本発明の実施形態において、前記動力伝達装置は、変速機を備えている。この変速機における変速比は、「入力側の回転部材の回転速度/出力側の回転部材の回転速度」である。この変速比におけるハイ側は、変速比が小さくなる側である高車速側である。変速比におけるロー側は、変速比が大きくなる側である低車速側である。例えば、最ロー側変速比は、最も低車速側となる最低車速側の変速比であり、変速比が最も大きな値となる最大変速比である。
また、前記車両用駆動力源は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の機関としてのエンジンである。又、前記車両は、前記車両用駆動力源として、前記エンジンに加えて、又は、前記エンジンに替えて、回転機等を備えていても良い。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力伝達装置12、エンジン14、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2を備えている。
エンジン14は、駆動力を発生することが可能な車両用駆動力源であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン14は、後述する電子制御装置90によって車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン14の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTg及び第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えばエンジン14の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース16内に設けられている。
動力伝達装置12は、ケース16内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部18及び機械式有段変速部20等を備えている。電気式無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン14に連結されている。機械式有段変速部20は、電気式無段変速部18の出力側に連結されている。又、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。車軸26は、車両10が備える駆動輪28と連結されている。尚、以下、電気式無段変速部18を無段変速部18、機械式有段変速部20を有段変速部20という。又、無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。上記共通の軸心は、エンジン14のクランク軸、そのクランク軸に連結された無段変速部18の入力回転部材である連結軸30などの軸心である。
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン14の動力を第1回転機MG1及び無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材32に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構34とを備えている。中間伝達部材32には、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構34の差動状態が制御される電気式無段変速機である。無段変速部18は、変速比(ギヤ比ともいう)γ0(=エンジン回転速度Ne/MG2回転速度Nm)が変化させられる電気的な無段変速機として作動させられる。エンジン回転速度Neは、エンジン14の回転速度であり、無段変速部18の入力回転速度すなわち連結軸30の回転速度と同値である。MG2回転速度Nmは、第2回転機MG2の回転速度であり、無段変速部18の出力回転速度すなわち中間伝達部材32の回転速度と同値である。第1回転機MG1は、エンジン回転速度Neを制御可能な回転機であって、差動用回転機に相当する。尚、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。
差動機構34は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0には連結軸30を介してエンジン14が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構34において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部20は、中間伝達部材32と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速機としての機械式変速機構、つまり無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。中間伝達部材32は、有段変速部20の入力回転部材としても機能する。中間伝達部材32には第2回転機MG2が一体回転するように連結されている。第2回転機MG2は、駆動力を発生することが可能な車両用駆動力源として機能する回転機であって、走行駆動用回転機に相当する。又、無段変速部18の入力側にはエンジン14が連結されている。よって、有段変速部20は、駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する自動変速機である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両10に備えられた油圧制御回路56内の各ソレノイドバルブSL1-SL4等から出力される調圧された係合装置CBの各係合圧によりそれぞれのトルク容量が変化させられることで、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部20は、第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材32、ケース16、或いは出力軸22に連結されている。第1遊星歯車装置36の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置38の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部20は、複数の係合装置のうちの何れかの係合装置である例えば所定の係合装置の係合によって、変速比γat(=AT入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。つまり、有段変速部20は、複数の係合装置の何れかが係合されることで、ギヤ段が切り替えられるすなわち変速が実行される。本実施例では、有段変速部20にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部20の入力回転速度すなわち中間伝達部材32の回転速度であり、MG2回転速度Nmと同値である。AT入力回転速度Niは、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部20の出力回転速度すなわち出力軸22の回転速度である。出力回転速度Noは、無段変速部18と有段変速部20とを合わせた全体の自動変速機である複合変速機40の出力回転速度でもある。尚、エンジン回転速度Neは、複合変速機40の入力回転速度でもある。
有段変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。又、後進用のATギヤ段(図中の「Rev」)は、例えばクラッチC1の係合且つブレーキB2の係合によって形成される。つまり、後進走行を行う際には、例えばAT1速ギヤ段が形成される。図2の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。すなわち、図2の係合作動表は、各ATギヤ段と、各ATギヤ段において各々係合される係合装置である所定の係合装置との関係をまとめたものである。図2において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部20のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部20は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部20の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。
車両10は、更に、機械式のオイルポンプであるMOP58、不図示の電動式のオイルポンプ等を備えている。MOP58は、連結軸30に連結されており、エンジン14の回転と共に回転させられて動力伝達装置12にて用いられる作動油OILを吐出する。又、不図示の電動式のオイルポンプは、例えばエンジン14の停止時すなわちMOP58の非駆動時に駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP58や不図示の電動式のオイルポンプが吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。係合装置CBは、作動油OILを元にして油圧制御回路56により調圧された各係合圧によって作動状態が切り替えられる。
図3は、無段変速部18と有段変速部20とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図3において、無段変速部18を構成する差動機構34の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部20の入力回転速度)を表すm軸である。又、有段変速部20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度(すなわち出力軸22の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構34の歯車比ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置36、38の各歯車比ρ1、ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリアとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)に対応する間隔とされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、無段変速部18の差動機構34において、第1回転要素RE1にエンジン14(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材32と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されて、エンジン14の回転を中間伝達部材32を介して有段変速部20へ伝達するように構成されている。無段変速部18では、縦線Y2を横切る各直線L0e、L0m、L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
又、有段変速部20において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材32に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸22に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材32に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース16に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース16に選択的に連結される。有段変速部20では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1、L2、L3、L4、LRにより、出力軸22における「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」、「Rev」の各回転速度が示される。
図3中の実線で示す、直線L0e及び直線L1、L2、L3、L4は、少なくともエンジン14を駆動力源として走行するハイブリッド走行(=HV走行)が可能なHV走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このHV走行モードでは、差動機構34において、キャリアCA0に入力される正トルクのエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクの反力トルクとなるMG1トルクTgがサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=-(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。第1回転機MG1は、正回転にて負トルクを発生する場合には発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ54からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図3中の一点鎖線で示す直線L0m及び図3中の実線で示す直線L1、L2、L3、L4は、エンジン14の運転を停止した状態で第2回転機MG2を駆動力源として走行するモータ走行(=EV走行)が可能なEV走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。EV走行モードでの前進走行におけるEV走行では、キャリアCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。つまり、EV走行モードでの前進走行では、エンジン14は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG2トルクTmが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。ここでのMG2トルクTmは、正回転且つ正トルクの力行トルクである。
図3中の破線で示す、直線L0R及び直線LRは、EV走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このEV走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが車両10の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。車両10では、後述する電子制御装置90によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。ここでのMG2トルクTmは、負回転且つ負トルクの力行トルクである。尚、HV走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、EV走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
車両10は、走行用の駆動力源として、エンジン14及び第2回転機MG2を備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力は、有段変速部20へ伝達され、その有段変速部20から差動歯車装置24等を介して駆動輪28へ伝達される。このように、動力伝達装置12は、駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)からの駆動力を駆動輪28へ伝達する。尚、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
図1に戻り、車両10は、エンジン14、無段変速部18、及び有段変速部20などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。図1は、電子制御装置90の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じて駆動力源制御用、有段変速制御用等に分けて構成される。電子制御装置90は、車両10に搭載された車載制御装置である。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ71、ステアリングセンサ72、ドライバ状態センサ73、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、バッテリセンサ78、油温センサ79、車両周辺情報センサ80、車両位置センサ81、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ナビゲーションシステム83、運転支援設定スイッチ群84、シフトポジションセンサ85など)による検出値に基づく各種信号Sss等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度NiであるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ステアリングホイールが運転者によって握られている状態を示す信号であるステアリングオン信号SWon、運転者の状態を示す信号であるドライバ状態信号Drv、車両10の前後加速度Gx及び左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油OILの温度である作動油温THoil、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Sset、車両10に備えられたシフトレバーの操作ポジションPOSshなど)が、それぞれ供給される。
運転者のアクセル操作量は、例えばアクセルペダルなどのアクセル操作部材の操作量である加速操作量であって、車両10に対する運転者の出力要求量である。運転者の出力要求量としては、アクセル開度θaccの他に、スロットル弁開度θthなどを用いることもできる。
ドライバ状態センサ73は、例えば運転者の表情や瞳孔などを撮影するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体情報センサなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、運転者の視線や顔の向き、眼球や顔の動き、心拍の状態等の運転者の状態を取得する。
車両周辺情報センサ80は、例えばライダー、レーダー、及び車載カメラなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、走行中の道路に関する情報や車両周辺に存在する物体に関する情報を直接的に取得する。前記ライダーは、例えば車両10の前方の物体、側方の物体、後方の物体などを各々検出する複数のライダー、又は、車両10の全周囲の物体を検出する一つのライダーであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記レーダーは、例えば車両10の前方の物体、前方近傍の物体、後方近傍の物体などを各々検出する複数のレーダーなどであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記ライダーやレーダーによる物体情報には、検出した物体の車両10からの距離と方向とが含まれる。前記車載カメラは、例えば車両10の前方や後方を撮像する単眼カメラ又はステレオカメラであり、撮像情報を車両周辺情報Iardとして出力する。この撮像情報には、走行路の車線、走行路における標識、駐車スペース、及び走行路における他車両や歩行者や障害物などの情報が含まれる。
車両位置センサ81は、GPSアンテナなどを含んでいる。位置情報Ivpは、GPS(Global Positioning System)衛星が発信するGPS信号(軌道信号)などに基づく地表又は地図上における車両10の現在位置を示す情報である自車位置情報を含んでいる。
ナビゲーションシステム83は、ディスプレイやスピーカ等を有する公知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム83は、位置情報Ivpに基づいて、予め記憶された地図データ上に自車位置を特定する。ナビゲーションシステム83は、ディスプレイに表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステム83は、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、ディスプレイやスピーカ等で運転者に走行経路などの指示を行う。ナビ情報Inaviは、例えばナビゲーションシステム83に予め記憶された地図データに基づく道路情報や施設情報などの地図情報などを含んでいる。前記道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路すなわち高速道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限速度などの情報が含まれる。前記施設情報には、スーパー、商店、レストラン、駐車場、公園、車両10の故障対応業者、自宅、高速道路におけるサービスエリアなどの拠点の種類、所在位置、名称などの情報が含まれる。上記サービスエリアは、例えば高速道路で、駐車、食事、給油などの設備のある拠点である。
運転支援設定スイッチ群84は、自動運転制御を実行させる為の自動運転選択スイッチ、クルーズ制御を実行させる為のクルーズスイッチ、クルーズ制御における車速を設定するスイッチ、クルーズ制御における先行車との車間距離を設定するスイッチ、設定された車線を維持して走行するレーンキープ制御を実行させる為のスイッチなどを含んでいる。
通信信号Scomは、例えば道路交通情報通信システムなどの車外装置であるセンターとの間で送受信された道路交通情報など、及び/又は、前記センターを介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含んでいる。前記道路交通情報には、例えば道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報が含まれる。前記車車間通信情報は、例えば車両情報、走行情報、交通環境情報などを含んでいる。前記車両情報には、例えば乗用車、トラック、二輪車などの車種を示す情報が含まれる。前記走行情報には、例えば車速V、位置情報、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などの情報が含まれる。前記交通環境情報には、例えば道路の渋滞、工事などの情報が含まれる。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ホイールブレーキ装置86、操舵装置88、情報周知装置89など)に各種指令信号Sct(例えばエンジン14を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Sste、運転者に警告や報知を行う為の情報周知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
ホイールブレーキ装置86は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置86は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ホイールブレーキ装置86では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキ操作量Braに対応した大きさのマスタシリンダ油圧がブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置86では、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などには、ホイールブレーキによる制動トルクの発生の為に、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪28及び不図示の従動輪である。
操舵装置88は、例えば車速V、操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ヨーレートRyawなどに応じたアシストトルクを車両10の操舵系に付与する。操舵装置88では、例えば自動運転制御時などには、前輪の操舵を制御するトルクを車両10の操舵系に付与する。
情報周知装置89は、例えば車両10の走行に関わる何らかの部品が故障したり、その部品の機能が低下した場合に、運転者に対して警告や報知を行う装置である。情報周知装置89は、例えばモニタやディスプレイやアラームランプ等の表示装置、及び/又はスピーカやブザー等の音出力装置などである。前記表示装置は、運転者に対して視覚的な警告や報知を行う装置である。音出力装置は、運転者に対して聴覚的な警告や報知を行う装置である。
車両10は、更に、送受信機100、第1ゲートウェイECU110、第2ゲートウェイECU120、コネクタ130等を備えている。
送受信機100は、車両10とは別に存在する、車両10とは別の車外装置であるサーバー200と通信する機器である。第1ゲートウェイECU110及び第2ゲートウェイECU120は、各々、電子制御装置90と同様のハード構成を備えており、例えば電子制御装置90内の書き換え可能なROMに記憶された車両用プログラム91の書き換え用に設けられた制御装置である。第1ゲートウェイECU110及び第2ゲートウェイECU120は、各々、車両10に搭載された車載制御装置である。車両用プログラム91は、電子制御装置90による車両10の制御に用いられるプログラムである。コネクタ130は、車両10とは別に存在する、車両10とは別の車外装置である外部書き換え装置210を接続する為のものである。コネクタ130は、公知の規格によって形状や電気信号が定められている。コネクタ130は、故障診断装置を接続するコネクタとして用いることも可能である。コネクタ130の規格には、例えばOBD(On-Board Diagnostics)、WWH-OBD(World Wide Harmonized-OBD)、KWP(Keyword Protocol)、UDS(Unified Diagnostic Services)等がある。コネクタ130は、OBDコネクタ、DLCコネクタ、故障診断コネクタなどと呼ばれている。
サーバー200は、図4に示すように、車両10外部のネットワーク220に接続されたシステムである。サーバー200は、アップロードされた更新用プログラム202を記憶している。サーバー200は、必要に応じて更新用プログラム202を車両10に送信する。サーバー200は、更新用プログラム202等を配信するソフト配信センターとして機能する。更新用プログラム202は、車両用プログラム91を書き換え対象とするプログラムであり、車両用プログラム91の更新後のプログラムとなるものである。外部書き換え装置210は、車内通信網に直接的に接続され、電子制御装置90などと同様に、車内通信網を流れるCAN(Controller Area Network)フレームを受信したり、車内通信網にCANフレームを送信することができる。
送受信機100は、図4に示すように、無線装置230との間での無線通信Rを介してネットワーク220と接続されている。無線装置230は、ネットワーク220と接続された、無線通信Rを介して各種信号を送受信する送受信装置である。第1ゲートウェイECU110は、送受信機100と接続されており、送受信機100がサーバー200から無線通信Rを介して受信した更新用プログラム202に車両用プログラム91を書き換える為のものである。第2ゲートウェイECU120は、コネクタ130と接続されており、コネクタ130を介して接続される外部書き換え装置210を用いて、車両用プログラム91を書き換える為のものである。尚、外部ネットワーク通信用アンテナ82を介してサーバー200との間で無線通信Rが行われても良い。又、車両10と外部書き換え装置210とは、コネクタ130を介して有線にて接続可能に構成されているが、無線にて接続可能に構成されても良い。又、便宜上、書き換え対象を車両用プログラム91と表しているが、車両用ソフトウェアや車両用データ等も同意である。
第1ゲートウェイECU110は、車両用プログラム91の更新を実行する制御を実現する為に、プログラム更新手段すなわちプログラム更新部112を備えている。プログラム更新部112は、更新用プログラム202がサーバー200に存在するか否かを判定する。プログラム更新部112は、更新用プログラム202がサーバー200に存在すると判定した場合には、サーバー200から無線通信Rを介して更新用プログラム202を受信する、つまり更新用プログラム202のダウンロードを実施する。プログラム更新部112は、サーバー200から受信した更新用プログラム202に車両用プログラム91を書き換える、すなわち車両用プログラム91を更新する。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、更に、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部92、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部93、及び運転制御手段すなわち運転制御部94を備えている。
AT変速制御部92は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば図5に示すようなATギヤ段変速マップを用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行する為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路56へ出力する。上記ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。ここでは、車速Vに替えて出力回転速度Noなどを用いても良い。又、要求駆動力Frdemに替えて要求駆動トルクTrdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。上記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断される為のアップシフト線、及び破線に示すようなダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部93は、エンジン14の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能とを含んでおり、それらの制御機能によりエンジン14、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部93は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動力Frdemを算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdem[N]の他に、駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。ハイブリッド制御部93は、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動トルクTrdemと車速Vとに基づく要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン14を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン14のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、又、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力であり、バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力である。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電量に相当する充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部93は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させて複合変速機40全体として無段変速機として作動させる場合、最適エンジン動作点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、無段変速機として作動させる場合の複合変速機40の変速比γt(=γ0×γat=Ne/No)が制御される。最適エンジン動作点は、例えば要求エンジンパワーPedemを実現するときに、エンジン14単体の燃費にバッテリ54における充放電効率等を考慮した車両10におけるトータル燃費が最も良くなるエンジン動作点として予め定められている。このエンジン動作点は、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン14の運転点である。
ハイブリッド制御部93は、例えば無段変速部18を有段変速機のように変速させて複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる場合、予め定められた関係である例えば有段変速マップを用いて複合変速機40の変速判断を行い、AT変速制御部92による有段変速部20のATギヤ段の変速制御と協調して、変速比γtが異なる複数のギヤ段を選択的に成立させるように無段変速部18の変速制御を実行する。複数のギヤ段は、それぞれの変速比γtを維持できるように出力回転速度Noに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。
ハイブリッド制御部93は、走行モードとして、EV走行モード又はHV走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部93は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなEV走行領域にある場合には、EV走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるHV走行領域にある場合には、HV走行モードを成立させる。図5の一点鎖線Aは、HV走行モードとEV走行モードとを切り替える為のHV走行領域とEV走行領域との境界線である。この図5の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標で構成された走行モード切替マップの一例である。尚、図5では、便宜上、この走行モード切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部93は、要求駆動パワーPrdemがEV走行領域にあるときであっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン14の暖機が必要な場合などには、HV走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン14を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
ハイブリッド制御部93は、エンジン14の運転停止時にHV走行モードを成立させた場合には、エンジン14を始動するエンジン始動制御を行う。ハイブリッド制御部93は、エンジン14を始動するときには、例えば第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定点火可能回転速度以上となったときに点火することでエンジン14を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部93は、第1回転機MG1によりエンジン14をクランキングすることでエンジン14を始動する。
運転制御部94は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作に因らず車両10を運転する運転支援制御とを行うことが可能である。前記手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。その手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。前記運転支援制御は、例えば運転操作を自動的に支援する運転支援にて走行する運転制御である。その運転支援は、運転者の運転操作(意思)に因らず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置90による制御により加減速、制動などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。前記運転支援制御は、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速、制動、操舵などを自動的に行う自動運転にて走行する自動運転制御などである。尚、運転支援制御には、操舵操作などの一部の運転操作を運転者が行い、加減速、制動などを自動的に行うようなクルーズ制御を含めても良い。
運転制御部94は、運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチやクルーズスイッチなどがオフとされて運転支援による運転が選択されていない場合には、手動運転モードを成立させて手動運転制御を実行する。運転制御部94は、有段変速部20やエンジン14や回転機MG1、MG2を各々制御する指令をAT変速制御部92及びハイブリッド制御部93に出力することで手動運転制御を実行する。
運転制御部94は、運転者によって運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。具体的には、運転制御部94は、運転者により入力された目的地、位置情報Ivpに基づく自車位置情報、ナビ情報Inaviなどに基づく地図情報、及び車両周辺情報Iardに基づく走行路における各種情報等に基づいて、自動的に目標走行状態を設定する。運転制御部94は、設定した目標走行状態に基づいて加減速と制動と操舵とを自動的に行うように、有段変速部20やエンジン14や回転機MG1、MG2を各々制御する指令をAT変速制御部92及びハイブリッド制御部93に出力することに加え、必要な制動トルクを得る為のブレーキ制御指令信号Sbraをホイールブレーキ装置86に出力し、前輪の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Ssteを操舵装置88に出力することで自動運転制御を行う。
ここで、電子制御装置90は、車両用プログラム91の更新を実行する車両用プログラム更新システム300の一部を構成する。図1は、電子制御装置90などを含む車両用プログラム更新システム300を説明する図でもある。図1において、車両用プログラム更新システム300は、電子制御装置90、送受信機100、第1ゲートウェイECU110、サーバー200、及び無線装置230(図4参照)などを含んでいる。車両用プログラム更新システム300は、車両用プログラム91の少なくとも一部を、サーバー200から無線通信Rを介して車両10にて受信された更新用プログラム202に更新する。
ところで、現在の車両用プログラム91を更新用プログラム202に更新した後の更新後の車両用プログラム91すなわち更新後車両用プログラム91rに異常が発生する可能性がある。更新後車両用プログラム91rに異常が発生した場合、電子制御装置90による車両10の制御ができなくなる。車両10の修理工場、車両10の販売業者(=ディーラー)240(後述の図10参照)などの専門業者において車両用プログラム91の更新を実施する場合には、更新後車両用プログラム91rの異常に対して専門業者による修理対応が容易である。一方で、サーバー200から無線通信Rを介して受信した更新用プログラム202に車両用プログラム91を更新する場合には、更新後車両用プログラム91rの異常に対して専門業者による修理対応が困難になるおそれがある。
前述したような課題に対して、例えば退避走行用プログラムを電子制御装置90内の書き換え不能なROMに予め記憶させておき、更新後車両用プログラム91rの異常発生時には、その退避走行用プログラムを用いて、車両10を安全な場所に移動させたり、車両10を修理工場等まで走行させたりするなどの退避走行を行うことが考えられる。しかしながら、退避走行用プログラムを記憶するROMの容量を大きくする必要があるときには、コストが増加してしまう。
尚、車両用プログラム91は、例えば電子制御装置90によるエンジン14の制御に用いられるENG用プログラム、電子制御装置90による第1回転機MG1及び第2回転機MG2の制御に用いられるMG用プログラム、電子制御装置90による動力伝達装置12の制御に用いられる動力伝達装置用プログラム、特には電子制御装置90による有段変速部20の制御に用いられるAT用プログラム91aなどを含んでいる。本実施例では、上述したような課題の対象となる車両用プログラム91は、特にはAT用プログラム91aである。
本実施例では、前述したような課題に対して、電子制御装置90は、車両用プログラム91の更新が正常に行われなかった場合には、電子制御装置90による通常制御CTnmから、電子制御装置90による制御に依らない退避制御CTlpへ移行する。通常制御CTnmは、例えばAT用プログラム91aを用いて電子制御装置90から油圧制御指令信号Satを出力して有段変速部20の制御を行うような電子制御装置90による車両用プログラム91を用いた車両10の制御である。退避制御CTlpは、例えば電子制御装置90による制御を受けることなく駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)からの駆動力を用いて走行する退避走行を行うような車両10の制御である。本実施例では、通常制御CTnmを行う制御モードを通常制御モードと称する。又、本実施例では、退避制御CTlpを行う制御モードを、退避制御モード又はリンプホームモードと称する。本実施例のリンプホームモードでは、車両用プログラム91とは別の退避走行用プログラム例えば退避制御CTlp用のプログラムを必要としないので、コストの増加が抑制される。
具体的には、電子制御装置90は、コストの増加を抑制しつつ退避走行を適切に実行することができる車両用プログラム更新システム300を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部96、正常更新判定手段すなわち正常更新判定部97、及び退避走行実行手段すなわち退避走行実行部98を備えている。
状態判定部96は、プログラム更新部112による更新用プログラム202への車両用プログラム91の更新が完了したか否かを判定する。
正常更新判定部97は、状態判定部96により車両用プログラム91の更新が完了したと判定された場合には、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かを判定する。正常更新判定部97は、例えば車両10にダウンロードされた更新用プログラム202と、更新後車両用プログラム91rとのメモリ差分比較を行うことによって、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かを判定する。又は、正常更新判定部97は、例えば仮想空間310上で更新後車両用プログラム91rを動作させて異常な制御が為されていないかを確認することによって、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かを判定する。
図6は、正常更新判定部97によって実施される仮想空間310における更新後車両用プログラム91rの動作チェックの一例を説明する図である。仮想空間310は、車両用プログラム更新システム300にて作り出された仮想の空間である。図6において、サーバー200は、仮想の入力情報である仮想入力情報Ivinを車両用プログラム91の更新を完了した車両10へ送信する。仮想入力情報Ivinは、例えば仮想制御情報Ivc、仮想センサ情報Ivsなどである。仮想制御情報Ivcは、例えば車両10の制御の為の環境因子の情報である。具体的には、仮想制御情報Ivcは、アクセル開度θacc、路面摩擦抵抗などの仮想値の情報である。又、仮想センサ情報Ivsは、動力伝達装置12への入力や動力伝達装置12からの出力に関わるセンサの検出信号の情報である。具体的には、仮想センサ情報Ivsは、入力トルク、入力回転速度、出力トルク、出力回転速度などの仮想値の情報である。電子制御装置90は、仮想入力情報Ivinに基づいて、更新後車両用プログラム91rを用いたときの制御結果を算出する。この制御結果は、動力伝達装置12や駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)を制御する為の各種指令信号Sctである。電子制御装置90は、その各種指令信号Sctの情報である指令信号情報Iscをサーバー200へ送信する。サーバー200は、指令信号情報Iscに基づいて車両10における仮想の車両挙動である仮想車両挙動Avvを算出し、次のステップの仮想入力情報Ivinを車両10へ送信する。仮想入力情報Ivinの送信から仮想車両挙動Avvの算出までの一連の制御作動が繰り返し行われる。サーバー200又は電子制御装置90は、仮想車両挙動Avvが仮想入力情報Ivinに対して求められる車両挙動になっているか否かを判定することで、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かを判定する。仮想車両挙動Avvが仮想入力情報Ivinに対して求められる車両挙動になっているか否かを判定することは、仮想入力情報Ivinにて想定される車両挙動と仮想車両挙動Avvとが一致していると見ることができるか否かを判定することであり、仮想入力情報Ivinに対して仮想車両挙動Avvが整合するか否かを判定することである。仮想車両挙動Avvが仮想入力情報Ivinに対して求められる車両挙動になっているか否かの判断の基準の具体例としては、車両挙動としての出力回転速度Noに異常な変動がないこと、規定時間内に動力伝達装置12の制御が終了していることなどが挙げられる。仮想空間310における更新後車両用プログラム91rの動作チェックでは、更新後車両用プログラム91rを用いて実際に車両10を動作させる必要がない。又、仮想空間310における更新後車両用プログラム91rの動作チェックは、車両10にダウンロードされた更新用プログラム202と更新後車両用プログラム91rとを比較するものではないので、ダウンロードに不具合などがあったことで車両10にダウンロードされた更新用プログラム202自体が正常でない場合でも、更新後車両用プログラム91rの動作チェックが可能である。
このように、正常更新判定部97は、仮想空間310において、更新後車両用プログラム91rを用いたときの仮想入力情報Ivinに基づいた電子制御装置90による指令信号情報Iscを基にして仮想車両挙動Avvを算出し、仮想入力情報Ivinに対して仮想車両挙動Avvが整合するか否かに基づいて、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かを判定する。尚、図6に示したような更新後車両用プログラム91rの動作チェックを仮想空間310において実施する場合には、正常更新判定部97の機能の一部はサーバー200に備えられている。
正常更新判定部97は、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かに基づいて、車両用プログラム91の更新が正常に完了したか否かを判定する。
電子制御装置90は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常である、つまり車両用プログラム91の更新が正常に完了したと判定された場合には、通常制御モードによる車両10の制御を実行する。
図7は、通常制御モード時の車両10の制御の一例を説明する図である。図7において、電子制御装置90特にはAT変速制御部92は、通常制御モード時には、各種センサ等による各種信号Sss等に基づいて、動力伝達装置12特には有段変速部20を制御する為の油圧制御指令信号Satを出力する。動力伝達装置12は、通常制御モード時には、電子制御装置90からの油圧制御指令信号Sat等に応じて構成部品が作動させられ、油圧制御指令信号Sat等に合わせた制御が実施される。これにより、動力伝達装置12の入力回転速度、動力伝達装置12への入力トルク、動力伝達装置12への入力振動などが、目標の出力回転速度、出力トルク、出力振動などへ変換される。
退避走行実行部98は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でない、つまり車両用プログラム91の更新が正常に完了しなかったと判定された場合には、制御モードを通常制御モードからリンプホームモードへ移行する。退避走行実行部98は、リンプホームモード時には、電子制御装置90特にはAT変速制御部92からの油圧制御指令信号Satの出力を禁止する。すなわち、退避走行実行部98は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定された場合には、電子制御装置90による通常制御CTnmから、退避制御CTlpへ移行して、車両10の制御を変更する。
図8は、リンプホームモード時の車両10の制御の一例を説明する図である。図8において、電子制御装置90特にはAT変速制御部92は、リンプホームモード時には、動力伝達装置12特には有段変速部20を制御する為の油圧制御指令信号Satを出力しない。動力伝達装置12は、リンプホームモード時には、電子制御装置90からの油圧制御指令信号Satを受けることなく、予め定められたフェールセーフ制御CTfsにて作動させられる。これにより、動力伝達装置12は、電子制御装置90から独立して制御される、つまりスタンドアローンで制御される。
具体的には、油圧制御回路56は、例えば各ソレノイドバルブSL1-SL4、各ソレノイドバルブSL1-SL4の元圧を調圧する為のソレノイドバルブSLTなどの一部に対する電源供給が遮断されると、有段変速部20にて所定の退避走行用変速段を形成可能に各ソレノイドバルブSL1-SL4の作動状態が切り替えられるように構成されている。フェールセーフ制御CTfsは、油圧制御回路56内の各ソレノイドバルブSL1-SL4、SLTなどへの電源供給を一部遮断することで、油圧制御指令信号Satを受けなくても有段変速部20にて所定の退避走行用変速段が形成される車両10の制御である。前記所定の退避走行用変速段は、例えば動力伝達装置12において、複合変速機40の変速比γtが退避走行に適した所定の退避走行用変速比となるような予め定められた有段変速部20のATギヤ段である。
又は、油圧制御回路56は、例えば各ソレノイドバルブSL1-SL4、SLTなどへの電源供給が完全に遮断されると、MOP58及び/又は不図示の電動式のオイルポンプが吐出した作動油OILを元圧として有段変速部20にて所定の退避走行用変速段を形成可能に各ソレノイドバルブSL1-SL4の作動状態が切り替えられるように構成されている。フェールセーフ制御CTfsは、油圧制御回路56内の各ソレノイドバルブSL1-SL4、SLTなどへの電源供給を完全に遮断することで、油圧制御指令信号Satを受けなくても有段変速部20にて所定の退避走行用変速段が形成される車両10の制御である。MOP58はエンジン14により回転駆動させられ、又、電動式のオイルポンプはバッテリ54からの電力により回転駆動させられる。従って、前記所定の退避走行用変速比は、エンジン14からの駆動力によって得られるエネルギーを元にして形成される。
フェールセーフ制御CTfsによる退避走行は、動力伝達装置12において電子制御装置90から油圧制御指令信号Satが出力されないことに伴って所定の退避走行用変速比が形成された状態での走行である。リンプホームモードにおいては、図5に示すようなATギヤ段変速マップを用いた有段変速部20の変速制御は行われない。
上述のように、退避走行実行部98は、動力伝達装置12が電子制御装置90による制御を受けることなく駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)からの駆動力を伝達することができる退避走行を行う。
フェールセーフ制御CTfsによる退避走行では、油圧制御指令信号Satは出力されないが、駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)を制御する、エンジン制御指令信号Se及び回転機制御指令信号Smgは出力される。よって、フェールセーフ制御CTfsによる退避走行では、例えば無段変速部18の変速比γ0を変化させることが可能である。リンプホームモード時においては、有段変速部20にて形成された所定の退避走行用変速段に対して無段変速部18の変速比γ0を変化させることで、複合変速機40における所定の退避走行用変速比を車速V及び要求駆動力Frdemに応じて変化させることができる。これにより、例えばリンプホームモード時においても、最適エンジン動作点等を考慮したエンジン動作点にてエンジン14を制御することができる。
退避走行実行部98は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定され、且つ、運転者によって退避制御CTlpへの移行が選択された場合に、退避制御CTlpへ移行するようにしても良い。
図9は、リンプホームモードへ移行するか否かの選択を運転者に促す際に報知する画面の一例を示す図であって、例えば情報周知装置89に表示される。図9において、更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定された場合には、運転者は、リンプホームモード(図中「退避制御モード」参照)へ移行するという選択肢の他に、再インストールを実行するという選択肢が与えられる。再インストールを実行することとは、例えばプログラム更新部112による車両用プログラム91の更新を再度実行することである。リンプホームモードへ移行するか否かの選択を運転者に促す際、選択する為の判断材料として、車両用プログラム91のインストールを試みた回数、時間などを表示しても良い。図9では、3回インストールを失敗しているとの表示が為されているが、この回数は任意である。又、「退避制御モードへ移行」が選択された際には、リンプホームモードへ移行した際に生じる、車両10における機能制限を表示し、運転者からの了解が得られた上でリンプホームモードへ移行しても良い。車両10における機能制限は、例えば図5に示すようなATギヤ段変速マップを用いた有段変速部20の変速制御が行われないことなどである。
上述のように、退避走行実行部98は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定されたときに、車両用プログラム91の更新を再度実行すること及び退避制御CTlpへ移行することのうちの退避制御CTlpへ移行することを運転者が選択した場合に、退避制御CTlpへ移行する。
又は、退避走行実行部98は、所定回数の再インストールが実行された後に、退避制御CTlpへ移行するようにしても良い。つまり、退避走行実行部98は、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定されたことに伴ってプログラム更新部112により車両用プログラム91の更新が再度実行されることが所定回数為された後に、再び、正常更新判定部97により更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定された場合に、退避制御CTlpへ移行する。前記所定回数は、例えば車両10の制御の実行が再インストールによって遅延させられることを抑制しつつ車両用プログラム91が正常に更新され易くする為の予め定められた再インストールの回数である。
リンプホームモードでは、車両10における機能が制限されるので、車両10の利用者が不便を感じる可能性がある。その為、リンプホームモードで走行する際には、車両10へ専門家を派遣したり、車両10を移動できるようにレッカーを車両10へ派遣するなどの異常処置が、車両10の故障対応業者にてスムーズに行われることが望まれる。そこで、退避走行実行部98は、通常制御モードからリンプホームモードへ移行して車両10の制御を変更した際は、車両10の制御を変更したことを車両10の故障対応業者へ送信するようにしても良い。車両10の故障対応業者は、例えば車両10の修理工場、車両10のディーラー240(後述の図10参照)などの車両10の整備や修理を行う拠点である。
図10は、車両用プログラム91の更新作業に伴って車両10の制御が変更された際に、車両10の制御の変更に関わる情報がディーラー240へ通知される概要を説明する図である。図10において、ディーラー240は、車両10と同様に、無線通信Rを介してネットワーク220(図4参照)と接続されており、サーバー200と通信する機器を有している。車両用プログラム91の更新作業に伴って通常制御モードからリンプホームモードへ移行させられて車両10の制御が変更された際は、車両10から携帯通信網等の無線通信Rを介して、更新作業により車両10の制御が変更されたことに関わる情報、つまり制御変更の発生状況の情報である発生状況情報Iocがサーバー200へ送信される。発生状況情報Iocは、例えば更新の対象となった車両用プログラム91、車両用プログラム91の更新がうまくいかなかった部分や更新がうまくいかなかった状況、変更された制御などの車両内情報Ivis、及び位置情報Ivpなどを含んでいる。サーバー200は、発生状況情報Iocに基づいて、発生状況情報Iocを受信するべきディーラー240を選び、発生状況情報Iocをそのディーラー240へ送信する。サーバー200により選ばれるディーラー240は、車両10の整備をふだんから行っているディーラー、位置情報Ivpに基づく車両10の位置に最も近い距離にあるディーラーなどである。発生状況情報Iocを受信したディーラー240は、発生状況情報Iocに基づいて、車両10へ専門家を派遣したり、車両10を移動できるようにレッカーを派遣するなどの対応をとる(白抜き矢印B参照)。又、ディーラー240は、車両10の利用者に連絡を取り、具体的な対応を連絡したり、指示したりしても良い(白抜き矢印B参照)。
上述のように、退避走行実行部98は、退避制御CTlpへ移行した際には、更新後車両用プログラム91rが正常でないという情報、及び位置情報Ivpを、車両10の故障対応業者へ送信する。
又は、リンプホームモードでは、例えば車両用プログラム91が正常に更新されなかったことで車両10の盗難に対するセキュリティーが低下する可能性がある。そこで、退避走行実行部98は、退避制御CTlpへ移行した際には、位置情報Ivpをサーバー200へ送信しても良い。これにより、リンプホームモード中の盗難に対するセキュリティーを向上させることができる。
図11は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、コストの増加を抑制しつつ退避走行を適切に実行することができる車両用プログラム更新システム300を実現する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図11において、先ず、状態判定部96の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、更新用プログラム202への車両用プログラム91の更新が完了したか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は正常更新判定部97の機能に対応するS20において、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かの判断、つまり更新後車両用プログラム91rの動作チェックが実行される。次いで、正常更新判定部97の機能に対応するS30において、前記S20でのチェック結果に基づいて車両用プログラム91の更新が正常に完了したか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は、AT変速制御部92、ハイブリッド制御部93、及び運転制御部94の機能に対応するS40において、通常制御モードによる車両10の制御が実行される。一方で、上記S30の判断が否定される場合は退避走行実行部98の機能に対応するS50において、制御モードが通常制御モードからリンプホームモードへ移行させられて車両10の制御が変更させられる。
図11のフローチャートにおいて、前記S30の判断が否定される場合には、図9に示すように、「再インストールを実行」及び「退避制御モードへ移行」のうちの何れかを運転者に選択させても良い。「再インストールを実行」が選択された場合には、車両用プログラム91の更新が再度実行させられて、前記S10に戻される。「退避制御モードへ移行」が選択された場合には、前記S50が実行させられる。
又は、図11のフローチャートにおいて、前記S30の判断が否定されたことに伴って車両用プログラム91の更新が再度実行させられて前記S10に戻されるというような再インストールが所定回数為された後に、再び、前記S30の判断が否定される場合に、前記S50が実行させられても良い。
又は、図11のフローチャートにおいて、前記S50が実行させられた際には、更新後車両用プログラム91rが正常でないという情報、及び位置情報Ivpが、車両10の故障対応業者へ送信されても良い(図10参照)。又は、図11のフローチャートにおいて、前記S50が実行させられた際には、位置情報Ivpがサーバー200へ送信されても良い。
上述のように、本実施例によれば、車両用プログラム91の更新が完了したときに更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定された場合には、電子制御装置90による通常制御CTnmから、電子制御装置90による制御を受けることなく駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)からの駆動力を用いて走行する退避走行を行う退避制御CTlpへ移行させられるので、電子制御装置90による制御がなくても、最低限の走行を保障することができる。つまり、退避走行用プログラムを電子制御装置90内に用意せずとも、安全に車両10を走行させることができる。よって、コストの増加を抑制しつつ退避走行を適切に実行することができる。
また、本実施例によれば、動力伝達装置12がAT用プログラム91aを用いた電子制御装置90による制御を受けることなく駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)からの駆動力を伝達することができる退避走行が行われるので、退避走行が適切に実行される。
また、本実施例によれば、フェールセーフ制御CTfsによる退避走行は、動力伝達装置12において電子制御装置90から油圧制御指令信号Satが出力されないことに伴って所定の退避走行用変速比が形成された状態での走行であるので、退避走行が適切に実行される。
また、本実施例によれば、前記所定の退避走行用変速比は、エンジン14からの駆動力によって得られるエネルギーを元にして形成されるので、退避走行が適切に実行される。
また、本実施例によれば、車両用プログラム91の更新を再度実行すること及び退避制御CTlpへ移行することのうちの退避制御CTlpへ移行することを運転者が選択した場合にその退避制御CTlpへ移行させられるので、車両用プログラム91の更新を再度実行することで時間を要してでも通常制御CTnmで走行したいというような運転者のニーズ、又は、速やかに退避走行を行って故障対応業者によって車両用プログラム91の更新を正常に完了させたいというような運転者のニーズに応えることができる。
また、本実施例によれば、更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定されたことに伴って車両用プログラム91の更新が再度実行されることが所定回数為された後に、再び、更新後車両用プログラム91rが正常でないと判定された場合に、退避制御CTlpへ移行させられるので、例えばノイズ等の何らかの外的要因による更新の失敗を回避し易くされる。
また、本実施例によれば、退避制御CTlpへ移行させられた際には、更新後車両用プログラム91rが正常でないという情報、及び位置情報Ivpが、車両10の故障対応業者へ送信されるので、退避走行が発生している状況に対する対応を故障対応業者にてスムーズに行うことができ、車両10の利用者の不便を低減することができる。
また、本実施例によれば、仮想空間310において、更新後車両用プログラム91rを用いたときの仮想入力情報Ivinに基づいた電子制御装置90による指令信号情報Iscを基にして仮想車両挙動Avvが算出され、仮想入力情報Ivinに対して仮想車両挙動Avvが整合するか否かに基づいて更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かが判定されるので、更新後車両用プログラム91rを用いて実際に車両10を動作させなくても、更新後車両用プログラム91rに問題がないことを確認することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、正常更新判定部97の機能は電子制御装置90に備えられ、又、プログラム更新部112の機能は第1ゲートウェイECU110に備えられていたが、この態様に限らない。例えば、正常更新判定部97の機能の全部又は一部は、第1ゲートウェイECU110に備えられていても良いし、又は、プログラム更新部112の機能の全部又は一部は、電子制御装置90に備えられていても良い。例えば、第1ゲートウェイECU110は、電子制御装置90に含まれるものであっても良い。又は、図6を用いて説明したように、正常更新判定部97の機能の一部は、サーバー200に備えられていても良い。要は、正常更新判定部97及び退避走行実行部98などの各機能は、電子制御装置90、第1ゲートウェイECU110、及びサーバー200などを含む車両用プログラム更新システム300に備えられていれば良い。
また、前述の実施例において、ネットワーク220や無線装置230は、車両用プログラム更新システム300の専用のものであっても良いし、汎用のものであっても良い。送受信機100とサーバー200とは、ネットワーク220を介して接続されていたが、例えばサーバー200が備える無線装置を介して接続されていても良いし、サーバー200と直接的に接続された無線装置を介して接続されていても良い。
また、前述の実施例では、図6に示すような、仮想空間310における更新後車両用プログラム91rの動作チェックは、電子制御装置90及びサーバー200によって実施されたが、例えば電子制御装置90のみによって実施されても良い。
また、前述の実施例では、退避制御CTlpへ移行した際には、図10に示すように、発生状況情報Iocが、サーバー200を介して、サーバー200が選んだディーラー240へ送信されたが、この態様に限らない。例えば、発生状況情報Iocが、サーバー200を介すことなく、車両10が選んだディーラー240へ送信されても良い。又は、サーバー200は、ディーラー240を選ぶことをせず、車両10から受信した発生状況情報Iocを車両10が選んだディーラー240へ単に送信するだけでも良い。
また、前述の実施例における図11のフローチャートにおいて、前記S30では、前記S20でのチェック結果に基づいて、車両10の制御の変更要否が判断されても良い。具体的には、前記S20において更新後車両用プログラム91rが正常であるとのチェック結果であれば、前記S30において車両用プログラム91の更新が正常に完了したと判定されて車両10の制御の変更が不要であると判断され、前記S40が実行される。一方で、前記S20において更新後車両用プログラム91rが正常でないとのチェック結果であれば、前記S30において車両用プログラム91の更新が正常に完了できなかったと判定されて車両10の制御の変更が必要であると判断され、前記S50が実行される。
また、前述の実施例では、更新後車両用プログラム91rが正常であるか否かに基づいて退避制御CTlpへの移行を判断する対象となる車両用プログラム91としてAT用プログラム91aを例示したが、この態様に限らない。退避制御CTlpへの移行を判断する対象となる車両用プログラム91は、例えばホイールブレーキ装置86の制御に用いられるホイールブレーキ用プログラムなどであっても、本発明を適用することができる。要は、退避制御CTlpへの移行を判断する対象となる車両用プログラム91は、駆動力源(エンジン14、第2回転機MG2)の制御に用いられるENG用プログラム及びMG用プログラムを除く車両用プログラムであれば、本発明を適用することができる。尚、例えば退避制御CTlpにおいてEV走行が可能であれば良いという観点でみれば、退避制御CTlpへの移行を判断する対象となる車両用プログラム91は、MG用プログラムを除く車両用プログラムであれば、本発明を適用することができる。つまり、退避制御CTlpへの移行を判断する対象となる車両用プログラム91は、退避走行に用いられる駆動力を発生する駆動力源の制御に用いられる駆動力源用プログラムを除く車両用プログラムであれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、本発明が適用される車両として、複合変速機40を備える車両10を例示したが、車両10に限らず、車両用プログラムを、車両とは別の車外装置から無線通信を介して受信した更新用プログラムに更新する車両であれば、本発明を適用することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。