以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。本開示において述べる作用機序は推定を含んでおり、その正否は発明の範囲を制限するものではない。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本開示において「モノマー単位」とは、重合体の構成要素であって、単量体が重合してなる構成要素を意味する。
本開示において、「機械方向」とは、長尺状に製造される膜、フィルム又はシートにおいて長尺方向を意味し、「幅方向」とは、「機械方向」に直交する方向を意味する。本開示において、「機械方向」を「MD方向」ともいい、「幅方向」を「TD方向」ともいう。
本開示において、膜、フィルム又はシートの「主面」とは、膜、フィルム又はシートが備える外面のうち、厚さ方向に伸びる外面以外の広い外面を意味する。膜、フィルム又はシートは主面を2面備える。本開示において、膜、フィルム又はシートの「側面」とは、膜、フィルム又はシートが備える外面のうち、厚さ方向に伸びる外面をいう。
本開示において、濃縮膜に対して、被処理液が流入する側を「上流」といい、被処理液が流出する側を「下流」という。
<濃縮デバイス>
本開示は、生物学的粒子を濃縮するために用いる濃縮デバイスを提供する。本開示の濃縮デバイスは、生物学的粒子を含む可能性のある、水を含む液体である「被処理液」を処理対象とし、生物学的粒子の濃度が高められた「濃縮液」に濃縮する。
ここで、被処理液について、「水を含む」とは、水を溶媒ないし成分としていることを意味し、その含有率については特に限定されない。また、被処理液について、「生物学的粒子を含む」とは、生物学的粒子が、被処理液中で溶解されずに、浮遊、懸濁又は沈殿している状態をいう。
本開示でいう生物学的粒子(biological particle)には、生物が有する粒子、生物が放出する粒子、生物に寄生する粒子、微小な生物、脂質を膜とする小胞、これらの断片が概念として含まれる。具体的には、ウイルス、ウイルスの一部(例えば、エンベロープを有するウイルスからエンベロープを除去した粒子)、バクテリオファージ、細菌、芽胞、胞子、菌類、カビ、酵母、シスト、原生動物、単細胞性藻類、植物細胞、動物細胞、培養細胞、ハイブリドーマ、腫瘍細胞、血液細胞、血小板、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア、小胞)、エクソソーム、アポトーシス小体、脂質二重層の粒子、脂質一重層の粒子、リポソーム、タンパク質の凝集体、これらの断片が含まれる。また、本開示でいう生物学的粒子には、天然物のみならず、人工物も含まれる。
本開示に係る生物学的粒子50の濃縮デバイス10は、図1の模式斜視図に示すように、内部空間を有するハウジング20に開口する入口21及び出口22を備えた外観を呈する。本図では、ハウジング20の形状として、高さに比べて直径が長い円柱形状の例を示している。より具体的には、図2の模式断面図に示すように、ハウジング20の内部空間において、上流側に上方へ突出した円筒状の入口21が開口し、下流側に下方へ突出した円筒状の出口22が開口している。ハウジング20の内部空間においては、濃縮膜30によって入口21と出口22とが隔てられている。ハウジング20内における、濃縮膜30の上流側の空間が、濃縮空間部24である。
換言すると、ハウジング20は、入口21及び出口22を有する。また、入口21と出口22との差圧により生物学的粒子50及び水を含む被処理液40が、入口21から注入されて出口22から排出されるようになっている。
更に、濃縮膜30は、ハウジング20内において入口21と出口22とを隔てるように設けられている。濃縮膜30は、生物学的粒子50が吸着しない親水性の多孔膜であり、入口21側の面から出口22側の面に、被処理液40から生物学的粒子50の濃度を減じた液体である排出液42を透過させる。
そして、濃縮空間部24は、ハウジング20内における濃縮膜30の上流側の空間(換言すると、ハウジング20の内壁部23と濃縮膜30の上流側の主面で区画される領域)である。濃縮空間部24は、濃縮膜30により被処理液40から生物学的粒子50の濃度を増した液体である濃縮液41を収容する。
本開示の濃縮デバイス10に注入される被処理液40としては、動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、喀痰);動物(特にヒト)の体液の希釈物;動物(特にヒト)の排泄物(例えば、糞便)を水に懸濁した液体組成物;動物(特にヒト)のうがい液;動物(特にヒト)の臓器、組織、粘膜、皮膚、搾過検体、スワブ等からの抽出物を含む緩衝液;魚貝類の組織抽出液;魚介類の養殖池から採取される水;植物の表面拭い液又は組織抽出液;土壌の抽出液;植物からの抽出液;食品からの抽出液;医薬品の原料液:などが挙げられる。
[生物学的粒子50の濃縮方法及び検出方法]
本開示の濃縮デバイス10による生物学的粒子50の濃縮方法は以下のとおりである。
この濃縮デバイス10に、図3に示すように、生物学的粒子50及び水を含む被処理液40が、入口21から供給される工程が実施される。
次に、入口21と出口22との間に差圧が付与されることにより、濃縮空間部24内に濃縮液を得る工程が実施される。
即ち、注入された被処理液40に対し、入口21と出口22との間に差圧が付与されることにより、図4に示すように、濃縮膜30を透過した排出液42が排出される。このときの差圧は、入口21から加圧すること、若しくは、出口22から減圧すること、又はその両方によって生じさせることができる。排出液42は、前述のように、被処理液40に対して生物学的粒子50の濃度が減じている。
そして、図5に示すように、濃縮空間部24内に、濃縮液41が得られる。濃縮液41は、前述のように、被処理液40に対して生物学的粒子50の濃度が増している。
次いで、濃縮液41を濃縮空間部24から回収する工程が実施される。即ち、図6に示すように、マイクロピペット等の適宜の道具又は装置を用いて、濃縮液41が濃縮空間部24から回収される。
最後に、回収された濃縮液41に含まれる生物学的粒子50を検出する工程が実施される。回収された濃縮液41からは、これに含まれる生物学的粒子50が、その種類や性状に応じた適宜の手段により検出される。例えば、生物学的粒子50の検出対象が核酸(DNA又はRNA)である場合には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティングなどが実施される。生物学的粒子50の検出対象がタンパク質である場合には、質量分析、ウエスタンブロッティング、イムノクロマトグラフィーなどが実施される。生物学的粒子50の検出対象が糖、脂質である場合には、質量分析などが実施される。
ハウジング20において、濃縮空間部24の体積は、被処理液40の性状や量に応じて適宜に定めることができるが、使用の便宜を考慮すれば、0.05〜5cm3であることが望ましい。
ハウジング20において、濃縮膜30が実際に被処理液40と接触する部分である、濾過面積は、被処理液40の性状や量に応じて適宜に定めることができるが、使用の便宜を考慮すれば、1〜20cm2であることが望ましい。
<ハウジング20の全体形状>
ハウジング20の全体形状は、図1に示すような円柱形状に限られず、様々な形状とすることができる。
例えば、三角柱形状(図7)、四角柱形状(図8)及びその他の多角柱形状、例えば六角柱形状(図9)とすることができる。いずれの場合も、角柱形状の両底面の一方(例えば上底面)に入口21が設けられ、他方(例えば下底面)に出口22が設けられる。
また、ハウジング20の全体形状を、図10に示すような球形状とすることもできる。この場合も、球形状の一方の極(例えば上端の極)に入口21が設けられ、他方の極(例えば下端の極)に出口22が設けられる。
ハウジング20の材質は特に限定されないが、合成樹脂、特にポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂が望ましい。ハウジング20の成形方法についても特に限定はないが、入口21を含む上流側の部材と、出口22を含む下流側の部材とをそれぞれ射出成形にて形成し、これらの部材の間に濃縮膜30を挟んだ状態で、接着、溶着、螺着等、適宜の方法で両方の部材を結合することにより、ハウジング20を形成することができる。
<入口21の形状>
入口21の形状は、図1に示すような上方へ突出した円筒形状に限らず、様々な形状とすることができる。
例えば、図11に示すように、上方へ突出した構造を取らずに、単純な孔として入口21を形成することができる。この場合、入口21には被処理液40の輸送管を挿入することができる。
また、図12に示すように、上方へ突出した円筒形状の入口21の外周面にネジ溝(雄ネジ)を設けることもできる。この場合、被処理液40の輸送路の末端にこのネジ溝と螺合する雌ネジを設けておくことで、輸送路と入口21との外れ止めとすることができる。
更に、図13に示すように、上方へ突出した円筒形状の入口21の先端外周面にルアーロックのオス側を設けることもできる。この場合、被処理液40の輸送路の末端にこのルアーロックのオス側と嵌合するメス側を設けておくことで、輸送路と入口21との外れ止めとすることができる。
また、図14に示すように、上面が開放したハウジング20を上方から閉塞する蓋状の形状に入口21を形成することもできる。
<出口22の形状>
出口22の形状は、図1に示すような下方へ突出した円筒形状に限らず、様々な形状とすることができる。
例えば、図15に示すように、入口21とは異なる管径とすることができる。
また、図16に示すように、下方へ突出した円筒形状の出口22の外周面にネジ溝(雄ネジ)を設けることもできる。この場合、排出液42の回収路の先端にこのネジ溝と螺合する雌ネジを設けておくことで、回収路と出口22との外れ止めとすることができる。
更に、図17に示すように、下方へ突出した円筒形状の出口22の先端外周面にルアーロックのオス側を設けることもできる。この場合、排出液42の回収路の先端にこのルアーロックのオス側と嵌合するメス側を設けておくことで、回収路と出口22との外れ止めとすることができる。
また、図18に示すように、下面が開放したハウジング20を下面から閉塞する円柱状の形状に出口22を形成することもできる。このとき、例えば、ハウジング20の内周面に雌ネジを形成し、出口22の外周面に雄ネジを形成し、これらを螺合させることで、ハウジング20と出口22との結合を強固にすることができる。
<入口21と出口22との位置関係>
なお、図19に示すように、入口21と出口22とを、円柱形状の側面に設けることもできる。この場合、入口21と出口22とは、互いに濃縮膜30で隔てられている必要があるため、円柱形状の高さ方向に異なる位置に設けられている必要がある。このような位置に設けられていれば、入口21と出口22とは、図19に示すように反対向きに設けられていてもよいし、図20に示すように同じ向きに設けられていてもよいし、更には図21に示すように互いに任意の平面角を隔てるように設けられていてもよい。
<ハウジング20の内部形状>
ハウジング20の内部も、図1及び図2に示すような形状に限らず、様々な形状とすることができる。
例えば、ハウジング20において、濃縮空間部24に面している内壁部23(図2参照)に、入口21から連続した誘導溝25が形成されているものとすることができる。例えば、図22の斜視図及び図23の断面図に示すように、濃縮空間部24に面している内壁部23(換言すると、内壁部23における上側の面)に、入口21から連続する放射状の溝としての誘導溝25を設けることができる。また、図24の斜視図及び図25の断面図に示すように、濃縮空間部24に面している内壁部23に、入口21から連続する螺旋状の溝としての誘導溝25を設けることができる。更に、図26の斜視図に示すように、図22に示すような放射状の溝と、この放射状の溝と交わる、入口21を中心とする同心円状の溝とを併せた誘導溝25を設けることもできる。このような誘導溝25を設けることで、入口21から注入された被処理液40が、誘導溝25の毛細管力によって濃縮空間部24へ誘導されやすくなる。
一方、ハウジング20を、図27の斜視図に示すように入口21に向かって先細となるテーパー形状に形成することで、図28の断面図に示すように、ハウジング20において、濃縮空間部24に面している内壁部23が、入口21から濃縮膜30に向かって径が漸増する形状とすることができる。また、ハウジング20を、図29の斜視図に示すように入口21に向かって凸な半球状に形成することによっても、図30の断面図に示すように、ハウジング20において、濃縮空間部24に面している内壁部23が、入口21から濃縮膜30に向かって径が漸増する形状とすることができる。ハウジング20をこのような形状とすることで、入口から注入された被処理液40を、内壁部23の傾斜を伝わせて濃縮膜30へと誘導することができる。このとき、前記図22〜図26に示したような誘導溝25を内壁部23に設けると更に効果的に被処理液40を誘導することができる。
<濃縮液41の回収方法>
濃縮液41は、前記した図6に示すように、例えば、マイクロピペットのような適宜の道具の先端を入口21から挿入して、濃縮空間部24から回収することができる。
また、図31に示すように、ハウジング20の上流側に折除片14を形成することができる。この折除片14を折り取ると、ハウジング20の上流側に小孔が出現する。そして、濃縮デバイス10による被処理液40の濃縮が終了した後で、この小孔に、例えば、マイクロピペットのような適宜の道具の先端を挿入して、濃縮空間部24から濃縮液41を回収することができる。
更に、濃縮デバイス10による被処理液40の濃縮が終了した後で、図32に示すように、入口21にシリンジ60を装着し、プランジャー61を吸引することで、図33に示すように、シリンジ60内に濃縮液41を回収することができる。
<濃縮膜>
濃縮膜30は、被処理液40に含まれる生物学的粒子50の種類及び性状により適宜の材質及び形状のものが使用される。生物学的粒子50が、例えば、脂質二重層で形成される粒子(例えば、ウイルス、細菌又はエクソソーム)である場合、濃縮膜30は、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する親水性樹脂と、を備えた親水性複合多孔質膜を含むことが望ましい。なお、本開示の濃縮膜30において、「生物学的粒子が吸着しない親水性の多孔膜」とは、生物学的粒子50が吸着せず、かつ、親水性を有する多孔膜を意味する。「生物学的粒子が吸着しない親水性」という性状は、対象となる生物学的粒子50の性状との兼ね合いもあるため、特に限定されるものではないが、濃縮処理を実施した場合に濃縮率が100%を超える場合は濃縮が行われていることから、そのような多孔膜は生物学的粒子50が吸着しない親水性を有していると言える。例えば濃縮膜30が後述する親水性樹脂を含有している場合や、濃縮膜30の水の接触角が90度以下である場合は、「親水性」を有していると言えるが、本開示における濃縮膜30はこれに限定されるものではない。
本開示の濃縮膜30が濃縮対象とする生物学的粒子50の大きさに制限はない。生物学的粒子50の直径又は長軸長は、例えば、1nm以上であり、5nm以上であり、10nm以上であり、又は20nm以上であり、かつ、例えば、100μm以下であり、50μm以下であり、1000nm以下であり、又は800nm以下である。
本開示の濃縮膜30は、親水性複合多孔質膜以外のほかの部材を含んでいてもよい。親水性複合多孔質膜以外のほかの部材としては、親水性複合多孔質膜の主面又は側面の一部又は全部に接して配置されたシート状の補強部材;濃縮膜30を濃縮デバイス10に搭載するためのガイド部材;などが挙げられる。
本開示の濃縮膜30が備える親水性複合多孔質膜は、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面が親水性樹脂により被覆されていればよく、両方の主面が親水性樹脂により被覆されていることが好ましい。あるいは、濃縮膜30としては、親水性樹脂を含む単層構造の多孔質膜であっても良い。
親水性複合多孔質膜における親水性樹脂による多孔質基材の主面の被覆形態としては、例えば、多孔質基材の主面の一部若しくは全部を親水性樹脂が被覆している形態、多孔質基材の開口の一部若しくは全部を親水性樹脂が充填している形態、又は多孔質基材の主面の一部を親水性樹脂が被覆し開口の一部を親水性樹脂が充填している形態が挙げられる。多孔質基材の開口を親水性樹脂が充填している場合、当該親水性樹脂は、多孔質構造を形成していることが好ましい。ここで多孔質構造とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結されており、一方の側から他方の側へと気体あるいは液体が通過可能となっている構造を意味する。
親水性複合多孔質膜における親水性樹脂による多孔質基材の空孔内表面の被覆形態としては、例えば、多孔質基材の空孔の壁面の一部若しくは全部を親水性樹脂が被覆している形態、多孔質基材の空孔の一部若しくは全部を親水性樹脂が充填している形態、又は多孔質基材の空孔の壁面の一部を親水性樹脂が被覆し空孔の一部を親水性樹脂が充填している形態が挙げられる。多孔質基材の空孔を親水性樹脂が充填している場合、当該親水性樹脂は、多孔質構造を形成していることが好ましい。ここで多孔質構造とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結されており、一方の側から他方の側へと気体あるいは液体が通過可能となっている構造を意味する。
本開示の濃縮膜30を用いた生物学的粒子50の濃縮は、親水性複合多孔質膜の一方の主面から他方の主面へと被処理液40を通過させた際に、被処理液40に含まれる生物学的粒子50の一部又は全部が親水性複合多孔質膜を通過せず、親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面、及び空孔内の少なくともいずれかの部位における被処理液40に残留することによって行われる。濃縮処理前の被処理液40と、濃縮処理後に親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面、及び空孔内の少なくともいずれかの部位から回収される被処理液40とを比較して、後者に含まれる生物学的粒子50の濃度が高ければ、生物学的粒子50の濃縮が行われたといえる。本開示の濃縮膜30によって実現される生物学的粒子50の濃縮率(下記式1参照)は、100%超であり、200%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。
濃縮率=(濃縮処理後に親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面、及び空孔内の少なくともいずれかの部位から回収される被処理液の生物学的粒子濃度)÷(濃縮処理前の被処理液の生物学的粒子濃度)×100・・・(式1)
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、本開示の濃縮膜30が備える親水性複合多孔質膜が、上流側の主面と空孔内表面とに親水性樹脂を有することによって、親水性複合多孔質膜の上流側の主面、及び空孔内の少なくともいずれかに残留した生物学的粒子50が回収しやすくなり、生物学的粒子50の濃縮率が向上すると推測される。
[多孔質基材]
本開示において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。多孔質基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;などが挙げられる。多孔質基材としては、本開示の濃縮膜30の薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
多孔質基材の材料は、有機材料又は無機材料のいずれでもよい。
多孔質基材は、親水性又は疎水性のいずれでもよい。本開示の濃縮膜30は、多孔質基材が疎水性であっても、親水性樹脂が多孔質基材を被覆していることによって親水性を示す。
多孔質基材の一つの実施形態として、樹脂からなる微多孔膜が挙げられる。微多孔膜を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱樹脂;などが挙げられる。
多孔質基材の一つの実施形態として、繊維状物からなる多孔性シートが挙げられ、例えば、不織布、紙が挙げられる。多孔性シートを構成する繊維状物としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの繊維状物;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの繊維状物;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱樹脂の繊維状物;セルロース;などが挙げられる。
多孔質基材の表面には、多孔質基材を親水性樹脂で被覆するために用いる塗工液の濡れ性を向上させる目的で、各種の表面処理を施してもよい。多孔質基材の表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
[多孔質基材の物性]
多孔質基材の厚さは、多孔質基材の強度を高める観点、及び、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。多孔質基材の厚さは、被処理液40の処理時間を短くする観点から、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。多孔質基材の厚さの測定方法は、親水性複合多孔質膜の厚さtの測定方法と同じである。
多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、被処理液40の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、0.8μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.6μm以下が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、パームポロメータを用いてASTM E1294−89に規定するハーフドライ法にて求める値であり、測定方法の詳細は、親水性複合多孔質膜の平均孔径xに係る測定方法と同じである。
多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、被処理液40の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、0.8μm超が好ましく、0.9μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、3μm以下が好ましく、2.8μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、パームポロメータを用いてASTM F316−86、JIS K3832に規定するバブルポイント法にて求める値であり、測定方法の詳細は、親水性複合多孔質膜のバブルポイント細孔径yに係る測定方法と同じである。
多孔質基材の水流量(mL/(min・cm2・MPa))は、被処理液40の処理時間を短くする観点から、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。多孔質基材の水流量(mL/(min・cm2・MPa))は、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が更に好ましい。多孔質基材の水流量の測定方法は、親水性複合多孔質膜の水流量fの測定方法と同じである。ただし、多孔質基材が疎水性の場合は、エタノールに浸漬したのち室温下で乾燥させた多孔質基材を試料とし、透液セル上にセットした試料を少量(0.5mL)のエタノールで湿潤させた後に測定を行う。
多孔質基材は、片面又は両面において、表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。また、多孔質基材は、片面又は両面において、表面粗さRaが0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。多孔質基材の表面粗さRaは、粗さ曲線の算術平均高さであり、測定方法の詳細は、親水性複合多孔質膜の表面粗さRaに係る測定方法と同じである。
多孔質基材の単位厚さ当たりのガーレ値(秒/100mL・μm)は、例えば、0.001〜5であり、望ましくは0.01〜3であり、より望ましくは0.05〜1である。多孔質基材のガーレ値は、JIS P8117:2009に従って測定した値である。
多孔質基材の空孔率は、例えば、70%〜90%であり、望ましくは72%〜89%であり、より望ましくは74%〜87%である。多孔質基材の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、多孔質基材の構成材料1、構成材料2、構成材料3、…、構成材料nについて、各構成材料の質量がW1、W2、W3、…、Wn(g/cm2)であり、各構成材料の真密度がd1、d2、d3、…、dn(g/cm3)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は下記の数式により求められる。
多孔質基材のBET比表面積は、例えば、1m2/g〜40m2/gであり、望ましくは2m2/g〜30m2/gであり、より望ましくは3m2/g〜20m2/gである。多孔質基材のBET比表面積は、マイクロトラック・ベル株式会社の比表面積測定装置(型式:BELSORP−mini)を用い、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法にて、設定相対圧:1.0×10−3〜0.35の吸着等温線を測定し、BET法で解析して求めた値である。
[ポリオレフィン微多孔膜]
多孔質基材の一つの実施形態としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(本開示においてポリオレフィン微多孔膜という。)が望ましい。ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみであるポリエチレン微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、10万〜500万である。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜の成形がしやすい。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、ポリオレフィン組成物(本開示において、2種以上のポリオレフィンを含むポリオレフィンの混合物を意味し、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみである場合はポリエチレン組成物という。)を含む微多孔膜が挙げられる。ポリオレフィン組成物は、延伸時のフィブリル化に伴ってネットワーク構造を形成し、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を増加させる効用がある。
ポリオレフィン組成物としては、重量平均分子量が9×105以上である超高分子量ポリエチレンを、ポリオレフィンの総量に対して、5質量%〜40質量%含むポリオレフィン組成物が好ましく、10質量%〜35質量%含むポリオレフィン組成物がより好ましく、15質量%〜30質量%含むポリオレフィン組成物が更に好ましい。
ポリオレフィン組成物は、重量平均分子量が9×105以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が2×105〜8×105で密度が920kg/m3〜960kg/m3である高密度ポリエチレンとが、質量比5:95〜40:60(より好ましくは10:90〜35:65、更に好ましくは15:85〜30:70)で混合したポリオレフィン組成物であることが好ましい。
ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン全体の重量平均分子量が2×105〜2×106であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンの重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(システム:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6−HT及びGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行うことで得られる。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、少なくともポリエチレンとポリプロピレンとが混合して含まれているポリオレフィン微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含有し、少なくとも1層はポリプロピレンを含有するポリオレフィン微多孔膜が挙げられる。
本開示の濃縮膜30が備える親水性複合多孔質膜の多孔質基材がポリオレフィン微多孔膜(詳細は後述する。)である場合、当該濃縮膜30が濃縮対象とする生物学的粒子50はナノオーダーの大きさであることが適切である。この場合、生物学的粒子50の直径又は長軸長は、例えば、10nm以上であり、20nm以上であり、例えば、1000nm以下であり、800nm以下であり、500nm以下である。
本開示の濃縮膜30が備える親水性複合多孔質膜の多孔質基材がポリオレフィン微多孔膜である場合、当該濃縮膜30は、ウイルス、細菌又はエクソソームの濃縮に好適である。
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
ポリオレフィン微多孔膜は、例えば、下記の工程(I)〜(IV)を含む製造方法で製造することができる。
工程(I):ポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程。
工程(II):前記溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程。
工程(III):前記第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し、かつ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程。
工程(IV):前記第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程。
工程(I)は、ポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程である。前記溶液は、好ましくは熱可逆的ゾルゲル溶液であり、ポリオレフィン組成物を溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾルゲル溶液を調製する。大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤としてはポリオレフィンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されない。前記揮発性の溶剤としては、例えば、テトラリン(206℃〜208℃)、エチレングリコール(197.3℃)、デカリン(デカヒドロナフタレン、187℃〜196℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃〜144℃)、ジエチルトリアミン(107℃)、エチレンジアミン(116℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、ヘキサン(69℃)等が挙げられ、デカリン又はキシレンが好ましい(括弧内の温度は、大気圧における沸点である。)。前記揮発性の溶剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程(I)に使用するポリオレフィン組成物(本開示において、2種以上のポリオレフィンを含むポリオレフィンの混合物を意味し、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみである場合はポリエチレン組成物という。)は、ポリエチレンを含むことが好ましく、ポリエチレン組成物であることがより好ましい。
工程(I)において調製する溶液は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%〜40質量%であることが好ましく、15質量%〜35質量%であることがより好ましい。ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%以上であると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜工程において切断の発生を抑制することができ、また、ポリオレフィン微多孔膜の力学強度が高まりハンドリング性が向上する。ポリオレフィン組成物の濃度が40質量%以下であると、ポリオレフィン微多孔膜の空孔が形成されやすい。
工程(II)は、工程(I)で調製した溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程である。工程(II)は、例えば、ポリオレフィン組成物の融点乃至融点+65℃の温度範囲においてダイより押し出して押出物を得、次いで前記押出物を冷却して第一のゲル状成形物を得る。第一のゲル状成形物はシート状に賦形することが好ましい。冷却は、水又は有機溶媒への浸漬によって行ってもよいし、冷却された金属ロールへの接触によって行ってもよく、一般的には工程(I)に使用した揮発性の溶剤への浸漬によって行われる。
工程(III)は、第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し、かつ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程である。工程(III)の延伸工程は、二軸延伸が好ましく、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸でもよく、縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸でもよい。一次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、1.1倍〜3倍が好ましく、1.1倍〜2倍がより好ましい。一次延伸の延伸時の温度は75℃以下が好ましい。工程(III)の乾燥工程は第二のゲル状成形物が変形しない温度であれば特に制限なく実施されるが、60℃以下で行われることが好ましい。
工程(III)の延伸工程と乾燥工程とは、同時に行ってもよく、段階的に行ってもよい。例えば、予備乾燥しながら一次延伸し、次いで本乾燥を行ってもよいし、予備乾燥と本乾燥との間に一次延伸を行ってもよい。一次延伸は、乾燥を制御し、溶剤を好適な状態に残存させた状態でも行うことができる。
工程(IV)は、第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程である。工程(IV)の延伸工程は、二軸延伸が好ましい。工程(IV)の延伸工程は、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸;縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸;縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する工程;縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する工程;逐次二軸延伸した後に更に縦方向及び/又は横方向に1回又は複数回延伸する工程;のいずれでもよい。
二次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、好ましくは5倍〜90倍であり、より好ましくは10倍〜60倍である。二次延伸の延伸温度は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、90℃〜135℃が好ましく、90℃〜130℃がより好ましい。
工程(IV)に次いで熱固定処理を行ってもよい。熱固定温度は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、110℃〜160℃が好ましく、120℃〜150℃がより好ましい。
熱固定処理の後に更に、ポリオレフィン微多孔膜に残存している溶媒の抽出処理とアニール処理とを行ってもよい。残存溶媒の抽出処理は、例えば、熱固定処理後のシートを塩化メチレン浴に浸漬させて、塩化メチレンに残存溶媒を溶出させることにより行う。塩化メチレン浴に浸漬したポリオレフィン微多孔膜は、塩化メチレン浴から引き揚げた後、塩化メチレンを乾燥によって除去することが好ましい。アニール処理は、残存溶媒の抽出処理の後に、ポリオレフィン微多孔膜を例えば100℃〜140℃に加熱したローラー上を搬送することで行う。
工程(I)〜(IV)の各条件を制御することにより、膜厚t(μm)と平均孔径x(μm)との比t/xが50〜630であるポリオレフィン微多孔膜を製造することが可能になる。例えば、縦延伸倍率を小さくすることにより、比t/xを50以上に制御することができる。例えば、縦延伸倍率を大きくすることにより、比t/xを630以下に制御することができる。
[親水性樹脂]
親水性樹脂は、特に制限されるものではないが、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等の親水性基を有する樹脂が挙げられる。
親水性樹脂は、多孔質基材から脱落しにくい観点と生物学的粒子50の濃縮率の観点とから、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなり、かつ側鎖にヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂であることが好ましい。
親水性樹脂としては、ポリマーの主鎖に炭素原子のみならず酸素原子が含まれる樹脂(例えば、ポリエチレングルコール、セルロース等)も挙げられるが、ポリマーの主鎖に酸素原子が含まれる親水性樹脂は多孔質基材から比較的脱落しやすい。多孔質基材から脱落しにくい観点から、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなる樹脂が好ましく、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなり、かつ側鎖にヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂がより好ましい。
親水性樹脂は、ポリビニルアルコール、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂、アクリル・ビニルアルコール系樹脂、メタクリル・ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン・ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びポリスチレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含むことが好ましい。中でも、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂を含むことがより好ましい。
親水性樹脂としては、多孔質基材の表面に親水性モノマーをグラフト重合してなる親水性樹脂も挙げられる。この場合、親水性樹脂は多孔質基材の表面と直接的に化学結合した形態となる。多孔質基材の表面にグラフト重合する親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルスルホン酸等が挙げられる。親水性複合多孔質膜の製造性の観点からは、グラフト重合のように親水性樹脂が多孔質基材の表面と直接的に化学結合した形態よりも、塗工法等により親水性樹脂を多孔質基材の表面に付着させた形態(親水性樹脂が多孔質基材の表面と化学結合していない形態)の方が好ましい。
親水性樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
親水性樹脂としては、生物学的粒子50に対する刺激が少ない観点、及び、親水性複合多孔質膜の上流側の主面及び空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂が好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂を構成するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられる。オレフィンとしては、炭素数2〜6のオレフィンが好ましく、炭素数2〜6のα−オレフィンがより好ましく、炭素数2〜4のα−オレフィンが更に好ましく、エチレンが特に好ましい。オレフィン・ビニルアルコール系樹脂に含まれるオレフィン単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂は、オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーを構成単位に含んでいてもよい。オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマー;スチレン、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ−tert−ブトキシスチレン、パラ−tert−ブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル−α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;などが挙げられる。これらのモノマー単位は、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂に1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂は、オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーを構成単位に含んでいてもよいが、生物学的粒子50に対する刺激が少ない観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、オレフィン単位とビニルアルコール単位とを合わせた割合が、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。オレフィン・ビニルアルコール系樹脂としては、オレフィンとビニルアルコールとの二元共重合体が好ましく(ここで、オレフィンの好ましい態様は先述のとおりである。)、エチレンとビニルアルコールとの二元共重合体がより好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂におけるオレフィン単位の割合は、20モル%〜55モル%であることが好ましい。オレフィン単位の割合が20モル%以上であると、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂が水に溶解しにくい。この観点からは、オレフィン単位の割合は、23モル%以上がより好ましく、25モル%以上が更に好ましい。一方、オレフィン単位の割合が55モル%以下であると、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂の親水性がより高い。この観点からは、オレフィン単位の割合は、52モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂の市販品としては、日本合成化学工業社製「ソアノール」、株式会社クラレ製「エバール」などが挙げられる。
多孔質基材に対する親水性樹脂の付着量は、例えば、0.01g/m2〜5g/m2であり、0.02g/m2〜2g/m2であり、0.03g/m2〜1g/m2である。多孔質基材に対する親水性樹脂の付着量は、親水性複合多孔質膜の目付けWa(g/m2)から多孔質基材の目付けWb(g/m2)を減算した値(Wa−Wb)である。
[親水性複合多孔質膜の製造方法]
親水性複合多孔質膜の製造方法は、特に制限されない。一般的な製造方法としては、親水性樹脂を含む塗工液を多孔質基材に付与し、塗工液を乾燥させて多孔質基材を親水性樹脂で被覆する方法;多孔質基材に親水性モノマーをグラフト重合させて、多孔質基材を親水性樹脂で被覆する方法;が挙げられる。
親水性樹脂を含む塗工液は、親水性樹脂の融点以上の温度に昇温した溶媒に親水性樹脂を混合し攪拌することで、親水性樹脂を溶媒に溶解又は分散させて調製することができる。溶媒としては、親水性樹脂に対して良溶媒である溶媒であれば特に限定されないが、具体的には例えば、1−プロパノール水溶液、2−プロパノール水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド水溶液、ジメチルスルホキシド水溶液、エタノール水溶液などが挙げられる。これら水溶液における有機溶剤の割合は30質量%〜70質量%が好ましい。
親水性樹脂を含む塗工液を多孔質基材に付与する際の、塗工液における親水性樹脂の濃度は、0.01質量〜5質量%であることが好ましい。塗工液における親水性樹脂の濃度が0.01質量%以上であると、多孔質基材に親水性を効率よく付与することができる。この観点からは、塗工液における親水性樹脂の濃度は、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。塗工液における親水性樹脂の濃度が5質量%以下であると、製造された親水性複合多孔質膜における水流量が大きい。この観点からは、塗工液における親水性樹脂の濃度は3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
塗工液を多孔質基材に付与することは、公知の塗工方法によって行うことができる。塗工方法としては、例えば、浸漬法、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。塗工時の塗工液の温度を調整することで親水性樹脂の層を安定に形成することができる。塗工液の温度は特に限定されるものではないが、5℃〜40℃の範囲が好ましい。
塗工液を乾燥させる際の温度は、25℃〜100℃が好ましい。乾燥温度が25℃以上であると、乾燥に必要な時間を短縮することができる。この観点からは、乾燥濃度は、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。乾燥温度が100℃以下であると、多孔質基材の収縮が抑制される。この観点からは、乾燥温度は90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜は、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤、着色剤などを含んでいてもよい。
[濃縮膜30の物性]
濃縮膜30は、片面又は両面において、下記の測定条件によって測定する水の接触角が、90度以下であることが好ましく、前記水の接触角が小さいほど好ましい。濃縮膜30は、片面又は両面において、下記の測定条件によって水の接触角を測定しようとしたとき、水滴が膜内部に浸透して測定できない状態となるほどの親水性であることがより好ましい。
ここで水の接触角は、次の測定方法によって測定される値である。濃縮膜30を温度25℃かつ相対湿度60%の環境に24時間以上放置して調湿した後、同じ温度かつ湿度の環境下にて、濃縮膜30の表面に注射器で1μLのイオン交換水の水滴を落とし、全自動接触角計(協和界面科学社、型番Drop Master DM500)を用いてθ/2法により30秒後の接触角を測定する。
本開示の濃縮デバイス10で用いられる濃縮膜30は、多孔質基材と当該多孔質基材の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する親水性樹脂とを備えた親水性複合多孔質膜を含み、膜厚t(μm)とパームポロメータで測定した平均孔径x(μm)との比t/xが50〜630である。
濃縮膜30のt/xが50未満であると、平均孔径xの大きさの割に膜厚tが薄すぎる故、又は、膜厚tの厚さの割に平均孔径xが大きすぎる故、生物学的粒子50が濃縮膜30を通過しやすく、濃縮膜30の上流、上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかに残留する生物学的粒子50の残留率(以下、単に「生物学的粒子50の残留率」という。)が劣り、その結果、生物学的粒子50の濃縮率が劣る。この観点から、t/xは、50以上であり、好ましくは80以上であり、より好ましくは100以上である。
濃縮膜30のt/xが630超であると、平均孔径xの大きさの割に膜厚tが厚すぎる故、又は、膜厚tの厚さの割に平均孔径xが小さすぎる故、被処理液40が濃縮膜30を通過しにくく、被処理液40が濃縮膜30を通過するのに時間がかかる(つまり、被処理液40の濃縮処理に時間がかかる。)。この観点から、t/xは、600以下であり、好ましくは500以下であり、より好ましくは400以下である。
濃縮膜30の厚さtは、濃縮膜30の強度を高める観点、及び、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましく、30μm以上が更に好ましい。濃縮膜30の厚さtは、被処理液40が濃縮膜30を通過するのに要する時間(以下、被処理液40の処理時間という。)を短くする観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が更に好ましく、70μm以下が更に好ましい。
濃縮膜30の厚さtは、接触式の膜厚計にて20点を測定し、これを平均することで求める。
濃縮膜30のパームポロメータで測定した平均孔径xは、被処理液40の処理時間を短くする観点、及び、濃縮膜30の空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上が更に好ましい。濃縮膜30のパームポロメータで測定した平均孔径xは、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、0.5μm以下が好ましく、0.45μm以下がより好ましく、0.4μm以下が更に好ましい。
濃縮膜30のパームポロメータで測定した平均孔径xは、例えば、パームポロメータ(PMI社、型式:CFP−1200−AEXL)を用いて、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294−89に規定するハーフドライ法によって求める。濃縮膜30の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面をパームポロメータの加圧部に向けて設置し、測定を行う。
濃縮膜30のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yは、被処理液40の処理時間を短くする観点、及び、濃縮膜30の空孔内に残留した生物学的粒子50を回収しやすい観点から、0.8μm超が好ましく、0.9μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましい。濃縮膜30のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yは、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、3μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2.2μm以下が更に好ましい。
濃縮膜30のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yとは、例えば、パームポロメータ(PMI社、型式:CFP−1200−AEXL)を用いて、バブルポイント法(ASTM F316−86、JIS K3832)によって求める。ただし、試験時の浸液をPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)に変更して求める値である。濃縮膜30の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面をパームポロメータの加圧部に向けて設置し、測定を行う。
濃縮膜30のバブルポイント圧は、例えば、0.01MPa以上0.20MPa以下であり、望ましくは0.02MPa〜0.15MPaである。
本開示において濃縮膜30のバブルポイント圧は、ポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、JIS K3832:1990のバブルポイント試験方法に従って、ただし、試験時の液温を24±2℃に変更し、印加圧力を昇圧速度2kPa/秒で昇圧しながらバブルポイント試験を行って求める値である。濃縮膜30の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面を測定装置の加圧部に向けて設置し、測定を行う。
濃縮膜30の水流量f(mL/(min・cm2・MPa))は、被処理液40の処理時間を短くする観点から、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。濃縮膜30の水流量f(mL/(min・cm2・MPa))は、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が更に好ましい。
濃縮膜30の水流量fは、例えば、一定の透液面積(cm2)を有する透液セルにセットした試料に、一定の差圧(20kPa)で水100mLを透過させて、水100mLが透過するのに要する時間(sec)を測定し、単位換算して求める。濃縮膜30の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面から親水性樹脂で被覆されていない主面へ水を透過させて測定を行う。
濃縮膜30は、水流量f(mL/(min・cm2・MPa))とバブルポイント細孔径y(μm)との比f/yが、被処理液40の処理時間を短くする観点から、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましい。濃縮膜30は、上記の比f/yが、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、480以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることが更に好ましい。
濃縮膜30は、生物学的粒子50の回収率を高める観点から、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面において、表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。濃縮膜30は、生物学的粒子50の残留率を高める観点から、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面において、表面粗さRaが0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
濃縮膜30の表面粗さRaは、光波干渉式表面粗さ計(Zygo社、NewView5032)を用いて、非接触式で試料の表面を無作為に3箇所測定し、粗さ評価のための解析ソフトを用いて求める。
濃縮膜30の単位厚さ当たりのガーレ値(秒/100mL・μm)は、例えば、0.001〜5であり、望ましくは0.01〜3であり、より望ましくは0.05〜1である。濃縮膜30のガーレ値は、JIS P8117:2009に従って測定した値である。
濃縮膜30の空孔率は、例えば、70%〜90%であり、望ましくは72%〜89%であり、より望ましくは74%〜87%である。濃縮膜30の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、濃縮膜30の構成材料1、構成材料2、構成材料3、…、構成材料nについて、各構成材料の質量がW1、W2、W3、…、Wn(g/cm2)であり、各構成材料の真密度がd1、d2、d3、…、dn(g/cm3)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は下記の数式により求められる。
濃縮膜30は、ハンドリング性の観点から、カールしにくいことが好ましい。濃縮膜30のカールを抑制する観点から、濃縮膜30は両方の主面が親水性樹脂で被覆されていることが好ましい。
本開示の濃縮デバイス10は、上記のような濃縮膜30を用いているので、遠心法に比べて、生物学的粒子50を簡易に、かつ迅速に濃縮することができる。本開示の濃縮膜30を用いることで、従来の多孔質膜に比べて、生物学的粒子50を迅速に、かつ効率よく濃縮することができる。
[濃縮膜30の形状]
ハウジング20内における濃縮膜30の形状は、図34に示すように、平坦なものとすることができる。また、図35に示すように、一方向に折り畳んだ形状としてもよく、更には図36に示すように、周方向に折り畳んだ形状としてもよい。
また、図37に示すように、円形の濃縮膜30の辺縁に環状の枠部材33を装着し、上下に二分割されたハウジング20内に着脱可能に装着されることとしてもよい。
<生物学的粒子50の濃縮システム70>
上記したいずれかの生物学的粒子50の濃縮デバイス10に、入口21と出口22との間に差圧を付与する手段を組み合わせることで、生物学的粒子50の濃縮システム70が構成される。
例えば、図38に示す例では、濃縮デバイス10の入口21に、加圧手段71としてのシリンジ60が装着される。入口21とシリンジ60とは、例えばルアーロック(図13参照)によって確実に接続することが望ましい。シリンジ60内には、被処理液40が収容されている。一方、濃縮デバイス10の出口22の下方には、廃液タンク80が設置されている。濃縮デバイス10はシリンジとともに、図示しないスタンド等の適宜の装置にて支持される。この状態から、加圧手段71においてプランジャー61が手動又は適宜の装置により押圧されると、被処理液40は加圧され、ハウジング20内の濃縮膜30を通過して、出口22から排出液42として、下方に設置されている廃液タンク80へ落下する。
また、図39に示す例では、濃縮デバイス10の入口21に、加圧手段71としてのシリンジ60が装着される。入口21とシリンジ60とは、例えばルアーロック(図13参照)によって確実に接続することが望ましい。シリンジ60内には、被処理液40が収容されている。一方、濃縮デバイス10の出口22には、廃液タンク80が接続されている。出口22と廃液タンク80との間も、例えばルアーロック(図17参照)によって確実に接続することが望ましい。本例では、濃縮デバイス10はシリンジ60とともに、廃液タンク80によって自立している。この状態から、加圧手段71においてプランジャー61が手動又は適宜の装置により押圧されると、被処理液40は加圧され、ハウジング20内の濃縮膜30を通過して、出口22から排出液42として、下方に設置されている廃液タンク80へ流出する。ここで、出口22から廃液タンク80までは外界に対して密閉されているので、廃液タンク80に落下した排出液42の周囲への飛散が防止される。
更に、図40に示す例では、濃縮デバイス10の入口21に、加圧手段71としてのシリンジ60が装着される。入口21とシリンジ60とは、例えばルアーロック(図13参照)によって確実に接続することが望ましい。シリンジ60内には、被処理液40が収容されている。一方、濃縮デバイス10の出口22には、廃液タンク80が接続されている。出口22と廃液タンク80との間も、例えばルアーロック(図17参照)によって確実に接続することが望ましい。更に、濃縮デバイス10の全体は、被処理液40の飛散防止のため円筒状のガードユニット90で被覆されている。シリンジ60の先端部分から、濃縮デバイス10を含んで廃液タンク80の廃液タンク80には、内部の空気抜きのための排気口81が開口している。なお、排気口81の途中には、図示しない感染防止フィルタが装着されている。この状態から、加圧手段71においてプランジャー61が手動又は適宜の装置により押圧されると、被処理液40は加圧され、ハウジング20内の濃縮膜30を通過して、出口22から排出液42として、下方に設置されている廃液タンク80へ流出する。ここで、出口22から廃液タンク80までは外界に対して密閉されているので、廃液タンク80に落下した排出液42の飛散で周囲を汚染することが防止される。また、排気口81には感染防止フィルタが装着されているので、濃縮膜30を通過して排出液42とともに廃液タンク80に落下した生物学的粒子50の周囲への飛散が防止される。なお、この排気口81に、後述する減圧手段72を連結して、加圧手段71による押圧と減圧手段72による吸引とを同時に行ってもよい。
また、図41に示す例では、濃縮デバイス10の入口21に、被処理液40を収容するシリンジ60が装着される。入口21とシリンジ60とは、例えばルアーロック(図13参照)によって確実に接続することが望ましい。一方、濃縮デバイス10の出口22には、廃液タンク80が接続されている。出口22と廃液タンク80との間も、例えばルアーロック(図17参照)によって確実に接続することが望ましい。廃液タンク80には、内部の空気抜きのための排気口81が開口している。なお、排気口81の途中には、図示しない感染防止フィルタが装着されている。また、排気口81には減圧手段72が連結されている。この状態から、減圧手段72を作動させて廃液タンク80内の空気を吸引すると、ハウジング20内が減圧される。そして、シリンジ60内の被処理液40は、ハウジング20内へ吸引され、濃縮膜30を通過して、出口22から排出液42として、下方に設置されている廃液タンク80へ流出する。ここで、出口22から廃液タンク80までは外界に対して密閉されているので、廃液タンク80に落下した排出液42の飛散で周囲を汚染することが防止される。また、排気口81には感染防止フィルタが装着されているので、濃縮膜30を通過して排出液42とともに廃液タンク80に落下した生物学的粒子50による、減圧手段72の汚染が防止される。
なお、図42に示す例のように、1つの廃液タンク80に、図41に示すような、シリンジ60が装着された濃縮デバイス10の複数組を設置して、1基の減圧手段72によって複数検体の被処理液40を処理することも可能である。なお、排気口81及び減圧手段72についても図41に示す例と同様である。
更に、図43に示す例では、濃縮デバイス10の入口21に、被処理液40を収容するシリンジ60が装着される。入口21とシリンジ60とは、例えばルアーロック(図13参照)によって確実に接続することが望ましい。一方、濃縮デバイス10の出口22には、廃液タンク80が接続されている。出口22と廃液タンク80との間も、例えばルアーロック(図17参照)によって確実に接続することが望ましい。更に、本例では、出口22からは吸引口82が分岐し、その先は水道の蛇口による減圧手段72が接続されている。なお、吸引口82の途中には、図示しない感染防止フィルタが装着されている。この状態から、減圧手段72としての蛇口を開放すると、水流によりハウジング20内の空気が吸引口82の方へ吸引されることで、ハウジング20内が減圧される。そして、シリンジ60内の被処理液40は、ハウジング20内へ吸引され、濃縮膜30を通過して、出口22から排出液42として、下方に設置されている廃液タンク80へ流出する。ここで、出口22から廃液タンク80までは外界に対して密閉されているので、廃液タンク80に落下した排出液42の飛散で周囲を汚染することが防止される。また、吸引口82には感染防止フィルタが装着されているので、濃縮膜30を通過して排出液42とともに廃液タンク80に落下した生物学的粒子50による水流の汚染が防止される。
以下、実際に作製した濃縮膜のサンプルを用いた本開示の濃縮デバイスを更に具体的に説明する。以下のサンプルに示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の濃縮デバイスで用いられる濃縮膜の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
濃縮膜のサンプル1〜10の組成及び製造工程の概要を下記表1に掲げる。なお、サンプル11及び12ではポリエチレン微多孔膜を使用していないため、下記表1には掲げていない。
以下、各サンプルについて必要に応じ詳述する。
<親水性複合多孔質膜の作製>
[サンプル1]
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
重量平均分子量460万の超高分子量ポリエチレン(以下「UHMWPE」という。)3.75質量部と、重量平均分子量56万かつ密度950kg/m3の高密度ポリエチレン(以下「HDPE」という。)21.25質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。ポリマー濃度が25質量%となるようにポリエチレン組成物とデカリンとを混合しポリエチレン溶液を調製した。
上記のポリエチレン溶液を温度147℃でダイからシート状に押出し、次いで押出物を水温20℃の水浴中で冷却し、第一のゲル状シートを得た。
第一のゲル状シートを70℃の温度雰囲気下にて10分間予備乾燥し、次いで、MD方向に1.8倍で一次延伸をし、次いで、本乾燥を57℃の温度雰囲気下にて5分間行って、第二のゲル状シート(ベーステープ)を得た(第二のゲル状シート中の溶剤の残留量は1%未満とした。)。次いで二次延伸として、第二のゲル状シート(ベーステープ)をMD方向に温度90℃にて倍率4倍で延伸し、続いてTD方向に温度125℃にて倍率9倍で延伸し、その後直ちに144℃で熱処理(熱固定)を行った。
熱固定後のシートを、2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、シート中のデカリンを抽出した。シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去した。こうして、ポリエチレン微多孔膜を得た。
−ポリエチレン微多孔膜の親水化処理−
親水性樹脂として、エチレン・ビニルアルコール二元共重合体(日本合成化学工業製、ソアノールDC3203R、エチレン単位32モル%)(以下、EVOHという。)を用意した。EVOHの濃度が0.2質量%となるように、1−プロパノールと水の混合溶媒(1−プロパノール:水=3:2[体積比])にEVOHを溶解させ、塗工液を得た。
金属枠に固定したポリエチレン微多孔膜を塗工液に浸漬してポリエチレン微多孔膜の空孔内に塗工液を含浸させたのち引き上げた。次いで、ポリエチレン微多孔膜の両方の主面に付着している余分な塗工液を除去し、常温で2時間乾燥させた。次いで、ポリエチレン微多孔膜から金属枠を取り外した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両方の主面及び空孔内表面が親水性樹脂で被覆された親水性複合多孔質膜を得た。
[サンプル2〜7]
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
ポリエチレン溶液の組成又はポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外はサンプル1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。サンプル3〜6においては、シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をした。
−ポリエチレン微多孔膜の親水化処理−
サンプル1と同様にしてポリエチレン微多孔膜にEVOHを付与し、親水性複合多孔質膜を作製した。ただし、サンプル5〜6においては、塗工液のEVOH濃度を1質量%とした。
[サンプル8]
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
ポリエチレン溶液の組成及びポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外はサンプル1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。サンプル8においては、シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をした。
−ポリエチレン微多孔膜の親水化処理−
ポリエチレン微多孔膜の片面に、プラズマ処理(Nordson MARCH社製AP−300:出力150W、処理圧力400mTorr、ガス流量160sccm、処理時間45秒)を施し、親水性複合多孔質膜を得た。
[サンプル9]
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
ポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外はサンプル1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。
−ポリエチレン微多孔膜の親水化処理−
ポリエチレン微多孔膜の片面に、プラズマ処理(Nordson MARCH社製AP−300:出力150W、処理圧力400mTorr、ガス流量160sccm、処理時間45秒)を施し、親水性複合多孔質膜を得た。
[サンプル10]
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
ポリエチレン溶液の組成及びポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外はサンプル1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。
−ポリエチレン微多孔膜の親水化処理−
サンプル1と同様にしてポリエチレン微多孔膜にEVOHを付与し、親水性複合多孔質膜を作製した。
[サンプル11]
サンプル11として、シリンジフィルターであるmdi社製のSYNN0601MNXX104を用意した。このシリンジフィルターが備える多孔質膜は、ナイロン製である。
[サンプル12]
サンプル12として、シリンジフィルターであるMembrane Solutions社製のCA025022を用意した。このシリンジフィルターが備える多孔質膜は、酢酸セルロース製である。
<親水性複合多孔質膜の物性測定>
サンプル1〜12の各親水性複合多孔質膜を試料にして下記の物性測定を行った。なお、サンプル8及び9の各親水性複合多孔質膜については、プラズマ処理を施した主面の物性を測定した。また、サンプル11及び12のシリンジフィルターが備える各多孔質膜については、シリンジフィルターから多孔質膜を取り出し、シリンジフィルターの入口側の主面の物性を測定した。後述の表2にその各物性を示す。
[膜厚]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜の膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状の端子を用いた。測定圧は0.1Nとした。
[平均孔径x]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜の平均孔径x(μm)は、PMI社のパームポロメータ(型式:CFP−1200−AEXL)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294−89に規定するハーフドライ法により求めた。測定温度は25℃であり、測定圧力は0〜600kPaの範囲で変化させた。
[バブルポイント細孔径y]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜のバブルポイント細孔径y(μm)は、PMI社のパームポロメータ(型式:CFP−1200−AEXL)を用い、バブルポイント法(ASTM F316−86、JIS K3832)により求めた。ただし、試験時の浸液をPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)に変更して求める値である。測定温度は25℃であり、測定圧力は0〜600kPaの範囲で変化させた。
[バブルポイント圧]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜をエタノールに浸漬し、JIS K3832:1990のバブルポイント試験方法に従って、ただし、試験時の液温を24±2℃に変更し、印加圧力を昇圧速度2kPa/秒で昇圧しながらバブルポイント試験を行って求めた。
[水流量f]
親水性複合多孔質膜をMD方向10cm×TD方向10cmに切り出し、透液面積が17.34cm2であるステンレス製の円形透液セルにセットした。20kPaの差圧で水100mLを透過させて、水100mLが透過するのに要する時間(sec)を計測した。測定は室温24℃の温度雰囲気で行った。測定条件及び測定値を単位換算して水流量f(mL/(min・cm2・MPa))を求めた。
[表面粗さRa]
光波干渉式表面粗さ計(Zygo社、NewView5032)を用いて下記の条件での算術平均高さを測定し、表面粗さRaを求めた。
・対物レンズ:20倍ミラウ
・イメージズーム:1.0×
・FDA Res:Normal又はLow
・解析条件:Zygo社の標準アプリケーションであるStich.appを用いて非接触式で各サンプル3箇所のデータを取得した後、粗さ評価のためのオプションアプリケーションであるAdvance Texture.appを用いて表面粗さを解析した。
<濃縮膜の性能評価>
サンプル1〜12の各親水性複合多孔質膜又は多孔質膜を濃縮膜として用いて濃縮テストを行った。なお、サンプル8及び9の各親水性複合多孔質膜を濃縮膜として用いる際は、プラズマ処理を施した主面を上流側にした。サンプル11及び12のシリンジフィルターが備える各多孔質膜を濃縮膜として用いる際は、シリンジフィルターから多孔質膜を取り出し、シリンジフィルターの入口側の主面を上流側にした。表2にその結果を示す。濃縮テストの詳細は次のとおりである。
緩衝液にデング熱ウイルスを懸濁したウイルス懸濁液を用意した。ウイルス単位は、1×104FFU/mLとした。デング熱ウイルスは、エンベロープを有する直径40nm〜60nm程度の球状ウイルスである。
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜を直径13mmの円形にポンチで打ち抜き、フィルターホルダー(メルクミリポア製、スウィネクス35)のハウジング内に設置し、濃縮デバイスとした。このハウジングには、入口及び出口が設けられるとともに、ハウジング内には濃縮膜として用いた親水性複合多孔質膜又は多孔質膜の上流側に濃縮空間部が設けられている(図2参照)。10mL容量のシリンジ(テルモ製)にウイルス懸濁液10mLを採取した。そして、図38に示す例のように、シリンジの先端を濃縮デバイスに接続し、濃縮デバイスにウイルス懸濁液を通液した。プランジャーに印加する圧力は約30Nとした。当該圧力でプランジャーが移動しない場合は、印加圧力を徐々に上げて、プランジャーが移動する最低限の圧力を印加した。
[処理時間]
プランジャーを押し始めた時点からプランジャーを押し切った時点までの時間(秒)を計測した。
[濃縮率]
プランジャーを押し切った後、濃縮デバイスを上にしシリンジを下にした状態で、プランジャーを数回往復させ、濃縮膜の上流に残留したウイルス懸濁液を回収した。回収したウイルス懸濁液を試料にして、Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)を用いてトータルRNAを抽出した。ReverTra Ace(登録商標)(東洋紡)を用いて、抽出したトータルRNAを逆転写してcDNAを作製した。デング熱ウイルスRNAに特異的に結合するプライマー及びSYBR Green I(タカラバイオ)(SYBRは登録商標)を用いてqRT−PCRを行い、試料中のウイルスRNAを定量した。通液前のウイルス懸濁液のウイルスRNA濃度Caと、回収したウイルス懸濁液のウイルスRNA濃度Cbとから、濃縮率(%)=Cb÷Ca×100を算出した。
濃縮テストの結果を、下記表2に示す。
まず、サンプル1〜7におけるウイルス濃縮率については、以下のとおりであった。サンプル1では900%を上回った。サンプル2では600%を上回った。サンプル3では300%を上回った。サンプル4では400%を上回った。サンプル5では156%であった。サンプル6では700%を上回った。サンプル7では200%を上回った。以上より、サンプル1〜7の濃縮膜を用いた濃縮デバイスでは少なくとも150%を超えるウイルス濃縮率が認められたため、生物学的粒子の濃縮効果は顕著であった。
これに対し、サンプル8〜12におけるウイルス濃縮率については、以下のとおりであった。サンプル8では89%であった。サンプル9では66%であった。サンプル10では489%であった。サンプル11では98%であった。サンプル12では96%であった。以上より、サンプル8、9、11及び12の濃縮膜を用いた濃縮デバイスにおけるウイルス濃縮率はいずれも100%に満たず、生物学的粒子の濃縮効果は全く認められなかった。
サンプル1〜7における処理時間については、以下のとおりであった。サンプル1では40秒であった。サンプル2では34秒であった。サンプル3では72秒であった。サンプル4では26秒であった。サンプル5では60秒であった。サンプル6では71秒であった。サンプル7では96秒であった。以上より、サンプル1〜7の濃縮膜を用いた濃縮デバイスにおける処理時間は100秒以下であり、迅速に濃縮することができた。
サンプル8〜12における処理時間については、以下のとおりであった。サンプル8では47秒であった。サンプル9では30秒であった。サンプル10では162秒であった。サンプル11では132秒であった。サンプル12では126秒であった。以上より、サンプル10〜12の濃縮膜を用いた濃縮デバイスにおける処理時間は100秒を上回っており、迅速に濃縮することができなかった。
以上の結果から、サンプル1〜7の濃縮膜を用いた濃縮デバイスはいずれも、ウイルス濃縮率が150%を上回るとともに、処理時間は100秒以下と、生物学的粒子の高濃縮率と、迅速な処理時間とを兼ね備えており、実用上有用であると思われた。
一方、サンプル8〜12の濃縮膜を用いた濃縮デバイスでは、ウイルス濃縮率が150%を下回るか、若しくは処理時間が100秒を上回るか、又はその両方であり、生物学的粒子の高濃縮率と、迅速な処理時間とのいずれか、又は両方を欠いており、実用には適さないと思われた。