JP2020145106A - 燃料電池単セルの製造方法 - Google Patents

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大樹 桑原
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Abstract

【課題】製造時に、膜電極接合体とともに樹脂フレームの搬送を可能にしつつ、不純物が膜電極接合体に付着することを低減することにより、燃料電池単セルの発電性能の低下を抑えることができる燃料電池単セルの製造方法を提供する。【解決手段】この製造方法では、膜電極接合体11の外周縁部13に樹脂フレーム15の内周縁部15eが重なるように、樹脂フレーム15を配置する。膜電極接合体11に樹脂フレーム15が配置された状態で、超音波振動により外周縁部13と、内周縁部15eとを融着させて、膜電極接合体11に樹脂フレーム15を仮接合する。膜電極接合体11に樹脂フレーム15を仮接合した状態の電極アッセンブリ10の両面に一対のセパレータ20、30を挟み込んだ状態で、一対のセパレータ20、30を熱圧することにより、樹脂フレーム15を各セパレータ20、30に接合しながら、仮接合した外周縁部13および内周縁部15eを本接合する。【選択図】図4

Description

本発明は、燃料電池単セルの製造方法に関する。
従来から、燃料電池単セルは、電極アッセンブリと、これを挟持する一対のセパレータとにより構成されている。電極アッセンブリは、膜電極接合体と、これに接合された樹脂フレームとを有している。膜電極接合体の両面には、触媒層が形成されている。
このような燃料電池単セルの製造方法として、例えば特許文献1では、膜電極接合体の外周縁部に樹脂フレームの内周縁部が重なるように、未硬化の接着剤を介して樹脂フレームを配置し、この接着剤を硬化することにより電極アッセンブリを製造している。さらに、製造された電極アッセンブリの両面に、一対のセパレータを配置した状態で、一対のセパレータを熱圧することにより、樹脂フレームを各セパレータに接合し、燃料電池単セルを製造している。
特開2016−162652号公報
ところで、燃料電池単セルの製造方法では、樹脂フレームをセパレータに接合する際に、接着剤から不純物を含むガスが発生することがある。ガスに含まれる不純物が膜電極接合体に付着すると、燃料電池単セルの発電性能を低下させるおそれがある。膜電極接合体に樹脂フレームを接合できないと、セパレータの接合時等に、電極アッセンブリとして、膜電極接合体とともに樹脂フレームを搬送することが難しい。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、本発明として、製造時に、膜電極接合体とともに樹脂フレームの搬送を可能にしつつ、不純物が膜電極接合体に付着することを低減することにより、燃料電池単セルの発電性能の低下を抑えることができる燃料電池単セルの製造方法を提供する。
前記課題を鑑みて、本発明に係る燃料電池単セルの製造方法は、電解質膜の両面に触媒層が形成された膜電極接合体と前記膜電極接合体に接合された樹脂フレームとを有した電極アッセンブリと、前記電極アッセンブリを挟持する一対のセパレータと、を備え、前記電極アッセンブリに各セパレータが接合された燃料電池単セルの製造方法であって、前記膜電極接合体の外周縁部に前記樹脂フレームの内周縁部が重なるように、前記樹脂フレームを配置する配置工程と、前記膜電極接合体に前記樹脂フレームが配置された状態で、超音波振動により前記外周縁部と前記内周縁部とを融着させて、前記膜電極接合体に前記樹脂フレームを仮接合する仮接合工程と、前記膜電極接合体に前記樹脂フレームを仮接合した状態の前記電極アッセンブリの両面に前記一対のセパレータを挟み込んだ状態で、前記一対のセパレータを熱圧することにより、前記樹脂フレームを前記各セパレータに接合しながら、仮接合した前記外周縁部および前記内周縁部を本接合する接合工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
本発明によれば、超音波振動により、膜電極接合体の外周縁部に、樹脂フレームの内周縁部を融着させて、膜電極接合体と樹脂フレームとを仮接合する。この仮接合は、膜電極接合体と樹脂フレームとの直接的な融着による接合である。これにより、膜電極接合体と樹脂フレームとを、これらが一体化した電極アッセンブリの状態で、搬送することができる。
次に、一対のセパレータの熱圧により、樹脂フレームをセパレータに接合する際に、この熱圧により、膜電極接合体と樹脂フレームとを本接合する。このように、膜電極接合体と樹脂フレームとの融着による仮接合および本接合は、これらの直接的な接合であるので、従来の接着剤を介した接合のように、接着剤等に起因したガスの発生はなく、ガス中の不純物が膜電極接合体へ付着することもない。
このような結果、製造時に、膜電極接合体とともに樹脂フレームの搬送を可能にしつつ、不純物が膜電極接合体に付着することがなく、燃料電池単セルの発電性能の低下を抑えることができる。
(a)は、本発明の実施形態に係る燃料電池単セルの分解斜視図であり、(b)は、(a)の燃料電池単セルの短手方向の要部断面図であり、(c)は、(b)に示す膜電極接合体の模式的断面図である。 膜電極接合体の外周縁部を説明するための模式的斜視図である。 図1に示す燃料電池単セルの製造方法の工程を説明するフロー図である。 (a)〜(e)は、図1に示す燃料電池単セルの製造方法を説明する模式的概念図である。 (a)および(b)は、それぞれ、実施例と、比較例1および比較例2とに係る燃料電池単セルの試験体を説明する模式的断面図である。 実施例、比較例1、および比較例2に係るA〜C点での硫酸イオン溶出量を示すグラフである。 (a)は、従来の燃料電池単セルの製造方法を説明する模式的概念図であり、(b)は、(a)に示すD部の拡大断面図である。
以下に、図1〜図4を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。
1.燃料電池単セル1について
まず、図1および図2を参照しながら、本実施形態の燃料電池単セル1について説明する。燃料電池単セル1は、これを複数積層することにより燃料電池が構成される。図1(a)および図1(b)に示すように、本実施形態の燃料電池単セル1は、電極アッセンブリ10と、電極アッセンブリ10を挟持する一対のセパレータ20、30と、を備えている。
電極アッセンブリ10は、膜電極接合体11と、樹脂フレーム15とを少なくとも備えている。図1(c)に示すように、膜電極接合体11は、イオン透過性を有した電解質膜2と、電解質膜2の両面に形成された触媒層3a、3bと、を備えている。本実施形態では、一例として、触媒層3aおよび触媒層3bが、カソード電極層およびアノード電極層をそれぞれ構成している。電解質膜2は、プロトン伝導性を有した固体高分子樹脂で形成されたイオン交換膜であり、触媒層3a、3bは、白金等の触媒を担持したカーボン粒子同士をアイオノマ(樹脂)で連結した多孔質層である。
膜電極接合体11の中央部は矩形状であり、この両面に、燃料ガスと、酸化剤ガスとをそれぞれ供給することで、電気化学反応が生じ発電する。触媒層3a、3bの表面には、供給されたガスを触媒層3a、3bに拡散させるガス拡散層14a、14bが接合されている。ガス拡散層14a、14bは、例えばカーボンペーパー若しくはカーボンクロス等のカーボン多孔質体、または、金属メッシュ若しくは発泡金属等の金属多孔質体等のガス透過性を有する導電性部材によって形成されている。
ガス拡散層14a、14bを接合した接合体は、一般的に、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)12と称される。図1(b)に示すMEGA12の態様では、ガス拡散層14bの平面視での大きさと形状は膜電極接合体11の大きさと形状とほぼ同じある。ガス拡散層14aは、後述する樹脂フレーム15の空所15dに収まる大きさであり、ガス拡散層14bよりも小さい。
なお、以下の明細書では、膜電極接合体11の一方側にガス拡散層14aが接合されず、その他方側にガス拡散層14bが接合されたものを、MEGA12’と称する。本実施形態では、図2に示すように、MEGA12’の膜電極接合体11は、樹脂フレーム15が接合される枠状(額縁状)の外周縁部13を有している。後述する燃料電池単セル1の製造方法で説明するように、本実施形態では、ガス拡散層14aが接合される前に、MEGA12’の膜電極接合体11の外周縁部13に樹脂フレーム15が仮接合される。
樹脂フレーム15は、平面視が長方形状であり、MEGA12を支持する部材である。具体的には、樹脂フレーム15は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなるフレーム本体となる主層15aと、その両面に熱可塑性樹脂からなる接着剤が被覆された接着層15b、15cと、を備えた3層シート構造である。
接着層15b、15cとしては、ポリプロピレン系樹脂の接着剤、酢酸ビニル系樹脂の接着剤、ポリビニルアルコール系樹脂の接着剤、エチレン酢酸ビニル系樹脂の接着剤、塩化ビニル系樹脂の接着剤、アクリル系樹脂の接着剤、ポリアミド系樹脂の接着剤、セルロース系樹脂の接着剤、ポリビニルピロリドン系樹脂の接着剤、ポリスチレン系樹脂の接着剤、シアノアクリレート系樹脂の接着剤、またはポリビニルアセタール系樹脂の接着剤等を挙げることができる。
樹脂フレーム15は、ガス拡散層14aが入り込むことのできる形状および大きさの空所15dを中央部に持つ額縁状の部材である。樹脂フレーム15の両面には、接着層15b、15cが形成され、接着層15b、15cが熱圧により溶融することにより、樹脂フレーム15にセパレータ20、30が融着される。
本実施形態では、樹脂フレーム15は、空所15dを囲むように、内周縁部15eを有している。図1(b)に示すように、樹脂フレーム15は、膜電極接合体11の外周縁部13に内周縁部15eが重なるように、膜電極接合体11に接合されている。なお、樹脂フレーム15の接着層15bのうち、内周縁部15eに相当する部分は、後述する超音波振動を付与することにより溶融して、膜電極接合体11に融着する。さらに、後述するように、接着層15bのうち、膜電極接合体11に融着した部分(すなわち、内周縁部15eの接着層15b)は、樹脂フレーム15と一対のセパレータ20、30との熱圧による接合により再度溶融し、膜電極接合体11により強固に融着する。
樹脂フレーム15には、長手方向の両側に、燃料ガス流路を構成する開口部16a、16bと、酸化剤ガス流路を構成する開口部17a、17bと、冷媒流路を構成する開口部18a、18bとが形成されている。
本実施形態では、一方側の開口部16aは、燃料ガスの入口であり、他方側の開口部16bは燃料ガスの出口である。また、一方側の開口部17aは酸化剤ガスの入口であり、他方側の開口部17bは酸化剤ガスの出口である。さらに、一方側の中央の開口部18aは冷却水等の冷媒の入口であり、他方側の中央の開口部18bは冷媒の出口である。燃料ガス、酸化剤ガス、および冷媒の流路は、電極アッセンブリ10と、一対のセパレータ20、30との間に形成されたシール材等(図示せず)により区画されている。
セパレータ20、30は、基本的には同一構成であり、本実施形態では、一例として、セパレータ20およびセパレータ30が、それぞれアノードセパレータおよびカソードセパレータを構成する。
セパレータ20、30は、平面視で長方形状に形成された金属製の薄板から成形された部材である。セパレータ20、30は、複数積層された燃料電池単セル1同士のMEGA12を区画するとともに、MEGA12の膜電極接合体11で発電された電力を集電する役割を果たす。セパレータ20、30は、チタン、チタン合金、またはステンレス鋼等の金属からなる。
セパレータ20、30は、電極アッセンブリ10の膜電極接合体11の中央に位置する発電領域に対応する中央領域の両面に、長手方向に沿って、複数の溝が形成されている。膜電極接合体11に対向する側の溝には、水素ガス等の燃料ガスまたは大気等の酸化剤ガスが流れる。燃料電池単セル1を積層した状態(スタックした状態)で、セパレータ同士が対向する側の溝には、冷媒が流れる。これにより、膜電極接合体11の一方側から燃料ガスが供給され、他方側から酸化剤ガスが供給され、膜電極接合体11で発電される。また、発電時に発熱した燃料電池単セル1を、冷媒で冷却することができる。
なお、以下のセパレータ20、30は、略同一形状であるので、セパレータ30に対する部位の説明は、セパレータ20の対応する部位の符号の後に括弧内に符号を付してその説明を省略する。セパレータ20(30)には、長手方向の両側部に、それぞれ3つの開口部が形成されている。これらの開口部は、電極アッセンブリ10の長手方向の両側に形成された開口部に対応した位置に、同じ形状で形成されている。具体的には、一方側の開口部26a(36a)は燃料ガスの入口であり、他方側の開口部26b(36b)は燃料ガスの出口である。また、一方側の開口部27a(37a)は酸化剤ガスの入口であり、他方側の開口部27b(37b)は酸化剤ガスの出口である。さらに、一方側の開口部28a(38a)は冷媒の入口であり、他方側の開口部28b(38b)は冷媒の出口である。
セパレータ20(30)は、MEGA12に接触し、燃料ガス(セパレータ30の場合には、酸化剤ガス)が流れる断面波状の中央領域21(31)と、中央領域21(31)を囲繞するように外周側に形成された溶着領域22(32)と、を備えている。中央領域21(31)で、MEGA12で発電された電力が集電され、溶着領域22(32)で、樹脂フレーム15の接着層15b(15c)の樹脂が溶着される。
電極アッセンブリ10に各セパレータ20(30)が接合された燃料電池単セル1は、図1(b)に示されるように構成されている。すなわち、セパレータ20(30)の中央領域21(31)にガス拡散層14b(14a)が対接し、溶着領域22(32)に樹脂フレーム15が対接している。ガス拡散層14bとセパレータ20との間には、燃料ガスの流路23が形成され、ガス拡散層14aとセパレータ30との間には、酸化剤ガスの流路33が形成されている。
2.燃料電池単セル1の製造方法について
次に、図3および図4を参照して、本実施形態の燃料電池単セル1の製造方法について説明する。以下に、図3に示す各工程に沿って説明する。
<準備工程S1>
まず、準備工程S1を行う。この工程では、図4(a)に示すように、膜電極接合体11の一方面のみにガス拡散層14bが接合されており、他方面には、ガス拡散層14aが接合されていないMEGA12’を準備する。準備したMEGA12’の膜電極接合体11は、樹脂フレーム15の内周縁部15eが重なる外周縁部13を有する。
<配置工程S2>
次いで、配置工程S2を行う。この工程では、図4(b)に示すように、(準備したMEGA12’の)膜電極接合体11の外周縁部13に樹脂フレーム15の内周縁部15eが重なるように、樹脂フレーム15を配置する。ここで、本実施形態では、膜電極接合体11の外周縁部13および樹脂フレーム15の内周縁部15e同士が直接的に接触している。
<仮接合工程S3>
次いで、仮接合工程S3を行う。この工程では、図4(c)に示すように、膜電極接合体11に樹脂フレーム15が配置された状態で、超音波振動により外周縁部13と、内周縁部15eとを融着させて、膜電極接合体11に樹脂フレーム15を仮接合する(超音波接合する)。
具体的には、樹脂フレーム15の表面または膜電極接合体11の表面に超音波ホーン(不図示)を配置し、膜電極接合体11の外周縁部13と樹脂フレーム15の内周縁部15eとを超音波ホーンで加圧した状態で、これらに超音波振動を印加する。これにより、外周縁部13と内周縁部15eとが接触する接触面が発熱し、この発熱した熱で、内周縁部15eの接着層15bが溶融し、外周縁部13と内周縁部15eとを融着させる。
この融着により、仮接合工程S3以降の工程において、樹脂フレーム15で膜電極接合体11を支持して、膜電極接合体11とともに樹脂フレーム15を電極アッセンブリ10の状態で搬送することができる。
なお、外周縁部13および内周縁部15eの仮接合の接合強度は、後述する接合工程S5で行う外周縁部13および内周縁部15eの本接合の接合強度よりも小さく、膜電極接合体11を樹脂フレーム15で支持できる強度であればよい。
<ガス拡散層接合工程S4>
次いで、ガス拡散層接合工程S4を行う。この工程では、図4(d)に示すように、仮接合の状態の電極アッセンブリ10の膜電極接合体11に、ガス拡散層14aを接合する。なお、本明細書では、ガス拡散層14aが接合される前のもの、ガス拡散層14aが接合されたものの双方を、電極アッセンブリ10として表現している。
具体的には、樹脂フレーム15の空所15d内にガス拡散層14aを挿入し、ガス拡散層14aを膜電極接合体11の表面に配置する。この状態で、膜電極接合体11に向けて、ガス拡散層14aを押圧することにより、MEGA12’にガス拡散層14aが接合される。この際、必要に応じて加熱してもよい。
<接合工程S5>
次いで、接合工程S5を行う。この工程では、図4(e)に示すように、仮接合の状態の電極アッセンブリ10の両面に一対のセパレータ20、30を挟み込む。この挟み込んだ状態で、一対のセパレータ20、30を熱圧することにより、樹脂フレーム15を各セパレータ20(30)に接合しながら、仮接合した膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとを本接合する。
具体的には、熱圧の際には、図1(a)に示すように、電極アッセンブリ10を一対のセパレータ20、30で挟むようにこれらを積層し、これらを一対の金型(不図示)で加熱しながら加圧する。これにより、セパレータ20、30の溶着領域22、32と、樹脂フレーム15とを融着させるとともに、本実施形態では、仮接合した膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとを再度加熱して本接合する。
本実施形態では、図4(e)に示すように、膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとは、それぞれセパレータ20、30に接触している。さらに、熱圧用の金型(不図示)は、セパレータ20、30を介して、膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとに接触している。
したがって、金型(不図示)による熱圧時の加圧力および熱は、セパレータ20、30を介して、仮接合された膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとに伝達される。この結果、膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとを、セパレータ20、30を介して、直接的に熱圧することができる。
膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとの加熱は、これらの接触面を、該接触面以外を加熱する温度よりも高い温度で行ってもよい。あるいは、外周縁部13および内周縁部15eの接触面を、上述した超音波振動により該接触面に発生した熱の温度よりも高い温度で行ってもよい。このようにして、本実施形態の燃料電池単セル1を製造することができる。
ここで、図7(a)および図7(b)を参照して、従来の燃料電池単セル1’の製造方法を説明する。なお、本実施形態と同じ部材および部分に関しては、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
図7(a)に示すように、従来の場合には、外周縁部13に内周縁部15eが重なるように、接着剤19を介して樹脂フレーム15を膜電極接合体11に接合した電極アッセンブリ10と、一対のセパレータ20、30とを熱圧する。接着剤19としては、例えば紫外線硬化ポリイソブチレン系樹脂、紫外線硬化エポキシ系樹脂、または紫外線硬化アクリル系樹脂等ラジカル重合性樹脂を用いた紫外線硬化型接着剤や、カチオン重合性樹脂を用いた紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。また、この他の接着剤として、熱硬化型の接着剤であってもよい。このような接着剤には、有機溶媒等、揮発性の高い物質が含まれる。
図7(b)に示すように、従来の場合には、樹脂フレーム15と膜電極接合体11の接着、電極アッセンブリ10と一対のセパレータ20、30とを熱圧時に、不純物(有機溶媒の成分)を含むガスVが接着剤19から発生する場合がある。不純物を含むガスVは、例えば、炭化水素系の揮発性ガスであり、不純物としては、例えば、有機カルボン酸、または有機アルデヒド等を含むガスである。
不純物を含むガスVが発生すると、発生したガスVの一部は、膜電極接合体11に向かって、ガス拡散層14aを通過し、ガス拡散層14aに隣接する触媒層3aと接触する。これにより、ガスV中の不純物が触媒層3aに付着して、膜電極接合体11の触媒層3aの触媒作用が低下することがある。これに加えて、例えば、カソード側では、触媒作用の低下により、O+2H+2e-→Hの反応が促進され、過酸化水素により、電解質膜2が化学的に劣化するおそれがある。
それに対して、本実施形態の場合には、接着剤を使用せずに、超音波振動により、膜電極接合体11の外周縁部13と、樹脂フレーム15の内周縁部15eとを融着させ、熱圧により、これらを本接合する。このため、接着剤に起因したガスの発生はなく、ガス中の不純物が膜電極接合体11へ付着することもない。
このようにして、不純物が膜電極接合体11に付着することを抑えることにより、触媒作用の低下を防止し、電解質膜2の化学的な劣化を抑えることができる。このような結果として、燃料電池単セル1の発電性能の低下を抑えることができる。
さらに、本実施形態によれば、樹脂フレーム15および膜電極接合体11の接合に接着剤を使用しないため、これを使用した場合と比べて、膜電極接合体11の発電領域の低下を抑えることができる。この結果、燃料電池の所定の電力に対する燃料電池単セル1の原価を低減することができる。さらに、接着剤を塗布する工程等接着剤に係る工程を省略可能となるため、設備規模の収縮を図ることができる。
以下に本発明を実施例により説明する。
<実施例>
上述した燃料電池単セルの製造方法(図3を参照)により、実施例として、図5(a)に示す燃料電池単セルに対応する試験体を作製した。ここで、樹脂フレームとして、主層および接着層の材料は、それぞれ、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリプロピレン(PP)である。
<比較例1>
実施例と同様にして、図5(b)に示す燃料電池単セルに対応する比較例1の試験体を作製した。比較例1が実施例とは異なる点は、超音波振動による膜電極接合体と樹脂フレームとの仮接合を行わず、接着剤で樹脂フレームを膜電極接合体に接合した点である。
具体的には、膜電極接合体の外周縁部に樹脂フレームの内周縁部が重なるように、未硬化の紫外線(UV)硬化ポリイソブチレン(PIB)系樹脂の接着剤を介して樹脂フレームを配置し、この接着剤を硬化することにより、膜電極接合体に樹脂フレームを接合した。
なお、比較例1の試験体では、図5(b)に示す如く、接着剤の一部が樹脂フレームの空所にはみ出している。また、樹脂フレームに加えて、カソードガス拡散層の外周縁部も接着剤を介して膜電極接合体に接合している。
<比較例2>
比較例1と同様にして比較例2の試験体を作製した。比較例2が比較例1とは異なる点は、接着剤として、UV硬化ポリイソブチレン(PIB)系樹脂に含有する成分比を変えた接着剤を用いた点である。
実施例、比較例1、および比較例2の試験体をそれぞれ発電させて、図5(a)および(b)に示す、A〜C点での電解質膜の硫酸イオンの量を測定した。なお、硫酸イオンの量は、イオンクロマトグラフィーにて分析することにより測定した。結果を図6に示す。図6は、実施例、比較例1、および比較例2に係るA〜C点での硫酸イオン溶出量を示すグラフである。
図6からわかるように、比較例1および比較例2は、A〜C点の硫酸イオンの溶出量が、実施例よりも大きかった。この結果から、比較例1および比較例2では、電解質膜のスルホン酸基(-SOH基)が実施例よりも多く切断されたと考えられる。
比較例1および比較例2の場合には、接着剤を介して膜電極接合体に樹脂フレームが接合されている。そのため、熱圧により樹脂フレームをセパレータに接合する際に、接着剤から発生したガス中の不純物がカソード触媒層に付着して、カソード触媒層の触媒作用が低下してしまう。この状態で発電を行うと、カソード触媒層では、過酸化水素(H)が発生し、この過酸化水素が、燃料電池単セル内の不純物である鉄イオンと反応して、ヒドロキシラジカルが発生する。このヒドロキシラジカルにより、電解質膜のスルホン酸基が切断されると考えられる。
一方、実施例の場合には、接着剤を使用せずに、超音波振動により、膜電極接合体の外周縁部と、樹脂フレームの内周縁部とを融着させる。そのため、熱圧により樹脂フレームをセパレータに接合する際に、接着剤に起因した不純物が触媒層に付着することはない。この結果、上述した比較例1および比較例2の場合とは異なり、電解質膜のスルホン酸基の切断が抑制されると考えられる。結果として、実施例の場合には、燃料電池単セルの発電性能の低下を抑えることができるといえる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:燃料電池単セル、2:電解質膜、3a、3b:触媒層、10:電極アッセンブリ、11:膜電極接合体、13:外周縁部、15:樹脂フレーム、15e:内周縁部、20、30:一対のセパレータ、S2:配置工程、S3:仮接合工程、S5:接合工程

Claims (1)

  1. 電解質膜の両面に触媒層が形成された膜電極接合体と前記膜電極接合体に接合された樹脂フレームとを有した電極アッセンブリと、前記電極アッセンブリを挟持する一対のセパレータと、を備え、前記電極アッセンブリに各セパレータが接合された燃料電池単セルの製造方法であって、
    前記膜電極接合体の外周縁部に前記樹脂フレームの内周縁部が重なるように、前記樹脂フレームを配置する配置工程と、
    前記膜電極接合体に前記樹脂フレームが配置された状態で、超音波振動により前記外周縁部と前記内周縁部とを融着させて、前記膜電極接合体に前記樹脂フレームを仮接合する仮接合工程と、
    前記膜電極接合体に前記樹脂フレームを仮接合した状態の前記電極アッセンブリの両面に前記一対のセパレータを挟み込んだ状態で、前記一対のセパレータを熱圧することにより、前記樹脂フレームを前記各セパレータに接合しながら、仮接合した前記外周縁部および前記内周縁部を本接合する接合工程と、を少なくとも含むことを特徴とする燃料電池単セルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114665133A (zh) * 2020-12-24 2022-06-24 未势能源科技有限公司 膜电极组件以及具有该组件的燃料电池
KR102575014B1 (ko) * 2023-04-07 2023-09-06 주식회사 시너지 접착필름에 의해 일체화된 단위셀을 갖는 고분자 전해질 연료전지 스택

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