JP2020143973A - 車両用の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にする。【解決手段】所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果と、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果とが同期した状態で観察され得るように例えばパソコン110のモニタ112に表示させられるので、所定の現象における異常の特定やその異常の発生要因や発生条件の絞り込みが行い易くされる。つまり、車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にすることができる。【選択図】図8
Description
本発明は、車両で生じる所定の現象の測定結果を観察することができるようにする車両用の制御装置に関するものである。
車両で生じる所定の現象の測定結果を観察することができるようにする車両用の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された異音判定装置がそれである。この特許文献1には、車両が速度等の所定の走行条件を保って走行しているか否かを判定し、その所定の走行条件が保たれている状態で、車内音計測器により計測された車内音データに基づいて異音が発生したか否かを判定することが開示されている。
ところで、特許文献1に記載された技術のように所定の走行条件の下で車内音等の所定の現象を測定して異音等の異常判定を行う際には、車内に専用の測定装置を持ち込んで所定の現象を測定することが多いと考えられる。この際、アクセル開度や車速等の車両状態と、音や振動等の所定の現象との関連が分かり難いと、所定の現象における異常の特定やその異常の発生要因を特定することが難しくなり、不具合解析において要因特定が困難となるおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にすることができる車両用の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)車両用の制御装置であって、(b)所定の基準時間を参照して車両の走行に関わる車両状態の時間変化を検出する車両状態検出部と、(c)前記車両で生じる所定の現象の時間変化を測定する現象測定装置に前記所定の基準時間を出力する基準時間出力部と、(d)前記所定の基準時間に同期させられた前記所定の現象の測定結果と、前記車両状態の検出結果とを同期した状態で観察され得るように出力する結果出力部とを、含むことにある。
前記第1の発明によれば、所定の基準時間に同期させられた所定の現象の測定結果と、所定の基準時間に同期させられた車両状態の検出結果とが同期した状態で観察され得るように出力されるので、所定の現象における異常の特定やその異常の発生要因や発生条件の絞り込みが行い易くされる。つまり、車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にすることができる。
本発明の実施形態において、前記車両は動力源と動力伝達装置とを備えている。前記動力伝達装置における変速比例えば変速機における変速比は、「入力側の回転部材の回転速度/出力側の回転部材の回転速度」である。この変速比におけるハイ側は、変速比が小さくなる側である高車速側である。変速比におけるロー側は、変速比が大きくなる側である低車速側である。例えば、最ロー側変速比は、最も低車速側となる最低車速側の変速比であり、変速比が最も大きな値となる最大変速比である。
また、前記動力源は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の機関である。又、前記車両は、前記動力源として、このエンジンに加えて、又は、このエンジンに替えて、電動機等を備えていても良い。広義には、前記電動機は前記機関に含まれる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられた動力伝達装置12の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン14と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備えている。動力伝達装置12は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース16内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部18及び機械式有段変速部20等を備えている。電気式無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン14に連結されている。機械式有段変速部20は、電気式無段変速部18の出力側に連結されている。又、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部20へ伝達され、その機械式有段変速部20から差動歯車装置24等を介して車両10が備える駆動輪28へ伝達される。尚、以下、トランスミッションケース16をケース16、電気式無段変速部18を無段変速部18、機械式有段変速部20を有段変速部20という。又、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。又、無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。上記共通の軸心は、エンジン14のクランク軸、後述する連結軸34などの軸心である。
エンジン14は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する機関であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。このエンジン14は、後述する電子制御装置90によって車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン14の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。本実施例では、エンジン14は、トルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく無段変速部18に連結されている。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ54に接続されており、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の出力トルクであるMG1トルクTg及びMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、又、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン14の動力を第1回転機MG1及び無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材30に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構32とを備えている。中間伝達部材30には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式無段変速機である。第1回転機MG1は、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを制御可能な回転機であって、差動用回転機に相当する。第2回転機MG2は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する回転機であって、走行駆動用回転機に相当する。車両10は、走行用の動力源として、エンジン14及び第2回転機MG2を備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12は、動力源の動力を駆動輪28へ伝達する。尚、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。
差動機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0には連結軸34を介してエンジン14が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構32において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部20は、中間伝達部材30と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速機としての機械式変速機構、つまり無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。中間伝達部材30は、有段変速部20の入力回転部材としても機能する。中間伝達部材30には第2回転機MG2が一体回転するように連結されているので、又は、無段変速部18の入力側にはエンジン14が連結されているので、有段変速部20は、動力源(第2回転機MG2又はエンジン14)と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。中間伝達部材30は、駆動輪28に動力源の動力を伝達する為の伝達部材である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両10に備えられた油圧制御回路56内のソレノイドバルブSL1−SL4等から各々出力される調圧された係合装置CBの各係合圧としての各係合油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量である係合トルクTcbが変化させられることで、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部20は、第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材30、ケース16、或いは出力軸22に連結されている。第1遊星歯車装置36の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置38の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部20は、複数の係合装置のうちの何れかの係合装置である例えば所定の係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。つまり、有段変速部20は、複数の係合装置の何れかが係合されることで、ギヤ段が切り替えられるすなわち変速が実行される。有段変速部20は、複数のギヤ段の各々が形成される、有段式の自動変速機である。本実施例では、有段変速部20にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部20の入力回転部材の回転速度である有段変速部20の入力回転速度であって、中間伝達部材30の回転速度と同値であり、又、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmと同値である。AT入力回転速度Niは、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部20の出力回転速度である出力軸22の回転速度であって、無段変速部18と有段変速部20とを合わせた全体の変速機である複合変速機40の出力回転速度でもある。複合変速機40は、エンジン14と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。
有段変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)−AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。図2の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。すなわち、図2の係合作動表は、各ATギヤ段と、各ATギヤ段において各々係合される係合装置である所定の係合装置との関係をまとめたものである。図2において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部20のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部20は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(すなわち運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部20の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。本実施例では、例えばAT2速ギヤ段からAT1速ギヤ段へのダウンシフトを2→1ダウンシフトと表す。他のアップシフトやダウンシフトについても同様である。
図3は、無段変速部18と有段変速部20とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図3において、無段変速部18を構成する差動機構32の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部20の入力回転速度)を表すm軸である。又、有段変速部20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度(すなわち出力軸22の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構32のギヤ比(歯車比ともいう)ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置36,38の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリアとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数Zs/リングギヤの歯数Zr)に対応する間隔とされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、無段変速部18の差動機構32において、第1回転要素RE1にエンジン14(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材30と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されて、エンジン14の回転を中間伝達部材30を介して有段変速部20へ伝達するように構成されている。無段変速部18では、縦線Y2を横切る各直線L0,L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
又、有段変速部20において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材30に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸22に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材30に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース16に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース16に選択的に連結されている。有段変速部20では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1,L2,L3,L4,LRにより、出力軸22における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」,「Rev」の各回転速度が示される。
図3中の実線で示す、直線L0及び直線L1,L2,L3,L4は、少なくともエンジン14を動力源として走行するハイブリッド走行が可能なハイブリッド走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このハイブリッド走行モードでは、差動機構32において、キャリアCA0に入力されるエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクである反力トルクが正回転にてサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=−(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。このとき、第1回転機MG1は正回転にて負トルクを発生する発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ54からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図3に図示はしていないが、エンジン14を停止させると共に第2回転機MG2を動力源として走行するモータ走行が可能なモータ走行モードでの共線図では、差動機構32において、キャリアCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。つまり、モータ走行モードでは、エンジン14は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG2トルクTmが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。ここでのMG2トルクTmは、正回転の力行トルクである。
図3中の破線で示す、直線L0R及び直線LRは、モータ走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このモータ走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが車両10の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。車両10では、後述する電子制御装置90によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。ここでは、前進用のMG2トルクTmは正回転の正トルクとなる力行トルクであり、後進用のMG2トルクTmは負回転の負トルクとなる力行トルクである。このように、車両10では、前進用のATギヤ段を用いて、MG2トルクTmの正負を反転させることで後進走行を行う。前進用のATギヤ段を用いることは、前進走行を行うときと同じATギヤ段を用いることである。尚、ハイブリッド走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、モータ走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
動力伝達装置12では、エンジン14が動力伝達可能に連結された第1回転要素RE1としてのキャリアCA0と第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された第2回転要素RE2としてのサンギヤS0と中間伝達部材30が連結された第3回転要素RE3としてのリングギヤR0との3つの回転要素を有する差動機構32を備えて、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式変速機構としての無段変速部18が構成される。中間伝達部材30が連結された第3回転要素RE3は、見方を換えれば第2回転機MG2が動力伝達可能に連結された第3回転要素RE3である。つまり、動力伝達装置12では、エンジン14が動力伝達可能に連結された差動機構32と差動機構32に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを有して、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される無段変速部18が構成される。無段変速部18は、入力回転部材となる連結軸34の回転速度と同値であるエンジン回転速度Neと、出力回転部材となる中間伝達部材30の回転速度であるMG2回転速度Nmとの比の値である変速比γ0(=Ne/Nm)が変化させられる電気的な無段変速機として作動させられる。
例えば、ハイブリッド走行モードにおいては、有段変速部20にてATギヤ段が形成されたことで駆動輪28の回転に拘束されるリングギヤR0の回転速度に対して、第1回転機MG1の回転速度を制御することによってサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、キャリアCA0の回転速度つまりエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン14を効率の良い運転点にて作動させることが可能である。つまり、ATギヤ段が形成された有段変速部20と無段変速機として作動させられる無段変速部18とで、無段変速部18と有段変速部20とが直列に配置された複合変速機40全体として無段変速機を構成することができる。
又は、無段変速部18を有段変速機のように変速させることも可能であるので、ATギヤ段が形成される有段変速部20と有段変速機のように変速させる無段変速部18とで、複合変速機40全体として有段変速機のように変速させることができる。つまり、複合変速機40において、エンジン回転速度Neの出力回転速度Noに対する比の値を表す変速比γt(=Ne/No)が異なる複数のギヤ段を選択的に成立させるように、有段変速部20と無段変速部18とを制御することが可能である。本実施例では、複合変速機40にて成立させられるギヤ段を模擬ギヤ段と称する。変速比γtは、直列に配置された、無段変速部18と有段変速部20とで形成されるトータル変速比であって、無段変速部18の変速比γ0と有段変速部20の変速比γatとを乗算した値(γt=γ0×γat)となる。
模擬ギヤ段は、例えば有段変速部20の各ATギヤ段と1又は複数種類の無段変速部18の変速比γ0との組合せによって、有段変速部20の各ATギヤ段に対してそれぞれ1又は複数種類を成立させるように割り当てられる。例えば、AT1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段−模擬3速ギヤ段が成立させられ、AT2速ギヤ段に対して模擬4速ギヤ段−模擬6速ギヤ段が成立させられ、AT3速ギヤ段に対して模擬7速ギヤ段−模擬9速ギヤ段が成立させられ、AT4速ギヤ段に対して模擬10速ギヤ段が成立させられるように予め定められている。複合変速機40では、出力回転速度Noに対して所定の変速比γtを実現するエンジン回転速度Neとなるように無段変速部18が制御されることによって、あるATギヤ段において異なる模擬ギヤ段が成立させられる。又、複合変速機40では、ATギヤ段の切替えに合わせて無段変速部18が制御されることによって、模擬ギヤ段が切り替えられる。
図1に戻り、車両10は、エンジン14、無段変速部18、及び有段変速部20などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。よって、図1は、電子制御装置90の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ71、ステアリングセンサ72、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、バッテリセンサ78、油温センサ79、車両周辺情報センサ80、GPSアンテナ81、送受信機82、ナビゲーションシステム83、運転支援設定スイッチ群84など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度NiであるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量としてのアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキペダルの踏力に対応する、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θsw及び操舵方向Dsw、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、係合装置CBの油圧アクチュエータへ供給される作動油すなわち係合装置CBを作動させる作動油の温度である作動油温THoil、車両周辺情報Iard、GPS信号(軌道信号)Sgps、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Ssetなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、送受信機82、ホイールブレーキ装置86、操舵装置88、情報周知装置89など)に各種指令信号(例えばエンジン14を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Sste、運転者に警告や報知を行う為の情報周知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
車両周辺情報センサ80は、例えばライダー、レーダー、及び車載カメラなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、走行中の道路に関する情報や車両周辺に存在する物体に関する情報を直接的に取得する。前記ライダーは、例えば車両10の前方の物体、側方の物体、後方の物体などを各々検出する複数のライダー、又は、車両10の全周囲の物体を検出する一つのライダーであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記レーダーは、例えば車両10の前方の物体、前方近傍の物体、後方近傍の物体などを各々検出する複数のレーダーなどであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記ライダーやレーダーによる物体情報には、検出した物体の車両10からの距離と方向とが含まれる。前記車載カメラは、例えば車両10のフロントガラスの裏側に設けられた、車両10の前方を撮像する単眼カメラ又はステレオカメラであり、撮像情報を車両周辺情報Iardとして出力する。この撮像情報には、走行路の車線、走行路における標識、及び走行路における他車両や歩行者や障害物などの情報が含まれる。
運転支援設定スイッチ群84は、自動運転制御を実行させる為の自動運転選択スイッチ、クルーズ制御を実行させる為のクルーズスイッチ、クルーズ制御における車速を設定するスイッチ、クルーズ制御における先行車との車間距離を設定するスイッチ、設定された車線を維持して走行するレーンキープ制御を実行させる為のスイッチなどを含んでいる。
GPS信号Sgpsは、GPS(Global Positioning System)衛星が発信する信号に基づく地表又は地図上における車両10の位置を示す自車位置情報を含んでいる。
ナビ情報Inaviは、例えばナビゲーションシステム83に予め記憶された地図データに基づく道路情報や施設情報などの地図情報などを含んでいる。前記道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路すなわち高速道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限車速などの情報が含まれる。前記施設情報には、スーパー、商店、レストラン、駐車場、公園、車両10を修理する拠点、自宅、高速道路におけるサービスエリアなどの拠点の種類、所在位置、名称などの情報が含まれる。上記サービスエリアは、例えば高速道路で、駐車、食事、給油などの設備のある拠点である。
ナビゲーションシステム83は、ディスプレイやスピーカ等を有する公知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム83は、GPS信号Sgpsに基づいて、予め記憶された地図データ上に自車位置を特定する。ナビゲーションシステム83は、ディスプレイに表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステム83は、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、ディスプレイやスピーカ等で運転者に走行経路などの指示を行う。
ホイールブレーキ装置86は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置86は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。このホイールブレーキ装置86では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキペダルの踏力に対応した大きさのマスタシリンダ油圧が直接的にブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置86では、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などには、ホイールブレーキによる制動トルクの発生の為に、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪28及び不図示の従動輪である。
操舵装置88は、例えば車速V、操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ヨーレートRyawなどに応じたアシストトルクを車両10の操舵系に付与する。操舵装置88では、例えば自動運転制御時などには、前輪の操舵を制御するトルクを車両10の操舵系に付与する。
情報周知装置89は、例えば車両10の走行に関わる何らかの部品が故障したり、その部品の機能が低下した場合に、運転者に対して警告や報知を行う装置である。情報周知装置89は、例えばモニタやディスプレイやアラームランプ等の表示装置、及び/又はスピーカやブザー等の音出力装置などである。前記表示装置は、運転者に対して視覚的な警告や報知を行う装置である。音出力装置は、運転者に対して聴覚的な警告や報知を行う装置である。
送受信機82は、車両10とは別に存在する車両10とは別の車外装置と通信する機器である。電子制御装置90は、前記車外装置との間で、送受信機82を介して通信信号Scomを送受信する。前記車外装置は、少なくともサーバー100を含んでいる。前記車外装置は、道路交通情報通信システムなどを含んでいても良い。送受信機82は、前記車外装置を介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に通信する機能を有していても良い。
通信信号Scomは、例えばサーバー100との間で送受信された車両状態情報や車両現象情報、前記道路交通情報通信システムとの間で送受信された道路交通情報、車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含んでいる。前記車両状態情報は、例えば各種センサ等により検出された車両10の走行に関わる車両状態を示す情報である。この車両状態は、例えばアクセル開度θacc、車速Vなどである。前記車両現象情報は、例えば後述する外部測定装置122により測定された車両10で生じる所定の現象を示す情報である。この所定の現象は、例えば車内の音つまり音圧、搭乗者が感じる振動などである。本実施例では、音や振動を総称して振動騒音という。前記道路交通情報には、例えば道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報が含まれる。前記車車間通信情報は、例えば車両情報、走行情報、交通環境情報などを含んでいる。前記車両情報には、例えば乗用車、トラック、二輪車などの車種を示す情報が含まれる。前記走行情報には、例えば車速V、位置情報、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などの情報が含まれる。前記交通環境情報には、例えば道路の渋滞、工事などの情報が含まれる。
サーバー100は、車両10外部のネットワーク上におけるシステムである。サーバー100は、各種情報を、受け付けたり、処理したり、解析したり、蓄積したり、提供したりする。具体的には、サーバー100は、演算部102、FFT解析部104、表示部106などを備えている。演算部102は、車両10から送信された車両状態情報や車両現象情報に対して所定の処理を行う。FFT解析部104は、車両10から送信された車両現象情報に対して高速フーリエ変換(=FFT)による周波数分析を行う。表示部106は、演算部102による処理結果、FFT解析部104による分析結果などを、ユーザーが出力装置にて観察することができるようにすなわち閲覧可能となるようにデータ処理する。この出力装置は、例えばディスプレイやプリンターなどである。このディスプレイは、例えばサーバー100と所定のネットワークを介して接続され得るパーソナルコンピューター110のモニタ112である。以下、パーソナルコンピューター110をパソコン110という。
電子制御装置90は、車載装置とは別のオフボードシステム120と、有線及び/又は無線を介して接続され得る。オフボードシステム120は、例えば車内に持ち込まれる外部装置である。具体的には、オフボードシステム120は、外部測定装置122、表示部124などを備えている。外部測定装置122は、車両10で生じる所定の現象の時間変化を測定する現象測定装置である。例えば、外部測定装置122は、音の時間変化を計測する現象測定装置であったり、又は振動の時間変化を計測する現象測定装置である。表示部124は、外部測定装置122による測定結果を表示するディスプレイやプリンターなどである。又は、表示部124は、外部測定装置122による測定結果を、オフボードシステム120と有線及び/又は無線を介して接続され得る前記出力装置にてユーザーが閲覧可能となるようにデータ処理するものであっても良い。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、運転制御手段すなわち運転制御部91、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部92、及びハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部93を備えている。
運転制御部91は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで走行する自動運転制御とを選択的に行うことが可能である。前記手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。その手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。前記自動運転制御は、自動運転にて走行する運転制御である。その自動運転は、運転者の運転操作(意思)に因らず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置90による制御により加減速、制動、操舵などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。
運転制御部91は、運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチにおいて自動運転が選択されていない場合には、手動運転モードを成立させて手動運転制御を実行する。運転制御部91は、有段変速部20やエンジン14や回転機MG1,MG2を各々制御する指令をAT変速制御部92及びハイブリッド制御部93に出力することで手動運転制御を実行する。
以下に、通常走行による手動運転制御の場合を例示して、AT変速制御部92及びハイブリッド制御部93による制御を具体的に説明する。
AT変速制御部92は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば図4に示すようなATギヤ段変速マップを用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行する。AT変速制御部92は、この有段変速部20の変速制御では、有段変速部20のATギヤ段を自動的に切り替えるように、ソレノイドバルブSL1−SL4により係合装置CBの係合解放状態を切り替える為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路56へ出力する。上記ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。ここでは、車速Vに替えて出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。上記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断される為のアップシフト線、及び破線に示すようなダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部93は、エンジン14の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。ハイブリッド制御部93は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]を算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動トルクTrdemの他に、駆動輪28における要求駆動力Frdem[N]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部93は、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン14を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン14のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、又、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力であり、バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力である。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部93は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させて複合変速機40全体として無段変速機として作動させる場合、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、無段変速機として作動させる場合の複合変速機40の変速比γtが制御される。
ハイブリッド制御部93は、例えば無段変速部18を有段変速機のように変速させて複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる場合、予め定められた関係である例えば模擬ギヤ段変速マップを用いて複合変速機40の変速判断を行い、AT変速制御部92による有段変速部20のATギヤ段の変速制御と協調して、複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように無段変速部18の変速制御を実行する。複数の模擬ギヤ段は、それぞれの変速比γtを維持できるように車速Vに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の変速比γtは、車速Vの全域に亘って必ずしも一定値である必要はなく、所定領域で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。このように、ハイブリッド制御部93は、エンジン回転速度Neを有段変速のように変化させる変速制御が可能である。複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる模擬有段変速制御は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合や要求駆動トルクTrdemが比較的大きい場合に、複合変速機40全体として無段変速機として作動させる無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速制御が実行されても良い。
ハイブリッド制御部93は、走行モードとして、モータ走行モード或いはハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部93は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。図4の一点鎖線Aは、車両10の走行用の動力源を、少なくともエンジン14とするか、第2回転機MG2のみとするかを切り替える為の境界線である。すなわち、図4の一点鎖線Aは、ハイブリッド走行とモータ走行とを切り替える為のハイブリッド走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図4の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標で構成された動力源切替マップの一例である。尚、図4では、便宜上、この動力源切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部93は、要求駆動パワーPrdemがモータ走行領域にあるときであっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。モータ走行モードは、エンジン14を停止した状態で第2回転機MG2により駆動トルクを発生させて走行する走行状態である。ハイブリッド走行モードは、エンジン14を運転した状態で走行する走行状態である。前記エンジン始動閾値は、エンジン14を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
ハイブリッド制御部93は、エンジン14の運転停止時にハイブリッド走行モードを成立させた場合には、エンジン14を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部93は、エンジン14を始動するときには、第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上となったときに点火することでエンジン14を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部93は、第1回転機MG1によりエンジン14をクランキングすることでエンジン14を始動する。
ここで、一般的に、車両10の運転中に搭乗者が異常を感じるのは振動騒音等の所定の現象によることが多いと考えられる。その為、所定車速での走行中に車内音等を計測し、異音等の異常が生じているか否かを判定することが考えられる。ところで、車両10自体は振動騒音を観測して制御されることは少なく、車内に専用の測定装置を持ち込んで車内音等を測定する場合が多い。この際、車両状態と所定の現象との関連が分かり難いと、不具合解析において要因特定が困難となるおそれがある。不具合解析において要因特定を容易にすることが望まれる。
具体的には、電子制御装置90は、不具合解析において要因特定を容易にするという制御機能を実現する為に、車両状態検出手段すなわち車両状態検出部94、基準時間出力手段すなわち基準時間出力部96、及び結果出力手段すなわち結果出力部98を備えている。
車両状態検出部94は、所定の基準時間TMbを参照して車両10の走行に関わる車両状態の時間変化を検出する。すなわち、車両状態検出部94は、所定の基準時間TMbを用いた時間函数とされる、車両10の走行に関わる車両状態を検出する。例えば、車両状態検出部94は、所定の基準時間TMbと同期した状態で車両10の走行に関わる車両状態の時間変化を検出する。これにより、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の時間変化が検出され得る。すなわち、所定の基準時間TMbを用いた時間函数で表された車両状態が検出され得る。所定の基準時間TMbは、例えば電子制御装置90内で使用される基本時間の信号である。
基準時間出力部96は、例えばサーバー100から所定の基準時間TMbを取得する。基準時間出力部96は、外部測定装置122に所定の基準時間TMbを出力する。つまり、基準時間出力部96は、外部測定装置122にサーバー100からの所定の基準時間TMbを接続する。これにより、オフボードシステム120において、所定の基準時間TMbに同期させられたすなわち所定の基準時間TMbを用いた時間函数で表された、外部測定装置122からの出力データである所定の現象の測定結果を、ユーザーは表示部124で見ることが可能となる。よって、車両状態の検出結果と所定の現象の測定結果との同期が可能となる。従って、所定の基準時間TMbは、車両状態の検出結果と所定の現象の測定結果とが同期させられるすなわち共通の時間軸上で表される基となる基準時間である。
図5は、所定の基準時間TMbに同期させられた車内音の測定結果の一例を示す図である。図5において、横軸は時間であり、縦軸は音(=ノイズ)の大きさである。横軸の外部測定装置122の時間に対して、接続された所定の基準時間TMbが表示されている。所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果と合わせて見れば、ノイズが大きく異音として指摘される走行状況が特定され得る。
結果出力部98は、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果の情報をサーバー100に出力する。又、結果出力部98は、所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果の情報を外部測定装置122から取得し、その所定の現象の測定結果の情報をサーバー100に出力する。つまり、結果出力部98は、外部測定装置122の出力データをサーバー100に接続する。演算部102は、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果と、所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果とを、同期したデータとする処理を行う。表示部106は、演算部102による処理結果である上記同期したデータをユーザーが例えばパソコン110にて閲覧可能となるようにデータ処理する。これにより、サーバー100において、上記同期したデータが閲覧可能に処理される。
図6は、同期させられた、車内音の測定結果と車速Vの検出結果とアクセル開度θaccの検出結果との一例を示す図であり、例えばパソコン110のモニタ112に表示させられる。図6において、横軸は所定の基準時間TMbであり、縦軸は測定結果や検出結果の各データの大きさである。所定の基準時間TMbに同期させられた、車内音の測定結果と車速Vの検出結果とアクセル開度θaccの検出結果とを合わせて見ることができ、ノイズが大きく異音として指摘されるときの車速Vやアクセル開度θaccが特定され得る。
このように、結果出力部98は、所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果と、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果とを、同期した状態で観察され得るようにすなわち共通の時間軸上で観察され得るように出力する。例えば、結果出力部98は、所定の現象の測定結果と車両状態の検出結果とを同期した状態で観察され得るように出力装置例えばモニタ112に画像を表示させる。
FFT解析部104は、所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果をFFTにより周波数分析する。表示部106は、FFT解析部104による分析結果をユーザーが例えばパソコン110にて閲覧可能となるようにデータ処理する。これにより、サーバー100において、FFT解析部104による分析結果が閲覧可能となる。演算部102は、FFT解析部104による分析結果に基づいて、所定の現象の測定結果と車両状態の検出結果とを関連付ける処理を行う。表示部106は、FFT解析部104による分析結果においてユーザーにより指定されたデータに関連した情報、すなわち演算部102によって関連付けられた情報をユーザーが例えばパソコン110にて閲覧可能となるようにデータ処理する。
図7は、FFTによるノイズの周波数分析の解析結果の一例を示す図である。図7において、横軸は周波数であり、縦軸は音(=ノイズ)の大きさである。図7中の解析結果において、例えば突出しているA部のノイズデータがユーザーにより画面上で指定されたとき、A部におけるノイズデータに関連する車両走行データである、例えば所定の基準時間TMb、車速V、アクセル開度θaccの各データがその画面上に表示される。これにより、不具合の発生状況が正確に特定され得る。
図8は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にする為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば何らかのノイズ又は何らかの振動が問題となった為に車室内にノイズ又は振動を計測するオフボードシステム120を配置して測定するような状況において実行される。
図8において、先ず、基準時間出力部96の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、外部測定装置122にサーバー100からの所定の基準時間TMbが接続される。この所定の基準時間TMbは電子制御装置90内で使用されており、車両状態検出部94により所定の基準時間TMbと同期した状態で車速V等の車両状態が検出される。次いで、結果出力部98の機能に対応するS20において、外部測定装置122の出力データがサーバー100に接続される。又、車両状態の検出結果の情報がサーバー100に出力される。次いで、結果出力部98の機能に対応するS30において、サーバー100において同期したデータとする処理が為された、車両状態の検出結果と所定の現象の測定結果とが、パソコン110に表示させられる(前記図6参照)。又、サーバー100において自動的にFFTにより周波数分析された所定の現象の測定結果もパソコン110に表示させられる(前記図7参照)。次いで、結果出力部98の機能に対応するS40において、表示されたFFTによる解析結果を基にしてユーザーにより指示された所定の現象の測定結果における指定位置が受け付けられる。例えば、解析結果の中で突出した所定の現象のデータがユーザーにより指示されることが想定される。次いで、結果出力部98の機能に対応するS50において、指示された指定位置における所定の現象のデータに関連した車両走行データがその画面上に表示される(前記図7参照)。
上述のように、本実施例によれば、所定の基準時間TMbに同期させられた所定の現象の測定結果と、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果とが同期した状態で観察され得るように出力される、例えばパソコン110のモニタ112に表示させられるので、所定の現象における異常の特定やその異常の発生要因や発生条件の絞り込みが行い易くされる。つまり、車両状態と所定の現象との関連が分かり易くなり、不具合解析において要因特定を容易にすることができる。例えば、所定の現象としてノイズを測定した場合、そのノイズにおける異音がギヤノイズ又はポンプノイズ等であるのかが特定し易くされる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、所定の基準時間TMbを参照して車両状態の時間変化を検出することの一例として、所定の基準時間TMbと同期した状態で車両状態の時間変化を検出することを挙げたが、この態様に限らない。例えば、車両状態の時間変化を検出した後にその検出結果が所定の基準時間TMbと同期させられても良い。
また、前述の実施例では、所定の現象の測定結果と車両状態の検出結果とを同期した状態で観察され得るように出力することの一例として、出力装置に画像を表示させることを挙げたが、この態様に限らない。例えば、検出結果のデータを何らかの出力装置に送信しても良いし、又は、検出結果のデータを読み取り可能に記憶装置に記憶させても良いし、又は、出力装置に数値を表示させても良い。上記数値は、例えば所定の現象の測定結果と車両状態の検出結果とが所定のサンプリング周期毎に数値化された値である。
また、前述の実施例において、外部測定装置122にサーバー100からの所定の基準時間TMbを接続することに加え、所定の基準時間TMbに同期させられた車両状態の検出結果がオフボードシステム120に出力されても良い。これにより、オフボードシステム120において、車両状態の検出結果と所定の現象の測定結果とが同期した状態で閲覧され得る。
また、前述の実施例では、サーバー100から取得された所定の基準時間TMbが外部測定装置122に出力されたが、この態様に限らない。例えば、電子制御装置90内で元々使用されている基本時間が所定の基準時間TMbとして外部測定装置122に出力されても良い。この場合、電子制御装置90内で元々使用されている基本時間が所定の基準時間TMbとしてサーバー100にも出力される。
また、前述の実施例では、電子制御装置90は、車両状態検出部94、基準時間出力部96、及び結果出力部98を備える車両用の制御装置であったが、この態様に限らない。例えば、サーバー100が結果出力部98を備えていても良いし、又は、パソコン110が結果出力部98を備えていても良い。この場合、サーバー100又はパソコン110は車両用の制御装置の一部を構成する。又、検出結果や測定結果や解析結果等は、モニタ112に表示されたが、オフボードシステム120の表示部124に表示されても良いし、又は、車両10が備えるモニタ等の表示装置に表示されても良い。
また、前述の実施例において、無段変速部18は、差動機構32の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により差動作用が制限され得る変速機構であっても良い。又、差動機構32は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であっても良い。又、差動機構32は、複数の遊星歯車装置が相互に連結されることで4つ以上の回転要素を有する差動機構であっても良い。又、差動機構32は、エンジン14によって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車に第1回転機MG1及び中間伝達部材30が各々連結された差動歯車装置であっても良い。又、差動機構32は、2以上の遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、回転機、駆動輪が動力伝達可能に連結される機構であっても良い。
また、前述の実施例において、動力源の動力を駆動輪へ伝達する動力伝達装置に設けられた変速機として、複合変速機40を例示したが、この態様に限らない。例えば、前記変速機としては、無段変速部18のような電気式の無段変速機又は有段変速部20のような遊星歯車式の自動変速機でも良いし、又は、同期噛合型平行2軸式自動変速機、その同期噛合型平行2軸式自動変速機であって入力軸を2系統備える公知のDCT(Dual Clutch Transmission)、ベルト式の無段変速機等の公知の機械式の無段変速機などの自動変速機であっても良い。又、エンジンによる発電電力及び/又はバッテリから供給される電力で駆動される回転機の動力のみが動力伝達装置を介して駆動輪へ伝達される車両では、この動力伝達装置は変速機を備えていなくても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
90:電子制御装置(制御装置)
94:車両状態検出部
96:基準時間出力部
98:結果出力部
112:モニタ(出力装置)
122:外部測定装置(現象測定装置)
90:電子制御装置(制御装置)
94:車両状態検出部
96:基準時間出力部
98:結果出力部
112:モニタ(出力装置)
122:外部測定装置(現象測定装置)
Claims (1)
- 所定の基準時間を参照して車両の走行に関わる車両状態の時間変化を検出する車両状態検出部と、
前記車両で生じる所定の現象の時間変化を測定する現象測定装置に前記所定の基準時間を出力する基準時間出力部と、
前記所定の基準時間に同期させられた前記所定の現象の測定結果と、前記車両状態の検出結果とを同期した状態で観察され得るように出力する結果出力部と
を、含むことを特徴とする車両用の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019040054A JP2020143973A (ja) | 2019-03-05 | 2019-03-05 | 車両用の制御装置 |
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2019
- 2019-03-05 JP JP2019040054A patent/JP2020143973A/ja not_active Withdrawn
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JP6887587B1 (ja) * | 2020-12-18 | 2021-06-16 | 三菱電機株式会社 | 制御装置、同期システム、機械の制御方法および機械の制御プログラム |
WO2022130627A1 (ja) * | 2020-12-18 | 2022-06-23 | 三菱電機株式会社 | 制御装置、同期システム、機械の制御方法および機械の制御プログラム |
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