過度、吸水率および酸素ガス透過度を測定した。結果を表1に示す。
各実施例における樹脂組成物(実施例1〜3)はいずれも、荷重たわみ温度(DTUL)が98〜147℃、引張強度が62〜119MPa、曲げ強度が98〜134MPa、シャルピー衝撃強度が2.0〜2.8kJ/m2、水蒸気透過度が4.3〜6.5g/m2・24h、吸水率が0.07〜0.56%、酸素ガス透過度が0.9〜1.2cm3/m2・24h・atmであり、耐熱性、機械強度、水蒸気バリア性、低吸水性、および高湿度条件下での酸素ガスバリア性に優れるものであった。
これに対して、LCPを含有しない比較例1における樹脂組成物は、耐熱性、機械強度、水蒸気バリア性、吸水性、酸素ガスバリア性に劣るものであった。
LCPの含有量が所定量より多い比較例2における樹脂組成物は、曲げ弾性率が高くなり、柔軟性が低下し、フィルム加工性が劣るものであった。
また、結晶融解温度の高いLCP(LCP−2)を使用した比較例3では、溶融混練時にEVOHが熱劣化して大量の分解ガスを発生させ、押出ストランドの吐出が安定しなかったため、樹脂組成物を得ることができなかった。