JP7351064B2 - 濃縮膜 - Google Patents

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Description

本発明は、生物学的粒子を濃縮するために用いる濃縮膜に関する。
特許文献1には、エチレン・ビニルアルコール共重合体を表面に被覆したポリエチレン多孔質中空糸膜の束を微生物の捕捉に用いることが開示されている。
特許文献2には、1.0μmを超えないバブルポイント孔径を備えたフィルタ膜を微生物の捕捉に用いることが開示されている。
特許文献3には、疎水性樹脂からなる高分子微多孔膜の表面に親水性モノマーを放射線グラフト反応させる、親水化された高分子微多孔膜の製造方法が開示されている。
特許文献4には、高分子微多孔膜に、1個のビニル基を有する親水性モノマーと2個以上のビニル基を有する架橋剤とをグラフト重合法によって共重合させて得られる親水性微多孔膜が開示されている。
特許文献5には、ポリオレフィンの多孔性中空糸基体がグリセリン脂肪酸エステルで被覆された多孔性中空糸膜を菌体の濃縮分離用膜として使用することが開示されている。
特許文献6には、粘度平均分子量が100万を超えるポリエチレン樹脂からなり、融解ピーク温度が145℃以上である結晶成分を少なくとも1種含み、気孔率が20~95%であり、平均孔径が0.01~10μmである微多孔膜が開示されている。
特許文献7には、ポリエチレン樹脂からなり、膜厚が25μmを超え1mm以下、平均孔径が0.01~10μm、構造ファクターFが1.5×10-2・m-1・Pa-2以上である高透過性微多孔膜を含む医用分離フィルタが開示されている。
特許文献8には、界面活性剤で事前処理した膜フィルタに生物学的生成物を含む流体を通して、該流体中に存在する凝集物を除去する方法が開示されている。
特許文献9には、被検液中の口腔内微生物を濾過膜上に捕捉し回収する方法が開示されている。
特許文献10には、ポリオレフィンからなる多孔質構造マトリックスと、該マトリックスの細孔表面を被覆するエチレン・ビニルアルコール系共重合体被覆層とからなる親水性複合多孔質膜が開示されている。
特開平11-090184号公報 特表2013-531236号公報 特開2009-183804号公報 特開2003-268152号公報 特公平06-057143号公報 特開2004-016930号公報 特開2002-265658号公報 特表2016-534748号公報 特開2006-71478号公報 特開昭61-271003号公報
例えば感染症の診断を目的に、生物から採取した検体からウイルス又は細菌の分離を行うことがある。ウイルス又は細菌の分離方法の一つに遠心法があるが、遠心法は、遠心力を変えて遠心操作を繰り返したり、密度勾配を有する緩衝液に試料をのせて遠心したり、超遠心を行ったりと、設備、手間及び時間のかかる方法である。ほかにウイルス又は細菌の分離方法の一つに多孔質膜を用いて分離する方法があるが、従来の手法は濾液からウイルス等を完全に除去することだけを目的としていたり、ウイルス等を膜に吸着させて逆洗処理によりウイルス等を取り出すといった複雑な手法となっていたりして、検体中のウイルス等を効率よく濃縮して回収するという観点は欠落していた。
本開示の実施形態は上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、生物学的粒子(biological particle)を簡易に迅速に効率よく濃縮する濃縮膜を提供することを目的とし、これを解決することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[1] 多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する親水性樹脂と、を備えた親水性複合多孔質膜であって、膜厚t(μm)とパームポロメータで測定した平均孔径x(μm)との比t/xが50~630である親水性複合多孔質膜、を含む、生物学的粒子を濃縮するために用いる濃縮膜。
[2] 前記親水性複合多孔質膜は、前記平均孔径xが0.1μm~0.5μmである、[1]に記載の濃縮膜。
[3] 前記親水性複合多孔質膜は、パームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yが0.8μm超3μm以下である、[1]又は[2]に記載の濃縮膜。
[4] 前記親水性複合多孔質膜は、水流量f(mL/(min・cm・MPa))と前記バブルポイント細孔径y(μm)との比f/yが100~480である、[1]~[3]のいずれかに記載の濃縮膜。
[5] 前記親水性複合多孔質膜は、膜厚tが10μm~150μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の濃縮膜。
[6] 前記親水性複合多孔質膜は、表面粗さRaが0.3μm~0.7μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の濃縮膜。
[7] 前記親水性樹脂が、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなり且つ側鎖にヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する親水性樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の濃縮膜。
[8] 前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂、アクリル・ビニルアルコール系樹脂、メタクリル・ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン・ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びポリスチレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の濃縮膜。
[9] 前記親水性樹脂がオレフィン・ビニルアルコール系樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の濃縮膜。
[10] 前記多孔質基材がポリオレフィン微多孔膜である、[1]~[9]のいずれかに記載の濃縮膜。
[11] 前記生物学的粒子は、大きさが10nm~1000nmである、[1]~[10]のいずれかに記載の濃縮膜。
[12]前記生物学的粒子が、ウイルス、細菌又はエクソソームである、[1]~[11]のいずれかに記載の濃縮膜。
本開示の実施形態によれば、生物学的粒子を簡易に迅速に効率よく濃縮する濃縮膜が提供される。
濃縮テストの器具及び操作を示した模式図である。
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。本開示において述べる作用機序は推定を含んでおり、その正否は発明の範囲を制限するものではない。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本開示において「モノマー単位」とは、重合体の構成要素であって、単量体が重合してなる構成要素を意味する。
本開示において、「機械方向」とは、長尺状に製造される膜、フィルム又はシートにおいて長尺方向を意味し、「幅方向」とは、「機械方向」に直交する方向を意味する。本開示において、「機械方向」を「MD方向」ともいい、「幅方向」を「TD方向」ともいう。
本開示において、膜、フィルム又はシートの「主面」とは、膜、フィルム又はシートが備える外面のうち、厚さ方向に伸びる外面以外の広い外面を意味する。膜、フィルム又はシートは主面を2面備える。本開示において、膜、フィルム又はシートの「側面」とは、膜、フィルム又はシートが備える外面のうち、厚さ方向に伸びる外面をいう。
本開示において、濃縮膜又は親水性複合多孔質膜に対して、液体組成物が流入する側を「上流」といい、液体組成物が流出する側を「下流」という。
<濃縮膜>
本開示は、生物学的粒子を濃縮するために用いる濃縮膜を提供する。本開示の濃縮膜は、生物学的粒子を含む可能性のある、水を含む液体組成物(以下、水性液体組成物という。)を処理対象とし、生物学的粒子の濃度が高められた水性液体組成物に濃縮する。
本開示でいう生物学的粒子(biological particle)には、生物が有する粒子、生物が放出する粒子、生物に寄生する粒子、微小な生物、脂質を膜とする小胞、これらの断片が含まれる。本開示でいう生物学的粒子には、ウイルス、ウイルスの一部(例えば、エンベロープを有するウイルスからエンベロープを除去した粒子)、バクテリオファージ、細菌、芽胞、胞子、菌類、カビ、酵母、シスト、原生動物、単細胞性藻類、植物細胞、動物細胞、培養細胞、ハイブリドーマ、腫瘍細胞、血液細胞、血小板、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア、小胞)、エクソソーム、アポトーシス小体、脂質二重層の粒子、脂質一重層の粒子、リポソーム、タンパク質の凝集体、これらの断片が含まれる。本開示でいう生物学的粒子には、人工物も含まれる。
本開示の濃縮膜が濃縮対象とする生物学的粒子の大きさに制限はない。生物学的粒子の直径又は長軸長は、例えば、1nm以上であり、5nm以上であり、10nm以上であり、20nm以上であり、例えば、100μm以下であり、50μm以下であり、1000nm以下であり、800nm以下である。
本開示の濃縮膜が備える親水性複合多孔質膜の多孔質基材がポリオレフィン微多孔膜(詳細は後述する。)である場合、当該濃縮膜が濃縮対象とする生物学的粒子はナノオーダーの大きさであることが適切である。この場合、生物学的粒子の直径又は長軸長は、例えば、10nm以上であり、20nm以上であり、例えば、1000nm以下であり、800nm以下であり、500nm以下である。
本開示の濃縮膜が備える親水性複合多孔質膜の多孔質基材がポリオレフィン微多孔膜である場合、当該濃縮膜は、ウイルス、細菌又はエクソソームの濃縮に好適である。
本開示の濃縮膜の試料となる水性液体組成物としては、動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、喀痰);動物(特にヒト)の体液の希釈物;動物(特にヒト)の排泄物(例えば、糞便)を水に懸濁した液体組成物;動物(特にヒト)のうがい液;動物(特にヒト)の臓器、組織、粘膜、皮膚、搾過検体、スワブ等からの抽出物を含む緩衝液;魚貝類の組織抽出液;魚貝類の養殖池から採取される水;植物の表面拭い液又は組織抽出液;土壌の抽出液;植物からの抽出液;食品からの抽出液;医薬品の原料液:などが挙げられる。
本開示の濃縮膜は、多孔質基材と当該多孔質基材の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する親水性樹脂とを備えた親水性複合多孔質膜を含む。本開示の濃縮膜は、親水性複合多孔質膜以外のほかの部材を含んでいてもよい。親水性複合多孔質膜以外のほかの部材としては、親水性複合多孔質膜の主面又は側面の一部又は全部に接して配置されたシート状の補強部材;濃縮膜を濃縮装置に搭載するためのガイド部材;などが挙げられる。
本開示の濃縮膜が備える親水性複合多孔質膜は、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面が親水性樹脂により被覆されていればよく、両方の主面が親水性樹脂により被覆されていることが好ましい。
親水性複合多孔質膜における親水性樹脂による多孔質基材の主面の被覆形態としては、例えば、多孔質基材の主面の一部若しくは全部を親水性樹脂が被覆している形態、多孔質基材の開口の一部若しくは全部を親水性樹脂が充填している形態、多孔質基材の主面の一部を親水性樹脂が被覆し開口の一部を親水性樹脂が充填している形態が挙げられる。多孔質基材の開口を親水性樹脂が充填している場合、当該親水性樹脂は、多孔質構造を形成していることが好ましい。ここで多孔質構造とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結されており、一方の側から他方の側へと気体あるいは液体が通過可能となっている構造を意味する。
親水性複合多孔質膜における親水性樹脂による多孔質基材の空孔内表面の被覆形態としては、例えば、多孔質基材の空孔の壁面の一部若しくは全部を親水性樹脂が被覆している形態、多孔質基材の空孔の一部若しくは全部を親水性樹脂が充填している形態、多孔質基材の空孔の壁面の一部を親水性樹脂が被覆し空孔の一部を親水性樹脂が充填している形態が挙げられる。多孔質基材の空孔を親水性樹脂が充填している場合、当該親水性樹脂は、多孔質構造を形成していることが好ましい。ここで多孔質構造とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結されており、一方の側から他方の側へと気体あるいは液体が通過可能となっている構造を意味する。
本開示の濃縮膜を用いた生物学的粒子の濃縮は、親水性複合多孔質膜の一方の主面から他方の主面へと水性液体組成物を通過させた際に、水性液体組成物に含まれる生物学的粒子の一部又は全部が親水性複合多孔質膜を通過せず、親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかの部位における水性液体組成物中に残留することによって行われる。濃縮処理前の水性液体組成物と、濃縮処理後に親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかの部位から回収される水性液体組成物とを比較して、後者に含まれる生物学的粒子の濃度が高ければ、生物学的粒子の濃縮が行われたといえる。本開示の濃縮膜によって実現される生物学的粒子の濃縮率(下記の式による。)は、100%超であり、200%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。
濃縮率=「濃縮処理後に親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかの部位から回収される水性液体組成物の生物学的粒子濃度」÷「濃縮処理前の水性液体組成物の生物学的粒子濃度」×100
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、本開示の濃縮膜が備える親水性複合多孔質膜が、上流側の主面と空孔内表面とに親水性樹脂を有することによって、親水性複合多孔質膜の上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかに残留した生物学的粒子が回収しやすくなり、生物学的粒子の濃縮率が向上すると推測される。
本開示の濃縮膜が備える親水性複合多孔質膜は、多孔質基材と当該多孔質基材の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する親水性樹脂とを備え、膜厚t(μm)とパームポロメータで測定した平均孔径x(μm)との比t/xが50~630である。
親水性複合多孔質膜のt/xが50未満であると、平均孔径xの大きさの割に膜厚tが薄すぎる故、又は、膜厚tの厚さの割に平均孔径xが大きすぎる故、生物学的粒子が親水性複合多孔質膜を通過しやすく、親水性複合多孔質膜の上流、上流側の主面及び空孔内の少なくともいずれかに残留する生物学的粒子の残留率(以下、単に「生物学的粒子の残留率」という。)が劣り、その結果、生物学的粒子の濃縮率が劣る。この観点から、t/xは、50以上であり、好ましくは80以上であり、より好ましくは100以上である。
親水性複合多孔質膜のt/xが630超であると、平均孔径xの大きさの割に膜厚tが厚すぎる故、又は、膜厚tの厚さの割に平均孔径xが小さすぎる故、水性液体組成物が親水性複合多孔質膜を通過しにくく、水性液体組成物が親水性複合多孔質膜を通過するのに時間がかかる(つまり、水性液体組成物の濃縮処理に時間がかかる。)。この観点から、t/xは、630以下であり、好ましくは600以下であり、より好ましくは500以下であり、更に好ましくは400以下である。
本開示の濃縮膜を用いれば、遠心法に比べて、生物学的粒子を簡易に且つ迅速に濃縮することができる。本開示の濃縮膜を用いれば、従来の多孔質膜に比べて、生物学的粒子を迅速に且つ効率よく濃縮することができる。
以下、本開示の濃縮膜が備える、親水性複合多孔質膜、多孔質基材及び親水性樹脂について詳細に説明する。
[親水性複合多孔質膜]
親水性複合多孔質膜は、片面又は両面において、下記の測定条件によって測定する水の接触角が、90度以下であることが好ましく、前記水の接触角が小さいほど好ましい。親水性複合多孔質膜は、片面又は両面において、下記の測定条件によって水の接触角を測定しようとしたとき、水滴が膜内部に浸透して測定できない状態となるほどの親水性であることがより好ましい。
ここで水の接触角は、次の測定方法によって測定される値である。多孔質膜を温度25℃且つ相対湿度60%の環境に24時間以上放置して調湿した後、同じ温度且つ湿度の環境下にて、多孔質膜の表面に注射器で1μLのイオン交換水の水滴を落とし、全自動接触角計(協和界面科学社、型番Drop Master DM500)を用いてθ/2法により30秒後の接触角を測定する。
親水性複合多孔質膜の厚さtは、親水性複合多孔質膜の強度を高める観点、及び、生物学的粒子の残留率を高める観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましく、30μm以上が更に好ましい。親水性複合多孔質膜の厚さtは、水性液体組成物が親水性複合多孔質膜を通過するのに要する時間(以下、水性液体組成物の処理時間という。)を短くする観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が更に好ましく、70μm以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜の厚さtは、接触式の膜厚計にて20点を測定し、これを平均することで求める。
親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定した平均孔径xは、水性液体組成物の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上が更に好ましい。親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定した平均孔径xは、生物学的粒子の残留率を高める観点から、0.5μm以下が好ましく、0.45μm以下がより好ましく、0.4μm以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定した平均孔径xは、パームポロメータ(PMI社、型式:CFP-1200-AEXL)を用いて、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294-89に規定するハーフドライ法によって求める。親水性複合多孔質膜の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面をパームポロメータの加圧部に向けて設置し、測定を行う。
親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yは、水性液体組成物の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、0.8μm超が好ましく、0.9μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましい。親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yは、生物学的粒子の残留率を高める観点から、3μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2.2μm以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yは、パームポロメータ(PMI社、型式:CFP-1200-AEXL)を用いて、バブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K3832:1990)によって求める。ただし、試験時の浸液をPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)に変更して求める値である。親水性複合多孔質膜の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面をパームポロメータの加圧部に向けて設置し、測定を行う。
親水性複合多孔質膜のバブルポイント圧は、例えば、0.01MPa以上0.20MPa以下であり、0.02MPa~0.15MPaである。
本開示において親水性複合多孔質膜のバブルポイント圧は、親水性複合多孔質膜をエタノールに浸漬し、JIS K3832:1990のバブルポイント試験方法に従って、ただし、試験時の液温を24±2℃に変更し、印加圧力を昇圧速度2kPa/秒で昇圧しながらバブルポイント試験を行って求める値である。親水性複合多孔質膜の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面を測定装置の加圧部に向けて設置し、測定を行う。
親水性複合多孔質膜の水流量f(mL/(min・cm・MPa))は、水性液体組成物の処理時間を短くする観点から、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。親水性複合多孔質膜の水流量f(mL/(min・cm・MPa))は、生物学的粒子の残留率を高める観点から、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜の水流量fは、一定の透液面積(cm)を有する透液セルにセットした試料に、一定の差圧(20kPa)で水100mLを透過させて、水100mLが透過するのに要する時間(sec)を測定し、単位換算して求める。親水性複合多孔質膜の一方の主面のみが親水性樹脂で被覆されている場合は、親水性樹脂で被覆されている主面から親水性樹脂で被覆されていない主面へ水を透過させて測定を行う。
親水性複合多孔質膜は、水流量f(mL/(min・cm・MPa))とバブルポイント細孔径y(μm)との比f/yが、水性液体組成物の処理時間を短くする観点から、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましい。親水性複合多孔質膜は、水流量f(mL/(min・cm・MPa))とバブルポイント細孔径y(μm)との比f/yが、生物学的粒子の残留率を高める観点から、480以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることが更に好ましい。
親水性複合多孔質膜は、残留した生物学的粒子の回収率を高める観点から、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面において、表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。
親水性複合多孔質膜は、生物学的粒子の残留率を高める観点から、少なくとも濃縮処理の際に上流側となる主面において、表面粗さRaが0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
親水性複合多孔質膜の表面粗さRaは、光波干渉式表面粗さ計(Zygo社、NewView5032)を用いて、非接触式で試料の表面を無作為に3箇所測定し、粗さ評価のための解析ソフトを用いて求める。
親水性複合多孔質膜の単位厚さ当たりのガーレ値(秒/100mL・μm)は、例えば、0.001~5であり、0.01~3であり、0.05~1である。親水性複合多孔質膜のガーレ値は、JIS P8117:2009に従って測定した値である。
親水性複合多孔質膜の空孔率は、例えば、70%~90%であり、72%~89%であり、74%~87%である。親水性複合多孔質膜の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)を下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
親水性複合多孔質膜は、ハンドリング性の観点から、カールしにくいことが好ましい。親水性複合多孔質膜のカールを抑制する観点から、親水性複合多孔質膜は両方の主面が親水性樹脂で被覆されていることが好ましい。
[多孔質基材]
本開示において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。多孔質基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;などが挙げられる。多孔質基材としては、本開示の濃縮膜の薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
多孔質基材の材料は、有機材料又は無機材料のいずれでもよい。
多孔質基材は、親水性又は疎水性のいずれでもよい。本開示の濃縮膜は、多孔質基材が疎水性であっても、親水性樹脂が多孔質基材を被覆していることによって親水性を示す。
多孔質基材の一つの実施形態として、樹脂からなる微多孔膜が挙げられる。微多孔膜を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱樹脂;などが挙げられる。
多孔質基材の一つの実施形態として、繊維状物からなる多孔性シートが挙げられ、例えば、不織布、紙が挙げられる。多孔性シートを構成する繊維状物としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの繊維状物;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの繊維状物;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱樹脂の繊維状物;セルロース;などが挙げられる。
多孔質基材の表面には、多孔質基材を親水性樹脂で被覆するために用いる塗工液の濡れ性を向上させる目的で、各種の表面処理を施してもよい。多孔質基材の表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
[多孔質基材の物性]
多孔質基材の厚さは、多孔質基材の強度を高める観点、及び、生物学的粒子の残留率を高める観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。多孔質基材の厚さは、水性液体組成物の処理時間を短くする観点から、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。多孔質基材の厚さの測定方法は、親水性複合多孔質膜の厚さtの測定方法と同じである。
多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、水性液体組成物の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、生物学的粒子の残留率を高める観点から、0.8μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.6μm以下が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定した平均孔径は、パームポロメータを用いてASTM E1294-89に規定するハーフドライ法にて求める値であり、測定方法の詳細は、親水性複合多孔質膜の平均孔径xに係る測定方法と同じである。
多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、水性液体組成物の処理時間を短くする観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、0.8μm超が好ましく、0.9μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、生物学的粒子の残留率を高める観点から、3μm以下が好ましく、2.8μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましい。多孔質基材のパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径は、パームポロメータを用いてASTM F316-86、JIS K3832に規定するバブルポイント法にて求める値であり、測定方法の詳細は、親水性複合多孔質膜のバブルポイント細孔径yに係る測定方法と同じである。
多孔質基材の水流量(mL/(min・cm・MPa))は、水性液体組成物の処理時間を短くする観点から、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。多孔質基材の水流量(mL/(min・cm・MPa))は、生物学的粒子の残留率を高める観点から、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が更に好ましい。多孔質基材の水流量の測定方法は、親水性複合多孔質膜の水流量fの測定方法と同じである。ただし、多孔質基材が疎水性の場合は、エタノールに浸漬したのち室温下で乾燥させた多孔質基材を試料とし、透液セル上にセットした試料を少量(0.5mL)のエタノールで湿潤させた後に測定を行う。
多孔質基材は、片面又は両面において、表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。
多孔質基材は、片面又は両面において、表面粗さRaが0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
多孔質基材の表面粗さRaに係る測定方法は、親水性複合多孔質膜の表面粗さRaに係る測定方法と同じである。
多孔質基材の単位厚さ当たりのガーレ値(秒/100mL・μm)は、例えば、0.001~5であり、0.01~3であり、0.05~1である。多孔質基材のガーレ値は、JIS P8117:2009に従って測定した値である。
多孔質基材の空孔率は、例えば、70%~90%であり、72%~89%であり、74%~87%である。多孔質基材の空孔率は、下記の算出方法に従って求める。即ち、構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)を下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
多孔質基材のBET比表面積は、例えば、1m/g~40m/gであり、2m/g~30m/gであり、3m/g~20m/gである。多孔質基材のBET比表面積は、マイクロトラック・ベル株式会社の比表面積測定装置(型式:BELSORP-mini)を用い、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法にて、設定相対圧:1.0×10-3~0.35の吸着等温線を測定し、BET法で解析して求めた値である。
[ポリオレフィン微多孔膜]
多孔質基材の一つの実施形態として、ポリオレフィンを含む微多孔膜(本開示においてポリオレフィン微多孔膜という。)が挙げられる。ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみであるポリエチレン微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、10万~500万である。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜の成形がしやすい。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、ポリオレフィン組成物(本開示において、2種以上のポリオレフィンを含むポリオレフィンの混合物を意味し、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみである場合はポリエチレン組成物という。)を含む微多孔膜が挙げられる。ポリオレフィン組成物は、延伸時のフィブリル化に伴ってネットワーク構造を形成し、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を増加させる効用がある。
ポリオレフィン組成物としては、重量平均分子量が9×10以上である超高分子量ポリエチレンを、ポリオレフィンの総量に対して、5質量%~40質量%含むポリオレフィン組成物が好ましく、10質量%~35質量%含むポリオレフィン組成物がより好ましく、15質量%~30質量%含むポリオレフィン組成物が更に好ましい。
ポリオレフィン組成物は、重量平均分子量が9×10以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が2×10~8×10で密度が920kg/m~960kg/mである高密度ポリエチレンとが、質量比5:95~40:60(より好ましくは10:90~35:65、更に好ましくは15:85~30:70)で混合したポリオレフィン組成物であることが好ましい。
ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン全体の重量平均分子量が2×10~2×10であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンの重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(システム:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6-HT及びGMH6-HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行うことで得られる。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、少なくともポリエチレンとポリプロピレンとが混合して含まれているポリオレフィン微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜の一つの実施形態として、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含有し、少なくとも1層はポリプロピレンを含有するポリオレフィン微多孔膜が挙げられる。
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
ポリオレフィン微多孔膜は、例えば、下記の工程(I)~(IV)を含む製造方法で製造することができる。
工程(I):ポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程。
工程(II):前記溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程。
工程(III):前記第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し且つ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程。
工程(IV):前記第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程。
工程(I)は、ポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程である。前記溶液は、好ましくは熱可逆的ゾルゲル溶液であり、ポリオレフィン組成物を溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾルゲル溶液を調製する。大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤としてはポリオレフィンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されない。前記揮発性の溶剤としては、例えば、テトラリン(206℃~208℃)、エチレングリコール(197.3℃)、デカリン(デカヒドロナフタレン、187℃~196℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃~144℃)、ジエチルトリアミン(107℃)、エチレンジアミン(116℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、ヘキサン(69℃)等が挙げられ、デカリン又はキシレンが好ましい(括弧内の温度は、大気圧における沸点である。)。前記揮発性の溶剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程(I)に使用するポリオレフィン組成物(本開示において、2種以上のポリオレフィンを含むポリオレフィンの混合物を意味し、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみである場合はポリエチレン組成物という。)は、ポリエチレンを含むことが好ましく、ポリエチレン組成物であることがより好ましい。
工程(I)において調製する溶液は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~35質量%であることがより好ましい。ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%以上であると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜工程において切断の発生を抑制することができ、また、ポリオレフィン微多孔膜の力学強度が高まりハンドリング性が向上する。ポリオレフィン組成物の濃度が40質量%以下であると、ポリオレフィン微多孔膜の空孔が形成されやすい。
工程(II)は、工程(I)で調製した溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程である。工程(II)は、例えば、ポリオレフィン組成物の融点乃至融点+65℃の温度範囲においてダイより押し出して押出物を得、次いで前記押出物を冷却して第一のゲル状成形物を得る。第一のゲル状成形物はシート状に賦形することが好ましい。冷却は、水又は有機溶媒への浸漬によって行ってもよいし、冷却された金属ロールへの接触によって行ってもよく、一般的には工程(I)に使用した揮発性の溶剤への浸漬によって行われる。
工程(III)は、第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し且つ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程である。工程(III)の延伸工程は、二軸延伸が好ましく、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸でもよく、縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸でもよい。一次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、1.1倍~3倍が好ましく、1.1倍~2倍がより好ましい。一次延伸の延伸時の温度は75℃以下が好ましい。工程(III)の乾燥工程は第二のゲル状成形物が変形しない温度であれば特に制限なく実施されるが、60℃以下で行われることが好ましい。
工程(III)の延伸工程と乾燥工程とは、同時に行ってもよく、段階的に行ってもよい。例えば、予備乾燥しながら一次延伸し、次いで本乾燥を行ってもよいし、予備乾燥と本乾燥との間に一次延伸を行ってもよい。一次延伸は、乾燥を制御し、溶剤を好適な状態に残存させた状態でも行うことができる。
工程(IV)は、第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程である。工程(IV)の延伸工程は、二軸延伸が好ましい。工程(IV)の延伸工程は、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸;縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸;縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する工程;縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する工程;逐次二軸延伸した後にさらに縦方向及び/又は横方向に1回又は複数回延伸する工程;のいずれでもよい。
二次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、好ましくは5倍~90倍であり、より好ましくは10倍~60倍である。二次延伸の延伸温度は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、90℃~135℃が好ましく、90℃~130℃がより好ましい。
工程(IV)に次いで熱固定処理を行ってもよい。熱固定温度は、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造を制御する観点から、110℃~160℃が好ましく、120℃~150℃がより好ましい。
熱固定処理の後にさらに、ポリオレフィン微多孔膜に残存している溶媒の抽出処理とアニール処理とを行ってもよい。残存溶媒の抽出処理は、例えば、熱固定処理後のシートを塩化メチレン浴に浸漬させて、塩化メチレンに残存溶媒を溶出させることにより行う。塩化メチレン浴に浸漬したポリオレフィン微多孔膜は、塩化メチレン浴から引き揚げた後、塩化メチレンを乾燥によって除去することが好ましい。アニール処理は、残存溶媒の抽出処理の後に、ポリオレフィン微多孔膜を例えば100℃~140℃に加熱したローラー上を搬送することで行う。
工程(I)~(IV)の各条件を制御することにより、膜厚t(μm)と平均孔径x(μm)との比t/xが50~630であるポリオレフィン微多孔膜を製造することが可能になる。例えば、縦延伸倍率を小さくすることにより、比t/xを50以上に制御することができる。例えば、縦延伸倍率を大きくすることにより、比t/xを630以下に制御することができる。
[親水性樹脂]
親水性樹脂は、特に制限されるものではないが、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等の親水性基を有する樹脂が挙げられる。
親水性樹脂は、多孔質基材から脱落しにくい観点と生物学的粒子の濃縮率の観点とから、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなり且つ側鎖にヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂であることが好ましい。
親水性樹脂としては、ポリマーの主鎖に炭素原子のみならず酸素原子が含まれる樹脂(例えば、ポリエチレングルコール、セルロース等)も挙げられるが、ポリマーの主鎖に酸素原子が含まれる親水性樹脂は多孔質基材から比較的脱落しやすい。多孔質基材から脱落しにくい観点から、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなる樹脂が好ましく、ポリマーの主鎖が炭素原子のみからなり且つ側鎖にヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂がより好ましい。
親水性樹脂は、ポリビニルアルコール、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂、アクリル・ビニルアルコール系樹脂、メタクリル・ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン・ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びポリスチレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂を含むことが好ましい。中でも、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂を含むことがより好ましい。
親水性樹脂としては、多孔質基材の表面に親水性モノマーをグラフト重合してなる親水性樹脂も挙げられる。この場合、親水性樹脂は多孔質基材の表面と直接的に化学結合した形態となる。多孔質基材の表面にグラフト重合する親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルスルホン酸等が挙げられる。親水性複合多孔質膜の製造性の観点からは、グラフト重合のように親水性樹脂が多孔質基材の表面と直接的に化学結合した形態よりも、塗工法等により親水性樹脂を多孔質基材の表面に付着させた形態(親水性樹脂が多孔質基材の表面と化学結合していない形態)の方が好ましい。
親水性樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
親水性樹脂としては、生物学的粒子に対する刺激が少ない観点、及び、親水性複合多孔質膜の上流側の主面及び空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂が好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂を構成するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられる。オレフィンとしては、炭素数2~6のオレフィンが好ましく、炭素数2~6のα-オレフィンがより好ましく、炭素数2~4のα-オレフィンが更に好ましく、エチレンが特に好ましい。オレフィン・ビニルアルコール系樹脂に含まれるオレフィン単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂は、オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーを構成単位に含んでいてもよい。オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマー;スチレン、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ-tert-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレン、バラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;などが挙げられる。これらのモノマー単位は、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂に1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂は、オレフィン及びビニルアルコール以外のモノマーを構成単位に含んでいてもよいが、生物学的粒子に対する刺激が少ない観点、及び、親水性複合多孔質膜の空孔内に残留した生物学的粒子を回収しやすい観点から、オレフィン単位とビニルアルコール単位とを合わせた割合が、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。オレフィン・ビニルアルコール系樹脂としては、オレフィンとビニルアルコールとの二元共重合体が好ましく(ここで、オレフィンの好ましい態様は先述のとおりである。)、エチレンとビニルアルコールとの二元共重合体がより好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂におけるオレフィン単位の割合は、20モル%~55モル%であることが好ましい。オレフィン単位の割合が20モル%以上であると、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂が水に溶解しにくい。この観点からは、オレフィン単位の割合は、23モル%以上がより好ましく、25モル%以上が更に好ましい。オレフィン単位の割合が55モル%以下であると、オレフィン・ビニルアルコール系樹脂の親水性がより高い。この観点からは、オレフィン単位の割合は、52モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
オレフィン・ビニルアルコール系樹脂の市販品としては、日本合成化学工業社製「ソアノール」、株式会社クラレ製「エバール」などが挙げられる。
多孔質基材に対する親水性樹脂の付着量は、例えば、0.01g/m~5g/mであり、0.02g/m~2g/mであり、0.03g/m~1g/mである。多孔質基材に対する親水性樹脂の付着量は、親水性複合多孔質膜の目付けWa(g/m)から多孔質基材の目付けWb(g/m)を減算した値(Wa-Wb)である。
[親水性複合多孔質膜の製造方法]
親水性複合多孔質膜の製造方法は、特に制限されない。一般的な製造方法としては、親水性樹脂を含む塗工液を多孔質基材に付与し、塗工液を乾燥させて多孔質基材を親水性樹脂で被覆する方法;多孔質基材に親水性モノマーをグラフト重合させて、多孔質基材を親水性樹脂で被覆する方法;が挙げられる。
親水性樹脂を含む塗工液は、親水性樹脂の融点以上の温度に昇温した溶媒に親水性樹脂を混合し攪拌することで、親水性樹脂を溶媒に溶解又は分散させて調製することができる。溶媒としては、親水性樹脂に対して良溶媒である溶媒であれば特に限定されないが、具体的には例えば、1-プロパノール水溶液、2-プロパノール水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド水溶液、ジメチルスルホキシド水溶液、エタノール水溶液などが挙げられる。これら水溶液における有機溶剤の割合は30質量%~70質量%が好ましい。
親水性樹脂を含む塗工液を多孔質基材に付与する際の、塗工液における親水性樹脂の濃度は、0.01質量~5質量%であることが好ましい。塗工液における親水性樹脂の濃度が0.01質量%以上であると、多孔質基材に親水性を効率よく付与することができる。この観点からは、塗工液における親水性樹脂の濃度は、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。塗工液における親水性樹脂の濃度が5質量%以下であると、製造された親水性複合多孔質膜における水流量が大きい。この観点からは、塗工液における親水性樹脂の濃度は3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
塗工液を多孔質基材に付与することは、公知の塗工方法によって行うことができる。塗工方法としては、例えば、浸漬法、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。塗工時の塗工液の温度を調整することで親水性樹脂の層を安定に形成することができる。塗工液の温度は特に限定されるものではないが、5℃~40℃の範囲が好ましい。
塗工液を乾燥させる際の温度は、25℃~100℃が好ましい。乾燥温度が25℃以上であると、乾燥に必要な時間を短縮することができる。この観点からは、乾燥濃度は、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。乾燥温度が100℃以下であると、多孔質基材の収縮が抑制される。この観点からは、乾燥温度は90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
親水性複合多孔質膜は、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤、着色剤などを含んでいてもよい。
以下に実施例を挙げて、本開示の濃縮膜をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の濃縮膜の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
<親水性複合多孔質膜の作製>
[実施例1]
-ポリエチレン微多孔膜の作製-
重量平均分子量460万の超高分子量ポリエチレン(以下「UHMWPE」という。)3.75質量部と、重量平均分子量56万且つ密度950kg/mの高密度ポリエチレン(以下「HDPE」という。)21.25質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。ポリマー濃度が25質量%となるようにポリエチレン組成物とデカリンとを混合しポリエチレン溶液を調製した。
上記のポリエチレン溶液を温度147℃でダイからシート状に押出し、次いで押出物を水温20℃の水浴中で冷却し、第一のゲル状シートを得た。
第一のゲル状シートを70℃の温度雰囲気下にて10分間予備乾燥し、次いで、MD方向に1.8倍で一次延伸をし、次いで、本乾燥を57℃の温度雰囲気下にて5分間行って、第二のゲル状シート(ベーステープ)を得た(第二のゲル状シート中の溶剤の残留量は1%未満とした。)。次いで二次延伸として、第二のゲル状シート(ベーステープ)をMD方向に温度90℃にて倍率4倍で延伸し、続いてTD方向に温度125℃にて倍率9倍で延伸し、その後直ちに144℃で熱処理(熱固定)を行った。
熱固定後のシートを、2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、シート中のデカリンを抽出した。シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去した。こうして、ポリエチレン微多孔膜を得た。
-ポリエチレン微多孔膜の親水化処理-
親水性樹脂として、エチレン・ビニルアルコール二元共重合体(日本合成化学工業製、ソアノールDC3203R、エチレン単位32モル%)(以下、EVOHという。)を用意した。EVOHの濃度が0.2質量%となるように、1-プロパノールと水の混合溶媒(1-プロパノール:水=3:2[体積比])にEVOHを溶解させ、塗工液を得た。
金属枠に固定したポリエチレン微多孔膜を塗工液に浸漬してポリエチレン微多孔膜の空孔内に塗工液を含浸させたのち引き上げた。次いで、ポリエチレン微多孔膜の両方の主面に付着している余分な塗工液を除去し、常温で2時間乾燥させた。次いで、ポリエチレン微多孔膜から金属枠を取り外した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両方の主面及び空孔内表面が親水性樹脂で被覆された親水性複合多孔質膜を得た。
[実施例2~7]
-ポリエチレン微多孔膜の作製-
ポリエチレン溶液の組成又はポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。実施例3~6においては、シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をした。
-ポリエチレン微多孔膜の親水化処理-
実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜にEVOHを付与し、親水性複合多孔質膜を作製した。ただし、実施例5~6においては、塗工液のEVOH濃度を1質量%とした。
[比較例1]
-ポリエチレン微多孔膜の作製-
ポリエチレン溶液の組成及びポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。比較例1においては、シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をした。
-ポリエチレン微多孔膜の親水化処理-
ポリエチレン微多孔膜の片面に、プラズマ処理(Nordson MARCH社製AP-300:出力150W、処理圧力400mTorr、ガス流量160sccm、処理時間45秒)を施し、親水性複合多孔質膜を得た。
[比較例2]
-ポリエチレン微多孔膜の作製-
ポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。
-ポリエチレン微多孔膜の親水化処理-
ポリエチレン微多孔膜の片面に、プラズマ処理(Nordson MARCH社製AP-300:出力150W、処理圧力400mTorr、ガス流量160sccm、処理時間45秒)を施し、親水性複合多孔質膜を得た。
[比較例3]
-ポリエチレン微多孔膜の作製-
ポリエチレン微多孔膜の製造工程を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン微多孔膜を作製した。
-ポリエチレン微多孔膜の親水化処理-
実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜にEVOHを付与し、親水性複合多孔質膜を作製した。
[比較例4]
比較例4として、シリンジフィルターであるmdi社製のSYNN0601MNXX104を用意した。このシリンジフィルターが備える多孔質膜は、ナイロン製である。
[比較例5]
比較例5として、シリンジフィルターであるMembrane Solutions社製のCA025022を用意した。このシリンジフィルターが備える多孔質膜は、酢酸セルロース製である。
<親水性複合多孔質膜の物性測定>
実施例1~7及び比較例1~5の各親水性複合多孔質膜又は多孔質膜を試料にして下記の物性測定を行った。比較例1~2の各親水性複合多孔質膜については、プラズマ処理を施した主面の物性を測定した。比較例4~5のシリンジフィルターが備える各多孔質膜については、シリンジフィルターから多孔質膜を取り出し、シリンジフィルターの入口側の主面の物性を測定した。表2にその結果を示す。
[膜厚]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜の膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状の端子を用いた。測定圧は0.1Nとした。
[平均孔径x]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜の平均孔径x(μm)は、PMI社のパームポロメータ(型式:CFP-1200-AEXL)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294-89に規定するハーフドライ法により求めた。測定温度は25℃であり、測定圧力は0~600kPaの範囲で変化させた。
[バブルポイント細孔径y]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜のバブルポイント細孔径y(μm)は、PMI社のパームポロメータ(型式:CFP-1200-AEXL)を用い、バブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K3832:1990)により求めた。ただし、試験時の浸液をPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)に変更して求めた。測定温度は25℃であり、測定圧力は0~600kPaの範囲で変化させた。
[バブルポイント圧]
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜をエタノールに浸漬し、JIS K3832:1990のバブルポイント試験方法に従って、ただし、試験時の液温を24±2℃に変更し、印加圧力を昇圧速度2kPa/秒で昇圧しながらバブルポイント試験を行って求めた。
[水流量f]
親水性複合多孔質膜をMD方向10cm×TD方向10cmに切り出し、透液面積が17.34cmであるステンレス製の円形透液セルにセットした。20kPaの差圧で水100mLを透過させて、水100mLが透過するのに要する時間(sec)を計測した。測定は室温24℃の温度雰囲気で行った。測定条件及び測定値を単位換算して水流量f(mL/(min・cm・MPa))を求めた。
[表面粗さRa]
光波干渉式表面粗さ計(Zygo社、NewView5032)を用いて下記の条件での算術平均高さを測定し、表面粗さRaを求めた。
・対物レンズ:20倍ミラウ型(Mirau型)
・イメージズーム:1.0×
・FDA Res:Normal又はLow
・解析条件:Zygo社の標準アプリケーションであるStich.appを用いて非接触式で各サンプル3箇所のデータを取得した後、粗さ評価のためのオプションアプリケーションであるAdvance Texture.appを用いて表面粗さを解析した。
<濃縮膜の性能評価>
実施例1~7及び比較例1~5の各親水性複合多孔質膜又は多孔質膜を濃縮膜として用いて濃縮テストを行った。比較例1~2の各親水性複合多孔質膜を濃縮膜として用いる際は、プラズマ処理を施した主面を上流側にした。比較例4~5のシリンジフィルターが備える各多孔質膜を濃縮膜として用いる際は、シリンジフィルターから多孔質膜を取り出し、シリンジフィルターの入口側の主面を上流側にした。表2に濃縮テストの結果を示す。濃縮テストの詳細は次のとおりである。
緩衝液にデング熱ウイルスを懸濁したウイルス懸濁液を用意した。ウイルス単位は、1×10FFU/mLとした。デング熱ウイルスは、エンベロープを有する直径40nm~60nm程度の球状ウイルスである。
親水性複合多孔質膜又は多孔質膜を直径13mmの円形にポンチで打ち抜き、フィルターホルダー(メルクミリポア製、スウィネクス35)のハウジング内に設置した。10mL容量のシリンジ(テルモ製)にウイルス懸濁液10mLを採取した。シリンジの先端をフィルターホルダーに接続し、フィルターホルダーにウイルス懸濁液を通液した。プランジャーに印加する圧力は約30Nとした。当該圧力でプランジャーが移動しない場合は、印加圧力を徐々に上げて、プランジャーが移動する最低限の圧力を印加した。
[処理時間]
プランジャーを押し始めた時点からプランジャーを押し切った時点までの時間(秒)を計測した。
[濃縮率]
プランジャーを押し切った後、フィルターデバイスを上にしシリンジを下にした状態で、プランジャーを数回往復させ、濃縮膜の上流に残留したウイルス懸濁液を回収した。回収したウイルス懸濁液を試料にして、Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)を用いてトータルRNAを抽出した。ReverTra Ace(登録商標)(東洋紡)を用いて、抽出したトータルRNAを逆転写してcDNAを作製した。デング熱ウイルスRNAに特異的に結合するプライマー及びSYBR Green I(タカラバイオ)(SYBRは登録商標)を用いてqRT-PCRを行い、試料中のウイルスRNAを定量した。通液前のウイルス懸濁液のウイルスRNA濃度Caと、回収したウイルス懸濁液のウイルスRNA濃度Cbとから、濃縮率(%)=Cb÷Ca×100を算出した。
図1は、濃縮テストの器具及び操作を示した模式図である。図1(a)において矢印は、ウイルス懸濁液が流れる方向を示している。図1(b)において矢印は、濃縮膜の上流に残留したウイルス懸濁液を回収する方向を示している。

Claims (6)

  1. 重量平均分子量が9×10以上である超高分子量ポリエチレン及び重量平均分子量が2×10~8×10で密度が920kg/m~960kg/mである高密度ポリエチレンを質量比5:95~40:60で含有するポリエチレン微多孔膜と、前記ポリエチレン微多孔膜の少なくとも一方の主面及び空孔内表面を被覆する、エチレン単位の割合が25モル%~50モル%であるエチレン・ビニルアルコール二元共重合体と、を備えたシート状の親水性複合多孔質膜であって、
    膜厚tが10μm~70μmであり、パームポロメータで測定した平均孔径xが0.1μm~0.5μmであり、前記膜厚t(μm)と前記平均孔径x(μm)との比t/xが100~500であるシート状の親水性複合多孔質膜、を含む、
    大きさが10nm~1000nmである生物学的粒子を濃縮するために用いる濃縮膜。
  2. 前記ポリエチレン微多孔膜が、ポリエチレン全体の重量平均分子量が2×10~2×10であるポリエチレン微多孔膜である、請求項1に記載の濃縮膜。
  3. 前記親水性複合多孔質膜は、パームポロメータで測定したバブルポイント細孔径yが0.8μm超3μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の濃縮膜。
  4. 前記親水性複合多孔質膜は、水流量f(mL/(min・cm・MPa))とパームポロメータで測定したバブルポイント細孔径y(μm)との比f/yが100~480である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の濃縮膜。
  5. 前記親水性複合多孔質膜は、表面粗さRaが0.3μm~0.7μmである、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の濃縮膜。
  6. 前記生物学的粒子が、ウイルス、細菌又はエクソソームである、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の濃縮膜。
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